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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1220498
審判番号 不服2008-6884  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-21 
確定日 2010-07-23 
事件の表示 特願2005- 37641「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月31日出願公開、特開2006-228453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年2月15日の出願であって平成20年2月14日付けで拒絶査定がなされ(平成20年2月20日発送)、これに対し、平成20年3月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年4月4日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成20年4月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年4月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。「2つの接続対象物を接続するコネクタにおいて、
前記コネクタは、基材と、前記基材の両面に千鳥状又は平行状に配設されている複数の弾性体と、前記各弾性体上に配設されている導体フィルムとを有し、
前記導体フィルムは、シート状の絶縁体を2つに折り曲げられて構成され、前記2つに折り曲げられた絶縁体の表面上に配設され、かつ、前記2つの接続対象物の一方と接続する2つの第1接点部と前記2つの接続対象物の他方と接続する2つの第2接点部とを有し、
前記各第1接点部と前記各第2接点部は、それぞれ独立し、かつ、千鳥状又は平行状に配設され、
前記導体フィルムは、前記2つの第1接点部の一方と前記2つの第2接点部の一方とを接続する第1接続部と、前記2つの第1接点部の他方と前記2つの第2接点部の他方とを接続する第2接続部とを更に有し、
前記2つの第1接点部の他方と前記2つの第2接点部の他方は、前記2つに折り曲げられた絶縁体の折り曲げ部の表面上の一面と他面にそれぞれ配設され、 前記第1接続部は、前記絶縁体の折り曲げ部の表面上に配設され、
前記第2接続部は、前記絶縁体の裏面上に配設されていることを特徴とするコネクタ。」(下線部は補正個所を示す)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である第1接点部と第2接点部について、その配設に関し、「前記2つの第1接点部の他方と前記2つの第2接点部の他方は、前記2つに折り曲げられた絶縁体の折り曲げ部の表面上の一面と他面にそれぞれ配設され」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平08-088062号公報(以下「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「【課題を解決するための手段】第1の発明に係るコネクタでは、ほぼ平坦かつ互いにほぼ平行な上端面および下端面を有するゴム状の弾性体と、両端部が前記弾性体の上端面および下端面に接続された基板部、該基板部の両端部上に二次元的に配列された複数の端子、および該基板部の一方の端部に配設された端子と該端子に対応する他方の端部に配設された端子とを夫々接続する複数の配線を有するフレキシブル基板とを具備してなることを特徴とする。」(段落【0023】)

イ 「(実施例1の具体的説明)図1は、本実施例のコネクタを示す。本実施例のコネクタ2は概略的には、フレキシブル基板部4とゴム部6の2つの部品から構成される。
図2は、図1のコネクタ2を構成するフレキシブル基板4の展開図である。本実施例では、1層の導体層を持つフレキシブル基板とするが、多層フレキシブル基板を用いても構わない。フレキシブル基板4には、両端部16に二次元的に配列される端子群(複数の端子10)と、これらの間を接続する配線群(複数の配線12)が具備される。フレキシブル基板4の配線12には一般に銅膜が用いられるので、導電性ゴムなどを用いたコネクタに比べ配線距離が長くなったとしても配線抵抗が少ない。
・・・
端子10の上にはハンダなどのバンブを載せ、他の部分より若干突出させて端子部に圧力が集中するようにしても良い。
図3は、図1のコネクタ2を構成するゴム部6の一実施例を示した図である。本実施例では、端子圧力を強化するために端子10の配置に合わせてゴム部6にもバンプ状の突起22を具備させているが、・・・・・・バンプを設けない場合は、フレキシブル基板4とゴム部6の接着を行うと接着性が良好になる。」(段落【0090】?【0095】)

ウ 「本実施例では、図1や図2のようにフレキシブル基板部4には穴8を設け、ゴム部6には上面26から下面28を貫通する穴(図3では20,図4では24)を設けてあり、この穴どおしの位置を合わせてゴム部6の上面、下面とフレキシブル基板4の両端部とを夫々接着する。
・・・次に、図5に、本実施例のコネクタを用いて複数の基板を実装した状態を示す。一番下には、ナット36(図示せず)などで貫通ネジ32にターミネーター34を固定してある。このターミネーター34は剛性が高い材質と構造を持たせ、力がかかっても変形しにくくする。必要ならば電気的な配線や終端抵抗を具備させてもよいが、単純な板であっても構わない。
この上には、本実施例のコネクタ2と電子回路を搭載したリジッドプリント基板30が、交互に貫通ネジ32を穴に通し積み重ねてある。最上部の基板を積み重ねた後は、コネクタ2とターミネーター34を積み重ね、ナット36などで締め付けてコネクタ2を圧縮した状態で固定する。
・・・
図7は、図6の状態と異なり、十分に圧力がかかっている状態での同じ接続部の断面図である。リジッドプリント基板30が激しく波打っている場合でも、コネクタ2が厚いゴム6とフレキシブル基板4でできているために大きく変形することができるので、コネクタ2側の端子10とリジッド基板30側の端子38の間の接触不良が起こりにくくなる。
本実施例では、コネクタ2のゴム部6に、端子10の位置に合わせてバンプ状の端子圧力強化用突起22を設けているので、より変形しやすく、かつ圧力がかかった場合は、バンプ部分は他の部分より大きく変形するので、端子部10に圧力が集中して少ない圧力でも安定した接続が可能となる。」(段落【0096】?【0101】)

エ 「次に以下では、本実施例の様々なバリエーションや本実施例のコネクタを利用した基板実装方法についての種々の実施例を説明するが、それら各実施例においても、ここで述べた効果を奏することは言うまでもない。
<実施例2(第2の発明に係る実施例)>
(実施例2の主な構成・作用)本実施例では、第1の発明に係るコネクタにおいて、フレキシブル基板に具備される二次元的に配列される端子群間を接続する配線群を平行配線とする。これによって、特性インピーダンスを全ての配線に関して容易に一定の値にすることができる。
・・・・・・
(実施例2の具体的説明)図8は、図1のコネクタのフレキシブル基板部の他の実施例を示した図である。誘電率εの絶縁フィルム46上に銅はくの配線層44を持つフレキシブル基板4´において、配線幅W、配線間隙Sの平行配線44を用いて端部48に配置された二次元千鳥状配列の端子42間を接続する配線パターンを形成する。」(段落【0103】?【0106】)

オ 「(実施例3の変形例)同じサイズのフレキシブル基板を用いてより多くの端子数のコネクタを作るためには、多層フレキシブル基板(何層でも良い)を用いると効果的である。ここでは、4層の配線層を持つフレキシブル基板を用いたコネクタについて説明する。
・・・
図12は、4層フレキシブル基板の第2層目の配線パターンの実施例を示した図である。第2層目は第1層目と合わせて両面フレキシブル基板124の片面として形成される。第3層目の場合と同様に下層の端子に対応するスルーホール(図14の71)を端部A2?A4,B2?B4および中央部C2a,C2b,C3a,C3b,C4に設け、さらに端部A2,B2および中央部C2a,C2bに複数の端子61,62を設け、A2とC2aおよびB2とC2bの対応する端子61,62間を平行配線64で夫々接続する配線パターンが形成されている。
図13は、4層フレキシブル基板の第1層目の配線パターンの実施例を示した図である。第1層目は第2層目の裏面にあたり、リジッド基板(図示せず)に接触する。これまでの実施例と同様に、下層の端子に対応するスルーホール(図14の71)を端部A2?A4,B2?B4および中央部C2a,C2b,C3a,C3b,C4に設け、さらに端部A1,B1、中央部C1a,C1bに複数の端子66を設け、A1とC1aおよびB1とC1bの対応する端子間を平行配線68で夫々接続する配線パターンが形成されている。
以上のような2枚の片面フレキシブル基板104,114と1枚の画面フレキシブル基板124を用い、4層フレキシブル基板を構成する。
図14は、上記のようにして構成された4層フレキシブル基板134の立体構造を示した断面図である。」(段落【0116】?【0122】)

そして、記載ア、イに関連して、図1には、ほぼ平坦かつ互いにほぼ平行な上端面および下端面を有するゴム部6に、略U字状に屈曲したフレキシブル基板4の両端部を取付けるとともに、両端部にそれぞれ端子群(複数の端子10)を配置し、両端部のこれら端子間を複数の配線12で接続したコネクタ2が示されている。
また、図2には、フレキシブル基板4の展開図が示されており、フレキシブル基板4の両端部16,16に、それぞれ複数の端子10(以下、便宜上それぞれ「一番目の端子群」、「二番目の端子群」と呼ぶ)が千鳥状に二次元配列され、一番目の端子群と二番目の端子群間が複数の配線12で接続された状態が示されている。
さらに、図3には、ゴム部6の上下面26,28に、それぞれ一番目の端子群と二番目の端子群の配置に合わせて複数のバンプ状の突起(端子圧力強化用突起)22が千鳥状に形成された状態が示されている。
記載ウに関連して、図5には、このコネクタ2の上下にリジッドプリント基板30を重ねてリジッドプリント基板30,30同士を電気的に接続する状態が示されており、図7には、リジッドプリント基板30側の複数の端子38とコネクタ2側の複数の端子10とが、端子圧力強化用突起22により圧接された状態が示されている。
記載エに関連して、図8には、絶縁フィルム46上に銅はくの配線層44を持つフレキシブル基板4´が示されている。
記載オに関連して、図14には、フレキシブル基板を4層としたものの断面が示されており、第1層配線68と第2層配線64とを、一枚の両面フレキシブル基板124の、それぞれ片面に形成した例が示されている。
また、図13には、両面フレキシブル基板124の表面側に形成された第1層配線68の両端に、表面側に千鳥状に配列された端子群65(端部A1、中央部C1aにそれぞれ対応する列の端子群、以下、便宜上「第一の端子群」と呼ぶ)が接続されている状態が示されている。
さらに、図12には、両面フレキシブル基板124の裏面側に形成された第2層配線64の両端に、表面側に千鳥状に配列された端子群61(端部A2、中央部C2aにそれぞれ対応する列の端子群、以下、便宜上「第二の端子群」と呼ぶ)が接続されている状態が示されている。

上記記載事項について検討する。記載ア、イ及び、図1?3によると、ほぼ平坦かつ互いにほぼ平行な上端面および下端面を有するゴム部6に、略U字状に屈曲したフレキシブル基板4の両端部を取付けるとともに、両端部にそれぞれ端子群(複数の端子10)を千鳥状に二次元配列し、両端部のこれら端子間を複数の配線12で接続したコネクター2が記載されており、さらに、ゴム部6の上下面26,28に、それぞれ複数の端子10の配置に合わせて千鳥状にバンプ状の突起(端子圧力強化用突起)22を備えることが記載されている。
記載ウ及び図5によると、このコネクター2が上下に配置された2つのリジッドプリント基板30を接続するものであることが記載されている。なお、記載ウには、圧力でバンプ部分(端子圧力強化用突起)が実質的に弾性変形することが記載されている。
記載エによると、フレキシブル基板が、絶縁フィルム46上に銅はくの配線層44を形成したものであることが記載されている。なお、記載イにも、「フレキシブル基板4の配線12には一般に銅膜が用いられる」との記載があるが、かかる構成のフレキシブル基板は一般に周知でもある。
記載オ及び図12?14には実施例3として、表面に千鳥状に配列された第一の端子群65を接続する第1層配線68を表面側に、表面に千鳥状に配列された第二の端子群61を接続する第2層配線64を裏面側にそれぞれ形成した両面フレキシブル基板124が記載されている。

そこで、記載ア?エの記載事項及び関連する図の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「2つのリジッドプリント基板30を接続するコネクタ2において、
前記コネクタ2は、ゴム部6と、前記ゴム部6の上下面26,28に千鳥状に配設されている複数の端子圧力強化用突起22と、前記各端子圧力強化用突起22上に配設されているフレキシブル基板4とを有し、
前記フレキシブル基板4は、絶縁フィルムを略U字状に屈曲して構成され、前記屈曲した絶縁フィルムの表面上に配設され、かつ前記2つのリジッドプリント基板30の一方と接続する一番目の端子群10と前記2つのリジッドプリント基板30の他方と接続する二番目の端子群10とを有し、
前記各一番目の端子群10と前記各二番目の端子群10は、それぞれ独立し、かつ、千鳥状に配設され、
前記フレキシブル基板4は、前記一番目の端子群10と前記二番目の端子群10とを接続する配線12とを更に有し、
前記一番目の端子群10と前記二番目の端子群10は、前記略U字状に屈曲した絶縁フィルムの表面上の上面と下面にそれぞれ配設され、
前記配線12は、前記絶縁フィルムの屈曲部の表面上に配設されているコネクタ2。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「リジッドプリント基板30」は、本願補正発明の「接続対象物」に相当し、以下同様に、「ゴム部6」は「基材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「前記ゴム部6の上下面26,28に千鳥状に配設されている複数の」「端子圧力強化用突起22」は、弾性変形可能なものであるので、本願補正発明の「前記基材の両面に千鳥状又は平行状に配設されている複数の」「弾性体」に相当する。

また、引用発明の「絶縁フィルム」は、本願補正発明の「シート状の絶縁体」に、同様に「屈曲した絶縁フィルムの表面上に配設され、かつ前記2つのリジッドプリント基板30の一方と接続する」「一番目の端子群10」は「2つに折り曲げられた絶縁体の表面上に配設され、かつ、前記2つの接続対象物の一方と接続する」「第1接点部」に、
「前記2つのリジッドプリント基板30の他方と接続する」「二番目の端子群10」は「前記2つの接続対象物の他方と接続する」「第2接点部」に、それぞれ相当するので、引用発明の「フレキシブル基板4」は、本願補正発明の「導体フィルム」に相当する。

次に、引用発明の「配線12」は、「前記一番目の端子群10と前記二番目の端子群10とを接続する」ものであって、「前記絶縁フィルムの屈曲部の表面上に配設されている」ものであり、一方、本願補正発明の「第1接続部」は、「前記2つの第1接点部の一方と前記2つの第2接点部の一方とを接続する」ものであって、「前記絶縁体の折り曲げ部の表面上に配設され」ているものであるので、引用発明の「配線12」は、本願補正発明の「第1接続部」に相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「2つの接続対象物を接続するコネクタにおいて、
前記コネクタは、基材と、前記基材の両面に千鳥状又は平行状に配設されている複数の弾性体と、前記各弾性体上に配設されている導体フィルムとを有し、
前記導体フィルムは、シート状の絶縁体を2つに折り曲げられて構成され、前記2つに折り曲げられた絶縁体の表面上に配設され、かつ、前記2つの接続対象物の一方と接続する第1接点部と前記2つの接続対象物の他方と接続する第2接点部とを有し、
前記各第1接点部と前記各第2接点部は、それぞれ独立し、かつ、千鳥状又は平行状に配設され、
前記導体フィルムは、前記第1接点部と前記第2接点部とを接続する第1接続部を更に有し、
前記第1接点部と前記第2接点部は、前記2つに折り曲げられた絶縁体の折り曲げ部の表面上の一面と他面にそれぞれ配設され、
前記第1接続部は、前記絶縁体の折り曲げ部の表面上に配設されているコネクタ。」

そして、両者は次の点で相違する(対応する引用発明(引用例記載)の用語を( )内に示す)。

(相違点)
本願補正発明の第1接点部は、絶縁体の表面上に配設された第1接続部で接続される一方の第1接点部と、絶縁体の裏面上に配設された第2接続部で接続される他方の第1接点部の2つの第1接点部を有し、第2接点部についても同様に、第1接続部で接続される一方の第2接点部と、第2接続部で接続される他方の第2接点部の2つの第2接点部を有するのに対し、引用発明は、絶縁体(絶縁フィルム)の裏面上に配設された第2接続部に欠け、したがって、絶縁体(絶縁フィルム)の表面上に配設された第1接続部(配線12)で接続される一方の第1接点部にあたる1つの第1接点部(一番目の端子群10)と一方の第2接点部にあたる1つの第2接点部(二番目の端子群10)のみを有する点。
また、その結果、「前記2つの第1接点部の他方と前記2つの第2接点部の他方は、前記2つに折り曲げられた絶縁体の折り曲げ部の表面上の一面と他面にそれぞれ配設され」との構成に欠ける点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
引用例の記載イには、「本実施例では、1層の導体層を持つフレキシブル基板とするが、多層フレキシブル基板を用いても構わない」と、フレキシブル基板を多層にすることが示唆されている。
そして、引用例の記載オには、フレキシブル基板を、両面フレキシブル基板124を含む4層のフレキシブル基板としたコネクタの実施例が示され、「同じサイズのフレキシブル基板を用いてより多くの端子数のコネクタを作るためには、多層フレキシブル基板(何層でも良い)を用いると効果的である」との記載がある。

ここで、上記両面フレキシブル基板124は、記載オ及び図14によれば、第1層配線68と第2層配線64とをその表面側と裏面側とにそれぞれ形成したもので、また表面側には、両面フレキシブル基板124の表面側に形成された第1層配線68により接続される千鳥状に配列された第一の端子群65(端部A1、中央部C1aにそれぞれ対応する列の端子群)と、両面フレキシブル基板124の裏面に形成された第2層配線64により接続される千鳥状に配列された第二の端子群62(端部A2、中央部C2aにそれぞれ対応する列の端子群)とを備えている。

そこで、引用例記載のものは、より多くの端子を設けることを課題とするものである(前記記載イ、オ参照)から、引用発明において、配線間隔を狭くすることなく、より多い接点(端子)数のコネクタを作るために、両面フレキシブル基板124を導体フィルム(フレキシブル基板4)として採用し、絶縁体(絶縁フィルム)の表面上に配設された第1接続部(第1層配線68)で接続される一方の第1接点部及び一方の第2接点部(第一の端子群65)と、絶縁体の裏面上に配設された第2接続部(第2層配線64)で接続される他方の第1接点部及び他方の第2接点部(第二の端子群62)とを有するように構成し、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、このようにした結果、「前記2つの第1接点部の他方と前記2つの第2接点部の他方は、前記2つに折り曲げられた絶縁体の折り曲げ部の表面上の一面と他面にそれぞれ配設され」るようになることは当然のことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用例に記載されたものから当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例に記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成19年12月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「2つの接続対象物を接続するコネクタにおいて、
前記コネクタは、基材と、前記基材の両面に千鳥状又は平行状に配設されている複数の弾性体と、前記各弾性体上に配設されている導体フィルムとを有し、
前記導体フィルムは、シート状の絶縁体を2つに折り曲げられて構成され、前記2つに折り曲げられた絶縁体の表面上に配設され、かつ、前記2つの接続対象物の一方と接続する2つの第1接点部と前記2つの接続対象物の他方と接続する2つの第2接点部とを有し、
前記各第1接点部と前記各第2接点部は、それぞれ独立し、かつ、千鳥状又は平行状に配設され、
前記導体フィルムは、前記2つの第1接点部の一方と前記2つの第2接点部の一方とを接続する第1接続部と、前記2つの第1接点部の他方と前記2つの第2接点部の他方とを接続する第2接続部とを更に有し、
前記第1接続部は、前記2つに折り曲げられた絶縁体の折り曲げ部の表面上に配設され、
前記第2接続部は、前記絶縁体の裏面上に配設されていることを特徴とするコネクタ。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、第1接点部と第2接点部の配設に関する限定事項である「前記2つの第1接点部の他方と前記2つの第2接点部の他方は、前記2つに折り曲げられた絶縁体の折り曲げ部の表面上の一面と他面にそれぞれ配設され」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明及び引用例に記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例に記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例に記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-25 
結審通知日 2010-05-26 
審決日 2010-06-08 
出願番号 特願2005-37641(P2005-37641)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 茂夫中川 真一  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 松下 聡
稲垣 浩司
発明の名称 コネクタ  
代理人 福田 修一  
代理人 池田 憲保  
代理人 山本 格介  

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