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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1219588
審判番号 不服2008-20570  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-11 
確定日 2010-07-05 
事件の表示 特願2001- 87880「寄付処理装置、寄付処理方法及び寄付処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月14日出願公開、特開2001-344530〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯

本件出願は、平成13年 3月26日(優先権主張平成12年 3月30日)の出願であって、 平成17年 9月21日付けで手続補正書が提出され、平成20年 4月 3日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年 6月10日付けで手続補正書が提出されたが、同年 7月 1日付けで拒絶査定され、これに対して同年 8月11日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に、同年 8月28日付けで手続補正書が提出され、平成21年11月10日付けで審尋が通知され、これに対して平成22年 1月 8日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成20年 8月28日付けでした手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成20年 8月28日付けでした手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容について

平成20年 6月10日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲は、平成20年 8月28日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)により、以下のとおり補正された。


<<本件補正前の特許請求の範囲>>

「【請求項1】
コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給されたコンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信手段と、
上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示する表示手段と、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、
上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ送信する送信手段と
を具え、
上記寄付データは、上記コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータである
寄付処理装置。
【請求項2】 上記寄付データ生成手段は、上記寄付ボタンが選択されたことに応じて複数種類の寄付金額を示す寄付金額選択画面を上記表示手段に表示し、当該寄付金額選択画面の中で選択された上記金額に対応する上記寄付データを生成する
請求項1に記載の寄付処理装置。
【請求項3】
上記寄付データ生成手段は、上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対応する寄付金額入力欄に対して直接入力された金額の上記寄付データを生成する
請求項1に記載の寄付処理装置。
【請求項4】
上記寄付データ生成手段は、上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対応する所定の寄付金額入力欄に対して直接入力された金額をユーザの操作により所定最小単位額以上で変更し、当該変更後の金額の上記寄付データを生成する
請求項1に記載の寄付処理装置。
【請求項5】
上記寄付処理装置は、
上記寄付データの上記金額について課金処理を実行するため、クレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して上記表示手段に表示する入力画面生成手段と、
を具え、
上記送信手段は、上記寄付データに加えて、上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ送信する
請求項1に記載の寄付処理装置。
【請求項6】
コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給されたコンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信ステップと、
上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示手段に対して表示する表示ステップと、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを寄付データ生成手段により生成する寄付データ生成ステップと、
上記寄付データ生成ステップで生成された上記寄付データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ所定の送信手段により送信する送信ステップと
を有し、
上記寄付データは、上記コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータである
寄付処理方法。
【請求項7】
コンピュータに対し、
コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給されたコンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信ステップと、
上記ネットワーク及びネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示する表示ステップと、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを生成する寄付データ生成ステップと
を有し、
上記寄付データは、上記コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータである
プログラムを実行させるプログラム格納媒体。
【請求項8】
供給したコンテンツデータに対する評価としてユーザが任意に決定した金額の寄付データを当該ユーザの端末装置からネットワークを介して受信する寄付データ受信手段と、
上記寄付データと所定の換算率とに基づいて換算値を算出する演算処理手段と、
上記換算値を少なくとも上記コンテンツデータの制作者に対応付けて記憶する記憶手段と
を具える寄付受付装置。
【請求項9】
上記寄付データ受付手段は、所定の最小単位額以上でなる上記金額の上記寄付データについてのみ受信する
請求項8に記載の寄付受付装置。
【請求項10】
供給したコンテンツデータに対する評価としてユーザが任意に決定した金額の寄付データを所定の寄付データ受信手段により当該ユーザの端末装置からネットワークを介して受信する寄付データ受信ステップと、
上記寄付データと所定の換算率とに基づいて所定の演算処理手段により換算値を算出する演算処理ステップと、
上記換算値を少なくとも上記コンテンツデータの制作者に対応付けて所定の記憶手段に記憶する記憶ステップと
を有する寄付受付方法。
【請求項11】
コンピュータに対し、
供給したコンテンツデータに対する評価としてユーザが任意に決定した金額の寄付データを当該ユーザの端末装置からネットワークを介して受信する寄付データ受信ステップと、
上記寄付データと所定の換算率とに基づいて換算値を算出する演算処理ステップと、
上記換算値を少なくとも上記コンテンツデータの制作者に対応付けて記憶する記憶ステップと
を有するプログラムを実行させるプログラム格納媒体。
【請求項12】
要求に応じてコンテンツデータを提供するコンテンツ提供装置と、
上記コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給された上記コンテンツデータを受け、当該コンテンツデータの制作者に対して寄付を行なう寄付処理装置と
によって構成される寄付処理システムにおいて、
上記寄付処理装置は、
上記コンテンツ提供装置から上記ネットワークを介して供給された上記コンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信手段と、
上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示する表示手段と、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、
上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ送信する送信手段と
を具え、
上記寄付データは、上記コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータであり、
上記コンテンツ提供装置は、
上記供給したコンテンツデータに対する評価としてユーザが任意に決定した金額の寄付データを、当該ユーザの端末装置から上記ネットワークを介して受信する寄付データ受信手段と、
上記寄付データと所定の換算率とに基づいて換算値を算出する演算処理手段と、
上記換算値を少なくとも上記コンテンツデータの制作者に対応付けて記憶する記憶手段と
を具える寄付処理システム。」

<<本件補正後の特許請求の範囲>>

「【請求項1】
コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給されたコンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信手段と、
上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示する表示手段と、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、
上記寄付データの上記金額について課金処理を実行する際、上記コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合、クレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して上記表示手段に表示する入力画面生成手段と、
上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データに加えて、上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ送信する送信手段とを具え、
上記寄付データは、上記コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータである
寄付処理装置。
【請求項2】
上記寄付データ生成手段は、上記寄付ボタンが選択されたことに応じて複数種類の寄付金額を示す寄付金額選択画面を上記表示手段に表示し、当該寄付金額選択画面の中で選択された上記金額に対応する上記寄付データを生成する
請求項1に記載の寄付処理装置。
【請求項3】
上記寄付データ生成手段は、上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対応する寄付金額入力欄に対して直接入力された金額の上記寄付データを生成する
請求項1に記載の寄付処理装置。
【請求項4】
上記寄付データ生成手段は、上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対応する所定の寄付金額入力欄に対して直接入力された金額をユーザの操作により所定最小単位額以上で変更し、当該変更後の金額の上記寄付データを生成する
請求項1に記載の寄付処理装置。
【請求項5】
コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給されたコンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信ステップと、
上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示手段に対して表示する表示ステップと、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを寄付データ生成手段により生成する寄付データ生成ステップと、
上記寄付データの上記金額について課金処理を実行する際、上記コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合、入力画面生成手段によりクレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して上記表示手段に表示する入力画面生成ステップと、
上記寄付データ生成ステップで生成された上記寄付データに加えて、上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ所定の送信手段により送信する送信ステップと
を有し、
上記寄付データは、上記コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータである
寄付処理方法。
【請求項6】
要求に応じてコンテンツデータを提供するコンテンツ提供装置と、
上記コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給された上記コンテンツデータを受け、当該コンテンツデータの制作者に対して寄付を行なう寄付処理装置と
によって構成される寄付処理システムにおいて、
上記寄付処理装置は、
上記コンテンツ提供装置から上記ネットワークを介して供給された上記コンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信手段と、
上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示する表示手段と、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、
上記寄付データの上記金額について課金処理を実行する際、上記コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合、クレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して上記表示手段に表示する入力画面生成手段と、
上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データに加えて、上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ送信する送信手段とを具え、
上記寄付データは、上記コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータであり、
上記コンテンツ提供装置は、
上記供給したコンテンツデータに対する評価としてユーザが任意に決定した上記金額の寄付データを、当該ユーザの端末装置から上記ネットワークを介して受信する寄付データ受信手段と、
上記寄付データと所定の換算率とに基づいて換算値を算出する演算処理手段と、
上記換算値を少なくとも上記コンテンツデータの制作者に対応付けて記憶する記憶手段と
を具える寄付処理システム。」

(2)本件補正前後の請求項の対応関係について

本件補正前の請求項1乃至5に係る発明は、「寄付処理装置」に係る発明であり、本件補正前の請求項6に係る発明は、「寄付処理方法」に係る発明であり、本件補正前の請求項7、11に係る発明は、「プログラム格納媒体」に係る発明であり、本件補正前の請求項8、9に係る発明は、「寄付受付装置」に係る発明であり、本件補正前の請求項10に係る発明は、「寄付受付方法」に係る発明であり、本件補正前の請求項12に係る発明は、「寄付処理システム」に係る発明である。

一方、本件補正後の請求項1乃至4に係る発明は、「寄付処理装置」に係る発明であり、本件補正後の請求項5に係る発明は、「寄付処理方法」に係る発明であり、本件補正後の請求項6に係る発明は、「寄付処理システム」に係る発明である。

そこで、本件補正前後の各請求項の記載を対比して検討すると、本件補正後の請求項1の「寄付処理装置」に係る発明は、本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項5に係る発明に対応するものであり、本件補正後の請求項1を引用する請求項2乃至4の「寄付処理装置」に係る発明は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2乃至4の「寄付処理装置」に係る発明に対応するものである。

また、本件補正後の請求項5の「寄付処理方法」に係る発明は、本件補正前の請求項6の「寄付処理方法」に係る発明に対応するものである。

また、本件補正後の請求項6の「寄付処理システム」に係る発明は、本件補正前の請求項12の「寄付処理システム」に係る発明に対応するものである。

(3)補正の目的

本件補正後の請求項1の「寄付処理装置」は、本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項5の「寄付処理装置」に係る発明において、「クレジットカード番号を入力させる」場合を、「上記コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合」に限定するものであって、このような限定によってもなお、本件補正前後の請求項1に係る発明が解決しようとする課題である、コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合においても、寄付データに対する課金処理を実行する際に、ユーザに対して、クレジットカード番号を入力させるだけで、煩雑な登録処理を行わせる必要をなくすとの課題は同一であるから、本件補正後の請求項1に係る発明は、限定的減縮を目的とするものである。

しかしながら、本件補正後の請求項2乃至4の「寄付処理装置」は、本件補正前の請求項1を引用する本件補正前の請求項2乃至4に係る発明において、本件補正前の請求項5の内容である「上記寄付データの上記金額について課金処理を実行する際、上記コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合、クレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して上記表示手段に表示する入力画面生成手段」との構成及び送信手段が「上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データに加えて、上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データ」を送信する構成を新たに付加したものであり、当該構成を新たに付加したことにより、コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合においても、寄付データに対する課金処理を実行する際に、ユーザに対して、クレジットカード番号を入力させるだけで、煩雑な登録処理を行わせる必要をなくすとの新たな課題を解決するものであるから、本件補正により、本件補正前後の請求項2乃至4に係る発明が解決しようとする課題は同一のものではない。

また、本件補正後の請求項5の「寄付処理方法」に係る発明及び本件補正後の請求項6の「寄付処理システム」に係る発明についても同様に、構成を新たに付加したことにより、コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合においても、寄付データに対する課金処理を実行する際に、ユーザに対して、クレジットカード番号を入力させるだけで、煩雑な登録処理を行わせる必要をなくすとの新たな課題を解決するものであるから、本件補正により、本件補正前の請求項6及び12と本件補正後の請求項5及び6に係る発明が解決しようとする課題は同一のものではない。

また、本件補正後の請求項2乃至6に係る発明に係る補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。

したがって、平成20年 8月28日付けの上記手続補正により補正された本件補正後の請求項2乃至6に係る発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(4)独立特許要件

なお、仮に、本件補正により、本件補正後の請求項2乃至6に係る発明が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するものであったとすると、本件補正後の請求項1に係る発明は、同法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について一応検討する。

(4-1)本願補正発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成20年 8月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記したとおりのものである。

(4-2)引用文献に記載の発明

(引用文献1)

原査定の拒絶の理由に引用された「ASCII24,ネットの大道芸人の帽子にちゃりんとお金を入れよう!”投げ銭システム”が実用化に向けいよいよ始動,インターネット,株式会社アスキーメディアワークス,2000年 3月24日,URL,http://ascii24.com/news/i/topi/article/2000/03/24/607927-000.html」(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の内容が記載されている。

(1a)「22日、投げ銭システム推進準備委員会は、投げ銭システムを利用したフリーマーケットをオープンした。

”投げ銭システム”とは、大道芸人の帽子や空き缶に小銭を投げ入れるように、ユーザー側で気に入ったウェブや優れたコンテンツに対して、いくらかのお金を支払えるようにしたシステム。フリーマーケットに登録されているコンテンツは、20円、50円、100円、200円といったボタンが配置してあり、それをクリックすることでコンテンツに対して対価(投げ銭)を支払えるようにしてある。

・・・(「投げ銭フリーマーケット」の図を省略)・・・

投げ銭システムを利用したフリーマーケット

・・・(「投げ銭のボタン」の図を省略)・・・

投げ銭のボタンの拡大図。20円、50円、100円、200円のボタンが並ぶ。

実験で使われている電子決済システムは、インターネット上の少額決済システム”ミリセント”*。ネットコインセンターで”ネットコイン”を購入し、そのコインを”ウォレット”という財布ソフトで管理する。まず、ネット上からミリセントに登録したあと、フリーマーケット上の投げ銭システムに戻る。コンテンツを見て、良いと思ったらコインを投げ入れる(ボタンをクリック)という手順になる。

*ミリセント:コンパックコンピュータが開発した電子決済システム。0.1円単位から、1円、10円といった少額決済が可能なため、デジタルコンテンツの購入や販売に適している。」

(1b)「・・・(「コラム」の図を省略)・・・

高野孟氏のコラム。右下に投げ銭のボタンがある」

(1c)「実際に、4月22日から始まるNPOの地球環境活動のイベント”アースディ2000”への募金にも、このシステムが使われる予定だという。」

したがって、上記の全ての摘記事項を参酌すると、引用文献1には、以下の構成が記載されているといえる。

(ア)上記摘記事項(1a)の「”投げ銭システム”とは、大道芸人の帽子や空き缶に小銭を投げ入れるように、ユーザー側で気に入ったウェブや優れたコンテンツに対して、いくらかのお金を支払えるようにしたシステム。・・・(中略)・・・実験で使われている電子決済システムは、インターネット上の少額決済システム”ミリセント”*。ネットコインセンターで”ネットコイン”を購入し、そのコインを”ウォレット”という財布ソフトで管理する。まず、ネット上からミリセントに登録したあと、フリーマーケット上の投げ銭システムに戻る。コンテンツを見て、良いと思ったらコインを投げ入れる(ボタンをクリック)という手順になる。」の記載によれば、当該「ユーザー側」の装置は、当該「コンテンツを見」るために、当該「投げ銭システム」から当該「インターネット」を介して供給された当該「コンテンツ」を受信する手段を備えるものと解することができる、

したがって、上記摘記事項(1a)によれば、引用文献1には、「ユーザー側の装置が、投げ銭システムからインターネットを介して供給されたコンテンツを受信する手段を備える」ことが記載されているといえる。

(イ)上記摘記事項(1a)の「コンテンツを見て、良いと思ったらコインを投げ入れる(ボタンをクリック)という手順になる。・・・(中略)・・・投げ銭のボタンの拡大図。20円、50円、100円、200円のボタンが並ぶ。」の記載及び上記摘記事項(1b)の「高野孟氏のコラム。右下に投げ銭のボタンがある」の記載によれば、上記(ア)の「ユーザー側の装置」は、上記(ア)の「インターネットを介して」受信した「コンテンツ」に基づき、当該「20円、50円、100円、200円」からなる所定の「投げ銭のボタン」が設けられた当該「コンテンツ」の画面である当該「右下に投げ銭のボタン」がある当該「コラム」を表示する手段を備えるものと解することができる。

したがって、上記(ア)、上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「ユーザー側の装置が、上記インターネットを介して受信した上記コンテンツに基づき、所定の投げ銭のボタンが設けられたコンテンツの画面を表示する手段を備える」ことが記載されているといえる。

(ウ)上記摘記事項(1a)の「”投げ銭システム”とは、大道芸人の帽子や空き缶に小銭を投げ入れるように、ユーザー側で気に入ったウェブや優れたコンテンツに対して、いくらかのお金を支払えるようにしたシステム。フリーマーケットに登録されているコンテンツは、20円、50円、100円、200円といったボタンが配置してあり、それをクリックすることでコンテンツに対して対価(投げ銭)を支払えるようにしてある。」の記載によれば、上記(ア)の「ユーザー側の装置」は、上記(イ)の「画面」の中から上記(イ)の「投げ銭のボタン」である当該「ボタン」が当該「クリック」されたとき、当該「投げ銭のボタン」に対して予め対応付けられている当該「対価」を「支払えるように」する手段を備えるものと解することができる。

したがって、上記(ア)、上記(イ)及び上記摘記事項(1a)によれば、引用文献1には、「ユーザー側の装置が、上記画面の中から上記投げ銭のボタンがクリックされたとき、当該投げ銭のボタンに対して予め対応付けられている対価を支払えるようにする手段を備える」ことが記載されているといえる。

上記(ア)乃至(ウ)を考慮して、上記全ての摘記事項の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。

「 投げ銭システムからインターネットを介して供給されたコンテンツを受信する手段と、
上記インターネットを介して受信した上記コンテンツに基づき、所定の投げ銭のボタンが設けられたコンテンツの画面を表示する手段と、
上記画面の中から上記投げ銭のボタンがクリックされたとき、当該投げ銭のボタンに対して予め対応付けられている対価を支払えるようにする手段とを備えるユーザー側の装置。」

(4-3)本願補正発明と引用文献1発明との対比

本願補正発明と引用文献1発明を対比する。

引用文献1発明の「投げ銭システムからインターネットを介して供給されたコンテンツを受信する手段」は、当該「投げ銭システム」が当該「コンテンツ」を提供する装置であり、当該「インターネット」を介して「受信する手段」は、通常ネットワークインタフェースを備えているから、本願補正発明の「コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給されたコンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信手段」に相当する。

また、引用文献1発明の「上記インターネットを介して受信した上記コンテンツに基づき、所定の投げ銭のボタンが設けられたコンテンツの画面を表示する手段」は、当該「投げ銭のボタン」が上記摘記事項(1c)に記載のように「募金」のためにも使用できるものであるから、本願補正発明の「上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示する表示手段」に相当する。

また、引用文献1発明の「ユーザー側の装置」は、上記摘記事項(1c)に記載のように募金のための処理も行えるものであるから、本願補正発明の「寄付処理装置」に相当する。

そして、本願補正発明の「上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、上記寄付データの上記金額について課金処理を実行する際、上記コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合、クレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して上記表示手段に表示する入力画面生成手段と、上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データに加えて、上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データを上記ネットワークインタフェース及び上記ネットワークを介して上記コンテンツ提供装置へ送信する送信手段」と、引用文献1発明の「上記画面の中から上記投げ銭のボタンがクリックされたとき、当該投げ銭のボタンに対して予め対応付けられている対価を支払えるようにする手段」とは、後記の点で相違するものの、共に、「上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額を寄付する手段」という点で共通する。

したがって、両者は、

(一致点)

「 コンテンツ提供装置からネットワークを介して供給されたコンテンツデータを、ネットワークインタフェースを介して受信する受信手段と、
上記ネットワーク及び上記ネットワークインタフェースを介して受信した上記コンテンツデータに基づき所定の寄付ボタンが設けられたコンテンツ表示画面を表示する表示手段と、
上記コンテンツ表示画面の中から上記寄付ボタンが選択されたとき、当該寄付ボタンに対して予め対応付けられている金額を寄付する手段とを備えた寄付処理装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)

本願補正発明は、金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、寄付データの金額について課金処理を実行する際、上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データをネットワークインタフェース及びネットワークを介してコンテンツ提供装置へ送信する送信手段を備え、そのため、
当該寄付データが、コンテンツ提供装置において所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータであるのに対し、

引用文献1発明は、寄付ボタンが選択されたときに金額を寄付する手段を備えるものの、その情報処理を行うための具体化手段が明記されておらず、そのため、
上記のような寄付データを備えていない点。

(相違点2)

本願補正発明は、コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合に、クレジットカードによる課金処理を実行し、そのため、
クレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して表示手段に表示する入力画面生成手段を備え、
上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データも送信するのに対し、

引用文献1発明は、コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合の課金処理について記載がなく、そのため、
上記のような構成でない点。

(4-4)相違点についての判断

(相違点1について)

クライアントにおいてコンテンツのボタンを選択したことに応じて、当該ボタンに係わる金額を示す数値データを生成し、当該数値データを当該コンテンツのサーバーに送信して課金処理を行うことは、周知技術である。

してみると、引用文献1発明において、上記周知技術を適用し、寄付ボタンが選択されたときに金額を寄付する具体化手段として、金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、寄付データの金額について課金処理を実行する際、上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データをネットワークインタフェース及びネットワークを介してコンテンツ提供装置へ送信する送信手段を備えることは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

また、コンテンツの配信者が、コンテンツの制作者や出演者に対して収益の一部を還元することは普通のことであり、また、収益還元の方法として、収益に所定の換算率を乗じてポイントを算出し、そのポイントを与えることも周知技術である。

してみると、引用文献1発明において、上記周知技術を適用し、寄付ボタンが選択されたとき、金額を寄付する具体化手段として、金額の寄付データを生成する寄付データ生成手段と、寄付データの金額について課金処理を実行する際、上記寄付データ生成手段によって生成された上記寄付データをネットワークインタフェース及びネットワークを介してコンテンツ提供装置へ送信する送信手段を備え、そのため、当該寄付データを、コンテンツ提供装置において、所定の換算率に基づいて算出される換算値を求めるための基礎となるデータとすることは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2について)

例えば、特開平11-338912号公報(段落【0023】及び段落【0032】)にみられるように、支払いに際してサーバーへの登録の有無を判断し、登録が無い場合にはクレジットにより支払いを行うことは、周知事項である。

してみると、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合に、クレジットカードによる課金処理を実行することは、当業者であれば適宜になし得るものである。

そして、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、コンテンツ提供装置に予め登録されていない場合に、クレジットカードによる課金処理を実行するのであれば、そのため、クレジットカード番号を入力させるための入力画面を生成して表示手段に表示する入力画面生成手段を備え、上記入力画面に対して入力された上記クレジットカード番号のクレジットカード番号データも送信することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明、周知技術及び周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も,引用文献1発明、周知技術及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、引用文献1発明、周知技術及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび

したがって、平成20年 8月28日付けの上記手続補正により補正された本件補正後の請求項2乃至6に係る発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

また、仮に、上記請求項2乃至6に係る発明が上記特許法第17条の2第4項の規定に適合するものであったとしても、平成20年 8月28日付けの上記手続補正により補正された本件補正後の請求項1に係る発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願の請求項1に係る発明

上記の平成20年 8月28日付けでした手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記の平成20年 6月10日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記したとおりのものである。

(2)引用文献に記載の発明

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、これらの記載事項及び引用文献1発明は、上記2.(4)(4-2)「引用文献に記載の発明」の項に記載したとおりである。

(3)対比

本願発明と上記引用文献1発明とを対比すると、本願発明は、上記本願補正発明において、上記2.(3)の「補正の目的」の項において検討した特許請求の範囲の限定を解除するものであることから、上記2.(4)(4-3)「本願補正発明と引用文献1発明との対比」の項において検討した相違点以外の相違点は存在しない。

(4)判断

してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する上記本願補正発明が、上記2.(4)「独立特許要件」の項に記載したとおり、引用文献1発明、周知技術及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1発明、周知技術及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび

上記のとおり、本願の請求項1に係る発明が、引用文献1発明、周知技術及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-21 
結審通知日 2010-04-22 
審決日 2010-05-21 
出願番号 特願2001-87880(P2001-87880)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮下 浩次  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 田代 吉成
山本 章裕
発明の名称 寄付処理装置、寄付処理方法及び寄付処理システム  
代理人 田辺 恵基  

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