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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1221217
審判番号 不服2008-4091  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2010-08-05 
事件の表示 特願2001-145176「情報処理装置及びアクセスレベル制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月29日出願公開、特開2002-342166〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成13年5月15日の出願であって、平成18年12月4日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成19年2月13日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成20年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月21日に審判請求がなされるとともに同年3月24日付けで手続補正がなされ、同年9月5日付けで審査官により前置報告がなされ、平成21年12月15日付けで当審より審尋がなされ、これに対して平成22年2月25日付けで回答書が提出されたものである。

そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年3月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】管理プログラム、及び、レベル変更ルーチンを実行させて、プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能とされた情報処理装置であって、
前記管理プログラム、及び、前記レベル変更ルーチンが記憶されたROMと、
前記アクセスレベルが保持されたアクセスレベル保持部と、
前記ROMに記憶された前記管理プログラム及び前記レベル変更ルーチンが実行されたときに前記アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベルを変更する処理部を有する情報処理装置。」


2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭57-147197号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審において付したものである。)。

A.「本発明はメモリ保護に関するものである。記憶装置への誤まつたアクセスによるデータの変更を防ぐためには大別してキー方式とセクメント方式と呼ばれる2つの方法がある。」(第1頁下右欄第12?15行)

B.「まずキー方式について説明する。電子計算機の中央処理装置(以下CPUと略記する)側にはアクセスを行なう記憶装置のアドレスを保持するアドレスレジスタと、アクセスを起こすプログラムに結びつけられるプログラムキー(PK)とがある。一方、メモリは複数のブロツク(A、B、C……)に分割されており、各ブロツクに結びつけられたメモリキー(KA、KB、KC……)がある。メモリアクセスが行なわれるときには、アクセスされるメモリのブロツクに結びつけられたメモリキー3がアドレスレジスタの指示によつて取り出され、上記のプログラムキーと比較される。メモリ保護は誤つたメモリアクセスを防止するためのものであるから、比較の結果がキー同志の一致を示すときはアクセス可能とし、キー同志の不一致を示すときにアクセスを禁止する。
……(中略)……
次に、セグメント方式を説明する。CPU側には、アクセスを行なうメモリのアドレスを保持するアドレスレジスタと、アクセスを起こすプログラムに結びつけられる境界アドレスおよびサイズをそれぞれ格納するレジスタがある。境界アドレスは、該当プログラムがアクセス可能なメモリ域の先頭アドレスを示し、サイズはそのメモリ域の大きさを示している。メモリアクセスが行なわれるときには、アドレスレジスタの示すアドレスが境界アドレスとサイズとによつて示される特定のメモリ域の内にあるか外にあるか否かが調べられ、その結果にもとづいてメモリ保護動作がなされる。すなわち、アドレスレジスタの示すアドレスが、境界アドレスとサイズとにより示されるメモリ域の内であればアクセス可能とし、外側であればアクセスを禁止する。
ところで、通常、多くのデータ処理装置は一旦市場に受入れられた後に更に多くの機能を要求されることがしばしば起こる。ところが従来のデータ処理装置においては記憶保護方式にもよるが、記憶保護機能を拡張する場合には、新しい基本的構造を必要とすることが多く、その為に新旧ソフトウエアの互換性が得られなくなるという重大な問題があつた。ソフトウエアの比重が大きくなつた最近においては、これを救済するために、新しいデータ処理装置では従来装置との互換性モードと称する動作モードを持ち、中央処理装置のプログラム状態語(PSW)に識別子を設け、PSWの内容を変更する命令(例えばPSWコード命令)を用いて上記識別子を変更してデータ処理装置全体の動作モードを切換え、従来装置のソフトウエアを有効化させる手段がとられている。この場合は新旧それぞれのモードで動作可能なように制御プログラムはそれぞれのモードについて用意され、また、これらを切り替えるためのプログラムも用意されている。しかしながら、PSWの内容を変更する命令は一般に特権命令と呼ばれる特殊な命令で、制御プログラムしか発行することができない。このため通常の処理プログラムから上記識別子を変更させる場合には該処理プログラムと制御プログラムとの間で連絡をとらなければならないが、このためにかなり大きなソフトウエアオーバヘツドを生じてしまう。記憶保護機能を拡張してよりきめ細かい記憶保護を実現しようとする時は、このオーバヘツドはより問題となる。さらには上記識別子を変更するために特定の命令を必要とするため、従来装置のソフトウエアを一部変更しなければならない場合が生じる。特に従来装置のソフトウエアを記憶保護機能を拡張した環境下で動作させる場合には、従来ソフトウエアの中に上記のPSWを変更する命令もしくは処理プログラムと制御プログラムとの間で連絡を行なうための手続き処理を追加挿入しなければならず、事実上不可能になつてくる。」(第1頁下左欄第16行?第2頁下右欄第11行)

C.「本発明の目的とするところは上述の問題点を解消することにあり、記憶保護情報の変更が制御プログラムの介入なしに行なわれ、変更処理の容易な記憶保護方式の提供にある。
本発明はある特定のアドレスを記憶しておきCPVにおいて処理されるプログラムのうち、メモリをアクセスするある定められた命令が実行されるとき、そのアクセスするアドレスと上記の特定のアドレスとがある決められた関係にあることを検知して記憶保護情報を変更する手段を新たに設けたものである。」(第2頁下右欄第12?第3頁上左欄第2行)

D.「第1図のメモリマツプはメモリの使用方法の概略を示したもので、記号a、b、c、d、e……で示す分割されたメモリの領域は、それぞれ全く異つた処理に使用される。たとえば、領域イはオンライン業務プログラムに、領域bはバツチ処理プログラムに、また領域cは会話形端末制御プログラムに、……という具合に使用される。これらを仮にサブシステムと呼ぶことにする。またeの領域のように、各サブシステムからバツフア域として使用できるワークエリアW1、W2、W3……を集合させたような領域もある。ひとつのサブシステムは、複数のプログラムから成つており、それらはたとえば領域bのようにP1、P2、P3……というように示される。具体的には、システムの制御プログラムあるいはスーパバイザとのリンクを行なうプログラムの領域、データ管理などを行なう管理プログラムの領域、業務処理を行なう業務プログラムの領域などである。
第2図に本発明の一実施例を示す。図中、1はメモリの各エリアに対応して設けられた記憶保護情報を格納するテーブル、2は処理装置側の記憶保護情報を格納するレジスタである。本実施例での記憶保護情報について以下に説明する。
第1図のようなメモリの使用が行なわれているとすると、a、b、c……のようなサブシステムに対してはサブシステムごとに固有のメモリキーを割当てられる。たとえば、aのサブシステムにはキーとして“1”を割当て、bのサブシステムにはキーとして“2”を割当て、cのサブシステムにはキーとして“3”を割当てるという具合である。サブシステム内のプログラムでは、たとえば、管理プログラムでは領域P1とP2とP3をアクセス可能とし、業務プログラム(user Program)では領域P2とP3をアクセス可能とするというように、サブシステム内でレベル分けしたメモリ保護が要求される。
このために上記の例ではP1に“0”、P2に“1”、P3に“2”を保護情報として与え、プログラム側では管理プログラムには“0”、user Programには“1”を与える。プログラム側はこの他サブシステムに対するキーも持つている。そしてサブシステムに与えられたキーが一致しかつ上記のプログラム側のキーがメモリ側のキーより小さいか等しいときアクセス可能とすれば上述の要求されるメモリ保護が実現できる。以下、サブシステムに対する保護情報をX、サブシステム内の保護情報をYで表わす。上記の例でP1に“2”、P2に“1”、P3に“0”を与え、プログラム側のキーがメモリ側のキーより大きいか等しいときアクセス可能としてもよい。」(第3頁上左欄第3行?同頁下左欄第14行)

E.「第4図は本実施例における保護キーの付与を示す。サブシステムaにはX=0、bにはX=1のように付与し、更にサブシステムb内のエリアP1にはX=1、Y=0のように更なる保護キーを付与する。第2図保護テーブル1にはそれぞれの領域を示すアドレスでポイントされる位置にFig.4の保護キーXとYの値が格納されている。一方、プログラムが実行されるときには一般にPSW(Program Status Word)と呼ばれる制御用ワードが用意される。この例をFig.3に示す。ここには割込マスク、コンデイシヨンコード、メモリ保護キー、命令アドレスなどが一般に含まれている。プログラムの実行においては前記の保護キーがレジスタ2に読み出されてセツトされる。このキーもメモリ側と同様のサブシステムについてつけられたキーXと、管理プログラムかユーザプログラムかを示すキーYとからなる。」(第3頁下左欄第15行?同頁下右欄第12行)

F.「さて、例えば第4図のような保護キーが付与され、現在サブシステムbのユーザプログラムが実行されているとすると、レジスタ2のXは“1”、Yは“1”である。この状態ではP1の領域(X=1、Y=0)にはアクセス不可である。」(第4頁下左欄第12?17行)

G.「以上のような構成によれば誤まったメモリアクセスのアドレスが作られたとしても比較器15、16の少なくとも一方の出力がなく、アンドゲート17、18がともに開かないためアクセスは禁止される。そして命令がある特定の命令で、かつそのときのメモリアクセスのアドレスが特定のものであつた場合には保護キーが変更されてアクセス不可であるものをアクセス可能とすること、即ち、ユーザプログラムの実行でありながら保護キーは管理プログラムのものに変えてユーザプログラムから管理プログラムのサブルーチン使用することができる。」(第5頁上左欄第2?13行)

H.システムの構成図を示した第2図には、中央処理装置(CPU)が、テーブル1及びレジスタ2を備えた演算処理装置4を有することが、図示されている。


a.Dの「ひとつのサブシステムは、複数のプログラムから成つており、それらはたとえば領域bのようにP1、P2、P3……というように示される。具体的には、システムの制御プログラムあるいはスーパバイザとのリンクを行なうプログラムの領域、データ管理などを行なう管理プログラムの領域、業務処理を行なう業務プログラムの領域などである。」及び「サブシステム内のプログラムでは、たとえば、管理プログラムでは領域P1とP2とP3をアクセス可能とし、業務プログラム(user Program)では領域P2とP3をアクセス可能とするというように、サブシステム内でレベル分けしたメモリ保護が要求される。」から、引用文献には、データ管理などを行なう管理プログラム及び業務処理を行なう業務プログラムというプログラム毎に、アクセス可能とするメモリの領域を決定することで、レベル分けしたメモリ保護を行うこと、が記載されている。

そして、Dの「このために上記の例ではP1に“0”、P2に“1”、P3に“2”を保護情報として与え、プログラム側では管理プログラムには“0”、user Programには“1”を与える。プログラム側はこの他サブシステムに対するキーも持つている。そしてサブシステムに与えられたキーが一致しかつ上記のプログラム側のキーがメモリ側のキーより小さいか等しいときアクセス可能とすれば上述の要求されるメモリ保護が実現できる。以下、サブシステムに対する保護情報をX、サブシステム内の保護情報をYで表わす。」、Eの「第4図は本実施例における保護キーの付与を示す。サブシステムaにはX=0、bにはX=1のように付与し、更にサブシステムb内のエリアP1にはX=1、Y=0のように更なる保護キーを付与する。第2図保護テーブル1にはそれぞれの領域を示すアドレスでポイントされる位置にFig.4の保護キーXとYの値が格納されている。」及び「プログラムの実行においては前記の保護キーがレジスタ2に読み出されてセツトされる。このキーもメモリ側と同様のサブシステムについてつけられたキーXと、管理プログラムかユーザプログラムかを示すキーYとからなる。」、Fの「例えば第4図のような保護キーが付与され、現在サブシステムbのユーザプログラムが実行されているとすると、レジスタ2のXは“1”、Yは“1”である。この状態ではP1の領域(X=1、Y=0)にはアクセス不可である。」から、前記のレベル分けしたメモリ保護は、レジスタにセットされた保護キーに基づいて行われると解される。

Eの「プログラムが実行されるときには一般にPSW(Program Status Word)と呼ばれる制御用ワードが用意される。この例をFig.3に示す。ここには割込マスク、コンデイシヨンコード、メモリ保護キー、命令アドレスなどが一般に含まれている。プログラムの実行においては前記の保護キーがレジスタ2に読み出されてセツトされる。」から、プログラムが実行されるときに保護キーがレジスタにセツトされることが記載されている。そして、Bの「電子計算機の中央処理装置(以下CPUと略記する)」、及び、Hの図示態様から、前記保護キーがレジスタにセツトされる処理は、電子計算機で実行されるものである。
ここで、Eの「プログラムの実行においては前記の保護キーがレジスタ2に読み出されてセツトされる。このキーもメモリ側と同様のサブシステムについてつけられたキーXと、管理プログラムかユーザプログラムかを示すキーYとからなる。」から、Eの前記「プログラムが実行されるときには…(中略)…前記の保護キーがレジスタ2に読み出されてセットされる。」の記載における「プログラム」とは、少なくとも、「管理プログラム」ないしは「業務プログラム」を含むことは明らかである。

よって、引用文献には、
データ管理などを行なう管理プログラムないしは業務処理を行なう業務プログラムが実行されるときに、各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護を行うための保護キーがレジスタにセツトされる電子計算機、
が記載されている。

b.Eの「プログラムが実行されるときには一般にPSW(Program Status Word)と呼ばれる制御用ワードが用意される。この例をFig.3に示す。ここには割込マスク、コンデイシヨンコード、メモリ保護キー、命令アドレスなどが一般に含まれている。プログラムの実行においては前記の保護キーがレジスタ2に読み出されてセツトされる。このキーもメモリ側と同様のサブシステムについてつけられたキーXと、管理プログラムかユーザプログラムかを示すキーYとからなる。」、Fの「例えば第4図のような保護キーが付与され、現在サブシステムbのユーザプログラムが実行されているとすると、レジスタ2のXは“1”、Yは“1”である。この状態ではP1の領域(X=1、Y=0)にはアクセス不可である。」から、引用文献には、少なくとも管理プログラムないしは業務プログラムが実行されるときには、プログラム状態語PSWの情報を読み出して保護キーとしてレジスタにセットすること、が記載されている。
ここで、「プログラム」の「実行」は中央処理装置により行われることは自明であり、「プログラム状態語」とは、コンピュータのシステム状態を表し、該コンピュータの中央処理装置(CPU)の動作の制御や割り込み処理に利用する情報であることは技術常識である。そして、Hから、前記「レジスタ2」は、中央処理装置が有する演算処理装置4に備えられるものである。してみれば、前記保護キーをレジスタにセツトするのは中央処理装置であると解される。


以上から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

データ管理などを行なう管理プログラムないしは業務処理を行なう業務プログラムが実行されるときに、前記各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護を行うための保護キーがレジスタにセツトされる電子計算機であって、
前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする中央処理装置、
を有することを特徴とする電子計算機。


3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

本願発明の「プロセス」は、当該「プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定」されるものである。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明には、前記「アクセスを許可する領域を決定」することに関して、段落【0002】に「タスクなどのプログラムの実行単位毎にアクセス許可領域(デバイスも含む)を設定し、前述のアクセス許可の設定はタスク毎に与えられるレベルで制御される」と、段落【0026】に「レベルL1は、タスクプログラムPt1、タスクプログラムPt1で用いられるタスクデータDt1へのアクセスを許可するレベルである。レベルL2は、タスクプログラムPt2、タスクプログラムPt2で用いられるタスクデータDt2へのアクセスを許可するレベルである。レベルL3は、タスクプログラムPt3、タスクプログラムPt3で用いられるタスクデータDt3へのアクセスを許可するレベルである。アクセスレベルは、CPU21のプロセス毎に変更可能とされている。」と記載されている。すなわち、タスクやプログラム毎にアクセスを許可する領域を設定することが記載されている。
してみれば、引用発明の「各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定」される「各プログラム」である、「データ管理などを行なう管理プログラム」ないしは「業務処理を行なう業務プログラム」は、本願発明の「プロセス」に相当する。

引用発明の「前記各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護を行うための保護キー」は、「プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定」するための情報であるから、本願発明の「アクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベル」に相当する。
そして、引用発明の前記「保護キー」が「セット」された「レジスタ」は、本願発明の「前記アクセスレベルが保持されたアクセスレベル保持部」に相当する。

さて、本願発明の「情報処理装置」は、「管理プログラム、及び、レベル変更ルーチンを実行させて、プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能」とするものであるところ、前記「アクセスレベル」は「前記アクセスレベル保持部に保持され」て「処理部」により「変更」される「アクセスレベル」である。そして、この「前記アクセスレベル保持部に保持され」た「アクセスレベル」を「変更」することで、「プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定」されて「アクセスレベルを変更可能」とするものである。
これに対して、引用発明の「電子計算機」は、「データ管理などを行なう管理プログラムないしは業務処理を行なう業務プログラムが実行されるとき」に「レベル分けしたメモリ保護を行うための保護キーがレジスタにセツトされる」ものである。そして、この「セット」された「レベル分けしたメモリ保護を行うための保護キー」によって、「各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定」される。してみれば、当該「セット」された「保護キー」によりなされる「レベル分けしたメモリ保護」の状態は、前記「データ管理などを行なう管理プログラムないしは業務処理を行なう業務プログラムが実行されるとき」の前に前記「レジスタ」にセットされていた「保護キー」によりなされる「レベル分けしたメモリ保護」の状態から、該「保護キー」の値に応じて当然に変更され得るものである。
したがって、引用発明の「データ管理などを行なう管理プログラムないしは業務処理を行なう業務プログラムが実行されるときに、前記各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護を行うための保護キーがレジスタにセツトされる電子計算機」と、本願発明の「管理プログラム、及び、レベル変更ルーチンを実行させて、プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能とされた情報処理装置」とは、プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能とされた情報処理装置である点で共通する。
また、引用発明の「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする中央処理装置」と、本願発明の「前記ROMに記憶された前記管理プログラム及び前記レベル変更ルーチンが実行されたときに前記アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベルを変更する処理部」とは、アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベルを変更する処理部である点で共通する。


以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)
プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能とされた情報処理装置であって、
前記アクセスレベルが保持されたアクセスレベル保持部と、
前記アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベルを変更する処理部と、
を有する情報処理装置。

(相違点1)
本願発明は「管理プログラム、及び、レベル変更ルーチンを実行させて」プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能とするのに対して、引用発明は「データ管理などを行なう管理プログラムないしは業務処理を行なう業務プログラムが実行されるときに」前記各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護を行うための保護キーがレジスタにセツトされる点。

(相違点2)
本願発明は「前記管理プログラム、及び、前記レベル変更ルーチンが記憶されたROM」を有するのに対して、引用発明はそのようなROMを有するかどうか不明である点。

(相違点3)
本願発明の「処理部」は「前記ROMに記憶された前記管理プログラム及び前記レベル変更ルーチンが実行されたときに」前記アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベルを変更するのに対して、引用発明の「中央処理装置」は「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して」前記保護キーとして前記レジスタにセットする点。


4.判断
上記の相違点1乃至相違点3について検討する。

本願発明は「管理プログラム、及び、レベル変更ルーチンを実行させて、プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能と」して、「前記ROMに記憶された前記管理プログラム及び前記レベル変更ルーチンが実行されたときに前記アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベルを変更する処理部」を有している。
上記の「管理プログラム」及び「レベル変更ルーチン」を「実行」させて「アクセスレベルを変更」する動作に関して、本願明細書の発明の詳細な説明には、
段落【0019】には「また、CPU21は、内部ROM26に記憶された管理プログラム、レベル変更ルーチンRA、RBによりアクセスレベルの変更を管理している。」と、
「CPU21」の動作の概略が記載されている。
そして、上記の「アクセスレベルの変更を管理している」態様をさらに具体的に説明して、本願明細書の発明の詳細な説明に、
段落【0027】に「CPU21は、プロセス毎にアクセスレベルを変更する処理を実行する。CPU21は、アクセスレベルを下位のアクセスレベルから上位のアクセスレベルに変更する、例えば、アクセスレベルL1?L3からL0に変更する場合には、レベル変更ルーチンRAを実行する。また、CPU21は、アクセスレベルを上位のアクセスレベルから下位のアクセスレベルに変更する、例えば、アクセスレベルL0からL1?L3に変更する場合には、レベル変更ルーチンRBを実行する。」と、
そして、
段落【0053】に「CPU21は、ステップS1-1でプログラムの実行を管理するための管理処理を行なっている。管理処理は全体を統括管理するため、そのアクセスレベルは全てのデバイスにアクセス可能なアクセスレベルAL0に設定されている。」と、
段落【0054】に「ステップS1-2で他のプログラム、例えば、第1タスクプログラムPt1の実行要求があると、ステップS1-3でレベル変更ルーチンRBが実行される。」と、
段落【0056】に「レベル変更ルーチンの処理フローチャートを示す。」と、
段落【0057】に「CPU21は、ステップS2-1でレベル保持部23にアクセスし、ステップS2-2で他のプログラムに予め設定されたアクセスレベルをアクセスレベル保持部23にライトする。第1タスクプログラムPt1の場合、レベル保持部23にアクセスレベルAL1を保持する。」と、
段落【0058】に「以上によりアクセスレベルがレベルAL0からAL1に変更される。」と、
さらに、
段落【0061】に「ステップS1-6で他のプログラムが終了すると、ステップS1-7でレベル変更ルーチンRAが実行される。レベル変更ルーチンRAは、他のプログラムのアクセスレベルを管理プログラムのアクセスレベルL0に変更するプログラムである。」と、
それぞれ、記載されている。
すなわち、本願明細書の発明の詳細な説明においては、
レベル保持部23に保持された「プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベル」を変更する処理は、段落【0027】及び段落【0056】?【0057】に記載されるように、レベル変更ルーチンRAないしはレベル変更ルーチンRBが実行するのであって、全体を統括管理する管理プログラムは該変更する処理には直接は関与しておらず、
前記全体を統括管理する管理プログラムは、段落【0053】?【0054】、【0061】に記載されるように、他のプログラムの実行・終了に応じて、前記レベル変更ルーチンRAないしはレベル変更ルーチンRBの実行を管理することで前記「アクセスレベルを変更可能」としている、
と認められる。
したがって、本願発明の「管理プログラム、及び、レベル変更ルーチンを実行させて、プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更可能」とするという発明特定事項は、「管理プログラム、及び、レベル変更ルーチンを実行させて」、「プロセス毎にアクセスを許可する領域を決定するためのアクセスレベルを変更」する「レベル変更ルーチン」の実行を「管理プログラム」で管理することで、「アクセスレベルを変更可能」にする、という態様を包含していると認められる。
同様に、本願発明の「前記ROMに記憶された前記管理プログラム及び前記レベル変更ルーチンが実行されたときに前記アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベルを変更する」との発明特定事項は、「前記管理プログラム及び前記レベル変更ルーチンが実行されたとき」に、「管理プログラム」によって「レベル変更ルーチン」の「実行」を管理して、該「レベル変更ルーチン」により「前記アクセスレベル保持部に保持されたアクセスレベル」を「変更」する、という態様を包含していると認められる。

これに対して、引用発明の「中央処理装置」は、どのようにして、「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語PSWの情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」という処理を実行するのか、不明である。
しかし、「2.引用文献」の「D」に「ひとつのサブシステムは、複数のプログラムから成つており、それらはたとえば領域bのようにP1、P2、P3……というように示される。具体的には、システムの制御プログラムあるいはスーパバイザとのリンクを行なうプログラムの領域、データ管理などを行なう管理プログラムの領域、業務処理を行なう業務プログラムの領域などである。」と記載されており、したがって、引用発明の「電子計算機」は、「データ管理などを行なう管理プログラム」ないしは「業務処理を行なう業務プログラム」の他に、「システムの制御プログラムあるいはスーパバイザ(以下、「システムの制御プログラム等」という。)」を搭載している。

ところで、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭61-221818号公報には、次の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審において付したものである。以下、同様。)。
ア.「第2図は第1図のCPU2の入力処理ルーチンの概略を示している。
第2図のステップSlで装置が起動されると、CPU2はステップS2でキーボードlからのキー入力を待つ。キーボード1からキー入力が行なわれるとステップS3に移行し、入力されたデータをRAM4に格納するかどうかを判定する。この判定はキーボードのモードスイッチなどの操作状態を判定することにより行なう。
RAM4に入力情報を格納しない場合には直接、格納する場合には格納動作をステップS4で行なった後ステップS5に移る。ステップS5では上記と同様にキーボードlの操作状態を調べ、入力データをモールス符号に変換するかどうかを判定する。
モールス符号への変換を行なう場合にはステップS6に移り制御線Alを介してコード変換器5を制御し、キーボード1からの入力データないしRAM4の任意のアドレスに格納されているデータをデータバスDlを介してコード変換器5にセットする。コード変換器5は与えられた1バイトないし2バイトの文字データをモールス符号に変換し、変換結果はステップS7でDA変換器6に出力される。DA変換器6はステップS8で入力された符号に基づきスピーカ7を駆動しモールス符号音を出力する。」(第2頁下左欄第12行?同頁下右欄第19行)
イ.「以上のルーチンはサブルーチンとしてROM3内の主制御プログラムに組み込んでおけばよく、入力情報のモニタに限らず、データ出力時にも用いることができる。本実施例によれば通常の音声出力よりもコード変換器の構成が簡単になるので装置全体を簡単安価に構成することができる。」(第3頁上左欄第4?9行)

同様に、本願出願前に頒布された刊行物である特開平04-365161号公報には、次の事項が記載されている。
ウ.「【0011】図1に於いて、1はシステム全体の制御を司るCPUであり、ここでは、システムの初期化処理の実行に於いて、NDP3が実装されていない状態でNDPアクセスがあったとき出力されるデータ(NDP無しの出力データ)の値を変更することのできる処理が含まれる。
【0012】2はシステム初期化ルーチンを含むシステム制御プログラムが格納されるROMであり、CPU1の制御の下にアクセスされるもので、ここでは、システム初期化ルーチン内に、NDPデータレジスタ4にデータ(NDP無しの出力データ)をセットする処理ルーチンが含まれる。」
エ.「【0020】このように、NDP3が実装されていないときにNDPアクセスがあると、NDPデータレジスタ4にセットされたNDP無しを示すデータが、NDP出力データとして読出され、NDP実装有無の判別対象データとなるため、現在のNDPデータレジスタの設定値ではNDPの有無判別を誤るアプリケーションソフトウェアを使用対象とする際に、初期化ルーチンで上記NDPデータレジスタ4の設定値を変更すればよく、従って、従来のようにハードウェアを変更する必要がなく、NDP無しの出力データの修正作業が容易に行なえる。」

さらに、本願出願前に頒布された刊行物である特開平08-044473号公報には、次の事項が記載されている。
オ.「【0050】すなわち、モールス符号入力部11からの入力データまたはRAM14に格納されている入力データを正規のモールス符号信号に変換し、モールス符号信号をモールス符号音信号に変換し、このモールス符号音信号によって報知部17を駆動して長短音のモールス符号音をユーザに対して出力することにより、ユーザは、対話形式によって正確に情報を確認してからデータを転送することが可能になるので、視覚障害があるユーザが誤りなく容易にデータを入力し転送することができる。以上のルーチンはサブルーチンとしてROM13内の主制御プログラムに組み込んでおけばよい。」

そして、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-312387号公報には、次の事項が記載されている。
カ.「【0031】以下に、本システムの制御処理について説明する。図7は、CPU201がROM203に格納するプログラムに基づいて実行する制御処理のメインルーチンのフローチャートである。システムの電源が投入された後、プログラムが起動されると、まず、CPU201は各処理で必要な変数等の初期化およびディスプレイ2上への初期メニュー画面21(図3)の表示等の初期設定処理を行う(S1)。次に、初期メニュー画面21上で処理の選択が行われたか否かを判定する(S2)。ここで、「データ登録」23が選択された場合、スキャナ8等の画像入力装置から画像をデータとして取り込み、所定の情報を付加してデータベースへ登録するデータ登録処理を実行する(S3)。「キーワード登録」24が選択された場合、画像データへ付加するキーワードをデータベースへ登録する処理を行うキーワード登録処理を実行する(S4)。「データ検索」25が選択された場合、所望の画像データをデータベースから検索する検索処理を実行する(S5)。「データ出力」26が選択された場合、画像データをディスプレイ2上に表示またはプリンタ7により印刷するデータ出力処理を実行する(S6)。「その他のメニュー」27が選択された場合、上記処理以外の所定の処理を実行する(S7)。初期メニュー画面21上で何も選択されない場合は、ステップS8へ進む。ステップS8では、その他の処理を行う。」
キ.「【0033】図8はメインルーチンにおけるデータ登録処理(図6のステップS3)のフローチャートを示す。データ登録処理において、CPU201はまず、自動キー付けモードの動作モードでデータ登録を行うか否かを判断する(S301)。この判断はユーザがデータ登録画面29で入力した値に基づいて行う。ここで、自動キー付けモードとは、ユーザが所定の候補の中からキーワードを選択することができるように、事前にキーワード辞書に登録されているキーワードの中から、画像データに付随する内容情報に基づいてキーワードを自動的に付加または、キーワード候補を選択し、表示する動作モードである。判断した(S301)結果、自動キー付けモードでデータ登録を行う場合は、システムが自動キー付けモードか否か判断するためのフラグである自動キー付けモードフラグをONにし(S302)、自動キー付けモードでデータ登録を行わない場合は自動キー付けモードフラグをOFFにする(S303)。」

ア?キから、電子計算機システムの主制御プログラムをROMに記憶すること、さらには、前記電子計算機システムの制御に関する特定の処理を、前記主制御プログラムで実行が管理されるルーチンすなわち前記主制御プログラムのサブルーチンとしてプログラム化して、前記主制御プログラムとともにROMに記憶することは、慣用手段であった。

ここで、「プログラム状態語」とは、コンピュータのシステム状態を表し、該コンピュータの中央処理装置(CPU)の動作の制御や割り込み処理という電子計算機システムの制御に利用する情報であることは技術常識である。
してみれば、引用発明の「中央処理装置」がする前記「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」という処理を、「データ管理」や「業務処理」という特定の「業務」を行う「プログラム」の処理の基盤となるシステムの制御プログラム等の制御の下に行われるプログラムの処理として実現し、当該「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」というプログラムをシステムの制御プログラム等により実行管理されるルーチンとして、システムの制御プログラム等とともにROMに格納することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

さて、本願明細書の段落【0002】に「複数のタスクを実行するための管理プログラム」と、段落【0052】に「図9は本発明の一実施例の管理プログラムの処理フローチャートを示す。」と、段落【0053】に「CPU21は、ステップS1-1でプログラムの実行を管理するための管理処理を行なっている。管理処理は全体を統括管理するため、そのアクセスレベルは全てのデバイスにアクセス可能なアクセスレベルAL0に設定されている。」と記載されている。
これに対して、引用発明において、「中央処理装置」が前記システムの制御プログラム等の制御の下にする前記「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」という処理を、システムの制御プログラム等により実行管理させるとき、該システムの制御プログラム等は本願発明の「管理プログラム」に対応するものとなるが、引用文献には、該システムの制御プログラムが「アクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護を行う」プログラムであるかどうかは明記されていない。
しかしながら、引用発明の「電子計算機」の「中央処理装置」が、前記システムの制御プログラムを実行していることは当然であり、「2.引用文献」の「D」に「P1、P2、P3…(中略)…は、システムの制御プログラムあるいはスーパバイザとのリンクを行なうプログラムの領域、データ管理などを行なう管理プログラムの領域、業務処理を行なう業務プログラムの領域などである」及び「管理プログラムでは領域P1とP2とP3をアクセス可能とし、業務プログラム(user Program)では領域P2とP3をアクセス可能とする」と記載されている。したがって、システムの制御プログラム等が、前記「システムの制御プログラムあるいはスーパバイザとのリンクを行なうプログラムの領域、データ管理などを行なう管理プログラムの領域、業務処理を行なう業務プログラムの領域など」をアクセス可能とされていることは明らかである。
よって、前記システムの制御プログラム等は、「データ管理などを行なう管理プログラム」と少なくとも同「レベル」で、「実行されるときに、前記各プログラム毎にアクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護」がなされるプログラムであると認められる。

ところで、「2.引用文献」の「B」に、「記憶保護機能を拡張する場合には、新しい基本的構造を必要とすることが多く、その為に新旧ソフトウエアの互換性が得られなくなるという重大な問題…(中略)…を救済するために…(中略)…中央処理装置のプログラム状態語(PSW)に識別子を設け、PSWの内容を変更する命令(例えばPSWコード命令)を用いて上記識別子を変更してデータ処理装置全体の動作モードを切換え、従来装置のソフトウエアを有効化させる手段がとられている。…(中略)…しかしながら、PSWの内容を変更する命令は一般に特権命令と呼ばれる特殊な命令で、制御プログラムしか発行することができない。このため通常の処理プログラムから上記識別子を変更させる場合には該処理プログラムと制御プログラムとの間で連絡をとらなければならないが、このためにかなり大きなソフトウエアオーバヘツドを生じてしまう。…(中略)…従来ソフトウエアの中に上記のPSWを変更する命令もしくは処理プログラムと制御プログラムとの間で連絡を行なうための手続き処理を追加挿入しなければならず、事実上不可能になつてくる。」と記載されている。
すなわち、記憶保護機能を拡張するためには、中央処理装置のプログラム状態語の内容をシステムの制御プログラムしか発行することができない特権命令によって変更させる必要があるが、通常の処理プログラムから前記プログラム状態語の内容を変更するには、該処理プログラムと制御プログラムとの間で連絡を行なうための手続き処理を追加挿入しなければならず、大きなソフトウエアオーバヘツドを生じてしまうため事実上不可能であったというものである。
しかしながら、引用発明の「中央処理装置」が行う「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」という処理は、上記のようにプログラム状態語の内容を変更するのではなく、単に、プログラム状態語の内容を読み出すにすぎないから、上記の、処理プログラムと制御プログラムとの間で連絡を行なうための手続き処理を追加挿入することが事実上不可能であったという事情が、前記「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」という処理をプログラムとしてルーチン化するうえでの阻害要因となるとは認められない。

以上から、引用発明において、「中央処理装置」が行う「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」という処理をシステムの制御プログラム等により実行管理されるプログラムとしてルーチン化して、システムの制御プログラム等とともにROMに格納することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

したがって、引用発明において、ROMに記憶されたシステムの制御プログラム等と「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」というルーチンを実行させて、該「プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」というルーチンをシステムの制御プログラム等で実行管理することで「アクセス可能とするメモリの領域を決定してレベル分けしたメモリ保護を行う」こと、すなわち、制御プログラム等及び「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」というルーチンを実行させて、実行されるプログラム毎にアクセス可能とするメモリ領域を決定することでレベル分けしたメモリ保護を可能とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

同様に、引用発明において、ROMに記憶されたシステムの制御プログラム等と「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」というルーチンが実行されたときに、システムの制御プログラム等によって「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」というルーチンの「実行」を管理して、該ルーチンにより、前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに「レジスタ」に当該プログラムに対応した「保護キー」を「セット」すること、すなわち、ROMに記憶されたシステムの制御プログラム等と「前記管理プログラムないしは前記業務プログラムが実行されるときに、プログラム状態語の情報を読み出して前記保護キーとして前記レジスタにセットする」というルーチンが実行されたときに、レジスタに実行されるプログラムに対応する「保護キー」をセットすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
よって、相違点1乃至相違点3は、格別のものではない。

以上、検討したように、各相違点は格別のものではなく、また、本願発明によってもたらされる効果も、引用発明及び前記慣用手段に基づいて当業者であれば予測可能なものにすぎず、格別のものとは認められない。


5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献及び前記慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2010-06-02 
結審通知日 2010-06-08 
審決日 2010-06-21 
出願番号 特願2001-145176(P2001-145176)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 誠  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 山崎 達也
宮司 卓佳
発明の名称 情報処理装置及びアクセスレベル制御方法  
代理人 伊東 忠彦  

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