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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D |
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管理番号 | 1220818 |
審判番号 | 不服2008-25393 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-02 |
確定日 | 2010-07-29 |
事件の表示 | 特願2003-144515「プレス成形金型装置およびプレス成形方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-344925〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成15年5月22日の出願であって、平成20年2月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月14日に手続補正がなされ、同年8月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月2日に拒絶査定に対する審判請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成22年3月1日に審尋がなされ、同年5月6日に回答書が提出されたものである。 第2.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲、及び関連する発明の詳細な説明について補正をするものであって、補正前後の記載は、以下のとおりである。 (1)補正前 「【請求項1】 ポンチ、ダイ及びブランクホルダーを有するプレス成形金型において、下死点手前の全成形高さの2?30%から下死点まで成形に連動して反力を発生するさらばねを上型または下型に設けることを特徴とするプレス成形金型装置。 【請求項2】 ポンチ、ダイ及びパッドを有するプレス成形金型において、下死点手前の全成形高さの2?30%から下死点まで成形に連動して反力を発生するさらばねを上型または下型に設けることを特徴とするプレス成形金型装置。 【請求項3】 請求項1記載のプレス成形金型を用いたプレス成形方法において、下死点手前の全成形高さの2?30%から下死点まで素材に加わるしわ押さえ力をクッションピンによる荷重の1.2倍以上に増加して成形することを特徴とするプレス成形方法。 【請求項4】 請求項2記載のプレス成形金型を用いたプレス成形方法において、下死点手前の全成形高さの2?30%から下死点まで素材にしわ押さえ力を付与しながら成形することを特徴とするプレス成形方法。」 (2)補正後 「【請求項1】 ポンチ、ダイ及びパッドを有するプレス成形金型において、下死点手前の全成形高さの2?30%から下死点まで成形に連動して反力を発生するさらばねを、成形中の素材のフランジ部の上方に相当する上型または成形中の素材のフランジ部の下方に相当する下型に設けることを特徴とする曲げ成形用プレス成形金型装置。 【請求項2】 請求項1記載のプレス成形金型を用いたプレス成形方法において、下死点手前の全成形高さの2?30%から下死点まで素材のフランジ部にしわ押さえ力を付与しながら曲げ成形することを特徴とするプレス成形方法。」 2.補正の適否 特許請求の範囲に関する本件補正は、請求項1、3を削除し、請求項2を請求項1として、「さらばねを上型または下型に設ける」を「さらばねを、成形中の素材のフランジ部の上方に相当する上型または成形中の素材のフランジ部の下方に相当する下型に設ける」とし、「プレス成形金型装置」を「曲げ成形用プレス成形金型装置」とし、請求項4を請求項2として、「素材」を「素材のフランジ部」とし、「成形」を「曲げ成形」とするものである。 よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」、及び同第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。 (1)補正発明 補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)の請求項1のとおりのものと認める。 (2)刊行物に記載された発明 これに対し、原査定の拒絶理由で引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-321013号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア.段落0001?0002 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、プレス加工時の成形作業における、残留応力の除去作業を効率的に行うための技術に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、車両の軽量化を図るため、車両のメンバー、クロス類のプレス成形品を中心として、軽量化しつつ強度を高める施策がなされており、材料についても高強度化が促進されている。しかしながら、材料の高強度化は、成形不良であるスプリングバック、そり、ひねり等(以下、「スプリングバック等」という。)を、より顕著に発生させることになる。図18には、いわゆる「ハット断面形状」を有するメンバーW_(0)を示している。また、図19には、スプリングバック等の生じていないときの断面形状を有するメンバーW_(0)を点線で、スプリングバック等を生じたメンバーW_(0)’を実線で示している。このような成形不良は、成形時(絞り、曲げ)に、金型のダイR部での曲げ・曲げ戻しにより残留応力(板厚の内外での応力差)が発生することに起因し、材料の高強度化が進む程、顕著に発生するものである。」 イ.段落0026 「【0026】また、本発明の請求項11に係るプレス金型は、請求項1から10のいずれか1項記載のプレス金型において、曲げ成形用金型であることを特徴とする。本発明によれば、曲げ成形工程中に、型締めによって、前記ワークを必要な製品形状に成形し、更に、製品形状の縦壁部に張力を付与する工程を、連続的に行うことができる。」 ウ.段落0033?0037 「【0033】図1から図4には、本発明の第1の実施の形態に係る絞り成形用金型と、当該絞り成形用金型によってワークを必要な製品形状に成形し、更に、製品形状の縦壁部に張力を付与する工程を連続的に行う手順を示している。 【0034】当該絞り成形用金型は、上型1と下型2とを有する一対の金型構造を有し、下型2のポンチ2Aの周囲を囲む位置に、クッションリング3(以下、「クッション」という。)を備えている。そして、上型1に対するクッション3の反力を発生させるために、2種類の弾性力発生部材4,5(以下、「バネ」と称す。)を有している。バネ4,5は、いずれもタンカシリンダー、ウレタンストリッパー等の、弾性により反力を発生する部材、構造物等が用いられている。なお、後述する他の実施例において用いられる各バネも、これらのバネ4,5と同様のものである。 【0035】・・・。 【0036】ここで、図1?図4を参照しながら、ワークWに対し、絞り加工を施すと共に、型締めによって、ワークWに残留応力を除去するための張力を付与する手順を説明する。 【0037】まず、図1に示すように、ワークWを下型2のポンチ2Aおよびクッション3の上にセットする。続いて、図2に示すように、上型1を下降させて、型締めを開始する。このとき、ワークWの製品部分または製品部分に隣接する極小範囲を、上型1とクッション3とで挟持する。そして、図3に示すように、上型1を下降させて絞り成形がある程度進行した時点で、バネ5は初めてクッション3に当接し、その弾性力をクッション3に作用させる。そして、上型1に対する下型2のクッション3の反力を、型締途中で増大させる。さらに、上型1に対する下型2のクッション3の反力を増大させた状態を維持しながら、図4に示す型締完了状態に至るものである。」 エ.段落0043?0044 「【0043】さて、図5には、本発明の第1の実施の形態に係る絞り成形用金型を、曲げ成形用金型に応用した場合を示している。上型11は、パッド16と、パッド16の反力を発生させるためのバネ17を有している。また、下型12のポンチ12Aに隣接するように、クッション13が設けられている。クッション13を支えるバネ14は、上型11を下降させて曲げ成形がある程度進行した時点(図5に示す時点)で、初めてクッション3がワークWに当接する高さに、クッション3を支持している。 【0044】当該曲げ成形用金型においても、クッション13、バネ14,15は、図5に示す状態から曲げ成形がさらに進行して、上型11とクッション13とでワークWを挟持するに至った時点で、ワークWの製品部分または製品部分に隣接する極小範囲に対する拘束力を増大させる、「拘束力制御手段」を構成している。そして、かかる拘束力制御手段により、上型1および下型2の縦壁成形面でワークWを必要な製品形状に成形した状態で、製品形状の縦壁部Wbに必要な張力を付与して残留応力を適切に除去し、残留応力に起因する成形不良を解消することができる。よって、図1?図4に示す絞り成形用金型と同様の作用効果を、曲げ成形においても得ることが可能である。」 オ.図5 バネ14が、成形中のワークWのフランジ部の下方に相当する下型12に設けられていることが看取できる。 ここで、曲げ成形用金型において、クッション13を支えるバネ14は、上記エ.段落0044の「図1?図4に示す絞り成形用金型と同様の作用効果を、曲げ成形においても得る」ものであるから、絞り成形用金型についての上記ウ.段落0037の記載を踏まえると、「反力を曲げ途中で増大させ、増大させた状態を維持」するものである。 これら事項を、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。 「ポンチ12A、上型11及びパッド16を有する曲げ成形用金型において、曲げ成形がある程度進行した時点から完了状態まで反力を曲げ途中で増大させ、増大させた状態を維持するバネ14を、成形中のワークWのフランジ部の下方に相当する下型12に設ける曲げ成形用金型装置。」 (3)対比 補正発明と刊行物1発明とを対比する。 刊行物1発明の「上型11」は補正発明の「ダイ」に相当し、同様に、「曲げ成形用金型」は「曲げ成形用プレス成形金型」に、「曲げ成形がある程度進行した時点」は「下死点手前」に、「完了状態」は「下死点」に、「ワークW」は「素材」に、相当する。 刊行物1発明の「反力を曲げ途中で増大させ、増大させた状態を維持する」とは、増大した反力は新たな反力の発生とみることができるから、補正発明の「成形に連動して反力を発生する」に相当する。 刊行物1発明の「バネ14」と補正発明の「さらばね」とは、「ばね」である限りにおいて一致する。 したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。 「ポンチ、ダイ及びパッドを有するプレス成形金型において、下死点手前から下死点まで成形に連動して反力を発生するばねを、成形中の素材のフランジ部の下方に相当する下型に設ける曲げ成形用プレス成形金型装置。」 そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。 相違点1:下死点手前について、補正発明は「全成形高さの2?30%」であるが、刊行物1発明は不明である点。 相違点2:ばねについて、補正発明は「さらばね」であるが、刊行物1発明は「バネ14」である点。 (4)相違点の検討 相違点1について検討する。 刊行物1発明を実施する際には、下死点手前についても、具体的に特定する必要があり、その際、最適な範囲とすることは、当然考慮すべき事項である。 また、本願の発明の詳細な説明の段落0019には、測定結果として「下死点から10mm」が記載されているのみであり、「全成形高さの2?30%」とすることにより、臨界的効果が生じるとも認められない。 よって、「全成形高さの2?30%」とすることは、設計的事項にすぎない。 相違点2について検討する。 刊行物1発明の「バネ14」は、刊行物1の段落0034に記載されているように、「弾性により反力を発生する部材」であれば良い。 「弾性により反力を発生する部材」として、「さらばね」は、原査定で引用した特開平4-367327号公報の段落0016の「皿ばね27」、実願昭60-172637号(実開昭62-82126号)のマイクロフイルムの第6ページ第2?3行の「皿ばね」にみられるごとく周知である。 したがって、刊行物1発明の「バネ14」として、「さらばね」とすることは、適宜選択しうる設計的事項にすぎない。 請求人は、「短い距離での反発力が高い」ことによる効果を主張するが、かかる効果は「さらばね」を利用したことにより、予想されるものにすぎず、格別なものとは認められない。 また、これら相違点を総合勘案しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。 以上、補正発明は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成20年4月14日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。 請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)の請求項2のとおりである。 2.刊行物等 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。 3.対比・検討 本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。 そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-26 |
結審通知日 | 2010-06-01 |
審決日 | 2010-06-14 |
出願番号 | 特願2003-144515(P2003-144515) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B21D)
P 1 8・ 575- Z (B21D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宇田川 辰郎 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
遠藤 秀明 千葉 成就 |
発明の名称 | プレス成形金型装置およびプレス成形方法 |
代理人 | 田村 弘明 |
代理人 | 渡辺 良幸 |
代理人 | 吉迫 大祐 |
代理人 | 津波古 繁夫 |