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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1220875
審判番号 不服2009-3587  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-18 
確定日 2010-07-30 
事件の表示 特願2001-328237「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 7日出願公開、特開2003-126435〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成13年10月25日の出願であって、最初の拒絶理由通知に対応して平成20年2月20日に手続補正書が提出され、その後最後の拒絶通知に対応して同年6月6日に手続補正書が提出され、その後再度の最初の拒絶理由通知に対応して同年12月8日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成21年2月18日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年12月25日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成22年3月3日に回答書が提出されている。

第二.平成21年2月18日付の手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年2月18日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「3つの表示領域にそれぞれ複数種類のキャラクタ画像で構成される識別情報を変動表示可能な表示装置と、該表示装置に表示される前記識別情報を変動表示させた後に、表示結果を確定表示させる制御を実行する表示制御手段と、前記表示装置に確定表示される前記識別情報の表示結果が、予め定められた特定表示結果として前記3つの表示領域に同一の前記識別情報が確定表示された場合に、遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能な遊技制御手段とを含む遊技機において、
前記表示制御手段は、前記表示装置に表示結果を確定表示させる以前に、前記3つの表示領域に前記識別情報を順番に一旦停止表示させる一旦停止制御手段を含み、
該一旦停止制御手段は、一旦停止表示される前記識別情報を、各識別情報のキャラクタ画像のそれぞれが備える予め定めた第1、2及び第3の特有動作を行うように制御可能で、前記3つの表示領域の識別情報が変動表示を開始してから前記識別情報の表示結果が確定表示されるまでの期間において、最初に一旦停止表示した1番目の識別情報のキャラクタ画像を、前記第1の特有動作を行い得るように制御し、次に一旦停止表示した2番目の識別情報のキャラクタ画像が先に一旦停止表示している前記1番目の識別情報のキャラクタ画像と同一ではない場合には、一旦停止表示している前記1番目の識別情報のキャラクタ画像と前記2番目の識別情報のキャラクタ画像とが互いに前記第1の特有動作を異なるタイミングで繰返す非同期動作を行うように制御する一方、前記2番目の識別情報のキャラクタ画像が前記1番目の識別情報のキャラクタ画像と同一である場合には、一旦停止表示した前記1、2番目の識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1の特有動作を同じタイミングで行うリーチ同期動作を行い、続いて、最後に一旦停止表示した3番目の識別情報が先に一旦停止表示している前記1、2番目の識別情報のキャラクタ画像と同一ではないときには、前記リーチ同期動作に続いて、一旦停止表示している前記第1、2及び第3の識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1の特有動作と異なる動作の前記第2の特有動作を同じタイミングで行う同期動作を行う一方、最後に一旦停止表示した前記3番目の識別情報のキャラクタ画像が先に一旦停止表示している前記1、2番目の識別情報のキャラクタ画像と同一であるときには、前記リーチ同期動作に続いて、一旦停止表示している前記第1、2及び第3の識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1および第2の特有動作とは異なる動作の前記第3の特有動作を同じタイミングで行う同期動作を行うように制御することを特徴とする遊技機。」

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、「前記識別情報を一旦停止表示させる」を「前記識別情報を順番に一旦停止表示させる」と限定し、「最初に一旦停止表示した1番目の識別情報のキャラクタ画像」について、「最初に一旦停止表示した1番目の識別情報のキャラクタ画像を、前記第1の特有動作を行い得るように制御し」と限定したものであり、その他の補正については、実質的に内容を変更するものではないから、本件補正は請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-224787号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
記載事項1
「【0029】この始動口7への遊技球の入賞(特別図柄始動記憶)に基づき、所定の乱数が抽出され、大当たりの抽選が行われると共に、可変表示装置4の変動表示ゲーム(可変表示ゲーム)つまり可変表示装置4の複数の可変表示領域にそれぞれ複数の識別情報(図柄)の変動表示(可変表示)が行われる。この場合、これらの識別情報の変動表示が停止する過程でリーチ状態(例えば、最後に停止する可変表示領域の識別情報の停止結果によって所定の大当たりの組合せが発生する可能性のある状態)が発生すると、所定のリーチ遊技表示(リーチ遊技)が行われる。そして、大当たりの抽選結果が大当たりであれば、識別情報が所定の大当たりの組合せで停止され、大当たり(特別遊技状態)が発生される。この場合、確率変動の大当たりであれば、識別情報が特定の大当たりの組合せで停止され、大当たり(特別遊技状態)が発生されると共に、確率変動状態が発生される。
【0030】大当たりが発生すると、特別変動入賞装置5が所定期間にわたって、球を受け入れない閉状態(遊技者に不利な状態)から球を受け入れやすい開状態(遊技者に有利な状態)に変換される特別遊技が行われる。」
記載事項2
「【0042】次に、可変表示装置4の遊技表示について説明する。可変表示領域は、例えば、左、中、右の可変表示領域とする。
【0043】遊技制御装置100は、始動口7への遊技球の入賞(特別図柄始動記憶)に基づき抽出した乱数を基に、変動表示ゲームが大当たりかどうか、確率変動の大当たりかどうかを決定すると共に、リーチの有無、左、中、右の各可変表示領域の停止図柄等を決定して、変動開始コマンドおよび該当コマンドを表示制御装置200に送信する。
【0044】表示制御装置200は、これらのコマンドを受信すると、表示用の乱数を抽出して、その乱数およびコマンドに基づき、図柄の変動表示パターン、リーチパターン(リーチ有のとき)、確率変動用の再変動表示パターン(大当たりのとき)、背景画、キャラクタ、文字情報等の装飾演出パターン等を設定すると共に、変動表示ゲームの所定の時期に所定の可変表示領域の所定の図柄の予告暗示要素の表示態様を変化させるかどうか、どの表示態様に変化させるかどうかを設定して、左、中、右の各可変表示領域の図柄の変動表示ならびに演出表示を開始する。なお、リーチは特殊スペシャルリーチ(大当たりのときほど発生しやすい)ほど、低い確率にて発生するように設定している。
【0045】図3に変動表示ゲームの流れを示す。左、中、右の各可変表示領域の図柄(左図柄、中図柄、右図柄)の変動表示の開始後、リーチ(左図柄、右図柄が同一図柄で停止または仮停止等)が発生するか否かによって、進行分岐点Iにおいてゲームの進行が分岐する。リーチが発生しない場合、ハズレAとなる。
【0046】リーチが発生した場合、これが発展リーチになるか否かによって、進行分岐点IIにおいてゲームの進行が分岐する。発展リーチは、基準のリーチからスペシャルリーチに発展する。
【0047】リーチ時は中図柄の変動表示を極低速で行い、発展リーチになると、中図柄の変動表示を極低速で行ったり、仮停止したり、高速変動したり、あるいは既に停止(または仮停止)している左図柄、右図柄の再度の変動表示等を行う。
【0048】これらのリーチ後、大当たり(左図柄、中図柄、右図柄が同一図柄で停止等)になるか否かによって、進行分岐点IIIにおいてゲームの進行が分岐する。大当たりにならない場合、ハズレBとなる。
【0049】大当たりになった場合、図柄の再変動表示を行い、これが確率変動の大当たり(左図柄、中図柄、右図柄が確率変動の同一図柄で停止)になるか否かによって、進行分岐点IVにおいてゲームの進行が分岐する。確率変動の大当たりでない場合、通常当たりCとなり、確率変動の大当たりの場合、確変当たりDとなる。
【0050】図4はこれらの進行分岐点I?IVに対して、表示制御装置200が行う予告の有無つまり図柄の予告暗示要素の表示態様の変化の有無を示すものである。図4中、〇は予告有りを、×は予告無しを示す。
【0051】前図3のように、ハズレAの場合は、進行分岐点Iに対して、図柄の予告暗示要素の表示態様を変化させるときと、変化させないときの2組ある。
【0052】ハズレBの場合は、進行分岐点I?IIIに対して、図柄の予告暗示要素の表示態様を変化させるときと、変化させないときの8組ある。
【0053】通常当たりC、確変当たりDの場合は、進行分岐点I?IVに対して、図柄の予告暗示要素の表示態様を変化させるときと、変化させないときの16組ある。
【0054】表示制御装置200は、ハズレAの場合はその2組の中からいずれかを、ハズレBの場合はその8組の中からいずれかを、通常当たりC、確変当たりDの場合はその16組の中からいずれかを、前述の表示用の乱数に基づき選択する。」
記載事項3
「【0061】図5?図12に表示例を示す。図5、図6は、左、中、右の各可変表示領域の図柄の変動表示の開始時に中図柄[5]の右下部のハートの予告暗示要素Pを大きく表示すると共に収縮動してリーチ予告を行い、変動表示を開始するものである。図7は、左図柄[5]の停止時にその右下部のハートの予告暗示要素Pを大きく表示すると共に収縮動してリーチ予告を行うもの、図8は、リーチの発生時にリーチ発生図柄(左図柄[5]、右図柄[5])の右下部のハートの予告暗示要素Pを大きく表示すると共に収縮動して大当たり予告を行うものである。また、図9は、左図柄[救急車]の停止時に天井部の予告暗示要素Qの警報ランプを点滅すると共に予告暗示要素Rとしての車体を振るわせてリーチ予告を行うもの、図10は、リーチの発生時にリーチ発生図柄(左図柄[救急車]、右図柄[救急車])の天井部の予告暗示要素Qの警報ランプを点滅すると共に予告暗示要素Rとしての車体を振るわせて大当たり予告を行うもの、図11は、大当たり時に大当たり発生図柄(左図柄[救急車]、中図柄[救急車]、右図柄[救急車])の天井部の予告暗示要素Qの警報ランプを点滅すると共に予告暗示要素Rとしての車体を振るわせて確率変動大当たり予告を行うものである。また、図12は、大当たり時に大当たり発生図柄の左図柄[薬瓶]、右図柄[薬瓶])の予告暗示要素Sの蓋を開動作して確率変動大当たり予告を行うものである。」
記載事項4
「【0070】また、進行分岐点毎に、それぞれ予告の信頼度に応じて、予告暗示要素Pのハートの収縮動の速さ、予告暗示要素Q,Rの救急車の警報ランプの点滅速さ、車体の振動速さ等を速くするようにしても良い。また、複数の識別情報の予告暗示要素によって予告を行う場合、識別情報毎に予告暗示要素P,Q,R,Sを同期あるいは非同期にてそれぞれ収縮動、点滅、振動、開動作等の動作を行うようにしても良い。
【0071】このようにすれば、予告ならびに遊技の興趣を一層向上できる。」
と記載されている。
さらに、図面には以下のものが図示されている。
図3には、「進行分岐点I」において「リーチ有り?」で分岐し、「進行分岐点II」において「発展リーチ?」で分岐する点が図示されている。
図5?図12には、「4」、「5」の数字、及び救急車に、目、ハート(数字の場合のみ)等を表示したキャラクタの図柄が横方向に3つ表示されたものが図示されている。
図7、図9には、左図柄のみが停止した状態が表示され、図8、図10には、左図柄と右図柄とが停止した状態が表示され、図11、図12には、左図柄、中図柄、右図柄が同一の図柄で横方向一列に停止した状態が表示されたものが図示されている。
よって、摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「左、中、右の3つの可変表示領域にそれぞれ複数の識別情報(図柄)の変動表示が行われる可変表示装置4と、これらの識別情報の変動表示が停止する過程でリーチ状態が発生すると、所定のリーチ遊技表示が行われ、そして、大当たりの抽選結果が大当たりであれば、識別情報が所定の大当たりの組合せで停止されて大当たりが発生され、左図柄、右図柄が同一図柄で停止または仮停止となるリーチが発生しない場合、ハズレAとなり、リーチ後、左図柄、中図柄、右図柄が同一図柄で停止となる大当たりにならない場合、ハズレBとなり、大当たりが発生すると、特別変動入賞装置5が所定期間にわたって、球を受け入れない閉状態から球を受け入れやすい開状態、すなわち、遊技者に有利な状態に変換される特別遊技が行われる、パチンコ遊技機において、
リーチ予告については、左図柄[5]の停止時にその右下部のハートの予告暗示要素Pを大きく表示すると共に収縮動してリーチ予告を行うものや、左図柄[救急車]の停止時に天井部の予告暗示要素Qの警報ランプを点滅すると共に予告暗示要素Rとしての車体を振るわせてリーチ予告を行うものがあり、
大当たり予告については、リーチの発生時のリーチ発生図柄として、左図柄[5]、右図柄[5]の右下部のハートの予告暗示要素Pを大きく表示すると共に収縮動して大当たり予告を行うものや、左図柄[救急車]、右図柄[救急車]の天井部の予告暗示要素Qの警報ランプを点滅すると共に予告暗示要素Rとしての車体を振るわせて大当たり予告を行うものがあり、
確率変動大当たり予告については、大当たり時に左図柄、中図柄、右図柄が共に救急車の大当たり発生図柄の場合に、救急車の天井部の予告暗示要素Qの警報ランプを点滅すると共に予告暗示要素Rとしての車体を振るわせて確率変動大当たり予告を行う、パチンコ遊技機。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「識別情報(図柄)」及び「図柄」は、本願補正発明の「識別情報」に相当し、以下同様に、
「可変表示装置4」は「表示装置」に、
「特別変動入賞装置5が所定期間にわたって、球を受け入れない閉状態から球を受け入れやすい開状態、すなわち、遊技者に有利な状態」は「遊技者にとって有利な遊技状態」に、
「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、 各々相当する。

さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用文献1の図5?図12において、横方向に表示された1つ乃至3つの図柄は、「4」、「5」の数字及び救急車に、目、ハート(数字の場合のみ)等を表示したキャラクタの図柄であり、段落【0061】に記載されているように、図5?図12に図示された、左、中、右の図柄を変動表示するものであるから、引用発明の「識別情報」は「キャラクタ画像で構成される」ものと認められ、さらに、引用発明の「可変表示装置4」は、左、中、右の3つの可変表示領域を有し、可変表示領域に、左図柄、中図柄、右図柄を可変表示するものであるから、引用発明と本願補正発明とは、「3つの表示領域にそれぞれ複数種類のキャラクタ画像で構成される識別情報を変動表示可能な表示装置」の点で共通する。
b.引用発明の「可変表示装置4」は「左、中、右の3つの可変表示領域にそれぞれ複数の識別情報(図柄)の変動表示が行われる」ものであって、その後、最終的に停止した図柄が、左図柄、中図柄、右図柄が同一図柄であるか否かによって、ハズレ、若しくは、大当たりになるものであるから、引用発明の「可変表示装置4」は、各図柄(識別情報)を可変表示及び、可変表示後に表示結果を確定表示させる制御を実行するための制御手段を、当然備えているものと認められる。
よって、引用発明と本願補正発明とは、「該表示装置に表示される前記識別情報を変動表示させた後に、表示結果を確定表示させる制御を実行する表示制御手段」を有する点で共通する。
同様にして、引用発明における「大当たり」は、最終的に左図柄、中図柄、右図柄が同一の図柄で停止となった場合に発生するものであると認められ、大当たりの場合には、遊技者に有利な状態に変換される特別遊技が行われるものであるから、引用発明においても、当然、大当たり時に特別遊技を行う制御手段を有するものと認められるので、引用発明と本願補正発明とは、「前記表示装置に確定表示される前記識別情報の表示結果が、予め定められた特定表示結果として前記3つの表示領域に同一の前記識別情報が確定表示された場合に、遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能な遊技制御手段」を有する点で共通する。
c.引用発明における3つの図柄(左図柄、中図柄、右図柄)の停止順序について、図3には、変動開始から、進行分岐点I、進行分岐点IIの「リーチ有り?」、「発展リーチ?」を経て進行分岐点IIIの「大当たり?」に進行する点が図示され、また、図7?図12には、図柄が1つのみ停止した状態(左図柄)、2つ停止した状態(左図柄、右図柄)、及び3つ停止した状態が図示されているので、これらの点から、可変表示装置4に表示された3つの図柄は変動表示した後に、左図柄、右図柄、中図柄と順番に停止するものと認められる。
さらに、引用発明における確率変動大当たり予告について、段落【0061】の記載から、図11、図12に図示された図柄は、大当たり発生図柄が3つの表示領域に表示され、かつ、予告暗示要素P、Q及びR、又はSが所定の動作を行っている状態で停止表示されているものと認められる。
さらに、この時の停止図柄の表示は確率変動大当たり予告を行っている状態であるから、表示結果が確定した確定表示ではない。
また、このような停止表示の演出は、表示制御を行う表示制御手段にて当然行われるものである。
以上のことから、引用発明と本願補正発明とは、「前記表示制御手段は、前記表示装置に表示結果を確定表示させる以前に、前記3つの表示領域に前記識別情報を順番に一旦停止表示させる一旦停止制御手段」を有する点で一致する。
d.引用発明の図柄は、予告暗示要素P、Q及びR、又はSを有しており、予告暗示要素P、Q及びR、又はSは図柄が停止時にそれぞれ特有の動作(例えば、予告暗示要素Pはハートを大きく表示すると共に収縮動作する)を行うように制御可能といえるので、引用発明と本願補正発明とは、「該一旦停止制御手段は、一旦停止表示される前記識別情報を、各識別情報のキャラクタ画像のそれぞれが備える予め定めた特有動作を行うように制御可能」となっている点で共通する。
e.引用発明のリーチ予告は、左図柄の停止時にその右下部のハートの予告暗示要素Pを大きく表示すると共に収縮動するものや、左図柄[救急車]の停止時に天井部の予告暗示要素Qの警報ランプを点滅すると共に予告暗示要素Rとしての車体を振るものである。
そして、引用文献1の図7、図9は、引用文献1の段落【0061】に記載されているように、リーチ予告における説明図であり、図7、図9には、左図柄のみが停止した状態が表示されている。
さらに、引用文献1の同段落の記載から、図7、図9に図示されたリーチ予告は、3つの表示領域の図柄が変動表示を開始してから図柄の表示結果が確定表示されるまでの期間に行われるものである。
以上のことから、上記c.で認定したとおり、変動表示した後に、最初に左図柄が停止表示される点を考慮すれば、引用発明と本願補正発明とは、「前記3つの表示領域の識別情報が変動表示を開始してから前記識別情報の表示結果が確定表示されるまでの期間において、最初に一旦停止表示した1番目の識別情報のキャラクタ画像を、特有動作を行い得るように制御」する点で共通する。
同様にして、引用文献1の図8、図10は、引用文献1の同段落に記載されているように、大当たり予告における説明図であり、図8、図10には、左図柄と右図柄とが同一図柄で停止した状態が表示されている。
また、引用発明において、大当たり予告では、停止した左図柄と右図柄はリーチ予告と同様の動作を行うものである。
よって、大当たり予告時の2つの図柄(本願補正発明の「一旦停止表示した前記1、2番目の識別情報のキャラクタ画像」に相当)の動作が、互いに前記第1の特有動作を同じタイミングで行うリーチ同期動作であるかどうかは別として、引用発明と本願補正発明とは、「一旦停止した1、2番目の識別情報のキャラクタ画像が同一である場合には、特有の動作を行う」点で共通する。
さらに、引用発明の確率変動大当たり予告は、3つの図柄が同一の救急車となる大当たり時において、予告暗示要素Q、Rの動作がリーチ予告、大当たり予告と同様の動作を行うものであるから、3つの図柄(本願補正発明の「一旦停止表示している第1、2及第3の識別情報のキャラクタ画像」に相当)の動作が互いに第1および第2の特有の動作とは異なる動作の第3の特有動作を同じタイミングで行う同期動作かどうかは別として、引用発明と本願補正発明とは、「一旦停止表示している第1、2及び第3の識別情報のキャラクタ画像が同一である場合には、特有の動作を行うように制御する」点で共通する。
以上を総合すると、両者は、
「3つの表示領域にそれぞれ複数種類のキャラクタ画像で構成される識別情報を変動表示可能な表示装置と、該表示装置に表示される前記識別情報を変動表示させた後に、表示結果を確定表示させる制御を実行する表示制御手段と、前記表示装置に確定表示される前記識別情報の表示結果が、予め定められた特定表示結果として前記3つの表示領域に同一の前記識別情報が確定表示された場合に、遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能な遊技制御手段とを含む遊技機において、
前記表示制御手段は、前記表示装置に表示結果を確定表示させる以前に、前記3つの表示領域に前記識別情報を一旦停止表示させる一旦停止制御手段を含み、該一旦停止制御手段は、一旦停止表示される前記識別情報を、各識別情報のキャラクタ画像のそれぞれが備える予め定めた特有動作を行うように制御可能で、前記3つの表示領域の識別情報が変動表示を開始してから前記識別情報の表示結果が確定表示されるまでの期間において、最初に一旦停止した1番目の識別情報のキャラクタ画像を、特有動作を行い得るように制御し、一旦停止した1、2番目の識別情報のキャラクタ画像が同一である場合には、特有の動作を行い、一旦停止している第1、2及び第3の識別情報のキャラクタ画像が同一である場合には、特有の動作を行うように制御する遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明は、「一旦停止表示した2番目の識別情報のキャラクタ画像が先に一旦停止表示している前記1番目の識別情報のキャラクタ画像と同一ではない場合には、一旦停止表示している前記1番目の識別情報のキャラクタ画像と前記2番目の識別情報のキャラクタ画像とが互いに前記第1の特有動作を異なるタイミングで繰返す非同期動作を行うように制御する一方、前記2番目の識別情報のキャラクタ画像が前記1番目の識別情報のキャラクタ画像と同一である場合には、一旦停止表示した前記1、2番目の識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1の特有動作を同じタイミングで行うリーチ同期動作を行」うのに対し、引用発明では、一旦停止表示した2つの図柄が同一でない場合には、図柄がどのような演出をするのか、若しくは演出をしないのかが明確でなく、さらに、一旦停止表示した2つの図柄が同一の場合には、2つの図柄の予告暗示要素が同期動作を行うのか不明な点。
[相違点2]
本願補正発明は、「最後に一旦停止表示した3番目の識別情報が先に一旦停止表示している前記1、2番目の識別情報のキャラクタ画像と同一ではないときには、前記リーチ同期動作に続いて、一旦停止表示している前記第1、2及び第3の識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1の特有動作と異なる動作の前記第2の特有動作を同じタイミングで行う同期動作を行う一方、最後に一旦停止表示した前記3番目の識別情報のキャラクタ画像が先に一旦停止表示している前記1、2番目の識別情報のキャラクタ画像と同一であるときには、前記リーチ同期動作に続いて、一旦停止表示している前記第1、2及び第3の識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1および第2の特有動作とは異なる動作の前記第3の特有動作を同じタイミングで行う同期動作を行うように制御する」のに対し、引用発明では、一旦停止表示した3つの図柄が同一でない場合には、図柄がどのような演出をするのか、若しくは演出をしないのかが明確でなく、さらに、一旦停止表示した3つの図柄が同一の場合で、3つの図柄の予告暗示要素が作動する場合には、これらの3つの予告暗示要素が同期動作を行うのか不明な点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
3つの表示領域に識別情報を変動表示可能な表示装置を有するパチンコ等の遊技機において、変動表示装置における、一旦停止表示した2番目の識別情報の画像が先に一旦停止表示している1番目の識別情報の画像と同一ではない場合に、一旦停止表示した2番目の識別情報の画像が先に一旦停止表示している1番目の識別情報の画像と同一である場合とは異なる演出動作表示を行うことは、例えば、特開2001?62097号公報(特に、段落【0033】、図2(d)、(f))、特開平8?299553号公報(特に、段落【0024】?【0031】)、特開2001?246076号公報(特に、段落【0069】)に記載されているように、周知の技術である(以下「周知技術1」という。)。
さらに、引用文献1の段落【0070】?【0071】には、識別情報毎に予告暗示要素P、Q及びR、又はSを同期あるいは非同期にて動作を行う点が記載されており、どのような場合において、同期、非同期にて動作を行うのか不明であるものの、遊技状態に応じて、予告暗示要素P、Q及びR、又はSを同期、非同期で繰り返し動作を行うことは、当業者にとって設計上の変更にすぎない。
よって、引用発明において、引用文献1の段落【0070】?【0071】の記載に基づき、表示装置4に同一でない2つの図柄が停止した際に予告暗示要素P、Q及びR、又はSの演出動作表示を行うように変更し、予告暗示要素P、Q及びR、又はSの演出動作のタイミングとして、識別情報毎に予告暗示要素P、Q及びR、又はSの動作を異なるタイミングで繰り返す非同期動作を行うことは、当業者にとって想到容易である。
また、引用発明において、表示装置4に同一である2つの図柄が停止した際に、予告暗示要素P、Q及びR、又はSを演出動作表示させる際に、周知技術1に基づき、一旦停止表示した2番目の識別情報の画像が先に一旦停止表示している1番目の識別情報の画像と同一ではない場合の演出表示とは異なる演出表示を行うために、前述した非同期動作に対して同じタイミングで行うリーチ同期動作を行うことは、当業者にとって単なる設計上の変更にすぎない。
[相違点2について]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9?131437号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0039】図10に戻り、表示用CPU76は、次に駆動回路84に指示して、左側の本図柄表示区画32aおよび中央の本図柄表示区画32bに7を静止表示させ、リーチ配列を表示させると共に、第2のROM82から笑顔データを読出して駆動回路84に送出し、左側の本図柄表示区画32aおよび中央の本図柄表示区画32bの直上に笑顔のキャラクタ30を表示させる(ステップ520)。
【0040】この結果、液晶表示盤52には、図4に示されるように左側および中央の本図柄表示区画32a、32bに本図柄34として例えば7が静止表示され、その直上に笑顔のキャラクタ30が静止表示される。次に、表示用CPU76は、駆動回路84に指示して、右側の本図柄表示区画32cに7を静止表示させ、当たり配列を表示させると共に、本図柄表示区画32cの直上に笑顔のキャラクタ30を表示させる(ステップ530)。
【0041】この結果、液晶表示盤52には、図3に示されるように本図柄表示区画32a、32b、32cに本図柄34としての7が静止表示され、その直上に笑顔のキャラクタ30が静止表示される。以上がリーチアクション1による表示処理である。次にリーチアクション2について説明する。
【0042】図11に示すように、表示用CPU76は、前述のステップ510と同様に、本図柄データを送出して、本図柄34を縦スクロールにより変動表示させ(ステップ610)、ステップ520と同様に、本図柄表示区画32a、32bにリーチ配列を表示させると共に、その直上に笑顔のキャラクタ30を表示させる(ステップ620)。
【0043】次に、表示用CPU76は、駆動回路84に指示して、右側の本図柄表示区画32cに例えば8を静止表示させて外れ配列を表示させると共に、本図柄表示区画32a、32b、32cの直上に残念顔のキャラクタ40を表示させる(ステップ630)。
【0044】この結果、液晶表示盤52には、図5に示されるように本図柄表示区画32a、32bには例えば7が静止表示され、本図柄表示区画32cには8が静止表示され、本図柄表示区画32a、32b、32cの直上に残念顔のキャラクタ40が静止表示される。
【0045】ただし、ステップ630による表示は確定表示ではなく、表示用のCPU76は、本図柄データを駆動回路84に送出して、本図柄表示区画32cに、本図柄34を横スクロールにより変動表示させる(ステップ640)。」
上記記載から、引用文献2には、「リーチ配列を表示させた後に、当たり配列を表示させた場合には、本図柄表示区画32cの直上に笑顔のキャラクタ30を表示させ、リーチ配列を表示させた後に、外れ配列を表示させる場合には、本図柄表示区画32a、32b、32cの直上に残念顔のキャラクタ40を表示させる技術」(以下「引用文献2の技術」という。)が開示されているものと認められる。
また、3つの識別情報が停止表示したときに(例えば、3つの識別情報が同一の図柄で停止したときなどの場合に)、識別情報自身が演出表示を行うことは、例えば、特開平2?98386号公報(例えば、第12頁左下欄第9行?右下欄第11行、第31図(A)、(B))、特開平10?66764号公報(例えば、段落【0069】?【0072】、図21)に記載されているように周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明と引用文献2の技術とは、識別情報(特別図柄)を変動表示可能な表示装置を有するパチンコの遊技機において、表示装置に、遊技者にとって有利な状態である場合に所定の演出表示する(引用発明では、大当たり時に予告暗示要素を演出動作させ、引用文献2の技術では、当たり配列を表示させた場合に笑顔のキャラクタ30を表示させる)点で共通しているので、引用文献2の技術を引用発明に適用するとともに周知技術2を勘案し、引用発明においてリーチ後に、一旦停止している2つの図柄と同一でない図柄が停止して、ハズレとなったときに、左図柄、中図柄、右図柄の各図柄のキャラクタ自身が残念を表現する演出動作を行うことで、本願補正発明における「第2の特有動作」に相当する動作を行う一方、リーチ後に一旦停止している2つの図柄と同一の図柄が停止して、大当たりになったときに、左図柄、中図柄、右図柄の各図柄のキャラクタ自身が笑顔を表現する演出動作を行うことで、本願補正発明における「第3の特有動作」に相当する動作を行うように制御することは、当業者にとって想到容易である。
また、引用発明において、本願補正発明における「第2の特有動作」、「第3の特有動作」を行う際に、3つの識別情報を同じタイミングで行う同期動作を行うように制御することは、上記[相違点1について]の項で述べたと同様に、引用文献1の段落【0070】?【0071】の記載に基づき、当業者にとって設計事項にすぎない。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成21年2月18日付の手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年12月8日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。以下のとおりのものである。
「3つの表示領域にそれぞれ複数種類のキャラクタ画像で構成される識別情報を変動表示可能な表示装置と、該表示装置に表示される前記識別情報を変動表示させた後に、表示結果を確定表示させる制御を実行する表示制御手段と、前記表示装置に確定表示される前記識別情報の表示結果が、予め定められた特定表示結果として前記3つの表示領域に同一の前記識別情報が確定表示された場合に、遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能な遊技制御手段とを含む遊技機において、
前記表示制御手段は、前記表示装置に表示結果を確定表示させる以前に、前記3つの表示領域に前記識別情報を一旦停止表示させる一旦停止制御手段を含み、
該一旦停止制御手段は、一旦停止表示される前記識別情報を、各識別情報のキャラクタ画像のそれぞれが備える予め定めた第1、2及び第3の特有動作を行うように制御可能で、先に一旦停止表示した2つの表示領域の前記識別情報のキャラクタ画像が同一ではない場合には、一旦停止表示した2つの識別情報のキャラクタ画像が互いに前記第1の特有動作を異なるタイミングで繰返す非同期動作を行う一方、前記先に一旦停止表示した2つの表示領域の前記識別情報のキャラクタ画像が同一である場合には、一旦停止表示した2つの識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1の特有動作を同じタイミングで行うリーチ同期動作を行い、また、先に一旦停止表示した2つの表示領域の前記識別情報のキャラクタ画像が同一で、かつ最後に一旦停止表示した表示領域の前記識別情報のキャラクタ画像が先に一旦停止表示した前記識別情報のキャラクタ画像と同一ではない場合には、前記リーチ同期動作に続いて、一旦停止した3つの前記識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1の特有動作と異なる動作の前記第2の特有動作を同じタイミングで行う同期動作を行う一方、一旦停止表示した3つの表示領域の前記識別情報のキャラクタ画像がそれぞれ同一である場合には、前記リーチ同期動作に続いて、一旦停止表示した3つの前記識別情報のキャラクタ画像が、互いに前記第1および第2の特有動作とは異なる動作の前記第3の特有動作を同じタイミングで行う同期動作を行うように制御することを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明の「前記識別情報を順番に一旦停止表示させる」について、「順番に」を削除して上位概念化するとともに、「最初に一旦停止表示した1番目の識別情報のキャラクタ画像」について、「最初に一旦停止表示した1番目の識別情報のキャラクタ画像を、前記第1の特有動作を行い得るように制御し」の限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件の一部を下位概念化するとともに複雑化したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-21 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-06-16 
出願番号 特願2001-328237(P2001-328237)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 竹沢 荘一  

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