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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1220243
審判番号 不服2007-20416  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-23 
確定日 2010-07-15 
事件の表示 特願2003-289844「ゲル状組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年3月10日出願公開、特開2005-60467〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成15年8月8日の特許出願であって、平成19年2月15日付け拒絶理由通知に対し、指定された期間内に応答がなされず、同年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月23日に審判請求がなされ、同年10月12日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
この出願の発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。
「ビニルアルコール単位、カルボキシル基含有ビニル単位、脂肪族ビニルエステル単位を含有するカルボキシル基含有ポリビニルアルコール(A)と、全アミン価100(mg KOH/g)以上のカチオン性基含有ポリマー(B)を、含有重量比(A/B)30/70?90/10で有することを特徴とするゲル状組成物。」

第3 原査定の理由
原査定は、「この出願については、平成19年 2月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。」というものであって、その理由は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」という理由を含むものである。
そして、その「下記の請求項」とは「請求項1?3」であり、「下記の刊行物」のうちの一つは、特開平04-334539号公報(以下、「刊行物1」という。原査定における「引用文献1」と同じ。)である。

第4 刊行物1の記載事項
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】カルボキシル基変性ポリビニルアルコールおよびポリアミン化合物からなるヒドロゲル。」(特許請求の範囲)

(イ)「本発明はヒドロゲルに関する。さらに詳しくは、保水率が高い上に強度も高く、かつゴム状弾性を示し、水産、農業、土木、医療等の分野に展開できる新規なポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)系ヒドロゲルに関する。」(段落【0001】)

(ウ)「以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお以下の実施例で、〔部〕および〔%〕は特に断らない限り、それぞれ〔重量部〕および〔重量%〕を意味する。
実施例1
カルボキシル基変性PVA(けん化度98.6モル%,重合度1750,イタコン酸変性度1モル%)20部および分子量70000のポリエチレンイミン(日本触媒化学工業(株)製、商品名エポミンP-1000)を純分として10部を水99部を用いて90℃下に30分間反応させてヒドロゲルを得た。得られたヒドロゲルは透明で、コンニャク状の弾性を有する高含水率のヒドロゲルであった。」(段落【0007】)

(エ)「カルボキシル基変性PVAとポリアミン系化合物からなる本発明のヒドロゲルは、容易にゲル強度およびゲルの含水率をコントロールでき、かつ安全性にも優れている。特に滅菌されたヒドロゲルが容易に製造できることからメディカル分野への展開が期待できる。具体的に用途としては、人工筋肉、人工皮膚、カテーテル,抗血栓性材料、医薬除放性担体、酵素や菌体の固定化担体等の医療材料などで挙げられ、さらには、保水材、保冷材、保冷用熱媒体、人口水苔、水耕栽培用人口土壌、漁業用擬似餌、土質改良剤、防藻材、防汚材、芳香剤の除放性担体等の高い保水率の要求される産業分野への展開ができる。」(段落【0010】)

第5 当審の判断
1.刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「カルボキシル基変性ポリビニルアルコールおよびポリアミン化合物からなるヒドロゲル」が記載されており(摘記(ア))、上記「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール」の具体例として、「カルボキシル基変性PVA(けん化度98.6モル%,重合度1750,イタコン酸変性度1モル%)」を20部と、上記「ポリアミン化合物」の具体例として「ポリエチレンイミン」を10部使用した例が記載されている(摘記(ウ)の実施例1)。
そうすると、刊行物1には、
「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(けん化度98.6モル%,重合度1750,イタコン酸変性度1モル%)20部およびポリエチレンイミン10部からなるヒドロゲル」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

2.本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「ヒドロゲル」は、ゲル状の組成物であるから、本願発明の「ゲル状組成物」に相当する。

そして、引用発明の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール」における「ポリビニルアルコール」とは、通常ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られるものであって、完全けん化物は「ビニルアルコール単位」のみからなる高分子であるが、部分けん化物は「ビニルアルコール単位」に「酢酸ビニルエステル単位」が残存した高分子である(この点必要であれば、化学大辞典編集委員会編「化学大辞典8 縮刷版」1989年8月15日発行、共立出版株式会社の第767頁「ポリビニルアルコール」の項参照。)。
そうすると、引用発明の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール」は、けん化度98.6モル%であって部分けん化物であるから、「ビニルアルコール単位」と「酢酸ビニルエステル単位」を含有するものである。
さらに、該「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール」は、イタコン酸変性により、「カルボキシル基含有ビニル単位」も含有するものである。
以上によれば、引用発明の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(けん化度98.6モル%,重合度1750,イタコン酸変性度1モル%)」は、「ビニルアルコール単位」、「酢酸ビニルエステル単位」、「カルボキシル基含有ビニル単位」を含有するものであり、該「酢酸ビニルエステル単位」は「脂肪族ビニルエステル単位」に相当するから、引用発明の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(けん化度98.6モル%,重合度1750,イタコン酸変性度1モル%)」は、本願発明の「ビニルアルコール単位、カルボキシル基含有ビニル単位、脂肪族ビニルエステル単位を含有するカルボキシル基含有ポリビニルアルコール(A)」に相当する。

そして、本願発明の「カチオン性基含有ポリマー」について、この出願の発明の詳細な説明には、「本発明に用いるカチオン性基含有ポリマーは、分子内にカチオン性基含有するものであれば特に制約はないが、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリアミドエピクロルヒドリン、ポリアミドポリアミンが好適に使用される。」と記載され(段落【0017】)、具体例として「ポリエチレンイミン」が使用されているから(段落【0021】?【0027】の実施例、表1)、引用発明の「ポリエチレンイミン」は、本願発明の「カチオン性基含有ポリマー」に相当するものである。

また、本願発明の「カチオン性基含有ポリマー」は、「全アミン価100(mg KOH/g)以上」であるから、引用発明の「ポリエチレンイミン」の全アミン価について検討すると、引用発明の「ポリエチレンイミン」として、具体的には、「日本触媒化学工業(株)製、商品名エポミンP-1000」が使用されているところ(摘記(ウ)の実施例1)、該「日本触媒化学工業(株)製、商品名エポミンP-1000」のアミン価は18mgeq/gであり(この点必要であれば、特開2002-86610号公報の段落【0108】、特開2003-211578号公報の段落【0133】を参照。)、該「アミン価」とは「全アミン価」に相当すると認められる。
そして、上記18mgeq/gの全アミン価を(mg KOH/g)単位に変換すると、18mgeq/gとは1gの物質を中和するのに必要な酸が18mgeqであることを意味し、一方、(mg KOH/g)とは、1gの物質を中和するのに必要なKOH量(mg)である。また、KOHの分子量は56.11であるから、18mgeqのKOHは、18×56.11=1009.98mgに相当し、よって、18mgeq/gの全アミン価は、1009.98(mg KOH/g)の全アミン価に相当する。
そうすると、引用発明における「ポリエチレンイミン」の全アミン価は、1009.98(mg KOH/g)であって、100(mg KOH/g)以上であるから、引用発明の「ポリエチレンイミン」、すなわち、「カチオン性基含有ポリマー」は、本願発明の「全アミン価100(mg KOH/g)以上のカチオン性基含有ポリマー(B)」に相当するものである。

さらに、引用発明の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(けん化度98.6モル%,重合度1750,イタコン酸変性度1モル%)」と「ポリエチレンイミン」の含有量は、それぞれ20部と10部であるから、これらの含有重量比は、20/10、すなわち、67/33となる。
そうすると、引用発明の「カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(けん化度98.6モル%,重合度1750,イタコン酸変性度1モル%)」と「ポリエチレンイミン」の含有重量比、すなわち、「ビニルアルコール単位、カルボキシル基含有ビニル単位、脂肪族ビニルエステル単位を含有するカルボキシル基含有ポリビニルアルコール(A)」と「全アミン価100(mg KOH/g)以上のカチオン性基含有ポリマー(B)」の「含有重量比(A/B)」は67/33であって、本願発明の「含有重量比(A/B)30/70?90/10」に相当するものである。

したがって、本願発明と引用発明に差異はない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成19年10月12日に補正された審判請求書の請求の理由において、
「本願発明1は少なくとも以下の発明特定事項を有する点で引用発明1と相違します。
本願発明1は、発明特定事項が上位概念で表現された引例発明1に対して、少なくとも「全アミン価」なる概念を備えています。一見すると、本願発明1は引例発明1に包含されているかに思えますが、少なくとも「単なるカチオン性基含有ポリマーではなく、所定値の全アミン価であるカチオン性基含有ポリマー(B)」等を発明特定事項として備えています。
即ち、所定値の全アミン価であるカチオン性基含有ポリマーとすることで、土壌のpH等の影響を受けにくく地盤を安定して固定できるゲル状組成物とできることに貢献しうるものです。このように、特定の全アミン価であるカチオン性基含有ポリマーを使用することで、土壌のpHの影響を受けにくく地盤を安定して固定できるゲル状組成物とできる等の事項は、当業者であっても刊行物1の記載からは読み取ることはできません。言い換えれば、少なくとも「全アミン価」なる概念は、引用刊行物1において有効に開示されている態様とはいえません。
以上より、本願発明1は、「引用刊行物1に記載された事項又は記載されているに等しい事項から当業者が把握できる発明」ではないことは明らかです。従って、本発明は引用刊行物1に記載された発明ではなく、少なくとも新規性を有することは明らかです。」(第3頁下から7行?第4頁第9行)と主張している。
しかしながら、引用発明における「ポリエチレンイミン」の具体例である「日本触媒化学工業(株)製、商品名エポミンP-1000」が、「全アミン価100(mg KOH/g)以上のカチオン性基含有ポリマー(B)」であることは、上記2.で述べたとおりである。
したがって、引用発明は、「全アミン価100(mg KOH/g)以上のカチオン性基含有ポリマー(B)」を有するものであり、この点において本願発明と差異はない。
よって、上記審判請求人の主張は採用することができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-12 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2010-05-31 
出願番号 特願2003-289844(P2003-289844)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子穴吹 智子  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 井上 千弥子
木村 敏康
発明の名称 ゲル状組成物  
代理人 渡邊 薫  
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