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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1219521 |
審判番号 | 不服2008-26813 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-20 |
確定日 | 2010-07-07 |
事件の表示 | 特願2003-153787「内視鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成16年6月3日出願公開、特開2004-154545〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年5月30日(パリ条約による優先権主張 2002年5月30日、米国(US)、2003年5月28日、米国(US))にされた特許出願(2003年特許願153787号(以下、「本件出願」という。))につき、平成20年7月14日付けで拒絶査定(発送日:同年7月23日)されたところ、拒絶査定不服審判が同年10月20日に請求されたものである。 第2 本件出願に係る発明 本件出願の請求項1?15に係る発明は、平成20年5月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。 【請求項1】「近位端および遠位端を有し軸のまわりに対称な第1セグメント: 該第1セグメントに回転可能に結合し、該軸から離れて曲げられる第1組の連結リンクと、該第1組の連結リンクに結合し、該第1組の連結リンクよりも小さいか若しくは大きい曲率半径で該軸から離れて曲げられる第2組の連結リンクであって、該第1組の連結リンクと異なる少なくとも1つの連結角度をもつ該第2組の連結リンクとからなる第2セグメント: 該第1組の連結リンクおよび該第2組の連結リンクに力を付与するための1組のガイドワイヤ:および 各個のリンクの円周部に配置し、該第1組の連結リンクおよび該第2組の連結リンクに沿って該1組のガイドワイヤを案内するための部材であって、該ガイドワイヤを案内する隣接する二つの連結リンクの該円周部上の位置が各個のリンクについて異なるように構成した部材: からなり、 該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にあることを特徴とする内視鏡。」 第3 引用刊行物の記載事項 (3A)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された引用文献(実願昭63-115780号(実開平2-35703号)のマイクロフィルム、以下「引用刊行物A」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (3A-1)「[産業上の利用分野] この考案は内視鏡の湾曲装置に関し、特に、隣り合う節輪どうしが上下方向に屈曲する上下方向屈曲部と隣り合う節輪どうしが左右方向に屈曲する左右方向屈曲部を各々複数ずつ混在して節輪を連結し、湾曲部が全体として上下及び左右の全方向に湾曲することができるように形成した内視鏡の湾曲装置に関する。」(明細書3頁8?15行) (3A-2)「[実施例] 図面を参照して実施例を説明する。 第2図は内視鏡の全体図であり、操作部1に連結された可撓管2の先端部分に湾曲部3が連結され、対物光学系などを内蔵した先端部本体4が湾曲部3の先端に連結されている。湾曲部3は、上下左右の全方向に湾曲することができるように構成されており、操作部1に設けられた操作ノブ5を回動操作することにより,操作ワイヤ(第2図には図示せず)が牽引されて湾曲部3が湾曲する。 第3図は湾曲部3の構造を示しており、内部に挿通されている光学繊維及びチューブ類などは図示が省略されている。・・・ 湾曲部3は、多数の節輪11(11a,11B,・・・)を、リベット12で回動自在に連結した構造であり、隣り合う節輪どうしが上下方向に屈曲する上下方向屈曲部13aと、隣り合う節輪どうしが左右方向に屈曲する左右方向屈曲部13bとが、各々複数ずつ混在するように各節輪11が連結されている。本実施例においては、上下方向屈曲部13aと左右方向屈曲部13bとが交互になるように連結されている。このような構成により、湾曲部3は全体として上下及び左右の全方向に湾曲することができる。 最先端側の節輪11aには、4本の操作ワイヤ14の先端が銀ロー付などにより各々固着されており、各操作ワイヤ14はリベット12の内側部分を通って、後方へ引き出されている。また、操作ワイヤ14のガイドとなるリング状のガイドが、節輪11又はリベット12の内側に設けられているが、図には示されていない。 各節輪11は、リベット12で連結される部分が180度対称形に舌状に突出し、節輪11の縁部がリベット12部を頂点として両側へ斜めに切り欠かれている。したがって、上下方向屈曲部13a及び左右方向屈曲部13bともに、操作ワイヤ14を牽引することにより、隣り合う節輪11の縁部どうしが当接するまで屈曲可能である。 第1図は、各節輪11(11a,11b・・・)の形状を略示したものであり、左右方向屈曲部13bの節輪11の切欠き量は全ての場所で同量iとなっている。 一方、上下方向屈曲部13aは、上方向の切欠き量が下方向の切欠き量より大きく、かつ上下方向共に前側の部分の節輪11の切欠き量が後側の部分の節輪11の切欠き量より大きくなっている。即ち、 A=B=C=D=E=F=G a=b=c=d=e=f=g H=J=K=M=N h=j=k=m=n A>H ,a>h A>a ,H>h である。したがって、複数の上下方向屈曲部13aは、大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)と、小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)とに構成されている。 最先端の屈曲部は、切欠き量A,aの上下方向屈曲部であり、できるだけ先端部分まで上下方向に屈曲できるように形成されている。また、最後端の屈曲部は、小さな切欠き量N,nの上下方向屈曲部であり、この部分の屈曲角度はなるべく小さくして、被覆される網状管の耐久性を向上させている。」(明細書6頁18行?10頁6行) (3A-3)「尚、本考案の内視鏡の湾曲装置は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、 A>B>C>D>・・・M>N a>b>c>d>・・・m>n のごとく、節輪の切欠き量を一定の割合で前側ほど漸次大きくしてもよい。このように構成すると、上記の実施例に比べてさらに滑らかな湾曲形状を得ることができる。また。上方向と下方向とで切欠き量の変化の割合を変えれば、各方向の形状を各々最も望ましい形状にさせることができる。」(明細書11頁7?17行) (3A-4)第2図には、操作部1に連結された可撓管2と、可撓管2の先端部分に連結され、対物光学系などを内蔵した先端部本体4が先端に連結された湾曲部3と、回動操作することにより操作ワイヤを牽引して湾曲部3を湾曲する操作ノブ5と、操作ノブ5を設けた操作部1を有するに内視鏡が描かれている。 上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-1)?(3A-4)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、 「操作部1に連結された可撓管2と、 可撓管2の先端部分に連結されるとともに、大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)と、小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)とから構成され、隣り合う節輪どうしが上下方向に屈曲する上下方向屈曲部13aと、隣り合う節輪どうしが左右方向に屈曲する左右方向屈曲部13bとが、各々複数ずつ混在するように各節輪11がリベット12で回転自在に連結される湾曲部3と、 最先端側の節輪11aに固着され、操作部1に設けられた操作ノブ5を回動操作することにより牽引され、隣り合う節輪11の縁部どうしが当接するまで屈曲可能にする操作ワイヤ14と、 節輪11又はリベット12の内側に設けられ、操作ワイヤ14のガイドとなるリング状のガイドと、 を有する内視鏡。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 (3B)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された引用文献(特開平9-192085号公報、以下「引用刊行物B」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (3B-1)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、少なくとも2方向に湾曲できるようにした湾曲部と処置具挿通チャンネルとを備えた内視鏡に関する。」 (3B-2)「【0009】図1?図3は第1の実施形態を示し、図2は撮像素子を組込んだ電子内視鏡1のシステム全体の概略的構成を示すもので、2は体腔内に挿入される可撓管からなる挿入部、3は前記挿入部2の基端部に連結された操作部である。 【0010】また、内視鏡1の挿入部2の先端側には上下・左右の4方向に湾曲できるようにした湾曲部4が配設されている。さらに、この湾曲部4の先端には観察窓14、照明窓15、処置具挿通口16等を組み込んだ先端構成部5が設けられている。 【0011】また、操作部3には湾曲部4を遠隔的に湾曲操作する操作ノブ6が設けられている。そして、この操作ノブ6を湾曲操作することによって操作ワイヤ(図示しない)を引っ張り操作し、湾曲部4を湾曲できるようになっている。 ・・・ 【0014】図1(A)は、湾曲部4に配設された4方向に湾曲できるようにした湾曲駒連結ユニット11を示すものである。この湾曲駒連結ユニット11には同図(B),(C),(D)に示す3種類の湾曲駒が所定の順序で組み合わされて連結されている。(なお、図1において、湾曲駒(B)が27、湾曲駒(C)が28、湾曲駒(D)が29である。) 各々の湾曲駒27,28,29の連結部はリベット12によって回動可能に連結されており、リベット12とリベット12の間隔は全長に亘りほぼ均一になっている。13は処置具挿通チャンネルで、例えば、図3に示すように、DOWN・RIGHT方向に位置している場合には湾曲駒27,28,29の配列を、まさに図1(A)のようにしてある。 【0015】図1(B),(C)の湾曲駒27,28は処置具挿通チャンネル13の位置するDOWN方向及びRIGHT方向の湾曲に関わる寸法G,G′,H,H′を処置具挿通チャンネル13の位置しないUP方向及びLEFT方向の湾曲に関わる寸法E,E′,F,F′よりも小さくなるように設定されている。 【0016】つまり、湾曲部4の中央付近に、図1(B),(C)の湾曲駒27,28を配設し、かつ図1(B),(C)の湾曲駒27,28の湾曲角度の出ない方向を処置具挿通チャンネル13側に位置させてある。図1(D)の湾曲駒29は4方向の湾曲に関わる寸法P,Q,R,Sが略同一になっている。 ・・・ 【0018】 図3は、図1(A)の湾曲駒連結ユニット11を実装した湾曲部4を処置具挿通チャンネル13が一番小さいRになる例えばDOWN方向とRIGHT方向を同時にかけた時のツイスト状態を示したものである。一方破線は図1(B),(C)のような湾曲駒を使わない従来の湾曲駒連結ユニットを実装した時の同じくDOWN方向とRIGHT方向を同時にかけたツイスト状態を示したものである。 【0019】この発明の第1の実施形態における湾曲駒連結ユニット11は、処置具挿通チャンネル13を一番内側にくるように湾曲をかけた時、湾曲部4の中央の曲率Rを湾曲部4の先端側ないし後端側の曲率r1 ,r2 よりも大きくなるように設定されている。・・・」 (3B-3)「【0031】図6は第3の実施形態を示し、第1の実施形態のように4方向湾曲でなくてもよい。本実施形態は第1の実施形態の2方向の湾曲バージョンの例である。 【0032】処置具挿通チャンネル13の配設されている側への湾曲Rを左右する湾曲駒端縁間X,Y,Zの寸法関係はZがXやYよりも小さくしてある。なお、リベット12の間隔は第1の実施形態と同様に全長に亘りほぼ均一である。ちなみに本実施形態ではZが1ケ所しかないが、中央部に複数箇所あってもかまわない。 【0033】本実施形態によれば、第1の実施形態と同じ作用効果がある。 【0034】図7は第4の実施形態を示す。第3の実施形態の場合は、湾曲管中央部の駒と駒の間の寸法Zを前側や後側の寸法より小さくして湾曲管中央部の湾曲Rを大きくるものであるが、本実施形態はその寸法は変えず、その代わりに湾曲管中央部の駒と駒を結ぶリベット12間の寸法Lを前側や後側のl_(1) ,l_(2) より長くしたものである。本実施形態によれば、第1の実施形態と同じ作用効果がある。」 (3C)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された引用文献(特開平11-155806号公報、以下「引用刊行物C」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (3C-1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、挿入部における湾曲部の構造を改良した内視鏡に関する。」 (3C-2)「【0011】 【発明の実施の形態】[第1の実施形態] 図1乃至図6を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。 (構成)図1は内視鏡1を示し、この内視鏡1は挿入部2と操作部3を有して成る。操作部3には接眼部4、鉗子挿入口部5及び湾曲操作レバー6が設けられ、ライトガイドケーブル7が接続されている。挿入部2は管状の軟性部11と、この先端に連設された管状の湾曲部12と、この湾曲部12の最先端に設けられた先端構成部13から成り、その内部には図示しないが、画像伝送用ファイバー、照明用ファイバー及び鉗子挿入管路用チューブなどが挿通され、これらは先端側で上記先端構成部材13に固定されている。 【0012】次に、湾曲部12の構成について説明する。湾曲部12には図2に示す如くの 、略リング状の複数の湾曲駒(節輪)15が挿入部2の軸方向に沿って順次直列に配設されていており、その各湾曲駒15の外周には図示しないが、金属網状管および外皮チューブにより外装がなされている。 【0013】湾曲駒15の最前端のものは、上記先端構成部13の部材と嵌合固定される先端駒15aとなっており、さらに湾曲駒15の最後端のものは、軟性部11の先端部材と嵌合固定される最終駒15bとなっている。そして、先端駒15aと最終駒15bとの間の湾曲駒15は湾曲部12の先端側領域においての複数のものが両方向湾曲駒15cであり、基端側領域においての複数のものが一方向湾曲駒15dである。また、これらの湾曲駒15は挿入部2の軸方向へ直線的に並べられ、その隣接する両湾曲駒15の隣接端縁をリベット状の軸ピン16により枢着することによりそれぞれ連結されている。 【0014】図3は湾曲駒15cを示し、図4は湾曲駒15dを示すものである。これらの湾曲駒15c,15dについては、その先端側端縁及び基端側端縁それぞれの周縁の左右部位の2ケ所の位置には耳状の連結部18が、一体的に突設して左右対称的に形成されている。また、上記先端駒15aについてはその基端側端縁の周縁、最終駒15bについてはその先端側端縁の周縁の左右2ケ所の位置には耳状の連結部18が一体的に突設して左右対称的に形成されている。これらの各連結部18にはそれぞれ軸孔19が設けられている。そして、隣接する湾曲駒15の対応する連結部18の軸孔19の各組のものにはそれぞれ上記軸ピン16が挿通され、リベット止めされている。このようにして、隣接する湾曲駒15c,15d、先端駒15a,最終駒15bが直列に連結されている。湾曲部12の先端側領域部分を構成する湾曲駒15cはその先端側端縁及び後端側端縁のいずれにも、中心軸に対して上方側及び下方側にそれぞれ直線的な端面を形成する切欠部21a,21b,21c,21dが形成されている。各切欠部21a,21b,21c,21dの端面は外側程、それ自体の湾曲駒15cの中央側に寄る向きで傾斜すると共に、その傾斜端面の延長は上記軸孔19の中心を通るように形成されている。また、これら計4つの切欠部21a,21b,21c,21dの周端面の最外側端においての位置が、上記左右両軸孔19の中心線、つまり上記左右両軸孔19の中心を結ぶ中心線を通り、かつその湾曲部12の長手方向の軸に対して垂直な面からの距離、つまり回動端までの距離がそれぞれLa?Ldとなっている。そして、通常、それらの距離La?Ldは同等に設定されているが、目的の湾曲角度に合わせ、任意に設定することも可能である。 【0015】一方、湾曲部12の後端側領域部分を構成する湾曲駒15dの先端側端縁及び後端側端縁については、上方側のみに上記駒部材15cと同様の切欠部21a,21bが設けられている。そして、先端側端縁及び後端側端縁の下方側には、上記切欠部21c,21dに相当するものがなく、その代わりに突当て部22c,22dが設けられている。各突当て部22c,22dのもの共、その先端面23c,23dは隣接する駒部材15dの方へ軸方向の向きで突き出している。この 各突当て部22c,22dの先端面23c,23dの位置は上記軸孔19の中心、つまり上記左右両軸孔19の中心を結ぶ中心線を通り、かつその湾曲部12の長手方向の軸に対して垂直な面の位置に一致している。そして、湾曲部12が一直線の状態あるとき、湾曲駒15dはその隣接するものの突当て部22c,22d同士が突き当るようになっている。 【0016】また、湾曲部12の内部には挿入部2の軸を中心に、上記連結部18と約90度ずれた上下位置に設置される2本の湾曲操作ワイヤー24a,24bが配設されている。湾曲操作ワイヤー24a,24bの先端は先端駒15aにろう付け等により固定されており、湾曲操作ワイヤー24a,24bの基端は上記操作部3に設けてある湾曲操作レバー6により駆動される湾曲操作機構(図示せず)に連結されている。そして、手元側操作部3の曲操作レバー6の湾曲駆動操作に伴い、湾曲操作ワイヤ24a,24bの一方を選択してこれを牽引すると、これにより各湾曲駒15は軸ピン16を中心に牽引する向きに回動される。」 (3C-3)「【0022】図5はそれらの状況を示すものであり、湾曲部12は上方側へのみ、全長にわたり湾曲し、下方側への湾曲は先端側領域のみで小さく湾曲するようになる。ここで、破線は従来の内視鏡の湾曲形状を参考に示したものである。」 (3D)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された引用文献(特開平7-348号公報、以下「引用刊行物D」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (3D-1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、例えば、体腔内へ挿入する内視鏡やカテーテル、または処置具等の医療用の挿入具に関する。」 (3D-2)「【0010】図3は湾曲部4の具体的な構造を示す。すなわち、湾曲部4は、一列に並べた複数の湾曲コマ15からなり、各々の隣接する湾曲コマ15同士は、回転中心部15aにて回転自在に連設されている。また、各々湾曲コマ15の内円筒面にはそれぞれ牽引ワイヤー16を通す円筒状のワイヤーガイド17が上側と下側に2個ずつ対称的に固定されている。各牽引ワイヤー16は可撓管部5内を通じて操作部6のワイヤ操作機構(図示しない。)に連結され、同じく図示しない操作ノブによってそのワイヤ操作機構を操作駆動し、一方の牽引ワイヤー16を牽引し、他方の牽引ワイヤー16を繰り出し、後述する如く、その牽引する向きに湾曲部4を湾曲させる。湾曲部4において湾曲コマ15は外皮18で覆われている。 【0011】ここで、各湾曲コマ15をワイヤーガイド17が固定される位置で、各々断面した図、(A),(B),(C),(D),(E),(F)でそれぞれ示されるように、湾曲コマ15の回転中心部15aの軸中心からの各ワイヤーガイド17までの距離を r_(a) 、r_(b) 、r_(c )、r_(d) 、r_(e) 、r_(f) とするとき、それらは、 r_(a) <r_(b) <r_(c) <r_(d)<r_(e) <r_(f) … (1) の関係となるように設定する。 【0012】このような設定とすることにより、牽引ワイヤー16の移動量に対して、先端部3に近い湾曲コマ15の方から順次大きく回転させることが可能である。すなわち、牽引ワイヤー16の各湾曲コマ15に等配される移動量をdとすると、各湾曲コマ15の回転角は、dの各々距離ra ?f による商となるため、(1)式より、次のように表される。 (d/r_(a) )>(d/r_(b))>(d/r_(c))/(d/r_(d) )>(d/r_(e) )>(d/r_(f) ) つまり、先端側のもの程、大きく回転して湾曲する。このことは、管腔内において管壁を観察する際に、管内径のより小さい管壁に対して観察することを可能とする。」 (3D-3)図3には、回転中心部15aが各々湾曲コマ15上の同じ位置に直線状に配置されるとともにワイヤガイド17の回転中心部15aに対して異なる位置に配置することが描かれている。 (3E)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された引用文献(特開平8-289870号公報、以下「引用刊行物E」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (3E-1)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、体腔内に挿入される挿入部を備えた内視鏡に係わり、特に挿入部の湾曲部が相対的に大きい角度に亙って湾曲操作される内視鏡に関する。」 (3E-2)「【0016】図3に開示されているように、湾曲管12は、複数の節輪を有している。基本的な形状を有する節輪20は、両端に各々2本のアーム22を有し、各アーム22は、図5に示すように、隣接する節輪20と回動自在にリベット24で連結されている。基本的な形状を有する複数の節輪20は、互いに回動自在に順次連結され、一列に連結された節輪の一端は、口金26を介して可撓管10に固定され、また、他端は、第1の変形節輪28及び第2の変形節輪30を介して先端構成部14に連結されている。第1の変形節輪28は、節輪2Oと同様に両端部に各々2本のアームを有しているが、アームの取付け位置が節輪20と異なっている。即ち、第1の変形節輪28の一端には、節輪20と同じ位置にアーム22を有し、他端には、図3及び図4に示すように、アーム22の位置に対して右回転又は左回転方向に角度θねじれた位置にアーム32が形成されている。第2の変形節輪30の一端には、変形節輪28のアーム32に対してリベット24で接続されたアーム34が形成され、他端は、先端構成部14に固定されている。 【0017】各節輪20及び第1の変形節輪28の内側には、円筒状の複数のワイヤガイド36が固定され、ワイヤガイド36には、湾曲操作ワイヤ38が挿通され、湾曲操作ワイヤ38の一端は、第2の変形節輪30に固定され、他端は、図1に示す湾曲操作装置16の操作レバ-18に接続されている。 【0018】従って、操作レバ-18が回転されると、湾曲操作ワイヤ38が基端部の方向に引かれ、各節輪20はリベット24を中心に回転され、湾曲管12は、基端部から先端部に向かって次第に湾曲される。その際、可撓管10に隣接した基端部の節輪20から湾曲が開始される。即ち、図7に示すように湾曲管12が最も湾曲された場合に、第1の変形節輪28と第2の変形節輪30の接続部が回動される。この接続部の回転軸は、他の節輪20の回転軸に対して所定の角度ねじれているために、図6に示すように湾曲管12の先端のみが他の部分の湾曲方向とは異なった方向に湾曲される。」 (3E-3)「【0021】図9および図10は、図3ないし図8に示した内視鏡の変形例を示している。この変形例では、複数の節輪 20におけるアーム22の位置が全て異なっている。即ち、各節輪20の縦軸方向の両端部には、ねじれた位置にアーム22が各々形成され、そのアーム22を備えた節輪20が一列に連結されることによって、基端部の節輪20Aの連結部の中心を通って可撓管の縦軸と平行に延出する直線Mに対するねじれ量は、可撓管10に近い節輪ほど小さく、先端構成部14に近い節輪ほど大きくなる。 【0022】従って、図3ないし図8に示した内視鏡では、湾曲管12を湾曲させた際に、最大湾曲時にのみ先端部の湾曲方向が右又は左に変更されるが、図10に示すようにこの変形例では、湾曲管12を湾曲させる際に、湾曲管12は基端部から順次ねじれ、内視鏡の視野内に見える可撓管10の位置も順次視野の中心からずれる。また、この変形例では、視野内に可撓管10が見え始める程度の湾曲状態では、湾曲管12は、あまり横方向に湾曲されないが視野内に占める可撓管10の割合が小さいので、視野は充分確保される。そして、湾曲角度を増すと次第に視野内の可撓管10の占める割合は増えるが、それに伴って湾曲管12の湾曲方向が左又は右に次第に大きく変更されるので、常に視野が確保される。」 (3E-4)図9及び図10には、隣どうしの節輪20を連結するアーム22に設けたリベット24が、先端構成部14に近い節輪20ほど基端部の節輪20Aの連結部の中心を通って可撓管の縦軸と平行に延出する直線Mよりねじれた位置に配置され、湾曲管12を湾曲させた際に、先端に行くほどらせん状に回転上昇することが描かれている。 第4 対比・判断 (4-1)本願発明と引用発明とを対比する。 (i)引用発明の「可撓管2」は、先端部分が湾曲部3に連結され、湾曲部と反対側、即ち、後端部分が操作部1に連結されていることから、引用発明の「可撓管2」と本願発明の「第1セグメント」とは「近位端および遠位端を有する第1セグメント」である点で共通する。 (ii)引用発明の「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)と、小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)とから構成され、」「上下方向に屈曲する上下方向屈曲部13a」を構成する「節輪」、及び「隣り合う節輪どうしが左右方向に屈曲する左右方向屈曲部13b」を構成する「節輪」はそれぞれ複数の節輪で構成する連結リンクを構成することは明らかである。そうすると、引用発明の「可撓管2の先端部分に連結される」「湾曲部3」と本願発明の「第2セグメント」とは、「該第1セグメントに回転可能に結合し、軸から離れて曲げられる複数の異なる組からなる連結リンクを有する第2セグメント」である点で共通する。 (iii)引用発明の「操作ワイヤ14」は、操作ノブ5を回動操作することにより牽引され、隣り合う節輪11の縁部どうしが当接するまで屈曲可能にする操作ワイヤであるから、引用発明Aの「操作ワイヤ14」と本願発明の「ガイドワイヤ」とは、「複数の異なる組からなる連結リンクに力を付与するためのワイヤ」である点で共通する。 (iv)引用発明の「リング状のガイド」は、節輪11又はリベット12の内側に設けられ、操作ワイヤ14のガイドとなることから、引用発明の「リング状のガイド」と本願発明の「ガイドワイヤを案内するための部材」とは「各個のリンクの円周部に配置し、複数の異なる組からなる連結リンクに沿ってガイドワイヤを案内するための部材」である点で共通する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「近位端および遠位端を有する第1セグメント: 該第1セグメントに回転可能に結合し、軸から離れて曲げられる複数の異なる組からなる連結リンクを有する第2セグメント: 複数の異なる組からなる連結リンクに力を付与するためのワイヤ:および 各個のリンクの円周部に配置し、異なる組からなる複数の連結リンクに沿ってガイドワイヤを案内するための部材: からなる内視鏡。」である点で一致し、次の相違点(ア)?相違点(オ)で相違している。 ・相違点(ア) 本願発明では、第1セグメントが、「軸のまわりに対称な第1セグメント」であるのに対して、引用発明では、可撓管2の構造が不明である点。 ・相違点(イ) 第2セグメントが、本願発明では「該第1セグメントに回転可能に結合し、該軸から離れて曲げられる第1組の連結リンクと、該第1組の連結リンクに結合し、該第1組の連結リンクよりも小さいか若しくは大きい曲率半径で該軸から離れて曲げられる第2組の連結リンクであって、該第1組の連結リンクと異なる少なくとも1つの連結角度をもつ該第2組の連結リンクとからなる第2セグメント」であるのに対して、引用発明では「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)と、小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)とから構成され、隣り合う節輪どうしが上下方向に屈曲する上下方向屈曲部13aと、隣り合う節輪どうしが左右方向に屈曲する左右方向屈曲部13bとが、各々複数ずつ混在するように各節輪11が連結され、可撓管2の先端部分に連結される湾曲部3」である点。 ・相違点(ウ) 複数の異なる組からなる連結リンクに力を付与するためのワイヤが、本願発明では、「該第1組の連結リンクおよび該第2組の連結リンクに力を付与するための1組のガイドワイヤ」であるのに対して、引用発明では、「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)と小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)とからなる上下方向に屈曲する上下方向屈曲部13aを構成する節輪、及び隣り合う節輪どうしが左右方向に屈曲する左右方向屈曲部13bを構成する節輪の隣り合う節輪11の縁部どうしが当接するまで屈曲可能にする操作ワイヤ14」である点。 ・相違点(エ) 各個のリンクの円周部に配置し、異なる組からなる複数の連結リンクに沿ってガイドワイヤを案内するための部材が、本願発明では、「各個のリンクの円周部に配置し、該第1組の連結リンクおよび該第2組の連結リンクに沿って該1組のガイドワイヤを案内するための部材であって、該ガイドワイヤを案内する隣接する二つの連結リンクの該円周部上の位置が各個のリンクについて異なるように構成した部材」であるのに対して、引用発明では、「節輪11又はリベット12の内側に設けられ、操作ワイヤ14のガイドとなるリング状のガイド」であり、リング状のガイドが節輪11又はリベット12の内側のどこに設けられているのか明確でない点。 ・相違点(オ) 本願発明では「該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にある」のに対して、引用発明ではそのような構成を備えていない点。 (4-2)当審の判断 ・相違点(ア)について 内視鏡の可撓管を正円形の形状にすることは、例えば特開平2-23930号公報の2頁左上欄7?8行に記載されているごとく、本件出願の優先権主張の日前に周知であり、引用発明の可撓管を周知例のごとく正円形にすれば、可撓管の中心軸に対して対称な形状になることは自明な事項であることから、引用発明の可撓管を本願発明のごとく「軸のまわりに対称な」形状にすることは当業者が容易になし得るものである。 ・相違点(イ)及び相違点(ウ)について (イウ-1)引用発明の上下方向屈曲部13aは、大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)と、小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)とから構成されており、さらに、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-2)には「したがって、複数の上下方向屈曲部13aは、大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)と、小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)とに構成されている。最先端の屈曲部は、切欠き量A,aの上下方向屈曲部であり、できるだけ先端部分まで上下方向に屈曲できるように形成されている。」ことが記載されている。そして、引用発明の上下方向屈曲部13aについてみると、引用発明の「小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)」を構成する「節輪」は、可撓管2と回転可能に連結されるとともに大きい曲率半径で屈曲し、また、引用発明の「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)」を構成する「節輪」は、「小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)」を構成する「節輪」と連結し、小さい曲率半径で屈曲することになる。そして、引用発明の内視鏡では、湾曲部3が上下方向及び左右方向の4方向に屈曲するが、内視鏡において湾曲部を2方向のみに屈曲することは、例えば、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-3)の段落【0031】、又は上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-3)の段落【0022】に記載されているように本件出願の優先権主張の日前に周知であり、さらに、上記引用刊行物Bには、湾曲部が屈曲する方向が4方向の例も2方向の例もともに記載されていることから、引用発明の内視鏡において、湾曲部3が上下方向及び左右方向の4方向に屈曲する代わりに、例えば、上下方向の2方向のみに湾曲させることは当業者が容易になし得るものである。 そして、引用発明において上下方向の2方向のみに湾曲させる構成を採用した際、上記のように、「小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)」を構成する「節輪」は、可撓管2と回転可能に連結されるとともに大きい曲率半径で屈曲し、また、「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)」を構成する「節輪」は、「小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)」を構成する「節輪」と連結し、小さい曲率半径で屈曲することから、引用発明の湾曲部3は、本願発明発明のごとく、「該第1セグメントに回転可能に結合し、該軸から離れて曲げられる第1組の連結リンクと、該第1組の連結リンクに結合し、該第1組の連結リンクよりも小さい」「曲率半径で該軸から離れて曲げられる第2組の連結リンクであって、該第1組の連結リンクと異なる」「1つの連結角度をもつ該第2組の連結リンクとからなる第2セグメント」となることは明らかであり、本願発明「該第1セグメントに回転可能に結合し、該軸から離れて曲げられる第1組の連結リンクと、該第1組の連結リンクに結合し、該第1組の連結リンクよりも小さいか若しくは大きい曲率半径で該軸から離れて曲げられる第2組の連結リンクであって、該第1組の連結リンクと異なる少なくとも1つの連結角度をもつ該第2組の連結リンクとからなる第2セグメント」の構成に含まれることとになる。 また、複数の曲率半径を持つ湾曲部において、例えば、実公昭49-25503号公報の第4図?第7図に記載されているように、内視鏡の可撓管側の湾曲部の曲率半径を大きくすることも、逆に小さくすることもともに、本件出願の優先権主張の日前に周知であることから、必要に応じて、引用発明の湾曲部3の上下方向屈曲部(A?G,a?g)を構成する節輪の曲率半径を小さく、上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)を構成する節輪の曲率半径を大きくして、本願発明のごとく、「該第1組の連結リンクよりも」「大きい」「曲率半径で該軸から離れて曲げられる第2組の連結リンク」とすることは当業者が適宜採用する選択事項にすぎないものである。 さらに、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-3)に記載されているように、湾曲部3の上下方向屈曲部において、可撓管2側から3以上の節輪の屈曲部の屈曲角度を順次大きくすることは、本件出願の優先権主張の日前に当業者によく知られた事項であり、また、上記引用刊行物Bの図7に記載されているように、同一角度で屈曲する複数の屈曲部を3種類設けることは、本件出願の優先権主張の日前に当業者によく知られた事項であることから、引用発明の内視鏡において、「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)」を構成する「節輪」の前に、上下方向屈曲部(A?G,a?g)よりも「さらに大きな同一角度で屈曲できる前側の複数の上下方向屈曲部」を構成する「節輪」を設けることは必要に応じて当業者が適宜なし得る選択的事項にすぎないものである。(相違点(イ)) (イウ-2)また、上記(イウ-1)で検討したように、引用発明において上下方向の2方向のみに湾曲させる構成を採用した際には、「小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)」を構成する「節輪」、及び「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)」を構成する「節輪」がそれぞれ、本願発明の「第1組の連結リンク」及び「第2組の連結リンク」に相当することから、引用発明の「操作ワイヤ14」が、本願発明のごとく「該第1組の連結リンクおよび該第2組の連結リンクに力を付与するための1組のガイドワイヤ」になることは明らかである。(相違点(ウ)) ・相違点(エ)及び相違点(オ)について (エオ-1)まず、相違点(オ)について検討する。 本件出願の明細書にはどのような構成により「該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にある」ようになっているのか明確な記載がないが、本件出願の明細書の段落【0013】、及び【0018】にはそれぞれ「図16にガイドワイヤ166が角度θ11だけ偏っていることを示す。角度θ11は1つの背骨と隣の背骨とでは変化し得ることが理解されるであろう。」、及び「図23及び図24から、また図2、図3、図16および図19?21から最もよくわかるように、軸106のまわりのガイドワイヤ166の角位置、あるいは1つの背骨の後面に対する前面の角回転(θ11の値)、およびセグメント108・112内に発生する変化するモーメントによって、それに沿ってセグメント108・112が変形するアーク106aは、アーク106aが外面であるような円錐174のような幾何体の表面上あるいは面内にある。」と記載されており、さらに、本件出願の図16には、ガイドワイヤを保持するスロット138、140の位置が図6の垂直線(紙面に対して上下方向の一点鎖線)の位置からθ11だけ偏っていると同時に第1、第2ピボット部134、136の位置が図6の位置から「θ11+90°」だけ変化していること、及び、上記引用刊行物Dの(3D-2)及び(3D-3)に記載されているように、各リンクは第1、第2ピボット部134、136の位置で回転自在であるから、ガイドワイヤを保持するスロットの位置を各リンクで変化させても、第1、第2ピボット部134、136の位置が各リンクの同じ位置で直線状に並んでいる場合には、直線状に並んだ各リンクの第1、第2ピボット部134、136の位置で、先端部に近いリンクから順次大きく回転させることのみであることを考慮すると、本願発明において、「該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にある」構成は、各連結リンクにおいて隣合うリンクの第1、第2ピボット部134、136の位置が図6の垂直線から異なる「θ11+90°」だけ偏っており、さらに、第2組の連結リンクは、第1組の連結リンクよりも小さいか若しくは大きい曲率半径で軸から離れて曲げられるように構成されていることにより得られるものと推認できる。 ところで、内視鏡において、隣どうしの節輪を回転自在に連結するリベットの位置を各節輪の中心と平行に伸びる直線に対して先端に行くほどねじれるように配置することにより、湾曲部を湾曲させたときに先端に行くほどらせん状に回転しながら上昇させることは上記引用刊行物Eの摘記事項(3E-2)?(3E-4)に記載されているように本件出願の優先権主張の日前に周知(他に、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-272321号公報の図8及び図9参照)であり、引用発明の内視鏡も湾曲部3がリベット12で隣り合う節輪11が回転自在に連結されて構成されていることから、引用発明Aの内視鏡の湾曲部において、周知例のごとく、隣合う節輪を回転自在に連結するリベットの位置を各節輪の中心と平行に伸びる直線に対して先端に行くほどねじれるように配置することにより、湾曲部を湾曲させたときに先端に行くほどらせん状に回転しながら上昇させることすることは当業者が容易になし得るものである。 そして、上記(イウ-1)及び(イウ-2)で検討したように、引用発明において上下方向の2方向のみに湾曲させる構成を採用した際には、「小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)」を構成する「節輪」、及び「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)」を構成する「節輪」がそれぞれ、本願発明の「第1組の連結リンク」及び「第2組の連結リンク」に相当するものであり、さらに、引用発明の湾曲部3は、大きな同一角度で屈曲できる複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)が前側の部分に配置され、小さな同一角度で屈曲する複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)が後側の部分に配置されていることから、周知例のごとく、隣合う節輪を回転自在に連結するリベットの位置を各節輪の中心と平行に伸びる直線に対して先端に行くほどねじれるように配置した場合には、複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)のほうが、複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)よりも大きな角度で屈曲することから、らせん状に回転しながら上昇する際のらせんの回転半径はM複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)のほうが、複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分より小さくなって上昇、すなわち、本願発明のごとく、「該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にある」ように上昇することは明らかである。 (エオ-2)次に相違点(エ)について検討する。 上記(エオ-1)で検討したように、引用発明において上下方向の2方向のみに湾曲させる構成を採用した際には、「小さな同一角度で屈曲する後側の部分の複数の上下方向屈曲部(H?N,h?nの部分)」を構成する「節輪」、及び「大きな同一角度で屈曲できる前側の部分の複数の上下方向屈曲部(A?G,a?g)」を構成する「節輪」がそれぞれ、本願発明発明の「第1組の連結リンク」及び「第2組の連結リンク」に相当することから、引用発明の「節輪11又はリベット12の内側に設けられ、操作ワイヤ14のガイドとなるリング状のガイド」が、本願発明のごとく「各個のリンクの円周部に配置し、該第1組の連結リンクおよび該第2組の連結リンクに沿って該1組のガイドワイヤを案内するための部材」となることは明らかである。 さらに、内視鏡の可撓管において、操作ワイヤのガイドとなるリング状のガイドを、節輪を回転させるためのリベットの位置に対して90°離れた位置に配置することも、各節ごとに異なる角度位置に配置することもともに本件出願の優先権主張の日前に周知(例えば、前者については、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-2)の段落【0016】の記載、又は、特開平11-19031号公報の3頁4欄38?41行、図9の記載参照、後者について、上記引用刊行物Dの摘記事項(3D-2)、(3D-3),図3の記載、又は特開平3-218723号公報の2頁左下欄15行?右下欄8行、第25図?第27図の記載参照)でり、リング状のガイドと節輪を回転させるためのリベットの位置関係として上記周知のうちのどちらを選択するかは当業者が当業者が適宜採用しうる選択的事項にすぎないものである。そして、リング状のガイドと節輪を回転させるためのリベットの位置関係として、リング状のガイドをリベットの位置に対して90°離れた位置に配置する構成を選択した際には、リベットの位置は、上記(エオ-1)で検討したように、各節輪の中心と平行に伸びる直線に対して先端に行くほどねじれるように配置する構成であるから、引用発明のリング状ガイドは、各節輪の中心と平行に伸びる直線に対してリベットより90°離れた位置で先端に行くほどねじれるように配置される、すなわち、発明のごとく「該ガイドワイヤを案内する隣接する二つの連結リンクの該円周部上の位置が各個のリンクについて異なるように構成した部材」となることは明らかである。 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。 なお、請求人は請求の理由において、「本願発明と引用発明とを比較すると、引用文献1?7は、いずれも、本願の構成要件である「第1組の連結リンクと第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にある」点を開示していなく、又、そのような示唆もない。確かに、引用文献6、7には、湾曲部がねじれるように湾曲する点が開示されている。しかしながら、引用文献6又は7の構成は、引用文献6の段落0021及び図9、10に示されているように、隣接する節輪のアームの位置を少しづつずらすことで、湾曲部がねじれるように構成している。これに対して、本願の構成は、ガイドワイヤを案内する隣接する二つの連結リンクの該円周部上の位置が各個のリンクについて異なるように構成したものであるから、本願と引用文献とは、湾曲部がねじれるように湾曲する点で一致するものの、湾曲部がねじれるように湾曲するための構成が異なるから、引用文献6、7も本願の発明の動機になり得ない。」旨の主張している(平成20年10月20日付け手続補正書の5頁10行の「(c)本願発明と引用発明との対比)」の項を参照)。 しかしながら、本願の構成要件である「第1組の連結リンクと第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にある」は、上記(エオ-1)で検討したように、各連結リンクにおいて隣合うリンクの第1、第2ピボット部134、136の位置が図6の垂直線から異なる「θ11+90°」だけ偏っており、さらに、第2組の連結リンクは、第1組の連結リンクよりも小さいか若しくは大きい曲率半径で軸から離れて曲げられるように構成されていることにより得られるものであって、単に、「ガイドワイヤを案内する隣接する二つの連結リンクの該円周部上の位置が各個のリンクについて異なるように構成した」ことから得られるものではない。 そして、「第1組の連結リンクと第2組の連結リンクとを最大に湾曲させた時、該第1組の連結リンクと該第2組の連結リンクとは、円錐体の表面上にある」点、及び「「ガイドワイヤを案内する隣接する二つの連結リンクの該円周部上の位置が各個のリンクについて異なるように構成した」点については、上記(エオ-1)及び(エオ-2)で検討したとおりであるから、請求人の主張は採用できないものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-22 |
結審通知日 | 2010-01-26 |
審決日 | 2010-02-23 |
出願番号 | 特願2003-153787(P2003-153787) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小田倉 直人、安田 明央 |
特許庁審判長 |
後藤 時男 |
特許庁審判官 |
居島 一仁 秋月 美紀子 |
発明の名称 | 内視鏡 |
代理人 | 斉藤 武彦 |