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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L |
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管理番号 | 1220181 |
審判番号 | 不服2007-4380 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-13 |
確定日 | 2010-07-16 |
事件の表示 | 平成9年特許願第3918号「機能化ポリオルガノシロキサン及びオルガノシラン化合物を含有する強化添加剤を含んだゴム組成物を含むトレッドを備えるタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成9年7月29日出願公開、特開平9-194638〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成9年1月13日(優先権主張 1996年1月11日 フランス(FR))に特許出願されたものであって、平成16年1月6日に手続補正書が提出され、同年10月15日付けで拒絶理由が通知され、平成17年4月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月17日付けで拒絶理由が通知され、同年11月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月13日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成18年6月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月6日付けで拒絶査定がされたものであるところ、平成19年2月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年3月13日に審判請求書に関する手続補正書が提出され、同年5月18日付けで前置報告がなされ、これに基づき当審において平成20年11月4日付けで審尋がなされ、平成21年5月8日に回答書が提出され、その後、当審において平成19年2月13日提出の手続補正書による補正について平成21年6月19日付けで補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出され、平成22年1月18日に上申書が提出されたものである。 第2.本願発明 本願請求項1?4に係る発明は、平成21年12月22日提出の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。 「ゴム組成物を含むトレッドを備える、改良されたヒステリシス特性を有するタイヤであって、該ゴム組成物は少なくとも: (A)一種のジエンエラストマー、 (B)強化充填剤としてのシリカ、及び (C)(i)分子当たり、前記シリカの粒子の表面ヒドロキシル部位と化学的かつ/または物理的に結合することができる少なくとも一つの官能性シロキシ単位を含む、少なくとも一種の機能化ポリオルガノシロキサン化合物と、 (ii)分子当たり、前記ポリオルガノシロキサン及び/または前記シリカ粒子のヒドロキシル部位と化学的かつ/または物理的に結合し得る少なくとも一つの官能基、及び前記ジエンエラストマーの鎖に化学的かつ/または物理的に結合し得る少なくとも一つのその他の官能基を含む、少なくとも一種の機能化オルガノシラン化合物と の混合物及び/またはin situ反応の生成物から実質的になる強化添加剤 の混合物を含み、 機能化ポリオルガノシロキサン化合物が、次式(IV): (式中、 Rは1?6個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルから選ばれる、またはアリールから選ばれる1価の炭化水素基、または一つ以上の二重結合を含む線状または分枝状のC_(2)?C_(20)アルケニル基であり、Rの種々の例は互いに同じであっても異なっていてもよく、 xは0?500であり、 F及びF'は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基である。) で表される化合物である、前記タイヤ。」 第3.当審で通知した拒絶の理由 平成21年6月19日付けで当審が通知した拒絶理由は、次の理由1を含むものである。 「1.本件出願の請求項1?4に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 記 1.先願1:特願平7-49683号(特開平8-302070号公報参照)」 第4.当審の判断 1.先願明細書に記載された事項 特許法第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明については当該特許出願について特許掲載公報の発行又は出願公開がされた時に当該先の出願について出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされたものとみなして、同法第29条の2本文の規定が適用される。(同法第41条第3項) そうすると、上記先願1は後の出願である特願平8-43723号の優先権の主張の基礎とされたものであるから、先願1の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)に記載された事項は、先願1について出願公開がされたものとみなされる後の出願の公開公報である特開平8-302070号公報によって示す。 摘示ア: 「【請求項1】下記(A)成分100重量部、(B)成分5?100重量部、(C)成分1?15重量部及び(D)成分1?20重量部を、混練時の最高温度を200℃以下に制御しながら混練することにより得られるゴム組成物。 (A):溶液重合ジエン系ゴム (B):シリカ (C):シランカップリング剤 (D):低分子量有機ケイ素化合物 【請求項2】(A)成分がブタジエンゴム又はスチレン-ブタジエンゴムである請求項1記載のゴム組成物。 【請求項3】(C)成分が、下記化学式(1)又は(2)で表される少なくとも一種である請求項1記載のゴム組成物。 〔(OR)_(3)SiC_(a)H_(2a)〕_(2)S_(b) (1) (OR)_(3)SiC_(a)H_(2a)Z (2) (式中、Rはメチル基又はエチル基を表し、aは1?6の整数を表し、bは1?6の整数を表し、Zはメルカプト基、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を表す。) 【請求項4】(D)成分が、水酸基を有する低分子量有機ケイ素化合物である請求項1記載のゴム組成物。」(特許請求の範囲の請求項1?4) 摘示イ: 「【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低く、かつ加硫速度が速いため生産効率に優れた溶液重合ゴム組成物を提供する点に存する。」(段落0004) 摘示ウ: 「本発明のゴム組成における(B)成分の含有量は、(A)成分100重量部あたり5?100重量部、好ましくは30?90重量部である。(B)成分が過少であると加硫物の機械的強度が低下し、一方(B)成分が過多であると混練加工性や加硫物の機械的強度が低下する。」(段落0008) 摘示エ: 「本発明の(D)成分は低分子量有機ケイ素化合物である。ここで、低分子量とは、数平均分子量で100?10000程度をいう。(D)成分の具体例としては、水酸基を有する低分子量有機ケイ素化合物及び直鎖状の両端ジメチルポリジメチルシロキサンをあげることができる。 水酸基を有する低分子量有機ケイ素化合物の具体例としては、下記化学式(3)で表される化合物をあげることができる。 式(3)中、A及びBは、独立に、水素原子、水酸基又はビニル基を表す。なお、加硫速度及び加硫物の機械的強度の増加の観点から好ましくは水酸基であり、更に好ましくはA、B共に水酸基である。l及びmは、独立に、1?100の整数を表す。なお、加硫速度及び加硫物の機械的強度の増加並びに混練加工性の向上の観点から好ましくは1?50、更に好ましくは2?10である。j及びkは、独立に、0?50の整数を表す。なお、加硫速度及び加硫物の機械的強度の増加並びに混練加工性の向上の観点から好ましくは0?20、更に好ましくは0である。X_(1)?X_(6)は、独立に、フェニル基、ビニル基又は下記化学式(4)で表される基を表す。 -C_(n)H_(2n)Y (4) 式(4)中、Yは水素原子又は水酸基を表し、nは0?50の整数を表す。なお、加硫速度及び加硫物の機械的強度の増加並びに混練加工性の向上の観点から好ましいnは0?20の整数であり、更に好ましくは0又は1である。特に好ましいX_(1)?X_(6)はフェニル基、ビニル基、メチル基及び水酸基である。」(段落0016?0021) 摘示オ: 「本発明のゴム組成物は、上記の(A)成分?(D)成分の所定量を混練時の最高温度を200℃以下に制御しながら混練することにより得られる。(C)成分と(D)成分の併用は必須であり、本発明に依らず、(C)成分と(D)成分のいずれかを使用しない場合は、加硫速度、混練加工性、加硫物の機械的強度及び転動抵抗において、著しい特性悪化を生じる。」(段落0029) 摘示カ: 「本発明のゴム組成物は、各種自動車部品、各種工業部品、建築材料などに利用され得るが、機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低いという優れた特徴を生かして、タイヤ用途に特に最適に利用される。」(段落0031) 摘示キ: 「【実施例】次に、実施例により本発明を説明する。 実施例1?9及び比較例1?6 表1に示す成分及びX-140(共同石油社製 オイル)50重量部及びダイヤブラックN339(三菱化学社製 HAFカーボンブラック)6.4重量部を、110℃に調整した1500mlのバンバリーミキサーに同時に投入し、ローター回転数150rpmで5分間混練した。次に、85℃に調整した8インチのオープンロールを用いて、共通配合として、サンノックN(大内新興化学社製 老化防止剤)1.5重量部、アンチゲン3C(住友化学工業社製 老化防止剤)1.5重量部、酸化亜鉛2重量部及びステアリン酸2重量部を添加して混練した。更に、40℃に調整した8インチのオープンロールを用いて、Sox CZ(住友化学工業社製 加硫促進剤)1重量部、Sox D(住友化学工業社製 加硫促進剤)1重量部及び硫黄1.4重量部を添加・混練し、コンパウンドを得た。次に、該コンパウンドを160℃×20分間でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。下記の方法に従い、評価を行った。結果を表1に示した。」(段落0032) 摘示ク: 「〔評価方法〕 (1)引き裂き強度、ゴム弾性(300%モジュラス)及び加硫速度 JIS-K-6252に準じて測定した。なお、引き裂き強度は、切込みなしアングル型試料を用いて測定した。 (2)耐摩耗性(摩耗損量) アクロン耐摩耗試験機を用い、JIS-K-6264に準じて測定した。 (3)転動抵抗(tanδ)指数 東洋精機社製レオログラフソリッドL1Rを用い、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件で測定することによりtanδ温度分散曲線を得、この曲線から60℃tanδ値を求めた。次に、(A)成分にA1を使用した実施例及び比較例のtanδ値は、実施例1を100とした指数で……表した。指数の小さい程、転動抵抗が低いをことを示す。」(段落0035) 摘示ケ: 「【表1】 ???????????????????????????? 実施例 比 較 例 1 1 2 3 配合 (A) 種類 *1 A1 A1 A1 A1 量 wt 100 100 100 100 (B) *2 量 wt 78.5 78.5 78.5 78.5 (C) *3 量 wt 6.4 6.4 0 0 (D) 種類 *4 D1 - D1 - 量 wt 5 0 5 0 混練時の最高温度 ℃ 152 151 153 153 評価 引き裂き強度kgf/cm^(2) 57 54 46 53 300%モジュラスkgf/cm^(2) 124 121 40 49 摩耗損量 mg/1000回 370 372 996 564 tanδ(60℃)指数 100 91 146 111 加硫速度 t_(90)分 16 36 30 35 ???????????????????????????? 〔【表2】?【表4】省略〕 *1(A) A1:溶液重合SBR(スチレン単位/ビニル単位 15/45(wt%/%)) …… *2(B):シリカ(SiO_(2) )(ウルトラシルVN3G ユナイテッドシリカ社製) *3(C):前記化学式(1)において、R=エチル基、a=3、b=4のものを用いた。 *4(D) D1:前記化学式(3)において、A=B=水酸基、j=k=m=0、l=7、x_(1) =x_(2) =x_(5) =x_(6) =メチル基のもの(分子量=611)を用いた。」(段落0036?0040) 摘示コ: 「【発明の効果】以上説明したとおり、本発明により、機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低く、かつ加硫速度が速いため生産効率に優れた溶液重合ゴム組成物を提供することができた。」(段落0041) なお、先願明細書では、摘示エの低分子量有機ケイ素化合物についての化学式(3)は、 と記載されている。 しかしながら、通常、このような有機ケイ素化合物において、末端基A及びBと結合するのはケイ素原子であること、及び先願明細書には、実施例で化学式(3)の化合物として用いられているD1については、「D1:前記化学式(3)において、A=B=水酸基、j=k=m=0、l=8、x_(1)=x_(2)=メチル基のものを用いた。」(後の出願明細書の摘示ケに相当する部分)と記載されており、これを上記化学式(3)に当てはめると、Bの水酸基がOと結合することになるが、技術常識からみて、このような結合は不自然であることから、先願明細書における上記化学式(3)は明らかな誤記であると認められる。 したがって、先願明細書の化学式(3)は、後の出願明細書の化学式(3)の誤記と解するのが相当であり、それにともなって、D1についての記載も摘示ケのように解するのが相当である。 よって、先願明細書には、摘示エ及び摘示ケの事項が記載されているものと認める。 2.先願発明 摘示エ及び摘示ケの記載からみて、先願明細書には(D):低分子量有機ケイ素化合物として、下記の化学式(3) (式(3)中、A及びBは、水酸基を表す。l及びmは、独立に、1?100の整数を表す。j及びkは、独立に、0?50の整数を表す。X_(1)?X_(6)は、独立に、フェニル基、ビニル基又は下記化学式(4)で表される基を表す。 -C_(n)H_(2n)Y (4) 式(4)中、Yは水素原子又は水酸基を表し、nは0?50の整数を表す。)で表される水酸基を有する低分子量有機ケイ素化合物が記載されているものと認められる。 また、先願明細書に記載されたゴム組成物(摘示ア)は、「機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低いという優れた特徴を生かして、タイヤ用途に特に最適に利用される」(摘示カ)ことが記載されているから、当該ゴム組成物を用いたタイヤが記載されているに等しい。 そうであるから、摘示ア、摘示エ、摘示カ及び摘示ケの記載からみて、先願明細書には、 「下記(A)成分100重量部、(B)成分5?100重量部、(C)成分1?15重量部及び(D)成分1?20重量部を混練して得られるゴム組成物を含むタイヤ。 (A):溶液重合ジエン系ゴム (B):シリカ (C):下記化学式(1)又は(2)で表される少なくとも一種のシランカップリング剤 〔(OR)_(3)SiC_(a)H_(2a)〕_(2)S_(b) (1) (OR)_(3)SiC_(a)H_(2a)Z (2) (式中、Rはメチル基又はエチル基を表し、aは1?6の整数を表し、bは1?6の整数を表し、Zはメルカプト基、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を表す。) (D):下記化学式(3)で表される水酸基を有する低分子量有機ケイ素化合物 式(3)中、A及びBは、水酸基を表す。l及びmは、独立に、1?100の整数を表す。j及びkは、独立に、0?50の整数を表す。X_(1)?X_(6)は、独立に、フェニル基、ビニル基又は下記化学式(4)で表される基を表す。 -CnH_(2n)Y (4) 式(4)中、Yは水素原子又は水酸基を表し、nは0?50の整数を表す。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.本願発明1と先願発明との対比 本願発明1(以下、「前者」という。)と先願発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、 後者における「(C):下記化学式(1)又は(2)で表される少なくとも一種のシランカップリング剤 〔(OR)_(3)SiC_(a)H_(2a)〕_(2)S_(b) (1) (OR)_(3)SiC_(a)H_(2a)Z (2) (式中、Rはメチル基又はエチル基を表し、aは1?6の整数を表し、bは1?6の整数を表し、Zはメルカプト基、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を表す。)」(以下、単に「先願(C)成分」という。)における式(1)の化合物は、前者における「(C)(ii)に含まれる式(X) の機能化オルガノシラン化合物(本願請求項4に記載)において、Xはアルコキシ基、n=0、m=1、p=0、q=2、Bは-S_(x)-(1≦x≦8、xは正の整数)の化合物」に相当し、先願(C)成分における式(2)の化合物は、同じく、「式(X)の機能化オルガノシランにおいて、Xはアルコキシ基、n=0、m=1、p=0、q=1、Bは-SHの化合物」に相当する。 したがって、「先願(C)成分」は、前者における「(C)(ii)分子当たり、前記ポリオルガノシロキサン及び/または前記シリカ粒子のヒドロキシル部位と化学的かつ/または物理的に結合し得る少なくとも一つの官能基、及び前記ジエンエラストマーの鎖に化学的かつ/または物理的に結合し得る少なくとも一つのその他の官能基を含む機能化オルガノシラン化合物」に相当する。 また、後者における、「(D):下記化学式(3)で表される水酸基を有する低分子量有機ケイ素化合物(化学式(3)は省略)」は、前者における「(C)(i)の式(IV)で表される機能化ポリオルガノシロキサン化合物(化学式(IV)は省略)」に相当する。 そうすると、両者は、次の一致点で一致し、相違点1?3で一応相違する。 一致点: 「 ゴム組成物を含むタイヤであって、該ゴム組成物は少なくとも: (A)一種のジエンエラストマー、 (B)シリカ、及び (C)(i)分子当たり、前記シリカの粒子の表面ヒドロキシル部位と化学的かつ/または物理的に結合することができる少なくとも一つの官能性シロキシ単位を含む、少なくとも一種の機能化ポリオルガノシロキサン化合物と、 (ii)分子当たり、前記ポリオルガノシロキサン及び/または前記シリカ粒子のヒドロキシル部位と化学的かつ/または物理的に結合し得る少なくとも一つの官能基、及び前記ジエンエラストマーの鎖に化学的かつ/または物理的に結合し得る少なくとも一つのその他の官能基を含む、少なくとも一種の機能化オルガノシラン化合物を含み、 機能化ポリオルガノシロキサン化合物が、次式(IV): (式中、 Rは1?6個の炭素原子を含む線状または分枝状アルキルから選ばれる、またはアリールから選ばれる1価の炭化水素基、または一つ以上の二重結合を含む線状または分枝状のC_(2)?C_(20)アルケニル基であり、Rの種々の例は互いに同じであっても異なっていてもよく、 xは0?500であり、 F及びF'は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基である。) で表される化合物である、前記タイヤ。」 相違点1:前者は、「ゴム組成物を含むトレッドを備える、改良されたヒステリシス特性を有するタイヤ」であるのに対し、後者は、かかる特定はなされていない点。 相違点2:前者は、(B)シリカが強化充填剤であるのに対し、後者ではかかる特定はなされていない点。 相違点3:前者は、(C)成分が「(i)の機能化ポリオルガノシロキサン化合物と、(ii)の機能化オルガノシラン化合物との混合物及び/またはin situ反応の生成物から実質的になる強化添加剤の混合物」であるのに対し、後者ではかかる特定はなされていない点。 ○相違点1について 先願明細書には、先願発明が「機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低く、かつ加硫速度が速いため生産効率に優れた溶液重合ゴム組成物を提供する」ことを課題とするものであること(摘示イ)、当該ゴム組成物は、機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低いという優れた特徴を生かして、タイヤ用途に特に最適に利用されること(摘示カ)が記載されている。 タイヤに用いられるゴム部材としては、トレッドゴム、サイドゴム、ビードフィラー、インナーライナー等の種々の部材が存在するが、これらの部材のうち、機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低いという性質が要求されるものとして、トレッドゴムは代表的なものである。(この点は、本願明細書の段落0115において、「これらの結果は、本発明の組成物がSi 69で得られたものと同様である硬化前の性質を得ることを可能にし、硬化後に、それが参考組成物15のレベルと同じ強化レベルを有するとともに、ヒステリシス及びtan δレベルがかなり低いことを示し、これはこのような組成物を低下された転がり抵抗を有するタイヤケーシングを与えることができる半完成製品、特にトレッドの成分の一部を形成するのに特に適するようにする。」と記載されていることからも明らかである。) そうであるから、先願発明の「機械的強度及び耐摩耗性に優れ、転動抵抗が低いという優れた特徴を有する」ゴム組成物を含むタイヤが、当該ゴム組成物を含むトレッドを備えるタイヤを意図していることは明らかである。 したがって、先願明細書には「当該ゴム組成物を含むトレッドを備えるタイヤ」が実質的に記載されていると言える。 そして、先願明細書では当該ゴム組成物の加硫ゴム組成物について、転動抵抗(tanδ)指数が低いことが確認されている(摘示キ?コ)が、転動抵抗が低いということは、転動抵抗の原因となるヒステリシスロスが少ないことであるから、先願発明のゴム組成物を用いたタイヤは、改良されたヒステリシス特性を有するものと認められる。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 ○相違点2について 先願明細書には、シリカについて「(B)成分が過少であると加硫物の機械的強度が低下し」と記載されているから(摘示ウ)、シリカは強化充填剤と認められる。また、先願発明のシリカの配合量は、本願明細書の実施例における配合量と差異はないものであるから、その充填剤としての機能においても差異はないものと解される。 したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。 相違点3について 先願明細書には、(C)成分と(D)成分の併用は必須であり、(C)成分と(D)成分のいずれかを使用しない場合は、加硫物の機械的強度において著しい特性悪化を生じることが記載されている(摘示オ)から、(C)成分と(D)成分は強化添加剤といえるものであり、先願発明の(C)成分と(D)成分の併用は、強化添加剤の混合物といえる。 したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。 4.まとめ 以上のとおり、相違点1?3はいずれも実質的な相違点ではないから、本願発明1は、先願発明と同一である。 また、先願発明をした者が本願発明1の発明者と同一の者でなく、また、本願出願の時に本願の出願人と先願発明に係る出願人とが同一の者でもない。 したがって、本願発明1は、本願出願の日前の特許出願であって本願出願後に出願公開されたものである特願平7-49683号の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 第5.むすび 以上のとおりであるから、本願は、当審が平成21年6月19日付けで通知した拒絶理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-15 |
結審通知日 | 2010-02-18 |
審決日 | 2010-03-02 |
出願番号 | 特願平9-3918 |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WZ
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 仁、森川 聡 |
特許庁審判長 |
松浦 新司 |
特許庁審判官 |
前田 孝泰 小野寺 務 |
発明の名称 | 機能化ポリオルガノシロキサン及びオルガノシラン化合物を含有する強化添加剤を含んだゴム組成物を含むトレッドを備えるタイヤ |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 中村 稔 |