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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1219624
審判番号 不服2007-13545  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-10 
確定日 2010-07-08 
事件の表示 平成10年特許願第 19970号「磁気テープの記録及び/又は再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月13日出願公開、特開平10-275379〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求にかかる特許願(以下、「本願」という)は、平成10年1月30日(優先権主張 平成9年1月31日)に出願されたものであって、平成18年10月5日付けの拒絶理由通知に対して同年12月11日付けで手続補正がされ、平成19年1月4日付けの最後の拒絶理由通知に対して、同年3月8日付けで手続補正がされたが、同年3月29日付けで前記平成19年3月8日付けの手続補正が却下されると共に、同日付けで、本願は拒絶すべきものである旨の査定がなされ、これに対して、平成19年5月10日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月8日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成21年10月9日付けで前置報告書を利用した審尋をしたが、回答がなかった。


II.平成19年6月8日付け手続補正についての却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成19年6月8日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.本件補正について(補正の内容)
平成19年6月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであるが、そのうち特許請求の範囲については、

1-1.補正前(平成18年12月11日付け手続補正により補正されたもの)に、
「【請求項1】
磁気テープを走行させるキャプスタンモータと、
上記磁気テープを送り出す供給側リールと、
上記磁気テープを巻き取る巻き取り側リールと、
上記キャプスタンモータの回転速度を制御する回転速度制御手段と、
上記キャプスタンモータの駆動力を上記巻き取り側リールに伝達する伝達手段と、
上記回転速度制御手段に供給する所定の周期と所定のデューティを有するPWM信号と、
上記巻き取り側リールに巻回されている上記磁気テープの径を検出するテープ径検出手段と、
上記検出手段によって検出された上記磁気テープの径に基づいて、周期とデューティを有する上記PWM信号を生成し、上記回転速度制御手段に供給することによって上記キャプスタンモータの回転速度を制御する制御手段とを備えること
を特徴とする磁気テープの記録及び/又は再生装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記キャプスタンモータの回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、上記回転速度検出手段による回転速度が所定値以下になった場合、上記キャプスタンモータへの供給を最低駆動電圧に相当する上記PWM信号とする
ことを特徴とする請求項1記載の磁気テープの記録及び/又は再生装置。」
とあったものを、

1-2.補正後、
「【請求項1】
磁気テープを走行させるキャプスタンモータと、
上記磁気テープを送り出す供給側リールと、
上記磁気テープを巻き取る巻き取り側リールと、
所定の周期とデューティを有するPWM信号を上記キャプスタンモータに供給することによって、当該キャプスタンモータの回転速度を制御する回転速度制御手段と、
上記キャプスタンモータの駆動力を上記巻き取り側リールに伝達する伝達手段と、
上記巻き取り側リールに巻回されている上記磁気テープの径を算出するテープ径算出手段と、 上記磁気テープの走行が停止または減速した場合に、上記巻き取り側テープ径算出手段によって算出された巻き取り側上記磁気テープの径に基づいた周期とデューティを有する上記PWM信号を生成し、当該PWM信号を上記回転速度制御手段に供給することによって上記キャプスタンモータの回転速度を制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、上記回転速度制御手段によって上記キャプスタンモータの回転速度が所定値以下になった場合、上記キャプスタンモータへ供給する上記PWM信号を停止するか又は上記キャプスタンモータを駆動するための最低駆動電圧を供給することを特徴とする磁気テープの記録及び/又は再生装置。」
とするものである。

2.本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1を削除して、補正前の請求項2を独立して請求項1としたうえで、補正前の請求項に係る発明が備える
「キャプスタンモータの回転速度を制御する回転速度制御手段」、
「上記検出手段によって検出された上記磁気テープの径に基づいて、周期とデューティを有する上記PWM信号を生成し、上記回転速度制御手段に供給することによって上記キャプスタンモータの回転速度を制御する制御手段」
について、それぞれ、
「所定の周期とデューティを有するPWM信号を上記キャプスタンモータに供給することによって、当該キャプスタンモータの回転速度を制御する回転速度制御手段」、
「上記磁気テープの走行が停止または減速した場合に、上記巻き取り側テープ径算出手段によって算出された巻き取り側上記磁気テープの径に基づいた周期とデューティを有する上記PWM信号を生成し、当該PWM信号を上記回転速度制御手段に供給することによって上記キャプスタンモータの回転速度を制御する制御手段とを備え」
として、下線部のように変更または付加するものである。

本件補正は、更に、
補正前、請求項2に係る発明が備える制御手段の制御態様を、
「上記制御手段は、上記キャプスタンモータの回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、上記回転速度検出手段による回転速度が所定値以下になった場合、上記キャプスタンモータへの供給を最低駆動電圧に相当する上記PWM信号とする」
としていたものを、
「上記制御手段は、上記回転速度制御手段によって上記キャプスタンモータの回転速度が所定値以下になった場合、上記キャプスタンモータへ供給する上記PWM信号を停止するか又は上記キャプスタンモータを駆動するための最低駆動電圧を供給する」
として、キャプスタンモータの回転速度が所定値以下になった場合の制御態様を、下線部のように付加又は変更するものであるので、この点について検討する。
補正後に付加された、
「上記キャプスタンモータへ供給する上記PWM信号を停止する」なる制御態様が、補正前、上記キャプスタンモータへの供給を「最低駆動電圧に相当する上記PWM信号とする」としていた制御態様と異なっていることは明らかである。
又、キャプスタンモータの回転速度が所定値以下になった場合に、キャプスタンモータに供給される駆動信号の信号状態について、補正前の請求項2で、「最低駆動電圧に相当する上記PWM信号とする」としているのに対して、補正後では、単に「最低駆動電圧を供給する」と特定され、補正前にあった、「最低駆動電圧」についての「上記PWM信号に相当する」との限定が削除された。
すると、補正後の発明では、補正前の「最低駆動電圧に相当する上記PWM信号とする」との特定から「上記PWM信号に相当する」との特定を削除した「最低駆動電圧を供給する」ことに加え、新たに「PWM信号を停止する」なる制御態様が選択肢として加えられたことが明らかであるから、この点において、補正前の請求項に係る発明が備える制御手段の制御態様、及び、キャプスタンモータに供給される駆動信号の信号状態についての要件を変更及び拡張するものであり、少なくとも、補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものとすることができない。
又、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでないことも明らかである。

結局、本件補正は、その目的が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれかに該当するものとすることができない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成19年6月8日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る各発明は、平成18年12月11日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1は、前記、II.1.1-1.に補正前の請求項1として掲げたとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開平5-89647号公報(平成5年4月9日公開、以下「刊行物」という。)には、VTR等のテープを用いた磁気記録再生装置の早送り(FF)または巻戻し(REW)時のテープ速度制御回路に関する発明について、以下の記載がある。

2-1.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 リールを駆動させる駆動モータと、
該リールの回転速度に周波数が比例するリールパルスを発する回転検出器と、
該リールパルスより検出される該リールの回転周期を基に該リールにおけるテープ巻き径データを算出する巻き径算出手段と、
前記駆動モータの回転速度に周波数が比例するFGパルスを発するFG検出器と、
該巻き径データを用いてFGパルスの周期データを設定する周期データ設定手段と、
早送りまたは巻戻し時に、該周期データに前記FG検出器にて得られるFGパルスの周期が一致するように該駆動モータの速度制御を実行する速度制御手段を備えるテープ速度制御回路。」

2-2.「【0006】
【実施例】以下、図面に従い本発明の一実施例を説明する。図1は本実施例の回路ブロック図であり、3、4は供給(S側)及び巻取り(T側)リール1、2の回転状態を磁気的に検出して、夫々のリールの回転数に比例した周波数のリールパルスを残量計算ブロックに供給する回転検出器であり、これらのリールパルスはAMP5、6を経て残量算出回路7に供給される。
【0007】この残量算出回路は、図2の様な構成になっている。この図2で、9、10は、テープが速度V0で定速走行しているときのS側及びT側リールパルスとクロック発生回路11からの基準クロックから、S側及びT側リールの回転周期Ts、Ttを算出する周期計測器であり、具体的には、各リールの1回転毎に夫々所定個発生する各リールパルスの1周期内に含まれる一定周期の基準クロックの個数をカウントすることにより、各リールの回転周期Ts、Ttが求まる。
【0008】こうして測定された回転周期は、演算器12、13に入力されて夫々2乗され、更にこの演算回路12、13出力は、加算回路14及びテープ残量時間演算器16に入力され、加算回路14では回転周期Ts、Ttの2乗の和が算出される。ところで、S側及びT側リールのリール巻き径をRs、Rtとし、更にハブ面積を含む総面積をCとすると数1が成り立ち、更にRs=V0Ts/2π、Rt=V0Tt/2πが成り立つので、数1は数2と変形できる。
【0009】
【数1】
C=πRs^(2)+πRt^(2)
【0010】
【数2】




【0011】ここで、Cはテープ種別(T-60、T-90、T-120等)の各々に固有の値であるため、2乗の和が算出されれば、テープ種別判別回路15にて2乗の和を数2に代入して予め内部のメモリに記憶されている判別データと比較し、テープ種別を判別する。」

2-3.「【0014】また、テープを走行速度V0で送ったとき、リールの回転周期とテープの巻き径には、数4の関係が成り立ち、この数4の一方はRt=TtV0/2πに変形でき、これに基いて巻き径算出回路18にてT側リールの巻き径Rtが算出され、後段のモータ設定速度データ算出回路8に供給される。
【0015】
【数4】



【0016】ところで、FFまたはREW時のT側リール台とこれを駆動するモータ30との減速比をKとすると、T側リール2の回転速度ω1とこれを駆動するモータ30の回転速度ω2との関係はω1=Kω2となる。
【0017】また、T側リール2が回転速度ω1で回転しているときにテープ巻き径Rtであれば、その時のテープ巻取りの走行速度Vは、V=Rtω1=RtKω2となる。
【0018】更にモータ30の回転検出信号(FGパルス)が、モータ30の1回転につきN個のパルスを出力する様に設定されていれば、モータが回転速度ω2で回転している時のFGパルスの周波数fはf=Nω2となる。従って、その周期Tgは数5のようになる。
【0019】
【数5】



【0020】一方、VTRのデジタルサーボにおけるモータ30の速度制御は、図3のようにモータ30のFGパルスの1つのエッジから仮想的なスロープを設定し、次のFGパルスの立ち上がりエッジで、このスロープをサンプリングすることによって、F/V変換を行っている。ここで、このスロープは、モータの利得を決定する期間Tpと、設定周期を決定するための期間Tdにより構成され、設定周期TはT=Td+Tp/2のように決定される。
【0021】以上のことから、ディジタルサーボにおいては、設定周期Tとしてモータ設定速度データ算出回路8にて上述のように導出された周期Tgを選択することにより、FFまたはREW時に常にテープ速度を一定にする為の期間Tdのデータのプリセットが可能になる。即ち、FFまたはREW時のテープ速度をV1にすることを所望すれば数5を数6と変形できる。
【0022】
【数6】



【0023】上述のように、期間Tdのプリセット値の設定は、モータ設定速度データ算出回路8にて残量算出時に得られたT側リール2のテープ巻き径Rtのデータを得て、数5を基に為され、サーボブロックに送出される。
【0024】T側リール台を駆動するモータ30には、回転状態を検出する回転検出器31が配され、これによりモータ30の回転速度に周波数が比例するFGパルスがサーボブロック50内のAMP32を経てスロープ作成回路33に供給される。
【0025】スロープ作成回路33は残量算出ブロック49より送られてくる期間Tdと、予め設定されている期間Tpとから図3のようなスロープをあるFGパルスの立ち上がりエッジに同期して作成する。
【0026】速度誤差データ作成回路34では、前述のスロープを次のFGパルスの立ち上がりエッジにてサンプリングして、このサンプリングデータを速度誤差データとして後段のPWM変換回路35に供給し、ここでPWM信号に変換し、更にローパスフィルタ(LPF)36にて平滑した後にモ-タドライバー37に供給して、モータ30の速度サーボを実行する。ここで、速度誤差データは、例えば、期間Tp以前ではLレベル(0V)となり、逆に期間Tp以後はHレベル(5V)となり、レベルの1/2(2.5V)のときに以前の速度を維持し、これより小さいときに小さいほど減速させ、大きい時に大きいほど加速させるようにモータ30の速度制御が為される。」

2-4.「【0028】尚、本実施例では、カセットの装着と同時にわずかの期間だけテープをPLAYやREC時と同様に定速走行させて、各リールの回転周期Ts、Ttを検出し残量検出を行うと共にT側リールのテープ巻き径Rtを算出した以降に、FFまたはREWが実行される。」

以上の記載を各図面を参照して整理すると、刊行物には、結局、次の発明が記載されているものと認める。
「磁気テープを供給する供給リールと、
磁気テープを巻き取る巻取りリールと
減速器を介して巻取りリールを回転する駆動モータと、
各リールの回転速度に周波数がそれぞれ比例するリールパルスを発する回転検出器と、
リールパルスより検出されるリールの回転周期を基に巻取りリールにおけ
るテープ巻き径データを算出する巻き径算出手段と、
駆動モータの回転速度に周波数が比例するFGパルスを発するFG検出器と、
巻取りリールにおけるテープ巻き径データを用いてFGパルスの周期データを設定する周期データ設定手段と、
早送りまたは巻戻し時に、周期データ設定手段で設定された周期データに、FG検出器にて得られるFGパルスの周期が一致するように駆動モータの速度制御を実行する速度制御手段を備え、
速度制御手段は、テープ巻き径データを用いて設定されたFGパルスの周期データとFG検出器にて得られるFGパルスの周期との速度誤差データをPWM信号に変換して、モータドライバに供給して、駆動モータを駆動する
磁気記録再生装置の磁気テープ速度制御回路。」(以下、「刊行物発明」という。)

3.対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。
刊行物発明の「磁気テープを供給する供給リール」及び「磁気テープを巻き取る巻取りリール」は、それぞれ本願発明の「磁気テープを送り出す供給側リール」及び「磁気テープを巻き取る巻き取り側リール」に相当する。
刊行物発明の「減速器を介して巻取りリールを回転する駆動モータ」と、本願発明の「磁気テープを走行させるキャプスタンモータ」とを比較すると、「減速器」が「モータの駆動力を上記巻き取り側リールに伝達する伝達手段」といえることからすると、本願発明のキャプスタンモータも前記伝達手段により駆動力が巻き取り側リールに伝達されることで「巻き取りリールを回転する駆動モータ」として機能することが明らかである。

刊行物発明の「駆動モータの速度制御を実行する速度制御手段」は、「モータの速度」がモータの「回転速度」に他ならないから、刊行物発明は、本願発明の「モータの回転速度を制御する回転速度制御手段」に相当する構成を備えている。
刊行物発明における速度制御手段は「PWM信号」を「モータドライバに供給」して駆動モータを駆動するものであるところ、PWM信号が所定の周期とデューティを有することは自明であるから、刊行物発明は、本願発明の「回転速度制御手段に供給する所定の周期と所定のデューティを有するPWM信号」「を生成し、上記回転速度制御手段に供給することによって」「モータの回転速度を制御する制御手段」に相当する構成を備えている。
刊行物発明の「巻取りリールにおけるテープ巻き径データを算出する巻き径算出手段」は、本願発明の「巻き取り側リールに巻回されている上記磁気テープの径を検出するテープ径検出手段」に相当する。
刊行物発明は、「巻き径算出手段」によって算出された「テープ巻き径データを用いて設定されたFGパルスの周期データとFG検出器にて得られるFGパルスの周期との速度誤差データをPWM信号に変換して」いるのであるから、結果的に、本願発明の「検出手段によって検出された上記磁気テープの径に基づいて、周期とデューティを有する上記PWM信号を生成し」に相当する構成を有している(なお、この点については、補足を後記する)。
刊行物発明の「磁気記録再生装置」は磁気テープを使用するものであるから、本願発明の「磁気テープの記録及び/又は再生装置」に相当する。

結局、本願発明と刊行物発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「磁気テープを走行させるモータと、
上記磁気テープを送り出す供給側リールと、
上記磁気テープを巻き取る巻き取り側リールと、
上記モータの回転速度を制御する回転速度制御手段と、
上記モータの駆動力を上記巻き取り側リールに伝達する伝達手段と、
上記回転速度制御手段に供給する所定の周期と所定のデューティを有するPWM信号と、
上記巻き取り側リールに巻回されている上記磁気テープの径を検出するテープ径検出手段と、
上記検出手段によって検出された上記磁気テープの径に基づいて、周期とデューティを有する上記PWM信号を生成し、上記回転速度制御手段に供給することによって上記モータの回転速度を制御する制御手段とを備える
磁気テープの記録及び/又は再生装置。」

[相違点]
制御対象となる磁気テープを走行させるモータの種類について、本願発明が、キャプスタンモータであるのに対して、刊行物発明では、単に、駆動モータとしている点。

4.判断
磁気テープを用いた記録再生装置において、キャプスタンモータを用いて、巻取り側、供給側の各リールを回転させ、磁気テープを走行させることは、例えば、既に平成18年10月5日付け拒絶理由通知でも引用した特開平8-36810号公報、特開平8-255392号公報の他、特開平2-29964号公報の「キャプスタン駆動モータを兼ねるリール駆動モータ12」との記載(2頁左下欄5?6行、第1図、第3図参照)、及び特開平2-177045号公報の「高速早送りや高速巻戻しが行われる場合は、キャプスタンモータ(電流制御方式)9からの回転動力が、ベルト10を介してギアプーリ7に伝達される。すると、ギアプーリ7によって回転されるアイドルギア8がリール台6のギアあるいはリール台1のギアに選択的に噛合され、リール台の高速回転(高速テープ送り)が実現される。アイドルギア8は、メインシャーシに回動自在に取付けられたレバー先端に回転自在に取付けられ、ギアプーリ7と噛合している。したがって、ギアプーリ7が矢印A1方向に回転すると、レバー先端も矢印A1方向へ振られ、アイドルギア8はリール台1のギアに噛合し、ギアプーリ7が矢印A2方向に回転すると、レバー先端も矢印A2方向へ振られ、アイドルギア8はリール台6のギアに噛合する。これにより、キャプスタンモータ9を正転あるいは逆転方向に高速運転すれば、テープを高速送り状態とすることができる。」との記載(3頁左上欄5行?右上欄2行、及び第2図参照)から明らかなように周知技術にすぎない。
したがって、刊行物発明において、駆動モータとして、キャプスタンモータを用いることは、当業者が容易に想到しうることである。

(補足)上記対比においては、刊行物発明は、本願発明の「検出手段によって検出された上記磁気テープの径に基づいて、周期とデューティを有する上記PWM信号を生成し」に相当する構成を有していると認定したが、仮に、PWM信号の生成について、本願発明では、検出された磁気テープの径に基づいて、周期とデューティを有するPWM信号を生成しているのに対して、刊行物発明は、巻き径算出手段により算出されたテープ巻き径データを用いて設定されたFGパルスの周期データを目標周期とするとともに、制御信号としてPWM信号を用いている点に相違を認めた場合でも、制御のための検出値としてテープの巻き径を検出し、制御信号としてPWM信号を生成する点において、両者は共通しているのであるから、刊行物発明において、モータの回転速度をフィードバックすることなく、簡易な開ループ制御を採用することで、目標回転速度に対応した制御信号をテープ巻き径データに対応したPWM信号として生成することは、当業者であれば、格別の発明力を要すことなく、適宜になし得る範囲内のことにすぎない。

以上のとおりであるから、相違点について本願発明が採用した点は、刊行物発明においても、格別の発明力を要すことなく、適宜になし得る範囲内のことである。
そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、刊行物に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV.むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-28 
結審通知日 2010-05-11 
審決日 2010-05-25 
出願番号 特願平10-19970
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松尾 淳一  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 関谷 隆一
酒井 伸芳
発明の名称 磁気テープの記録及び/又は再生装置  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 小池 晃  

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