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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1220411 |
審判番号 | 不服2008-13118 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-22 |
確定日 | 2010-07-21 |
事件の表示 | 平成10年特許願第118989号「化学薬品を格納および/または処理するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月18日出願公開、特開平10-332545〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成10年4月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成9年4月28日 オランダ)の出願であって、平成20年2月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正の補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年5月22日付けの手続補正を却下する。 [理由] 本件補正は、特許請求の範囲の補正を含み、平成20年1月31日付け(以下「補正前」という。)の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり補正するものである。(下線部は補正箇所を示す。) 「 化学薬品を格納及び/又は処理するためのサンプリング・チューブであって、その中に化学薬品を収納するための収容空所を備えたケーシングを有し、さらに、メモリを具えたトランスポンダを有し、該トランスポンダが前記化学薬品に影響されないように該サンプリング・チューブ内に配置され、前記ケーシングは両端が開放されたチューブとして構成され、前記収容空所は吸収剤を収容し、前記トランスポンダは前記吸収剤の外側に配置されていることを特徴とする化学薬品を格納及び/又は処理するためのサンプリング・チューブ。」 上記補正は、補正前の請求項1において、補正前の請求項6の発明特定事項である「前記装置はサンプリング・チューブ」であること、「前記ケーシングは両端が開放されたチューブとして構成され」ること、「前記収容空所は吸収剤を収容」することを限定するものといえるものの、補正前の請求項1における「ガラス製のケーシング」の「ガラス製の」という限定を省く補正事項と、トランスポンダについて補正前の請求項1における「前記装置の分離不可能な部分を構成する閉鎖ガラス・ハウジング内に溶融封入されている」という限定を省く補正事項を含むものであり、特許請求の範囲を拡張するものであって特許請求の範囲の減縮を目的としているとはいえない。また、誤記の訂正や、明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明 1 本願発明の認定 本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成20年1月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。 「 化学薬品を格納するための収容空所を備えたガラス製のケーシングを有し、さらに、メモリを有するトランスポンダを有し、該トランスポンダが前記化学薬品に影響されないように内部に配置されてなる化学薬品を格納および/または処理するための装置において、 前記トランスポンダが前記装置の分離不可能な部分を構成する閉鎖ガラス・ハウジング内に溶融封入されていることを特徴とする化学薬品を格納および/または処理するための装置。」(以下、「本願発明」という。) 2 引用刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平8-204609号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。 [a]「【0008】 【実施例】図1(a)は本発明の一実施例によるID容器の一例を示す外観図、(b)はその断面図である。図2はこのID容器1を含んで構成されるID容器システムの全体構成を示す概略図である。本図に示すようにID容器1は試験管本体2とそのキャップ3及びデータキャリア4を含んで構成されている。試験管本体2は通常の試験管と同様にガラス製の部材であり、その下方にはデータキャリア4が一体に成形される。又キャップ3は試験管に血液や試薬等を収納したときにこぼれないように付されるものである。データキャリア4はこの試験管内に保持される試薬の内容や検査結果,血液である場合に採血者の氏名や採血日時,検査結果等のデータを保持するメモリを有するものである。そして図2に示すようにこのデータキャリア4にデータを書込み及び読出すリードライトヘッド11、及びリードライトヘッド11に接続されてその動作を制御するIDコントローラ12が設けられる。リードライトヘッド11及びIDコントローラ12は書込/読出制御ユニットを構成している。又IDコントローラ12は上位のコンピュータ13に接続されている。」 [b]「【0010】次にデータキャリア4の構成について図4を参照しつつ説明する。図4において、送受信部31はリードライトヘッド11より出射される周波数の信号を受信及び送信するものであり、その受信出力は復調回路32に与えられる。復調回路32はこの信号を復調しそのデータを元の信号に変換してメモリ制御部33に与えている。メモリ制御部33にはバスを介してメモリ34が接続される。メモリ制御部33はIDコントローラ12から与えられたコマンド及びデータに従ってメモリにデータを書込み又は読出すものである。そしてメモリ34から読出されたデータはシリアル信号に変換され、変調回路35を介して送受信部31に与えられる。送受信部31は例えば従来例のように共振回路の共振周波数を異ならせることによって信号をリードライトヘッド11側に与えるものである。ここで送受信部31,復調回路32及び変調回路35はリードライトヘッド11から与えられたコマンドやデータを復調すると共に、読出されたデータを伝送するデータ伝送手段を構成している。」 [c]「【0012】図1(c)?(e)はこのID容器の他の例を示す断面図である。図1(c)では試験管2内に注入される液体に反応しない樹脂等でデータキャリアをモールドした状態で試験管にそのまま投入して形成したID容器1Aである。この場合には通常の試験管をそのまま用いてID容器とすることができる。又図1(d)はID容器1Bの下方にパレット状の保持部5を一体に取付け、その保持部内にデータキャリアを封入したものである。この場合にはこの保持部5によって試験管をそのまま載置台に載せることなく保持することができる。又図1(e)はデータキャリア4をシート状として試験管の外周部に巻き付けて構成したID容器1Cである。この場合には試験管の側方よりデータを書込むことができ、又データキャリアのコイルを試験管を中心として巻回することができるので、データ伝送をより確実に行うことが可能となる。」 [d]図1(b)には、試験管本体2のガラス製の部材内部にデータキャリア4が配置されることが記載されている。 上記[a]、[b]および[d]の記載によれば、引用例には、 「試験管本体とデータキャリアを含んで構成されていて、試験管本体はガラス製の部材であり、その下方内部にはデータキャリアが一体に成形され、試験管に血液や試薬等を収納し、データキャリアはこの試験管内に保持される試薬の内容や検査結果、血液である場合に採血者の氏名や採血日時,検査結果等のデータを保持するメモリとデータ伝送手段を有する、ID容器。」の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。 3 対比 本願発明と引用例発明を対比する。 (ア)引用例発明の「試薬」は、本願発明の「化学薬品」に相当する。そして、引用例発明の「試験管本体」は、「血液や試薬等を収納」する「試験管」を構成するものであり、「ガラス製の部材」からなるものであるから、本願発明の「化学薬品を格納するための収容空所を備えたガラス製のケーシング」に相当する。 (イ)引用例発明の「データを保持するメモリ」および「データ伝送手段」は、本願発明の「メモリ」および「トランスポンダ」にそれぞれ相当する。そして、引用例発明の「データキャリア」は「メモリ」を有し「データ伝送手段」を有することによりデータ伝送の機能を備えていることから、本願発明の「メモリを有するトランスポンダ」に相当するといえる。 (ウ)引用例発明の「試験管本体はガラス製の部材であり、その下方内部にはデータキャリアが一体に成形され」ていることと本願発明の「該トランスポンダが前記化学薬品に影響されないように内部に配置されてなる」こととは、「該トランスポンダが内部に配置されてなる」点で共通する。 (エ)引用例発明は「この試験管内に保持される試薬の内容や検査結果、血液である場合に採血者の氏名や採血日時,検査結果等のデータを保持するメモリ」を有していることから、試薬を格納したり、検査を行ったりするためのものであるといえるから、本願発明の「化学薬品を格納および/または処理するための装置」であるといえる。 (オ)引用例発明の「試験管本体はガラス製の部材であり、その下方内部にはデータキャリアが一体に成形され」ていることと本願発明の「前記トランスポンダが前記装置の分離不可能な部分を構成する閉鎖ガラス・ハウジング内に溶融封入されている」こととは、「前記トランスポンダが前記装置の分離不可能な部分を構成する閉鎖ガラス内に封入されている」点で共通する。 したがって、両者は、 「化学薬品を格納するための収容空所を備えたガラス製のケーシングを有し、さらに、メモリを有するトランスポンダを有し、該トランスポンダが内部に配置されてなる化学薬品を格納および/または処理するための装置において、前記トランスポンダが前記装置の分離不可能な部分を構成する閉鎖ガラス内に封入されている化学薬品を格納および/または処理するための装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点]トランスポンダが、本願発明では「化学薬品に影響されないように」配置されるものであり、「閉鎖ガラス・ハウジング内」に「溶融封入」されているのに対し、引用例発明では化学薬品に影響されないように配置することが特定されておらず、試験管本体のガラス製の部材の内部に一体に形成されるものの「密閉ガラス・ハウジング」に「溶融封入」されることが特定されていない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 まず、引用例発明は「化学薬品に影響されないように」配置することを特定していないが、試験管本体のガラス製の部材の内部に一体に形成されたデータキャリアは試験管に収納される血液や試薬等と接触することがないものであるから、血液や試薬等に影響されないように配置されているといえるものである。また、引用例に記載された他の例に関する記載である[c]には、試験管にデータキャリアをそのまま投入してID容器1Aを形成する場合には、「試験管2内に注入される液体に反応しない樹脂等でデータキャリアをモールド」することが記載されており、データキャリアを配置するに際して、化学薬品に影響されないようにすることは自明であるともいえる。 次に、引用例発明は、ガラス製の部材の「下方内部にはデータキャリアが一体に成形され」ているものであるから、試験管本体を構成するガラス製の部材がデータキャリアを閉鎖封入する「閉鎖ガラス・ハウジング」を形成しているともいえるものである。また、本願発明は「ガラス製のケーシング」とは別体の「密閉ガラス・ハウジング」を有するとも解釈できるものであるが、例えば特開平8-150191号公報の段落【0016】には、薬剤情報を格納するために、硬質ガラス製のチューブ状ケース2の内部に、メモリとしてのC-MOS等を組み込んで形成され、全体としてカプセル状をしたトランスポンダが使用されることが記載されており、実願平4-34627号(実開平5-90534号)のCD-ROMの明細書段落【0003】にもIDタグの構造としてガラス材などの耐水性,耐熱性の高い材料でモールドしたものが一般的であることが記載されているように、閉鎖ガラス・ハウジングに閉鎖封入して用いることは周知であるから、引用例発明において、データキャリアを密閉ガラス・ハウジングに封入した上で配置することは当業者が容易に想到しうる事項である。 さらに、ガラス製の部材に一体に形成する際に、「溶融」により一体に形成することは、周知慣用技術であるから、引用例1発明の「データキャリアが一体に成形され」たガラス製の部材からなる試験管本体を溶融により形成することは当業者が適宜設計し得ることである。 そして、本願発明の効果は、引用例発明および周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものであるとはいえない。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-16 |
結審通知日 | 2010-02-23 |
審決日 | 2010-03-08 |
出願番号 | 特願平10-118989 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
P 1 8・ 57- Z (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順、森 竜介 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
宮澤 浩 秋月 美紀子 |
発明の名称 | 化学薬品を格納および/または処理するための装置 |
代理人 | 武 顕次郎 |
代理人 | 武 顕次郎 |