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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1220644
審判番号 不服2008-13259  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-26 
確定日 2010-07-14 
事件の表示 平成11年特許願第552674号「磁気共鳴により対象を画像化する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月28日国際公開、WO99/54750、平成14年 2月19日国内公表、特表2002-505612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年4月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成10年4月17日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成19年4月11日付け拒絶理由通知に対し、同年10月4日付けで手続補正されたが、平成20年2月15日付けで拒絶査定され、これに対し、同年5月26日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年6月25日付けで手続補正されたものである。

第2 平成20年6月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年6月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正により特許請求の範囲請求項3は、次のとおり補正された。

「【請求項3】定常磁界を維持する手段と、
RFパルスを発生する手段と、
定常磁界に傾斜を発生する手段と、
RFパルスを発生する手段と傾斜を発生する手段のために制御信号を発生する制御ユニットと、
MR信号を測定する手段と、
MR装置内に配置された身体の一部分の互いに平行に延在する第一の画像化平面、第二の画像化平面及び第四の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段と、
第一、第二及び第四のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段と、
第三の画像化平面の第三のMR画像を再構成する手段とからなり、
該部分の第一の断面が第一のMR画像に再現され、第二の断面が第二のMR画像に再現され、第四の断面が第四のMR画像に再現される、人間又は動物の身体の一部分を画像化する磁気共鳴画像化装置であって、
第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の3つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点、及び第四のMR画像の該部分の第四の断面の第三の点により決定されるように配置されることを特徴とする磁気共鳴画像化装置。」(下線部は、当審によるもの。)
すると、本件補正は、
本件補正前の請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項に関し、
(1)「MR装置内に配置された身体の一部分の第一の画像化平面及び第二の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段」を、
「MR装置内に配置された身体の一部分の互いに平行に延在する第一の画像化平面、第二の画像化平面及び第四の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段」と限定し、
(2)「第一及び第二のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段」を、
「第一、第二及び第四のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段」と限定し、
(3)「第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の2つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点とにより決定されるように配置される」を、
「第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の3つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点、及び第四のMR画像の該部分の第四の断面の第三の点により決定されるように配置される」と限定し、
(4)「磁気共鳴画像化装置」を、「第四の断面が第四のMR画像に再現される」ように限定したものを含むものである。

したがって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」とする。)の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)否かを、請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶理由通知で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平6-203158号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)「【特許請求の範囲】【請求項1】連続したスライスからなる複数のアキシャル画像を基に3軸を持つ略楕円体の対象物の体積等を算出する医用解析装置において、少なくとも2枚のアキシャル画像を表示しその画像上で対象物の第1軸をユーザに指定させる第1軸指定手段と、前記指定された第1軸の中央で且つ第1軸に垂直なスライスの画像である第1軸センターアキシャル画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第1軸センターアキシャル画像構成手段と、前記第1軸センターアキシャル画像を表示しその画像上で対象物の第2軸および第3軸をユーザに指定させる第2軸/第3軸指定手段と、前記第1軸および第2軸を含むスライスの画像である第2軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第2軸縦断面画像構成手段と、前記第2軸縦断面画像を表示しその画像上で対象物の輪郭をユーザにトレースさせる第2軸縦断面輪郭トレース手段と、前記第1軸および第3軸を含むスライスの画像である第3軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第3軸縦断面画像構成手段と、前記第3軸縦断面画像を表示しその画像上で対象物の輪郭をユーザにトレースさせる第3軸縦断面輪郭トレース手段と、前記複数のアキシャル画像から第1軸に垂直な複数のスライスの画像である第1軸アキシャル画像を構成する第1軸アキシャル画像構成手段と、前記第2軸縦断面輪郭および前記第3軸縦断面輪郭に基づいて前記第1軸アキシャル画像上での対象物の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、前記第1軸アキシャル画像の各々における前記輪郭が囲む面積を算出する面積算出手段と、前記面積を基に対象物の体積等を算出する解析計算手段とを具備したことを特徴とする医用解析装置。」

(1-イ)「【0002】【従来の技術】図16の(a)は人の体を前側から見たときの心臓Hの傾きを示し、(b)は人の体を右手側から見たときの心臓Hの傾きを示す。Zは体軸、Xは右手から左手への方向、Yは後から前への方向である。また、Aは、3軸を持つ楕円体で心臓Hを模式化した場合における体軸Zに最も平行な軸(以下、これを縦長軸という)である。図16の(c)は、MRI装置によって得られるアキシャル画像S1?S6の各スライスの位置を示す。図17は、MRI装置によって得られるアキシャル画像S1?S6の模式図である。各アキシャル画像S1?S6における斜線部は心臓Hのイメージを表している。」

(1-ウ)「【0007】【実施例】以下、図に示す実施例に基づいてこの発明をさらに詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図1は、この発明の一実施例の医用解析装置10のブロック図である。この医用解析装置10において、画像メモリ1は、連続したスライスからなる複数のアキシャル画像を記憶している。それらアキシャル画像は、例えばX線撮影装置Sで得られたものである。演算処理部2は、前記画像メモリ1からアキシャル画像を読み出して、フレームバッファ3に書き込む。また、後述するように、複数のアキシャル画像を基にして縦長軸アキシャル画像や横長軸縦断面画像や横短軸縦断面画像を再構成し、フレームバッファ3に書き込む。CRT4は、前記フレームバッファ3に書き込まれた画像を表示する。インタフェース5は、キーボード6やトラックボール7をユーザが操作して入力したコマンドやデータを取り込んで、前記演算処理部2に渡す。
【0008】図2は、上記医用解析装置10で、複数のアキシャル画像を基に心臓の容積を算出する処理のフロー図である。ステップP1では、心臓を含む連続したスライスの複数のアキシャル画像中からユーザに少なくとも2枚を選択させ(心臓の頂部近傍と底部近傍の2枚を含むようにアキシャル画像を選択する)、それらを表示し、それらのアキシャル画像上で心臓の縦長軸Aとのクロス点をユーザに指定させる。例えば、図3に示すように、ユーザがアキシャル画像S1を選択すると、そのアキシャル画像S1を表示して、ユーザに心臓の縦長軸Aとのクロス点Uを指定させる。また、図4に示すように、ユーザがアキシャル画像S6を選択すると、そのアキシャル画像S6を表示して、ユーザに心臓の縦長軸Aとのクロス点Dを指定させる。。なお、このステップP1が、第1軸指定手段に相当する。
【0009】ステップP2では、図5に示すように、上記ステップP1でユーザに指定されたクロス点U,Dを結ぶ直線を縦長軸Aとして算出する(クロス点が3点以上のときは、最小自乗法により直線を算出する)。次に、拡張期の心臓のアキシャル画像を基にして、心臓の頂部近傍のアキシャル画像上のクロス点Uと底部近傍のアキシャル画像上のクロス点Dの中点(センター位置)であって且つ縦長軸Aに垂直なスライスの断層像(縦長軸センターアキシャル画像)RCを再構成する。図6に、この縦長軸センターアキシャル画像RCを例示する。WCは心臓部分であり、Cは縦長軸Aとのクロス点である。なお、このステップP2が、第1軸センターアキシャル画像構成手段に相当する。
【0010】ステップP3では、図7に示すように、縦長軸センターアキシャル画像RCを表示し、それに重ねて十字線を持つROI30を表示する。そして、ROI30をユーザに移動・回転させて、3軸を持つ楕円体で心臓Hを模式化した場合における縦長軸Aに垂直で最も長い軸(以下、横長軸という)YLと,縦長軸Aおよび横長軸YLの両方に垂直な軸(以下、横短軸という)YSをユーザに指定させる。なお、このステップP3が、第2軸/第3軸指定手段に相当する。
【0011】ステップP4では、縦長軸Aおよび横長軸YLを含むスライスの画像である横長軸縦断面画像TLDを前記複数のアキシャル画像から再構成する。図8に、この横長軸縦断面画像TLDを例示する。なお、このステップP3が、第2軸縦断面画像構成手段に相当する。ステップP5では、図9に示すように、横長軸縦断面画像TLDを表示し、心臓の輪郭Tをユーザにトレースさせる。なお、このステップP5が、第2軸縦断面輪郭トレース手段に相当する。
【0012】ステップP6では、縦長軸Aおよび横短軸YSを含むスライスの画像である横短軸縦断面画像TSDを前記複数のアキシャル画像から再構成する。図10に、この横短軸縦断面画像TSDを例示する。なお、このステップP6が、第3軸縦断面画像構成手段に相当する。ステップP7では、図11に示すように、横短軸縦断面画像TSDを表示し、心臓の輪郭Tをユーザにトレースさせる。なお、このステップP7が、第3軸縦断面輪郭トレース手段に相当する。」

これらの記載事項によると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「X線撮影装置Sで得られた連続したスライスからなる2枚のアキシャル画像(S1,S6)を選択し、アキシャル画像S1上の点Uを指定し、アキシャル画像S6上の点Dを指定する第1軸指定手段と、
前記指定された第1軸の中央で且つ第1軸に垂直なスライスの画像である第1軸センターアキシャル画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第1軸センターアキシャル画像構成手段と、前記第1軸センターアキシャル画像を表示しその画像上で対象物の第2軸をユーザに指定させる第2軸指定手段と、
前記第1軸および第2軸を含むスライスの画像である第2軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第2軸縦断面画像構成手段
とを具備した人の体のアキシャル画像を形成する医用解析装置。」

3.対比・判断
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明の「X線撮影装置Sで得られた連続したスライスからなる2枚のアキシャル画像(S1,S6)」は、技術常識からみて、X線撮影装置で測定された信号をもとに身体の一部分の互いに平行する平面を画像化したものであり、画像化に必要な平面から測定された信号をもとに画像化を行っているといえることから、
本願補正発明の「MR装置内に配置された身体の一部分の互いに平行に延在する第一の画像化平面、第二の画像化平面及び第四の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段」、及び、
「該部分の第一の断面が第一のMR画像に再現され、第二の断面が第二のMR画像に再現され」ることとの間で、
各々「撮影装置内に配置された身体の一部分の互いに平行に延在する第一の画像化平面、第二の画像化平面からの測定された信号から第一の画像、第二の画像を再構成する手段」、及び、
「該部分の第一の断面が第一の画像に再現され、第二の断面が第二の画像に再現され」るという点で共通する。

(2)引用例1発明の「前記第1軸および第2軸を含むスライスの画像である第2軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第2軸縦断面画像構成手段」は、第1軸および第2軸は、アキシャル画像をもとに他の構成から算出しており、かつ、第2軸縦断面画像を求める過程において、断面という平面を求める機能を有しているから、
本願補正発明の「第一、第二及び第四のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段」との間で、「複数の画像からの情報から部分の第三の断面の第三の画像化平面を求める手段」という点で共通する。

(3)引用例1発明の「連続したスライスからなる2枚のアキシャル画像(S1,S6)を選択し、アキシャル画像S1上の点Uを指定し、アキシャル画像S6上の点Dを指定する第1軸指定手段と、前記指定された第1軸の中央で且つ第1軸に垂直なスライスの画像である第1軸センターアキシャル画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第1軸センターアキシャル画像構成手段と、前記第1軸センターアキシャル画像を表示しその画像上で対象物の第2軸をユーザに指定させる第2軸指定手段と、前記第1軸および第2軸を含むスライスの画像である第2軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第2軸縦断面画像構成手段」は、2枚のアキシャル画像及び第1軸センターアキシャル画像から、第1軸と第2軸とを決定し、それをもとに第2軸断面画像構成を求めている機能を有しており、
本願補正発明の「第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の3つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点、及び第四のMR画像の該部分の第四の断面の第三の点により決定されるように配置される」は、第一、二及び四のMR画像上の各点をもとに第三の画像化平面を決定している機能を有していることから、
両者は、「第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の幾何学上の特徴が、複数の画像にある幾何学上の特徴により決定される」点で共通する。

(4)引用例1発明の「前記第1軸および第2軸を含むスライスの画像である第2軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第2軸縦断面画像構成手段」は、機能からみて、本願補正発明の「第三の画像化平面の第三のMR画像を再構成する手段」との間で、「第三の画像化平面の第三の画像を再構成する手段」という点で共通する。

(5)引用例1発明の「人の体のアキシャル画像を形成する医用解析装置」と、
本願補正発明の「人間又は動物の身体の一部分を画像化する磁気共鳴画像化装置」とは、
両者の画像化する機能からみて、「人間の身体の一部分を画像化する画像化装置」という点で共通する。

以上、(1)?(5)の考察から、両者は、

(一致点)
「撮影装置内に配置された身体の一部分の互いに平行に延在する第一の画像化平面、第二の画像化平面からの測定された信号から第一の画像、第二の画像を再構成する手段と、
複数の画像からの情報から部分の第三の断面の第三の画像化平面を求める手段と、
を有し、
該部分の第一の断面が第一の画像に再現され、第二の断面が第二の画像に再現される、人間の身体の一部分を画像化する画像化装置であって、
第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の幾何学上の特徴が、複数の画像にある幾何学上の特徴により決定される画像化装置」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
人間の身体の一部分を画像化する画像化装置が、本願補正発明では、「人間又は動物の身体の一部分を画像化する磁気共鳴画像化装置」であり、「定常磁界を維持する手段と、RFパルスを発生する手段と、定常磁界に傾斜を発生する手段と、RFパルスを発生する手段と傾斜を発生する手段のために制御信号を発生する制御ユニットと、MR信号を測定する手段と、MR装置内に配置された身体の一部分の互いに平行に延在する第一の画像化平面、第二の画像化平面及び第四の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段」を有しているのに対し、引用例発明では、「X線撮影装置Sで得られた」「アキシャル画像を形成する医用解析装置」であって、MR画像を取得するための構成を有していない点。

(相違点2)
複数の画像からの情報から部分の第三の断面の第三の画像化平面を求め、画像化する手段が、本願補正発明では、「第一、第二及び第四のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段」、「第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の3つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点、及び第四のMR画像の該部分の第四の断面の第三の点により決定されるように配置される」、及び、「第三の画像化平面の第三のMR画像を再構成する手段」からなるのに対して、
引用例1発明では、「連続したスライスからなる2枚のアキシャル画像(S1,S6)を選択し、アキシャル画像S1上の点Uを指定し、アキシャル画像S6上の点Dを指定する第1軸指定手段と、前記指定された第1軸の中央で且つ第1軸に垂直なスライスの画像である第1軸センターアキシャル画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第1軸センターアキシャル画像構成手段と、前記第1軸センターアキシャル画像を表示しその画像上で対象物の第2軸をユーザに指定させる第2軸指定手段と、前記第1軸および第2軸を含むスライスの画像である第2軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第2軸縦断面画像構成手段」及び「前記第1軸および第2軸を含むスライスの画像である第2軸縦断面画像を前記複数のアキシャル画像から構成する第2軸縦断面画像構成手段」からなる点。
そして、引用例1発明には、「第四の断面が第四のMR画像に再現される」構成がない点。

すなわち、本願補正発明では、空間上の3点から平面を決定しているのに対して、引用例1発明では、2点からなる軸及びそれに直交する軸から平面を決定している点。

4.当審の判断
上記(相違点1)について検討する。
アキシャル画像を取得する装置として定常磁界を維持する手段と、RFパルスを発生する手段と、定常磁界に傾斜を発生する手段と、RFパルスを発生する手段と傾斜を発生する手段のために制御信号を発生する制御ユニットと、MR信号を測定する手段と、MR信号からMR画像を再構成する手段を有したMR装置は、本願の優先権主張の日前に周知のものである。

一例として、特開平9-220210号公報には、次の記載がある。
「【0012】-第1の実施形態-
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるMRI装置を示すブロック図である。このMRI装置100において、マグネットアセンブリ1は、内部に被検体を挿入するための空間部分(孔)を有し、この空間部分を取りまくようにして、被検体に一定の主磁場を印加する主磁場コイルと,勾配磁場を発生するための勾配磁場コイル(勾配磁場コイルはx軸,y軸,z軸の各コイルを備えており、これらの組み合わせによりスライス選択軸,周波数エンコード軸,位相エンコード軸が決まる)と,被検体内の原子核のスピンを励起するためのRFパルスを送信する送信コイルと,被検体からのNMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号を受信する受信コイル等が配置されている。主磁場コイル,勾配磁場コイル,送信コイルおよび受信コイルは、それぞれ主磁場電源2,勾配磁場駆動回路3,RF電力増幅器4および前置増幅器5に接続されている。
【0013】計算機7は、設定されたパラメータに基づいてパルスシーケンスを作成し、シーケンス記憶回路8に渡す。シーケンス記憶回路8は、パルスシーケンスを記憶し、そのパルスシーケンスに基づいて勾配磁場駆動回路3を操作し、マグネットアセンブリ1の勾配磁場コイルから勾配磁場を発生させると共に、ゲート変調回路9を操作し、RF発振回路10の搬送波出力信号を所定タイミング・所定包絡線形状のパルス状信号に変調し、それをRFパルスとしてRF電力増幅器4に加え、RF電力増幅器4でパワー増幅した後、前記マグネットアセンブリ1の送信コイルに印加する。
・・・(中略)・・・
【0015】計算機7は、A/D変換器11からMRデータを読み込み、画像再構成演算を行い、断層像を作成する。この断層像は、表示装置6にて表示される。また、計算機7は、操作卓13から入力された情報(指示やパラメータ値など)を受け取るなどの全体的な制御を受け持つ。」

そして、引用例1には、上記2.(1-ウ)の「それらアキシャル画像は、例えばX線撮影装置Sで得られたものである。」からみて、引用例1には、実施例としてX線式の医用解析装置が記載されているものの、上記摘記事項(1-ウ)記載の「なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。」、及び、上記摘記事項(1-イ)記載の「図16の(c)は、MRI装置によって得られるアキシャル画像S1?S6の各スライスの位置を示す。図17は、MRI装置によって得られるアキシャル画像S1?S6の模式図である。」からみて、医用解析装置は、特にX線式のものに限らず、MRI装置によって画像を得るものでも良い旨の示唆が読み取れる。
よって、引用例1発明の医用解析装置において、画像撮影装置として周知のMRI装置を採用し、本願補正発明のように構成することは、容易になし得たことである。

上記(相違点2)について検討する。
幾何学上、平面が決まるための4条件は、
(1)1直線上にない3点を通る平面は1つしかない
(2)1つの直線と、その直線上にない1つの点を通る平面は1つしかない
(3)2本の直線が平行なとき、その2直線をふくむ平面は1つしかない
(4)2本の直線が交わるとき、その2直線をふくむ平面は1つしかない
であることが広く知られている。
よって、引用例1発明は、上記(4)の条件を利用して平面を決定するものであるのに対し、本願補正発明は、上記(1)の条件を利用して平面を決定するものといえ、(相違点2)は、これらの条件の違いによるものといえる。
そして、上記(1)の条件を利用して3枚のMR画像上の点から平面を決定する技術は、本願の優先権主張の日前に周知のものである。

例えば、特開平9-220210号公報には、
「【0007】【課題を解決するための手段】第1の観点では、本発明は、処理対象について異なる位置で得た複数の断面像があるとき、それら複数の断面像上に3点以上の指定点を指定し、それら指定点の全てを含む面または前記指定点との距離が最小となる面を求め、その面を新たな断面または投影面または撮像面として決定することを特徴とする面決定方法を提供する。上記第1の観点による面決定方法では、複数の断面像上で3点以上の指定点を指定するだけで新たな断面または投影面または撮像面が決定されるから、新たな断面または投影面または撮像面を容易に決定することが出来る。また、処理対象に相当するか又はその近傍の領域上に指定点を指定すれば、新たな断面または投影面または撮像面に処理対象が含まれる確率が高くなり、新たな断面または投影面または撮像面を適切に決定することが出来る。
・・・(中略)・・・
【0016】図2は、上記MRI装置100の撮像面決定処理を示すフロー図である。ステップST1では、図8に示すように、被検体の体軸に垂直な断層像であるアキシャル画像G1,G2,G3,G4を表示する。これらアキシャル画像G1?G4において、Kは大動脈弓,Uは上行大動脈,Dは下行大動脈である。説明の都合上、大動脈弓K,上行大動脈U,下行大動脈D以外は破線で図示している。これらのアキシャル画像G1,G2,G3,G4は、図9に示す撮像面S1,S2,S3,S4でそれぞれ撮像して得られた断層像である。なお、Hは心臓である。これらアキシャル画像G1?G4の表示は、1つの画面上に並べて表示してもよいし、1枚ずつ表示するようにしてもよい。
【0017】ステップST2では、操作者は、複数のアキシャル画像上で、撮像対象の連続体またはその近傍に相当する領域上に3点以上の指定点を指定する。例えば、図3の(a)?(c)に示すように、アキシャル画像G1上で大動脈弓Kの領域上の下行大動脈D側に指定点P1を指定し、アキシャル画像G2上で下行大動脈Dに相当する領域上に指定点P2を指定し、アキシャル画像G3上で下行大動脈Dに相当する領域上に指定点P3を指定する。
【0018】ステップST3では、指定点の全てを含む面または指定点との距離が最小となる面を求め、その面を撮像面として決定する。例えば、図3の指定点P1(x1,y1,z1),P2(x2,y2,z2),P3(x3,y3,z3)が指定されると、次に示す行列式を用いて平面を決定する。」とあり、

特開平1-155837号公報には、
「【特許請求の範囲】(1)被検体からの磁気共鳴信号に基づいて所望の撮像断面の画像を得るために、前記撮像断面の位置を指定するMRI断層位置指定方法において、
互いに交差する複数の任意断面を表示する任意断面表示ステップと、
表示された前記任意断面上に、複数点の関心位置を入力することにより、前記関心位置を含む撮像断面を指定する撮像断面指定ステップと、
を備えたことを特徴とするMRI断層位置指定方法。
(2)撮像断面指定ステップにおいて、関心位置を3点入力することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のMRI断層位置指定方法。」、
「尚、上記実施例では、ステップS8において、交差する2枚の任意断面C2及びC4を表示し、関心位置(21)?(23)を含む撮像断面を指定するようにしたが、関心位置が3点あれば1つの撮像断面が特定できるので、3枚の任意断面を表示して撮像断面を指定してもよい。例えば、任意断面C2及びC4に交差する他の任意断面(図示せず)をCRTデイスプレイ(15)上に表示し、各任意断面上の関心位置によって撮像断面を指定することができる。」(第4頁左下欄第2?10行)とあり、

特開昭61-23954号公報には、
「【特許請求の範囲】1.断層面方向を可変することのできる傾斜磁場発生装置と、該傾斜磁場発生装置により発生される傾斜磁場中心と断層面からの距離を可変することのできる第1の手段を備えたものにおいて、任意の断層面を規定する3次元座標情報の入力手段と、該3次元情報から前記任意断層面像を得るために必要な断層面方向と傾斜磁場中心から断層面までの距離を計算する第2の手段と、該計算結果に基づいて前記傾斜磁場発生装置及び第1の手段を制御する手段を備えたことを特徴とするNMRイメージング装置。
2.特許請求の範囲第1項において、任意断層面を規定する3次元座標情報の入力手段は、断層像を表示するための表示装置と、表示された画面上の任意の位置を指示できる指定手段と、その指定された画面上の位置から実空間上の位置を計算する演算手段とをもうけ、位置の異なる任意の方向の複数の断層像を作り、該断層像を前記表示装置に表示し、前記指定手段及び演算手段により、前記任意断層面が含む点の3次元座標を入力し、更に断層面を規定するに必要な3点について他の断層像により入力をくり返すようにしたNMRイメージング装置。」、
「このような概略構成の装置において、任意断層面の座標情報を得る方法を以下述べる。まず第2図に示すように、上述したマルチスライス法により、目的部位をカバーした範囲の複数の断層像を得る処理19を行う。ここでは簡単のためZ軸方向に複数の断層像を得る場合を説明する。次に最初の断層像を第3図に示すCRT表示装置12に表示する処理20を行う。次に目的部位を指定するのに最適な断層像であるか否かを判断する(判断21)最適でなければ次の断層像を表示し(処理28)判断21に戻る。最適な断層像の場合は断層面A15の適当な位置にカーソル13を第1図に示すジョイスティック32を使って移動させ、その位置を入力する。(処理22)次に、入力された画面上の位置を実空間上の座標に変換する。
・・・(中略)・・・
Zについては断層面の位置が対応する。(処理23)
次に、以上の様にして得られた座標をA点(x_(1), y_(1), z_(1))として登録する。(処理24)
処理28、判断21、処理22,23,24をくり返し、第2点目をB点(x_(2), y_(2), z_(2))、第3点をC点(x_(3), y_(3), z_(3))として登録が終了するまでくり返す。(判断25)これらの関係を第4図に示す。
次に第5図に示す様に、上記ABCの各点を通る平面方程式を計算する。」(第3頁左上欄第2行?右上欄第16行)とある。

したがって、平面を決定するための条件が幾何学上の常識であり、その条件のうち、「1直線上にない3点を通る平面は1つしかない」ことを利用した平面決定技術が、MRI装置において周知である以上、引用例1発明の2軸から平面を決定する旨の構成に代えて、周知の3点から平面を決定するものを採用し、本願補正発明のように構成することは、容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果についても、引用例1及び上記周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用例1発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年6月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至に係る発明は、平成19年10月4日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりのものであるところ、請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「6.定常磁界を維持する手段と、
RFパルスを発生する手段と、
定常磁界に傾斜を発生する手段と、
RFパルスを発生する手段と傾斜を発生する手段のために制御信号を発生する制御ユニットと、
MR信号を測定する手段と、
MR装置内に配置された身体の一部分の第一の画像化平面及び第二の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段と、
第一及び第二のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段と、
第三の画像化平面の第三のMR画像を再構成する手段とからなり、
該部分の第一の断面が第一のMR画像に再現され、他方で第二の断面が第二のMR画像に再現される、人間又は動物の身体の一部分を画像化する磁気共鳴画像化装置であって、
第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の2つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点とにより決定されるように配置されることを特徴とする磁気共鳴画像化装置。」

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、
(1)「MR装置内に配置された身体の一部分の互いに平行に延在する第一の画像化平面、第二の画像化平面及び第四の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段」とあったところ、「MR装置内に配置された身体の一部分の第一の画像化平面及び第二の画像化平面からの測定されたMR信号からそれぞれ第一のMR画像、第二のMR画像及び第四のMR画像を再構成する手段」と、
(2)「第一、第二及び第四のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段」とあったところ、
「第一及び第二のMR画像からの情報から該部分の第三の断面の第三の画像化平面を決定する手段」と、
(3)「第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の3つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点、及び第四のMR画像の該部分の第四の断面の第三の点により決定されるように配置される」とあったところ、
「第三の画像化平面を決定する手段は第三の画像化平面の2つの点が第一のMR画像の該部分の第一の断面の第一の点、第二のMR画像の該部分の第二の断面の第二の点とにより決定されるように配置される」として、各々の限定を除き、
(4)「磁気共鳴画像化装置」において、「第四の断面が第四のMR画像に再現される」限定を除いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定的な発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3.」に記載したとおり,引用例1発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである以上、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-15 
結審通知日 2010-02-16 
審決日 2010-03-01 
出願番号 特願平11-552674
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大▲瀬▼ 裕久右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 信田 昌男
居島 一仁
発明の名称 磁気共鳴により対象を画像化する方法及び装置  
代理人 伊東 忠彦  

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