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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01L |
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管理番号 | 1220812 |
審判番号 | 不服2008-20842 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-14 |
確定日 | 2010-07-29 |
事件の表示 | 特願2003- 3146「火花点火式内燃機関の燃焼室構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日出願公開、特開2004-218438〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願(以下、「本願」という。)は、平成15年1月9日に出願されたものであり、平成19年10月15日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年3月31日付けの最後の拒絶理由通知に対して、同年6月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月10日付けで拒絶査定がなされ、同年8月14日付けで同拒絶査定に対する不服審判が請求されるとともに、同年8月21日付けで手続補正書が提出されて、明細書を補正する手続補正がなされ、その後、当審における平成21年9月8日付けの書面による審尋に対して、同年11月11日付けで回答書が提出されたが、平成22年1月12日付けで補正の却下の決定がなされて、上記平成20年8月21日付けの手続補正が却下され、平成22年1月26日付けの拒絶理由通知に対して、同年4月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されて、明細書を補正する手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成22年4月2日付け手続補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 カムシャフトに係合する筒状のバルブリフタとバルブスプリングとにより開閉駆動される吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の同種バルブを、気筒毎に一対ずつ備え、かつ燃焼室を取り囲むように複数本のヘッドボルトが配置された火花点火式内燃機関の燃焼室構造であって、 前記一対の同種バルブを駆動する一対のバルブリフタの中心軸を、カムシャフト軸方向に互いに近付くように、各々のバルブのバルブステム中心軸に対し、カムシャフト軸方向に沿って燃焼室中心寄りにオフセットして配置したことを特徴とする火花点火式内燃機関の燃焼室構造。」 3.引用文献 平成22年1月26日付けで当審において通知した拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-345812号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 「【0009】 【発明の実施の形態】図1には本発明の一実施形態例に係るバルブリフタの概略構成、図2にはバルブリフタが適用される内燃機関の要部構成、図3には図2中の平面視状況を示してある。 【0010】…(略)…図1に示すように、バルブリフタ1は、内燃機関のシリンダヘッド11の上方に配置されたカム2に接触するタペット部3を備え、タペット部3はカム2のカム山に接する部分が円形の略平面をなしており、タペット部3とカム2のカム山とは線接触となる。また、バルブリフタ1は、タペット部3の下部に連続して中空円筒状のガイド部4を備え、ガイド部4はシリンダヘッド11に摺動自在に収容されている。…(略)… 【0012】バルブリフタ1のガイド部4内にはバルブ5の軸部の頂部が当接して配され、バルブ5は図示しないばねによって上方側に付勢されている。つまり、バルブリフタ1は、カム2とバルブ5との間に配置されている。カム2の回転によりカム山がタペット部3に接触してバルブリフタ1が押し下げられ、バルブ5はばねの付勢力に抗してバルブリフタ1と共に押し下げられて開弁動作する。…(略)… 【0013】…(略)…図2に示すように、内燃機関のシリンダブロック12にはシリンダ13が設けられ、シリンダ13にはピストン14が往復動自在に備えられている。…(略)…シリンダ13の燃焼室10には吸気バルブシート15及び排気バルブシート16が設けられ、吸気バルブシート15は吸気バルブ17(バルブ5)により開閉自在となり、排気バルブシート16は排気バルブ18(バルブ5)により開閉自在となっている。 【0014】シリンダブロック12とシリンダヘッド11とはヘッドボルト9で結合されている。シリンダヘッド11にはバルブリフタ1が吸気バルブ17(排気バルブ18)の軸線に沿って傾斜して配置され、ガイド部4がシリンダヘッド11に摺動自在に支持されている。バルブリフタ1には吸気バルブ17(排気バルブ18)がリテーナ19及びばね20を介して閉弁方向に付勢された状態で配設され、吸気バルブ17及び排気バルブ18は所定の挟角θを持ってシリンダヘッド11に設けられている。…(略)… 【0017】図3に示すように、バルブリフタ1のタペット部3の径Rを吸気バルブ17(排気バルブ18)の軸動方向に延長した仮想円柱と、ヘッドボルト9のボルト座面加工径dとが、平面視で重なった状態で配置され、ヘッドボルト9を軸上から見た時にバルブリフトのない状態でヘッドボルト9はタペット部3とは重なっていない状態になっている。即ち、ヘッドボルト9のピッチをpとし、タペット部3のピッチをPとした場合、P+R>p-d の関係となっている。 【0018】バルブリフタ1が傾斜して配置されているので、仮想円柱とボルト座面加工径dとが平面視で重なっていても、ヘッドボルト9がバルブリフタ1に干渉することなくヘッドボルト9を締め付けることができる。仮想円柱とボルト座面加工径dとを平面視で重なるようにしたことで、ヘッドボルト9のピッチpを小さくすることができ、小排気量の内燃機関であっても、高いエンジン性能を確保したバルブリフト量(高リフト量)を実現することができる。」(段落【0009】ないし【0018】) 4.当審の判断 (1)引用発明 引用文献には、上記3.の記載事項の段落【0009】のとおり、一実施形態例に係るバルブリフタが適用される内燃機関の発明が記載されており、そのバルブリフタの概略構成について、同じく段落【0010】及び【0012】のとおり、また内燃機関の要部構成について、同じく段落【0013】及び【0014】のとおり、さらに内燃機関の平面視状況について、同じく段落【0017】及び【0018】のとおり、それぞれ記載されている。 そして、引用文献の図2及び図2中の平面視状況説明図である図3からみて、燃焼室10を取り囲むように4本のヘッドボルト9が配置され、ヘッドボルト9を、カム2軸方向に配置したこともわかる。 そうすると、上記3.の記載事項及び図面を総合すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「カム2に接触する中空円筒状のバルブリフタ1と共に押し下げられて開弁動作され、ばね20により閉弁方向に付勢される吸気バルブ17又は排気バルブ18であるバルブ5を、シリンダ13に2つ備え、かつ燃焼室10を取り囲むように4本のヘッドボルト9が配置された内燃機関であって、 バルブリフタ1を傾斜して、ヘッドボルト9を、カム2軸方向のピッチを小さくするように配置した内燃機関。」 (2)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「カム2」は、本願発明における「カムシャフト」に相当し、以下同様に、「バルブリフタ1」は「バルブリフタ」に、「ばね20」は「バルブスプリング」に、「吸気バルブ17」は「吸気バルブ」に、「排気バルブ18」は「排気バルブ」に、「バルブ5」は「同種バルブ」に、「シリンダ13」は「気筒」に、「燃焼室10」は「燃焼室」に、「ヘッドボルト9」は「ヘッドボルト」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明における「カム2に接触する中空円筒状のバルブリフタ1と共に押し下げられて開弁動作され、ばね20により閉弁方向に付勢される吸気バルブ17又は排気バルブ18であるバルブ5」は、その機能又は構造等からみて、本願発明における「カムシャフトに係合する筒状のバルブリフタとバルブスプリングとにより開閉駆動される吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の同種バルブ」に相当し、同じく引用発明における「カム2軸方向のピッチを小さくするように配置した」は、その機能又は構造等からみて、本願発明における「カムシャフト軸方向に近付くように配置した」に相当する。 また、引用発明における「シリンダ13に2つ備え」は、「気筒に一対備え」の限りにおいて、本願発明における「気筒毎に一対ずつ備え」に相当し、同じく引用発明における「内燃機関」は、「内燃機関」の限りにおいて、本願発明における「火花点火式内燃機関の燃焼室構造」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「カムシャフトに係合する筒状のバルブリフタとバルブスプリングとにより開閉駆動される吸気バルブ及び排気バルブの少なくとも一方の同種バルブを、気筒に一対備え、かつ燃焼室を取り囲むように複数本のヘッドボルトが配置された内燃機関。」である点で一致し、以下のア.ないしウ.の点で相違する。 ア.相違点1 本願発明においては、「同種バルブ」を、「気筒毎に一対ずつ備え」るのに対して、 引用発明においては、「同種バルブ」を、「気筒に一対備え」る点(以下、「相違点1」という。)。 イ.相違点2 本願発明は、「火花点火式内燃機関の燃焼室構造」に関するものであるのに対して、 引用発明は、「内燃機関」に関するものである点(以下、「相違点2」という。)。 ウ.相違点3 本願発明においては、「一対の同種バルブを駆動する一対のバルブリフタの中心軸を、カムシャフト軸方向に互いに近付くように、各々のバルブのバルブステム中心軸に対し、カムシャフト軸方向に沿って燃焼室中心寄りにオフセットして配置した」のに対して、 引用発明においては、「バルブリフタを傾斜して、ヘッドボルトを、カムシャフト軸方向に互いに近付くように配置した」点(以下、「相違点3」という。)。 (3)判断 上記3.の相違点1ないし3について以下に、検討する。 ア.相違点1について 「同種バルブ」を、「気筒毎に一対ずつ備えること」は、本願出願前における周知技術(例えば、当審において通知した拒絶理由に引用された特開平6-42352号公報の【要約】等参照。)である。 そうすると、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、単に周知技術を付加した程度のことにすぎない。 イ.相違点2について そもそも、内燃機関が「燃焼室構造」を有することは、当業者に明らかな技術的事項であって、内燃機関としての「火花点火式内燃機関の燃焼室構造」も、本願出願前における周知技術(例えば、上記(1)の特開平6-42352号公報の【要約】等参照。)である。 そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、単に周知技術を付加した程度のことにすぎない。 ウ.相違点3について カムシャフトに対するバルブリフタの水平位置の調整に際して、「バルブリフタを傾斜して配置すること」は、本願出願前における周知技術(例えば、当審において通知した拒絶理由に引用された特開平6-50111号公報の段落【0002】又は実用新案登録第2501649号公報の【請求項1】等参照。)であるとともに、「バルブリフタをオフセットして配置すること」も、本願出願前における周知技術(例えば、上記特開平6-50111号公報の段落【0012】又は特開2002-303108号公報の段落【0067】等参照。)である。 そして、引用発明におけるカムシャフトに対するバルブリフタの水平位置調整に際して、「バルブリフタを傾斜して配置すること」に換えて、「バルブリフタをオフセットして配置すること」を用いることは、周知技術による置換であって、その際に、引用発明における水平位置調整の目的である「ヘッドボルトを、カムシャフト軸方向に互いに近付くように配置」するために、「一対の同種バルブを駆動する一対のバルブリフタの中心軸を、カムシャフト軸方向に互いに近付くように配置したヘッドボルトと重ならないように、各々のバルブのバルブステム中心軸に対し、オフセットして配置」することは、当然であるから、「一対の同種バルブを駆動する一対のバルブリフタの中心軸を、カムシャフト軸方向に互いに近付くように、各々のバルブのバルブステム中心軸に対し、カムシャフト軸方向に沿って燃焼室中心寄りにオフセットして配置」とすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。 そうすると、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、周知技術による置換及びそれに伴う設計変更程度のことであって、当業者が容易に想到し得たものである。 また、本願発明を全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測できない顕著な作用効果を奏するものとは認められない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、当審における拒絶理由により拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-27 |
結審通知日 | 2010-06-01 |
審決日 | 2010-06-14 |
出願番号 | 特願2003-3146(P2003-3146) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 敏行 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
志水 裕司 加藤 友也 |
発明の名称 | 火花点火式内燃機関の燃焼室構造 |
代理人 | 富岡 潔 |
代理人 | 橋本 剛 |
代理人 | 小林 博通 |