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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1220576 |
審判番号 | 不服2007-21570 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-02 |
確定日 | 2010-07-22 |
事件の表示 | 特願2004-358942「ディスクドライブ装置及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-172516〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年12月10日の出願であって、平成19年6月11日付けで手続補正がなされ、平成19年6月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年8月2日付けで審判請求がなされた後、平成19年8月27日付けで手続補正がなされ、平成22年2月22日付けで審尋がなされ、平成22年4月20日付けで審尋に対する回答書が提出されたものである。 2.平成19年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年8月27日付けの手続補正を却下する。 [理 由] (1)補正後の本願発明 平成19年8月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 ディスク状記録媒体が着脱可能に装着されるターンテーブルを回転駆動するテーブル回転手段と、 前記テーブル回転手段が取り付けられるシャーシと、 前記テーブル回転手段により回転駆動される前記ディスク状記録媒体に対して情報信号の記録及び/又は再生を行うピックアップ装置と、 前記ピックアップ装置を前記ディスク状記録媒体の半径方向にガイドする2つのガイド軸を有すると共に当該2つのガイド軸に沿って当該ピックアップ装置を移動させるピックアップ移動手段と、を備えたディスクドライブ装置において、 前記2つのガイド軸のうち少なくとも一方のガイド軸は断面形状が円形をなしており、当該一方のガイド軸を前記シャーシ又はシャーシ側部材に支持する支持手段を設け、 前記支持手段は、前記一方のガイド軸の軸方向の少なくとも一端において当該一方のガイド軸をその軸方向と交差する方向に付勢するコイルばね又は竹の子ばねと、前記コイルばね又は竹の子ばねに対向するよう配置されて前記シャーシ又はシャーシ側部材に螺合されると共に当該コイルばね又は竹の子ばねにより付勢された前記一方のガイド軸の移動を阻止するように当該一方のガイド軸の外周面に接触するテーパ部を設けた調整ねじとを有し、 前記調整ねじは、外周面にねじが設けられた軸部の軸方向の一端に当該軸部よりも直径の大きな頭部を有するねじ又はボルトと、前記軸部に嵌合されると共に外周面に逆円錐形のテーパ部を有するリングとからなり、 前記コイルばね又は竹の子ばねは、そのばね中心線を前記一方のガイド軸の軸心線と直交する方向に延在させ、 前記コイルばね又は竹の子ばねの付勢力により、前記一方のガイド軸を前記リングのテーパ部に付勢して当該一方のガイド軸を前記シャーシ又はシャーシ側部材に押し付けるように支持した ことを特徴とするディスクドライブ装置。」 と補正された。 上記補正は、 ア.請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「2つのガイド部材」について、「軸」状のものであるとの限定を付加するとともに、少なくとも一方のガイド部材は「断面形状が円形」であるとの限定を付加するものであり、 イ.同じく請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「支持手段」について、弾性部材が「コイルばね又は竹の子ばね」であるとの概念的に下位にする限定を付加し、さらに「前記コイルばね又は竹の子ばねは、そのばね中心線を前記一方のガイド軸の軸心線と直交する方向に延在させ、前記コイルばね又は竹の子ばねの付勢力により、前記一方のガイド軸を前記リングのテーパ部に付勢して当該一方のガイド軸を前記シャーシ又はシャーシ側部材に押し付けるように支持した」との限定を付加するものである。 よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-346351号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【請求項1】 光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動可能に支持する一対の案内軸を備える光ディスク装置において、 光ピックアップの光焦点の移動方向と光ディスク中心との間に生ずる法線ずれを調整するための一対の位置調整部であって、前記案内軸の一方の両端近傍を、ディスク面と平行方向に夫々位置調整する一対の位置調整部を備え、該位置調整部の夫々は、弾性部材と、該弾性部材に対して前記案内軸を押し付けるねじとからなり、該ねじは、該ねじの中心と前記案内軸に接する接触面との間の距離がねじの回転によって変化することを特徴とする光ディスク装置。」 イ.「【請求項4】 前記ねじは、前記接触面を構成するねじ頭がテーパー形状を有する、請求項1又は2に記載の光ディスク装置。」 ウ.「【0003】ディスク排出トレイ13は、光ディスク14を光ディスク装置内部に搬入する。光ディスク装置の内部に搬入された光ディスク14は、ディスク支持部材12とディスク回転モータ2に取り付けられたターンテーブルとの間に挟み込まれ、磁力などによって固定される。ディスク回転モータ2は、ターンテーブルを介して光ディスク14を回転する。光ピックアップ1は、光ディスク14の半径方向に移動しながら、光ディスク14の記録面に対して読み書きを行う。」 エ.「【0013】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照し、本発明の実施形態例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態例の光ディスク装置を、光ピックアップの表側(レンズ側)から見た平面図として示している。図2は、図1の光ディスク装置を裏側から見た平面図として示している。光ディスク装置の光ピックアップ機構は、ディスク回転モータ2と共にメカシャーシ7に搭載され、光ピックアップ1、位置調整用ネジ3、押えバネ4、固定バネ5、スキュー調整ネジ9、主軸10、及び、副軸11を備える。なお、以下、光ピックアップの移動方向と平行な方向をz方向と呼び、z方向に垂直で光ディスク14の記録面と平行な方向をx方向と呼び、光ディスク14の記録面に垂直な方向をy方向と呼ぶ。 【0014】光ピックアップ1は、レーザ光を光ディスク14に照射する対物レンズを備え、主軸10及び副軸11に沿ってz方向に移動する。主軸10の一端(スキュー調整側)には、主軸10の端部の一方をy方向に移動するためのスキュー調整ネジ9が配置される。主軸10の他端(スキュー基準側)は、主軸10のスキュー調整側のy方向の変位に対応して微動が可能な状態でメカシャーシ7に保持される。また、主軸10の両端は、更に、主軸をx方向に移動するための位置調整用ネジ3と固定バネ5とによってメカシャーシ7に保持される。」 オ.「【0017】図4は、図3中のAの部分を拡大して示している。主軸10は、その両端において、x方向で、位置調整用ネジ3と固定バネ5とに挟み込まれて保持される。位置調整用ネジ3には、その頭部が楕円筒形状であるネジが使用される。位置調整用ネジ3を回転すると、その回転角によって、図4中に示す、位置調整用ネジ3の回転の中心位置から、主軸10が位置調整用ネジ3に接する位置までの間の距離(距離a)を変化させることができる。 【0018】位置調整用ネジ3の回転角を適切に調整することで、主軸10のx方向の変位を調整でき、ディスク回転モータ2の中心位置と光ピックアップの対物レンズの中心位置の移動方向とが重ならない法線ずれを調整することができる。位置調整用ネジ3は、その回転角が適切に調整された後に、ネジロック等の接着剤6によって固定される。 【0019】本実施形態例では、ディスク回転モータ2と光ピックアップとをメカシャーシに搭載した状態で、主軸10のx方向の微調整が可能となる。また、x方向の調整は、位置調整用ネジ3と固定バネ5で行うため、調整のための構成が簡易である。このため、コストを増大することなく、メカシャーシ7の組み立て後に、光ピックアップの法線ずれの調整を行うことができる。 【0020】なお、上記実施形態例では、位置調整用ネジ3として、楕円筒形状の頭部を持つネジを使用したが、位置調整用ネジ3には、回転することで回転中心から主軸と接する面までの距離が変化する、楕円筒形状以外のネジも使用することができる。例えば、位置調整用ネジ3として、図4中の別例として示す、ネジ頭部の最上部の半径がネジ頭部の最下部に向けて小さくなるテーパー形状の頭部を持つネジを使用することもできる。この場合、主軸がy方向の同じ位置に保持されているときには、テーパー形状のネジを緩める方向に回転することで図4に示す距離aを短くすることができ、締める方向に回転することで距離aを長くすることができる。」 カ.少なくとも主軸は、その断面形状が円形である。(図4) キ.テーパー形状の頭部を持つ位置調整用ネジは、外周面にネジが設けられメカシャーシに螺合される軸部と、軸方向の一端に当該軸部よりも直径が大きいテーパー形状の頭部を有する。(図3、図4) ク.固定バネは、板状のものである。(図3、図4) 上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「光ディスク装置の内部に搬入された光ディスクをディスク支持部材との間に挟み込み、磁力などによって固定するターンテーブルを回転駆動するディスク回転モータと、 前記ディスク回転モータが搭載されるメカシャーシと、 前記ディスク回転モータにより回転駆動される光ディスクの記録面に対して読み書きを行う光ピックアップと、 前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向(z方向)の移動を案内する主軸及び副軸からなる2つの案内軸を有する光ディスク装置において、 前記2つの案内軸のうち少なくとも一方の案内軸である主軸は断面形状が円形をなしており、当該主軸を前記メカシャーシに保持する手段を設け、 前記一方の案内軸である主軸をメカシャーシに保持する手段は、前記主軸の両端において当該主軸を挟み込んで保持すると共に、当該主軸をその軸方向に垂直で記録面に平行な方向(x方向)に移動させる板状の固定バネと位置調整用ネジとを有し、 前記位置調整用ネジは、外周面にネジが設けられ前記メカシャーシに螺合される軸部と、軸方向の一端に当該軸部よりも直径が大きく、最上部の半径が最下部に向けて小さくなるなテーパー形状の頭部を持つネジからなり、 前記位置調整用ネジを回転させることで、当該位置調整用ネジの中心と前記主軸に接する接触面との間の距離を変化させるようにした 光ディスク装置。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、 引用発明における「光ディスク」は、本願補正発明における「ディスク状記録媒体」に相当し、引用発明における「光ディスク装置の内部に搬入された光ディスクをディスク支持部材との間に挟み込み、磁力などによって固定するターンテーブル」は、光ディスクがターンテーブルに対して着脱可能に装着されるものであることを意味するから、本願補正発明における「ディスク状記録媒体が着脱可能に装着されるターンテーブル」に相当し、引用発明における「ディスク回転モータ」、「メカシャーシ」、「光ピックアップ」は、それぞれ本願補正発明における「テーブル回転手段」、「シャーシ」、「ピックアップ装置」に相当する。 引用発明における「前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向(z方向)の移動を案内する主軸及び副軸からなる2つの案内軸」、「前記2つの案内軸のうち少なくとも一方の案内軸である主軸」は、それぞれ本願補正発明における「2つのガイド軸」、「2つのガイド軸のうち少なくとも一方のガイド軸」に相当し、引用発明においても、光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動させるための移動手段を備えることは当然のことである。 また、引用発明における「当該一方の案内軸である主軸を前記メカシャーシに保持する手段」、「位置調整用ネジ」は、それぞれ本願補正発明における「当該一方のガイド軸を前記シャーシ又はシャーシ側部材に支持する支持手段」、「調整ねじ」に対応し、 引用発明における「前記一方の案内軸である主軸をメカシャーシに保持する手段は、前記一方の案内軸である主軸の両端において当該一方の案内軸である主軸を挟み込んで保持すると共に、当該主軸をその軸方向に垂直で記録面に平行な方向(x方向)に移動させる板状の固定バネと位置調整用ネジとを有し、前記位置調整用ネジは、外周面にネジが設けられ前記メカシャーシに螺合される軸部と、軸方向の一端に当該軸部よりも直径が大きく、最上部の半径が最下部に向けて小さくなるなテーパー形状の頭部を持つネジからなり、前記位置調整用ネジを回転させることで、当該位置調整用ネジの中心と前記主軸に接する接触面との間の距離を変化させるようにした」によれば、「固定バネ」は、主軸をその軸方向と交差する方向であって位置調整用ネジのテーパー形状の頭部に付勢する部材であり、その「位置調整用ネジ」は、固定バネにより付勢された主軸の移動を阻止するように当該主軸の外周面に接触する逆円錐形のテーパー形状の頭部を有するものであるといえるから、 「前記一方のガイド軸の軸方向の少なくとも一端において当該一方のガイド軸をその軸方向と交差する方向に付勢する付勢部材と、前記付勢部材に対向するよう配置されて前記シャーシに螺合されると共に当該付勢部材により付勢された前記一方のガイド軸の移動を阻止するように当該一方のガイド軸の外周面に接触するテーパ部を設けた調整ねじとを有し、前記調整ねじは、外周面にねじが設けられた軸部の軸方向の一端に当該軸部よりも直径の大きな頭部を有するねじと、外周面が逆円錐形のテーパ部とからなり、前記付勢部材の付勢力により、前記一方のガイド軸を前記テーパ部に付勢して当該一方のガイド軸を前記シャーシに支持した」ものである点で本願補正発明と相違がない。 そして、引用発明における「光ディスク装置」は、本願補正発明における「ディスクドライブ装置」に相当するといえるから、 本願補正発明と引用発明とは、 「ディスク状記録媒体が着脱可能に装着されるターンテーブルを回転駆動するテーブル回転手段と、 前記テーブル回転手段が取り付けられるシャーシと、 前記テーブル回転手段により回転駆動される前記ディスク状記録媒体に対して情報信号の記録及び/又は再生を行うピックアップ装置と、 前記ピックアップ装置を前記ディスク状記録媒体の半径方向にガイドする2つのガイド軸を有すると共に当該2つのガイド軸に沿って当該ピックアップ装置を移動させるピックアップ移動手段と、を備えたディスクドライブ装置において、 前記2つのガイド軸のうち少なくとも一方のガイド軸は断面形状が円形をなしており、当該一方のガイド軸を前記シャーシ又はシャーシ側部材に支持する支持手段を設け、 前記支持手段は、前記一方のガイド軸の軸方向の少なくとも一端において当該一方のガイド軸をその軸方向と交差する方向に付勢する付勢部材と、前記付勢部材に対向するよう配置されて前記シャーシに螺合されると共に当該付勢部材により付勢された前記一方のガイド軸の移動を阻止するように当該一方のガイド軸の外周面に接触するテーパ部を設けた調整ねじとを有し、 前記調整ねじは、外周面にねじが設けられた軸部の軸方向の一端に当該軸部よりも直径の大きな頭部を有するねじと、外周面が逆円錐形のテーパ部とからなり、 前記付勢部材の付勢力により、前記一方のガイド軸を前記テーパ部に付勢して当該一方のガイド軸を前記シャーシに支持した ことを特徴とするディスクドライブ装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 一方のガイド軸をその軸方向と交差する方向に付勢する付勢部材について、本願補正発明はコイルばね又は竹の子ばねと特定し、そのばね中心線を一方のガイド軸の軸心線と直交する方向に延在させたのに対し、引用発明は板状のものである点。 [相違点2] 調整ねじにおける外周面が逆円錐形のテーパ部について、本願補正発明は軸部に嵌合されるリングに設けられるのに対し、引用発明はねじの頭部自体に設けられている点。 [相違点3] 本願補正発明は付勢部材の付勢力により一方のガイド軸をテーパ部に付勢して当該一方のガイド軸をシャーシに対して「押し付ける」ように支持したのに対し、引用発明はそのような特定がない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 一般に、付勢部材としては板状のもの(すなわち、板ばね)以外にコイル状のものなどごく普通に用いられる形状のものであるところ、ガイド軸をその軸方向と交差する方向に付勢する付勢部材としてコイルばねを用い、そのばね中心線をガイド軸の軸心線と直交する方向に延在させて配置する構成も例えば特開2002-163828号公報(圧縮バネ24を参照)、特開2004-5884号公報(圧縮コイルばねからなる予圧ばね46を参照)に見られるように周知であり、引用発明においても付勢部材として板状のものに代えてコイルばねを採用し、そのばね中心線をガイド軸の軸心線と直交する方向に延在させて配置するようにすることは当業者が容易になし得ることである。 [相違点2]について 外周面が逆円錐形のテーパ部を有する調整ねじの上下方向の変位でもって、テーパ部のテーパ面に接触する部材を左右方向に変位調整する技術において、調整ねじとして、テーパ部をねじ本体とは別部材のリング状のものとし、ねじの軸部に嵌合する構造のものは例えば特開平11-188143号公報(図6に示されるテーパ付ワッシャ67を参照)、特開平8-109909号公報(テーパ座2を参照)に見られるように周知のものであり、引用発明においてもテーパ部をねじの頭部自体に設けることに代えて、ねじ本体とは別部材のリング状のものに設け、ねじの軸部に嵌合するようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。 [相違点3]について 引用発明においても、スキュー調整ネジが配置されていない主軸の一端側(スキュー基準側)にあっては、光ディスクの記録面に垂直な方向(y方向)の基準位置として定められるようにメカシャーシに常に接するように支持するのが技術的にみて妥当なことといえ(この点に関して、例えば上記特開2004-5884号公報も参照されたい)、かかる一端側(スキュー基準側)について、付勢部材の付勢力により主軸をテーパ部に付勢して当該主軸をメカシャーシに対して「押し付ける」ように支持するようにすることは当業者にとってごく普通になし得ることである。 なお付言しておくと、引用発明においては押えバネを設け、当該押えバネによっても主軸をメカシャーシ側に押し付けているといえるが、スキュー調整ネジによるスキュー調整機構を設けない場合や、テーパ部のテーパ角の設定などによってはこのような押えバネを省略し得ることも当業者であれば容易に想到し得ることである。 そして、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 (5)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成19年8月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年6月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 ディスク状記録媒体が着脱可能に装着されるターンテーブルを回転駆動するテーブル回転手段と、 前記テーブル回転手段が取り付けられるシャーシと、 前記テーブル回転手段により回転駆動される前記ディスク状記録媒体に対して情報信号の記録及び/又は再生を行うピックアップ装置と、 前記ピックアップ装置を前記ディスク状記録媒体の半径方向にガイドする2つのガイド部材を有すると共に当該2つのガイド部材に沿ってピックアップ装置を移動させるピックアップ移動手段と、を備えたディスクドライブ装置において、 前記2つのガイド部材の少なくとも一方のガイド部材を前記シャーシ又はシャーシ側部材に支持する支持手段を設け、 前記支持手段は、前記一方のガイド部材の長手方向の少なくとも一端において当該一方のガイド部材をその軸方向と交差する方向に付勢する弾性部材と、前記弾性部材に対向するよう配置されて前記シャーシ又はシャーシ側部材に螺合されると共に当該弾性部材により付勢された前記一方のガイド部材の移動を阻止するように当該一方のガイド部材の外周面に接触するテーパ部を設けた調整ねじと、を有し、 前記調整ねじは、外周面にねじが設けられた軸部の軸方向の一端に当該軸部よりも直径の大きな頭部を有するねじ又はボルトと、前記軸部に嵌合されると共に外周面に逆円錐形のテーパ部を有するリングと、からなる ことを特徴とするディスクドライブ装置。」(以下、「本願発明」という。) (1)引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の発明特定事項である「2つのガイド部材」について、「軸」状のものであり、少なくとも一方のガイド部材は「断面形状が円形」であるとの限定を省き、同じく発明特定事項である「支持手段」について、弾性部材が「コイルばね又は竹の子ばね」であるとの概念的に下位にする限定、及び「前記コイルばね又は竹の子ばねは、そのばね中心線を前記一方のガイド軸の軸心線と直交する方向に延在させ、前記コイルばね又は竹の子ばねの付勢力により、前記一方のガイド軸を前記リングのテーパ部に付勢して当該一方のガイド軸を前記シャーシ又はシャーシ側部材に押し付けるように支持した」との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-21 |
結審通知日 | 2010-05-25 |
審決日 | 2010-06-08 |
出願番号 | 特願2004-358942(P2004-358942) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山澤 宏、石井 則之 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 井上 信一 |
発明の名称 | ディスクドライブ装置及び電子機器 |
代理人 | 伊藤 仁恭 |
代理人 | 角田 芳末 |