• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01V
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01V
管理番号 1221175
審判番号 不服2008-31270  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-10 
確定日 2010-08-04 
事件の表示 特願2002-294332「物体検知装置および物体検知方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-125759〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成14年10月7日の出願であって,平成20年10月31日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年12月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,平成21年1月9日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成21年1月9日付けの手続補正についての補正却下の決定

1 補正却下の決定の結論

平成21年1月9日付けの手続補正を却下する。

2 理由

(1)本願補正発明

本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,
「光を照射する投光手段と,
前記投光手段により照射された光を反射する反射手段と,
前記反射手段から反射された光を,受光面において受光する受光手段とを備え,
前記投光手段および前記受光手段は,相互に垂直な方向性の偏光軸を有する偏光手段を備え,前記反射手段は,前記投光手段から前記偏光手段を介して入射された偏光の偏光面を変換して,反射し,
前記受光面における受光量と所定のしきい値とに基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する物体検知装置であって,
前記受光手段は,入射される光を集束する集光手段を備え,前記受光手段の受光光軸は前記投光手段の投光光軸に対して平行であり,
前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分において,実質的に前記受光面による受光が行われないように,前記受光手段が,前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分を遮光する遮光マスクを,前記受光面と前記集光手段との間の位置に備え,
前記被検知物が所定の距離外の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過しないため前記受光量が前記所定のしきい値より低くなり,かつ,前記被検知物が前記所定の距離内の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された前記所定のしきい値以上の光を透過するが当該光を前記遮光マスクが遮光することで前記受光量が前記所定のしきい値より低くなるよう構成したこと,
を特徴とする物体検知装置。」
とする補正を含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

上記請求項1についての補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記受光面における受光量に基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する物体検知装置」を「前記受光面における受光量と所定のしきい値とに基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する物体検知装置」とすることにより,「検知」が「受光量」と「所定のしきい値」とに基づくものであると限定する補正と,「受光手段」について「前記受光手段は,入射される光を集束する集光手段を備え,前記受光手段の受光光軸は前記投光手段の投光光軸に対して平行であり」との限定を付加し,さらに「前記受光手段が,前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分を遮光する遮光マスクを,前記受光面と前記集光手段との間の位置に備え,前記被検知物が所定の距離外の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過しないため前記受光量が前記所定のしきい値より低くなり,かつ,前記被検知物が前記所定の距離内の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された前記所定のしきい値以上の光を透過するが当該光を前記遮光マスクが遮光することで前記受光量が前記所定のしきい値より低くなるよう構成したこと」との限定を付加するものである。

したがって,上記請求項1についての補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,上記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例およびその記載事項

ア 本願出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である特開平10-111365号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。

(ア-1)
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は反射型光電センサに関する。特に,本発明は,投光部から回帰反射板に向けて光を投光し,その反射光を受光部で受光する構成により,受光部における受光量の変化によって光路上にある物体を検出する反射型光電センサに関する。」

(ア-2)
「【0005】・・・これに対し,光沢のある金属のような鏡面特性を有する検出物体Aが光路中に侵入した場合には,検出物体Aに入射した垂直偏光は同じく垂直偏光として反射されるので,偏光フィルタ13を通過することができず,受光部4では全く受光されない。」

(ア-3)
「【0006】【発明が解決しようとする課題】(検出距離の問題点)ところが,上記のような偏光フィルタ12,13と回帰反射板14を備えた反射型光電センサ11にあっては,光路中に白紙のような拡散反射特性を有する検出物体Aが侵入した場合には,検出物体Aに入射した垂直偏光はランダム光として拡散反射されるので,偏光フィルタ13に入射した反射光Rのうち半分だけ(50%)が偏光フィルタ13を通過して受光部4で受光される。このため,反射型光電センサ11の長距離化を図るべく,投光部3及び受光部4と回帰反射板14との間の距離Xを長くしていった場合,ある限界距離に達したとき,近距離に存在する白紙のような拡散反射特性を有する検出物体Aよりも回帰反射板14からの受光量が小さくなり,検出物体Aと回帰反射板14との判別ができなくなるという問題がある。」

(ア-4)
「【0007】・・・反射型光電センサ11は,受光部4における受光量Pに一定の比較レベル(しきい値)Pth[11]を設定され,受光量Pが当該比較レベルPth[11]よりも大きい場合には検出物体Aが存在せず,受光量が当該比較レベルPth[11]よりも小さい場合には検出物体Aが存在していると判定する。」

(ア-5)
「【0017】請求項1に記載の反射型光電センサにあっては,回帰反射板からの反射光はほとんど受光して信号を出力できるようになっているのに対し,近距離にある白紙のような検出物体からの反射光は一部分しか受光して信号を出力しない。従って,受光視野角の小さな状態で検知動作することができ,物体有無判別のための比較レベルを小さくして検出距離を長くすることができる。」

(ア-6)
「【0020】請求項3に記載の反射型光電センサは,投光部と受光部と回帰反射板とを備え,投光部より照射された光を回帰反射板を介して投光部と受光部の間で往復させ,受光部の受光状態により検出信号を得る反射型光電センサであって,回帰反射板からの反射光が受光部の受光面上の所定範囲にのみ受光するようにしたうえで,前記受光面の前方を移動可能なスリットにより,受光面上の前記所定範囲の少なくとも一部を含んだ受光面上の特定の範囲を有効受光域とすることを特徴としている。」

(ア-7)
「【0021】請求項3に記載の反射型光電センサにあっても,請求項1に記載の光電センサと同様の理由により,検出距離を長くすることができると共に設置時の作業を簡単にすることができる。」

(ア-8)
「【0033】【発明の実施の形態】(第1の実施形態)図5は本発明の第1の実施形態による反射型光電センサ21を示す概略構成図である。この反射型光電センサ21は,センサ本体22と回帰反射板23とからなる。回帰反射板23はセンサ本体22に対向させて配置されるものであり,コーナーキューブ又はコーナーキューブの集合体(配列)からなり,直線偏光が入射した場合には,入射した直線偏光の偏光方向と垂直な偏光方向の直線偏光として元の方向へ反射させる特性を有している。また,センサ本体22内には,投光部24,受光部25が内蔵されている。」

(ア-9)
「【0034】投光部24は,発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)等の発光素子26と,発光素子26から出射された光(ランダム光,偏光)を絞って当該投光ビームIの広がり角θIを調整するための投光レンズ27とからなる。この投光部24の前面には偏光フィルタ28が配設されており,投光部24から出射された投光ビームIのうち一方向の直線偏光(例えば,垂直偏光)だけを透過させる。」

(ア-10)
「【0036】受光部25は,一方向に沿って例えば短冊状をしたフォトダイオード(PD)やフォトトランジスタ等の複数の受光素子29を配列したアレイセンサ30と,受光レンズ31とから構成されている。アレイセンサ30は,受光レンズ31の後方のほぼ焦点位置に位置しており,回帰反射板23や検出物体Aで反射された光は受光レンズ31によってアレイセンサ30の受光面に集光される。・・・受光部25の前面には,偏光フィルタ32が配設されている。この受光部25側の偏光フィルタ32は,投光部24側の偏光フィルタ28と偏光方向が直交するように配向されており,投光部24側の偏光フィルタ28を透過する直線偏光と偏光方向が直交する直線偏光(例えば,水平偏光)だけを透過させるようになっている。」

(ア-11)
「【0037】しかして,この反射型光電センサ21にあっても,投光部24から出射された投光ビームIは偏光板28を透過して垂直偏光として検知領域に向けて投射される。光路上に検出物体Aが存在しない場合には,回帰反射板23に入射した垂直偏光は水平偏光として反射されるので,偏光フィルタ32を透過してアレイセンサ30により受光される。これに対し,通常の検出物体Aが光路上に侵入した場合には,光は検出物体Aに遮られるので,アレイセンサ30では受光されない。また,検出物体Aが光沢を有する金属のように鏡面反射特性を有する場合も,検出物体Aに入射した垂直偏光は垂直偏光のままで反射されるので,アレイセンサ30に受光されない。これに対し,検出物体Aが白紙である場合には,入射した垂直偏光は拡散反射光となるので,一部(水平偏光成分)が偏光フィルタ32を透過してアレイセンサ30に受光される。」

(ア-12)
「【0038】図6(a)は,十分遠く(例えば,4?5m以上)に設置されている回帰反射板23による,アレイセンサ30上の反射光スポット33と,近距離にある白紙による,アレイセンサ30上における反射光スポット34を示しており,図6(b)は各反射光スポット33,34をアレイセンサ30上における受光強度分布として示している。回帰反射板23は光をもと来た方向へ反射させ,しかも十分に遠くにあるから,アレイセンサ30上の反射光スポット33のスポット径は小さくなる。一方,近距離にある白紙の反射光スポット34では,大きなスポット径となる。」

(ア-13)
「【0039】従って,アレイセンサ30のうち,回帰反射板23による反射光スポット33が映っている受光素子29のみを用いて物体検出を行なうようにすれば,受光視野角θRを小さくすることができ,検出距離を長くすることができる。すなわち,回帰反射板23による反射光スポット33が映っている受光素子29のみを用いると,白紙による反射光スポット34のうちほんの一部しか受光されないことになるので,白紙の受光量(受光強度)Pが低下する。図4の受光量特性を示す図を用いて説明すると,アレイセンサ30全体を用いているときには白紙の受光量特性16で表わされていたとすると,一部の受光素子29のみを用いた場合には,白紙の受光量Pは小さくなるので,受光量特性17のようになる。これに伴って比較レベルもPth[11]からPth[12]に下げることができ,回帰反射板23の設置位置(つまり,検出距離)はX1からX2に長くなる。」

(ア-14)
「【0062】(第3の実施形態)図13は本発明のさらに別な実施形態による反射型光電センサ73を示す概略構成図であって,この実施形態はティーチングモードと検知動作モードにおいて受光視野角θRを変化させるためにスリットやスポット孔のような微小開口を用いることを特徴としている。」

(ア-15)
「【0063】この反射型光電センサ73においては,受光部25は,比較的大面積のフォトダイオードやフォトトランジスタ等の1つの受光素子74と,受光レンズ31と,スリットやスポット孔のような微小開口75を開口された遮光板76とから構成されている。・・・遮光板76の大きさは受光素子74よりも大きく,微小開口75の大きさは受光素子74よりも小さい。特に,微小開口75であるスリットの幅やスポット孔の直径は,想定される回帰反射板23の反射光スポット33の大きさよりやや大きめが好ましい。」

(ア-16)
「【0064】・・・また,受光素子74の受光信号はプリアンプ42で増幅された後,タイミング回路77からのタイミング信号と同期してサンプルホールド回路43によりサンプリングされる。比較回路78には,予め比較レベル設定回路79により比較レベルPth[12]が設定されており,サンプルホールド回路43からサンプリング信号が入力されると,比較回路78は当該サンプリング信号と比較レベルPth[12]とを比較する。そして,検知動作モードでは,サンプリング信号が比較レベルPth[12]より大きい場合には,検出物体無しと判定し,比較レベルPth[12]より小さい場合には,検出物体有りと判定する。」

(ア-17)
「【0066】検知動作モードにおいては,図15(b)に示すように,遮光板76を用いて受光素子74の受光面を制限し,受光視野角θRを小さくしているので,白紙の受光量が小さくなり,それだけ検知距離を長距離化することができる。」

(ア-18)
図13は本発明の第3の実施形態による反射型光電センサの構成を示す概略図であり,ここには,受光素子74の受光面と受光レンズ31との間に配置された遮光板76が記載されている。

以上の記載事項(ア-1)から(ア-18)を総合すると,第3の実施形態である図13における各符号と,第1の実施形態である図5における各符号とは,同一の構成に対応するものであることは明らかであるから,特に第3の実施形態からみて,引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「発光素子26および投光レンズ27からなる投光部24と偏光フィルタ28と,
投光部24から投光された光を反射する回帰反射板23と,
受光素子74および受光レンズ31からなる受光部25と偏光フィルタ32とを備え,
前記偏光フィルタ28と前記偏光フィルタ32は偏光方向が直交するように配向されたものであり,
前記回帰反射板23は,入射した直線偏光を,その偏光方向と垂直な偏光方向の直線偏光として反射し,
受光素子74の受光量と比較レベルPth[12]との比較に基づいて検出物体の有無を判定する物体検知装置であって,
受光部25は,回帰反射板23からの反射光が受光素子74に形成する反射光スポット33よりやや大きな微小開口75の領域外において,実質的に前記受光面による受光が行われないように,上記領域外を遮光する遮光板76を,受光素子74の受光面と受光レンズ31との間の位置に備え,
鏡面特性を有する検出物体Aが光路上に侵入した場合は,前記偏光フィルタ32が鏡面特性を有する検出物体Aから反射された光を透過せず,かつ,白紙のような拡散反射特性を有する検出物体Aが近距離にある場合は,前記偏光フィルタ32が白紙のような拡散反射特性を有する検出物体Aから反射された光の一部を透過するが,当該光の一部を遮光板76が遮光するよう構成した物体検知装置」
(以下,「引用例1記載の発明」という。)

イ また,本願出願日前に頒布された刊行物である特開平6-5168号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。

(イ-1)
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,物体の検出等に使用される回帰反射形光電スイッチに関する。」

(イ-2)
「【0002】【従来の技術】物体の検出等に使用される回帰反射形光電スイッチは,その光学系に係る構成要素を示す図10から分かるように,光を放射する投光素子(例えば発光ダイオード)1と,投光素子1からの光をほぼ平行光線にするための投光用レンズ2と,この平行光を反射する回帰反射板(図10には図示せず)と,回帰反射板からの反射光を集光するための受光用レンズ3と,集光を通すスリット9を有するスリット部材4と,スリット部材4のスリット9を通過した光を受光する受光素子(例えばホトダイオード)5とを備えるのが一般的である。」

(イ-3)
「【0003】このような光電スイッチでは,通常は投光素子1と受光素子5は1つのケース内に収容されており,このケースから適切な距離を置いて回帰反射板が対向配置される。そして,投光素子1から出射した光が回帰反射板で反射されて受光素子5に入射し,ケースと回帰反射板との間を物体が通過すると,物体により光が遮られ,物体の存在が検知される。」

(イ-4)
「【0004】ところが,例えば白紙のように物体表面の光反射率が高い場合,その物体がケース(即ち投光素子1と受光素子5)の間近に在ると,その物体からの拡散反射光が受光素子5に入射して光電スイッチが誤動作することがあるため,これの対策としてスリット部材4には円形のスリット9が形成されている。」

(イ-5)
「【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,回帰反射板からの反射光と回帰反射板以外(物体)からの反射光とを円形スリット9で区別しようとすると,スリット9の直径を0.6?1mm程度と相当小さくする必要がある。このため,受光素子5で検知できる受光エリアが小さい領域に限定されてしまい,結果的に光電スイッチの指向角や動作領域が狭くなる。又,スリット9が微小であると,光電スイッチの設定に際して光軸の調整が難しくなるばかりか,振動等で光軸ずれが生じて検出動作が不安定になる等の問題もある。」

(イ-6)
「【0007】【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために,本発明の回帰反射形光電スイッチは,スリット部材を備えた光電スイッチにおいて,スリット部材のスリットが,鉛直方向に長く,水平方向に短い開口幅を持つ形状であることを特徴とするものであり,この特定形状のスリットによって,回帰反射板からの反射光と回帰反射板以外(物体)からの反射光との分離効率が良くなり,指向角や動作領域の拡張,光軸調整の容易性,安定な検出動作が実現される。」

(イ-7)
「【0008】【実施例】以下,本発明の回帰反射形光電スイッチを実施例に基づいて説明する。その一例に係る光電スイッチの光学系の構成要素を図1に示す。但し,この構成は,スリット部材のスリット以外は基本的に従来のものと変わりなく,同じ要素には図10と同一符号を付してある。」

(イ-8)
「【0012】投光用及び受光用レンズ2,3と回帰反射板6との間に物体が存在しない場合で,スリット部材4のスリットが円形であると,図6に示すように回帰反射板6からの反射光は円形スリット9の斜線領域Aに集光され,反射光の全てがスリット9を通過する。ここで,図5に示すように,投光用及び受光用レンズ2,3と回帰反射板6との間を物体10が通過すると,物体10の表面で拡散反射された光は発散光として受光用レンズ3に帰って来る。このため,発散光は受光用レンズ3で殆ど集光されず,スリット20からずれた位置(スリット部材4の表面)に照射される結果,発散光の極一部しか受光素子5に到達しない。これにより,物体10の存在が検知されることになる。従って,物体検知の誤動作を防ぐには,不要な発散光が受光素子5に届かないようにスリット20でもって発散光をできるだけ除外することが重要となる。」

(イ-9)
「【0014】ところで,図8において,振動等によって回帰反射板6が投光素子1及び受光素子5の光軸からずれた場合,回帰反射板6からの反射光は,図9に示すように円形スリット9からずれた斜線領域Aに当たってしまう。これだと,正確な物体検知を行うことができず,検出動作が不安定になる。これに対して,上記円形スリット9に代えて図1に示す如き形状のスリット7を採用すれば,光軸が多少ずれても,図2に示すように回帰反射板6からの反射光は斜線領域Aに集光され,スリット7を通過する。一方,物体10からの発散光は斜線領域Bに照射され,スリット7を通過する光は極一部である。勿論,光軸がずれていない場合,回帰反射板6からの反射光はスリット7の中心に集光される。従って,スリット7の開口面積が増えたことにより,検出可能な受光エリアが広くなり,光電スイッチの指向角及び動作領域が拡張される。しかも,多少の光軸ずれは検出には支障を来さないため,光軸調整が簡単になり,安定した検出動作が行われる。」

(イ-10)
「【0015】スリット部材4のスリットの別形状を図3に示す。ここに示すスリット8は,水平方向の一方側(図面では左側)の開口幅を広くした形状であり,全体として半円形を呈する。このスリット8は前記スリット7よりも更に広い開口面積を持ち,指向角及び動作領域が一層広くなる。作用的には,前記スリット7と同様に,不要な発散光は殆ど通さないが(斜線領域B参照),回帰反射板6からの反射光は,たとえ光軸が多少ずれていても確実に通すことができる(斜線領域A参照)。」

(イ-11)
図1は,光電スイッチの光学系を示す構成斜視図であり,この図には,投光素子1,投光用レンズ2,受光用レンズ3,スリット部材4,受光素子5がほぼ同一の水平面内に配置され,投光素子1および投光用レンズ2の中心を結ぶ軸と,受光用レンズ3および受光素子5の中心を結ぶ軸が,水平面にほぼ沿うように配置された構成と,鉛直方向に長く,水平方向に短い開口幅を持つスリット部材のスリット形状が記載されている。

(3)当審の判断

ア 対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比する。

(ア)引用例1記載の発明の「偏光方向が直交するように配向された」「偏光フィルタ28と前記偏光フィルタ32」は,本願補正発明の「投光手段」および「受光手段」に備えられた「相互に垂直な方向性の偏光軸を有する偏光手段」に相当する。そして,引用例1記載の発明において,発光素子26は光を照射するためのものであるから,引用例1記載の発明の「発光素子26および投光レンズ27からなる投光部24と偏光フィルタ28」は,本願補正発明の「偏光手段を備え」た「光を照射する投光手段」に相当し,引用例1記載の発明において,回帰反射板23から反射された光を受光素子74の受光面において受光することは明らかであり,引用例1の記載事項(ア-10)によれば,引用例1記載の発明の「受光レンズ31」は,回帰反射板23や検出物体Aで反射された光を集光するものであるから,本願補正発明の「入射される光を集束する集光手段」に相当し,引用例1記載の発明の「受光素子74および受光レンズ31からなる受光部25と偏光フィルタ32」は,本願補正発明の「偏光手段」と「入射される光を集束する集光手段」を備えた「前記反射手段から反射された光を,受光面において受光する受光手段」に相当する。

(イ)引用例1記載の発明の「投光部から投光された光を反射する回帰反射板23」の「回帰反射板」は,「反射手段」の一種であるから,本願補正発明の「前記投光手段により照射された光を反射する反射手段」に相当する。

(ウ)本願明細書の【0010】を参酌すると,本願補正発明の「反射手段」であるリフレクタは,入射された直線偏光をその偏光面と直交する偏光面を有する直線偏光に変換して反射するものであるから,引用例1記載の発明の「前記回帰反射板23は,入射した直線偏光を,その偏光方向と垂直な偏光方向の直線偏光として反射し」は,本願補正発明の「前記反射手段は,前記投光手段から前記偏光手段を介して入射された偏光の偏光面を変換して,反射し」に相当する。

(エ)引用例1記載の発明において,「受光素子74の受光量」とは受光素子74の受光面における受光量であるのは明らかであり,引用例1記載の発明の「比較レベルPth[12]」は本願補正発明の「所定のしきい値」に相当するから,引用例1記載の発明の「受光素子74の受光量と比較レベルPth[12]との比較に基づいて検出物体の有無を判定する」は,本願補正発明の「受光面における受光量と所定のしきい値とに基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する」に相当する。

(オ)引用例1の記載事項(ア-3),(ア-5),(ア-6),(ア-13),(ア-16),(ア-17)から,投光部および受光部の近距離に白紙のような拡散反射特性を有する検出物体Aが存在する場合,白紙からの反射光量が,回帰反射板14からの反射光量よりも大きくなり,両者が判別できなくなることが課題として認識され,両者の判別を目的とし,引用例1記載の発明は,白紙からの反射光量を低減させるために,受光素子74の受光面と受光レンズ31との間に遮光板76を配置し,遮光板76に受光面を制限するための微小開口75を形成し,微小開口75の大きさを,受光素子74よりも小さく,回帰反射板23からの反射光スポット33の大きさよりやや大きくして,微小開口75によって近距離にある白紙からの反射光の受光量を小さくするものである。
そして,引用例1記載の発明において,「反射光スポット33」は回帰反射板23からの反射光が受光部25の受光素子74に形成するものであるから,引用例1記載の発明の「回帰反射板23からの反射光が受光素子74に形成する反射光スポット33」は,本願補正発明の「反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポット」に相当する。
よって,引用例1記載の発明の「受光素子74の受光面と受光レンズ31との間の位置に備え」られた「回帰反射板23からの反射光が受光素子74に形成する反射光スポット33よりやや大きな微小開口75の領域外において,実質的に前記受光面による受光が行われないように,上記領域外を遮光する遮光板76」と,本願補正発明の「受光面と前記集光手段との間の位置に備え」られた「前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分において,実質的に前記受光面による受光が行われないように,前記受光手段が,前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分を遮光する遮光マスク」とは,「受光面と前記集光手段との間の位置に備え」られた「反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットに対する所定の部分において,実質的に前記受光面による受光が行われないように,前記所定の部分を遮光する遮光マスク」である点で共通する。

(カ)引用例1記載の発明における検知対象物は,「光路上に侵入した」「鏡面特性を有する検出物体A」と,「近距離にある」「白紙のような拡散反射特性を有する検出物体A」である。一方,本願補正発明における「所定の距離外の領域」にある「被検知物」と,「所定の距離内の領域」にある「被検知物」とは,共に「前記被検知物」と記載されていることからも同じ物を意味しており,当然ながらその反射特性も同じものである。そして,本願補正発明の「前記被検知物が所定の距離外の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過しないため前記受光量が前記所定のしきい値より低くなり,かつ,前記被検知物が前記所定の距離内の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された前記所定のしきい値以上の光を透過するが当該光を前記遮光マスクが遮光することで前記受光量が前記所定のしきい値より低くなる」構成は,本願明細書【0045】から【0048】における,偏光抜け領域外と偏光抜け領域内に鏡面体52が存在する場合の反射光の受光量に関する記載に対応するものであり,本願補正発明の「被検知物」の反射特性として鏡面反射特性が想定されているといえる。
よって,引用例1記載の発明における「検出物体A」と,本願補正発明の「被検知物」とは,反射特性を有する被検知物である点で共通する。

(キ)引用例1における記載事項(ア-11)には,偏光フィルタ28,32の特性によって,鏡面特性を有する検出物体Aが光路上に侵入した場合,検出物体Aに入射した垂直偏光は同じく垂直偏光として反射されるので,偏光フィルタ32を通過することができず,受光素子では受光されないことが記載されている。そして,その場合,受光量が比較レベルPth[12]より低くなることは明らかである。
ここで,上記の検出物体Aが光路上に侵入した場合とは,検出物体Aがどの距離にあることを意味するのか特定した記載がないが,上記記載事項(ア-3)における近距離の場合を特定した記載があることからみて,検出物体Aが近距離とは異なる距離であり通常想定される検出距離に侵入した場合を意味するものといえる。一方,本願補正発明の「所定の距離外の領域」とは,本願明細書【0006】において誤検知の起こり得る特定の領域として「所定の距離内」が定義されていることから,「所定の距離」より遠い距離にある通常想定される検出領域を意味するものといえるから,引用例1記載の発明における「光路上に侵入した場合」は,本願補正発明の「所定の距離外の領域にある場合」に相当する。
そうすると,引用例1記載の発明は,検出物体が光路上に侵入した場合,つまり「所定の距離外の領域にある場合」は,受光量が比較レベル,つまり「所定のしきい値」より低くなるものといえる。
また, 引用例1における記載事項(ア-3),(ア-5),(ア-6),(ア-11),(ア-13),(ア-16),(ア-17)には,検出物体Aが拡散反射特性を有する白紙である場合には,検出物体Aへ入射した垂直偏光は拡散反射光となるので,一部の水平偏光成分が偏光フィルタ32を透過してアレイセンサ30に受光されること,また,特に白紙が近距離にある場合,近距離にある白紙の反射光スポット34のうち一部しか受光しないようにして白紙の受光量を低下させることにより,比較レベルをPth[11]からPth[12]に下げることが記載され,さらに,白紙の受光量を低下させるために遮光板76を用いること,受光素子74の受光信号より得られたサンプリング信号と比較レベルPth[12]との比較に基づいて検出物体の有無を判定することが記載されている。そして,その場合,近距離に存在する白紙からの拡散反射光が遮光板76の作用により比較レベルPth[12]より低くなるように,該比較レベルPth[12]が設定されていることは,近距離の白紙に起因する誤検知を防ぐ目的からも明らかである。
そうすると,引用例1記載の発明は,検出物体が近距離,つまり「所定の距離内の領域にある場合」は,遮光板で遮光して,受光量が比較レベル,つまり「所定のしきい値」より低くなるものといえる。
よって,引用例1記載の発明の「鏡面特性を有する検出物体Aが光路上に侵入した場合は,前記偏光フィルタ32が鏡面特性を有する検出物体Aから反射された光を透過せず,かつ,白紙のような拡散反射特性を有する検出物体Aが近距離にある場合は,前記偏光フィルタ32が白紙のような拡散反射特性を有する検出物体Aから反射された光の一部を透過するが,当該光の一部を遮光板76が遮光する」ことと,本願補正発明の「前記被検知物が所定の距離外の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過しないため前記受光量が前記所定のしきい値より低くなり,かつ,前記被検知物が前記所定の距離内の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された前記所定のしきい値以上の光を透過するが当該光を前記遮光マスクが遮光することで前記受光量が前記所定のしきい値より低くなるよう」にすることとは,「被検知物が所定の距離外の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過しないため前記受光量が前記所定のしきい値より低くなり,かつ,被検知物が前記所定の距離内の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過するが当該光を前記遮光マスクが遮光することで前記受光量が前記所定のしきい値より低くなるよう」にした点で共通する。

以上より,引用例1記載の発明と本願補正発明とは,
「光を照射する投光手段と,
前記投光手段により照射された光を反射する反射手段と,
前記反射手段から反射された光を,受光面において受光する受光手段とを備え,
前記投光手段および前記受光手段は,相互に垂直な方向性の偏光軸を有する偏光手段を備え,前記反射手段は,前記投光手段から前記偏光手段を介して入射された偏光の偏光面を変換して,反射し,
前記受光面における受光量と所定のしきい値とに基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する物体検知装置であって,
前記受光手段は,入射される光を集束する集光手段を備え,
受光手段は,前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットに対する所定の部分において,実質的に前記受光面による受光が行われないように,前記所定の部分を遮光する遮光マスクを,前記受光面と前記集光手段との間の位置に備え,
被検知物が所定の距離外の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過しないため前記受光量が前記所定のしきい値より低くなり,かつ,被検知物が前記所定の距離内の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過するが当該光を前記遮光マスクが遮光することで前記受光量が前記所定のしきい値より低くなるよう構成した物体検知装置。」
である点において一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明においては「前記受光手段の受光光軸は前記投光手段の投光光軸に対して平行」であるのに対して,引用例1記載の発明においては,上記二つの光軸が平行であるか明らかではない点。

(相違点2)
遮光マスクが,本願補正発明においては「前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分」を遮光するのに対して,引用例1記載の発明は「回帰反射板14からの反射光が受光素子74の受光面に形成する反射光スポット33よりやや大きな微小開口75の領域外」を遮光する点。

(相違点3)
所定の距離外における被検知物と,所定の距離内の領域に存在する被検知物が,本願補正発明では,同じ被検知物であり,所定の距離内の領域にある被検知物は,その被検知物により反射された光であり受光手段の偏光手段を透過する光の強度が「所定のしきい値以上の光」のものであるのに対して,引用例1記載の発明においては,近距離ではない位置における被検知物は鏡面反射特性を有するものであり,近距離における被検知物は白紙のような拡散反射特性を有するものであり,近距離にある被検知物は,その被検知物により反射された光であり偏光手段を透過する光の強度が特定されていないものである点。

以下,上記各相違点について検討する。

イ 相違点1について
本願補正発明における「受光光軸」および「投光光軸」は,本願明細書の【0043】や図5などにおいて符号22,12として示される光軸であり,これは,受光素子200および受光レンズ240の中心を通る光軸と,投光素子100および投光レンズ120の中心を通る光軸である。
これに対して,引用例1記載の発明においては,受光素子74および受光レンズ31の中心を通る光軸と,発光素子26および投光レンズ27の中心を通る光軸とが,平行であるか否かについては特定されていない。
しかしながら,本願明細書の【0003】,【0033】には,両者がおよそ平行であることしか記載されておらず,両者を平行に配置することは,装置の動作原理から当然に要請される前提条件であるといえ,このような平行配置に格別な技術的意義があるとはいえない。
よって引用例1記載の発明において,上記二つの光軸を平行とすることは,当業者が適宜なし得ることである。

ウ 相違点2について
引用例2の記載事項(イ-1)?(イ-11)を総合すると,引用例2には,投光素子1,投光用レンズ2,回帰反射板,受光用レンズ3,スリット部材4,受光素子5を備えた回帰反射型光電スイッチであり,投光素子1,投光用レンズ2,受光用レンズ3,スリット部材4,受光素子5がほぼ同一の水平面内に配置され,投光素子1および投光用レンズ2の中心を結ぶ軸と,受光用レンズ3および受光素子5の中心を結ぶ軸が,水平面にほぼ沿うように配置され,スリット部材4は白紙のような光反射率の高い物体が投受光素子の間近に存在する場合に,物体からの拡散反射光が受光素子5に入射して誤作動することを防止するために設けられており,上記拡散反射光のような不要な発散光と,回帰反射板からの反射光とを効率よく分離するために,スリット部材4のスリット8形状を,鉛直方向の開口幅を長く,水平方向の投光素子1より離れた側の開口幅は短く,水平方向の他方の開口幅を長くし,スリット部材4における不要な発散光の照射される領域Bにおいて光をほとんど通さず,スリット部材4における回帰反射板からの反射光の照射される領域Aにおいて広い開口面積を有するものとすることについて記載され,スリット部材における不要な発散光の照射領域Bとして,回帰反射板からの反射光領域Aに対して,投光素子1より離れた側の領域が特定されている。
また,引用例2において「投光素子1」よりなる投光手段,「回帰反射板」,「スリット部材4」,「スリット部材4における回帰反射板からの反射光の照射される領域A」は,それぞれ,本願補正発明の「投光手段」,「反射手段」「受光手段」が備える「遮光マスク」,「反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポット」に相当する。
よって,引用例2に記載された「回帰反射板からの反射光領域Aに対して,投光素子1より離れた側の領域」は,本願補正発明における「前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分」に相当する。
そして,引用例1記載の発明,引用例2記載の装置は共に,近距離に位置する被検知物に起因する誤検知を防止するために,その表面から生じる拡散反射光を受光手段の前段に遮光手段を配置して低減させるものであり,引用例1記載の発明において,被検知物の形状や配置によって遮光領域は変化するものといえ,被検知物に応じた最適な遮光領域を特定することは当業者が当然に行うことであるから,引用例1記載の発明における遮光領域を「前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分」として,この部分を含む領域に対して遮光手段を配置するよう想到することは,当業者が容易になし得ることである。
また,引用例2に記載された「スリット部材4」は,不要な発散光の照射される領域B以外の部分も遮光するものであるが,不要な発散光の照射される領域のみを遮光する遮光手段を用いることは,本願出願前における周知技術である。
例えば,特開2002-279870号公報の【0001】,【0045】,【0052】,図1,4,6には,回帰反射型光源センサにおいて,受光素子4に対して無効な光aが入射することを防ぐために,受光素子4の無効な光aが入射する特定範囲のみを遮光する受光側スリット13を用いることについて記載されている。
以上のとおりであるから,引用例1記載の発明における「回帰反射板23からの反射光が受光素子74に形成する反射光スポット33よりやや大きな微小開口75の領域外において,上記領域外を遮光する遮光板76」に代えて,「反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分を遮光する遮光マスク」を用いて,所定の距離内の領域に被検知物がある場合,被検知物により反射されて偏光手段を透過した光を遮光マスクにより遮光するよう想到することは,引用例1記載の発明,引用例2の記載事項,周知技術に基づき,当業者が容易になし得ることである。

エ 相違点3について
上記(カ)にて述べたとおり,所定の距離内の領域にある鏡面反射特性を有したものを想定したものといえる本願補正発明における「被検知物」と,引用例1記載の発明における近距離にある白紙のような拡散反射特性を有した検出物体とは,共に,投光手段および受光手段の近距離に位置して,表面における反射光の一部が偏光手段を透過して装置の誤検知を引き起こすものである。
また,被検知物の違いによる偏光手段を透過する光強度の違いは,被検知物の反射特性の違いに由来するものである。
よって,引用例1記載の発明において,近距離に位置する被検知物として,その表面からの反射光の一部が偏光手段を透過する点で白紙のような拡散反射特性を有した被検知物と共通する鏡面反射特性を有したものを想定し,被検知物からの反射光のうち偏光手段を透過する光強度を所定のしきい値以上となるようにすることは,当業者が容易になし得ることといえる。

さらに,本願補正発明の有する,被検知物の存在を正確に判別できるという効果や,反射手段による反射光の受光量を適度に確保し,これにより被検知物の検出距離を確保するができるという効果は,引用例1記載の発明および引用例2に記載された回帰反射形光電スイッチによって同じく奏される効果であり,引用例1および引用例2の記載事項から当業者が予測できる範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

以上のとおり,本願補正発明は引用例1記載の発明および引用例2の記載事項,並びに周知技術に基づき当業者が容易に想到し得るものといえる。

したがって,本願補正発明は引用例1記載の発明および引用例2の記載事項,並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)小括

以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項および第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

平成21年1月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1ないし請求項6に係る発明は,平成19年8月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。

「光を照射する投光手段と,
前記投光手段により照射された光を反射する反射手段と,
前記反射手段から反射された光を,受光面において受光する受光手段とを備え,
前記受光面における受光量に基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する物体検知装置において,
前記投光手段および前記受光手段は,相互に垂直な方向性の偏光軸を有する偏光手段を備え,
前記反射手段は,前記投光手段から前記偏光手段を介して入射された偏光の偏光面を変換して,反射し,
前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの,前記投光手段より離れた側の部分において,実質的に前記受光面による受光が行われないようにすること,を特徴とする物体検知装置。」(以下,「本願発明」という。)

1 引用例およびその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例1および引用例2の記載事項は,前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。

2 対比・判断

本願発明は,
前記「第2 2」で検討した本願補正発明における「前記受光面における受光量と所定のしきい値とに基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する物体検知装置であって」から「検知」が「受光量」と「所定のしきい値」とに基づくものであるとする限定事項を省いて「前記受光面における受光量に基づいて光を反射する被検知物の存在を検知する物体検知装置において」とし,
「受光手段」の限定事項である「前記受光手段は,入射される光を集束する集光手段を備え,前記受光手段の受光光軸は前記投光手段の投光光軸に対して平行であり」および「前記受光手段が,前記反射手段からの反射光が前記受光手段に形成する光スポットの前記投光手段より離れた側の部分を遮光する遮光マスクを,前記受光面と前記集光手段との間の位置に備え,前記被検知物が所定の距離外の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された光を透過しないため前記受光量が前記所定のしきい値より低くなり,かつ,前記被検知物が前記所定の距離内の領域にある場合は,前記受光手段の偏光手段が当該被検知物から反射された前記所定のしきい値以上の光を透過するが当該光を前記遮光マスクが遮光することで前記受光量が前記所定のしきい値より低くなるよう構成したこと」との構成を省くものである。

そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加し限定したたものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2(3)」にて述べたとおり,引用例1記載の発明および引用例2の記載事項,並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例1記載の発明および引用例2の記載事項,並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用例1記載の発明および引用例2の記載事項,並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-31 
結審通知日 2010-06-07 
審決日 2010-06-18 
出願番号 特願2002-294332(P2002-294332)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01V)
P 1 8・ 121- Z (G01V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡▲辺▼ 純也西村 直史  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 横井 亜矢子
後藤 時男
発明の名称 物体検知装置および物体検知方法  
代理人 松下 正  
代理人 古谷 栄男  
代理人 鶴本 祥文  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ