• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1220174
審判番号 不服2008-4138  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2010-07-29 
事件の表示 特願2005-371363「シールド掘進機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日出願公開、特開2006-283546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は、平成17年12月26日(優先権主張平成17年3月7日)の出願であって、平成20年1月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月21日付けで手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年2月27日付けで審査官による前置報告書に基づく審尋がなされたところ、同年5月1日付けで回答書が提出されたものである。

【2】平成20年3月21日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年3月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容・目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成19年11月13日付け手続補正書参照。)に、

「【請求項1】
シールド外筒部にシールド内筒部を固定・引き抜き可能に取り付け、シールド内筒部に、前端部にカッタボスを有するカッタ回転軸を支持し、
このカッタ回転軸をカッタ回転駆動装置に連結し、前記カッタボスに地山掘削用の伸縮カッタスポークを取り付けたシールド掘進機であって、
前記伸縮カッタスポークはカッタの回転中心より偏心した位置に所定の間隔をおいて複数基配置され、
前記伸縮カッタスポークは、カッタ回転軸側に設けられたカッタスポーク外筒と、その内側に設けられ、かつ外径側に設けられた進退自在なカッタスポーク内筒と、前記カッタスポーク外筒およびカッタスポーク内筒内に設けられ、カッタスポーク内筒を進退させる伸縮自在なジャッキを有し、
進退自在なカッタスポーク内筒の外周部に少なくともチャンバの最外周部を撹拌する撹拌翼を取り付け、シールド内筒部のほぼ外径を掘削する固定カッタスポークを設け、
各伸縮カッタスポークをカッタの回転軌跡の接線方向に向けてカッタボスの外側部に取り付けたことを特徴とするシールド掘進機。」
とあったものを、

「【請求項1】
シールド外筒部にシールド内筒部を固定・引き抜き可能に取り付け、シールド内筒部に、前端部にカッタボスを有するカッタ回転軸を支持し、
このカッタ回転軸をカッタ回転駆動装置に連結し、前記カッタボスの外側部に伸縮自在であって伸長状態で前記シールド外筒部の直径を掘削する一対の伸縮カッタスポークを配置したシールド掘進機であって、
前記一対の伸縮カッタスポークはカッタの回転中心より偏心した位置に設けられ、かつカッタ回転軸の回転中心を中心とするカッタ円軌跡の接線方向に向け、互いに反対向きに配置され、
前記一対の伸縮カッタスポークは、それぞれカッタボスの前記外側部に配置されたカッタスポーク外筒と、その内側に設けられた進退自在なカッタスポーク内筒と、前記カッタスポーク外筒内に設けられ、前記カッタスポーク内筒を進退させる伸縮自在なジャッキを有し、
前記進退自在なカッタスポーク内筒はその背面外周部に少なくともチャンバの最外周部を撹拌する撹拌翼を有し、かつ前記カッタスポーク外筒はその外側部に前記シールド外筒部の内部に設けた内筒の内部を通過し得る固定カッタスポークを有するとともに、前記カッタスポーク外筒は前記シールド内筒部内に配置され、かつ前面には掘削用のカッタビットを有し、
前記カッタスポーク内筒は伸長状態で前記シールド内筒部とシールド外筒部間を掘削する前記カッタビットを有し、
前記固定カッタスポークは前記伸縮カッタスポークの伸長状態で前記シールド内筒部内を掘削するカッタビットを有する
ことを特徴とするシールド掘進機。」
と補正しようとする補正事項を含むものである。

上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、以下の点を限定したものと認められる。
(1)伸縮カッタースポークについて、「カッタボスの外側部に伸縮自在であって伸長状態で前記シールド外筒部の直径を掘削する一対」配置され、かつ「カッタ回転軸の回転中心を中心とするカッタ円軌跡の接線方向に向け、互いに反対向きに配置され」た点。
(2)固定カッタスポークについて、「カッタスポーク外筒の外側部に」設けられ、「シールド外筒部の内部に設けた内筒の内部を通過し得る」ものであり、かつ、「伸縮カッタスポークの伸長状態で前記シールド内筒部内を掘削するカッタビットを有する」ものである点。
(3)カッタスポーク外筒について、「シールド内筒部内に配置され、かつ前面には掘削用のカッタビットを有し」ている点。
(4)カッタスポーク内筒について、「伸長状態で前記シールド内筒部とシールド外筒部間を掘削する前記カッタビットを有し」ている点。
したがって、本件補正は、少なくとも、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか、について以下に検討する。

2.特許法第29条第2項違反について
2-1.引用刊行物
刊行物1:特開平6-240981号公報
刊行物2:特開2004-183251号公報

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物1には、図面とともに、以下の記載がある。
(1a)「外筒部1と内筒部2とを互いに結合,切り離し可能に構成し、かつ内筒部2の前側にカッタ部11を設け、このカッタ部11のカッタスポークの少なくとも1本を伸縮可能に構成したシールド機や推進機を用い、カッタ部11が到達壁30に到達するまでは、外筒部1と内筒部2とを一体に結合するとともに、伸縮可能なカッタスポーク15を伸長させた状態で掘進し、カッタ部11が到達壁30に到達後、伸縮可能なカッタスポーク15を縮小させ、かつ外筒部1と内筒部2とを切り離したのち外筒部1のみを推進させ、外筒部1の前端面を到達壁30に到達させることを特徴とするシールド掘進機における到達方法。」(【請求項1】)

(1b)「これらの図に示す第1実施例では、外筒部1と、内筒部2と、この内筒部2の前面側に設けられたカッタ部11と、このカッタ部11の駆動装置21と、シールドジャッキ26と、排土装置29とを備えたシールド機を用いて横坑を掘削し、到達壁30に到達するようにしている。」(段落【0014】)

(1c)「前記シールド機の外筒部1は、隔壁3と、摺動部5とを有している。前記隔壁3は、リング状に形成され、外筒部1の前端部寄りの内側に固定されている。前記摺動部5は、内径が隔壁3の内径と面一の筒状に形成され、前端部は隔壁3の後面に固定され、後端部はリング状の支持部材7により外筒部1に固定されている。
一方、前記内筒部2は隔壁4と、摺動部6とを有している。前記隔壁4は、前記外筒部1の隔壁3に内接する円板状に形成されている。前記摺動部6は、前記外筒部1の摺動部5に内接する筒状に形成されており、また隔壁4の後面に固定され、さらにリブ状の支持部材8により支持されている。・・・
前記外筒部1と内筒部2とは、摺動部5,6の長さ方向に間隔をおいて設けられたボルト通し穴に挿通されかつ締結される推力伝達ボルト9を介して一体に結合され、また推力伝達ボルト9を取り外し,切り離すことにより、摺動部5,6を介して外筒部1が内筒部2に対して摺動可能に構成されている。」(段落【0015】?【0017】)

(1d)「前記カッタ部11は、回転軸12と、これの前端部に設けられたボス13と、固定のカッタスポーク14および伸縮可能なカッタスポーク15とを有している。前記回転軸12は、内筒部2の隔壁4に取り付けられた軸受10に支持され、かつ駆動装置21に連結されている。前記ボス13は、回転軸12の前端部に設けられており、このボス13の前面には中央先行切削ビット17が設けられている。前記固定のカッタスポーク14は、ボス13の外周に間隔をおいて複数本取り付けられている。前記伸縮可能なカッタスポーク15は、この実施例ではボス13の外周に1本設けられており、内部に組み込まれたカッタスポーク伸縮ジャッキ16を介して内筒部2の半径方向に伸縮し得るようになっている。前記固定のカッタスポーク14および伸縮可能なカッタスポーク15の外側の面にはそれぞれビット18が設けられ、内側の面である切羽室20側の面にはそれぞれ練り混ぜ翼19が設けられている。」(段落【0018】)

(1e)「・・・カッタ部11のボス13に設けられた伸縮可能なカッタスポーク15を、カッタスポーク伸縮ジャッキ16を介して外筒部1の外径に合わせて伸長させる。
この状態で、・・・回転軸12を回転させる。これにより、カッタ部11のボス13の前面に設けられた中央先行切削ビット17により地山が他のビット18に先行して掘削され、続いてボス13の外周に取り付けられた固定のカッタスポーク14および伸縮可能なカッタスポーク15に設けられたビット18により、中央先行切削ビット17の周りの地山が掘削される。」(段落【0023】?【0024】)

(1f)図2及び4には、固定のカッタスポーク14が外筒部1の内部に設けた摺動部5の内部を通過し得る点が開示されている。

以上の記載事項(1a)?(1f)から見て、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる(以下、「刊行物1記載の発明」という。)。

「外筒部1に内筒部2を結合、切り離し可能に取り付け、内筒部2に、前端部にボス13を有する回転軸12を支持し、
この回転軸12を駆動装置21に連結し、前記ボス13の外周に伸縮可能であって伸長状態で前記外筒部1の直径を掘削する少なくとも1本の伸縮可能なカッタスポーク15を配置したシールド機であって、
前記伸縮可能なカッタスポーク15は内部に組み込まれたカッタスポーク伸縮ジャッキ16を有し、
前記伸縮可能なカッタスポーク15の切羽室20側の面には練り混ぜ翼19を有し、
ボスの外周に取り付けられ、外筒部1の内部に設けた摺動部5の内部を通過し得る固定のカッタスポーク14を有し、
固定のカッタスポーク14および伸縮可能なカッタスポーク15の外側の面にはそれぞれビット18が設けられたシールド機。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物2には、図面とともに、以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】
オーバカッタまたはコピーカッタの軸線がカッタヘッドの揺動/回転中心を通らないよう偏心させて取付けたことを特徴とするシールド掘削機のカッタヘッド。
【請求項2】
カッタヘッドはスポークタイプであり、オーバカッタまたはコピーカッタを装備している少なくとも1以上のスポークはその軸線がカッタヘッドの揺動/回転中心を通らないよう偏心させて取付けたことを特徴とする請求項1記載のシールド掘削機のカッタヘッド。
【請求項3】
少なくとも2以上のスポークの軸線が、カッタヘッドの揺動/回転中心を通らないよう偏心させて取付けられ、揺動/回転中心部に掘削用のアローヘッドが設けるられていると共に、前記アローヘッドと前記偏心したスポークとの間に土砂通過用開口が得られるように各スポークを配置したことを特徴とする請求項1、又は2記載のシールド掘削機のカッタヘッド。
【請求項4】
カッタヘッドの揺動/回転中心を中心とする円弧の接線方向に沿うようにカッタービットを配置したことを特徴とする請求項1、2、又は3記載のシールド掘削機のカッタヘッド。」(【請求項1】?【請求項4】)

(2b)「【発明が解決しようとする課題】
これら従来のシールド掘削機のカッタヘッドに設けられているオーバカッタの軸線はすべてカッタヘッドの揺動中心0または回転中心0を通るようにされている。
このような構成になっているので、オーバカッタのストロークをもっと長くしたいときにはオーバカッタを揺動中心または回転中心の方向に長くして、オーバカッタに伸縮駆動を行わせるオーバカッタ油圧装置も揺動中心または回転中心の方向にさらに長いものにすることになる。
しかしこれらを揺動中心または回転中心を越えるほど長いものとすることは不可能であるので、そのストロークの確保には自ずと限界がある。
・・・
本発明は上記の問題点に着目してなされたもので、オーバカッタまたはコピーカッタのストロークを非常に長くて大きいものにするシールド掘削機のカッタヘッドを提供することを目的としている。」(段落【0007】?【0008】)

(2c)「次に、本発明の第3実施例に係る円形断面シールド掘削機のカッタヘッドについて図9?図11、及び図12?図13を用いて説明する。・・・」(段落【0026】)

(2d)「・・・また、図9においてはオーバカッタ20aCを伸縮させるオーバカッタ油圧装置20Cは図示してないが、本発明においては当然存在するものとして考えるべきものである。このことは以下にでてくる図10?図13に示す他の種々の形態においてもオーバカッタ油圧装置は同様に存在するものとして考えるべきものである。・・・」(段落【0028】)

(2e)「次に、図13について説明する。
カッタヘッド3Gは、オーバカッタ20aGを装備し、カッタヘッド3Gの回転中心0にその軸線が通らないよう偏心させて取付けてある2本のスポーク14G,16Gと、オーバカッタ20aGを装備していない2本のスポーク19G,19Gにより形成されている。
1本目のスポーク14Gをカッタヘッド3Gの回転中心0を通過する上から下に引いた垂直線に対して平行になるように配置して、その軸線はカッタヘッド3Gの回転中心0を通らないように偏心させると共に、該スポーク14Gの右側の側面はカッタヘッド3Gの回転中心0を通るように配置する。このように配置することにより、1本目のスポーク14Gに装備されているオーバカッタ20aGは真上の方向に伸長することができる。
そして、2本目のスポーク16Gを1本目のスポーク14Gと同様に上記の垂直線と平行に配置すると共に、2本目のスポーク16Gに装備されているオーバカッタ20aGが1本目のスポーク14Gに装備されているオーバカッタ20aGの伸長方向とは全く逆の真下の方向に伸長するように、1本目のスポーク14Gの根元付近の右側の側面に2本目のスポーク16Gの根元付近の右側の側面を接合させて固定する。このように1本目のスポーク14Gに対して2本目のスポーク16Gを配置することにより、上記の垂直線上に1本目のスポーク14Gと、2本目のスポーク16Gの右側の側面の線がくることになる。
また、1本目のスポーク14Gのやや根元付近の左側の側面と、2本目のスポーク16Gのやや根元付近の左側の側面にそれぞれオーバカッタ20aFを装備していないスポーク19G、19Gの内側の端部を、丁度カッタヘッド3Gの回転中心0を通過して左から右に引いた水平線上にその軸線が通るようにして接合し固定する。
さらにまた、オーバカッタ20aGを装備している2本のスポーク14G,16G、及びオーバカッタ20aGを装備していない2本のスポーク19G,19Gの表面側の中央の部分には先行ビット28G、その左右にはツールビット29G、29Gが形成されているが、これらのカッタービット28G,29Gは、カッタヘッド3Gの回転中心0を中心とする円弧の接線方向に沿うように植設されている。このような構成にすることにより、上記図9を用いて説明した前述の実施例と同様な効果を得ることができる。」(段落【0035】)

(2f)図13には、オーバカッタ20aGがスポーク14G、16Gの内側に装備されている点が開示されている。

以上の記載事項(2a)?(2f)から見て、刊行物2には、以下の発明が記載されているものと認められる(以下、「刊行物2記載の発明」という。)。

「カッタヘッド3Gが、オーバカッタ20aGを内側に装備し、カッタヘッド3Gの回転中心0にその軸線が通らないよう偏心させて取付けてある2本のスポーク14G,16Gと、オーバカッタ20aGを装備していない2本のスポーク19G,19Gにより形成され、1本目のスポーク14Gをカッタヘッド3Gの回転中心0を通過する上から下に引いた垂直線に対して平行になるように配置して、その軸線はカッタヘッド3Gの回転中心0を通らないように偏心させ、2本目のスポーク16Gを1本目のスポーク14Gと同様に上記の垂直線と平行に配置すると共に、2本目のスポーク16Gに装備されているオーバカッタ20aGが1本目のスポーク14Gに装備されているオーバカッタ20aGの伸長方向とは全く逆の真下の方向に伸長するように固定し、また、1本目のスポーク14Gのやや根元付近の左側の側面と、2本目のスポーク16Gのやや根元付近の左側の側面にそれぞれオーバカッタ20aFを装備していないスポーク19G、19Gの内側の端部を、丁度カッタヘッド3Gの回転中心0を通過して左から右に引いた水平線上にその軸線が通るようにして接合し固定したシールド掘削機のカッタヘッド。」

2-2.対比
本件補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「外筒部1」が、本件補正発明の「シールド外筒部」に相当し、以下、
「内筒部2」が「シールド内筒部」に、「ボス13」が「カッタボス」に、「回転軸12」が「カッタ回転軸」に、「駆動装置21」が「カッタ回転駆動装置」に、「伸縮可能なカッタスポーク15」が「伸縮カッタスポーク」に、「シールド機」が「シールド掘進機」に、「カッタスポーク伸縮ジャッキ16」が「伸縮自在なジャッキ」に、「練り混ぜ翼19」が「撹拌翼」に、「内筒」が「摺動部5」に、「固定のカッタスポーク14」が「固定カッタスポーク」に、「ビット18」が「カッタビット」に、それぞれ相当する。
また、本件補正発明は「前記進退自在なカッタスポーク内筒はその背面外周部に少なくともチャンバの最外周部を撹拌する撹拌翼を有し」ており、刊行物1記載の発明は「前記伸縮可能なカッタスポーク15の切羽室20側の面には練り混ぜ翼19を有し」ているから、両者は「伸縮カッタスポークの背面外周部にチャンバを撹拌する撹拌翼を有し」ている点で共通している。
さらに、本件補正発明は、カッタスポーク外筒の前面と、カッタスポーク内筒と、固定カッタスポークにカッタビットを有しており、一方、刊行物1記載の発明も固定のカッタスポーク14および伸縮可能なカッタスポーク15の外側の面にビット18が設けられているから、両者は「固定カッタスポークおよび伸縮カッタスポークにカッタビットを有する」点で共通している。

よって、両者は、
「シールド外筒部にシールド内筒部を固定・引き抜き可能に取り付け、シールド内筒部に、前端部にカッタボスを有するカッタ回転軸を支持し、
このカッタ回転軸をカッタ回転駆動装置に連結し、前記カッタボスの外側部に伸縮自在であって伸長状態で前記シールド外筒部の直径を掘削する一対の伸縮カッタスポークを配置したシールド掘進機であって、
前記伸縮カッタスポークは伸縮自在なジャッキを有し、
伸縮カッタスポークの背面外周部にチャンバを撹拌する撹拌翼を有し、
シールド外筒部の内部に設けた内筒の内部を通過し得る固定カッタスポークを有し、
固定カッタスポークおよび伸縮カッタスポークにカッタビットを有するシールド機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
伸縮カッタスポークについて、本件補正発明は、一対設けられ、カッタの回転中心より偏心した位置に設けられ、かつカッタ回転軸の回転中心を中心とするカッタ円軌跡の接線方向に向け、互いに反対向きに配置され、カッタボスの外側部に配置されたカッタスポーク外筒と、その内側に設けられた進退自在なカッタスポーク内筒を有し、かつカッタスポーク外筒はシールド内筒内に配置されているのに対し、刊行物1記載の発明は、伸縮カッタスポークは少なくとも1本であり、伸縮カッタスポークがカッタボスの外側部に配置されているものの、カッタスポーク内筒とカッタスポーク外筒の配置が本件補正発明と逆であり、かつシールド内筒内に配置されているのは、カッタスポーク内筒である点。

(相違点2)
撹拌翼が設けられた位置について、本件補正発明は、チャンバの最外周部を撹拌する位置であるのに対し、刊行物1記載の発明は、チャンバの最外周部を撹拌する位置であるか不明である点。

(相違点3)
固定カッタスポークについて、本件補正発明は、カッタスポーク外筒の外側部に設けられているのに対し、刊行物1記載の発明は、ボスの外周に取り付けられているものであって、カッタスポーク外筒の外側部に設けられていない点。

(相違点4)
カッタビットの位置について、本件補正発明は、カッタスポーク外筒の前面及び伸長状態のカッタスポーク内筒のシールド内筒部とシールド外筒部間を掘削する位置、並びに固定カッタスポークのシールド内筒部内を掘削する位置にそれぞれ設けられているのに対し、刊行物1記載の発明は伸縮カッタスポーク及び固定カッタスポークに設けられているものの、具体的位置は明示されていない点。

2-3.判断
相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物2記載の発明は、伸張駆動する2本のスポーク14G、16Gが設けられ、カッタヘッドの回転中心より偏心した位置に設けられ、かつカッタヘッドの回転中心を中心とするカッタ円軌跡の接線方向に向け、互いに反対向きに配置されており、スポーク14G、16Gとその内側に設けられた進退自在なオーバカッタ20aGを設け、カッタヘッド中心側にスポーク14G、16Gを設けたシールド掘削機のカッタヘッドである。
ここで、刊行物2記載の発明は、従来のシールド掘削機のカッタヘッドに設けられているオーバカッタの軸線はすべてカッタヘッドの揺動中心0または回転中心0を通るようにされているので、オーバカッタのストロークの確保には自ずと限界があるという課題に着目し、オーバカッタまたはコピーカッタのストロークを非常に長くて大きいものにするシールド掘削機のカッタヘッドを提供するという目的に適した構造を有する発明であり、本件補正発明の課題と同様の課題を解決した刊行物2記載の発明が公知である以上、刊行物1記載の発明において、ストロークを長くするために、刊行物2記載の発明を適用して、カッタスポークを偏心させて配置することは、当業者であれば容易に着想できたものである。
そして、刊行物1記載の発明も、外筒部1と内筒部2が切り離し可能であることを考慮すると、伸縮可能なカッタスポークのボス13に取り付けられた部分は、当然にシールド内筒内に配置されているはずのものであり、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用して、カッタスポーク外筒の内側にカッタスポーク内筒を配置した場合、カッタスポーク外筒をシールド内筒内に配置することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2について)
シールド掘進機において、チャンバの最外周部を撹拌する位置に撹拌翼を設けることは、例えば、特公平7-990号公報(練り混ぜ翼27)、特開平3-115697号公報(外周リング付混合羽根21)等に開示されているように周知の技術であり、この点を刊行物1記載の発明に適用して、撹拌翼をチャンバの最外周部を撹拌する位置に設けることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3について)
刊行物2記載の発明は、1本目のスポーク14Gのやや根元付近の左側の側面と、2本目のスポーク16Gのやや根元付近(ともに、本件補正発明の「カッタスポーク外筒」に相当。)の左側の側面にそれぞれオーバカッタ20aFを装備していないスポーク19G、19G(本件補正発明の「固定カッタスポーク」に相当。)の内側の端部を接合し固定したものであり、この点を刊行物1記載の発明に適用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点4について)
シールド掘進機において、切羽に当接して掘削するスポークの、切羽全面が掘削可能となる位置にカッタビットを設けることは、当業者であれば当然に行う事項であり、切羽前面の掘削を行うために、本件補正発明のように、カッタスポーク外筒の前面及び伸長状態のカッタスポーク内筒のシールド内筒部とシールド外筒部間を掘削する位置、並びに固定カッタスポークのシールド内筒部内を掘削する位置にカッタビットを配置することは、当業者が適宜決定し得た事項である。

そして、本件補正発明の効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明、並びに周知の技術から予測することができる程度のことである。

よって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明、並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.補正の却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明
1.平成20年3月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年11月13日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるもの(以下、「本願発明」という。)であり、「【2】1.」に記載されたとおりのものと認める。

2.本願発明と刊行物1記載の発明との対比・判断
2-1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「【2】2.2-1.」に記載した通りである。

2-2.対比・判断
本願発明は、前記【2】で検討した本件補正発明の以下の点を省いたものである。
(1)伸縮カッタースポークについて、「カッタボスの外側部に伸縮自在であって伸長状態で前記シールド外筒部の直径を掘削する一対」配置され、かつ「カッタ回転軸の回転中心を中心とするカッタ円軌跡の接線方向に向け、互いに反対向きに配置され」た点。
(2)固定カッタスポークについて、「カッタスポーク外筒の外側部に」設けられ、「シールド外筒部の内部に設けた内筒の内部を通過し得る」ものであり、かつ、「伸縮カッタスポークの伸長状態で前記シールド内筒部内を掘削するカッタビットを有する」ものである点。
(3)カッタスポーク外筒について、「シールド内筒部内に配置され、かつ前面には掘削用のカッタビットを有し」ている点。
(4)カッタスポーク内筒について、「伸長状態で前記シールド内筒部とシールド外筒部間を掘削する前記カッタビットを有し」ている点。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含む本件補正発明が、前記「【2】2.2-3.」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明並びに周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたのものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明並びに周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-02 
結審通知日 2009-09-08 
審決日 2009-09-24 
出願番号 特願2005-371363(P2005-371363)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
P 1 8・ 575- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森次 顕深田 高義  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 神 悦彦
草野 顕子
発明の名称 シールド掘進機  
代理人 原田 洋平  
代理人 高山 道夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ