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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1220280 |
審判番号 | 不服2008-23975 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-18 |
確定日 | 2010-07-15 |
事件の表示 | 特願2003-175916「廃棄液量検知方法及び廃棄液量検知装置並びに液体吐出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月13日出願公開、特開2005- 7785〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年6月20日の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成20年2月22日付けで手続補正がされたが、平成20年8月15日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成20年9月18日付けで審判請求がされたものである。 2.本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明は、平成20年2月22日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。 「 【請求項1】 所定の液体が貯蔵された液体容器からその液体を、ドット列又はドットの形成作業を実行するための実行手段へ供給して消費する際に、上記ドット列又はドットの形成作業の実行には使用されずに廃棄された液体の量を検知する廃棄液量検知方法であって、 上記液体容器の貯蔵容量をVとし、その液体容器内の液体の消費による液体の補充回数又は液体容器の交換回数をNとし、最後の液体容器内の液体残量としてその液体容器に備えられた液体残量検知手段で検知した液量をRとして、上記液体容器の使用開始時点から現時点までの期間における液体の総消費量(T)を T=V(N+1)-R の計算式により求め、 上記期間においてドット列又はドットの形成作業の実行手段からその作業の実行に使用された液体の使用量を累積して総使用量(P)を求め、 上記液体の総消費量(T)から総使用量(P)を引いた値(T-P)を廃棄された液体の量(D)とみなして、 廃棄液量を検知することを特徴とする廃棄液量検知方法。」(以下「本願発明」という。 ) 3.引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開2000-141704号公報(以下「引用例」という。)には、図と共に次の記載ア及びイがある。 ア 「【請求項1】 インクジェットヘッドのメンテナンスのために、各インクノズルからインクを吸引するヘッドクリーニング動作および各インクノズルからインク滴を吐き出すパージ動作を行うインクジェットプリンタにおいて、 前記ヘッドクリーニング動作によって吸引された廃インクおよび前記パージ動作によって吐き出された廃インクを回収する廃インクタンクと、 前記ヘッドクリーニング動作の回数を計数するヘッドクリーニングカウンタと、 前記パージ動作の回数を計数するパージカウンタと、 前記ヘッドクリーニングカウンタおよび前記パージカウンタの計数結果に基づき、廃インク量を算出する廃インク量算出手段と、 前記廃インク算出手段の算出結果に基づき、前記廃インクタンクが満杯であるか否かを検出するオーバーフロー検出手段とを有することを特徴とするインクジェットプリンタの廃インク回収機構。」 イ 「【0023】(インク供給・回収系)次に、図3を参照して、インクジェットプリンタ1のインク供給・回収系を説明する。インク供給源はキャリッジ8に形成した装着部に着脱可能に装着されたインクカートリッジ7である。このインクカートリッジ7は、全体として直方体形状をしており、内部が4区画に区分されている。各区画室7K、7Y、7M、7Cは、それぞれ、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクが貯留されたインクタンクである。各インクタンク7K、7Y、7M、7Cに貯留されているインクは、ヘッドユニット6のインクノズルからインク滴として吐出され、記録紙上に所定の印刷を形成する。」 上記アのヘッドクリーニング動作で各インクノズルから吸引されたインク及びパージ動作によって各インクノズルからインク滴として吐き出されたインクは、廃インクタンクに回収されるものであるから、記録紙上への所定の印刷には使用されず廃棄されるものといえる。 してみるに、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。 「所定のインクが貯蔵されたインクタンクからそのインクを、記録紙上への所定の印刷作業を実行するためのヘッドユニットへ供給して消費する際に、上記記録紙上への所定の印刷作業の実行には使用されずに廃棄されたインクの量を算出する廃棄インク量算出方法であって、 廃インク算出手段により廃棄インク量を算出する廃棄インク量算出方法。」(以下「引用発明」という。) 4.対比 本願発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「インク」、「インクタンク」、「記録紙上への所定の印刷作業」、「記録紙上への所定の印刷作業を実行するためのヘッドユニット」、「廃棄されたインクの量を算出する」、「廃棄インク量算出方法」は、それぞれ、本願発明の「液体」、「液体容器」、「ドット列又はドットの形成作業」、「ドット列又はドットの形成作業を実行するための実行手段」、「廃棄液量を検知する」、「廃棄液量検知方法」に相当する。 引用発明の「廃インク算出手段により廃棄インク量を算出する」は、演算を用いて廃棄液量を検知する点で、本願発明の「上記液体容器の貯蔵容量をVとし、その液体容器内の液体の消費による液体の補充回数又は液体容器の交換回数をNとし、最後の液体容器内の液体残量としてその液体容器に備えられた液体残量検知手段で検知した液量をRとして、上記液体容器の使用開始時点から現時点までの期間における液体の総消費量(T)をT=V(N+1)-Rの計算式により求め、上記期間においてドット列又はドットの形成作業の実行手段からその作業の実行に使用された液体の使用量を累積して総使用量(P)を求め、上記液体の総消費量(T)から総使用量(P)を引いた値(T-P)を廃棄された液体の量(D)とみなして、廃棄液量を検知する」と共通している。 すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「所定の液体が貯蔵された液体容器からその液体を、ドット列又はドットの形成作業を実行するための実行手段へ供給して消費する際に、上記ドット列又はドットの形成作業の実行には使用されずに廃棄された液体の量を検知する廃棄液量検知方法であって、 演算を用いて廃棄液量を検知する廃棄液量検知方法。」 <相違点> 本願発明は、演算を用いて廃棄液量を検知する工程が、「上記液体容器の貯蔵容量をVとし、その液体容器内の液体の消費による液体の補充回数又は液体容器の交換回数をNとし、最後の液体容器内の液体残量としてその液体容器に備えられた液体残量検知手段で検知した液量をRとして、上記液体容器の使用開始時点から現時点までの期間における液体の総消費量(T)をT=V(N+1)-Rの計算式により求め、上記期間においてドット列又はドットの形成作業の実行手段からその作業の実行に使用された液体の使用量を累積して総使用量(P)を求め、上記液体の総消費量(T)から総使用量(P)を引いた値(T-P)を廃棄された液体の量(D)とみなして、廃棄液量を検知する」と特定されているのに対して、引用発明は該特定を有しない点。 5.判断 相違点について (i)蒸発したり液体の補充や液体容器の交換時に漏れたりする少量を除けば、液体の総使用量が、ドット列又はドットの形成作業に使用された量と廃棄された液体の量の和からなることは自明であるから、液体の総使用量から、ドット列又はドットの形成作業に使用された量を引けば廃棄された液体の量となる。 (ii)液体容器の貯蔵容量をVとし、その液体容器内の液体の消費による液体の補充回数又は液体容器の交換回数をNとし、最後の液体容器内の液体残量をRとすれば、液体容器の使用開始時点から現時点までの期間における液体の総消費量(T)がT=V(N+1)-Rの計算式により求められることは自明である。 そして、液体容器内の液体残量を液体残量検知手段で検知することは周知である。 例えば、本願の出願前に頒布された特開平3-136865号公報及び特開2002-127454号公報を挙げることができる。特開平3-136865号公報の第1頁左下欄11?12行には「インクタンクにおけるインク残量を検知する残量検知手段」とあり、特開2002-127454号公報の【0004】には「インクタンクに何らかのセンサを設けインク残量を直接測定しようとするものがある。」とある。 なお、本願発明は、液体の補充回数又は液体容器の交換回数のカウント手段を備えると特定されてはいないが、念のため言及すると、該カウント手段はなんら格別のものではない。 例えば、本願の出願前に頒布された特開2002-120362号公報には、メインインクタンクからサブインクタンクへのインク補充回数カウント手段を備えるものが記載されている。(特に「【0053】すなわち、ステップ200では、リフィル回数Rが予め定めた設定値Nを越えているか否かを判断することにより、メインインクタンク50内のインク切れが生じているか否かを判断し、リフィル回数Rが予め定めた設定値Nを越えている場合には、メインインクタンク50内の略全てのインクがサブインクタンク30へ補充されたと判断し、ステップ208へ進む。」との記載参照。) (iii)ドット列又はドットの形成作業の実行手段からその作業の実行に使用された液体の使用量を累積した総使用量を求める手段は周知である。 例えば、本願の出願前に頒布された特開平11-240178号公報及び特開2002-127454号公報を挙げることができる。特開平11-240178号公報の【請求項1】には「カートリッジの吐出回数を計測する制御部」とあり、特開2002-127454号公報の【請求項5】には「記録ヘッドからのインク吐出回数を計数する計数手段」とある。 (iv)引用例の廃インク算出手段を、上記(i)ないし(iii)の演算を実行して廃棄インク量を算出するものとすることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 まとめ 上記(i)?(iv)より、引用発明において、本願発明の相違点に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 また、該構成を備えることによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-13 |
結審通知日 | 2010-05-18 |
審決日 | 2010-05-31 |
出願番号 | 特願2003-175916(P2003-175916) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 陽子 |
特許庁審判長 |
江成 克己 |
特許庁審判官 |
桐畑 幸▲廣▼ 長島 和子 |
発明の名称 | 廃棄液量検知方法及び廃棄液量検知装置並びに液体吐出装置 |
代理人 | 金本 哲男 |
代理人 | 亀谷 美明 |
代理人 | 西山 春之 |
代理人 | 萩原 康司 |