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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1220376
審判番号 不服2005-19535  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-11 
確定日 2010-08-09 
事件の表示 特願2002-540449「デジタル映像コンテンツの配信システム及び再生方法並びにその再生プログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月10日国際公開、WO02/37841〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成13年9月20日(優先権主張平成12年11月2日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成17年9月9日付けで拒絶査定された。
本件は、本願についてされた上記拒絶査定を不服とする平成17年10月11日の審判請求である。
そして、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る各発明は、平成17年4月18日付け及び平成17年8月15日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、請求項1ないし3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「デジタル映像データと該デジタル映像データに対応する副次データとを配信するサーバと、配信された前記デジタル映像データと前記副次データとを再生する利用者端末と、前記副次データの作成・修正を行う者の端末とをそれぞれインターネットで相互に接続してなるデジタル映像コンテンツ配信システムであって
前記副次データは、その再生開始ポイントと再生終了ポイントが前記デジタル映像データの映像フレームを特定する映像フレーム特定コードに対応するように作成され、インターネットを通じて作成・修正を行うことができ、
前記サーバは、前記デジタル映像データを格納する映像データファイルと、前記副次データを格納する副次データファイルと、前記デジタル映像データと前記副次データとに関する配信情報を格納する配信情報ファイルと、前記利用者端末からの要求に応じて前記デジタル映像データと前記副次データとを配信する配信手段と、前記配信情報を前記利用者端末に提供する情報提供手段とを備え、
前記副次データは、前記副次データの作成・修正を行う者の端末により、直接、前記副次データファイルより取出されて、作成・修正が行われて、再度前記副次データファイルに保存され、
前記デジタル映像データの再生時に、再生される映像フレームに対応する副次データの再生開始ポイントと再生終了ポイントとを読み出すようにして、前記利用者端末からの要求に応じて前記デジタル映像データと前記副次データとが配信されたとき、前記デジタル映像データの再生時に、前記副次データが前記デジタル映像データに同期して再生されるように構成したことを特徴とするデジタル映像コンテンツ配信システム。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した特開平9-23289号公報(平成9年1月21日公開、以下「引用例」という。)には、次のとおりの記載がなされている。
(a)【発明の属する技術分野】
本発明は、種々のネットワーク上に分散している映像、静止画、音声、テクスト等のマルチメディアデータに随時アクセスするマルチメディア・オン・デマンドシステムにおける端末での上記データの同期方法に関する。
【従来の技術】
従来のマルチメディア・オン・デマンドシステムでは、ネットワークの伝送速度は単一のものを前提としている。また、1つのコンテンツを構成する映像、静止画、音声、テキスト等のマルチメディアデータはネットワーク上で同一場所に保存されていることを前提としているので、ネットワーク上に分散保存されているマルチメディアデータを同期させて提示する手法は存在しない。
また、伝送速度の遅いネットワークを使用している場合は、NCSAのMosaicあるいはNetscape社のNetscapeに代表されるインターネット上のWWWブラウザで実現されているようにアクセス要求を発行してからデータを端末にダウンロードし、提示に必要なデータが揃った後に提示を開始する手法がある。
【発明が解決しようとする課題】
マルチメディア・オン・デマンドシステムが広く普及すれば、既存の情報に第三者が情報を付加する状況も発生する。その際に元の情報と同じ場所に該付加情報を保存しなければならない等、保存場所に制限があれば、保存媒体の容量等の資源が有効に使えなくなるという問題が発生する。
また、上記のように現状では1つのコンテンツを構成する映像、静止画、音声、テキスト等のマルチメディアデータはネットワーク上で同一場所に保存されていることを前提としているので、ネットワーク上に分散して保存されているマルチメディアデータを端末からアクセスし該データ間で同期をとりつつ提示する手法は実現されていない。
また、WWWブラウザのようにネットワークにアクセス要求を発行し、所望のデータをダウンロードした後に提示する手法では、アクセス要求およびデータダウンロードに時間がかかり、同期を取ってマルチメディアデータを提示するには問題があった。
さらに、アクセス時に分散保存されているデータの同期を取る場合でも、保存場所から端末までに一定伝送速度の伝送経路が存在し、マルチメディアデータの容量が該伝送速度と同等の場合、該マルチメディアデータに別のデータを付加して伝送し同期をとって提示することは不可能である。
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、マルチメディア・オン・デマンドシステムにおいて1つのコンテンツに必要なマルチメディアデータを伝送速度の異なるネットワーク上に分散して保存することを可能とし、マルチメディア・オン・デマンドシステムの構築の柔軟性を高めることを目的とする(第2頁右欄段落【0001】ないし第3頁左欄段落【0008】)。

(b)図1は、本発明の(請求項1)の一実施例で、好きなときに映画を視聴できるムービー・オン・デマンドシステムに適用した例を示すシステム図である。
ネットワーク1に、ディスプレイ3が接続された端末2、ハードディスク等の記憶装置にムービーデータ5を保存しているデータサーバ4、同様に字幕データ7を保存しているデータサーバ6、同様に字幕データ9を保存しているデータサーバ8、およびデータサーバ4,6,8の情報を管理している管理サーバ10が接続されている。ここで、データサーバ4、6、8はセンタ装置に相当する。
ムービーを視聴する場合、ユーザは端末2から先ず管理サーバ10にアクセスし、該ムービーを保存しているサーバがデータサーバ4であることと、該ムービーに対してデータサーバ6,8が字幕データ7,9を提供していることを知る。ここで、1つのムービーに対する複数の字幕データとは、日本語、英語等の言語の違い、あるいは同じ日本語でも翻訳者の違い等によって複数のデータが考えられる。また、元のムービーデータにもオリジナルの字幕データが存在している場合もある。上記データの所在を知った後、ムービーデータ5に対して字幕データ9を付加して視聴したい場合、端末2からデータサーバ4とデータサーバ8にアクセスし、ムービーデータ5を受信すると同時に字幕データ9も受信する。該データ5、9を受信した端末2では、ムービーデータ5の時間情報と字幕データ9の時間情報を参照し、両データ5、9の同期をとってディスプレイ3に表示する(第3頁右欄段落【0015】ないし第4頁左欄段落【0017】)。

(c)図2は、上記ムービー・オン・デマンドシステムの端末2におけるムービデータ5と字幕データ9の同期をとる方法の一例を示す図である。ここでは、両データ5,9ともMPEG方式で符号化されている場合を示しているが、時間情報がデータ中に存在すれば他のデータ方式でも構わない。また、この図は一連のデータの任意の時点を示したものである。字幕データ5は、ある処理単位に分割されており、各処理単位毎にその先頭にヘッダが付加されている。ここで、ある処理単位とは、例えば一度に画面に提示される字幕数十文字分である。該処理単位毎のヘッダ中には基準クロック11が存在する。前記処理単位毎のヘッダの後に字幕データ5のヘッダが付加されている。字幕データ5のヘッダ中には字幕データ5の提示時刻に関するデータであるタイムコード13が存在する。ムービーデータ9は、符号化の処理単位に分割されており、各処理単位毎にその先頭にヘッダが付加されている。ここで、処理単位とは、例えば15フレーム分である。該各処理単位内にはフレームデータ17毎にフレーム毎のヘッダが付加されており、該フレーム毎のヘッダ内には該フレームの提示時刻に関するデータであるタイムコード14が存在する。
ここで、基準クロック11、12とは、各データが作成される際に、その作成装置が持っているクロック(水晶発振器)から導出される値であり、例えばMPEG2の場合はクロックが27MHzと決まっており、該クロックの値は、1/27,000,000秒毎に1づつ増加する整数値となる。基準クロック11、12の値は該基準クロックを書き込む際にクロックが持っている値である。該基準クロック11、12を受信した端末2は、端末内部のクロックをこの該基準クロックに合わせる。この操作により、エンコーダ等のデータ作成装置と受信端末間でクロックが正確に一致したことになる。タイムコード13、14とは、該タイムコード後の字幕データ16やフレームデータ17を提示する時刻に関するデータであり、前記基準クロックと同様にエンコーダ等のデータ作成装置が書き込む。したがって、受信端末側では、タイムコード13、14の値は前記基準クロック11、12によるクロック調整が行なわれた後でなければ、その値は意味をなさない。同時に提示すべきデータ5,9が端末2に到着する時刻差をdtとすると、、先に到着したデータ5が、他のデータ9が到着までのdtの時間、バッファリングされる。このとき、端末2内のクロックの調整は、先に到着したデータ5の基準クロック11ではなく、後に到着したデータ9の基準クロック12を用いる。次に、両基準クロックデータ11および12の差を求める。以降、字幕データ16のタイムコードは該時間差を加算して変更されたものを用いる。すなわち、字幕データ16の変更後の提示時刻を示すタイムコードをタイムコード(変)とすると、
タイムコード(変)=タイムコード13+(基準クロック12-基準クロック11)
となる。該変更されたタイムコードを用いることによって、ムービーデータ17に同期させて字幕データ16を提示することが可能となる。ムービーデータ17中にも字幕データが存在する場合、該字幕データは端末2において除去される。図3は本発明(請求項2)の一実施例で、図1で示したシステムにゲートウェイ18が付加され、ゲートウェイ18にさらに複数台の端末2が接続されているシステム形態を例示している。図2で述べた同期処理は端末2で行われたものだが、端末2に十分な処理能力がないと該処理を実時間で行うのは困難である。そこで、端末2より処理能力の高いゲートウェイ18を付加し、ゲートウェイ18に図4に示す処理を行わせることによってマルチメディアデータの同期を実現するものである(第4頁左欄段落【0018】ないし右欄段落【0019】)。

ここで、上記記載(a)ないし(c)の記載からみて、引用例に記載されたムービー・オン・デマンドシステムは、インターネットに接続されたムービーデータ、字幕データを保存しているデータサーバ4、6、8と、管理サーバ10、端末2とからなり、ムービーデータ、字幕データで構成されるコンテンツを端末2からの要求に応じて、前記データサーバが配信するシステムであるといえる。
また、上記記載(a)ないし(c)の記載からみて、引用例に記載されたデータサーバ4はムービーデータ5を格納するムービーデータファイルを備え、データサーバ6、8は字幕データ7、9を格納する字幕データファイルを備えていることは明らかであり、さらに、上記ムービーデータ5及び字幕データ7、9がデジタルデータであることも明らかである。

これらの点を考慮すると、引用例には、
「デジタルムービーデータ5と該デジタルムービーデータに対応する字幕データ7、9とを配信するサーバ4、6、8と、配信された前記デジタルムービーデータと前記字幕データとを再生する端末2とをそれぞれインターネットで相互に接続してなるデジタルムービーデータ、字幕データのコンテンツ配信システムであって
前記デジタルムービーデータ5は、処理単位毎にそのフレームの提示時刻に関するデータであるタイムコード14が作成され、前記字幕データ7、9は、対応するデジタルムービーデータ5の前記タイムコード14に対応する字幕の提示時刻に関するデータであるタイムコード13が作成され、
前記サーバ4、6、8は、前記デジタルムービーデータ5を格納するムービーデータファイルと、前記字幕データ7、9を格納する字幕データファイルと、利用者端末からの要求に応じて前記デジタルムービーデータと前記字幕データとを配信する配信手段とを備え、
前記デジタルムービーデータの再生時に、再生されるムービーデータのタイムコード14及び対応する前記字幕データのタイムコード13を参照して、前記端末からの要求に応じて前記デジタルムービーデータと前記字幕データとが配信されたとき、前記デジタルムービーデータの再生時に、前記字幕データが前記デジタルムービーデータに同期して再生されるように構成したことを特徴とするコンテンツ配信システム。」の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると次のことが認められる。
(イ)引用発明の「コンテンツ配信システム」はデジタルムービーデータ(映画の映像、音声データ)と字幕データを配信するものであることから、引用発明は、本願発明と同様「デジタル映像コンテンツ配信システム」を対象とするものといえる。
(ロ)引用発明の「デジタルムービーデータ5」、「字幕データ7、9」、「サーバ4、6、8」及び「端末2」は、それぞれ本願発明の「デジタル映像データ」、「副次データ」、「サーバ」及び「利用者端末」に相当する。
(ハ)本願発明において、副次データは、その再生開始ポイントと再生終了ポイントがデジタル映像データの映像フレームを特定する映像フレーム特定コードに対応するように作成され、デジタル映像データの再生時に、再生される映像フレームに対応する副次データの再生開始ポイントと再生終了ポイントとを読み出すようにして副次データが前記デジタル映像データに同期して再生されるようにしているところ、引用発明においては、字幕データ7、9は、その提示をする時刻に関するデータであるタイムコード13が対応するデジタルムービーデータのフレームの提示時刻に関するデータであるタイムコード14に対応して作成され、デジタルムービーデータの再生時に、再生されるムービーデータのタイムコード14及び対応する前記字幕データのタイムコード13を参照して、字幕データがデジタルムービーデータに同期して再生されるように構成していることからすると、本願発明と引用発明とは、副次データ(引用発明でいう字幕データ)は、その提示の時間情報が対応するデジタル映像データ(引用発明でいうムービーデータ)の提示の時間情報に対応するように作成され、デジタル映像データの再生時に、再生される映像データに対応する副次データを読み出すようにして副次データがデジタル映像データに同期して再生されるように構成している点で共通するといえる。
もっとも、本願発明では、上記副次データの提示の時間情報が再生開始ポイントと再生終了ポイントであり、上記対応する前記デジタル映像データの提示の時間情報が、映像フレーム特定コードであるのに対し、引用発明では、上記副次データの提示の時間情報が字幕データを提示する時間のデータであり、上記デジタル映像データの提示の時間情報がデジタルムービーデータのフレームを提示する時間の情報である。また、本願発明では、上記デジタル映像データの再生時に、再生される映像フレームに対応する副次データの再生開始ポイントと再生終了ポイントとを読み出すようにしているのに対し、引用発明では、再生されるムービーデータのタイムコード14及び対応する前記字幕データのタイムコード13を参照している。
(ニ)本願発明では、インターネットに接続された副次データの作成・修正を行う者の端末を備え、副次データは、インターネットを通じて作成・修正を行うことができ、前記副次データの作成・修正を行う者の端末により、直接、前記副次データファイルより取出されて、作成・修正が行われて、再度前記副次データファイルに保存されるのに対し、引用発明では、そのようなことについては明示されていない。
(ホ)また、本願発明では、サーバは、デジタル映像データと副次データとに関する配信情報を格納する配信情報ファイルと、配信情報を利用者端末に提供する情報提供手段とを備えているのに対し、引用発明では、そのようなものは備えていない。

以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明とは、
「デジタル映像データと該デジタル映像データに対応する副次データとを配信するサーバと、配信された前記デジタル映像データと前記副次データとを再生する利用者端末とをそれぞれインターネットで相互に接続してなるデジタル映像コンテンツ配信システムであって
前記副次データは、その提示の時間情報が対応する前記デジタル映像データの提示の時間情報に対応するように作成され、
前記サーバは、前記デジタル映像データを格納する映像データファイルと、前記副次データを格納する副次データファイルと、前記利用者端末からの要求に応じて前記デジタル映像データと前記副次データとを配信する配信手段とを備え、
前記デジタル映像データの再生時に、再生される映像データに対応する副次データを読み出すようにして、前記利用者端末からの要求に応じて前記デジタル映像データと前記副次データとが配信されたとき、前記デジタル映像データの再生時に、前記副次データが前記デジタル映像データに同期して再生されるように構成したことを特徴とするデジタル映像コンテンツ配信システム。」といえる点で一致し、次の点で相違すると認められる。

相違点(1)
本願発明では、インターネットに接続された副次データの作成・修正を行う者の端末を備え、副次データは、インターネットを通じて作成・修正を行うことができ、前記副次データの作成・修正を行う者の端末により、直接、前記副次データファイルより取出されて、作成・修正が行われて、再度前記副次データファイルに保存されるのに対し、引用発明では、そのようなことについては明示されていない点。

相違点(2)
本願発明では、副次データは、その再生開始ポイントと再生終了ポイントが前記デジタル映像データの映像フレームを特定する映像フレーム特定コードに対応するように作成され、デジタル映像データの再生時に、再生される映像フレームに対応する副次データの再生開始ポイントと再生終了ポイントとを読み出すようにして、副次データが前記デジタル映像データに同期して再生されるように構成しているのに対し、引用発明では、副次データは、その提示の時間情報が対応するデジタル映像データの映像フレームの提示の時間情報に対応するように作成され、デジタル映像データの再生時に、再生される映像データの提示の時間情報に対応する提示の時間情報の副次データを読み出すようにして、副次データが前記デジタル映像データに同期して再生されるように構成している点。

相違点(3)
本願発明では、サーバは、デジタル映像データと副次データとに関する配信情報を格納する配信情報ファイルと、配信情報を利用者端末に提供する情報提供手段とを備えているのに対し、引用発明では、そのようなものは備えていない点。

4.判断
そこで以下、上記相違点について判断する。
相違点(1)について
一般に、サーバーが保持する各種データを新たに作成したり、修正したりすることは普通に行われることであり、また、FTP(File Transfer Protocol)を利用してインターネットで相互接続された端末とサーバ間で、端末からの要求によりサーバが保持するデータファイルを端末に転送することや端末で作成等したデータファイルを端末からサーバに転送して、サーバにおいて当該データファイルを書き込み、保存することは、当業者において周知の事項であり、そうすると、引用発明のコンテンツ配信システムにおいて、インターネットに副次データ(引用発明でいう字幕データ)の作成・修正を行う者の端末を接続し、当該端末により、作成・修正を行う者がサーバに保存される副次データファイルのデータの作成・修正をインターネットを通じて直接行うようにすることは当業者が格別の困難性なくなし得たことと認められる。

相違点(2)について
映像データとそれに対応する字幕データ等の副次データを同期して再生、表示するものにおいて、字幕データを提示の開始時間及び提示の終了時間を含めた形式で作成し、前記映像データを再生しながら字幕データを同期して表示すること(必要なら、原査定の拒絶理由に引用された「深田直秀 他,字幕表示用言語VCMLの設計とその表示システムの開発,情報処理学会研究報告,2000年 1月28日,第2000巻,第12号,pp.37?42」、「WWWでテレビ番組を作れる世界標準の現の仕様『SMIL』,日経マルチメディア,日経BP社,1997年12月,第30号,pp.98?101」等参照のこと。)や字幕データ等の副次データの提示の開始等の時間を映像データのフレーム番号(本願発明でいう映像フレーム特定コード)に対応するように作成し、映像データの再生時に、前記副次データのフレーム番号を読み出して、映像データと副次データを同期して再生すること(必要なら、例えば、特開昭64-48572号公報、特開平9-237486号公報等参照のこと。)はともに、当業者においては周知の事項である。
そうすると、引用発明において、字幕データを、その再生開始ポイント、再生終了ポイントを設定し、各ポイントがムービーデータのフレーム番号に対応するように作成し、デジタル映像データの再生時に、再生される映像フレームに対応する字幕データの再生開始ポイントと再生終了ポイントとを読み出すようにして、字幕データが前記デジタル映像データに同期して再生されるようにすることは、当業者が格別の困難性なくなし得たことと認められる。したがって、本願発明が、相違点(2)において格別のものであるとすることはできない。

相違点(3)について
相違点3に係る本願発明の構成は、明細書での説明に照らすと、サーバは、デジタル映像データと副次データのタイトルやプロフィール紹介からなる配信情報を配信情報ファイルに格納し、利用者に対して情報提供手段により当該情報を提供するものであるところ、本願発明や引用発明が対象とするようなコンテンツ配信システムにおいて、サーバが保持するコンテンツデータに関するタイトル等の配信情報を持ち、利用者端末からの要求に基づき当該配信情報を前記利用者端末に提供し、利用者が配信情報の閲覧、検索を行うことができるようにすることは、当業者において周知の事項であり、引用発明において、サーバに、デジタル映像データと副次データとに関する配信情報を格納する配信情報ファイルと、配信情報を利用者端末に提供する情報提供手段とを備えるようにすることは、当業者が格別の困難性なくなし得たことと認められる。

以上判断したとおり、本願発明における上記相違点(1)ないし(3)に係る構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たといえるものであり、また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-22 
結審通知日 2009-01-05 
審決日 2009-03-23 
出願番号 特願2002-540449(P2002-540449)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 五貫 昭一
奥村 元宏
発明の名称 デジタル映像コンテンツの配信システム及び再生方法並びにその再生プログラムを記録した記録媒体  
代理人 磯野 富彦  

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