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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1221057
審判番号 不服2008-17903  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-14 
確定日 2010-08-06 
事件の表示 特願2000-502616「インテリジェントネットワークにおけるメッセージトラフィックの削減」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月21日国際公開、WO99/03251、平成13年 7月31日国内公表、特表2001-510305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、1998年7月8日(パリ条約による優先権主張1997年7月11日、フィンランド)を国際出願日とする出願であって、平成19年3月28日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年10月2日付けで誤訳訂正がなされたところ、平成20年4月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記誤訳訂正により訂正された明細書及び図面の記載からみて、

「インテリジェントネットワークを使用し、サービスコントロールポイント(SCP)を備える電気通信システムのサービススイッチングポイント(SSP)において少なくとも1つのインテリジェントネットワークサービスを実行する方法において、
各インテリジェントネットワークサービスがサービススイッチングポイント(SSP)において実行されるために、オペレーションを含むサービスロジックが形成され、オペレーションの実行により前記インテリジェントネットワークサービスが実施され、
サービススイッチングポイント(SSP)は、前記サービスロジック及び少なくとも1つの基準を受信し、前記基準を満たしたときに、サービススイッチングポイント(SSP)は前記オペレーションを実行するように要求され、
サービススイッチングポイント(SSP)は、前記基準を満たしたことに応答して前記オペレーションを実行することを特徴とする方法。」
にあるものと認める。

なお、上記誤訳訂正書に記載されている「各インテリジェントネットワーク」という用語は、明細書及び図面の記載からみて、「各インテリジェントネットワークサービス」の明白な誤記と認められるので、本願発明を上記のように認定した。

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-214063号公報(以下、「引用例」という。)には「インテリジェントネットワークの負荷分散方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0003】
【従来の技術】インテリジェントネットワーク(IN:Intelligent Network)は、ネットワークを伝達層と高機能層に階層化し、高機能層から伝達層を制御することによりサービスの追加等に対する柔軟性を持たせた方式である。伝達層は端末-端末間の単純な接続などの基本呼接続機能を持つとともに、高機能層からの指示どおりに交換スイッチ等を駆動するもので、SSP(Service Switching Point :サービス交換ポイント) と称される。高機能層は新たなサービスのプログラム( SLP:Service Logical Plogram :サービスロジックプログラム) やデータを管理する機能や、伝達層を駆動して実際にサービスを実行する機能などを持ち、SCP(Service Control Point)と称される。」(段落【0003】)

ロ.「【0010】また、SSPにSCPからダウンロードされたサービスロジックプログラムに基づいて該当サービスを実行できるサービス実行機能を持たせ、SCPの負荷が所定量以上に増大した場合に、該SCPからの変更要求に従って該SSPが該当サービスを実行するようにしてもよい。」(段落【0010】)

ハ.「【0018】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1には本発明の一実施例としての負荷分散方法を行うインテリジェントネットワークの構成例が示される。図1において、1は加入者端末、2はスイッチング(交換)処理を行うSSP局を示す。これらは交換機全体の制御を行う中央制御装置2-1により制御され、主記憶装置2-2はプログラム部2-3とデータ部2-4により構成されている。3、4は同じくSSP局を示し、これらも中央制御装置、主記憶装置を装備するが図示を省略している。
【0019】SSP局2のプログラム部2-3には、各種処理を行うプログラムが格納される。この例では加入者からのダイヤル番号を解析する数字翻訳処理プログラム、ダイヤル番号がINサービス要求呼である場合にそれに応じた処理を行うINサービス制御処理プログラム等が示される。またデータ部2-4にはIN呼振り分け情報が可能される。このIN呼振り分け情報はINサービス要求呼をどのSCP局にルーティングさせるかを定めた情報であり、SCP局からサービス種別情報としてダウンロードされるものである。図4にこのIN呼振り分け情報の例が示される。図示するように、サービス種別(例えばサービスa)を索引にして、当該サービス要求呼をルーティングするSCP局番号、そのSCP局が輻輳時にルーティングする他SCP局番号、リジェクト呼数の閾値等が格納される。
【0020】5、6はSSP-SCP間の信号を中継するSTP(Signal Transfer Point:信号転送ポイント) である。7、8、9は、SSP局からのサービス制御要求に対してサービスの制御処理を行うSCP局を示す。また、各SCP局は中央制御装置(例えば7-1)と主記憶装置(例えば7-2)とから構成される。また、10はサービスを生成するSCE(Service Creation Environment:サービス生成環境) 装置を示す。このSCE装置10でサービス(例えばプログラムSLP-a)が生成され、生成されたプログラムSLP-aはSCP局の主記憶装置に格納される。
【0021】いま、このインテリジェントネットワークにおいて、SCE装置10で生成されたプログラムSLP-aがSCP局7に格納されるとともに、SCP局8、9にも格納されているものとする。したがって、SCP局7、8、9はともにサービスaを実行することができるが、通常時はSCP局8が主体でサービスaを実行している。また、SSP局2に格納されているIN呼振り分け情報は図4に示すようなものであって、サービスaに対しアクセスするSCP局の番号は「8」、SCP局8の輻輳時にルーティングするSCP局の番号は「9」に設定されている。」(段落【0018】-【0021】)

ニ.「【0022】以上の条件におけるシステムの動作を図2を参照して以下に説明する。
(1)SSP局2の加入者1がINサービスの番号をダイヤルする。このINサービス番号としては例えば“0120-12345”などがある。
【0023】(2)SSP局2は受信したダイヤル番号の数字翻訳を数字翻訳処理プログラムを用いて行い、それがINサービス要求呼か否かを識別する。この場合、ダイヤルされた数字中の“0120”をキーとしてINサービス要求呼を識別する。
【0024】(3)識別の結果がINサービスaであった場合、INサービス制御処理プログラムを起動して、データ部に格納されているIN呼振り分け情報をサービスaで索引し、どのSCP局にアクセスすれば良いかという情報を得る。この例では図4に示すようにIN呼振り分け情報中のアクセスSCP局としてSCP局8が書かれている。
【0025】(4)SSP局2は上記手順(3)で得た情報をもとに、SCP局8に対してサービス制御要求を行う。」(段落【0022】-【0025】)

ホ.「【0026】(5)また、新規サービスあるいはサービスエンハンス(サービスの改造や仕様変更等)がSCE装置10にて生成されて、そのプログラムSLPがSCP局に格納されると、そのSCP局はその生成したサービス内容を示すサービス種別情報を各SSP局に対してダウンロードする。あるいは、SSP局からのINサービス制御要求をトリガとして、その最新のIN呼振り分け情報を付加情報としてSSP局に対して送出する。これにより、SSP局のIN呼振り分け情報を常に最新の内容に更新することができる。
【0027】(6)また、SCP局の負荷分散を図るために、INサービス要求呼に対するサービス制御をSSP局内で処理できるように、SSP局自身に該当サービスのプログラムSLPを格納しておくことも可能である。この場合、図3に示されるように、SCE装置10にて生成されたサービス(例えばプログラムSLP-a)がSCP局に格納される際、そのサービスがSSP局にて実行可能かの判定をSCP局にてサービス対応表を参照して行う。例えば、SSP局にもプログラムSLP-aを制御するサービス制御が格納されているが、実際にはその処理は起動されず、SCP局をアクセスすることでサービスが実現されているケースを考える。その場合、SCP局にはプログラムSLP-aがSSP局で処理可能というフラグを持たせる。
【0028】SCE装置10にてプログラムSLP-aの機能がエンハンスされてプログラムSLP-a’が生成され、プログラムSLP-a’がSCP局に格納される。すると、SCP局はそのサービスa対応のフラグをサービス対応表を索引してチェックする。その結果、SSP局にもサービス制御が格納されていることが判明したら、そのプログラムSLP-a’をSSP局にダウンロードする。これにより、SSP局は当該サービスの実行をSSP局内処理を行うことも可能になる。」(段落【0026】-【0028】)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例のインテリジェントネットワークの負荷分散方法につき以下の事項が読み取れる。
a.インテリジェントネットワークを使用し、SCPを備える電気通信システム(【図1】、摘記事項イ)のSSPにおいて少なくとも1つのインテリジェントネットワークサービスを実行する方法(摘記事項ロ)である。
b.上記SSPにおいて実行されるインテリジェントネットワークサービスはサービスロジックプログラムに基づいて実施される(摘記事項ロ)。
c.新規サービスあるいはサービスエンハンス時には、そのサービスのプログラム(「SLP」または「SLP-a’」)はSSPに格納され(摘記事項ホの段落【0027】-【0028】)、また、そのサービス種別情報はSSPにIN呼振り分け情報として格納され(【図4】、摘記事項ハの段落【0021】、摘記事項ホの段落【0026】)、INサービス要求呼からINサービス種別(INサービスa)を識別し、該INサービスaでIN振り分け情報を検索してアクセスすべきSCPにサービス制御要求を行う(摘記事項ニの段落【0022】-【0025】)。

以上を総合すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
「インテリジェントネットワークを使用し、サービスコントロールポイント(SCP)を備える電気通信システムのサービススイッチングポイント(SSP)において少なくとも1つのインテリジェントネットワークサービスを実行する方法において、
各インテリジェントネットワークサービスがサービススイッチングポイント(SSP)において実行されるために、サービスロジックプログラムが形成され、該サービスロジックプログラムに基づいて前記インテリジェントネットワークサービスが実施され、
サービススイッチングポイント(SSP)は、前記サービスロジックプログラム及び少なくとも1つのサービス種別情報を受信し、INサービス要求呼のINサービス種別が上記サービス種別情報と合致したときに、対応するサービスコントロールポイント(SCP)は前記インテリジェントネットワークサービスを実施するように要求され、
サービススイッチングポイント(SCP)は、前記INサービス要求呼のINサービス種別が上記サービス種別情報と合致したことに応答して前記インテリジェントネットワークサービスを実施することを特徴とする方法。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、
a.引用発明の「サービスロジックプログラム」はSSPによって受信されるものであり、本願発明の「サービスロジック」はSSPにダウンロードされたサービスプログラムである(本願明細書段落【0010】)から両者は実質的に一致し、引用発明の「サービスロジックプログラム」は「サービスロジック」と言い得るものである。
b.引用発明の「サービス種別情報」は実施しようとするサービス種別を判断する基準となるものであるから「基準」と言い得るものであって、さらに、引用発明の「INサービス要求呼のINサービス種別が上記サービス種別情報と合致した」とは「前記基準を満たした」と言い得るものである。
c.本願発明の「オペレーションの実行」、「オペレーションを実行すること」はインテリジェントネットワークサービスの実施に他ならない。
とすると、両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「インテリジェントネットワークを使用し、サービスコントロールポイント(SCP)を備える電気通信システムのサービススイッチングポイント(SSP)において少なくとも1つのインテリジェントネットワークサービスを実行する方法において、
各インテリジェントネットワークサービスがサービススイッチングポイント(SSP)において実行されるために、サービスロジックが形成され、インテリジェントネットワークサービスが実施され、
サービススイッチングポイント(SSP)は、前記サービスロジック及び少なくとも1つの基準を受信し、
前記基準を満たしたときに、前記インテリジェントネットワークサービスを実施するように要求され、
前記基準を満たしたことに応答して前記インテリジェントネットワークサービスを実施することを特徴とする方法。」

(相違点1)
本願発明のサービスロジックは「オペレーションを含む」のに対し、引用発明のサービスロジックにはこのような限定がない点。
(相違点2)
インテリジェントネットワークサービスが、本願発明では「オペレーションの実行により」実施されるのに対し、引用発明では「サービスロジックに基づいて」行われる点。
(相違点3)
「前記基準を満たしたときに」ならびに「前記基準を満たしたことに応答して」、「オペレーションを実行する」主体が、本願発明では「SSP」であるのに対し、引用発明では「SCP」である点。

4.検討
そこで、上記相違点につき検討する。
(相違点1)および(相違点2)について
本願発明の‘オペレーション’はインテリジェントネットワークサービスに関連するメッセージ伝送を意味するものと解される(本願明細書段落【0005】)が、一般に通信機器をプログラム制御する際にはプログラム実行手順をメッセージの形で伝送することは普通に行われていることに過ぎず、インテリジェントネットワークにおいてもサービスロジックに基づくサービスの実施時に各種メッセージ伝送を行うことは周知の技術である(例えば、特開平8-182035号公報(段落【0051】-【0056】)、特開平7-46322号公報(段落【0027】-【0036】、【図3】)から、引用発明のサービスロジックにメッセージを伝送する手順を含ませ、サービスロジックに基づくインテリジェントネットワークサービスの実施を該メッセージの伝送により行うよう限定することに格別の困難性はない。
したがって、上記相違点1,2に係る本願発明の構成に想到することは当業者にとり容易なことであると認められる。

(相違点3)について
「3.対比」の項に記したように、引用発明のIN呼振り分け情報は、INサービス要求呼のINサービス種別に基づいて当該INサービスを実施するSCPを決定するために使用されるものであるが、引用例にはSSPにサービスロジックプログラムがダウンロードされたときの当該サービスを要求するINサービス要求呼の振り分け方法については特段明記されていない。
しかしながら、SSPにサービスロジックプログラムがダウンロードされる目的がSCPの負荷分散を図るためであって、そのときにはSSPがサービスを実施することが引用例に記載されており(摘記事項ロ、摘記事項ホの段落【0027】等)、これらの記載に基づけば、SSPにサービスロジックプログラムがダウンロードされたとき当該サービスを要求するINサービス要求呼をSSPに振り分けることは当業者が容易に想到し得たものである。また、当該INサービス要求呼をSSPに振り分けるための手段として、SCPに振り分けるときと同様にIN呼振り分け情報を用いることは極めて自然なことであると認められる。
したがって、SSPにサービスロジックが形成された際に、「前記基準を満たしたときに」ならびに「前記基準を満たしたことに応答して」、「オペレーションを実行する」主体を「SSP」として上記相違点3に係る本願発明の構成に想到することは当業者にとり容易なことであると認められる。

そして、本願発明が奏する効果も引用発明から容易に予測出来る範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-10 
結審通知日 2010-03-11 
審決日 2010-03-24 
出願番号 特願2000-502616(P2000-502616)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 柳下 勝幸
新川 圭二
発明の名称 インテリジェントネットワークにおけるメッセージトラフィックの削減  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 小川 信夫  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 箱田 篤  

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