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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1220278
審判番号 不服2008-22087  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-28 
確定日 2010-07-15 
事件の表示 特願2004-343521「食品用蓋付き容器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月15日出願公開、特開2006-151432〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年11月29日の出願であって、平成20年7月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年8月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年9月26日付けで手続補正がなされたものである。その後、当審において、平成20年9月26日付けの手続補正の却下の決定が平成22年3月8日付けでなされるとともに、同日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成22年4月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成22年4月22日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)スチレン系樹脂を含有する樹脂組成物を成形してなる弁当箱であり、
弁当箱が、蓋部、中蓋部及び本体部の組み合わせのものであり、少なくとも1つ以上の部分が(A)及び(B)成分を含む樹脂組成物からなるものであり、
(B)成分のスチレン系樹脂としてABS樹脂を含有しており、(A)成分と(B)成分の比率(質量比)〔(A)/(B)〕が80/20?20/80である弁当箱。」

3.引用発明
これに対して、当審で通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平5-51173号(実開平7-16623号)のCD-ROM(以下「引用例1」という。)及び特開平2-51554号公報 (以下「引用例2」という。)には、それぞれ以下の各事項及び各引用発明が記載されている。

【引用例1について】
(1)「【好ましい実施態様】
次に、図面に示す好ましい実施態様に従い本考案を詳細に説明する。
図1及び図2は、夫々、本考案の抗カビ・抗菌性弁当箱の一例を示す斜視図である。
本考案の抗カビ・抗菌性弁当箱は、少なくとも、食品を入れる箱体1及び蓋体2とからなるが、・・・
又、煮汁を含んだおかずから汁が容器の外部に滲み出すことがない様に、図2に示す様に、箱体の外周の縁部に嵌入することが出来る溝を有する中蓋6を設けたり、・・・」(段落【0006】参照)

(2)「 上記の様な種々の形状を有する本考案の弁当箱を作製する材料としては、合成樹脂が用いられるが、安全性に優れ、耐熱性、耐薬品性及び耐衝撃性に優れたものであればいずれの公知の材料も使用することが出来る。好ましくは、弁当箱を構成する部品ごとに適した材料を使用する。
例えば、箱体1及び仕切り板3は、熱い食品が入れられるところである為、耐熱性や耐薬品性に優れるポリプロピレンが使用される。
蓋体2も同様にポリプロピレンで形成してもよいが、耐衝撃性に優れるAS樹脂やABS樹脂等を用いて形成するのも好ましい。・・・」(段落【0007】参照)

以上の記載によると、引用例1には、
「作製する材料としては合成樹脂が用いられる抗カビ・抗菌性弁当箱であり、
食品を入れる箱体1、中蓋6及び蓋体2とからなる抗カビ・抗菌性弁当箱。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

【引用例2について】
(1)「[産業上の利用分野]
本発明は新規な耐熱塗装容器に関するものである。さらに詳しくいえば、本発明は200?230℃程度の温度まで使用が可能で、熱時剛性が極めて大きいなど、良好な耐熱性を有する上、塗膜密着性や耐熱油性に優れ、かつ内蔵食品の色移行が少ないなど、優れた特徴を有し、マイクロ波加熱(電子レンジ)、オーブンレンジ、蒸気加熱、一般耐熱調理などに好適に用いられる樹脂素材から成る耐熱塗装容器に関するものである。」(第1頁右下欄2-11行参照)

(2)「本発明の耐熱塗装容器においては、その素材として用いられる樹脂組成物の(A)成分として、ポリブチレンテレフタレート単独又はポリブチレンテレフタレート20重量%以上を含有する混合熱可塑性樹脂が用いられる。該ポリブチレンテレフタレートはテレフタル酸単位と1.4-ブタンジオール単位とを含有する熱可塑性ポリエステル樹脂で、耐熱性、耐衝撃性、電気特性、機械特性、他素材とのブレンド性、加工性などのバランスに優れたエンジニアリングプラスチックとして知られているものである。
本発明においては、該樹脂組成物の(A)成分として、前記ポリブチレンテレフタレートを単独で用いてもよいし、他の熱可塑性樹脂と混合して用いてもよい。
他の樹脂と混合して用いる場合には、該ポリブチレンテレフタレートは混合樹脂に対して20重量%以上含有することが必要である。この含有量が20重量%未満では本発明の目的が十分に達せられない。該混合樹脂に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、例えば・・・一般用ポリスチレン、耐衝撃用ポリスチレン、耐熱用ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、AC3樹脂、AES樹脂、AAS樹脂などのスチレン系樹脂・・・などが挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい・・・」(第2頁左下欄8行-第3頁左上欄9行参照)

以上の記載によると、引用例2には、
「食品を内蔵する樹脂素材から成る耐熱塗装容器であって、
該樹脂素材の樹脂組成物としてポリブチレンテレフタレートとABS樹脂などのスチレン系樹脂との混合樹脂を用いた耐熱塗装容器。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

4.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「合成樹脂」、「蓋体2」、「中蓋6」、「箱体1」及び「抗カビ・抗菌性弁当箱」は、それぞれ本願発明の「樹脂組成物」、「蓋部」、「中蓋部」、「本体部」及び「弁当箱」に相当することより、両者は、
「樹脂組成物を成形してなる弁当箱であり、
弁当箱が、蓋部、中蓋部及び本体部の組み合わせのものである弁当箱。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点;本願発明では、樹脂組成物が(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)スチレン系樹脂を含有し、蓋部、中蓋部及び本体部の少なくとも1つ以上の部分が(A)及び(B)成分を含む樹脂組成物からなるものであり、(B)成分のスチレン系樹脂としてABS樹脂を含有しており、(A)成分と(B)成分の比率(質量比)〔(A)/(B)〕が80/20?20/80であるのに対し、引用発明1では、合成樹脂についてそのような特定がされていない点。

5.判断
上記相違点について検討すると、
引用例1には、弁当箱を作製する合成樹脂には、安全性に優れ、耐熱性、耐薬品性及び耐衝撃性に優れたものを用いることが記載されていること、
引用発明2は、食品を内蔵する樹脂素材から成る耐熱塗装容器であって、該樹脂素材の樹脂組成物としてポリブチレンテレフタレートとABS樹脂などのスチレン系樹脂との混合樹脂を用いたものであること、
ポリブチレンテレフタレートとABS樹脂などのスチレン系樹脂との組み合わせは、耐熱性、耐薬品性及び耐衝撃性を備えた樹脂として従来から広く用いられている周知の樹脂組成物であり(例えば、特開平5-202275号公報及び特開平2003-26905号公報参照)、また、食品容器として用いた場合に安全性に問題があるものとも認められないこと、
上記両樹脂の比率(質量比)を80/20?20/80とすることは、その上限値及び下限値に格別な臨界的意義があるものとは認められず、上記両樹脂が有するそれぞれの特性を発揮させるために当業者が設計上適宜に採用する程度の数値範囲と認められること、
さらに、引用発明2は食品を内蔵するための容器であり、引用文献1の弁当箱と類似した技術分野に属することを考慮すれば、
引用発明1の合成樹脂として引用発明2の混合樹脂を採用し、上記相違点の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び2から当業者が予測できる範囲内のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-17 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2010-06-01 
出願番号 特願2004-343521(P2004-343521)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 熊倉 強
谷治 和文
発明の名称 食品用蓋付き容器  
代理人 持田 信二  
代理人 義経 和昌  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  
代理人 持田 信二  
代理人 義経 和昌  
代理人 古谷 聡  
代理人 溝部 孝彦  

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