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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1220549
審判番号 不服2007-22145  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-09 
確定日 2010-07-20 
事件の表示 特願2004-505938「売買仲介システム及び売買仲介の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月27日国際公開、WO03/98510〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年5月14日(優先権主張平成14年5月15日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成19年3月1日付けで拒絶理由が通知され、同年5月16日付けで手続補正がなされたが、同年7月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月9日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同年9月10日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年9月10日付け手続補正の補正却下の決定について
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)手続補正の内容
平成19年9月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のとおりに補正された。
「【請求項1】
出品者端末と、購入者端末と、売買仲介管理システムとが通信ネットワークで接続された売買仲介システムであって、
前記売買仲介管理システムは、
出品者から受領した出品商品情報を記録する出品商品情報記録手段と、
盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースからなる商品審査情報記録手段と、
該商品審査情報記録手段に記録された情報を参照して、前記出品商品情報記録手段に記録された出品商品情報が、前記不正商品データベースに記録された不正商品情報に該当するか否か、前記商品価格データベースに記録された市場価格より著しく安いか否か、前記商品流通データベースに記録された流通量より著しく多いか否かにより、前記出品商品情報記録手段に記録された商品が不正商品に該当するか否かを判定する出品判定手段と、を備え、
前記出品判定手段は、
前記盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースに記録された情報から商品の不正商品の可能性について判定できないと判断された場合に判定不能として管理者に再審査依頼データを送信する再審査依頼手段と、前記管理者から再審査結果を受信する再審査判定受付手段と、を備えることを特徴とする売買仲介システム。
【請求項2】
出品者端末と、購入者端末と、売買仲介管理システムとが通信ネットワークで接続された売買仲介システムを利用して売買仲介を行うための方法であって、
出品者から受信した出品者情報を出品者情報記録手段に記録するステップと、
出品者IDを発行して前記出品者へ送信するステップと、
前記出品者から前記出品者IDと、身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証、住民票、印鑑登録証明書及び登録印鑑押印書面、本人限定受取郵便物、認定認証事業者が証明する電子署名を行ったメールの少なくとも1つからなる本人確認書類と、を受領するステップと、
前記出品者から受領した出品者ID及び本人確認書類の情報が前記出品者情報記録手段に記録された出品者情報と同一であるか否かを判断する第一の出品判断ステップと、
前記出品者から受領した出品者ID及び本人確認書類の情報が前記出品者情報記録手段に記録された出品者情報と同一であった場合に、不正取引履歴情報が記録された商品審査情報記録手段を参照して、該商品審査情報記録手段に記録された情報から前記出品者情報記録手段に記録された出品者の不正取引の可能性についてコンピュータで判定できるか否かを判断する第二の出品判断ステップと、
不正取引の可能性について判定できないと判断された場合に、コンピュータで判定不能として前記売買仲介管理システムの管理者に再審査依頼データを送信するステップと、
前記管理者から不正取引の可能性あり又は不正取引の可能性なしの再審査結果を受信するステップと、
受信した前記再審査結果が不正取引の可能性なしであるか否かを判断する第三の出品判断ステップと、
不正取引の可能性なしと判断された場合に、前記出品者情報記録手段に登録OKを記録するステップと、を含むことを特徴とする売買仲介システムを利用した売買仲介の方法。
【請求項3】
前記第二の出品判断ステップにおいて、前記商品審査情報記録手段に記録された情報から前記出品者情報記録手段に記録された出品者の不正取引の可能性についてコンピュータで判定できると判断された場合には、
前記商品審査情報記録手段を参照して前記出品者情報記録手段に記録された出品者に不正取引履歴があるか否かを判断するステップと、
不正取引履歴がないと判断された場合に、前記出品者情報記録手段に登録OKを記録するステップと、を含むことを特徴とする請求項2記載の売買仲介システムを利用した売買仲介の方法。
【請求項4】
出品者端末と、購入者端末と、売買仲介管理システムとが通信ネットワークで接続された売買仲介システムを利用して売買仲介を行うための方法であって、
出品者から受信した出品商品情報を出品商品情報記録手段に記録するステップと、
盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースからなる商品審査情報記録手段を参照して、該商品審査情報記録手段に記録された情報から前記出品商品情報記録手段に記録された商品の不正商品の可能性についてコンピュータで判定できるか否かを判断する第一の出品判断ステップと、
不正商品の可能性について判定できないと判断された場合に、コンピュータで判定不能として前記売買仲介管理システムの管理者に再審査依頼データを送信するステップと、
前記管理者から不正商品の可能性あり又は不正商品の可能性なしの再審査結果を受信するステップと、
受信した前記再審査結果が不正商品の可能性なしであるか否かを判断する第二の出品判断ステップと、
不正商品の可能性なしと判断された場合に、前記出品商品情報記録手段に承認OKを記録するステップと、を含むことを特徴とする売買仲介システムを利用した売買仲介の方法。
【請求項5】
前記第一の出品判断ステップにおいて、前記商品審査情報記録手段に記録された情報から前記出品商品情報記録手段に記録された商品の不正商品の可能性についてコンピュータで判定できると判断された場合には、
前記商品審査情報記録手段を参照して前記出品商品情報記録手段に記録された出品商品情報が、前記不正商品データベースに記録された不正商品情報に該当するか否か、前記商品価格データベースに記録された市場価格より著しく安いか否か、前記商品流通データベースに記録された流通量より著しく多いか否かによって不正商品に該当するか否かを判断するステップと、
不正商品に該当しないと判断された場合に、前記出品商品情報記録手段に承認OKを記録するステップと、を含むことを特徴とする請求項4記載の売買仲介システムを利用した売買仲介の方法。
【請求項6】
前記出品商品情報記録手段に承認OKを記録するステップを行った後に、前記出品商品情報記録手段に記録された商品のうち承認OKを記録された商品を選択して表示するステップをさらに備えることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の売買仲介システムを利用した売買仲介の方法。
【請求項7】
出品者端末と、購入者端末と、売買仲介管理システムとが通信ネットワークで接続された売買仲介システムを利用して売買仲介を行うための方法であって、
出品者から出品者情報を受信するステップと、
前記出品者から受信した出品者情報を出品者情報記録手段に記録するステップと、
出品者IDを発行して前記出品者へ送信するステップと、
前記出品者から前記出品者IDと、身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証、住民票、印鑑登録証明書及び登録印鑑押印書面、本人限定受取郵便物、認定認証事業者が証明する電子署名を行ったメールの少なくとも1つからなる本人確認書類と、を受領するステップと、
前記出品者から受領した出品者ID及び本人確認書類の情報が前記出品者情報記録手段に記録された出品者情報と同一であるか否かを判断する第一の出品判断ステップと、
前記出品者から受領した出品者ID及び本人確認書類の情報が前記出品者情報記録手段に記録された出品者情報と同一であった場合に、不正取引履歴情報が記録された商品審査情報記録手段を参照して、該商品審査情報記録手段に記録された情報から前記出品者情報記録手段に記録された出品者の不正取引の可能性についてコンピュータで判定できるか否かを判断する第二の出品判断ステップと、
不正取引の可能性について判定できないと判断された場合に、コンピュータで判定不能として前記売買仲介管理システムの管理者に再審査依頼データを送信するステップと、
前記管理者から不正取引の可能性あり又は不正取引の可能性なしの再審査結果を受信するステップと、
受信した前記再審査結果が不正取引の可能性なしであるか否かを判断する第三の出品判断ステップと、
不正取引の可能性なしと判断された場合に、前記出品者情報記録手段に登録OKを記録するステップと、
前記出品者から前記出品者ID及び出品商品情報を受信するステップと、
前記出品者から受信した出品商品情報を出品商品情報記録手段に記録するステップと、
前記出品者情報記録手段を参照して、前記出品者から受信した出品者IDに紐付けされた出品者情報に登録OKが記録されているか否かを判定するステップと、
登録OKが記録されている場合に、盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースからなる商品審査情報記録手段を参照して、該商品審査情報記録手段に記録された情報から前記出品商品情報記録手段に記録された商品の不正商品の可能性についてコンピュータで判定できるか否かを判断する第四の出品判断ステップと、
不正商品の可能性について判定できないと判断された場合に、コンピュータで判定不能として前記売買仲介管理システムの管理者に再審査依頼データを送信するステップと、
前記管理者から不正商品の可能性あり又は不正商品の可能性なしの再審査結果を受信するステップと、
受信した前記再審査結果が不正商品の可能性なしであるか否かを判断する第五の出品判断ステップと、
不正商品の可能性なしと判断された場合に、前記出品商品情報記録手段に承認OKを記録するステップと、
前記出品商品情報記録手段に記録された商品のうち承認OKを記録された商品を選択して表示するステップと、を含むことを特徴とする売買仲介システムを利用した売買仲介の方法。」

本件補正は、
補正前の請求項1、2、4?8、14を削除し、
補正前の請求項2を引用する請求項3において、不正商品データベースに記録される情報を「商品名」を含むものに限定し、出品判定手段による判定を「前記出品商品情報記録手段に記録された出品商品情報が、前記不正商品データベースに記録された不正商品情報に該当するか否か、前記商品価格データベースに記録された市場価格より著しく安いか否か、前記商品流通データベースに記録された流通量より著しく多いか否かにより」判定するものに限定し、再審査依頼手段が判定に用いる「商品審査情報記録手段に記録された情報」を、「前記盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースに記録された情報」に限定し、補正後の請求項1とするものである。
また、補正前の請求項9?13において、それぞれ発明特定事項を限定し補正後の請求項2?6とし、補正前の請求項14を引用する請求項15において、発明特定事項を限定し補正後の請求項7とするものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定される請求項の削除および第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるか、すなわち、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-74065号公報(平成14年3月12日出願公開。以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のオンラインオークションシステムは、だれもが自由に出品、または入札できるため、違法な出品物や公序良俗に反する出品物の売買を取り扱ってしまう可能性がある。
【0004】そこで本発明は、上記の課題を解決することのできるオンライン取引装置、オンライン取引方法、及び記録媒体を提供することを目的とする。」

イ.「【0026】図1は、オンライン取引システムの構成の概略を示す。本発明に係るオンライン取引装置20は、オンラインオークションに出品された商品の出品情報を審査し、審査結果に応じて適切に処理する装置である。オンライン取引装置20は、インターネット10を介して出品ユーザ端末30または入札ユーザ端末40に情報を送信または受信する。出品ユーザ端末30は、オンライン取引システムに商品を出品した出品ユーザが所有する端末装置を示す。入札ユーザ端末40は、オンライン取引システムに出品されている出品商品に入札した入札ユーザが所有する端末装置を示す。
【0027】図2は、オンライン取引装置20の機能構成を示すブロック図である。オンライン取引装置20は、受信部200と、出力部202と、選択部204と、入力部206と、検出部208と、指示解析部210と、メール作成部212と、送信部214と、物品データベース60と、条件データベース660とを備える。物品データベース60は、ユーザファイル620及び出品ファイル640を有する。
【0028】選択部204は、物品データベース60から出品された商品に関する出品情報を選択し、出力部202に送る。出力部202は受け取った出品情報を出力する。オンライン取引装置20のオペレータは、出力部202が出力した出品商品の画像データ、出品ユーザから予め受け取った出品商品の解説等の出品情報を閲覧し、出品商品を出品した出品ユーザに対する質問、出品ユーザが出品商品を説明した解説の修正、出品商品の削除等の指示を入力部206を用いて入力する。入力部206は、オペレータが打ち込んだ指示を指示解析部210に送る。指示解析部210は受け取った指示を解析する。
【0029】指示の種類は、「検索」、「質問」、「お願い」、「削除」、「修正画面へ」、「保留」、および「OK」を含む。・・・(中略)・・・「お願い」は、オペレータがその他のオペレータに出品情報の審査を依頼する内容を示す指示である。「削除」は、出品情報の取引を取りやめる内容を示す指示である。・・・(中略)・・・「OK」は、出品情報を変更することなく取引を続行させる内容を示す指示である。」

ウ.「【0033】図3は、出品ファイル640のデータフォーマットを示す。出品ファイル640は、出品情報の審査の進行状況を示す審査状態と、出品商品を出品したユーザを識別するユーザIDと、出品商品の種別を示すカテゴリーと、出品商品の画像情報と、出品商品についてユーザによる解説と、出品情報の審査結果と、出品商品に入札した入札者を識別する入札ユーザIDとを、出品商品を識別する出品ナンバーに対応付けて格納する。審査結果は、一次の審査結果及び二次の審査結果を有する。本実施形態では、一つの出品商品は異なるオペレータによって2回審査される。一次審査におけるオペレータが審査を困難と判断した場合に、習熟度の高いオペレータが二次審査を行う。こうすることによって、審査を効率よく行うことができる。」

エ.「【0036】図5は、オペレータが出品商品を審査するときに閲覧する出力部202に表示される審査画面の一例である。・・・(中略)・・・フィールド800に情報が表示される出品ユーザが出品した出品商品の情報及び審査に関してオペレータがコメントを記入するコメント記入欄がフィールド802及びフィールド808に表示されている。コメント記入欄には、審査結果の根拠等が記入される。・・・(中略)・・・フィールド810には、「検索」と、「質問」と、「お願い」と、「削除」と、「修正画面へ」と、「保留」と、「OK」の指示を示すラジオボタン、及び実行ボタン816が表示される。オペレータは、ラジオボタンの一つを選択し、実行ボタン816をクリックする。フィールド812には、出品情報の違法性の種類とそれぞれに対応したチェックボックスが表示されている。オペレータは、出品情報に該当する違法性の種類を選択する。」

オ.「【0051】
【発明の効果】上記説明から明らかなように、本発明によれば出品商品の審査を効率的に行うことができる。」

上記ア.?オ.及び、関連する図を参照すると、次のことがいえる。

A.上記イ.の「図1は、オンライン取引システムの構成の概略を示す。本発明に係るオンライン取引装置20は、オンラインオークションに出品された商品の出品情報を審査し、審査結果に応じて適切に処理する装置である。オンライン取引装置20は、インターネット10を介して出品ユーザ端末30または入札ユーザ端末40に情報を送信または受信する。」の記載によれば、
オンライン取引システムは、出品ユーザ端末と、入札ユーザ端末と、オンライン取引装置とがインターネットを介して接続されたものである。

B.上記イ.の「オンライン取引装置20は、受信部200と、出力部202と、選択部204と、入力部206と、検出部208と、指示解析部210と、メール作成部212と、送信部214と、物品データベース60と、条件データベース660とを備える。物品データベース60は、ユーザファイル620及び出品ファイル640を有する。」の記載、
上記ウ.の「出品ファイル640は、出品情報の審査の進行状況を示す審査状態と、出品商品を出品したユーザを識別するユーザIDと、出品商品の種別を示すカテゴリーと、出品商品の画像情報と、出品商品についてユーザによる解説と、出品情報の審査結果と、出品商品に入札した入札者を識別する入札ユーザIDとを、出品商品を識別する出品ナンバーに対応付けて格納する。審査結果は、一次の審査結果及び二次の審査結果を有する。本実施形態では、一つの出品商品は異なるオペレータによって2回審査される。一次審査におけるオペレータが審査を困難と判断した場合に、習熟度の高いオペレータが二次審査を行う。」の記載、
上記イ.の「出品ユーザから予め受け取った出品商品の解説等の出品情報」の記載によれば、
オンライン取引装置は、出品ユーザから予め受け取った出品情報と、出品商品の一次審査結果と、一次審査におけるオペレータが審査を困難と判断した場合に習熟度の高いオペレータが審査した出品商品の二次審査結果とを格納した出品ファイルを有する物品データベースを備えたものである。

C.上記イ.の「オンライン取引装置20は、受信部200と、出力部202と、・・・(中略)・・・を備える。」の記載、
上記イ.の「選択部204は、物品データベース60から出品された商品に関する出品情報を選択し、出力部202に送る。出力部202は受け取った出品情報を出力する。オンライン取引装置20のオペレータは、出力部202が出力した出品商品の画像データ、出品ユーザから予め受け取った出品商品の解説等の出品情報を閲覧し」の記載、
上記エ.の「図5は、オペレータが出品商品を審査するときに閲覧する出力部202に表示される審査画面の一例である。・・・(中略)・・・フィールド800に情報が表示される出品ユーザが出品した出品商品の情報及び審査に関してオペレータがコメントを記入するコメント記入欄がフィールド802及びフィールド808に表示されている。コメント記入欄には、審査結果の根拠等が記入される。・・・(中略)・・・フィールド810には、「検索」と、「質問」と、「お願い」と、「削除」と、「修正画面へ」と、「保留」と、「OK」の指示を示すラジオボタン、及び実行ボタン816が表示される。オペレータは、ラジオボタンの一つを選択し、実行ボタン816をクリックする。フィールド812には、出品情報の違法性の種類とそれぞれに対応したチェックボックスが表示されている。オペレータは、出品情報に該当する違法性の種類を選択する。」の記載、
上記イ.の「「お願い」は、オペレータがその他のオペレータに出品情報の審査を依頼する内容を示す指示である。「削除」は、出品情報の取引を取りやめる内容を示す指示である。・・・(中略)・・・「OK」は、出品情報を変更することなく取引を続行させる内容を示す指示である。」の記載によれば、
オンライン取引装置は、物品データベースの出品情報を表示するフィールドと、審査に関するコメントを記入する記入欄と、オペレータがその他のオペレータに出品情報の審査を依頼する内容を指示する「お願い」のラジオボタンと、出品情報の取引を取りやめる内容を指示する「削除」のラジオボタンと、出品情報を変更することなく取引を続行させる内容を指示する「OK」のラジオボタンと、出品情報の違法性の種類を選択するチェックボックスとを有する審査画面を表示する出力部を備えたものである。

D.上記イ.の「オンライン取引装置20は、・・・(中略)・・・入力部206と、・・・(中略)・・・を備える。」の記載、
上記イ.の「オンライン取引装置20のオペレータは、出力部202が出力した出品商品の画像データ、出品ユーザから予め受け取った出品商品の解説等の出品情報を閲覧し、出品商品を出品した出品ユーザに対する質問、出品ユーザが出品商品を説明した解説の修正、出品商品の削除等の指示を入力部206を用いて入力する。」の記載、
上記エ.の「コメント記入欄には、審査結果の根拠等が記入される。」の記載、
上記エ.の「フィールド810には、「検索」と、「質問」と、「お願い」と、「削除」と、「修正画面へ」と、「保留」と、「OK」の指示を示すラジオボタン、及び実行ボタン816が表示される。オペレータは、ラジオボタンの一つを選択し、実行ボタン816をクリックする。」の記載、
上記エ.の「オペレータは、出品情報に該当する違法性の種類を選択する。」の記載によれば、
オンライン取引装置は、オペレータの審査結果を入力する入力部を備えたものである。

上記A.ないしD.の記載事項によれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「出品ユーザ端末と、入札ユーザ端末と、オンライン取引装置とがインターネットを介して接続されたオンライン取引システムであって、
オンライン取引装置は、
出品ユーザから予め受け取った出品情報と、出品商品の一次審査結果と、一次審査におけるオペレータが審査を困難と判断した場合に習熟度の高いオペレータが審査した出品商品の二次審査結果とを格納した出品ファイルを有する物品データベースと、
物品データベースの出品情報を表示するフィールドと、審査に関するコメントを記入する記入欄と、オペレータがその他のオペレータに出品情報の審査を依頼する内容を指示する「お願い」のラジオボタンと、出品情報の取引を取りやめる内容を指示する「削除」のラジオボタンと、出品情報を変更することなく取引を続行させる内容を指示する「OK」のラジオボタンと、出品情報の違法性の種類を選択するチェックボックスと、を有する審査画面を表示する出力部と、
オペレータの審査結果を入力する入力部と、を備えることを特徴とするオンライン取引システム。」

(3)対比
次に、本件補正発明と引用発明とを対比する。

・引用発明の「出品ユーザ端末と、入札ユーザ端末と、オンライン取引装置とがインターネットを介して接続されたオンライン取引システム」は、本件補正発明の「出品者端末と、購入者端末と、売買仲介管理システムとが通信ネットワークで接続された売買仲介システム」に相当する。

・引用発明の物品データベースは、出品ユーザから予め受け取った出品情報を格納した出品ファイルを有するから、本件補正発明の「出品者から受領した出品商品情報を記録する出品商品情報記録手段」に相当する。

・引用発明は、物品データベースの出品情報と出品情報の違法性の種類を選択するチェックボックスとを表示する審査画面を表示し、審査結果を入力する手段を有するから、物品データベースに記録された商品が不正商品に該当するか否かを審査する出品審査手段を有するといえる。
一方、本件補正発明の「該商品審査情報記録手段に記録された情報を参照して、前記出品商品情報記録手段に記録された出品商品情報が、前記不正商品データベースに記録された不正商品情報に該当するか否か、前記商品価格データベースに記録された市場価格より著しく安いか否か、前記商品流通データベースに記録された流通量より著しく多いか否かにより、前記出品商品情報記録手段に記録された商品が不正商品に該当するか否かを判定する出品判定手段」は、上記判定によって出品商品を審査する手段といえる。
したがって、引用発明の上記手段と本件補正発明の上記出品判定手段は、ともに「前記出品商品情報記録手段に記録された商品が不正商品に該当するか否かを審査する出品審査手段」の点で共通する。

・引用発明の出力部は、オペレータがその他のオペレータに出品情報の審査を依頼する内容を指示する「お願い」のラジオボタンを表示するから、オンライン取引装置はオペレータすなわち管理者に再審査依頼をする手段を有するといえる。
したがって、引用発明の上記手段と本件補正発明の「前記盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースに記録された情報から商品の不正商品の可能性について判定できないと判断された場合に判定不能として管理者に再審査依頼データを送信する再審査依頼手段」は、ともに「管理者に再審査依頼をする再審査依頼手段」である点で共通する。

・引用発明の出品ファイルは、「出品ユーザから予め受け取った出品情報と、出品商品の一次審査結果と、一次審査におけるオペレータが審査を困難と判断した場合に習熟度の高いオペレータが審査した出品商品の二次審査結果とを格納」するから、オンライン取引装置はオペレータの二次審査結果すなわち管理者の再審査結果を入力する手段を有することは明らかである。
したがって、引用発明の上記手段と、本件補正発明の「前記管理者から再審査結果を受信する再審査判定受付手段」は、ともに「前記管理者から再審査結果を入力する再審査判定受付手段」の点で共通する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

<一致点>
「出品者端末と、購入者端末と、売買仲介管理システムとが通信ネットワークで接続された売買仲介システムであって、
前記売買仲介管理システムは、
出品者から受領した出品商品情報を記録する出品商品情報記録手段と、
前記出品商品情報記録手段に記録された商品が不正商品に該当するか否かを審査する出品審査手段と、を備え
出品審査手段は、管理者に再審査依頼をする再審査依頼手段と、前記管理者から再審査結果を入力する再審査判定受付手段と、を備えることを特徴とする売買仲介システム。」

そして、本件補正発明と引用発明は以下の点で相違する。

<相違点1>
本件補正発明は、「盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースからなる商品審査情報記録手段」を備えるのに対し、引用発明は商品審査情報記録手段を備えていない点。

<相違点2>
出品審査手段が、本件補正発明では「出品判定手段」であって、不正商品に該当するか否かを判定するものであるのに対し、引用発明は、出品情報の違法性の種類を選択するチェックボックスを有する審査画面を表示するもので、不正商品に該当するか否かの判定はオペレータにより行われる点で相違し、
また、本件補正発明は、不正商品に該当するか否かを「該商品審査情報記録手段に記録された情報を参照して、前記出品商品情報記録手段に記録された出品商品情報が、前記不正商品データベースに記録された不正商品情報に該当するか否か、前記商品価格データベースに記録された市場価格より著しく安いか否か、前記商品流通データベースに記録された流通量より著しく多いか否かにより」判定するのに対し、引用発明は上記判定をするものではない点。

<相違点3>
再審査依頼手段が、本件補正発明では、「前記盗品に関する情報、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報が記録された不正商品データベース、商品の市場価格に関する情報が記録された商品価格データベース、商品の一般的な流通量に関する情報が記録された商品流通データベースに記録された情報から商品の不正商品の可能性について判定できないと判断された場合に判定不能として管理者に再審査依頼データを送信する」ものであるのに対し、引用発明では、「オペレータがその他のオペレータに出品情報の審査を依頼する内容を指示する「お願い」のラジオボタン」を表示するものである点。

<相違点4>
再審査判定受付手段が、本件補正発明では、再審査結果を「受信」するものであるのに対し、引用発明は再審査結果を「入力」するものである点。

(4)判断
<相違点1>について
引用発明が解決しようとする課題は、オンラインオークションシステムにおいて、違法な出品物が売買されることを防止するために、出品商品の審査を効率的に行うことにあるが(上記ア.及びオ.参照)、売買される違法な商品として盗品や偽物は周知である。
また、盗品や偽物を判別するために、盗品に関する情報や、不正商品に関する情報、商品名、品番、シリアル番号に関する情報を参照して、品物が不正商品情報に該当するか否かを判定することも周知である。
また、盗品や偽物が市場価格より著しく安い価格で販売されることも周知であり、市場価格に関する情報に基づいて市場価格より著しく安い価格で販売される商品を不正商品であると判定することも普通のことである(原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-7755号公報、段落【0008】の記載参照)。
また、一般的な流通量に関する情報によれば流通量が少ない商品、例えば、「レア物」として知られている商品であるにもかかわらず著しく多く販売されていた場合に、その商品を偽物と判定することは普通に想到されることである。
また、情報をデータベースに記憶することも普通のことである。
してみると、引用発明における出品商品の審査において、商品が不正商品情報に該当するか否か、市場価格より著しく安いか否か、一般的な流通量より著しく多いか否かを判定し、その判定に用いる上記各種情報をデータベースに記憶して、引用発明が上記相違点1に係る商品審査情報記録手段を備えることは、容易に想到し得ることである。

<相違点2>について
人が行っていた作業を装置に行わせて自動化や省力化をはかることは周知である。
してみると、引用発明において、オペレータが行っていた審査をオンライン取引装置に行わせて、違法な商品であるか否かの判定を自動化し、
その際、前述したように、商品が不正商品情報に該当するか否か、市場価格より著しく安いか否か、一般的な流通量より著しく多いか否かを判定し、その判定にデータベースに記憶した上記各種情報を参照することにより、
引用発明のオンライン取引装置すなわち売買仲介管理システムが、上記相違点2に係る出品判定手段を備えることは容易に想到し得ることである。

<相違点3>について
引用例には、「本実施形態では、一つの出品商品は異なるオペレータによって2回審査される。一次審査におけるオペレータが審査を困難と判断した場合に、習熟度の高いオペレータが二次審査を行う。」(上記イ.参照)と記載されているから、出品商品を審査した結果として、違法な商品であるか否かが判定できず習熟度の高いオペレータに依頼しなければならないような結果もあることは普通に想到されることである。
してみると、引用発明において審査を自動化する際に、二次審査を習熟度の高いオペレータに依頼することとし、自動化された一次審査では違法な商品であるか否かが判定できない場合に、二次審査を依頼するデータをオペレータに送信して、引用発明が上記相違点3に係る構成を備えることは容易に想到し得ることである。

<相違点4>について
装置に情報を入力する際に、端末装置等の他の装置から情報を受信して入力することは周知である。
してみると、引用発明において、再審査結果を「入力」するのに代えて「受信」し、上記相違点4に係る構成とすることは容易に想到し得ることである。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成19年9月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年5月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「 出品者端末と、購入者端末と、売買仲介管理システムとが通信ネットワークで接続された売買仲介システムであって、
前記売買仲介管理システムは、
出品者から受信した出品者情報を記録する出品者情報記録手段と、
前記出品者情報記録手段に記録された出品者情報を審査するための情報が記録された商品審査情報記録手段と、
出品者から受領する本人確認の情報と前記出品者情報記録手段に記録された出品者情報が同一であるか否かを判断し、さらに前記商品審査情報記録手段に記録された情報を参照して、前記出品者情報記録手段に記録された出品者が不正取引者に該当するか否かを判定する出品判定手段と、を備え、
前記出品判定手段は、
前記商品審査情報記録手段に記録された情報から前記出品者情報記録手段に記録された出品者の不正取引の可能性について判定できないと判断された場合に判定不能として管理者に再審査依頼データを送信する再審査依頼手段と、前記管理者から再審査結果を受信する再審査判定受付手段と、を備えることを特徴とする売買仲介システム。」

第4 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記第2(2)に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から前記第2(1)で検討した限定事項を省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定したものに相当する本件補正発明が前記第2(3)、第2(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-07 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2010-06-01 
出願番号 特願2004-505938(P2004-505938)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 美樹  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 山本 章裕
松田 直也
発明の名称 売買仲介システム及び売買仲介の方法  
代理人 秋山 敦  

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