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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1220062
審判番号 無効2009-800136  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-06-26 
確定日 2010-06-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3989071号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3989071号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3989071号の請求項4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その4分の1を請求人の負担とし、4分の3を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3989071号は、平成9年12月5日に出願され(特願平9-352172号)、平成19年7月27日に特許権の設定登録が行われた。
そして、本件無効審判請求後の手続きの経緯は以下のとおりである。

無効審判請求 :平成21年 6月26日
答弁書 : 9月14日
訂正請求書 : 9月14日
弁駁書 : 10月23日
手続補正書(請求人) : 10月26日
口頭審理陳述要領書(請求人) :平成22年 2月 2日
口頭審理陳述要領書(被請求人) : 2月 2日
口頭審理 : 2月16日
上申書(被請求人) : 3月12日


第2 訂正の適否
2-1 訂正の内容
平成21年9月14日付け訂正請求書により被請求人が求める訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項ア
特許請求の範囲の【請求項1】を、
「【請求項1】 複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記各光源を所定の表示態様で点灯制御し、前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する報知手段と、
を備えて構成される遊技機において、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行い、
前記報知手段による報知は、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない場合があり、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合があること
を特徴とする遊技機。」

から、

「【請求項1】 複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う遊技機において、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、
前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段を備えたことを特徴とする遊技機。」
に訂正する。

(2)訂正事項イ
特許請求の範囲の【請求項3】を、
「【請求項3】 前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていること
を特徴とする請求項1に記載の遊技機。」

から、

「【請求項3】 前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていること
を特徴とする請求項1に記載の遊技機。」
に訂正する。

(3)訂正事項ウ
特許請求の範囲の【請求項4】を、
「【請求項4】 前記抽出された乱数に基づいて前記報知手段による報知を行うか否かを選択する報知確率テーブルを備え、
前記報知確率テーブルは、
前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属する数値データの少なくとも一部を含むデータと、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属さない数値データの少なくとも一部を含むデータとからなる報知区画データ範囲を有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遊技機。」

から、

「【請求項4】 前記抽出された乱数に基づいて前記報知手段による報知を行うか否かを選択する報知確率テーブルを備え、
前記報知確率テーブルは、
前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属する数値データの少なくとも一部を含むデータと、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属さない数値データの少なくとも一部を含むデータとからなる報知区画データ範囲を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。」
に訂正する。

(4)訂正事項エ
願書に添付した明細書の段落番号【0008】を、
「 (1)複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う遊技機において、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段を備えたこと
を特徴とする遊技機。」
に訂正する。

(5)訂正事項オ
願書に添付した明細書の段落番号【0009】を、
「 (2)前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であって、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていること
を特徴とする上記(1)に記載の遊技機。
(3)前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていることを特徴とする上記(1)に記載の遊技機。」
に訂正する。

(6)訂正事項カ
願書に添付した明細書の段落番号【0010】を
「 (4)前記抽出された乱数に基づいて前記報知手段による報知を行うか否かを選択する報知確率テーブルを備え、
前記報知確率テーブルは、
前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属する数値データの少なくとも一部を含むデータと、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属さない数値データの少なくとも一部を含むデータとからなる報知区画データ範囲を有していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の遊技機。」
に訂正する。

(7)訂正事項キ
願書に添付した明細書の段落番号【0050】を
「 つまり、全リール3?5が停止する停止タイミングに、一旦、各リール3?5の全バックランプ57a?57cが図12(a)に示すように点灯する。続いて第1リール3の中段のバックランプ57bが同図(b)に示すように消灯する。その後、同図(c)に示すように第2リール4の中段のバックランプ57bが消灯し、続いて同図(d)に示すように第3リール5の中段のバックランプ57bが消灯する。最後に同図(e)に示すように各リール3?5の全バックランプ57a?cが点灯する。」
に訂正する。

(8)訂正事項ク
願書に添付した明細書の段落番号【0060】を
「 また、特典ゲーム入賞当選フラグが「RB」当選フラグである場合には、各バックランプ57a?57cを図14および図15に示す表示態様で点灯制御する。まず、全リール3?5が停止するタイミングに、一旦、各リール3?5の全バックランプ57a?57cを図14(a)に示すように点灯する。続いて第1リール3,第2リール4,第3リール5の中段の各バックランプ57bを同図(b),(c),(d)に示すように消灯する。その後、同図(e)に示すように各リール3?5の全バックランプ57a?cを点灯する。さらに、図15(f),(g),(h)に示すように第1リール3,第2リール4,第3リール5の中段の各バックランプ57bを順次消灯し、最後に同図(i)に示すように各リール3?5の全バックランプ57a?cを点灯する。」
に訂正する。

(9)訂正事項ケ
願書に添付した明細書の段落番号【0083】を
「 以上説明したように本発明によれば、回転リールの背後に設けられた各光源が報知手段によって所定表示態様で点灯制御され、特典ゲーム入賞が遊技者に報知される。従って、特典ゲーム入賞の報知は従来よりも高い装飾性をもって行われる。また、この点灯制御は遊技者の目前にある全リール窓を使った広い面積で行われるため、特典ゲーム入賞は強いインパクトをもって遊技者の視覚にとらえられ、遊技者は特典ゲーム入賞の喜びの実感をより強く味わえる。また、遊技者は、視覚的に楽しいこの点灯制御が全回転リール停止後に現れることを各遊技毎に期待するようになる。この結果、遊技の興趣は増すようになる。また、入賞態様決定手段で特典ゲームの入賞態様が決定された場合、その特典ゲームの入賞が遊技者に報知される場合もあり、報知されない場合もある。そして、入賞態様決定手段で特典ゲーム入賞以外の入賞が決定された場合にも、特典ゲームの入賞が報知される場合もある。よって、遊技者によって特典ゲーム入賞の報知が期待されるようになり、報知があった場合にはその喜びも増し、遊技の興趣はさらに向上するようになる。」
に訂正する。

2-2 訂正に関する請求人の主張の概要(弁駁書)
(1)訂正事項ウ、カ、キ、クは認める。訂正事項ア、イ、エ、オ、ケは争う。
(2)訂正事項アのうち、「前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する報知手段」を削除する訂正は、特許法第134条の2第1項但書各号に掲げる事項を目的とするものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。
(3)訂正前の請求項3については記載に不明瞭な点がなく、訂正事項イは不明瞭な記載の釈明に当たらず、また、訂正前の請求項3と図面とに不合理が生じているにもかかわらず、これを図面に合致するように訂正すれば、実質上特許請求の範囲が変更されることは明らかである。
(4)訂正事項エ、オ、ケは、訂正事項ア、イに付随して記載を訂正するものであるから、訂正事項ア、イが認められない以上、訂正事項エ、オ、ケも認められない。

2-3 訂正の適否の判断
(1)訂正事項アについて
訂正前の【請求項1】と訂正後の【請求項1】を対比してみると、構成要件を表現上前後させているものの、訂正の概要としては、訂正前の、
「前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記各光源を所定の表示態様で点灯制御し、前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する報知手段」という事項と、
「前記報知手段による報知は、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない場合があり、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合があること」という2つの事項を合わせて、
「前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段を備えたこと」に訂正するものと認めることができる。
したがって、訂正事項アは、実質的に、
ア-1 訂正前の「各光源を所定の表示態様で点灯制御・・する報知手段」について、
「メダルの払出しが行われる前に」という事項を付加する。
ア-2 訂正前の「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない場合があり」を、
「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり」と訂正する。
ア-3 訂正前の「前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する報知手段」を、文言上削除する。
というものに要約できる。
そこで、上記ア-1ないしア-3の訂正を検討する。
上記ア-1に係る事項については、特許明細書の段落【0052】、図8、図9、図17に記載されているということができ、報知手段の動作時期について「メダルの払出しが行われる前に」という要件を付加するのであるから、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものということができる。
上記ア-2の訂正について、訂正前の請求項1に係る発明は、特許明細書の段落【0064】、【0079】、【0083】等の記載から見れば、特典ゲームの入賞態様が決定された場合、その決定を所定の表示態様で報知する場合があることを前提とした上で、遊技の興趣を向上させるために、特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、所定の表示態様で報知を行わない場合もあることを特定していることは明らかである。
したがって、上記ア-2の訂正は明瞭でない記載の釈明に当たるといえる。
また、上記ア-3の訂正について、訂正前の「前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する報知手段」という要件は、「特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない場合があり、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合があること」という事項と合わせて解釈すれば、「特典ゲームの入賞態様が決定された」という事実を事実どおりに遊技者に報知するような手段を備えているという意味ではなく、「特典ゲームの入賞態様が決定された(それが事実か否か問わず)と遊技者に思わせるような表示態様で報知を行う報知手段」を備えているということであると理解できる。
したがって、訂正前の請求項1「前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する報知手段」という事項が文言上削除されたとしても、訂正後の「前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段」という事項には、上記要件、すなわち「特典ゲームの入賞態様が決定されたと遊技者に思わせるような表示態様で報知を行う報知手段」を含んでいるといえるから、ア-3の訂正は、明瞭でない記載の釈明に当たるものと認められる。
以上のとおりであるから、訂正事項アは、特許請求の範囲の減縮ならびに明瞭でない記載の釈明を目的としたものと認める。

(2)訂正事項イについて
訂正前の請求項3における「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されている」という事項に関連する記載として、本願明細書段落【0070】に、
「【0070】すなわち、特典ゲーム入賞態様報知が行われても、必ずしも内部抽選によって「BB」当選フラグまたは「RB」当選フラグが立っているとは限らず、また、特典ゲーム入賞態様報知が行われていなくても、内部抽選によって「BB」当選フラグまたは「RB」当選フラグが立っていないとは限らない。特典ゲーム入賞報知は所定の信頼度の下で行われており、図16に示すテーブルの場合には、「BB」当選フラグが立っている場合にこの入賞態様報知が行われる確率は151/352{(0?150の151)/(0?150の151と20000?20200の201との和)}で約43%になっている。また、「BB」当選フラグが立っていない場合にこの入賞態様報知が行われる確率は201/352で約57%になっている。この結果、入賞態様報知は約57%の確率ではずれることになる。」という記載があり、そしてこの記載以外に請求項3に対応する記載はない。
この記載の意味は、図16の数値と合わせて読めば、「BB当選フラグが立った」ということに対応する入賞態様で報知が行われた場合(0?150と20000?20200)の中で、実際に「BB当選フラグが立っ」ていて報知されている場合(0?150)の確率は43パーセントであり、また、「BB当選フラグが立った」ということに対応する入賞態様で報知が行われた場合(0?150と20000?20200)の中で、実際には「BB当選フラグが立っ」ていなくて報知されている場合(20000?20200)の確率は57パーセントである、という意味に解釈される。
そして、「BB当選フラグが立つ」ことは、特典ゲームの入賞態様が決定されたことと同じ意味である。
したがって、訂正前の請求項3を、「前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていること」と訂正することは、明細書の記載に基づいており、この訂正は明瞭でない記載の釈明をしたものと認めることができる。

(3)訂正事項エ、オ、ケ、および訂正事項ウ、カ、キ、クについて
訂正事項エ、オ、ケに係る明細書の訂正は、上記訂正事項ア、イに係る請求項の訂正に基づく訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものと認めることができる。
また、訂正事項ウ、カ、キ、クについては、引用請求項の削除、請求項の訂正に基づく訂正、あるいは図面の記載と整合させるための誤記の訂正を目的としたものと認められる。
そして、これらの訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないと認める。

(4)訂正のまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項ア?ケは、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定および同法同条第5項の規定により準用する同法第126条第3項および第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3 本件発明
上記したように、訂正が認められるので、本件特許第3989071号の請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、平成21年9月14日付け訂正請求書で訂正された請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う遊技機において、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、
前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段を備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】 前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であって、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていること
を特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】 前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項4】 前記抽出された乱数に基づいて前記報知手段による報知を行うか否かを選択する報知確率テーブルを備え、
前記報知確率テーブルは、
前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属する数値データの少なくとも一部を含むデータと、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属さない数値データの少なくとも一部を含むデータとからなる報知区画データ範囲を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。」


第4 請求人および被請求人の主張の概要
4-1 請求人の主張する無効理由および証拠方法
<無効理由1>
本願特許請求の範囲における「報知手段」について、「特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する」と規定されているにも関わらず、「特典ゲームの入賞態様が決定されたか否かに関わらず、入賞態様が決定されたことを報知してもよいし、報知しなくてもよい」ものである。
つまり「報知手段による報知」が行われても、行われなくても「特典ゲームの入賞が決定された」のか「決定されなかった」のか判断材料にならないから「報知手段による報知」に何ら意味がないことになり、なぜ「報知手段」が「特典ゲームの入賞態様が決定されたことを遊技者に報知する」役割を果たすのか理解できず、特許を受けようとする発明が明確でないので、本件特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。
<無効理由2>
請求項2において、「低く」との表現がある結果、発明の範囲が不明確となり、また、「低く」することの技術的意味も理解できず、特許を受けようとする発明が明確でないので、本件特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。
<無効理由3>
請求項3において、「低く」との表現がある結果、発明の範囲が不明確となり、また、「低く」することの技術的意味も理解できず、特許を受けようとする発明が明確でないので、本件特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。
<無効理由4>
請求項3の「特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、所定の入賞態様で報知を行う確率よりも低く設定されている」点は、発明の詳細な説明に記載されていないので、特許法第36条第6項第1号の規定に違反する。
<無効理由5>
請求項1に係る発明は、甲1ないし甲5に記載されたものから当業者が容易に想到し得たものである。
請求項2に係る発明は、甲1ないし甲6に記載されたものから当業者が容易に想到し得たものである。
請求項3に係る発明は、甲1ないし甲5、甲7に記載されたものから当業者が容易に想到し得たものである。
請求項4に係る発明は、甲1ないし甲5、甲8、甲9に記載されたものから当業者が容易に想到し得たものである。

[証拠方法]
甲第1号証 特開平8-117390号公報
甲第2号証 パチスロ攻略マガジン1993年12月号、株式会社双葉社、平成5年12月1日、p.56
甲第3号証 特開平7-68027号公報
甲第4号証 パチスロ必勝ガイド1994年2月号、株式会社白夜書房、平成6年2月1日、p.40
甲第5号証 パチスロ必勝ガイド1994年3月号、株式会社白夜書房、平成6年3月1日、p.63
甲第6号証 特開平6-304313号公報
甲第7号証 特開平9-28883号公報
甲第8号証 特開平8-336642号公報
甲第9号証 特開平8-257213号公報

さらに、請求人は周知技術として以下の刊行物を提出した。
参考例1 「パチスロ大図鑑1964?2000」、株式会社白夜書房、2007年5月21日、p.26-27,p.58-59,p.106-109

4-2 被請求人の反論
<無効理由1>に対して
「報知手段による報知」が行われる場合に「特典ゲームの入賞態様が決定された」確率が、「報知手段による報知」が行われない場合に「特典ゲームの入賞態様が決定された」確率より高ければ、「報知手段」が「特典ゲームの入賞態様が決定された」ことの判断材料になるのだから、「報知手段による報知」に意味がある。(答弁書)
本件発明は、大当たり入賞が発生した場合の報知はランプが単に点灯するだけで何ら遊技上の面白味がない、という課題を解決するため、具体的手段として「特典ゲームの入賞態様が決定されても報知を行ったり行わなかったりし、特典ゲームの入賞態様が決定されなくても報知を行ったり(行わなかったり)する「報知手段」を設けたことにより、「遊技者によって特典ゲーム入賞の報知が期待されるようになり、報知があった場合にはその喜びも増し、遊技の興趣はさらに向上する」という効果を生じる。(口頭審理陳述要領書)
<無効理由2>、<無効理由3>に対して
請求項に「低く」と表現したものは、普通に存在する。「低く」することに技術的な意味があり、技術常識からすればその語句の意味を理解できる。
<無効理由4>に対して
訂正後の請求項3からすれば、「報知手段による報知が行われる場合であって、入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、所定の表示態様で報知を行う場合の確率」は、明細書の記載を見れば、291/672(約43.3%)になり、「報知手段による報知が行われる場合であって、入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、所定の表示態様で報知を行う場合の確率」は、381/672(約56.7%)であり、請求項3に記載された事項は、発明の詳細な説明に記載されている。(答弁書、口頭審理陳述要領書)
<無効理由5>に対して
訂正請求によって訂正された請求項1?4に係る発明(訂正発明1?4)は、請求人が提出した証拠に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたとはいえない。
また、訂正前の請求項1?4に係る発明(訂正前発明1?4)も、請求人が提出した証拠に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたとはいえない。

さらに、被請求人は周知技術として以下の刊行物を提出した。
乙第1号証 特許3916979号公報
乙第2号証 特許4208306号公報
乙第3号証 特許4195557号公報
乙第4号証 特許4159442号公報
乙第5号証 特許3995847号公報
乙第6号証 特許3847575号公報
乙第7号証 特許3816744号公報
乙第8号証 特許3757187号公報
乙第9号証 特許3649969号公報
乙第10号証 スーパーバニーガール、パチスロ大図鑑1964?2000、日本、株式会社白夜書房、2007年5月21日、35頁


第5 甲各号証の記載事項
5-1 甲第1号証ないし甲第9号証
5-1-1 甲第1号証(特開平8-117390号公報)には、以下の記載がある。
記載事項1-1
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)などの電子回路により遊技態様を制御する遊技機、特に複数の図柄(シンボル)を可変表示する可変表示部を備えたスロットマシン、いわゆるパチスロ、及びパチンコ機等の弾球遊技機を含む遊技機に関する。」

記載事項1-2
「【0004】具体的には、ゲームが開始される毎に、マイコンに含まれ又はマイコンとは別に設けた乱数発生器から1個の乱数がサンプリングされ、マイコンにおいて当該乱数の数値が入賞確率テーブルと照合される。入賞確率テーブルには、乱数発生器で発生される数値をその大きさにより「大ヒット」、「中ヒット」、「小ヒット」、「ハズレ」の各範囲にグループ分けしたデータが格納され、サンプリングされた乱数がどのグループ(範囲)に属する数値であるかにより、入賞か否かが(入賞の場合はその種類も)判定される。この判定を行った結果、サンプリングされた乱数が大ヒットに属する数値であると、大ヒットのリクエスト信号が発生する。このリクエスト信号が発生すると、可変表示部がリール式のものでは、マイコンはリール表示窓に大ヒットとなるシンボルの組合せが得られるようにリールの停止制御を行う。これによれば、入賞確率テーブルのデータ設定に応じた確率のもとで各種の入賞(ヒット)が発生するので、遊技者の技量に極端に左右されることなく、例えば1日の営業期間内でのトータル的な払出率をほぼ一定に維持することができる。」

記載事項1-3
「【0010】大ヒットのリクエスト信号が発生した状態になっていることを遊技者に知らせるには、別設のランプ等を用いることもできるが、スロットマシンのシンボル表示そのものを利用することが部品点数を減らし、また、シンボル表示に対して遊技者の興味をひきつける上でも有利である。
【0011】例えば“7-7-7”が大ヒットのシンボルの組合せであるとき、マイコンは、この大ヒットシンボルの組合せが入賞ライン上に並ぶように可変表示部を停止制御するが、実際に可変表示が停止した時に大ヒットのシンボルの組合せになるかどうかは、遊技者の停止操作のタイミングに依存する。従って、“7-7-7”の大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていても、遊技者がその大ヒットシンボルの組合せを入賞ライン上に並ばせることができなかった場合には、入賞ライン上に“7-7-α”(αは“7”以外の特定のシンボル)のような組合せのシンボル表示を行うように制御すると、大ヒットが近いという状態を表すのに好適である。このように大ヒットが近いことを示すシンボルの組合せは、「リーチ目」と称されている。」

記載事項1-4
「【0026】本発明の別の態様では、報知手段で内部的当選を遊技者に知らせる。
【0027】また、「大ヒット」のような特定の入賞図柄に対応する内部的当選役に当っているとき、可変表示が停止した時にその特定の入賞図柄になるかどうかは、可変表示を停止させる遊技者の操作タイミングに応じて決定されるが、可変表示の停止により可変表示部に出現し得る図柄の組合せが特定の入賞図柄でない場合は、前述の「リーチ目」を出現させることにより、遊技者に内部的当選が特定の入賞であることを知らせることができる。
【0028】上記のような報知により、遊技者は入賞の期待を持って遊技を行うことができ、ゲームの興趣が一層向上する。
【0029】
【実施例】図1は、本発明の一実施例のスロットマシンの外観を示す正面図である。このスロットマシン1の本体中央部には、各々の外周面に複数種類のシンボルが配列された3個のリール2,3,4が回転自在に設けられて可変表示部を形成している。各リール2,3,4のシンボルは、本体1の正面の表示窓5,6,7を通して、それぞれ3個ずつ観察できるようになっている。」

記載事項1-5
「【0032】この実施例では、遊技者がメダル投入口8からメダルを投入した後、正面の左端部に設置されたスタートレバー11を操作することにより、3つのリール2,3,4が一斉に回転する。そして、これらの回転が一定の速さに達した時、各リールに対応して設けられたストップボタン12,13,14の操作が有効化されるので、遊技者はこれらのボタンを押圧操作することで、対応するリールの回転を停止させることができる。このとき、上記のように有効化されている入賞ライン上で停止したシンボルの組合せが入賞組合せに該当していれば、その入賞の種類に応じた枚数のメダルが受皿15に払い出される。」

記載事項1-6
「【0038】図3の回路において、乱数発生器26は、一定の数値範囲に属する乱数を発生し、サンプリング回路27は、スタートレバー11が操作された後の適宜のタイミングで1個の乱数をサンプリングする。こうしてサンプリングされた乱数は、ROM22内の記憶部22aに格納されている入賞確率テーブルにおいて、どの入賞グループに属する値になっているかが判定される。このため、概念的に図4に示したようなデータが、入賞確率テーブル記憶部22aに格納されている。」

記載事項1-7
「【0040】乱数発生器26から発生した乱数の値が0?N(所定の数)であるとすると、投入メダル数が1の場合には、大ヒットの確率が“B1/N”、中ヒットの確率が“M1/N”、小ヒットの確率が“S1/N”となる。例えば、B1,M1,S1の値がそれぞれ“100”,“500”,“1000”であったとすると、サンプリングされた乱数の値が100未満であれば大ヒット、100以上500未満であれば中ヒット、500以上1000未満であれば小ヒットとなって、それぞれの種類に対応した入賞リクエスト信号が発生し、さらに1000以上である場合には入賞なし(ハズレ)のリクエスト信号が発生する。」

記載事項1-8
「【0052】
【表2】(表の内容は省略)
上記のような設定のスロットマシンでは、図3のマイコン20において行われる入賞判定(内部的抽選)の結果がRAM23に格納される。そのため、RAM23は、例えば図7に示すような8ビット構成のメモリ領域を有する。このメモリ領域では、“7”?“4”のビットに上記表2の内部的当選役BB1,BB2,NB1,NB2を対応させ、“3”?“0”のビットにその他の役を対応させている。
【0053】内部的抽選処理は、図8及び図9に示すフローチャートに従って実行される。具体的には、マイコン20のCPU21が、前述のようにゲームスタート後に乱数値をサンプリングして、ROM22の記憶部22aに格納されている入賞確率テーブルと照合することにより、以下の抽選処理を実行する。
【0054】まず、図8に示すように、サンプリングされた乱数値をBB1の当選幅(入賞組合せ“7-7-7”に対する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST1)、BB1に該当するか否かを判定する(ST2)。その結果、該当する場合には、内部的当選が達成され、例えば8ビット構成のRAM23においてBB1に対応するビット(7)にフラグを立て(ST3)、抽選処理を終了する。
【0055】一方、乱数値がBB1に当選しない場合には、当該乱数値を次の内部的当選役BB2の当選幅(入賞組合せ“BAR-BAR-7”に対応する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST4)、BB2に該当するか否かを判定する(ST5)。その結果、該当する場合には内部的当選が達成されて、RAM23においてBB2に対応するビット(6)にフラグを立て(ST6)、抽選処理を終了する。
【0056】乱数値がBB2にも当選しない場合には、図9に示すように、乱数値を次の内部的当選役NB1の当選幅(入賞組合せ“7-7-BAR”に対応する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST7)、NB1に該当するか否かを判定する(ST8)。その結果、該当する場合には内部的当選が達成されて、RAM23においてNB1に対応するビット(5)にフラグを立て(ST9)、抽選処理を終了する。
【0057】一方、乱数値がNB1に当選しない場合には、当該乱数値を次の内部的当選役NB2の当選幅(入賞組合せ“BAR-BAR-BAR”に対応する内部的当選役の数値の範囲)と比較し(ST10)、NB2に該当するか否かを判定する(ST11)。その結果、該当する場合には内部的当選が達成されて、RAM23においてNB2に対応するビット(4)にフラグを立て(ST12)、抽選処理を終了する。
【0059】
最終的には、上記のような抽選処理の結果得られたRAM23上のデータに基づいて、可変表示部のリールの駆動制御が行われる。
【0058】最後に、乱数値がNB2にも当選しない場合には、その他の役の抽選処理を行う(ST13)。ここで、どの役にも該当しなければ、「ハズレ」になることは従来と同様である。
【0060】
以上の制御がなされるスロットマシンを従来のものと比較すると、各々の内部的当選確率等の値は、次のようになる。
(1)BB、NBが内部当選してから入賞する(入賞組合せになる)までの遊技数は、従来のもので平均10回に対し、本実施例では平均19回である。
(2)従来機においては、入賞役BBに対する内部的当選役が1個であるため、その当選確率は、例えば1/303であるが、本実施例においては、入賞役BBに対する内部的当選役が2つ存在するため、その当選確率は1/293と高くなる。この現象は、入賞役NBに対しても同様である。以上をまとめると、
従来 実施例
BBの当選確率: 1/303 BB1:1/585
BB2:1/585
合計 1/293
NBの当選確率: 1/364 NB1:1/682
NB2:1/712
合計 1/349
このように、本実施例では、従来機よりも遊技数が増加し且つ内部的当選確率が大きくなる。これは、以下の理由による。」
(なお、上記引用された記載のうち、BB1、BB2、NB1、NB2における数字は、原文においてマル付きの数字である。)

記載事項1-9
「【0079】(ii)ゲームスタート後、サンプリングされた乱数値が内部的当選役に該当した場合、その内部的当選を遊技者に知らせる報知手段を設けてもよい。
【0080】この報知手段としては、例えば各リール2,3,4の内側に取り付けられているバックライト(照明)を利用することができる。すなわち、遊技がスタートして乱数がサンプリングされ、入賞確率テーブルとの照合により内部的当選に該当する場合は、このバックライトを点滅又は点灯させることによって、遊技者に内部的当選を知らせる。これにより、遊技者は「当たり」への期待感を持つことができる。
【0081】具体的には、図10及び図11に示すように、3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ(LED、電球などの発光体)41を縦方向に配列した基板42を設置し、これら3列のランプ41を、図3のCPU21により、例えばストップボタン12が押された直後に、図12(A),(B),(C)に示すような種々のパターンで点滅又は点灯するように制御する。なお、図12において、(A)は全てのランプを点灯又は点滅するパターン、(B)は上下及び中心部のランプを点灯又は点滅するパターン、(C)はランプを所定の方向に順次点灯又は点滅する動作を繰り返すパターンを示す。勿論、パターンはこれらのみに限らない。
【0082】また、内部的当選の種類に応じて上述の点灯パターンを変えることにより、どの種類の入賞役に当たり易い状態であるかを遊技者に知らせることもできる。
【0083】更に、上記のようなバックライトの利用に加えて又はバックライトを利用する代わりに、スピーカのような発音装置から適当な音を発生することによっても、内部的当選を遊技者に知らせることができる。
【0084】(iii) 内部的当選の後、リールの回転停止操作によって出現し得る図柄組合せが「大ヒット」のような特定の入賞図柄でない場合には、「リーチ目」を出現させることにより、遊技者に対し内部的当選を知らせるようにしてもよい。これはマイコン20のプログラムで実現できるが、これに代えて、或いはこれと共に、上記(ii)で説明したリールのバックライトや音声を利用する報知手段を用いてもよい。」

以上、記載事項1-1ないし1-9、および図面の記載からすると、甲第1号証には、以下の発明が開示されていると認められる。

1.入賞確率テーブルには、乱数発生器で発生される数値をその大きさにより「大ヒット」、「中ヒット」、「小ヒット」、「ハズレ」の各範囲にグループ分けしたデータが格納されている。
2.ゲームが開始される毎に、乱数発生器から1個の乱数がサンプリングされ、当該乱数の数値が入賞確率テーブルと照合される。
3.サンプリングされた乱数が入賞確率テーブルのどのグループ範囲に属する数値であるかにより、入賞か否か(入賞の場合はその種類も)判定され、その判定結果(内部的当選役)に応じた入賞リクエスト信号が発生し、当該信号よりRAM(図7)上の内部的当選に対応するビットにフラグを立てる。
4.スロットマシンには、各々の外周面に複数種類のシンボルが配列された3個のリール2,3,4が回転自在に設けられて可変表示部を形成し、各リール2,3,4のシンボルは、リール表示窓を通して、それぞれ3個づつ観察できるようになっている。
5.遊技者がスタートレバー11を操作することにより、3つのリールが一斉に回転し、各リールに対応して設けられたストップボタン12,13,14を押圧操作することにより、対応するリールの回転を停止させることができる。
6.3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ41を配置し、種々のパターンで点滅又は点灯するように制御できる。また、内部当選の種類に応じて点灯パターンを変えることにより、どの種類の入賞役に当たり易い状態であるかを遊技者に知らせることができる。
7.マイコンは、リール表示窓に内部的当選に対応するシンボルの組合せが得られるようにリールの停止制御を行う。
8.実際に可変表示が停止した時に内部当選役に対応するシンボルの組合せになるかどうかは、操作者の停止操作のタイミングに依存する。
9.大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていても、リールの回転停止操作によって出現し得る図柄組合せが「大ヒット」(7-7-7)のような特定の入賞図柄でない場合には、入賞ライン上にリーチ目(7-7-α αは「7」以外の特定のシンボル)を出現させることにより、遊技者に対し内部的当選を知らせるようにしてもよい。これに代えて、上記6.で説明したリールのバックライトを利用する報知手段を用いてもよい。
(この発明を、以下、「甲1発明」という。)

5-1-2 甲第2号証(パチスロ攻略マガジン1993年12月号、株式会社双葉社、平成5年12月1日、p.56)には、以下の記載がある。
記載事項2-1
「リーチ目はすぐに覚えられると思うが、もし知らなくても、これさえあれば大丈夫というのが、ボーナスフラグ成立のお知らせ機能のボーナスシグナルだ。
ソレックスのボーナスシグナルは、チェリーバーやトロピカーナと同じく、BIGボーナスのフラグが成立したプレーの後、ほんの一瞬だけドラムのバックライトが消えて、また点灯するという、光でお知らせするものである。・・・で、一体どういう時がボーナスシグナルのある条件なのかというと、BIGボーナスのフラグが成立した時というのは当然だが、そのフラグ成立プレーでBIGを揃えてしまった時か、小役の払い出しのないハズレ出目の時のみ光るという条件がある。というのも、フラグ成立プレーでは、小役の払い出しがないからだ。払い出しがあるとすれば、BIGを揃えた時の15枚の払い出し以外はナイ。」(p.56)

5-1-3 甲第3号証(特開平7-68027号公報)には、以下の記載がある。
記載事項3-1
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、この種の従来の遊技機においては、可変表示装置の表示状態が変化している最中であって表示結果が未だに導出表示されていない段階では、遊技者はその可変表示中の可変表示装置の表示結果がどのような表示態様になるか知る術がなく、可変表示装置が実際に表示結果を導出表示して初めて遊技者がその表示結果を認識できる。しかし、遊技者にしてみれば、可変表示装置の表示結果が前記特定の表示態様になる場合には、所定の遊技価値が付与可能となるという遊技者にとって喜ばしい状態であるために、実際に表示結果が導出表示される以前の段階からいち早く遊技者にその旨を報知すれば、遊技者をいち早く喜ばせることができて以降の遊技を楽しく行なわせることができる。
【0004】そこで、報知手段を遊技機に別途設け、可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる旨を前記可変表示装置の表示結果が導出される前に遊技者に事前に報知することが考えられる。しかし、このように、可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる場合には必ず事前に報知した場合には、その事前報知が行なわれなかったときには必ず特定の表示態様とはならないということになり、事前報知が行なわれない場合にはその時点で遊技者の特定の表示態様への期待が消えてしまい、以降の遊技が面白くないものとなってしまう欠点が生ずるのである。
【0005】本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる旨を事前に遊技者に報知して認識させることができながらも、その事前報知がなかったとしても遊技者の期待が完全に消えてしまう不都合が防止できる遊技機を提供することである。」

記載事項3-2
「【0007】
【作用】本発明によれば、表示態様決定手段により可変表示装置の表示結果の表示態様が決定され、その決定された内容に従って可変表示装置が制御される。選択決定手段の働きにより、前記表示態様決定手段により決定された表示結果が所定の遊技価値が付与可能となる特定の表示態様となる場合に、特定の表示態様となる前に報知するか否かが選択決定される。そして、選択決定手段により報知する旨が決定された場合に、事前報知手段の働きにより、特定の表示態様となる旨が前記可変表示装置の表示結果が導出される前に報知される。」

記載事項3-3
「【0049】また、以上説明した実施例においては、事前報知の内容として、リーチおよび大当りの両方を報知するものを示したが、大当りのみを事前報知するものであってもよい。また、大当りのみの事前報知を行なう場合には、すべての図柄の可変表示を同時に停止させてもよい。さらに、可変表示装置の種類はどのようなものであってもよく、たとえば、CRT,プラズマ,ドットマトリクスLED,エレクトロルミネセンス,蛍光表示管等の表示装置を利用したもの、あるいは、回転ドラム式や表面に複数種類の図柄が描かれたベルトを回転移動させるものや複数種類の図柄が描かれた円盤を回転させるもの(ロタミント)等の機械式のものであってもよい。さらに、ボクシングの映像表示を行ない、遊技者側のボクサーが勝てば大当りを発生させるものであってもよい。つまり、可変表示は識別情報のスクロール表示あるいは切換表示に限られず、さらに可変表示装置の表示結果が導出表示された後においても引続き表示状態が変化するものであってもよい。また、可変表示装置を利用した事前報知の方法はどのようなものであってもよく、たとえば、逆回転,可変開始時からスロー回転,点滅表示,画面が一瞬OFFになるもの,画面の明暗が反転するもの,表示図柄の形状や大きさが変形するものであってもよい。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、可変表示装置の表示結果を特定の表示態様とすることが決定されている場合に、その旨が可変表示装置の表示結果が導出される前に報知されるために、特定の表示態様になることが決定されたという遊技者にとって喜ばしい状態を遊技者がいち早く知ることができ、それ以降の遊技を楽しく行なうことができる。しかも、その報知が必ず行なわれるのではなく、選択的に行なわれるために、報知が行なわれないにも関わらず特定の表示態様となる場合があり、その結果、報知が行なわれない場合には必ず特定の表示態様が発生しないと遊技者が思うことがなく、報知が行なわれない場合に遊技者が完全に失望してしまうことを防止できる。」

5-1-4 甲第4号証(パチスロ必勝ガイド1994年2月号、株式会社白夜書房、平成6年2月1日)には、以下の記載がある。
記載事項4-1
「それではいよいよお楽しみの一つ、新発見のビッグ告知機能を紹介することにしよう。ソレックスでは従来のユニバーサル系機種と同じく、左・中リールに7がテンパイすると音楽が流れる(通称ブッタカ音)。この時同時に盤面上部のランプも光っているのだが、御存知だったかな?実はソレックスでは、このテンパイランプの動きがビッグボーナスフラグ成立時と通常時で異なっていたのだ。ここからは下のイラストを見ながら読み進めてほしい。まずは通常時のテンパイランプの動きから説明しよう。この時は「左のみ点灯→中のみ点灯→右のみ点灯」を繰り返す。これがビッグボーナスフラグ成立時ではどうなるかというと「左のみ点灯→左・中が点灯→左・中・右が点灯」を繰り返すようになるのだ。ただしこれは100%ではなく、ビッグフラグ成立中でも希に通常時と同じ動きをすることがある。」(p.40)

5-1-5 甲第5号証(パチスロ必勝ガイド1993年3月号、株式会社白夜書房、平成6年3月1日)には、以下の記載がある。
記載事項5-1
「皆さんの中には、「100%のリーチ目が出現したのに何も揃わなかった」という不可解な場面に遭遇した事がある人も少なくないはず。・・・ところが、それが全てではなかったのである。何と、ソレックスのリール制御プログラムにはガセリーチ目が仕組まれていたのだ。と言っても、わざわざ「7・7・スイカ」などの組合わせを引き込んでくるものではない。通常時、何のフラグも立っていない場合、256分の1の確率で右リールにリーチ目となる絵柄を止める抽選をおこなっているのだ。例えば、左・中リール下段に7がテンパイしたとしよう。普通なら、7、スイカ、そして同時にテンパイしているベルを外す制御が働くだけだが、この時256分の1の抽選に当たると、本来止まるはずのないスイカが止まってしまい、ガセ目となってしまうのだ。ちなみに、このガセリーチ目には引き込み制御が無く、ジャストでボタンを押した場合のみ停止するようになっている。」(p.63)

5-1-6 甲第6号証(特開平6-304313号公報)には、以下の記載がある。
記載事項6-1
「【0013】停止時の表示結果が予め定められた特定の表示態様の組み合わせになれば、可変入賞球装置12の開閉板14を開成させて遊技者にとって有利な第1の状態とし所定の遊技価値が付与可能な状態にする。左、右図柄が停止した時点で特定の表示態様の組合わせとなる条件を満たしていれば、これをリーチ状態と呼ぶ。」

記載事項6-2
「【0084】次に、S701に進み、リセット回数が奇数であるか否かの判断が行なわれ、奇数である場合にはS702に進み、大当りフラグD6(図16(a)参照)を「1」にセットする処理が行なわれて大当り予告ありのフラグ状態にセットされた後S71に進む。一方、リセット回数が奇数でない場合にS703に進み、リセット回数が「7」未満であるか否かの判断がなされ、「7」以上であった場合にはそのままS71に進むが、「7」未満であった場合にはS704に進み、大当りフラグD2(図16(a)参照)を「1」にセットしてリーチ予告ありのフラグ状態にした後S71に進む。その結果、大当りを発生させることが事前決定された場合において、リセット回数が1,3,5,7,9,11,13,15の場合に事前報知されるため1/2の確率で大当りが事前報知され、リセット回数が0,2,4,6の場合にリーチが事前報知されるため1/4の確率でリーチが事前報知されることになる。その結果、事前報知がない場合には必ずはずれが確定しているとは限らず、事前報知がなくても大当りすることがある(リセット回数が8,10,12,14であった場合)ので遊技者の遊技意欲の低下が防止できる。なお、大当りを発生させることが事前決定された場合にすべてについて事前報知をするようにしてもよい。また、確率変動図柄の場合とその他の場合とで事前報知の内容を異ならせて遊技者が識別できるようにしてもよい。」

5-1-7 甲第7号証(特開平9-28883号公報)には、以下の記載がある。
記載事項7-1
「【0002】
【従来の技術】従来、一般に、弾球遊技機としてのパチンコ遊技機に設けられる可変表示装置は、複数列の可変表示部で識別情報(図柄)を可変表示し、各可変表示部の表示結果が予め定めた特定表示結果(大当り図柄)となったときに特定遊技状態を発生して遊技者に特定の遊技価値を付与するようになっていた。このような図柄の変動においてリーチとなったときには、複数のリーチ変動態様の中からいずれかの変動態様を選択実行することにより、遊技の興趣を盛り上げるようになっていた。また、このような可変表示装置においては、表示上でリーチを確定し得る可変表示部の図柄に対して通常時よりも変動量の多いスベリ変動制御を行うことで遊技の興趣を向上するものも提案されていた。」

記載事項7-2
「【0029】そして、右図柄のスベリ変動制御について、図20に示すような図柄変動に伴う特別表示態様をリーチ状態としてリーチ有無の割合が前記フローチャートの判定により設定される。図20において、その単位となるものは図柄の変動回数であり、100回の図柄変動動作を行った場合でのリーチなしの変動回数とリーチ有りの変動回数とをそれぞれスベリ変動の有無毎に記載している。具体的には、先ず、リーチ有無の割合としては、各図柄列の15個の図柄数から考慮してリーチがない変動回数は(14/15)×100≒93回(=A回)となり、リーチが有る変動回数(大当りを含む)は(1/15)×100≒7回(=B回)となる。従って、スベリ有りでリーチがない変動回数は、前記図19のS9の判別においてWCRND ACTの抽出率が6/100となることを考慮して、(6/100)×A≒6回となる。同様にして、スベリなしでリーチがない変動回数は、(94/100)×A≒88回となる。一方、スベリ有りでリーチが有る変動回数は、前記図19のS3及びS12の各判別においてWCRND ACTの抽出率が75/100となることを考慮して、(75/100)×B≒5回となり、またスベリなしでリーチが有る変動回数は、(25/100)×B≒2回となる。即ち、図20の一覧表図から分かるように、スベリの有無に関わらずトータルとして見た場合のリーチなし及びリーチ有りの各変動割合は14:1(図20に記載のリーチなしの93回とリーチ有りの7回とは、小数点以下四捨五入の計算のため比率が若干異なる)に設定されており、その内訳としては、スベリなしの場合でのリーチなし及びリーチ有りの各変動割合は44:1に設定される一方、スベリ有りの場合でのリーチなし及びリーチ有りの各変動割合は6:5に設定されている。」

記載事項7-3
「【0033】上記した図21のスベリ変動制御においては、図22に示すようなリーチ後の当り外れの割合が設定される。図22において、その単位となるものは図柄のリーチ回数であり、100回リーチを行った場合での当り外れをそれぞれスベリ変動の有無毎に記載している。具体的には、先ず、リーチ後の当り外れの割合としては、各図柄列の15個の図柄数から考慮してリーチ後に外れる回数は(14/15)×100≒93回(=A回)となり、リーチ後に当る回数は(1/15)×100≒7回(=B回)となる。従って、スベリ有りでリーチとなった後に外れる回数は、前記図21のS29の判別においてWCRND ACTの抽出率が25/100となることを考慮して、(25/100)×A≒23回となる。同様にして、スベリなしでリーチとなった後に外れる回数は、(75/100)×A≒70回となる。一方、スベリ有りでリーチとなった後に当る回数は、前記図21のS23の判別においてWCRND ACTの抽出率が75/100となることを考慮して、(75/100)×B≒5回となり、またスベリなしでリーチとなった後に当る回数は、(25/100)×B≒2回となる。即ち、図22の一覧表図から分かるように、スベリの有無に関わらずトータルとして見た場合のリーチ後の外れ及び当りの各割合は14:1(図22に記載の外れの93回と当りの7回とは、小数点以下四捨五入の計算のため比率が若干異なる)に設定されており、その内訳としては、スベリなしの場合でのリーチ後の外れ及び当りの各割合は35:1に設定される一方、スベリ有りの場合でのリーチ後の外れ及び当りの各割合は23:5に設定されている。このため、スベリ変動制御を行ってリーチになった場合では、ほぼ2割近くの確率で大当りとなるため、このスベリ変動を大当り予測的に設定することができる。」

5-1-8 甲第8号証(特開平8-336642号公報)には、以下の記載がある。
記載事項8-1
「【0092】打玉が始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出されれば、その時点におけるC RND1の値を抽出し、その抽出値が通常時においては「3」のとき、前述した高確率状態時においては「3」,「5」,「7」,「11」,「13」のうちのいずれかであるときには、大当りを発生させることが事前決定される。そして、大当りを発生させることが事前決定された場合には、C RND ZU1の抽出値により、大当りとなる図柄が決定され、さらに、C RND YOKの抽出値により大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定が行なわれる。この決定は、後述する大当り予告テーブルを用いて行なわれる。
【0093】一方、C RND1の抽出値が「3」以外のときあるいは高確率時「3」,「5」,「7」,「11」,「13」以外のときには、外れが事前決定される。その場合には、図5に示した大当り以外の場合の処理と同じ処理が行なわれる。したがって、ここではその説明を省略する。」

記載事項8-2
「【0095】図14は、大当り予告テーブルの内容を示す説明図である。この図14に示される大当り予告テーブルにおいては、各種の遊技状態ごとにC RND YOKの抽出値と、大当り予告の報知方法との関係が予め定められている。
【0096】詳しくは次のとおりである。遊技状態は、大当りが事前決定されていない遊技状態(図中「大当り以外」)、大当りが事前決定されておりかつ始動入賞記憶数が2以上である遊技状態(図中「大当り・始動記憶2以上」)、および大当りが事前決定されておりかつ始動入賞記憶数が1以下の遊技状態(図中「大当り・始動記憶1以下」)の3種類に分類されている。
【0097】「大当り以外」の場合は、C RND YOKの抽出値と、「報知方法」との関係が以下のように定められている。抽出値が「0」?「3」である場合には、音による大当り予告の報知を行なう。抽出値が「500」?「503」である場合には、キャラクタによる偽りの大当り予告の報知を行なう。抽出値が「800」である場合には、音およびキャラクタの両方による偽りの大当り予告の報知を行なう。抽出値が「4」?「499」,「504」?「799」,「801」?「899」の場合には、偽りの大当り予告の報知をしない。
【0098】遊技状態が「大当り・始動記憶2以上」である場合には、C RND YOKとの抽出値、「報知方法」との関係が以下のように定められている。抽出値が「0」?「99」の場合には、音による真の大当り予告の報知を行なう。抽出値が「100」?「199」の場合には、キャラクタによる真の大当り予告の報知を行なう。抽出値が「200」?「449」の場合には、音およびキャラクタの両方による真の大当り予告の報知を行なう。抽出値が「450」?「899」の場合には、大当り予告の報知をしない。
【0099】遊技状態が「大当り・始動記憶1以下」の場合には、C RND YOKと、「報知方法」との関係が以下のように定められている。抽出値が「0」?「224」の場合には、音による真の大当り予告の報知を行なう。抽出値が「225」?「449」の場合には、キャラクタによる真の大当り予告の報知を行なう。抽出値が「450」?「899」の場合には、大当り予告の報知をしない。」

5-1-9 甲第9号証(特開平8-257213号公報)には、以下の記載がある。
記載事項9-1
「【0049】そして、遊技球が特図の始動口30に入賞して特図始動スイッチ30aがオンするタイミングで、そのときに役物用CPU51で生成された乱数が取得されてRAM51bに記憶され、この記憶された乱数値が、ROM51a中の大当たりの乱数判定値、即ち、通常時であれば通常時における大当たりの乱数判定値“30”、“70”と、確率変動中であれば確率変動中における大当たりの乱数判定値“15”、“30”、“50”、“90”、“110”、“130”、“150”、“165”、“180”、“205”、“220”、“245”、“260”、“280”、“300”、“320”、“345”、“370”、“390”、“70”と比較される。」

記載事項9-2
「【0155】この実施例のパチンコ遊技機によれば、制御手段(例えば、遊技制御手段50)が、乱数生成手段(例えば、役物用CPU51)により生成される乱数値に価値を持たせるとともに可変識別情報の停止表示態様の種類分けをし、乱数判定値と乱数生成手段から取得した乱数値が一致した場合に、前記取得した乱数値の価値に応じて、可変識別情報の種類分けされた停止表示態様のうちの対応するものを取得して表示させる制御を行うので、取得された乱数値に応じて、可変識別情報の種類分けされた停止表示態様のうちの対応するものを取得して表示することが可能となって、可変識別情報の停止表示態様の種類ごとの停止表示態様の発生確率を定めることができることとなり、取得した乱数値に基づいて可変識別情報の停止表示態様を拾った後にその停止表示態様が何であるかを必ずしも判定しなくても済む。」


第6 当審の判断
6-1 無効理由1について
請求人は、本願特許請求の範囲(請求項1ないし請求項4)に記載された「報知手段」について、技術的な意味が理解できず、発明が不明確である旨の主張をしている。
そこで、当該「報知手段」について本願発明の詳細な説明を検討する。
発明の詳細な説明には、
「【0064】つまり、上記実施形態によるスロットマシンでは確率抽選処理(図8,ステップ103)で特典ゲーム入賞が抽選されると、この特典ゲーム入賞が報知手段によって必ず遊技者に報知された。しかし、本実施形態によるスロットマシンでは、確率抽選処理で特典ゲーム入賞が抽選されても、必ずしもこの特典ゲーム入賞が報知されるとは限らない。また、入賞態様決定手段で特典ゲーム入賞以外の入賞態様が決定されても、特典ゲーム入賞が予兆報知される場合がある。」
「【0079】このような本実施形態によれば、特典ゲーム入賞の報知は、全ての内部抽選結果に対して行われるのではなく、報知選択抽選確率テーブル(図16参照)に示すような所定確率で行われる。従って、特典ゲーム入賞は遊技者に報知される場合もあり、報知されない場合もある。また、入賞態様決定手段で特典ゲーム入賞以外の入賞態様が決定された場合にも、特典ゲーム入賞が所定確率で報知される場合もある。よって、遊技者によって特典ゲーム入賞の報知が期待されるようになり、報知があった場合にはその喜びも増し、遊技の興趣はさらに向上する。」
という記載がある。
上記記載からみれば、本願でいう「報知手段」は、内部抽選結果を忠実に報知するものでなく、内部抽選によって特典ゲームに入賞したときに、当該入賞を遊技者に報知する場合と報知しない場合とがあり、また、内部抽選によって特典ゲームに入賞しないときに、入賞したと偽りの報知する場合と報知しない場合がある報知手段であるというものであって、そのような「報知手段」を備えることにより、遊技の興趣を向上させるようにしたものと理解できる。
すなわち、特許請求の範囲に記載された「報知手段」は、遊技者に「特典ゲームの入賞態様が決定された」という事実を知らせる手段ではなく、遊技者に「特典ゲームの入賞態様が決定された」かもしれないという期待を抱かせて、興趣を向上するという効果を生じさせるような報知を行う手段であると理解でき、かつ、その動作も明確であるということができる。
よって、特許請求の範囲における請求項1ないし請求項4の記載は、特許を受けようとする発明が明確に記載されたものと認められるので、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しない。

6-2 無効理由2について
請求項2における「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であって、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されている」という事項は、請求項1の「入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあ」るという事項について、特典ゲームの入賞態様が決定された場合であって、報知を行う場合と報知を行わない場合の比率をどうするかを特定する事項であるといえる。
そして、請求項2に係る発明は、上記事項によって、特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、報知を行う場合の比率を大きく、報知を行わない場合の比率を小さくしたものに特定されている。
ところで、請求人は、「低く」という表現では「何に対して」「どの程度」低いのかあいまいで発明が不明確である旨主張するが、「所定の表示態様で報知を行わない確率」と「所定の表示態様で報知を行う確率」を対比させたとき、どちらの確率を低く設定するかという範囲で技術的には明確であり、「どの程度低いか」すなわち比率をどの程度にするかは設計上の問題であって、当該範囲を特定しなければ発明が不明りょうになるというものではない。
したがって、請求項2に係る特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しない。

6-3 無効理由3について
請求項3における「前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されている」という事項は、報知手段による報知が行われる場合の中で、「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合」の比率は、「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う」場合の比率より低いことを意味しており、この事項によって、請求項3に係る発明は、特典ゲームに入賞したと思わせる報知が行われる中で、「実際に特典ゲームの入賞態様が決定されて、報知が行われる場合」の比率は、「実際には特典ゲームの入賞態様が決定されていないのに、報知が行われる場合」の比率よりも低い(つまりは、大当たり報知がされていても、それがガセ報知である場合の方が多い)ものに特定されていると理解することができる。
そして、どの程度「低く」するかは設計上の問題であって、その「低く」する程度を特定しなければ発明が不明りょうになるというものではない。
したがって、請求項3に係る特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しない。

6-4 無効理由4について
訂正請求によって請求項3は、「前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。」と補正された。
訂正された請求項3については、「2-3 訂正の適否の判断」で述べたとおり、この記載の意味は、(特典ゲームの入賞態様が決定されたということに対応する入賞態様で)報知が行われる場合の中で、実際に特典ゲームの入賞態様が決定されていて報知されている場合の確率は、(特典ゲームの入賞態様が決定されたということに対応する入賞態様で)報知が行われる場合の中で、実際には特典ゲームの入賞態様が決定されていなくて報知されている場合の確率より低い、という意味に解釈でき、このような構成は、発明の詳細な説明(段落【0070】)および図面(図16)に記載されていると認めることができる。
したがって、本件特許の請求項3に係る事項は、発明の詳細な説明に記載されているので、特許法第36条第6項第1号の規定に違反しない。

6-5 無効理由5について
6-5-1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明
上記「第3 本件発明」で示したように、本件発明1は、訂正請求書で訂正された請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う遊技機において、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、
前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段を備えたことを特徴とする遊技機。」

一方、「5-1-1 甲第1号証」で示したように、甲第1号証に開示された発明(甲1発明)は、以下のようなものと認めることができる。
「1.入賞確率テーブルには、乱数発生器で発生される数値をその大きさにより「大ヒット」、「中ヒット」、「小ヒット」、「ハズレ」の各範囲にグループ分けしたデータが格納されている。
2.ゲームが開始される毎に、乱数発生器から1個の乱数がサンプリングされ、当該乱数の数値が入賞確率テーブルと照合される。
3.サンプリングされた乱数が入賞確率テーブルのどのグループ範囲に属する数値であるかにより、入賞か否か(入賞の場合はその種類も)判定され、その判定結果(内部的当選役)に応じた入賞リクエスト信号が発生し、当該信号よりRAM(図7)上の内部的当選に対応するビットにフラグを立てる。
4.スロットマシンには、各々の外周面に複数種類のシンボルが配列された3個のリール2,3,4が回転自在に設けられて可変表示部を形成し、各リール2,3,4のシンボルは、リール表示窓を通して、それぞれ3個づつ観察できるようになっている。
5.遊技者がスタートレバー11を操作することにより、3つのリールが一斉に回転し、各リールに対応して設けられたストップボタン12,13,14を押圧操作することにより、対応するリールの回転を停止させることができる。
6.3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ41を配置し、種々のパターンで点滅又は点灯するように制御できる。また、内部当選の種類に応じて点灯パターンを変えることにより、どの種類の入賞役に当たり易い状態であるかを遊技者に知らせることができる。
7.マイコンは、リール表示窓に内部的当選に対応するシンボルの組合せが得られるようにリールの停止制御を行う。
8.実際に可変表示が停止した時に内部当選役に対応するシンボルの組合せになるかどうかは、操作者の停止操作のタイミングに依存する。
9.大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていても、リールの回転停止操作によって出現し得る図柄組合せが「大ヒット」(7-7-7)のような特定の入賞図柄でない場合には、入賞ライン上にリーチ目(7-7-α αは「7」以外の特定のシンボル)を出現させることにより、遊技者に対し内部的当選を知らせるようにしてもよい。これに代えて、上記6.で説明したリールのバックライトを利用する報知手段を用いてもよい。」

(2)対比
甲1発明において、「入賞確率テーブルには、乱数発生器で発生される数値をその大きさにより「大ヒット」、「中ヒット」、「小ヒット」、「ハズレ」の各範囲にグループ分けしたデータが格納されている。ゲームが開始される毎に、乱数発生器から1個の乱数がサンプリングされ、当該乱数の数値が入賞確率テーブルと照合される。サンプリングされた乱数が入賞確率テーブルのどのグループ範囲に属する数値であるかにより、入賞か否か(入賞の場合はその種類も)判定され、その判定結果(内部的当選役)に応じた入賞リクエスト信号が発生し、当該信号よりRAM(図7)上の内部的当選に対応するビットにフラグを立てる。」ことは、
本件発明1における、「複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段」に相当する。
甲1発明において、「スロットマシンには、各々の外周面に複数種類のシンボルが配列された3個のリール2,3,4が回転自在に設けられて可変表示部を形成し、各リール2,3,4のシンボルは、リール表示窓を通して、それぞれ3個づつ観察できるようになっている。マイコンは、リール表示窓に内部的当選に対応するシンボルの組合せが得られるようにリールの停止制御を行う。」ことは、
本件発明1における、「種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置」に相当する。
甲1発明において、「遊技者がスタートレバー11を操作することにより、3つのリールが一斉に回転し、各リールに対応して設けられたストップボタン12,13,14を押圧操作することにより、対応するリールの回転を停止させることができる。3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ41を配置し、種々のパターンで点滅又は点灯するように制御できる。」ことは、
本件発明1における、「この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え」たことに相当する。
甲1発明において、「マイコンは、リール表示窓に内部的当選に対応するシンボルの組合せが得られるようにリールの停止制御を行う。実際に可変表示が停止した時に内部当選役に対応するシンボルの組合せになるかどうかは、操作者の停止操作のタイミングに依存する」ことは、
本件発明1における、「前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う」ことに相当する。
ところで、甲1発明で「大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていても、リールの回転停止操作によって出現し得る図柄組合せが「大ヒット」(7-7-7)のような特定の入賞図柄でない場合に、入賞ライン上にリーチ目(7-7-α αは「7」以外の特定のシンボル)を出現させる」ときとはいつであるか明確でないものの、被請求人が提出した乙第10号証および請求人が提出した参考例1(乙第10号証の別ページであると認める)からみて、一般にリーチ目が出現するときとは、複数のリール全てが停止する前の場合もあるが複数のリール全てが停止した後の場合もあるということができ、そして甲1発明の場合は、全てのリールが停止していなければ、入賞ライン上に7-7-αを出現させることができないと解釈するのが自然であるから、甲1発明は、「複数のリール全てが停止した後に、大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていることを表示する」ものと認められる。
そして、甲1発明は「これ(7-7-αのシンボル表示)に代えて、上記6.で説明したリールのバックライトを利用する報知手段を用いてもよい」、「3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ41を配置し、種々のパターンで点滅又は点灯するように制御できる。また、内部当選の種類に応じて点灯パターンを変えることにより、どの種類の入賞役に当たり易い状態であるかを遊技者に知らせることができる」ものであることから、甲1発明は「全てのリールが停止した後に、大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていることをリールのバックライトを種々のパターンで点滅・点灯させて報知する報知手段」を備えている(少なくとも前記報知手段が示唆されている)ということができる。
したがって、甲1発明と本件発明1とは、「複数のリールが全て停止したことを条件に、各光源を所定の表示態様(特典ゲームの入賞態様が決定したと認識できる態様)で点灯制御する報知手段」を備えている点で共通している。
なお被請求人は、甲第1号証に「【0081】具体的には、図10及び図11に示すように、3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ(LED、電球などの発光体)41を縦方向に配列した基板42を設置し、これら3列のランプ41を、図3のCPU21により、例えばストップボタン12が押された直後に、図12(A),(B),(C)に示すような種々のパターンで点滅又は点灯するように制御する。」との記載があり、甲第1号証の報知手段が報知を行うタイミングは、全リールの回転停止後でなく「ストップボタン12が押された直後」である旨主張している。
しかしながら、【0081】の記載事項は、「【0079】(ii)ゲームスタート後、サンプリングされた乱数値が内部的当選役に該当した場合、その内部的当選を遊技者に知らせる報知手段を設けてもよい。」との記載に引き続くものであり、サンプリングされた乱数値が内部的当選役に該当した場合、「ストップボタン12が押された直後」に、その内部的当選を遊技者に知らせる、という意味であって、「リーチ目」が出現するのが「ストップボタン12が押された直後」であることを意味するものではない。

以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明とは、
<一致点>
「複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う遊技機において、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段、を備えた遊技機。」
である点で一致し、そして、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明1は、「報知手段」によって、特典ゲームの入賞態様が決定された(と認識できるような)報知を、「複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず」そして「メダルの払出し前に」行うものであるのに対し、
甲1発明は、大ヒットリクエスト信号が発生したという報知を、複数のリールが全て停止した後に行うものとはいえるが、その報知が「複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず」行われるものであるのか、そして「メダルの払出し前に」行われるものであるのかは不明である点。
<相違点2>
本件発明1は、「報知手段」が、入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、所定の表示態様で報知を行う場合も、所定の表示態様で報知を行わない場合もあるのに対し、
甲1発明は、上記のように報知を行う場合があったり行わない場合があったりするものではない点。
<相違点3>
本件発明1は、「報知手段」が、入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、所定の表示態様で報知を行う場合(も行わない場合も)があるのに対し、
甲1発明は、上記のような報知を行わない点。

(3)判断
<相違点1>について
甲第2号証の「記載事項2-1」からみて、甲第2号証には、複数のリールが全て停止したことを条件に、特典ゲームに内部当選したことを、複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず報知することが記載されていると認められる。
したがって、甲1発明において、リールのバックライトを種々のパターンで点滅・点灯させて内部当選を報知する場合、複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず報知することは、甲第2号証に記載された発明から容易に想到できたと認められる。
そして、スロットマシンでは一つのゲームで「メダルの投入-スタートボタンの操作-全リール回転-停止ボタンの操作-全リールの停止-入賞確定-メダルの払出し」という動作が行われる(これは技術常識といえる)のであるから、一つのゲーム中で特典ゲームに内部当選したことを報知しようとする場合、全リールの停止後に報知を行うならば、メダルの払出し前後に報知を行うことになるのは必然であり、報知をメダルの払出し前に行うことは、適宜なし得る設計事項にすぎないと認められる。
<相違点2>について
甲第3号証の「記載事項3-1」?「記載事項3-3」からみて、甲第3号証には、可変表示装置の表示結果の表示態様が特定の表示態様(大当たり)に決定された場合、その旨を選択的に事前報知するようにして、その事前報知がなかったとしても遊技者の期待が完全に消えてしまう不都合が防止できるもの、言い換えれば、特定の入賞態様が決定されている場合に、当該特定の入賞態様が決定されたことを事前報知する場合も事前報知しない場合もあるものが開示されていると認められる。
また、甲第4号証の「記載事項4-1」からみて、甲第4号証には、ビッグボーナスフラグ成立時、テンパイランプの動きを通常時と異ならせるが、これは100%でないこと、つまり、ビッグボーナスゲームの入賞態様が決定されたとき、テンパイランプの動きでビッグボーナスゲームが決定されたことを報知する場合もあるがしない場合もあることが開示されていると認められる。
ところで、被請求人は、甲第3号証および甲第4号証に記載されたものは、「複数のリールが全て停止したことを条件に、複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前」に報知を行うことを前提としたものではないから、「前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあ」るという構成は示されていない旨の主張をしているが、「報知を行う場合もあり、また報知を行わない場合もある」という技術思想は、「いつ報知を行うか」という技術思想と直接的に関連するものでないので、甲第3号証および甲第4号証の記載から、報知の時期にかかわらず、「特典ゲームが決定されたとき、それを報知する場合もあるし、また報知しない場合もある」という技術思想を汲み取ることができると認められる。
そして、甲第3号証あるいは甲第4号証に記載された報知手法(特典ゲームが決定されたとき、それを報知したり報知しなかったりすること)を、甲1発明に適用することに特段の阻害要因はなく、むしろスロットマシンでは遊技上の興趣を高めるために様々な報知手法を組み合わせることが普通に行われているのであるから、甲1発明において、特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、報知手段が当該決定を報知する場合もあり、また報知しない場合もあるようにすることは、甲第3号証あるいは甲第4号証に記載されたものから当業者が容易に想到できたと認められる。
<相違点3>について
甲第5号証の「記載事項5-1」からみて、甲第5号証には、何のフラグも立っていない場合でも、ジャストでボタンを押した場合にリーチ目(ガセリーチ目)が出現することがあること、すなわち、特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、(特典ゲームの入賞態様が決定されたことを意味する)リーチ目を出現させる場合があることが開示されていると認められる。
このリーチ目(ガセリーチ目)は、「ジャストでボタンを押した場合」という条件で出現するものではあるが、特典ゲームの入賞態様が決定されていなければ通常は決して揃わない目(図柄の並び)であるリーチ目が出現するというのであるから、甲第5号証の記載から、特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても特典ゲームの入賞態様が決定されたときと同じような報知(ガセ報知)を行う、という技術思想は汲み取れるといえる。
そして、「相違点2について」でも述べたように、スロットマシンでは様々な報知手法を組み合わせることが普通に行われているから、甲1発明における報知手段において、甲第5号証に記載された技術思想を組み合わせて、特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、所定の表示態様で報知を行う場合があるようにすることは、当業者が容易に想到できたと認められる。

さらに、本件発明1の作用効果等を勘案しても、本件発明1に特段のものを認めることができない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたと認められる。

6-5-2 本件発明2について
(1)対比・判断
本件発明2と甲1発明を対比すると、両者には、前記<相違点1>ないし<相違点3>の他に、以下の点で相違がある。

<相違点4>
本件発明2は、「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であって、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されている」ものであるのに対し、
甲1発明は、上記のようなものでない点。

<相違点4>について
相違点4に係る事項は、前記「6-2 無効理由2について」で述べたように、特典ゲームの入賞態様が決定された場合の中で、報知を行う場合と報知を行わない場合の比率をどうするか特定する事項であり、当該事項によって本件発明2は、報知を行う場合の比率を大きくし、報知を行わない場合の比率を小さくしたものに特定されている。
しかして、「入賞態様が決定された場合であっても、報知を行う場合と報知を行わない場合を設ける」という技術思想に接したとき、報知を行う場合と報知を行わない場合をどのくらいの比率で振り分けるかは普通に考えることであり、報知を行わない場合の比率を報知を行う場合の比率より低くする程度のことは、適宜選択し得る設計事項にすぎないと認められる。
さらにまた、甲第6号証には、「大当たりフラグがセットされた(大当たり入賞が決定された)場合において、1/2の確率で大当たりが事前報知され、1/4の確率でリーチが事前報知され、1/4の確率で事前報知がなされないもの」が記載されており、入賞態様が決定された場合の中で、当該大当たりを報知しない場合の比率を報知する場合の比率よりも低くするという技術思想は本願出願前から知られていたと認められるので、この点からも相違点4に格別のものを認めることはできない。
したがって、本件発明2は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたと認められる。

6-5-3 本件発明3について
(1)対比・判断
本件発明3と甲1発明を対比すると、両者には、前記<相違点1>ないし<相違点3>の他に、以下の点で相違がある。

<相違点5>
本件発明3は、「前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されている」ものであるのに対し、
甲1発明は、上記のようなものでない点。

<相違点5>について
相違点5に係る事項は、前記「6-3 無効理由3について」で述べたように、報知手段による報知が行われる場合の中で、「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合」の比率を、「前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う」場合の比率より低くすることを特定するものであり、この事項によって、請求項3に係る発明は、特典ゲームに入賞したと思わせる報知が行われる中で、「実際に特典ゲームの入賞態様が決定されて、報知が行われる場合」の比率は、「実際には特典ゲームの入賞態様が決定されていないのに、報知が行われる場合」の比率よりも低い(つまりは、大当たり報知がされていても、それがガセ報知である場合の方が多い)ものに特定されていると理解することができる。
しかして、「入賞態様が決定された場合であっても、報知を行う場合と報知を行わない場合を設ける」という技術思想に接した時、報知を行う場合と報知を行わない場合をどのくらいの比率で振り分けるかは普通に考えることであるのと同様に、「入賞態様が決定されていない場合であっても、報知を行う場合と行わない場合を設ける」という技術思想に接したとき、報知を行う場合と報知を行わない場合をどのくらいの比率で振り分けるかもまた普通に考えることである。
そして、入賞態様が決定された場合における、報知を行う場合の比率と報知を行わない比率、および、入賞態様が決定されていない場合における、報知を行う場合の比率と報知を行わない場合の比率を決めれば、報知を行う場合における、入賞態様が決定されてる場合の比率と入賞態様が決定されていない場合の比率は自ずと決まってしまう事項であるから、相違点5に係る事項は、適宜選択し得る設計事項にすぎないと認められる。
さらにまた、甲第7号証には、リーチ表示が行われた場合において、その後外れる確率は14/15であり、またその後当たりになる確率は1/15である遊技機、つまりリーチ状態(大当たりが決定されたと期待を抱かせる態様)が表示された場合において、大当たりとなる場合(大当たりが決定されている場合)の確率を、リーチ状態が表示された場合において、ハズレとなる場合(大当たりが決定されていない場合)の確率よりも低くしたもの、つまりは、大当たりが決定されたと期待を抱かせるような報知が行われてもガセである場合が多いもの、が記載されており、相違点5に係る事項は本願出願前から知られていたと認められるので、この点からも相違点5に格別のものを認めることはできない。
したがって、本件発明3は、甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたと認められる。

6-5-4 本件発明4について
(1)対比・判断
本件発明4と甲1発明を対比すると、両者には、前記<相違点1>ないし<相違点4>の他に、以下の点で相違がある。

<相違点6>
本件発明4は、「前記抽出された乱数に基づいて前記報知手段による報知を行うか否かを選択する報知確率テーブルを備え、前記報知確率テーブルは、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属する数値データの少なくとも一部を含むデータと、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属さない数値データの少なくとも一部を含むデータとからなる報知区画データ範囲を有している」ものであるのに対し、
甲1発明は、上記のようなものでない点。

<相違点6>について
甲第8号証には、0から224の値を取り得るランダムカウンタ「C RND1」から取り出した乱数に基づいて大当たりを発生するか否か事前決定し、大当たりを発生させることが決定された場合、0から899の値を取り得るランダムカウンタ「C RND YOK」から取り出した乱数に基づいて大当たり予告を実行するか否か決定するものが記載されている。
また、甲第9号証には、役物用CPU51で生成された乱数に基づいて大当たりを判定し、役物用CPU51で生成された乱数に基づいて停止表示態様の種類分けを行うものが記載されている。
そして、請求人は、甲第9号証には「大当たりの判定」と「停止表示態様の種類分け」という複数の事象を1つの乱数に基づいて決定することが記載されているので、甲第8号証に記載された、「大当たりの決定」と「大当たり予告を行うか否かの決定」を2つのランダムカウンタ(「C RND1」と「C RND YOK」)から得られた乱数によって行うものに換えて、同じ乱数を用いて「入賞態様の決定」と「報知を行うか否かの決定」を行うようにすることは容易に想到できる、旨の主張をしている。
しかしながら、甲第8号証に記載されたものは、大当たりを決定するための第1の乱数によって「大当たりの決定」を行った後に、前記第1とは異なる乱数によって「大当たり予告を行うか否かの決定」を行うものであって、「大当たりの決定」と「大当たり予告を行うか否かの決定」を2つの異なる乱数に基づいて行うというだけでなく、その乱数が取り得る値の範囲も異なるものであるから、甲第8号証に記載された2つのランダムカウンタを一つにして、「入賞態様の決定」と「報知を行うか否かの決定」に同じ乱数を用いることが容易に想到できたとはいえない。
仮に「入賞態様の決定」と「報知を行うか否かの決定」に同じ乱数を用いることが容易に想到できたとしても、大当たりを決定するための数値範囲と大当たり予告を行うか否かを決定するための数値範囲を関連づけるという思想を導くことはできないので、上記相違点6に係る事項が容易に想到できたということはできない。
さらに、請求人が提示した全証拠を精査しても、上記事項を示唆する記載はない。
そして、本件発明4は、相違点6に係る事項により、「入賞態様の決定」をするための抽選を行うと同時に「報知を行うか否かの決定」の抽選が行えるという、全証拠の記載から予想できない作用効果を生じるものと認められる。
したがって、本件発明4は、甲第1号証ないし甲9第号証に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたとは認められない。

6-5-5 無効理由5についてのまとめ
本件発明1ないし本件発明3は、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
一方、本件発明4は、甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとは認めることができない。

6-6 全ての無効理由についてのまとめ
以上のとおり、無効理由1ないし無効理由4については、本願を無効とする理由にはならない。
そして、無効理由5については、請求項1ないし請求項3に係る発明について理由があり、請求項4に係る発明について理由がない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、特許を無効とすべきものである。
また、本願請求項4に係る発明の特許は、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、その4分の1を請求人の負担とし、4分の3を被請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う遊技機において、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、
前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段を備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であって、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていること
を特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項4】
前記抽出された乱数に基づいて前記報知手段による報知を行うか否かを選択する報知確率テーブルを備え、
前記報知確率テーブルは、
前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属する数値データの少なくとも一部を含むデータと、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属さない数値データの少なくとも一部を含むデータとからなる報知区画データ範囲を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乱数抽選によって入賞態様が決定され、特典ゲーム入賞態様が発生する遊技機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の遊技機としては例えばスロットマシンがある。一般的なスロットマシンでは、前面パネルの背後に3個のリールが3列に並設されている。各リールの外周には種々の図柄が描かれており、これら図柄は、各リール毎に設けられた内蔵光源(バックライト)によって背後から照明され、前面パネルに形成された各窓を介して観察される。この窓には5本の入賞ラインが記されており、スロットマシン遊技は、いずれかのこの入賞ライン上に所定の図柄の組み合わせが揃うか否かによって行われる。
【0003】
遊技は遊技者によって投入口にメダルが投入されることによって開始され、遊技者によってさらにスタートレバーの操作がされると、各リールは一斉に回転し出す。各リールが一定速度に達すると、各リールに対応して設けられた各ストップボタンの操作は有効となる。遊技者は移動する図柄を観察しながら各ストップボタンを操作し、各リールの回転を停止させ、所望の図柄をいずれかの入賞ライン上に停止表示させようとする。各リールは各ストップボタンの操作タイミングに応じてその回転が停止する。この停止時にいずれかの入賞ライン上に所定の図柄組み合わせが表示されると、その図柄組み合わせに応じた入賞が得られる。
【0004】
入賞態様には大当たり入賞や中当たり入賞,小当たり入賞等がある。大当たり入賞および中当たり入賞は特典ゲーム入賞態様であり、図柄「7」や所定のキャラクタ図柄が入賞ライン上に所定個揃うと発生する。大当たり入賞ではビッグ・ボーナス・ゲーム(BBゲーム)、中当たり入賞ではレギュラー・ボーナス・ゲーム(RBゲーム)という特別遊技が行え、大量のコインを獲得することが出来る。また、小当たり入賞は「チェリー」や「ベル」といった図柄が入賞ライン上に3個揃うと発生し、この小当たり入賞では数枚のメダルを獲得することが出来る。
【0005】
このような入賞態様は、スタートレバーが操作された直後に行われる乱数抽選によって決定され、各リールが遊技者によって停止操作される前には既に定まっている。この乱数抽選は遊技機内部に構成された入賞態様決定手段で実施される。この乱数抽選によって大当たり入賞が決定されると、機器前面パネルに設けられたランプが点灯し、機械の内部抽選によって大当たり入賞が発生したことが遊技者に報知される。その後、遊技者の停止ボタン操作に応じて各リールの回転が停止制御され、乱数抽選によって決定された入賞の図柄組合せが入賞ライン上に停止表示されると、入賞を実際に体験できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の遊技機では、大当たり自体の発生頻度がもともと少なく、大当たり入賞が発生した場合の報知は、ランプが単に点灯することだけによってなされるため、何ら遊技上の面白味はない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決することを目的になされたものであって、この目的は、下記(1)?(4)の発明によって達成される。
【0008】
(1)複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、
種々の図柄を複数のリールに表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを有効化入賞ライン上に停止表示する可変表示装置と、
この可変表示装置の可変表示を開始させるスタートレバーと、
前記複数のリールを各リール毎に停止させる複数の停止ボタンと、
前記複数のリール毎に設けられ、前記種々の図柄を背後から照明する複数の光源と、を備え、
前記可変表示装置は、前記停止ボタンが操作されることに基づいて前記入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記有効化入賞ライン上に停止表示するが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を前記有効化入賞ライン上に停止できるタイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に対応する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行う遊技機において、
前記複数のリールが全て停止したことを条件に、前記複数のリール全ての停止表示の態様にかかわらず、メダルの払出しが行われる前に前記各光源を所定の表示態様で点灯制御する報知手段であって、
前記入賞態様決定手段によって特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合も、前記所定の表示態様で報知を行わない場合もあり、
前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行う場合がある報知手段を備えたことを特徴とする遊技機。
【0009】
(2)前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であっても、前記所定の表示態様で報知を行わない確率は、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合であって、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていること
を特徴とする上記(1)に記載の遊技機。
(3)前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定された場合に、前記所定の表示態様で報知を行う場合の確率は、前記報知手段による報知が行われる場合であって、前記入賞態様決定手段によって前記特典ゲームの入賞態様が決定されていない場合に、前記所定の表示態様で報知を行う確率よりも低く設定されていることを特徴とする上記(1)に記載の遊技機。
【0010】
(4)前記抽出された乱数に基づいて前記報知手段による報知を行うか否かを選択する報知確率テーブルを備え、
前記報知確率テーブルは、
前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属する数値データの少なくとも一部を含むデータと、前記確率テーブルにより前記特典ゲームの入賞態様に属さない数値データの少なくとも一部を含むデータとからなる報知区画データ範囲を有していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の遊技機。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による遊技機をスロットマシンに適用した第1の実施形態について説明する。
【0012】
図1は本実施形態によるスロットマシン1の正面図である。
【0013】
スロットマシン1の前面パネル2の背後には可変表示装置を構成する3個のリール3,4,5が回転自在に設けられている。各リール3,4,5の外周面には複数種類の図柄(以下、シンボルという)から成るシンボル列が描かれている。これらシンボルはスロットマシン1の正面の表示窓6,7,8を通してそれぞれ3個ずつ観察される。また、表示窓6,7,8の下方右側には、遊技者がメダルを入れるための投入口9が設けられている。
【0014】
各リール3?5は図2に示す回転リールユニットとして構成されており、フレーム51にブラケット52を介して取り付けられている。各リール3?5はリールドラム53の外周にリール帯54が貼られて構成されている。リール帯54の外周面には上記のシンボル列が描かれている。また、各ブラケット52にはステッピングモータ55が設けられており、各リール3?5はこれらモータ55が駆動されて回転する。
【0015】
各リール3?5の構造は図3(a)に示される。なお、同図において図2と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。リール帯54の背後のリールドラム53内部にはランプケース56が設けられており、このランプケース56の3個の各部屋にはそれぞれバックランプ57a,57b,57cが取り付けられている。これらバックランプ57a?57cは図3(b)に示すように基板58に実装されており、この基板58がランプケース56の背後に取り付けられている。また、ブラケット52にはホトセンサ59が取り付けられている。このホトセンサ59は、リールドラム53に設けられた遮蔽板60がリールドラム53の回転に伴ってホトセンサ59を通過するのを検出する。
【0016】
各バックランプ57a?57cは後述するランプ駆動回路48によって個別に点灯制御される。各バックランプ57a?57cの点灯により、リール帯54に描かれたシンボルの内、各バックランプ57の前部に位置する3個のシンボルが背後から個別に照らし出され、各表示窓6?8にそれぞれ3個ずつのシンボルが映し出される。
【0017】
また、図1に示す表示窓6?8には、横3本(中央L1および上下L2A,L2B)および斜め2本(斜め右下がりL3A,斜め右上がりL3B)の入賞ラインが記されている。ゲーム開始に先立ち、遊技者がメダル投入口9に1枚のメダルを投入したときは、各リール3?5上にある中央の入賞ラインL1だけが図4(a)に示すように有効化される。また、2枚のメダルを投入口9に投入したときはこれに上下の入賞ラインL2A,L2Bが加わり、横3本の入賞ラインL1,L2AおよびL2Bが同図(b)に示すように有効化される。また、3枚のメダルを投入口9に投入したときは全ての入賞ラインL1,L2A,L2B,L3AおよびL3Bが同図(c)に示すように有効化される。
【0018】
なお、同図における丸印は各リール3?5上に描かれたシンボルを表している。このような入賞ラインの有効化は、各入賞ラインの端部に配置された有効化ライン表示ランプ23(図1参照)が点灯することにより、遊技者に表示される。
【0019】
また、表示窓6?8の下方左側には、1BETスイッチ10,2BETスイッチ11およびマックスBETスイッチ12が設けられている。クレジット数表示部13にメダルがクレジットされている場合には、メダル投入口9へのメダル投入に代え、これら1BETスイッチ10,2BETスイッチ11およびマックスBETスイッチ12の各押ボタン操作により、1回のゲームにそれぞれ1枚,2枚および3枚のメダルが賭けられる。クレジット数表示部13は、表示する数値の桁数に応じた個数の7セグメントLEDで構成されており、現在クレジットされているメダル数を表示する。
【0020】
これらBETスイッチ10?12の下方にはクレジット/精算切換スイッチ(C/Pスイッチ)14およびスタートレバー15が設けられており、スタートレバー15の右方の機器中央部には停止ボタン16,17,18が設けられている。C/Pスイッチ14の押しボタン操作により、メダルのクレジット/払い出し(PLAY CREDIT/PAY OUT)を切り換えることが出来る。
【0021】
スタートレバー15のレバー操作により、リール3,4,5の回転が一斉に開始する。停止ボタン16,17,18は、各リール3,4,5に対応して配置されている。各リール3?5の回転速度が一定速度に達したときに各停止ボタン16?18の操作が有効化され、各停止ボタン16?18は遊技者の押しボタン操作に応じて各リール3?5の回転を停止させる。
【0022】
また、スロットマシン1の正面下部には透音孔19およびメダル受皿20が設けられている。透音孔19は、機器内部に収納されたスピーカから発生した音を外部へ出すものである。メダル受皿20はメダル払出口21から払い出されるメダルを貯めるものである。また、スロットマシン1の正面上部には、各入賞に対してどれだけのメダルが払い出されるかが示されている配当表示部22が設けられている。
【0023】
また、各リール3,4,5の右方の前面パネル2には液晶表示部24が設けられている。この液晶表示部24は各リール3,4,5の回転表示をしたり、遊技履歴を表示したり、特典ゲーム中に演出を行ったりするディスプレイ装置である。
【0024】
図5は、本実施形態のスロットマシン1における遊技処理動作を制御する制御部と、これに電気的に接続された周辺装置(アクチュエータ)とを含む回路構成を示している。
【0025】
制御部はマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)30を主な構成要素とし、これに乱数サンプリングのための回路を加えて構成されている。マイコン30は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPU31と、記憶手段であるROM32およびRAM33を含んで構成されている。CPU31には、基準クロックパルスを発生するクロックパルス発生回路34および分周器35と、一定範囲の乱数を発生させる乱数発生手段である乱数発生器36および発生した乱数の中から任意の乱数を抽出する乱数抽出手段である乱数サンプリング回路37が接続されている。
【0026】
マイコン30からの制御信号により動作が制御される主要なアクチュエータとしては、リール3,4,5を回転駆動する各ステッピングモータ55、メダルを収納するホッパ38、液晶表示部24、スピーカ39およびバックランプ57a?57cがある。これらはそれぞれモータ駆動回路40、ホッパ駆動回路41、表示駆動回路42、スピーカ駆動回路43およびランプ駆動回路48によって駆動される。これら駆動回路40?43,48は、マイコン30のI/Oポートを介してCPU31に接続されている。各ステッピングモータ55はモータ駆動回路40によって1-2相励磁されており、400パルスの駆動信号が供給されるとそれぞれ1回転する。
【0027】
また、マイコン30が制御信号を生成するために必要な入力信号を発生する主な入力信号発生手段としては、スタートレバー15の操作を検出するスタートスイッチ15Sと、メダル投入口9から投入されたメダルを検出する投入メダルセンサ9Sと、前述したC/Pスイッチ14とがある。また、ホトセンサ59、およびこのホトセンサ59からの出力パルス信号を受けて各リール3,4,5の回転位置を検出するリール位置検出回路44もある。
【0028】
ホトセンサ59は各リール3,4,5が一回転する毎に遮蔽板60を検出してリセットパルスを発生する。このリセットパルスはリール位置検出回路44を介してCPU31に与えられる。RAM33内には、各リール3?5について、一回転の範囲内における回転位置に対応した計数値が格納されており、CPU31はリセットパルスを受け取ると、RAM33内に形成されたこの計数値を“0”にクリアする。このクリア処理により、各シンボルの移動表示と各ステッピングモータ55の回転との間に生じるずれが、一回転毎に解消されている。
【0029】
さらに、上記の入力信号発生手段として、リール停止信号回路45と、払出し完了信号発生回路46とがある。リール停止信号回路45は、停止ボタン16,17,18が押された時に、対応するリール3,4,5を停止させる信号を発生する。また、メダル検出部47はホッパ38から払い出されるメダル数を計数し、払出し完了信号発生回路46は、このメダル検出部47から入力した実際に払い出しのあったメダル計数値が所定の配当枚数データに達した時に、メダル払い出しの完了を知らせる信号をCPU31へ出力する。
【0030】
ROM32には、このスロットマシン1で実行されるゲーム処理の手順がシーケンスプログラムとして記憶されている他、入賞確率テーブル,シンボルテーブルおよび入賞シンボル組合せテーブル等がそれぞれ区分されて格納されている。
【0031】
入賞確率テーブルは、サンプリング回路37で抽出された乱数を各入賞態様に区分けする乱数区分手段を構成しており、乱数発生器36で発生する一定範囲の乱数を各入賞態様に区画するデータを記憶している。このような入賞確率テーブルは例えば図6に示すように構成される。同図におけるa1?a3,b1?b3,c1?c3,d1?d3,e1?e3,f1?f3,g1?g3は予め設定された数値データであり、サンプリング回路37で抽出された乱数を各入賞態様に区画する際に用いられる。このデータは、投入メダル枚数が1枚の場合には「a1?g1」、2枚の場合には「a2?g2」、3枚の場合には「a3?g3」の各数値の組合せが用いられる。
【0032】
これら数値は通常「a<b<c<d<e<f<g」の大小関係に設定され、抽出された乱数値がa未満であれば大当たり入賞(大ヒット)となって「BB」当選フラグが立つ。また、抽出された乱数値がa以上b未満であれば中当たり入賞(中ヒット)となって「RB」当選フラグが立つ。また、抽出された乱数値がb以上f未満であれば小当たり入賞(小ヒット)となり、この場合、b以上c未満の場合には「スイカ」当選フラグが立ち、c以上d未満の場合には「ベル」当選フラグ、d以上e未満の場合には「4枚チェリー」当選フラグ、e以上f未満の場合には「2枚チェリー」当選フラグが立つ。また、抽出された乱数値がf以上g未満であれば「再遊技」当選フラグが立ち、g以上であれば入賞なしの「ハズレ」当選フラグが立つ。
【0033】
つまり、入賞態様は、サンプリングされた1つの乱数値がこのどの数値範囲に属するかによって決定され、「ハズレ」および「再遊技」を含めて合計8種類の当選フラグによって表される。ここで、乱数発生器36,サンプリング回路37,入賞確率テーブルおよびマイコン30は入賞態様決定手段を構成している。各種のヒットはこのような入賞確率テーブルのデータ設定に応じた確率の下で発生するため、遊技者の技量に極端に左右されることなく、例えば1日の営業時間内でのトータル的なメダル支払い率がほぼ一定に維持されている。
【0034】
また、シンボルテーブルは図7に概念的に示される。このシンボルテーブルは各リール3?5の回転位置とシンボルとを対応づけるものであり、シンボル列を記号で表したものである。このシンボルテーブルにはコードナンバに対応したシンボルコードが各リール3?5毎に記憶されている。コードナンバは、前述したリセットパルスが発生する回転位置を基準として各リール3?5の一定の回転ピッチ毎に順次付与されている。シンボルコードはそれぞれのコードナンバ毎に対応して設けられたシンボルを示している。
【0035】
また、入賞シンボル組合せテーブルには、配当表示部22に示される各入賞シンボル組合せのシンボルコードや、特定ゲーム発生のフラグが成立していることを遊技者に示唆する「リーチ目」を構成するシンボル組合せのシンボルコード、各入賞を表す入賞判定コード、入賞メダル配当枚数等が記憶されている。この入賞シンボル組合せテーブルは、第1リール3,第2リール4、第3リール5の停止制御時、および全リール停止後の入賞確認を行うときに参照される。
【0036】
次に、本実施形態においてマイコン30で制御される遊技機の動作について説明する。
【0037】
図8および図9はこの遊技処理の概略を示すフローチャートである。
【0038】
まず、CPU31により、メダルBETがなされたかどうかが判別される(図8,ステップ101参照)。この判別は、メダル投入口9にメダルが投入され、メダルセンサ9Sからの検出信号入力があった場合、あるいはBETスイッチ10,11,12からの信号入力があった場合に“YES”となる。その場合、次にスタートレバー15の操作によりスタートスイッチ15Sからのスタート信号入力があったか否かが判別される(ステップ102)。
【0039】
この判別が“YES”の場合、前述した入賞態様決定手段によって入賞判定(確率抽選処理)が行われる(ステップ103)。入賞判定が行われるタイミングは、図10(k)のタイミングチャートに示され、同図(j)に示すスタートレバー15の操作時に行われる。前述したように入賞判定は、乱数発生器36で発生し、サンプリング回路37によって特定された1つの乱数値が、入賞確率テーブルにおいてどの入賞グループに属する値になっているか判断されることによって行われる。
【0040】
入賞態様決定手段で決定された入賞態様は当選フラグの種類によって表される。当選フラグの種類には「ハズレ」,「2枚チェリー」,「4枚チェリー」,「ベル」,「スイカ」,「再遊技」,「RB」および「BB」の8種類がある。これら当選フラグのうち、「2枚チェリー」,「4枚チェリー」,「ベル」および「スイカ」の各フラグは、内部抽選の結果小当たり入賞に当選した場合に立つ。また、「RB」フラグは内部抽選の結果中当たり入賞に当選した場合、「BB」フラグは内部抽選の結果大当たり入賞に当選した場合に立つ。
【0041】
次に、リール3,4,5の回転処理が行われ(ステップ104)、各リール3?5は図10(a)?(c)に示すように同図(j)のスタートレバー15の操作タイミングに応じて一斉に回転し出す。引き続いてリール3,4,5の停止制御が行われ(ステップ105)、第1リール停止ボタン16,第2リール停止ボタン17,第3リール停止ボタン18が同図(d),(e),(f)に示すようにこの順番に操作されると、第1リール3,第2リール4,第3リール5は各停止ボタン操作タイミングに応じた同図(a),(b),(c)に示すタイミングで停止する。
【0042】
なお、本実施形態で説明するリール停止制御においては、便宜上、第1リール停止ボタン16,第2リール停止ボタン17,第3リール停止ボタン18がこの順番に操作され、各リール3?5が第1リール3,第2リール4,第3リール5の順番で停止する場合について説明している。しかし、各リール3?5の停止順序はこれに限定されるものではなく、例えば、第1リール停止ボタン16,第3リール停止ボタン18,第2リール停止ボタン17のように、ランダムな操作順序により停止するようにしてもよい。
【0043】
リール停止制御は入賞判定の結果セットされた当選フラグの種類に応じて行われる。つまり、当選フラグが「ハズレ」の場合には、CPU31によってモータ駆動回路40が制御され、いずれの有効化入賞ライン上にも入賞シンボル組合せが揃わないように各リール3?5が停止制御される。
【0044】
また、当選フラグが「2枚チェリー」の場合には、CPU31によってモータ駆動回路40が制御され、いずれかの有効化入賞ライン上にシンボル「チェリー」の組合せが揃うように各リール3?5が停止制御される。また、当選フラグが「4枚チェリー」の場合には、2本の有効化入賞ライン上にシンボル「チェリー」の組合せがそれぞれ揃うように各リール3?5が停止制御される。また、当選フラグが「ベル」,「スイカ」の場合には、いずれかの有効化入賞ライン上にシンボル「ベル」,「スイカ」の組合せが揃うように各リール3?5が停止制御される。
【0045】
また、当選フラグが「RB」,「BB」の場合には、いずれかの有効化入賞ライン上にシンボル「7」または所定のキャラクタ・シンボルの組合せが揃うように各リール3?5が停止制御される。
【0046】
次に、ステップ103の確率抽選処理の結果、特典ゲーム入賞当選フラグつまり「RB」当選フラグか「BB」当選フラグが立ったか否かが判断される(ステップ106)。特典ゲーム入賞当選フラグが立っている場合には、次に、リールランプ点滅制御処理(ステップ107)が行われる。また、特典ゲーム入賞当選フラグが立っていない場合には、処理は後述するステップ108に移る。ステップ107のリールランプ点滅制御処理では、ランプ駆動回路48がCPU31によって制御され、各リール3?5の各バックランプ57a?57cが所定の表示態様で点滅するように点灯制御される。ここで、ランプ駆動回路48,各バックランプ57a?57cおよびマイコン30は特典ゲーム入賞を予兆報知する報知手段を構成している。
【0047】
例えば、特典ゲーム入賞当選フラグが「BB」当選フラグである場合には、各バックランプ57a?57cは図10(g)?(i)に示すタイミングで図11に示す表示態様に点灯制御される。
【0048】
つまり、全リール3?5が停止する図10(c)に示す第3リール5の停止タイミングに、第2リール4の上段のバックランプ57aが図11(a)に示すように点灯する。その後、同図(b)に示すように第2リール4の中段のバックランプ57bが点灯し、続いて同図(c)に示すように第2リール4の下段のバックランプ57cが点灯する。ここまでの点灯タイミングは図10(h)のa,b,cに示される。引き続いて図11(d)に示すように第1リール3および第3リール5の各下段の各バックランプ57cが点灯し、同図(e)に示すように第1リール3および第3リール5の各中段の各バックランプ57bが点灯する。最後に同図(f)に示すように第1リール3および第3リール5の各上段の各バックランプ57aが点灯する。これらの点灯タイミングは図10(g),(i)のc,b,aにそれぞれ示される。
【0049】
また、特典ゲーム入賞当選フラグが「RB」当選フラグである場合には、各バックランプ57a?57cは図12に示す表示態様に点灯制御される。
【0050】
つまり、全リール3?5が停止する停止タイミングに、一旦、各リール3?5の全バックランプ57a?57cが図12(a)に示すように点灯する。続いて第1リール3の中段のバックランプ57bが同図(b)に示すように消灯する。その後、同図(c)に示すように第2リール4の中段のバックランプ57bが消灯し、続いて同図(d)に示すように第3リール5の中段のバックランプ57bが消灯する。最後に同図(e)に示すように各リール3?5の全バックランプ57a?cが点灯する。
【0051】
図8のステップ105のリール停止制御は機械によって全て行われるのではなく、遊技者による各停止ボタン16?18の操作タイミングも問われる。つまり、内部抽選の結果入賞当選フラグが立っていても、遊技者によって停止ボタン16?18が所定タイミングに操作されないと、有効化入賞ライン上に入賞シンボル組合せは揃わず、入賞は発生しない。
【0052】
このため、次に、リール停止時の表示が所定の入賞シンボル組合せであるか否かが、入賞シンボル組合せテーブルを参照して判断される(ステップ108)。入賞が得られなかったときには“NO”となって処理は初めのステップ101に戻る。また、入賞判定の結果リプレイゲーム(再遊技)であるときは、処理はステップ102のスタートレバー15の操作待ち処理に戻る(ステップ109)。リプレイゲームでない入賞のときには、CPU31によってホッパ駆動回路41が制御され、所定枚数のメダルがホッパ38によってコイン受け皿20へ払い出される(図9,ステップ111)。
【0053】
例えば、「2枚チェリー」の小当たり入賞の場合には2枚のメダルが払い出され、「4枚チェリー」の小当たり入賞の場合には4枚のメダルが払い出される。また、「ベル」の小当たり入賞の場合には6枚のメダル、「スイカ」の小当たり入賞の場合には8枚のメダルが払い出される。また、「BB」,「RB」の大当たり入賞の場合にはそれぞれ15枚のメダルが払い出される。
【0054】
次に、BBゲームが発生したか否かが判断され(ステップ112)、BBゲームが発生している場合にはBBゲームが実行される(ステップ113)。このBBゲームでは一般遊技およびボーナスゲームのセットを複数回行うことが出来る。BBゲーム中の一般遊技では小当たり入賞が高確率で発生する。また、ボーナスゲームは複数回の高配当ゲームが一組となったゲームである。BBゲームが発生していない場合には、次にRBゲームが発生したか否かが判断され(ステップ114)、RBゲームが発生している場合にはRBゲームが実行される(ステップ115)。このRBゲームでは上記のボーナスゲームが1回行える。
【0055】
その後、上述した処理が繰り返されてスロットマシン遊技が行われる。
【0056】
このような本実施形態によれば、各回転リール3?5の背後に設けられた各バックランプ57a?57cが全リール3?5の停止後に報知手段によって所定表示態様で点灯制御され、特典ゲーム入賞が遊技者に報知される。例えば、「BB」当選フラグ入賞は各バックランプ57a?57cが図11に示す表示態様で点灯制御されることによって遊技者に報知され、また、「RB」当選フラグ入賞は各バックランプ57a?57cが図12に示す表示態様で点灯制御されることによって遊技者に報知される。従って、前面パネルに設けられたランプが単に点灯して特典ゲーム入賞態様が報知される従来のスロットマシンと異なり、特典ゲーム入賞の報知は従来よりも高い装飾性をもって行われる。
【0057】
また、この点灯制御は遊技者の目前にある全リール窓6?8を使った広い面積で行われるため、特典ゲーム入賞は強いインパクトをもって遊技者の視覚にとらえられ、遊技者は特典ゲーム入賞の喜びの実感をより強く味わえる。また、遊技者は、視覚的に楽しいこの点灯制御が全回転リール停止後に現れることを各遊技毎に期待するようになる。この結果、スロットマシン遊技の興趣は増すようになる。
【0058】
なお、上記実施形態では図11および図12に示す表示態様で各バックランプ57a?57cを点灯制御し、「BB」および「RB」の各当選フラグ入賞を遊技者に報知する構成としたが、図13?図15に示す表示態様で各バックランプ57a?57cを点灯制御し、特典ゲーム入賞を遊技者に報知する構成としてもよい。
【0059】
つまり、特典ゲーム入賞当選フラグが「BB」当選フラグである場合には、各バックランプ57a?57cを図13に示す表示態様で点灯制御する。まず、全リール3?5が停止するタイミングに、第2リール4の上段,下段のバックランプ57a,57cを同図(a)に示すように点灯する。その後、同図(b)に示すように第1リール3の上段のバックランプ57aおよび第3リール5の下段のバックランプ57cを点灯し、続いて同図(c)に示すように第1リール3および第3リール5の中段の各バックランプ57bを点灯する。引き続いて同図(d)に示すように第1リール3の下段のバックランプ57cおよび第3リール5の上段のバックランプ57aを点灯し、最後に同図(e)に示すように第2リール4の上段,下段のバックランプ57a,57cを点灯する。
【0060】
また、特典ゲーム入賞当選フラグが「RB」当選フラグである場合には、各バックランプ57a?57cを図14および図15に示す表示態様で点灯制御する。まず、全リール3?5が停止するタイミングに、一旦、各リール3?5の全バックランプ57a?57cを図14(a)に示すように点灯する。続いて第1リール3,第2リール4,第3リール5の中段の各バックランプ57bを同図(b),(c),(d)に示すように消灯する。その後、同図(e)に示すように各リール3?5の全バックランプ57a?cを点灯する。さらに、図15(f),(g),(h)に示すように第1リール3,第2リール4,第3リール5の中段の各バックランプ57bを順次消灯し、最後に同図(i)に示すように各リール3?5の全バックランプ57a?cを点灯する。
【0061】
このような表示態様によっても上記実施形態と同様な効果が奏される。
【0062】
次に、本発明による遊技機をスロットマシンに適用した第2の実施形態について説明する。
【0063】
本実施形態によるスロットマシンの構成は上記の第1の実施形態によるスロットマシンの構成と次の各点が相違しており、これら以外の構成は上記実施形態によるスロットマシンと同じである。
【0064】
つまり、上記実施形態によるスロットマシンでは確率抽選処理(図8,ステップ103)で特典ゲーム入賞が抽選されると、この特典ゲーム入賞が報知手段によって必ず遊技者に報知された。しかし、本実施形態によるスロットマシンでは、確率抽選処理で特典ゲーム入賞が抽選されても、必ずしもこの特典ゲーム入賞が報知されるとは限らない。また、入賞態様決定手段で特典ゲーム入賞以外の入賞態様が決定されても、特典ゲーム入賞が予兆報知される場合がある。
【0065】
以下にこの本実施形態によるスロットマシンについて詳述する。
【0066】
本実施形態によるスロットマシンでは、ROM32に入賞態様報知選択抽選確率テーブルが記憶されている。この報知選択抽選確率テーブルは入賞態様決定手段で決定された入賞態様を所定確率で遊技者に報知する際に参照される。
【0067】
図16に例示する報知選択抽選確率テーブルは、図6に示す入賞確率テーブルにおける3枚賭けの確率テーブルに対応して示されている。つまり、この報知選択抽選確率テーブルの上段には、図6に示す3枚賭け時のヒット区画データである数値データa3?g3の各値が示されている。また、下段には3枚賭け一般遊技時の報知区画データの各値が示されている。ここで、乱数発生器36は0?65535(=216)の範囲の乱数を発生するものとしている。
【0068】
同テーブルによれば、入賞判定時に0?200の範囲にある乱数がサンプリング回路37によって抽出されれば、内部抽選結果は大当たり入賞となって「BB」当選フラグが立ち、201?380の範囲にある乱数がサンプリング回路37によって抽出されれば、内部抽選結果は中当たり入賞となって「RB」当選フラグが立つ。同様に、381?10000の範囲にある乱数が抽出されれば、各役の小当たり入賞当選フラグが立ち、10001?18000の範囲にある乱数が抽出されれば、「再遊技」当選フラグが立ち、18001?65535の範囲にある乱数が抽出されれば、「ハズレ」当選フラグが立つ。
【0069】
また、入賞判定時にサンプリング回路37によって0?150または20000?20200の範囲にある乱数が抽出されていれば、「BB」当選フラグの予兆報知が行われる。つまり、0?150の範囲にある乱数が抽出されて「BB」当選フラグが立った場合には、「BB」当選フラグの特典ゲーム入賞態様報知が行われる。また、20000?20200の範囲にある乱数が抽出されて「ハズレ」当選フラグが立っている場合にも、この特典ゲーム入賞態様報知が行われる。一方、151?200の範囲にある乱数が抽出されて「BB」当選フラグが立っていても、この範囲の乱数は「BB」当選フラグ報知区画データの範囲外であるため、特典ゲーム入賞態様報知は行われない。
【0070】
すなわち、特典ゲーム入賞態様報知が行われても、必ずしも内部抽選によって「BB」当選フラグまたは「RB」当選フラグが立っているとは限らず、また、特典ゲーム入賞態様報知が行われていなくても、内部抽選によって「BB」当選フラグまたは「RB」当選フラグが立っていないとは限らない。特典ゲーム入賞報知は所定の信頼度の下で行われており、図16に示すテーブルの場合には、「BB」当選フラグが立っている場合にこの入賞態様報知が行われる確率は151/352{(0?150の151)/(0?150の151と20000?20200の201との和)}で約43%になっている。また、「BB」当選フラグが立っていない場合にこの入賞態様報知が行われる確率は201/352で約57%になっている。この結果、入賞態様報知は約57%の確率ではずれることになる。
【0071】
次に、本実施形態による遊技処理について図17に示すフローチャートを参照して説明する。
【0072】
同フローチャートのステップ121?123は第1の実施形態の図8に示すフローチャートの101?103と同じであり、まず、CPU31によってメダルBETの有無が判別される(ステップ121)。メダルBETが有った場合には次にスタートレバー15の操作が有ったか否かが判別され(ステップ122)、この操作が有った場合には、前述した確率抽選処理によって入賞態様が決定される(ステップ123)。
【0073】
次に、この確率抽選処理に引き続き、入賞態様の報知選択抽選処理が行われる(ステップ124)。この報知選択抽選タイミングは図10(k)に例示される確率抽選タイミングの直後に行われる。上述したように入賞態様の報知選択抽選処理は、図16に例示する報知選択抽選確率テーブルを用いて行われ、入賞判定時にサンプリング回路37によって特定された1つの乱数値が、この確率テーブルの報知区画データのどの区画に属する値になっているか判断されることによって行われる。この報知選択抽選結果もRAM33の所定領域に書き込まれ、入賞態様が予兆として報知される場合にはステップ124で報知フラグがセットされる。セットされるこの報知フラグは、報知する入賞態様の種類をも表すものとする。
【0074】
次に、リール回転処理(ステップ125)およびリール停止制御処理(ステップ126)が前述したように行われる。
【0075】
次に、ステップ124の報知選択抽選処理によって特典ゲーム入賞報知フラグが立ったか否か、つまり、サンプリングされた乱数値が特典ゲーム入賞報知区画データに属する値か否かが判断される(ステップ127)。サンプリングされた乱数値が特典ゲーム入賞報知区画データに属し、特典ゲーム入賞報知フラグ、つまり「BB」または「RB」の報知フラグが立っている場合には、次に、リールランプ点滅制御処理(ステップ128)が行われる。また、特典ゲーム入賞報知フラグが立っていない場合には、処理はステップ129に移る。
【0076】
ステップ128のリールランプ点滅制御は前述した第1の実施形態におけるリールランプ点滅制御と同様に行われ、特典ゲーム入賞の予兆報知が行われる。前述した第1の実施形態では、特典ゲーム入賞予兆報知の際に参照されるフラグは特典ゲーム入賞当選フラグであったが、本実施形態では予兆報知の際に特典ゲーム入賞報知フラグが参照される。従って、上述したように、特典ゲーム入賞は所定の信頼度の下で報知され、その報知が当たっている場合もあり、外れている場合もある。さらに、入賞態様決定手段でハズレ入賞態様が決定された場合にも、特典ゲーム入賞予兆報知が行われる場合がある。
【0077】
次に、リール停止時の表示が所定の入賞シンボル組合せであるか否かが、入賞シンボル組合せテーブルを参照して判断される(ステップ129)。入賞が得られなかったときには処理は初めのステップ121に戻り、また、入賞判定の結果リプレイゲームであるときは、処理はステップ122のスタートレバー15の操作待ち処理に戻る(ステップ130)。
【0078】
その後の処理は、第1の実施形態で説明した図9に示すフローチャートのステップ111?115に従って同様に行われる。
【0079】
このような本実施形態によれば、特典ゲーム入賞の報知は、全ての内部抽選結果に対して行われるのではなく、報知選択抽選確率テーブル(図16参照)に示すような所定確率で行われる。従って、特典ゲーム入賞は遊技者に報知される場合もあり、報知されない場合もある。また、入賞態様決定手段で特典ゲーム入賞以外の入賞態様が決定された場合にも、特典ゲーム入賞が所定確率で報知される場合もある。よって、遊技者によって特典ゲーム入賞の報知が期待されるようになり、報知があった場合にはその喜びも増し、遊技の興趣はさらに向上する。
【0080】
なお、上記実施形態の説明においては、報知手段は、入賞態様決定手段で「ハズレ」入賞態様が決定されたときにも特典ゲーム入賞態様の予兆報知をする構成について説明したが、特典ゲーム入賞以外の入賞態様が決定されたときには特典ゲーム入賞態様の予兆報知をせず、特典ゲーム入賞態様が決定されたときにだけこれを所定確率で予兆報知する構成としてもよい。
【0081】
また、上記各実施形態においては本発明による遊技機をスロットマシンに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、パチンコ機といった弾球遊技機や、その他のアミューズメント機器に適用してもよい。
【0082】
このような各構成によっても上記の各実施形態と同様な効果が奏される。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、回転リールの背後に設けられた各光源が報知手段によって所定表示態様で点灯制御され、特典ゲーム入賞が遊技者に報知される。従って、特典ゲーム入賞の報知は従来よりも高い装飾性をもって行われる。また、この点灯制御は遊技者の目前にある全リール窓を使った広い面積で行われるため、特典ゲーム入賞は強いインパクトをもって遊技者の視覚にとらえられ、遊技者は特典ゲーム入賞の喜びの実感をより強く味わえる。また、遊技者は、視覚的に楽しいこの点灯制御が全回転リール停止後に現れることを各遊技毎に期待するようになる。この結果、遊技の興趣は増すようになる。また、入賞態様決定手段で特典ゲームの入賞態様が決定された場合、その特典ゲームの入賞が遊技者に報知される場合もあり、報知されない場合もある。そして、入賞態様決定手段で特典ゲーム入賞以外の入賞態様が決定された場合にも、特典ゲームの入賞が報知される場合もある。よって、遊技者によって特典ゲーム入賞の報知が期待されるようになり、報知があった場合にはその喜びも増し、遊技の興趣はさらに向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態によるスロットマシンの外観を示す正面図である。
【図2】図1に示すスロットマシンの回転リールユニットを示す斜視図である。
【図3】図2に示す回転リールユニットを構成する回転リールの構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示すスロットマシンの表示窓に記された入賞ラインが順次有効化される状態を示す図である。
【図5】図1に示すスロットマシンの主要な制御回路構成を示すブロック図である。
【図6】本実施形態によるスロットマシンの遊技処理に用いられる入賞確率テーブルを示す図である。
【図7】本実施形態によるスロットマシンの遊技処理に用いられるシンボルテーブルを示す図である。
【図8】本実施形態によるスロットマシンの遊技処理を示す第1のフローチャートである。
【図9】本実施形態によるスロットマシンの遊技処理を示す第2のフローチャートである。
【図10】本実施形態によるスロットマシンの遊技処理における回路各部のタイミングを示すタイミングチャート図である。
【図11】本実施形態によるスロットマシンの遊技処理において「BB」フラグ予兆報知の際に報知手段によって点灯制御されるリールバックランプの表示態様を示す図である。
【図12】本実施形態によるスロットマシンの遊技処理において「RB」フラグ予兆報知の際に報知手段によって点灯制御されるリールバックランプの表示態様を示す図である。
【図13】図11に示す「BB」フラグ予兆報知表示態様の他の例を示す図である。
【図14】図12に示す「RB」フラグ予兆報知表示態様の他の例の前半を示す図である。
【図15】図12に示す「RB」フラグ予兆報知表示態様の他の例の後半を示す図である。
【図16】第2の実施形態によるスロットマシンの遊技処理に用いられる入賞態様報知選択抽選確率テーブルを示す図である。
【図17】本発明の第2の実施形態によるスロットマシンの遊技処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…スロットマシン
2…前面パネル
3,4,5…第1,第2,第3リール
6,7,8…窓
9…メダル投入口
10,11,12…BETスイッチ
13…クレジット数表示部
14…クレジット/精算切換スイッチ
15…スタートレバー
16,17,18…停止ボタン
19…透音孔
20…メダル受皿
21…メダル払出口
22…配当表示部
23…有効化ライン表示ランプ
24…液晶表示部
L1,L2A,L2B,L3A,L3B…入賞ライン
57a,57b,57c…バックランプ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-04-09 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-26 
出願番号 特願平9-352172
審決分類 P 1 113・ 537- ZD (A63F)
P 1 113・ 121- ZD (A63F)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 池谷 香次郎
吉村 尚
登録日 2007-07-27 
登録番号 特許第3989071号(P3989071)
発明の名称 遊技機  
代理人 黒田 博道  
代理人 正林 真之  
代理人 中島 健  
代理人 正林 真之  

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