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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01G
管理番号 1220738
審判番号 無効2010-800001  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2010-07-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第3645372号発明「電子天秤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3645372号(以下、「本件特許」という。)は、特願平8-266586号として、平成8年9月18日に出願したものであって、平成17年2月10日に特許権の設定の登録(発明の名称は電子天秤、請求項の数は6である。)がなされたものである。
本件特許について、請求人より、平成21年12月28日付け審判請求書により、その請求項1ないし6に係る特許を無効とすることを請求の趣旨として本件特許無効審判(無効2010-800001号)が請求されたところ、被請求人より本年4月12日付けで答弁書の提出があった。
その後、本年6月3日に第1回口頭審理がなされ、当日に請求人、被請求人双方より第1回口頭審理陳述要領書(請求人、被請求人)の提出があった。

以下、本件特許に関し、その請求項1に係る特許を本件特許1と、請求項2に係る特許を本件特許2と、以下同様に、本件特許3ないし本件特許6といい、また、全体を総称して本件特許ということもある。また、本件特許に関し、その請求項1に係る特許発明を本件特許発明1と、請求項2に係る特許発明を本件特許発明2と、以下同様に、本件特許発明3ないし本件特許発明6といい、また、全体を総称して本件特許発明ということもある。
さらに、以下、本件特許に係る願書に添付した明細書及び図面を本件特許明細書等という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許1ないし本件特許6を全て無効とする旨を請求の趣旨とし、その請求には理由があることについて、下記甲第1号証ないし甲第4号証の証拠方法を提出するとともに、本件特許1ないし本件特許6は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定によりいずれも無効とすべきものであると主張している。
そして、本件特許を無効とすべき無効理由の内容は、審判請求書、第1回口頭審理陳述要領書(請求人)及び第1回口頭審理調書の記載内容を総合すれば、概略以下のとおりである。

1 無効理由
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された電子天秤に係る発明(以下、「甲第1号証に記載の発明」という。)との主たる相違点は、校正用の内蔵分銅の荷重の負荷に関して、本件特許発明1は、ビーム延長部を案内支持する別の副ロバーバル機構を備え、副ロバーバル機構を介して該荷重がビーム延長部に負荷されるのに対し、甲第1号証に記載の発明は、ビーム延長部を案内支持する別の副ロバーバル機構を備えていない点にある。
ところで、甲第1号証は、ビームに二種類のてこ比となる力点が設けられており、測定対象の荷重が一方の力点に負荷され、当該測定対象よりも小さい荷重が他方の力点に負荷される機構(構成P)において生ずる荷重負荷と内蔵分銅負荷とのてこ比が変化すると、測定が不正確となる可能性があるとの課題(課題K)を開示している。
他方、甲第2号証には、主副2つのロバーバル機構を備え、副ロバーバル機構を介して、構成Pにおける小秤量側の力点に荷重が負荷されている電子天秤(以下、「甲第2号証に記載の発明」という。)が開示されている。ここで、甲第2号証に記載のものがロバーバル機構であることは、甲第4号証に照らして明らかである。
そして、一般に、ロバーバル機構は、荷重を常に定点に負荷する作用を奏することが周知であるから、甲第2号証における当該副ロバーバル機構を構成Pの小秤量側に採用することで、荷重が負荷されるビーム上の位置が変化せず、てこ比の変化による影響を低減できることが理解できるから、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載の発明を適用することについて、電子天秤という技術分野及び構成P等の共通性に加え、てこ比の変化による影響を低減するという相当の動機付けがあるというべきである。
よって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載の発明を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件特許発明2、3、5及び6について
本件特許発明2、3、5及び6についても、同様に、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載の発明を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許発明4について
本件特許発明4は、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載の発明及び甲第3号証に記載の発明を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 証拠方法
上記無効理由について請求人が提出した証拠方法は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、以下のとおりである。
・甲第1号証:特開平2-82120号公報;伸び率調整型荷重伝達機構(発明の名称)に関し、本件特許1ないし6についての無効理由で引用された主引用例である。詳細は後述する。
・甲第2号証:実公昭53-1970号公報;上皿天びん(考案の名称)に関し、本件特許1ないし6についての無効理由で引用された副引用例である。詳細は後述する。
・甲第3号証:特開平2-124433号公報;電子天びん(発明の名称)に関し、本件特許4についての無効理由で引用された副引用例である。詳細は後述する。
・甲第4号証:特開昭50-81185号公報;計数はかり(発明の名称)に関し、第1回口頭審理陳述要領書(請求人)に添付して提出されたものである。詳細は後述する。

第3 被請求人の主張
1 反論
被請求人は、本件特許無効審判の請求は成り立たない旨の審決を求め、その請求には理由がないことについて、証拠方法として下記乙第1号証ないし乙第4号証を提出するとともに、答弁書、第1回口頭審理陳述要領書(被請求人)及び第1回口頭審理調書によれば、概略以下のとおり反論している。
本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明との主たる相違点は、甲第1号証に記載の発明は本件特許発明1の特徴部である、ビーム延長部を案内支持する別の副ロバーバル機構を備えておらず、よって、該副ロバーバル機構を介して校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷されるものではない点にあるところ、副引用例である甲第2号証に記載の上皿天びんは、そもそもロバーバル機構を備えているものではないから、甲第2号証に記載の上皿天びんがロバーバル機構を備えていることを前提とする請求人の主張は妥当でない。しかも、甲第2号証には、秤量を校正することについて一切の記載も示唆もない。
したがって、本件特許発明1は、当業者といえども甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。本件特許発明1を実質的に限定したものに相当する本件特許発明2ないし6についても同様である。
したがって、本件特許発明1ないし本件特許発明6は、いずれも、当業者といえども甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明や甲第3号証に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、本件特許1ないし本件特許6は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。

2 証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は、いずれも、ロバーバル機構について記載されている刊行物であり、以下のとおりである。
・乙第1号証:特開平2-259529号公報;請求人による「電子天びん(発明の名称)」についての出願に係る公開特許公報である。
・乙第2号証:特開2000-121421号公報;請求人による「天びん(発明の名称)」についての出願に係る公開特許公報である。
・乙第3号証:「天びん」、日本はかり工業会、1981年11月16日発行、31-32頁)
・乙第4号証:「質量の精密測定マニュアル」、日本規格協会、1981年12月10日発行、42-43頁)

第4 当審の判断
1 本件特許発明
本件特許発明1ないし本件特許発明6は、本件特許明細書等の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された以下のとおりのものである。
(1)本件特許発明1
【請求項1】負荷された荷重と平衡する電磁力を発生することにより荷重を測定し、電磁力を発生する電磁部に荷重を伝達するビームをロバーバル機構により案内支持するよう構成した電子天秤において、ビームの荷重負荷側端部を延長し、当該延長部は別の副ロバーバル機構により案内支持されるよう構成され、かつ副ロバーバル機構を介して校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷されるよう構成したことを特徴とする電子天秤。
(2)本件特許発明2
【請求項2】負荷された荷重と平衡する電磁力を発生することにより荷重を測定し、電磁力を発生する電磁部に荷重を伝達するビームを主ロバーバル機構により案内支持するよう構成した電子天秤であって、ビームの荷重負荷側端部を延長し、延長部は当該主ロバーバル機構とは別の副ロバーバル機構により案内支持されるよう構成され、副ロバーバル機構を介して校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷されるよう構成され、かつ主ロバーバル機構側の秤量皿に代えて、又はこの秤量皿に加えて当該副ロバーバル機構に秤量皿が設けられたことを特徴とする電子天秤。
(3)本件特許発明3
【請求項3】ビーム5は支点6により揺動可能に構成され、ビーム5の一端には電磁部8が設けられ、支点6を介した他端には主ロバーバル機構R1が接続し、かつビーム5の主ロバーバル機構R1接続側を延長部5aとし、この延長部5aの端部は副ロバーバル機構R2に接続し、副ロバーバル機構R2に対して内蔵分銅Wが負荷されるよう構成したことを特徴とする請求項1または2記載の電子天秤。
(4)本件特許発明4
【請求項4】支点19により揺動する副ビーム18の一端は主ロバーバル機構R1に接続し、当該副ビーム18の他端は、支点6を基準として電磁部8の取り付け側において主ビーム5と接続し、かつ主ビーム5には当該支点6を基準として当該副ビーム接続側と対向する側に延長部5aが形成され、当該延長部5aの端部は副ロバーバル機構R2に接続したことを特徴とする請求項1または2記載の電子天秤。
(5)本件特許発明5
【請求項5】主ロバーバル機構R1に接続する副ビーム18の一端には支点19が設けられ、他端は主ビーム5と接続し、当該副ビーム接続部を基準として主ビーム5の電磁部配置側には支点6が設けられ、かつ当該支点6と対向する側には延長部5aが形成され、当該延長部5aの端部は副ロバーバル機構R2に接続したことを特徴とする請求項1または2記載の電子天秤。
(6)本件特許発明6
【請求項6】副ロバーバル機構R2に対して秤量皿16が設けられたことを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の電子天秤。

2 本件特許発明の特徴
本件特許発明の技術的特徴をより明確に理解するために、本件特許明細書等の記載を参酌する。
(1)本件特許明細書等の記載
発明の詳細な説明には、次の記載がある。
ア 「【従来の技術】
電磁平衡式の電子秤(以下「電子天秤」とする)は・・・
上記のような理由から、特開平6-201448号等に示されるように、電磁部に秤量物の荷重を伝達するビームにおいて、内蔵分銅の荷重を付加する位置を、ビーム支点から遠ざけ、即ちビームの梃子(テコ)比を用いて比較的小型の内蔵分銅で効果的な校正が行えるように考慮された装置が提案されている。
図5はこのビーム延長型装置の構成の概略を示す。この装置ではビーム54の浮枠52側を延長し、この延長部54aに内蔵分銅58を載置するよう構成している。これにより梃子比を利用して秤量装置の秤量に対して比較的軽量の内蔵分銅で校正を行うように構成されている。」(段落【0002】?【0007】)
イ 「【発明が解決しようとする課題】
上記装置においては、延長されたビーム54に乗せられた内蔵分銅58の重心と支点55の距離Xがそのままビーム54の梃子比を構成する数値となる。またビーム54の長手方向の中心軸に対して左右に完全に均一に荷重が付加されないと荷重の一部はビーム54を捩じる力(肩揺れ力)として作用してしまうこと等のため、校正を正確に行うためには内蔵分銅を載置する位置決めは極めて厳格に設定する必要が生じる。例えば秤量10kg、最小目盛り0.1gの電子天秤を0.2kgの内蔵分銅を用いて秤量付近で校正しようとする場合、支点55と電磁部57の間隔を100mm、電磁部発生力0.1kgとすると内蔵分銅の載置位置が僅か0.1μmずれるだけで10kg測定で0.1gの誤差が生じることになる。
以上の結果内蔵分銅の位置決め部品には高価なサファイヤを使用したり、複雑な重心調整機構を別途設ける等の必要が生じてしまう。またこのような保証機構を用いても、内蔵分銅の位置決めの確実な再現性を実現することは困難であり、かつ温度変化に起因して内蔵分銅の位置決めが不正確になるという問題もしばしば生じている。」(段落【0008】、【0009】)
ウ 「【課題を解決するための手段】
本発明は上述の課題に鑑み構成された装置であって、基本的にはビームを延長し、この延長部に内蔵分銅分銅を載置する構成であり、かつこのビーム延長部に対して秤量物の荷重伝達機構案内用のロバーバル機構とは別にロバーバル機構を設置し、ビーム延長部に内蔵分銅を付加した際にこのロバーバル機構によりビームの動作を案内するよう構成し、ビームの捩れ、内蔵分銅の載置位置の変位等を全てキャンセル出来るように構成し、またこの校正用のロバーバル機構部を利用して秤量の異なる荷重測定機構を同じ装置内に構成できるようにした電子天秤に関する。」(段落【0010】)
エ 「【発明の効果】
本発明は荷重測定機構の一部を成すビームを延長し、この延長部に内蔵分銅を載置する構成とし、かつこのビーム延長部に対して秤量物の荷重伝達機構案内用のロバーバル機構とは別に副ロバーバル機構を設置したので、ビームに負荷する校正用の内蔵分銅の重心がずれてもこのずれによる応力の殆ど全てが副ロバーバル機構により吸収されるので、位置ずれ調整機構や複雑精密な内蔵分銅昇降機構を必要としない。」(段落【0023】)

(2)本件特許発明1について
上記記載事項アないしエによれば、電子天秤において、従来、ビームの荷重負荷側端部を単に延長し、この延長部に校正用の内蔵分銅を載置するようにしていたので、分銅の位置決めは厳格に設定する必要があり、このため、複雑な重心調整機構が不可欠であったところ、本件特許発明1は、「ビームの荷重負荷側端部を延長し、当該延長部は別の副ロバーバル機構により案内支持されるよう構成され、かつ副ロバーバル機構を介して校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷されるよう構成した」(請求項1)ことにより、「ビームに負荷する校正用の内蔵分銅の重心がずれてもこのずれによる応力の殆ど全てが副ロバーバル機構により吸収されるので、位置ずれ調整機構や複雑精密な内蔵分銅昇降機構を必要としない。」(【発明の効果】)との作用効果を奏する点に、その技術的特徴があるものと認められる。

(3)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6についても、同様に、上記技術的特徴点を共通して備えているものと認められる。

3 甲号各証の記載事項及び引用発明
甲号各証の記載事項、及び甲号各証から把握される引用発明は、それぞれ以下のとおりである。

(1)甲第1号証について
無効理由に係る主引用例であって、甲第1号証である特開平2-82120号公報には、伸び率調整型荷重伝達機構(発明の名称)に関し、次の事項ア及びイが図面とともに記載されている。
ア 「〔産業上の利用分野〕
本発明は秤量装置の荷重伝達機構に係り、特に校正用の分銅を内蔵した装置において、校正分銅を載置するアームと、荷重を電磁部等の測定部に伝達するビーム等の部材との間に生じる僅かな伸び差に基づいて、てこ(梃)比が変化することによる測定精度の低下を防止するよう構成した機構であって、特に電子天秤に好適に実施できる機構に関する。
〔従来の技術〕
第5図は校正分銅を内蔵した電子天秤の主要構成部分を、また第6図は第5図のA-A線による荷重伝達機構の構成を示す。
図中符号1は上部副桿、2はこの上部副桿1に平行に位置する下部副桿であり、両者の一端は電磁部本体を構成するフレーム3に対して板バネ4、5を介して各々接続している。一方これら上下の副桿の他端に対しては前記と同様の板バネ7、8を介して浮枠6が接続しており、これらフレーム3、上下の副桿1、2及び浮枠6によりロバ-バル機構が構成される。一方フレーム3内には電磁部本体が収納されている。この電磁部本体は、ヨーク9と、ヨーク9内に収納配置されたマグネット10と、このマグネット10の上部に位置するポールピース11と、ポールピース11の周囲に位置するコイル12とから成っている。またコイル12はボビン13に巻きつけられており、更にボビン13自体はビーム14に固定してあり、ビーム14と共に変位するようになっている。
ビーム14は前記フレーム3に対して板バネにより接続しており、この板バネを支点15として揺動するようになっている。
更に、符号16は浮枠6に立設したピンであり、このピン16に対して秤量皿17が装着される構成となっている。18はピン16を介して浮枠6に伝達された荷重をビーム14側に伝達するための伝達部材(以下「吊りバンド」と称する)であり、この吊りハンド18を介して伝達された荷重によりビーム14は支点15を中心として揺動するように変位する。
以上の構成の装置において、最近では校正用の分銅を内蔵することにより特別に校正分銅を用いなくてもワンタッチで校正が可能な装置が提供されている。
符号19はビーム14に接続した校正分銅載置用のアームであり、常時は校正用分銅21を21aで示す位置に配置して、分銅の荷重が加わらないようになっており、この状態で荷重測定を行う。また校正を行う場合には図示しない昇降装置により校正分銅21をアーム19に載置し、秤量装置がこの分銅21の荷重を正しく表示するよう校正を行う。」(1頁左下欄下から5行?2頁右上欄7行)
イ 「〔発明が解決しようとする課題〕
第7図は荷重伝達機構の関係を模式的に示す図である。同図において、秤量物の荷重がピン16を介して付加される中心、即ち浮き枠18の取り付け位置から支点15までの距離Aと、支点15から校正分銅21の荷重が加わる中心までの距離Bとの比は当然一定に保持される構成となっている。通常この比率A/Bは1/6程度に設定されている。ここで、前記比率を1/6とし、校正分銅21の重量を400.00gとすると、前記A/Bのてこ比により、荷重測定部に対しては校正分銅の実際の重量の6倍の負荷が加わり、測定表示は2400.00gと表示されることになる。従ってその表示が2400.00gとなるよう設定を行うことにより校正を終了する。
以上に示した校正の際には、校正分銅の重量が正確であることは当然の前提として、次に主としてビーム14を中心としたてこ部の長さと、主として校正分銅用のアーム19を中心としたてこ部の長さとの比B/Aが正確な比率(例えば1/6)を保持していることが前提となる。このため、ビーム14を形成する材料と校正分銅を載置するアーム19の材料とは同じもの(多くはアルミニウム系合金)を使用するようにしている。従って、温度条件が変化してビーム14と校正分銅用アームとがそれぞれ伸縮しても、両者の伸縮の比率が等しい限りそのてこ比は変わらず、正確な校正が行えることになる。
然しながら、以上のような配慮にも係わらず、校正試験を行った結果、校正に不都合が生じ、そのてこ比が温度条件等の変化により僅かではあるが変化することが分かった。例えば前記A/Bのてこ比を予め6.0000/1.0000としておいたものが、異なる条件下では例えば5.998/1.000となってしまうことが確かめられた。この原因はいまだ正確には把握されていないが、材質は同じでも、ビーム14と校正分銅用アーム19の形状に相違があること、および、ビーム14の方が発熱部である電磁部や回路基板19に近いため実際には同じ温度条件とはなっていない可能性があること等によるものと一応考えられる。何れにしても実際には、僅かであるがてこ比は変化してしまい、校正が不正確となる可能性がある。」
(2頁右上欄8行?右下欄10行)
ウ 電子天秤の荷重伝達機構の側面図である第5図は、下記のとおりである。

以上の記載事項アないしウを総合勘案すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。
「負荷された荷重と平衡する電磁力を発生することにより荷重を測定し、電磁力を発生する電磁部本体(ヨーク9、マグネット10、ポールピース11、コイル12、ボビン13)に荷重を伝達するビーム(14)を、ロバーバル機構(浮枠6、上部副桿1、下部副桿2)を構成する浮枠6に吊りバンド(18)により接続するよう構成した電子天秤において、ビーム(14)における吊りバンド(18)が接続される箇所の先に、すなわち、電磁部本体とは反対側に、ビーム(14)と同じ材料で形成されたアーム(19)を設け、内蔵された校正分銅(21)の荷重がアーム(19)に負荷されるよう構成した電子天秤。」(以下、「引用発明1」という。)
引用発明1は以上のとおりであるから、前記「2 本件特許発明の特徴」で説示したように、引用発明1は本件特許明細書等に記載された従来技術に相当するといえる。

(2)甲第2号証について
無効理由に係る副引用例であって、甲第2号証である実公昭53-1970号公報には、上皿天びん(考案の名称)に関し、次の事項アないしカが図面とともに記載されている。
ア 「この考案は、上皿天びんに関するものである。上皿天びんはひょう皿部すなわち試料載置操作部には操作上障害となるものが全く除去されているから使用上理想的な構造で需要も多い。反面、ロバーバルの機構などに例示されるごとく少くとも複数個の桿およびこれらの桿間を結合する連結棒を必要とし、かつこれらの結合部は回動可能な支点構造を形成させるなど種々の複雑な構造が要求される。必然的にひょう量・感量・精度・耐久性などの性能面で各種制約を受け、また製造上も複雑な機構の加工および組立調整を余儀なくされる。
この考案はこれらの上皿天びんの持つ不利な要素を解消し、性能的に優れた上皿天びんを容易に製造しうるものである。
さらにこの考案は、前記性能向上の機構的特徴を生かし、複数のひょう皿部を備えて広範囲なひょう量範囲を簡単に得、また簡単で有効な風袋消去が可能となるなど測定範囲が大きく機能的な上皿天びんが得られるものである。」(第1欄23行?第2欄4行)
イ 「図面に従ってこの考案を説明すると、第1図,第2図において1は大ひょう量測定側の上皿で、これと一体的に結合されている皿受枠2,3は、板ばね6を介して第1の桿5と係合している。皿受側枠は枠3の内側に張り出した1対の突起4と押え板61とによって板ばね6の一方を挾持している。一方、桿5側は第1の桿5の上面に、前後左右相対して突出した突起7および止めネジ8によって保持されるバネ挾持板62によって板バネ6の他の一端が挾持されている。さらに枠3の下端部には、押え板63によって板バネ9の一端が固定されており、板バネ9の他端9’は固定子11に設けられた支持片10に押え板64によって固定されている。また枠3の上端部と固定子と一体に形成された支持枠12との間にも板バネ13が押え板65,66によって取り付けられている。
第1の桿5は、前記支持枠12および桿5間に押え板67,68によって取り付けられた板バネ14を支点として回動し、大皿1に載せられた試料は桿5上の板バネ6上に重点として作用し、桿5の端面部5’の板バネ15には力点として作用する。
第1の桿5と第2の桿18とを連結する連結枠17は、枠17とそれぞれの桿5,18との間で垂直に張られた板バネ15,16を介して連結されている。 69,70,71,72はこれらの板バネ15,16の押え板である。」(第2欄5?31行)
ウ 「ついで第2の桿18を中心に説明すると、前記したように第2の桿18の一端すなわち重点側は板バネ16を介して大ひょう量側の皿1の荷重が負荷され、他の一端の重点側は小ひょう量側の皿19の荷重が負荷される。すなわち小皿19に載置されたひょう量物は、小皿受枠20を介して桿18の重点板バネ21に負荷される。73は第2の桿18上の突起22および止ネジ23によって保持されるバネ挾持板、74は板バネ21を枠20に固定する押え板である。
なお、75,76は板バネ24をそれぞれ支持枠12および皿受枠20に連結するための押え板で77,78は板バネ25をそれぞれ固定子10上の支持片26および皿受枠20に連結するための押え板である。
また、27,28,29,30は互に交叉して張加された桿18の支点を形成する板バネ、33は支柱31間に張り渡された固定子側の板バネ固定棟、32は桿18上に固定された桿側の板バネ固定棟で、79,80,81,82はそれぞれ板バネの押え板である。35,36,37は4本の柱34などで固定子上に吊り下げられた励磁コイル、磁石などの電磁力自動平衡機構で、桿18の力点部でもある。38は桿18の平衡度を検知する光路遮蔽片である。
板バネ9,13,24,25は、一般に上皿はかりなどにおいてステーと呼ばれているものの機能を有しており、また13,24の板バネは装置の精度と強度の関係から設置されているが、構成上は必ずしも必要としないものである。」(第2欄32行?第3欄24行)
エ 「従来の高精度の上皿天びんにおいては主桿と副桿との連結部あるいは副桿と固定子などとの連結部を組み合せ的なナイフエツヂ機構を採用したり球軸受などの機構を採用して、たとえばロバーバル機構における完全なる平行四辺形の維持がなされるように種々の工夫がなされてきた。
これらは機構上も複雑であるばかりでなく水平垂直の平行度を維持した結合配置が困難なうえ各所に接触摩擦部分があるため測定精度の向上には一つの制限要素となるものである。
本願の考案は、桿と連結体(枠)との係合などを板バネを用いて支点部形成し、同時にこれを復元力を与えて常に零位置で測定するようになしたので、支点形成部の接触摩擦による誤差が皆無になる。板バネ自体の内部摩擦が影響する程度であるが、これらは前者の接触麻擦と比較すれば全く無視し得るものである。さらにまた本考案では常に零位置で測定するために、ロバーバル機構におけるような水平垂直の平行度を同時に満足させるような必要は全くなく、それぞれの桿あるいは連結体が、零平衡の測定がなされている状態において水平または垂直の平行度が維持されていれば千分(当審注:十分の誤記と認められる。)である。たとえば板バネによる支点形成部6,14,15,16,21は零平衡の状態において垂直に維持されるよう取り付けられればよく、またステーの作用をする板バネ9,25などは桿5,18と平行なように水平に維持されるよう取り付けられればよい。したがって、水平方向に張られている板バネ9,25の長さは適当な任意の長さで何ら差し支えない。また第1の桿5と第2の桿18とを連結する連結枠の取り付けにおいても、桿5の端面5’が垂直に平滑な面が得られれば十分である。」(第3欄25行?第4欄13行)
オ 「以上の構成において、本考案の要旨は一つの自動平衡形検出器に対して所定衡比で配置された2つの上皿部分を備えることによって、ひょう量物の大きさにより最良の感度が得られるように使い分けることができ、また風袋消去などが簡単に行なえるようになされたことである。」(第4欄14?19行)
カ 「操作上の他の効果としての風袋消去については、仮に大きい上皿1に200gの風袋を使用するときは小さい上皿19には20gの分銅載置でよい。逆に小さい上皿19に2gの風袋を使用するときは大きい上皿1に20gの分銅を載置すればよい。このことは大きい風袋のときは10分の1に縮少した比較的小さな消去分銅で簡単に行なえ、微細な風袋には10倍に拡大した適当な大きさの消去分銅で正確に消去が行なえるという効果が得られる。」(第5欄11行?第6欄6行)
キ 正面より見た断面図である第1図は、下記のとおりである。

以上の記載事項アないしキを総合勘案すると、甲第2号証には次の発明が記載されているものと認める。
「支持枠(12)と、大秤量用上皿(1)が結合された枠(3)と、枠(3)に板バネ(6)を介して結合され、その一端に設けられ支持枠(12)と連結する板バネ(14)を支点として回動する第1の桿(5)と、枠(3)の上部に設けられた板バネ(13)及び下部に設けられた板バネ(9)と、第1の桿(5)の他端に板バネ(15)を介して連結されて設けられた連結枠(17)と、連結枠(17)にその一端が板バネ(16)を介して連結され、板バネ(27-30)を支点として回動する第2の桿(18)と、第2の桿(18)の他端に重点板バネ(21)を介して接続された小皿受枠(20)に結合された小秤量用上皿(19)と、小皿受枠(20)の上部に設けられた板バネ(24)及び下部に設けられた板バネ(25)と、電磁力を発生する電磁力自動平衡機構(35-37)とを備え、大秤量用上皿(1)に載せられた試料は板バネ(6)に力点として作用し、その結果板バネ(15)に力点として作用し、さらに板バネ16に力点として作用するとともに、電磁力自動平衡機構(35-37)が第2の桿(18)の作用点として作用し、他方、小秤量用上皿(19)に載せられた試料は、重点板バネ(21)に力点として作用するとともに電磁力自動平衡機構(35-37)が第2の桿(18)の作用点として作用し、もって、2つの所定衡比により大秤量、小秤量を可能とした上皿天びん。」(以下、「引用発明2」という。)

(3)甲第3号証について
同じく、無効理由に係る副引用例であって、甲第3号証である特開平2-124433号公報には、電子天びん(発明の名称)に関し、次の事項アないしエが図面とともに記載されている。
ア 「〈産業上の利用分野〉
本発明はロバーバル機構を備えた電子天びんに関する。」(1頁右下欄1-3行)
イ 「〈課題を解決するための手段〉
上記の目的を達成するため、本発明では、例えば実施例に対応する第1図、第2図に示すように、弾性はり部1,2、固定柱部3および可動柱部4からなるロバ-バル機構Rと、可動柱部4に支承された皿17の荷重を荷重センサ21に伝達するための複数個のレバー5,6と、各レバー5,6に関する各弾性的連結部7a,7b,8a,8bおよび弾性的支点9,10を、一つの母材を刳り貫いて一体形成するとともに、各レバー5,6のうち、少くとも1個のレバー5の弾性的支点9を支持する部分(支点支持部)11を、母材とは別の部材(連結部材)12,13により、固定柱部3に剛的に連結している。
〈作用〉
基本的には、レバーを複数段にすることによって大ひょう量化と高感度化を達成できる。すなわち、レバーを複数段にすることにより、周知の通り皿上荷重は複数のレバーの各レバー比の積のもとに荷重センサ21伝達されるので、各レバーのレバー比に制約があっても大ひょう量化できる。また、荷重センサ21に連結される最終段のレバー6については、前段のレバー5のレバー比の分だけ皿上荷重よりも小さい力が加わることになるから、その弾性的連結部(力点)8bおよび弾性的支点10を薄く(弱く)できるとともに、初段のレバー5については、従来の1段レバーと同様にひょう量荷重に耐える強さの弾性的連結部7bと弾性的支点9が必要であり、ある一定の微小荷重に対するこの初段レバー5の変位は微小となるものの、その変位は次段のレバー6によって拡大されて荷重センサ21に伝達されるから、荷重センサ21には、結局、皿17への微小荷重の作用によって敏感なレバー6を介して大きな変位が伝達され、高感度化を達成できる。」(2頁右下欄10行?3頁右上欄4行)
ウ 「〈実施例〉
第1図は本発明実施例の手前側の連結部材12を除去した状態で示す正面図で、第2図はその部分分解斜視図である。
ロバーバル機構Rと、2個のレバー5,6と、これらの各部を相互に連結する弾性的連結部7a,7b,8a,8bと、各レバー5,6の弾性的支点9,10、および一方の弾性的支点9を支持する支点支持部11が、例えばアルミニウム合金等の平板様の母材を刳り貫くことによって一体形成されている。
ロバーバル機構Rは、それぞれ両端に可撓部1a,lbおよび2a,2bが形成されてなる、2本の互いに平行な弾性はり部1および2により、固定柱部3と可動柱部4とを連結した機構である。このロバーバル機構Rは、その固定柱部3において天びん基台22に固着され、また、皿17はねじ18によってスペーサ19を介して可動柱部4に固着される。
可動柱部4は、弾性的連結部7a,7bによってレバー5に連結されており、このレバー5は弾性的支点9を介して支点支持部11に支承され、かつ、弾性的連結部8a,8へ(当審注:8bの誤記と認められる。)によってレバー6に連結されている。レバー6は弾性的支点10を介して固定柱部3に支承されており、このレバー6には、弾性はり部1に穿たれた孔1c,1dを貫通するスペーサ6a,6bを介して、ロバーバル機構Rの上方に配設されるアーム20がビス20a,20bで固着されている。そして、このアーム20の先端がビス21aによって荷重センサ21に接続されている。なお、アーム20には、皿17を可動柱部4に固着するためスペーサ19を貫通させる孔20cが穿たれている。
上述した各可撓部1a,lb,2a,2b、各弾性的連結部7a,7b,8a,8b、および各弾性的支点9,10は、それぞれ母材に狭窄部を形成することによって得ている。」(3頁左下欄16行?4頁左上欄12行)
エ 「以上の本発明実施例によると、皿17に作用する荷重は弾性的連結部7a,7bを介してレバー5に伝達される。レバー5は、弾性的連結部7bを力点として、弾性的支点9を中心に傾く。このレバー5の傾きは弾性的連結部8a,8bを介してレバー6に伝達される。レバー6は、弾性的連結部8bを力点とし、弾性的支点10を中心として傾き、この傾きはアーム20によって荷重センサ21に伝達される。
ここで、レバー6の弾性的支点10は直接に固定柱部3に支持されているが、レバー5の弾性的支点9については一体形成構造であるが故の制約により直接固定柱部3に支持できず、支点支持部11に支持されることになる。しかし、この支点支持部11を母材とは別の連結部材12,13で固定柱部3に剛結合することにより、弾性的支点9は実質的に固定柱部3に支持されることになる。」(4頁右上欄9行?左下欄5行)
オ 正面図である第1図は、以下のとおりである。

以上の記載事項アないしオを総合勘案すると、甲第3号証には次の発明が記載されているものと認める。
「弾性はり部(1,2)、固定柱部(3)及び可動柱部(4)からなるロバーバル機構Rと、可動柱部(4)に支承された皿(17)と、可動柱部(4)に対して弾性的連結部(7a,7b)によって連結され、弾性的支点(9)を介して支点支持部(11)に支承されたレバー(5)と、弾性的連結部(8a,8b)によってレバー(5)に連結され、弾性的支点(10)を介して固定柱部(3)に支承されたレバー(6)と、レバー(6)に固着されたアーム(20)とを備えた電子天びんであって、皿(17)に作用する荷重は弾性的連結部(7a,7b)を介してレバー(5)に伝達され、レバー(5)は弾性的連結部(7b)を力点として、支点(9)を中心に傾き、この傾きは弾性的連結部(8a,8b)を介してレバー(6)に伝達され、レバー(6)は弾性的連結部(8b)を力点として弾性的支点(10)を中心として傾き、この傾きがアーム(20)により荷重センサ(21)に伝達されるようにした電子天びん。」(以下、「引用発明3」という。)

(4)甲第4号証について
甲第4号証は、口頭審理陳述要領書(請求人)に添付して新たに提出された刊行物であり、その趣旨は甲第2号証に記載の上皿天びんがロバーバル機構を備えたものであることを立証しようとする間接証拠である(第1回口頭審理調書)。
そして、甲第4号証である特開昭50-81185号公報には、計数はかり(発明の名称)に関し、次の事項アないしエが図面とともに記載されている。
ア 「第1図において、1は全部の品物が載置されるグロス皿で、該グロス皿は周知のように皿受棒2、ロバーバル機構3、4および支点台5によって常に平行移動するように支持されている。グロス皿1に品物が載置されると、この荷重は皿受棒2およびワイヤー(または板発條等の弾撓体)6を介してレバー7に伝達される。これによってレバー7は支点軸受8を支点として傾く。レバー7の先端はワイヤー9を介して皿受金具10に結合されている。皿受金具10にはサンプル皿11が設けられている。
皿受金具10はロバーバル機構12、13および支点台14によって支持されている。皿受金具10の動きはワイヤー15を介してレバー16に伝達される。レバー16は支点軸受17を支点として傾く。レバー16の傾きすなわち変位は差動トランス18によって検出され、この変位に比例した電流がフォース・コイル19に流れてグロス皿1あるいはサンプル皿11に載った荷重と平衡する。なお、荷重の平衡方式は、こゝで例示したフォース・バランス方式以外の任意のものを使用し得る。」(2頁左上欄15行?右上欄14行)
イ 「上述の計量スケールの動作を詳述すれば次の通りである。先づサンプル皿11に品物のサンプルを1個載せると、これの重量はレバー16に伝達され、フォース・コイル19に電流が流れて平衡する。フォース・コイル19に流れる電流は第2図の変換回路20で電圧に変換され、更に増幅器21によって適当な大きさに増幅される。切換スイッチ22をサンプル接点S側に接続しておけば、サンプルの重量を表わす電圧は差動増幅器42の一方の入力23に与えられる。こゝで、偏差指示計30の指示が零になるように設定ダイヤル26を回せば、ポテンショメータ28の出力にはサンプルの重量に比例した電圧が現われ、上記サンプルの重量はポテンショメータの位置あるいは電圧として記憶される。この電圧は演算回路24のサンプル入力32に供給される。
次にサンプル皿11からサンプルを取除き、切換スイッチ22をグロス接点Gに接続し、グロス皿1に全品物を載置する。グロス皿1の荷重は皿受棒2、ワイヤー6、レバー7、ワイヤー9、皿受金具10およびワイヤー15を介してレバー16に伝達される。サンプル計量時と同様にレバー16の傾きは差動トランス18で検出され、フォース・コイル19に電流が流れて平衡する。フォース・コイル19を流れるグロス重量に比例する電流は変換回路20で電圧に変換され、増幅器21でサンプル重量を表わす電圧と同じ増幅度でもって増幅される。増幅された電圧は切換スイッチ22のグロス接点Gより演算回路24のグロス入力25に供給される。演算回路24は2つの入力の割算を実行してグロス皿1に載置された品物の個数を計算し、表示装置33はこの個数を表示する。」(2頁右下欄1行?3頁左上欄11行)
ウ 計量部の構造を原理的に示す図である第1図は、以下のとおりである。




以上の記載事項アないしウを総合勘案すると、甲第4号証から、次の技術事項を把握することができる。
「ロバーバル機構(3),(4)を備えたグロス計量部と、ロバーバル機構(12),(13)を備えたサンプル計量部とからなる計数はかり。」

4 本件特許発明1についての判断
まず、本件特許発明1について検討する。
(1)対比
本件特許発明1と引用発明1とを比較するために、それぞれ、再掲する。
(本件特許発明1)
「負荷された荷重と平衡する電磁力を発生することにより荷重を測定し、電磁力を発生する電磁部に荷重を伝達するビームをロバーバル機構により案内支持するよう構成した電子天秤において、ビームの荷重負荷側端部を延長し、当該延長部は別の副ロバーバル機構により案内支持されるよう構成され、かつ副ロバーバル機構を介して校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷されるよう構成したことを特徴とする電子天秤。」
(引用発明1)
「負荷された荷重と平衡する電磁力を発生することにより荷重を測定し、電磁力を発生する電磁部本体(ヨーク9、マグネット10、ポールピース11、コイル12、ボビン13)に荷重を伝達するビーム(14)を、ロバーバル機構(浮枠6、上部副桿1、下部副桿2)を構成する浮枠6に吊りバンド(18)により接続するよう構成した電子天秤において、ビーム(14)における吊りバンド(18)が接続される箇所の先に、すなわち、電磁部本体とは反対側に、ビーム(14)と同じ材料で形成されたアーム(19)を設け、内蔵された校正分銅(21)の荷重がアーム(19)に負荷されるよう構成した電子天秤。」

ここで、引用発明1の「電磁部本体(ヨーク9、マグネット10、ポールピース11、コイル12、ボビン13)」、「ロバーバル機構(浮枠6、上部副桿1、下部副桿2)を構成する浮枠6に吊りバンド(18)により接続する」及び「内蔵された校正分銅」は、
本件特許発明1の「電磁部」、「ロバーバル機構により案内支持する」及び「校正用の内蔵分銅」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「アーム(19)」は、「ビーム(14)における吊りバンド(18)が接続される箇所の先に、すなわち、電磁部本体とは反対側に、ビーム(14)と同じ材料で形成され」ており、該接続箇所に吊りバンド(18)により荷重が負荷されるから、引用発明1の「ビーム(14)における吊りバンド(18)が接続される箇所の先に、すなわち、電磁部本体とは反対側に、ビーム(14)と同じ材料で形成されたアーム(19)を設け」は、本件特許発明1の「ビームの荷重負荷側端部を延長し」に相当するといえる。
同様に、引用発明1の「アーム(19)」は、本件特許発明1の「ビーム延長部」に相当するといえる。
してみると両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「負荷された荷重と平衡する電磁力を発生することにより荷重を測定し、電磁力を発生する電磁部に荷重を伝達するビームをロバーバル機構により案内支持するよう構成した電子天秤において、ビームの荷重負荷側端部を延長し、校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷されるよう構成したことを特徴とする電子天秤。」
(相違点)
本件特許発明1は、「当該延長部は別の副ロバーバル機構により案内支持されるよう構成され、かつ副ロバーバル機構を介して校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷される」とあるように、ビーム延長部を案内支持する別の副ロバーバル機構を備え、校正用の内蔵分銅の荷重が該副ロバーバル機構を介してビーム延長部に負荷されるのに対し、
引用発明1は、ビーム延長部を案内支持する別の副ロバーバル機構を備えておらず、校正用の内蔵分銅の荷重はビーム延長部にそのまま負荷される点。

(2)想到容易性について
請求人は、上記相違点は甲第2号証に記載されている旨主張しているので、この点について、以下、検討する。
ア 引用発明2
甲第2号証に記載の発明として当審が認定した引用発明2を再掲すれば、以下のとおりである。
(引用発明2)
「支持枠(12)と、大秤量用上皿(1)が結合された枠(3)と、枠(3)に板バネ(6)を介して結合され、その一端に設けられ支持枠(12)と連結する板バネ(14)を支点として回動する第1の桿(5)と、枠(3)の上部に設けられた板バネ(13)及び下部に設けられた板バネ(9)と、第1の桿(5)の他端に板バネ(15)を介して連結されて設けられた連結枠(17)と、連結枠(17)にその一端が板バネ(16)を介して連結され、板バネ(27-30)を支点として回動する第2の桿(18)と、第2の桿(18)の他端に重点板バネ(21)を介して接続された小皿受枠(20)に結合された小秤量用上皿(19)と、小皿受枠(20)の上部に設けられた板バネ(24)及び下部に設けられた板バネ(25)と、電磁力を発生する電磁力自動平衡機構(35-37)とを備え、大秤量用上皿(1)に載せられた試料は板バネ(6)に力点として作用し、その結果板バネ(15)に力点として作用し、さらに板バネ(16)に力点として作用するとともに、電磁力自動平衡機構(35-37)が第2の桿(18)の作用点として作用し、他方、小秤量用上皿(19)に載せられた試料は、重点板バネ(21)に力点として作用するとともに電磁力自動平衡機構(35-37)が第2の桿(18)の作用点として作用し、もって、2つの所定衡比により大秤量、小秤量を可能とした上皿天びん。」

イ 論点
そこで、引用発明2において、上記相違点に関し、以下の3つの論点について検討する。
(ア)ロバーバル機構を備えているといえるか。
(イ)力点として作用する重点板バネ(21)が設けられた箇所が、本件特許発明1にいう「ビームの荷重負荷側端部の延長部」といえるか。
(ウ)小秤量測定部は、大秤量測定部の秤量を校正するものとして機能し得るか。

ウ 検討
上記3つの論点について、以下、それぞれ検討する。

(ア)ロバーバル機構を備えているといえるか、について
a 請求人は、甲第2号証に記載の、「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」が主ロバーバル機構を構成し、「小皿受枠(20)、板バネ(24)及び板バネ(25)からなる構成」が副ロバーバル機構を構成する旨主張しているので、この点について検討する。

b まず、ロバーバル機構に関して、乙号各証や当審の職権調査による下記文献には、それぞれ以下のように記載されている。
(a) 乙第1号証
「<従来の技術>
電子天びんにおいては、一般に、皿の傾斜や転倒を防止するために、皿をロバーバル機構(パラレルガイドとも称される)で支承してその変位の方向を上下のみに規制することが行われる。ロバーバル機構は、2本の互いに平行なはりの両端に、それぞれ可撓部を介して固定部と可動部を配設した機構であり、皿はこの可動部に支承される。皿に作用する荷重は、このようなロバーバル機構の可動部に連結されたレバーにより、荷重センサに伝達される。
ここで、ロバーバル機構の可動部は上下動のみ、つまり平行運動を行い、また、レバーは支点を中心に傾斜する必要がある。」(1頁左下欄17行?右下欄10行)
(b) 乙第2号証
「【従来の技術】天びんやはかりにおいては、被測定荷重を載せるための秤量皿の動きを規制すべく、秤量皿をロバーバル機構(パラレルガイドとも称される)で支持したものが多い。ロバーバル機構は、天びんメカニズムのフレームに固定または一体化される固定柱に対し、互いに平行な上下2本の梁によって可動柱を支持した構造を持ち、各梁はその両端部がそれぞれ弾性支点部を介してフレーム(固定柱)および可動柱に連結され、その可動柱に秤量皿が支持される。このようなロバーバル機構は、秤量皿の転覆ないしは傾斜を防止すると同時に、秤量皿に対する偏置荷重に伴う秤量誤差、つまり四隅誤差を解消する機能を持つ。
ロバーバル機構の四隅誤差の解消機能は、上下の梁の平行度が厳密に調整されることによって、換言すれば上下の梁の両端部にそれぞれ設けられている弾性支点部の上下方向への間隔が互いに一致するように調整されることによって、はじめて有効となるものであって、通常、その平行度の精度は、許容される四隅誤差(天びん精度)により異なるが0.1μm?10μmのオーダーであり、部品の加工精度によって平行度の精度を満足することは困難であり、組立後に実際に秤量皿上での荷重の載置位置を変化させながらの調整、いわゆる四隅誤差の調整作業を必要とする。
従来のロバーバル機構を有する天びんやはかりにおいては、天びんメカニズムのフレームに、上下の梁相互の平行度調整用の可撓部を設け、その可撓部をネジによって撓ませることにより四隅誤差を調整するようにしている(例えば実開昭63-35924号参照)。」(段落【0002】?【0004】)
(c) 乙第4号証
「上皿直示天びんと下皿直示天びんの構造上の最も大きい違いは、上皿直示天びんは、皿がさおより上にあるために、試料を皿に載せても皿が転倒しないようにさおの下の方に副さおがあって、皿の支持棒(皿受け棒)を常に垂直に保持していることである。図1.18に上皿直示天びんの基本的な原理を示す。皿に試料を載せてさお(1)が傾くと副さお(2)も同じように傾き、皿の支持棒(3)はさおの傾きのいかんにかかわらず、常に垂直に保持される。さおの支点および力点(4),(5)と、副さおの支持関節(6),(7)は、いつも平行四辺形をなしていなければならない。そして、さおと副さおがいつも平行で皿の支持棒(3)が厳密に垂直であれば、試料を皿の中心に載せても、また、中心からはずれた前後、左右の位置に載せた場合でも、いつも同じ測定値を示す。この機構をロバーバルの機構という。」(42頁下から13行?43頁4行、なお、各構成要素を示す番号は、図面に記載の通りの丸数字であるが、括弧数字で示した。)

(d) 参考文献
当審の職権調査による特開平8-68686号公報(以下、「参考文献」という。)であって、請求人による出願に係る「上皿はかり(発明の名称)」についての公開特許公報である。
「【従来の技術】上皿はかりあるいは上皿天びんにおいては、一般に、図4に正面図(A)および平面図(B)を例示するように、ロバーバル機構(パラレルガイドとも称される)10を介して試料皿20を支承することにより、試料皿20が水平を保ったまま上下に変位するように規制し、これによって試料皿20に対する試料の偏置に伴う誤差、いわゆる偏置誤差(四隅誤差とも言う)が生じないように考慮されている。
ロバーバル機構10は、両端部分にヒンジ部となる可撓部Eを備えた互いに平行な2本の梁11および12を介して可動部13を固定部14に連結した構造を持ち、試料皿20は可動部13に支承される。試料皿20に作用する荷重は、可動部13に連結されたレバー30を介してロードセルないしは電磁力発生機構等の荷重感応部40に伝達される。なお、小秤量のはかり等においては、レバーを介さずに可動部13が直接荷重感応部40に接続される場合もある。
ところで、このようなロバーバル機構10においては、一般に、2本の梁11と12の平行度が重要であり、これらの上下の梁11と12が正確に平行になっている条件下で、はじめて試料皿20上の荷重の偏置誤差が解消される。すなわち、図4(A)における寸法HとH′が一致するように厳密に調整しなければ偏置誤差が生じる。この調整は、特に精密な電磁力平衡型の電子天びん等においてはμmオーダー以下の精度が必要となる等、HとH′の寸法を測定することで実行し得る程度のものではなく、実際の調整作業では、試料皿20上に載せた荷重を移動させつつ、各位置で計量値が変化しないように平行度の微調整を行う。」(段落【0002】?【0004】)

c ロバーバル機構
(a) これら記載事項(a)ないし(d)によれば、ロバーバル機構とは、本件特許の出願前後を通じて、一般に、秤量皿に対する偏置荷重に伴う秤量誤差を解消することを目的として、秤量皿が設けられた可動柱を、上下に設けられた互いに平行な梁によって案内支持するようにしたものであり、ロバーバル機構においては、偏置荷重に伴う秤量誤差の解消、すなわち、試料皿のどの箇所に試料を載置しても正確な重量測定ができるようにするためには、試料皿が水平を保ったまま上下に変位するよう、秤量皿が設けられた可動柱の変位方向が常に垂直に維持されるべく、可動柱の上下に設けられた梁同士が常に平行に維持されている構造(一般に、「平行リンク機構」という。)が必要であるものといえる。
(b) すなわち、ロバーバル機構とは、秤量皿に対する偏置荷重に伴う秤量誤差を解消することを目的に、秤量皿が設けられた可動柱の変位方向が常に垂直に維持されるように、平行リンク機構を用いて、可動柱の上下に設けられた梁同士が常に平行に維持されるようにした構造であるといえる。

d そこで、甲第2号証に係る上皿天びんの機構についてみると、甲第2号証には、以下の記載がある。ここで、下線は当審が付したものである。
(a)「この考案は、上皿天びんに関するものである。上皿天びんはひょう皿部すなわち試料載置操作部には操作上障害となるものが全く除去されているから使用上理想的な構造で需要も多い。反面、ロバーバルの機構などに例示されるごとく少くとも複数個の桿およびこれらの桿間を結合する連結棒を必要とし、かつこれらの結合部は回動可能な支点構造を形成させるなど種々の複雑な構造が要求される。必然的にひょう量・感量・精度・耐久性などの性能面で各種制約を受け、また製造上も複雑な機構の加工および組立調整を余儀なくされる。
この考案はこれらの上皿天びんの持つ不利な要素を解消し、性能的に優れた上皿天びんを容易に製造しうるものである。」(前記「3(2)ア」)
(b)「・・・板バネ9,13,24,25は、一般に上皿はかりなどにおいてステーと呼ばれているものの機能を有しており、また13,24の板バネは装置の精度と強度の関係から設置されているが、構成上は必ずしも必要としないものである。」(前記「3(2)ウ」)
(c)「従来の高精度の上皿天びんにおいては主桿と副桿との連結部あるいは副桿と固定子などとの連結部を組み合せ的なナイフエツヂ機構を採用したり球軸受などの機構を採用して、たとえばロバーバル機構における完全なる平行四辺形の維持がなされるように種々の工夫がなされてきた。 これらは機構上も複雑であるばかりでなく水平垂直の平行度を維持した結合配置が困難なうえ各所に接触摩擦部分があるため測定精度の向上には一つの制限要素となるものである。 本願の考案は、桿と連結体(枠)との係合などを板バネを用いて支点部形成し、同時にこれを復元力を与えて常に零位置で測定するようになしたので、支点形成部の接触摩擦による誤差が皆無になる。板バネ自体の内部摩擦が影響する程度であるが、これらは前者の接触麻擦と比較すれば全く無視し得るものである。さらにまた本考案では常に零位置で測定するために、ロバーバル機構におけるような水平垂直の平行度を同時に満足させるような必要は全くなく、それぞれの桿あるいは連結体が、零平衡の測定がなされている状態において水平または垂直の平行度が維持されていれば千分(当審注:十分の誤記と認められる。)である。たとえば板バネによる支点形成部6,14,15,16,21は零平衡の状態において垂直に維持されるよう取り付けられればよく、またステーの作用をする板バネ9,25などは桿5,18と平行なように水平に維持されるよう取り付けられればよい。したがって、水平方向に張られている板バネ9,25の長さは適当な任意の長さで何ら差し支えない。また第1の桿5と第2の桿18とを連結する連結枠の取り付けにおいても、桿5の端面5’が垂直に平滑な面が得られれば十分である。」(前記「3(2)エ」)

e 上記(a)ないし(c)の記載から、甲第2号証に関し、次の技術事項を認定することができる。
(a) 大秤量側のロバーバル機構を構成すると請求人が主張する構成要素は、枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)であるから、枠(3)を支持する役割を果たす部材は、いずれも、板バネである。
(b) 同様に、小秤量側のロバーバル機構を構成すると請求人が主張する構成要素は、小皿受枠(20)、板バネ(24)及び板バネ(25)であるところ、小皿受枠(20)を支持する役割を果たす部材は、いずれも、板バネである。
(c) 甲第2号証に記載の上皿天びんは、ロバーバル機構に要求されるような桿に対する厳密な平行の維持を不要としたものである。(前記「d(a)、(c)」)
(d) そのため、板バネ(13)、板バネ(24)は、いずれも、ステーと呼ばれるものであり、必ずしも必要な部材ではない。(前記「d(b)」)
当審注:ステーとは、「stay」のことであり、一般に、機械や構造物を支持する部材、又はその一部の強度を補強する部材のことをいう。
(e) また、そのため、板バネ(9)、板バネ(25)の長さは適当な長さでよい。(前記「d(c)」)

f 検討
(a) そこで、甲第2号証記載の上皿天びん(引用発明2)の大秤量側における、請求人がロバーバル機構を構成すると主張する「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」について、以下、検討する。
仮に、「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」が請求人の主張のとおりロバーバル機構を構成しているとすれば、枠(3)を支持するのは、板バネ(13)及び板バネ(9)であるということになるところ、一般に、板バネは撓む性質を備えているから、大秤量用上皿1に秤量物が載置されると、その荷重の大きさに応じて沈むこととなるとともに、板バネ(13)は左下方向に向かって下がり、他方、板バネ(9)は右下方向に向かって下がることとなる。
つまり、板バネ(13)及び板バネ(9)によって支持される枠(3)は、下方に沈むとともにその上部が左方向に、その下部が右方向に少し傾くことになる。
これに対し、「秤量皿に対する偏置荷重に伴う秤量誤差を解消することを目的に、秤量皿が設けられた可動柱の変位方向が常に垂直に維持されるように、平行リンク機構を用いて、可動柱の上下に設けられた梁同士が常に平行に維持されるようにした構造」をロバーバル機構という(前記「c(b)」)のであるから、秤量物の重量により枠(3)が傾いてしまうような「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」は、まず、その機能からみて、ロバーバル機構とはいえない。
しかも、もし、「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」がロバーバル機構を構成するとすれば、上部の梁として重要な役割を果たすべき板バネ(13)は、甲第2号証の記載によれば、必ずしも必要ではないものとされ、下部の梁として重要な役割を果たすべき板バネ(9)は、適当な長さでよいとされている(前記「e(c)、(d)」)。
してみると、「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」は、「枠(3)、「必ずしも必要ではない」板バネ(13)及び「適当な長さでよい」板バネ(9)からなる構成」とみるべきものであり、この点からみても、もはやロバーバル機構とはいえない。
(b) 同様に、「小皿受枠(20)、「必ずしも必要ではない」板バネ(24)及び「適当な長さでよい」板バネ(25)からなる構成」も、ロバーバル機構とはいえない。
(c) ところで、甲第2号証記載の上皿天びん(引用発明2)の大秤量側についてみると、枠(3)は板バネ(6)を介して第1の桿(5)に連結されており、この連結箇所が力点として作用することから、秤量物の重量による枠(3)の傾きは、板バネ(13)及び板バネ(9)のみによって支持される場合に比べて、小さくなるものとも考えられる。
しかしながら、枠(3)の傾きが、実際は小さいものであったとしても、それは、あくまでも、枠(3)が板バネ(6)を介して第1の桿(5)に連結されている結果、枠(3)の水平方向への変位が制限されるからであり、してみると、本来のロバーバル機構が果たすべき作用効果とは、原理的に異なるから、結果的に枠(3)の変位方向が略垂直方向に維持されるとしても、そのことをもって、「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」がロバーバル機構を構成することの根拠とはならない。

g 請求人の主張について
請求人は、第1回口頭審理陳述要領書(請求人)において、甲第4号証を新たに提出するとともに、概略、以下(a)、(b)のとおり主張している。
(a) ロバーバル機構において、いわゆる平行リンク機構は必ずしも必要ではないこと、すなわち、平行リンク機構がなくても、可動柱の変位方向が常に垂直方向に維持されるよう、電磁力自動平衡機構により、常に、可動柱の上下に設けられた何らかの部材が平行に維持されていれば、そのような機構はロバーバル機構といえる。(第1回口頭審理陳述要領書(請求人)、第1回口頭審理調書)
(b) 大秤量、小秤量のそれぞれに対してロバーバル機構を設けることは、本件特許の出願当時に周知技術であった(甲第4号証)ことから、甲第2号証も、大秤量、小秤量のそれぞれに対してロバーバル機構を設けたことを前提としていることは明らかである。
(c) 検討
α そこで、上記(a)について検討するに、「秤量皿に対する偏置荷重に伴う秤量誤差を解消することを目的に、秤量皿が設けられた可動柱の変位方向が常に垂直に維持されるように、平行リンク機構を用いて、可動柱の上下に設けられた梁同士が常に平行に維持されるようにした構造」(前記「c(b)」)をロバーバル機構というのであり、いわゆる平行リンク機構は、乙第1号証、乙第2号証、乙第4号証及び参考文献によれば、ロバーバル機構を実現する上で必須のものといえる。しかも、乙第1号証、乙第2号証及び参考文献は、いずれも、請求人による出願に係る公開特許公報である。
また、一般に、天秤がロバーバル機構を備えることと、電磁力自動平衡機構を備えることとは、技術的に互いに別個の事柄であり、乙第4号証に記載の天秤のようにロバーバル機構を備えるが電磁力自動平衡機構を備えない天秤もあれば、乙第1号証、乙第2号証又は参考文献のように両者を備えた天秤(電磁力自動平衡機構を備えた天秤のことを、一般の天秤と区別するために、通常、「電子天秤」という。)もある。
すなわち、およそ、天秤は、平行リンク機構からなるロバーバル機構を備えるものであるところ、そのうち、電磁力自動平衡機構を備えるものを、一般に、電子天秤というのである。
よって、甲第2号証に記載の上皿天びん(引用発明2)は、電磁力自動平衡機構を備えていることにより、板バネ(13)及び板バネ(9)が、共に、平行になるように維持されているから、たとえ、「枠(3)、板バネ(13)及び板バネ(9)からなる構成」が平行リンク機構を構成していなくとも、ロバーバル機構といえる旨の上記主張(a)は、およそロバーバル機構というものについての技術常識に反した主張であり、採用できない。
β 次に、上記(b)について検討する。
甲第4号証は、昭和48年11月16日を出願日とする「計数はかり(発明の名称)」についての特許出願に係る公開特許公報であり、その出願公開日は昭和50年7月1日であるところ、他方、甲第2号証は、昭和45年6月2日に出願されたとみなされた実用新案登録出願に係る実用新案公報であり、その出願公告日は昭和53年1月19日である(出願公開はされていない。)。
よって、甲第2号証の出願時に甲第4号証は公知になっておらず、また、甲第2号証には甲第4号証を引用する旨の記載もない。さらに、甲第4号証の出願時に甲第2号証は公知となっておらず、よって、当然に、甲第4号証にも甲第2号証を引用する旨の記載はない。
してみると、両者が「はかり」に関する出願に係る公報である点で共通していたとしても、甲第2号証記載の発明と甲第4号証に記載の技術事項とは、互いに別個のものであって、両者を関係づける何らの必然性もないから、たとえ、甲第4号証から「ロバーバル機構(3),(4)を備えたグロス計量部と、ロバーバル機構(12),(13)を備えたサンプル計量部とからなる計数はかり。」(前記「3(4)甲第4号証について」)との技術事項を把握することができたとしても、甲第4号証の記載から甲第2号証に記載の上皿天びん(引用発明2)もロバーバル機構を備えているといえることの根拠にはならない。
よって、甲第2号証は、甲第4号証と同様にロバーバル機構を備えていることが明らかである、とする請求人の主張は採用できない。

h まとめ
以上のように、引用発明2は、そもそもロバーバル機構を備えているとはいえないから、まず、この点で前記相違点を埋めるものではない。

(イ)力点として作用する重点板バネ(21)が設けられた箇所が、本件特許発明1にいう「ビームの荷重負荷側端部の延長部」といえるか、について
a まず、本件特許発明におけるビームの荷重負荷側端部について検討する。
本件特許発明において、ビームの荷重負荷側端部とは、負荷された荷重がビームに対して力点として作用する箇所をいい、その延長部とは、ビームに対し作用点として作用する電磁部とは反対方向に、ビームを荷重負荷側端部から延長した部分をいうものと解される。
このことは、本件特許発明の第1の実施例(以下の図1を参照のこと。)において、ビーム(5)における吊りバンド(4)が接続された箇所から先に、すなわち電磁部とは反対側に設けられた部分が延長部5aとして示されており、同様に、第2の実施例(以下の図2を参照のこと。)及び第3の実施例(以下の図3を参照のこと。)において、共に、主ビーム(5)における接続部材(20)が接続された箇所から先に、すなわち電磁部とは反対側に設けられた部分が延長部5aとして示されていることからも明らかである。

b そこで、引用発明2について、この論点から検討する。
引用発明2において、大秤量用上皿に載置された試料の荷重が負荷される荷重負荷側端部は、第2の桿(18)の一端、すなわち、板バネ(16)と接続された箇所がこれに相当する。そして、第2の桿(18)の他端近傍に電磁力自動平衡機構(35-37)が設けられるとともに、その他端には、重点板バネ(21)を介して小皿受枠(20)が接続されている。
してみると、第2の桿(18)における小皿受枠(20)が重点板バネ(21)を介して接続される箇所は、荷重負荷側端部である第2の桿(18)における板バネ(16)と接続された箇所から見ると、電磁力自動平衡機構(35-37)が第2の桿(18)に作用する作用点と同じ側にあることとなる。
よって、引用発明2における荷重負荷側端部(第2の桿(18)における板バネ(16)が接続された箇所)から先の部分である第2の桿(18)全体が、第1の桿(5)の一端から荷重負荷側端部までの部分に対する延長部であるということはできないから、第2の桿(18)における小皿受枠(20)が重点板バネ(21)を介して接続されている箇所が、第1の桿(5)の一端から荷重負荷側端部までの延長部であるともいえない。

c まとめ
したがって、引用発明2において、小秤量の際、力点として作用する重点板バネ(21)が設けられた箇所は、本件特許発明1にいう「ビームの荷重負荷側端部の延長部」とはいえないから、引用発明2は、この点においても前記相違点を埋めるものではない。

(ウ)小秤量測定部は、大秤量測定部を校正するものとして機能し得るか、について
a 本件特許発明において、校正用の内蔵分銅を載置したことによるビームに対する荷重の負荷方向と、秤量皿に試料を載置したことによるビームに対する荷重の負荷方向とは同じ方向である。このことは、重量が既知の校正用分銅を用いて、真の測定値となるよう調整を行うという電子天秤の校正目的に適うものである。

b 一方、引用発明2において、小秤量用上皿(19)に載置された試料の荷重は、板バネ(21)に力点として作用し、板バネ(27-30)を支点として第2の桿(18)を回動させようと働くところ、この回動の方向は、大秤量用上皿(1)に載置された試料の荷重により板バネ(14)を支点として回動する第1の桿(5)の回動の方向とは逆方向である。
このように、引用発明2にあっては、大秤量用上皿(1)と小秤量用上皿(19)に、共に、試料が載置された場合、互いに相殺された試料の荷重が測定されることとなる。このことは、甲第2号証に、「操作上の他の効果としての風袋消去については、仮に大きい上皿1に200gの風袋を使用するときは小さい上皿19には20gの分銅載置でよい。逆に小さい上皿19に2gの風袋を使用するときは大きい上皿1に20gの分銅を載置すればよい。このことは大きい風袋のときは10分の1に縮小した比較的小さな消去分銅で簡単に行なえ、微細な風袋には10倍に拡大した適当な大きさの消去分銅で正確に消去が行なえるという効果が得られる。」(前記「3(2)カ」)との記載があることからもいえる。

c まとめ
してみると、引用発明2の小秤量用上皿(19)に校正用分銅を載置したとしても、大秤量測定部の秤量値を相殺することとなるから、引用発明1の校正機構に引用発明2の機構を適用したとしても、小秤量上皿への分銅の載置により、大秤量測定部の秤量値は、逆に、減じられることとなる。
よって、引用発明2は、大秤量測定部の秤量を校正する機能を奏し得ないから、引用発明2は、この点においても前記相違点を埋めるものではない。

エ まとめ
以上のとおり、引用発明2は、(ア)ロバーバル機構を備えているとはいえず、しかも、(イ)力点として作用する重点板バネ(21)が設けられた箇所が、本件特許発明1にいう「ビームの荷重負荷側端部の延長部」ともいえず、さらに、(ウ)小秤量測定部が、大秤量測定部の秤量を校正するものとして機能し得ないものである。
よって、上記3つの論点(ア)ないし(ウ)のいずれにおいても、引用発明2は前記相違点を埋めるものではない。
したがって、引用発明1に、たとえ引用発明2を適用することができたとしても、本件特許発明1の構成とはならない。

オ 予備的検討
念のために、甲第3号証に記載の発明(引用発明3)についても検討しておく。
引用発明3を再掲すれば以下のとおりである。
「弾性はり部(1,2)、固定柱部(3)及び可動柱部(4)からなるロバーバル機構Rと、可動柱部(4)に支承された皿(17)と、可動柱部(4)に対して弾性的連結部(7a,7b)によって連結され、弾性的支点(9)を介して支点支持部(11)に支承されたレバー(5)と、弾性的連結部(8a,8b)によってレバー(5)に連結され、弾性的支点(10)を介して固定柱部(3)に支承されたレバー(6)と、レバー(6)に固着されたアーム(20)とを備えた電子天びんであって、皿(17)に作用する荷重は弾性的連結部(7a,7b)を介してレバー(5)に伝達され、レバー(5)は弾性的連結部(7b)を力点として、支点(9)を中心に傾き、この傾きは弾性的連結部(8a,8b)を介してレバー(6)に伝達され、レバー(6)は弾性的連結部(8b)を力点として弾性的支点(10)を中心として傾き、この傾きがアーム(20)により荷重センサ(21)に伝達されるようにした電子天びん。」
また、甲第3号証には「本発明では、例えば実施例に対応する第1図、第2図に示すように、弾性はり部1,2、固定柱部3および可動柱部4からなるロバ-バル機構Rと、・・・」(前記「3(3)イ」)との記載もある。
してみると、引用発明3が備えるロバーバル機構の数は1つにとどまるものであるから、引用発明3をもってしても、前記相違点に係る3つの論点のいずれをも埋めることはできない。
よって、引用発明1に、たとえ引用発明2と引用発明3を適用することができたとしても、本件特許発明1の構成とはならない。

カ 作用効果
そして、本件特許発明1は、前記「2 本件特許発明の特徴」で説示したように、前記相違点である「当該延長部は別の副ロバーバル機構により案内支持されるよう構成され、かつ副ロバーバル機構を介して校正用の内蔵分銅の荷重がビーム延長部に負荷される」との構成を備えたことにより、「ビームに負荷する校正用の内蔵分銅の重心がずれてもこのずれによる応力の殆ど全てが副ロバーバル機構により吸収されるので、位置ずれ調整機構や複雑精密な内蔵分銅昇降機構を必要としない。」(前記「2(1)エ」)との本件特許明細書等に記載の作用効果を奏するものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、当業者といえども、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、また、引用発明1ないし引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。

5 本件特許発明2ないし6についての判断
(1)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1に「主ロバーバル機構側の秤量皿に代えて、又はこの秤量皿に加えて当該副ロバーバル機構に秤量皿が設けられた」との構成を実質的に付加したものに相当する。
よって、本件特許発明2も、本件特許発明1と同様に、当業者といえども、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、また、引用発明1ないし引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。

(2)本件特許発明3ないし6について
請求項3ないし6は、請求項1又は請求項2に直接あるいは間接的に従属する請求項である。
よって、本件特許発明3ないし6も、本件特許発明1と同様に、当業者といえども、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、また、引用発明1ないし引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する審判請求の理由によっては、本件特許1ないし本件特許6のいずれも、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたもの、とすることはできず、したがって、本件特許1ないし本件特許6のいずれも、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきもの、とすることはできない。
また、本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-06-15 
出願番号 特願平8-266586
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 雅之  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 下中 義之
古屋野 浩志
登録日 2005-02-10 
登録番号 特許第3645372号(P3645372)
発明の名称 電子天秤  
代理人 喜多 俊文  
代理人 江口 裕之  
代理人 清水 修  
代理人 阿久津 好二  
代理人 八木 秀人  
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