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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1220995
審判番号 不服2008-30089  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-27 
確定日 2010-07-28 
事件の表示 特願2004-156062「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-334229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成16年5月26日の出願であって、平成20年10月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成20年11月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年12月25日付けで手続補正がされ、当審において、平成21年12月28日付で、平成20年12月25日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶の理由が通知され、これに対し平成22年3月4日付けで手続補正がされた。

2.本願発明

本願の請求項1に記載された発明は、平成22年3月4日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「第1の始動条件の成立により図柄を変動表示した後停止表示させ得る第1の図柄表示手段と、
第2の始動条件の成立により図柄を変動表示した後停止表示させ得る第2の図柄表示手段と、
前記第1の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示されると遊技状態を通常状態から特別状態とする内部処理がなされる第1制御手段と、
前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示したときであって、遊技状態が通常状態である場合は、可変入賞手段を所定時間開成させ、遊技状態が特別状態である場合は、当該可変入賞手段を前記所定時間より長い時間開成させる第2制御手段と、
を具備し、前記特別状態における前記可変入賞手段の開成が所定回数行われたことを条件として当該特別状態を終了し、前記通常状態とするとともに、
前記特別状態のとき、前記第2の図柄表示手段で所定の図柄以外が停止表示されたことを条件とし、又は前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示され、且つ、その図柄が予め定められた図柄であることを条件として当該特別状態を終了し、前記通常状態とするものであり、前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示したとき、前記特別状態の方が前記通常状態より多数の遊技球を獲得し得ることを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用文献

(1)引用文献1
当審の拒絶の理由で引用された特開平7-100254号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・【特許請求の範囲】【請求項1】 遊技領域中の第1所定点に打球が到達したときに変動を開始し、その後変動を停止して停止時の図柄を継続して表示する第1図柄表示装置と、
遊技領域中の第2所定点に打球が到達したときに変動を開始し、その後変動を停止する第2図柄表示装置とを備え、
前記第1図柄表示装置の変動停止時の図柄が予め定められている第1所定図柄であり、かつ第2図柄表示装置の変動停止時の図柄が予め定められている第2所定図柄であるときに、特別入賞装置を特別入賞状態とする機構が付加されていることを特徴とする複数の図柄表示装置を備えた弾球遊技機。
・【0007】図中#13は第1左入賞口であり、また#14は第1右入賞口を示している。第1入賞口、すなわち第1中央入賞口#7、第1左入賞口#13、第1右入賞口#14のいずれかの一つに打球が入賞すると(図2のステップB1)、通常の景品球払出処理の他、第1図柄表示装置#15が変動を開始する(図2のステップB2)。この実施例では第1入賞口#7、#13、#14が第1図柄変動装置#15の変動を開始させる第1所定点となっている。
・【0008】第1図柄表示装置#15は左右1対の図柄変動盤を有しており、変動開始後一定時間経過するとまず左側の図柄変動盤が変動を停止し、ついで右側の図柄表示盤が変動を停止する(ステップB2)。第1図柄表示装置#15の変動が停止すると、停止されたときの図柄が継続して表示される一方、停止時の図柄が第1所定柄と比較される(ステップB3)。第1所定柄は左右の図柄が揃った図柄であり、停止時の図柄が第1所定柄であれば、入賞口#10を長時間(T1L)開放する(ステップB4)。一方停止時の図柄が第1所定柄でなければ、入賞口#10を短時間(T1S)開放する(ステップB5)。なお第1図柄表示装置#15の図柄は、次に図2のステップB2で図柄が変動を開始し始めるまで継続的に表示される。
・【0009】図中#11は第2左入賞口であり、ここに打球が入賞すると(図2のステップC1)、通常の景品球払出処理の他、第2左図柄表示装置#16が図柄を変動させ始める(ステップC2)。この場合の図柄は、0?9の10種の数字のうちの1つが表示されるものであり、その表示図柄が次々に変ってゆく。第2左図柄表示装置#16が図柄変動を開始した後所定時間が経過すると、変動が停止し(ステップC2)、0?9の10種の数字のうちの一種の数字が固定的に表示される。このとき停止した図柄が第2所定柄か否か比較される(ステップC3)。ここで第2所定柄は奇数であり、偶数であればステップC3はNOとなる。
・【0010】第2左図柄表示装置#16が奇数で停止したときに、第1図柄表示装置#15の表示図柄が第1所定柄であれば、特別入賞口#8を長時間(T2L)開放する(ステップC6)。すなわちこの場合、特別入賞口#8を特別入賞状態とする。一方第2左図柄表示装置#16が奇数で停止しても、そのとき第1図柄表示装置#15が第1所定柄でなければ、特別入賞口#8を短時間(T2S)開放する(ステップC7)。この場合は中程度の特別入賞状態とする。一方、第2左図柄表示装置#8が偶数で停止すると、特別入賞口#8は開放されない。なお図2(C) の処理は、第2右入賞口#12に打球が入賞したときに、第2右図柄表示装置#17と特別入賞口#9によって全く同等に実行される。
・【0011】さて図2(C) の第2左(右)入賞口#11(12)に打球が入賞し、ステップC6で特別入賞口#8(9)が特別入賞状態とされている間、及びステップC7で特別入賞口#8(9)が中程度の特別入賞状態とされている間(そしてステップC3でNOの場合は、第2左(右)図柄表示装置#16(17)が図柄を変動させている間)に、第2左(右)入賞口#11(12)に打球が入賞すると、その入賞球の数がカウントされる(図2(D) 参照)。そしてそのカウントされた打球分だけ、ステップC2以後の処理が繰返される(ステップC8)。
・【0012】本実施例の場合、第1図柄表示装置#15で第1図柄表示装置が構成されており、この第1図柄表示装置#15は第1所定点、この場合第1中央入賞口#6、第1左入賞口#13、または第1右入賞口#14に打球が到達して入賞したときに図柄を変動させ始める。図柄が変動を始めた後所定時間が経過すると変動は停止し、停止したときの図柄が次に変動を開始するまで継続的に表示される。
・【0013】また本実施例の場合、第2左図柄表示装置#16と第2右図柄表示装置#17の2個の第2図柄表示装置が組込まれており、第1図柄表示装置#15と第2左図柄表示装置#16の組合せ、及び第1図柄表示装置#15と第2右図柄表示装置#17の組合せによって多様な入賞状態が実現される。すなわち第1、第2図柄表示装置がともに所定の条件を満たしたときに本来の特別入賞状態とし、一方の条件が揃っても他方の条件が揃わないと中程度の特別入賞状態にとどめること等によって多様な遊技状態が得られる。

以上の各記載事項及び図1?2によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「第1入賞口#7、#13、#14に打球が入賞すると図柄を変動させ、一定時間が経過すると図柄を停止表示させる第1図柄変動装置#15と、
第2左入賞口#11に打球が入賞すると図柄を変動させ、所定時間が経過すると図柄の変動を停止表示させる第2左図柄表示装置#16と、
前記第1図柄変動装置#15においては、停止表示された図柄は次に図柄が変動を開始するまで継続的に表示されるとともに、第1所定図柄が停止することがあり、
前記第2左図柄表示装置#16で第2所定図柄が停止表示したときに、前記第1図柄変動装置#15の表示図柄が第1所定図柄でなければ特別入賞口#8を短時間開放し、前記第1図柄変動装置#15の表示図柄が第1所定図柄であれば特別入賞口#8を長時間開放する、弾球遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比

本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「第1入賞口#7、#13、#14に打球が入賞すると」は本願発明の「第1の始動条件の成立により」に相当し、以下同様に、「図柄を変動させ、一定時間が経過すると図柄を停止表示させる」は「図柄を変動表示した後停止表示させ得る」に、「第1図柄変動装置#15」は「第1の図柄表示手段」に、「第2左入賞口#11に打球が入賞すると」は「第2の始動条件の成立により」に、「図柄を変動させ、所定時間が経過すると図柄を停止表示させる」は「図柄を変動表示した後停止表示させ得る」に、「第2左図柄表示装置#16」は「第2の図柄表示手段」に、「第1所定図柄」及び「第2所定図柄」は「所定の図柄」に、「特別入賞口#8」は「可変入賞手段」に、「弾球遊技機」は「パチンコ遊技機」に、それぞれ相当する。

そして、引用発明について、以下のことがいえる。
(1)引用発明は、「前記第2左図柄表示装置#16で第2所定図柄が停止表示したときに、前記第1図柄変動装置#15の表示図柄が第1所定図柄でなければ特別入賞口#8を短時間開放し、前記第1図柄変動装置#15の表示図柄が第1所定図柄であれば特別入賞口#8を長時間開放する」ものであるが、このような制御を行う手段を当然具備することは明らかである。そして、第1図柄変動装置#15に第1所定図柄が停止している状態は、特別入賞口#8を長時間開放する前提となる状態であって遊技者にとって有利な状態であるから、「特別状態」と呼称することができる。それに対し、第1図柄変動装置#15に第1所定図柄が停止していない遊技状態は、当該状態では第2左図柄表示装置#16で第2所定図柄が停止表示されても特別入賞口#8を長時間開放されることはなく、「特別状態」に比較して遊技者にとって不利な遊技状態であるから、「通常状態」と呼称することができる。また、「短時間開放する」と「長時間開放する」は、両者は相対的な関係を示しているに過ぎないから、「所定時間開成する」と「所定時間より長い時間開成する」といいかえることができる。
また、「特別入賞口#8を長時間開放する」と、多数の遊技球を獲得し得ることは自明のことである。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示したときであって、遊技状態が通常状態である場合は、可変入賞手段を所定時間開成させ、遊技状態が特別状態である場合は、当該可変入賞手段を前記所定時間より長い時間開成させる第2制御手段」及び「前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示したとき、前記特別状態の方が前記通常状態より多数の遊技球を獲得し得る」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(2)引用発明は、「前記第1図柄変動装置#15においては、停止表示された図柄は次に図柄が変動を開始するまで継続的に表示されるとともに、第1所定図柄が停止することがあ」るものであるが、第1図柄変動装置#15に第1所定図柄が停止している状態が「特別状態」と呼称することができ、第1所定図柄が停止していない遊技状態が「通常状態」と呼称することができるということは上述のとおりであり、このような制御を行う手段を当然具備することは明らかであるから、本願発明の「前記第1の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示されると遊技状態を通常状態から特別状態とする第1制御手段」に相当する構成を実質的に具備するものである。

そうすると、本願発明と引用文献1記載の発明は、
「第1の始動条件の成立により図柄を変動表示した後停止表示させ得る第1の図柄表示手段と、
第2の始動条件の成立により図柄を変動表示した後停止表示させ得る第2の図柄表示手段と、
前記第1の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示されると遊技状態を通常状態から特別状態とする第1制御手段と、
前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示したときであって、遊技状態が通常状態である場合は、可変入賞手段を所定時間開成させ、遊技状態が特別状態である場合は、当該可変入賞手段を前記所定時間より長い時間開成させる第2制御手段と、
を具備し、
前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示したとき、前記特別状態の方が前記通常状態より多数の遊技球を獲得し得るパチンコ遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
第1制御手段において、通常状態から特別状態とする際、本願発明では、内部処理がなされるのに対し、引用発明ではそのような処理が行われるか不明である点。
[相違点2]
特別状態を終了し通常状態とする条件が、本願発明では「特別状態における前記可変入賞手段の開成が所定回数行われたこと」であるのに対し、引用発明ではそのような構成でない点。
[相違点3]
特別状態を終了し通常状態とする条件が、本願発明では、「前記第2の図柄表示手段で所定の図柄以外が停止表示されたこと、又は前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示され、且つ、その図柄が予め定められた図柄であること」であるのに対し、引用発明ではそのような構成でない点。

5.判断

(1)相違点1について
引用発明においては通常状態から特別状態とする内部処理を行っているか不明であるが、パチンコ遊技機において、遊技状態の変更を内部処理することは従来周知と認められる。周知例として挙げると、特開2001-300039号公報(段落【0048】)には、権利発生フラグ記憶エリアに52hに「1」を記憶して権利発生状態とすることが記載されており、また、特開2002-102463号公報(段落【0040】)には、高確率フラグFbに「1」をセットし、高確率状態とすることが記載されており、これらは遊技状態の変更を内部処理することを意味している。
そうすると、引用発明に周知技術を適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって、想到容易である。
(2)相違点2について
パチンコ遊技機において、可変入賞手段の開成が所定回数行われることを終了条件として、遊技者にとって有利な遊技状態を終了することは、特開2001-346957号公報(段落【0027】)に例示されるように従来周知と認められる。
そうすると、引用発明に周知技術を適用して、可変入賞手段の開成を複数回とし、特別状態における可変入賞手段の開成が所定回数行われたことを特別状態を終了する条件とし、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって、想到容易である。
(3)相違点3について
当審の拒絶の理由で引用された特開平5-177041号公報(以下、「引用文献2」という。)(段落【0102】)には、遊技者に有利な遊技状態の終了条件を、当りとなる表示以外の予め定められた表示、当りとなる表示のうち予め定められた表示とすることが記載されている。ここで、「当りとなる表示」は「所定の図柄」ということができる。そして、終了条件としてどのようなものとするかは、ゲーム性を考慮して取り決めればよいものであるから、「当りとなる表示以外の予め定められた表示」に代えて「当りとなる表示以外の表示」を「当りとなる表示のうち予め定められた表示」とともに終了条件として採用することに何等の技術的困難性はない。
そうすると、引用文献2に接した当業者であれば、引用発明において、特別状態を終了し通常状態とする条件として、「前記第2の図柄表示手段で所定の図柄以外が停止表示されたこと、又は前記第2の図柄表示手段で所定の図柄が停止表示され、且つ、その図柄が予め定められた図柄であること」を採用し、相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって、想到容易である。

そして、本願発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載された発明、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-02 
結審通知日 2010-06-03 
審決日 2010-06-16 
出願番号 特願2004-156062(P2004-156062)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
池谷 香次郎
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 越川 隆夫  

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