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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1220506
審判番号 不服2009-5076  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-09 
確定日 2010-07-23 
事件の表示 特願2001-538714号「照明状態を発生し且つ調整するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月25日国際公開、WO01/36864、平成15年 5月27日国内公表、特表2003-517705号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2000年11月20日(パリ条約による優先権主張1999年11月18日、2000年5月2日、2000年9月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月28日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成21年3月9日に本件審判が請求されるとともに、同年4月8日に手続補正(前置補正)がなされたものである。

第2 平成21年4月8日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月8日の手続補正を却下する。
[理由]
1. 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
本質的に白色の光を発生するための照明器具であって、
第1の連続したスペクトル(1201)を有する少なくとも1つの白色LEDを含む第1の要素照明源と、
第1のスペクトルとは異なる第2の連続したスペクトル(1301)を有する少なくとも1つの白色LEDを含む第2の要素照明源とを含む複数の要素照明源と、
外部からデータを受信するためのデータ接続と、
データにより複数の要素照明源を制御することが可能なプロセッサであって、第1のスペクトル(1201)を有する少なくとも1つの第1の白色LEDの強度および第2のスペクトル(1301)を有する少なくとも1つの第2の白色LEDの強度を制御し、照明器具から発生される白色光の色温度を、制御可能に変化させるように適合したプロセッサとを含み、
第1のスペクトルおよび第2のスペクトルとは異なる第3のスペクトルを有する、少なくとも1つの別のLEDをさらに含み、
少なくとも1つの第1の白色LED、少なくとも1つの第2の白色LED、および少なくとも1つの別のLEDが、人の眼に見える波長にわたって実質的に連続である結合スペクトルを提供するようなそれぞれのスペクトルを有する、照明器具。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「照明器具」に関して「第1のスペクトルおよび第2のスペクトルとは異なる第3のスペクトルを有する、少なくとも1つの別のLEDをさらに含み、
少なくとも1つの第1の白色LED、少なくとも1つの第2の白色LED、および少なくとも1つの別のLEDが、人の眼に見える波長にわたって実質的に連続である結合スペクトルを提供するようなそれぞれのスペクトルを有する」と限定するものであって、当該補正箇所は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2. 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-7774号公報(以下「刊行物1」という。)には、色温度可変光源装置に関して、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【目的】 同一の光色で、異なった演色性能の光を実現できる色温度可変光源装置を得る。
【構成】 低色温度領域に属する低色温度光源部1と、高色温度領域に属する高色温度光源部2で構成し、低色温度光源部の光源にスペクトルの異なる少なくとも2種類の光源として三波長域発光形蛍光ランプ11aと連続スペクトル高演色形蛍光ランプ11bを用い、高色温度光源部の光源にスペクトルの異なる少なくとも2種類の光源として三波長域発光形蛍光ランプ21aと連続スペクトル高演色形蛍光ランプ21bを用い、これらの蛍光ランプを調光制御装置3により点滅あるいは調光制御する。」(【要約】)
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、異なる色温度の光を発する複数の光源を点滅あるいは調光制御して所望の相関色温度の光を実現する色温度可変光源装置に関する。」
(ウ)「【0009】
【作用】上記のように構成された本発明の色温度可変光源装置においては、1つの色温度領域内において異なるスペクトルを持つ光の混光がなされ、この混光による光は混光比によりスペクトル特性が異なり、この光により照明された物体の色もスペクトル特性により異なった色に演色される。この場合において、異なるスペクトルを持つ2種類の光源を高効率ランプ及び高演色ランプとすることにより、所望の光色を効率重視で実現する場合、及び、所望の光色を演色性能重視で実現する場合の両方に対応できる。」
(エ)「【0011】
【実施例】
実施例1.図1は本発明の実施例1に係る色温度可変光源装置の構成を示す概念図であり、図において、1は低色温度領域に属する低色温度光源部、2は高色温度領域に属する高色温度光源部、11a、11bは低色温度光源部1を構成する三波長域発光形電球色蛍光ランプと連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ、21a、21bは高色温度光源部2を構成する三波長域発光形昼光色蛍光ランプと連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ、12a、12b、22a、22bはそれぞれ蛍光ランプ11a、11b、21a、21bを調光動作させる点灯装置、3は点灯装置12a、12b、22a、22bに対し、それぞれ調光レベルを決定し、調光信号を生成する調光制御装置である。」
(オ)「【0014】次に動作を説明する。この色温度可変光源装置が使用される用途、状況に対応して、低色温度光源部1及び高色温度光源部2に対しそれぞれ所望の相関色温度、演色性能、光束などが決定され、調光制御装置3に入力される。調光制御装置3ではこれらの情報をもとに蛍光ランプ11a、11b、21a、21bの調光レベルを決定する。」
(カ)「【0016】ところが、三波長域発光形蛍光ランプの効率は89[lm/w]、連続スペクトル高演色形蛍光ランプの効率は55[lm/w]であり、両者は効率の面で大きく異なっている。一般に、高効率光源では効率は高演色光源に比較して優れているが、演色性能は高演色光源に比較して劣っている。照明は照明の雰囲気演出のような光色を効率よく実現することが要求される場合、あるいは、化粧した肌の色を見る場合のような光色及び演色性能を重視する場合の両方があり、目的に応じた光色、演色性能が要求される。化粧や絵画制作、食事などにおけるように演色性能がもっとも重視される場面では、連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11b及び連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21bを調光制御装置3により点滅あるいは調光制御し、蛍光ランプ11bの光束の比率が大きければ低色温度側に、蛍光ランプ21bの光束の比率が大きければ高色温度側に光色がシフトし、高い演色性能を持った所望の光色の光が生成できる。パーティ、読書など明るさと光色が重視され、演色性能もある程度重視される場面では、三波長域発光形電球色蛍光ランプ11a、連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11b、三波長域発光形昼光色蛍光ランプ21a、連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21bを調光制御装置3により点滅あるいは調光制御することにより、高照度で演色性能をある程度重視した光が生成できる。昼間の場面演出やオフィス事務作業のような明るさ及び効率重視の場面では、三波長域発光形電球色蛍光ランプ11a及び三波長域発光形昼光色蛍光ランプ21aを調光制御装置3により点滅あるいは調光制御することにより、高照度の光が高効率で実現できる。」
(キ)「【0020】・・(中略)・・以上の各実施例において、低色温度領域、高色温度領域の光源はそれぞれ複数個あっても良く、三波長域発光形蛍光ランプと連続スペクトル高演色形蛍光ランプが混在していてもよい。また、蛍光ランプについて述べたが、他の点滅あるいは調光制御できる光源であれば他のものでも良い。」

ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。
・指摘事項(ア)の「三波長域発光形蛍光ランプ11a」「連続スペクトル高演色形蛍光ランプ11b」「三波長域発光形蛍光ランプ21a」「連続スペクトル高演色形蛍光ランプ21b」は、それぞれ、指摘事項(エ)の「三波長域発光形電球色蛍光ランプ」「連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ」「三波長域発光形昼光色蛍光ランプ」「連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ」であるので、それぞれ「三波長域発光形電球色蛍光ランプ11a」「連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11b」「三波長域発光形昼光色蛍光ランプ21a」「連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21b」といえる。

すると、上記の事項を総合すると刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「色温度可変光源装置であって、
低色温度光源部の光源にスペクトルの異なる少なくとも2種類の光源として三波長域発光形電球色蛍光ランプ11aと連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11bを用い、高色温度光源部の光源にスペクトルの異なる少なくとも2種類の光源として三波長域発光形昼光色蛍光ランプ21aと連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21bを用い、
これらの蛍光ランプを調光制御装置3により点滅あるいは調光制御する色温度可変光源装置。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-162660号公報(以下「刊行物2」という。)には、LEDを用いた光源に関して、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ク)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LEDを用いた光源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】照明用及び表示用光源として、白熱灯及び放電灯等の集中型光源を用いた場合、光源の大きさが被照射面までの距離に対して無視できない大きさを保つため、被照射面の広い範囲において望まれる配光・光色を得るには、大型の光学系を備えたり、器具効率をかなり犠牲にする器具設計を行っている。更に配光・光色パターンを可変とする制御をするには、かなりの付加的装置を伴う。」
(ケ)「【0029】・・(中略)・・請求項11の発明は、請求項1の発明において、異なる発光色を持つLEDを複数組み合わせて発光体を構成し、制御手段が任意の色温度となるように電力制御を行うので、電力制御を行うだけで、任意の色温度の照明が行える。」

(3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-135274号公報(以下「刊行物3」という。)には、LED照明装置に関して、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(コ)「【0010】・・(中略)・・前記各LED11としては白色光を発光するLEDを使用している。なお、LEDとして、赤色、青色、黄色、緑色の発光を行うLEDを使用してもよい。」

3. 本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「色温度可変光源装置」は、指摘事項(イ)の「異なる色温度の光を発する複数の光源を点滅あるいは調光制御して所望の相関色温度の光を実現する」ものであって、その光源が「三波長域発光形電球色蛍光ランプ」「連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ」「三波長域発光形昼光色蛍光ランプ」「連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ」であり、電球色と昼光色の間の白色の光が発生することが明らかであるので、本願補正発明の「本質的に白色の光を発生するための照明器具」に相当する。
(b)引用発明の「連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11b」及び「連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21b」と、本願補正発明の「第1の連続したスペクトル(1201)を有する少なくとも1つの白色LEDを含む第1の要素照明源と、
第1のスペクトルとは異なる第2の連続したスペクトル(1301)を有する少なくとも1つの白色LEDを含む第2の要素照明源とを含む複数の要素照明源」とは、「第1の連続したスペクトルを有する少なくとも1つの光源を含む第1の要素照明源と、
第1のスペクトルとは異なる第2の連続したスペクトルを有する少なくとも1つの光源を含む第2の要素照明源とを含む複数の要素照明源」である点において共通するものである。
(c)引用発明の「調光制御装置3」は、指摘事項(オ)の「色温度可変光源装置が使用される用途、状況に対応して、低色温度光源部1及び高色温度光源部2に対しそれぞれ所望の相関色温度、演色性能、光束などが決定され、調光制御装置3に入力される。調光制御装置3ではこれらの情報をもとに蛍光ランプ11a、11b、21a、21bの調光レベルを決定する」ものであるので、引用発明の色温度可変光源装置は、調光制御装置3への入力手段、すなわち、外部からデータを受信するためのデータ接続を含むことは自明である。
さらに、引用発明の「調光制御装置3」と、本願補正発明の「データにより複数の要素照明源を制御することが可能なプロセッサであって、第1のスペクトル(1201)を有する少なくとも1つの第1の白色LEDの強度および第2のスペクトル(1301)を有する少なくとも1つの第2の白色LEDの強度を制御し、照明器具から発生される白色光の色温度を、制御可能に変化させるように適合したプロセッサ」とは、「データにより複数の要素照明源を制御することが可能なプロセッサであって、第1のスペクトルを有する少なくとも1つの第1の光源の強度および第2のスペクトルを有する少なくとも1つの第2の光源の強度を制御し、照明器具から発生される白色光の色温度を、制御可能に変化させるように適合したプロセッサ」である点において共通するものである。
(d)引用発明の「三波長域発光形電球色蛍光ランプ11a」「三波長域発光形昼光色蛍光ランプ21a」は、連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11bや連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21bのスペクトルとは異なるスペクトルを有するもの(刊行物1の図3(a)、図3(b)参照)であるので、本願補正発明の「第1のスペクトルおよび第2のスペクトルとは異なる第3のスペクトルを有する、少なくとも1つの別のLED」と、「第1のスペクトルおよび第2のスペクトルとは異なる第3のスペクトルを有する、少なくとも1つの別の光源」である点において共通するものである。
(e)引用発明の「色温度可変光源装置」は、指摘事項(カ)の「パーティ、読書など明るさと光色が重視され、演色性能もある程度重視される場面では、三波長域発光形電球色蛍光ランプ11a、連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11b、三波長域発光形昼光色蛍光ランプ21a、連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21bを調光制御装置3により点滅あるいは調光制御することにより、高照度で演色性能をある程度重視した光が生成できる。」ものであり、連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11b、及び、連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21bを使用している以上、少なくとも全体として人の眼に見える波長にわたって実質的に連続である結合スペクトルが提供されることが明らかであり、本願補正発明の「少なくとも1つの第1の白色LED、少なくとも1つの第2の白色LED、および少なくとも1つの別のLEDが、人の眼に見える波長にわたって実質的に連続である結合スペクトルを提供するようなそれぞれのスペクトルを有する、照明器具。」と、「少なくとも1つの第1の光源、少なくとも1つの第2の光源、および少なくとも1つの別の光源が、人の眼に見える波長にわたって実質的に連続である結合スペクトルを提供するようなそれぞれのスペクトルを有する、照明器具。」である点において共通するものである。

(2)両発明の一致点
「本質的に白色の光を発生するための照明器具であって、
第1の連続したスペクトルを有する少なくとも1つの光源を含む第1の要素照明源と、
第1のスペクトルとは異なる第2の連続したスペクトルを有する少なくとも1つの光源を含む第2の要素照明源とを含む複数の要素照明源と、
外部からデータを受信するためのデータ接続と、
データにより複数の要素照明源を制御することが可能なプロセッサであって、第1のスペクトルを有する少なくとも1つの第1の光源の強度および第2のスペクトルを有する少なくとも1つの第2の光源の強度を制御し、照明器具から発生される白色光の色温度を、制御可能に変化させるように適合したプロセッサとを含み、
第1のスペクトルおよび第2のスペクトルとは異なる第3のスペクトルを有する、少なくとも1つの別の光源をさらに含み、
少なくとも1つの第1の光源、少なくとも1つの第2の光源、および少なくとも1つの別の光源が、人の眼に見える波長にわたって実質的に連続である結合スペクトルを提供するようなそれぞれのスペクトルを有する、照明器具。」

(3)両発明の相違点
本願補正発明は、第1の連続したスペクトルを有する少なくとも1つの光源が「白色LED」であり、第1のスペクトルとは異なる第2の連続したスペクトルを有する少なくとも1つの光源が「白色LED」であり、第1のスペクトルおよび第2のスペクトルとは異なる第3のスペクトルを有する、少なくとも1つの別の光源が「LED」であるのに対して、引用発明はそうではない点。
また、そのことに伴って、照明器具が、本願補正発明は「少なくとも1つの第1の白色LED、少なくとも1つの第2の白色LED、および少なくとも1つの別のLEDが、人の眼に見える波長にわたって実質的に連続である結合スペクトルを提供するようなそれぞれのスペクトルを有する」と表現されるものであるのに対して、引用発明ではそうではない点。

4. 容易推考性の検討
(a)まず、刊行物1の指摘事項(キ)には、「蛍光ランプについて述べたが、他の点滅あるいは調光制御できる光源であれば他のものでも良い。」旨記載されている。
そして、刊行物2,3に記載されている様に、LEDが照明装置の光源として周知慣用のものである以上、上記指摘事項(キ)には、実質的に引用発明の光源である各蛍光ランプに換えて、光源として周知のLEDを用いることが示唆されているといえる。
(b)一方、本願明細書中に「ニチアNSPW510BS(ビンA)」「ニチア化学は、現在、入手可能な3つのビン(A、B及びC)の白色LED」(なお、該「ビン」は、日本国内では、一般的に「ランクa0」や「aランク」と表されている事項である。)が例示として示されており、さらに、特表平11-500584号公報にも、「エポキシ樹脂中の発光物質の濃度を変えることにより簡単に白色光のCIE色位置を変えることができる」との記載と共に、図8に複数の「白色光を放出する半導体素子の放出スペクトル」が示されている様に、LEDとして、互いに異なる連続したスペクトルを有する、複数種の白色LEDが存在していること自体も周知である。
(c)そうすると、引用発明の「連続スペクトル高演色形電球色蛍光ランプ11b」及び「連続スペクトル高演色形昼光色蛍光ランプ21b」を、上記(a)の示唆に基づいて、上記(b)の互いに異なる連続したスペクトルを有する、別種の白色LEDとするとともに、引用発明の「三波長域発光形電球色蛍光ランプ11a」「三波長域発光形昼光色蛍光ランプ21a」を、上記(a)の示唆に基づいて、第1のスペクトルおよび第2のスペクトルとは異なる第3のスペクトルを有する、別のLEDとして、相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。
なお、刊行物3の指摘事項(コ)には、白色光を発光するLEDに換えるものとして、光の三原色である赤、青、緑のLEDの他に黄色のLEDを加えたものも例示されており、別のLEDの第3のスペクトルが、本願明細書に例示されてている「琥珀色」であったとしても、容易想到の範囲であることに変わりはない。
(d)さらに、例えば、ライティングハンドブック(社団法人照明学会 昭和62年11月30日第1版第1刷発行 第290頁 12・5・3光源の選定方法)にも「特性の異なる光源を2種以上の組合せによる光の質的改善(演色性や光色など)あるいは光の量的改善(効率など)を行う混光照明は,光源個々の特性を補いながら経済性を高める有効な手法の一つで良く使用される。」と記載されている様に、演色性向上も、照明効率向上と共に、混光照明固有の効果として広く認識されているものであり、後者の効果に対応する刊行物1指摘事項(カ)記載の「効率」とは別の、前者の効果である演色性向上を予測することも当業者にとって特別困難なことではなく、審判請求書【請求の理由】の「本願発明の照明器具により制御される白色光のスペクトルは、単なる白色光のスペクトルではなく、『本質的に白色の光』、すなわち、『高品質の白色光』のための所望の基準を満たすスペクトルを示す」との効果も、当業者であれば予測できた範囲のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2?3に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5. むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1. 本願発明
平成21年4月8日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?47に係る発明は、平成20年11月6日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?47に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。
「【請求項1】
本質的に白色の光を発生するための照明器具であって、
第1の連続したスペクトル(1201)を有する少なくとも1つの白色LEDを含む第1の要素照明源と、
第1のスペクトルとは異なる第2の連続したスペクトル(1301)を有する少なくとも1つの白色LEDを含む第2の要素照明源とを含む複数の要素照明源と、
外部からデータを受信するためのデータ接続と、
データにより複数の要素照明源を制御することが可能なプロセッサであって、第1のスペクトル(1201)を有する少なくとも1つの第1の白色LEDの強度および第2のスペクトル(1301)を有する少なくとも1つの第2の白色LEDの強度を制御し、照明器具から発生される白色光の色温度を、制御可能に変化させるように適合したプロセッサとを含む、前記照明器具。」

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?3とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3. 対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明(前記「第2 1.」における下線部分が限定を付加した部分)が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、引用発明、刊行物2?3に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2?3に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4. むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-22 
結審通知日 2010-02-23 
審決日 2010-03-11 
出願番号 特願2001-538714(P2001-538714)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 植前 津子
中川 真一
発明の名称 照明状態を発生し且つ調整するシステム及び方法  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 宮崎 昭彦  
代理人 津軽 進  

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