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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24D
管理番号 1221235
審判番号 不服2008-21521  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-21 
確定日 2010-08-05 
事件の表示 特願2000-164054号「床暖房システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月14日出願公開、特開2001-343133号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成12年 6月 1日 本件出願
平成20年 4月21日 拒絶理由通知
平成20年 6月30日 意見書・手続補正書
平成20年 7月17日 拒絶査定
平成20年 8月21日 本件審判請求
平成22年 3月 5日 最後の拒絶理由通知
平成22年 4月27日 意見書・手続補正書

第2 平成22年4月27日付け手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正するとともに、それに関連して発明の詳細な説明の一部を補正するものであって、特許請求の範囲についての補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】温水生成手段によって生成した温水を循環手段によって床面に敷設した温水配管内へ循環させて暖房する床暖房システムにおいて、
前記温度生成手段は、前記床面の温度もしくは前記床面の接触温度を設定床温に制御する第1の能力制御と、室内温度を設定室温に制御する第2の能力制御とを有し、
運転開始から所定時間まで、もしくは室温が所定温度に達するまでは、前記第2の能力制御を行い、運転開始から所定時間経過後もしくは室温が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行うようにした床暖房システム。」

(2)補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】床部分に敷設されたチューブに温水を循環させる循環ポンプと、温水加熱器と、該温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁とを有する熱源機と、床面の温度を検知する床温センサと、室内温度を検知する室温センサと、前記床温センサからの検知温度と設定床温との比較及び前記室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力する制御装置と、該制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記床温センサの検知温度を設定床温に制御する第1の能力制御と、前記室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御とを有し、運転開始から所定時間まで、もしくは前記室温センサの検知温度が所定温度に達するまでは、第2の能力制御を行い、運転開始から所定時間経過後もしくは前記室温センサの検知温度が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行うと共に、前記第2の能力制御中に、前記床温センサの検知温度も監視し、床面の温度が上昇しすぎないよう前記温水加熱器の能力を制限することを特徴とする床暖房システム。」

2 補正の適否
前記特許請求の範囲についての補正は、
本件補正前の「温水生成手段によって生成した温水を循環手段によって床面に敷設した温水配管内へ循環させて暖房する暖房システム」を、「床部分に敷設されたチューブに温水を循環させる循環ポンプと、温水加熱器と、該温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁とを有する熱源機と、床面の温度を検知する床温センサと、室内温度を検知する室温センサと、前記床温センサからの検知温度と設定床温との比較及び前記室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力する制御装置と、該制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置と、を備え」たものとし、
本件補正前の「前記温度生成手段は、前記床面の温度もしくは前記床面の接触温度を設定床温に制御する第1の能力制御と、室内温度を設定室温に制御する第2の能力制御とを有し」を、「前記制御装置は、前記床温センサの検知温度を設定床温に制御する第1の能力制御と、前記室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御とを有し」とし、
本件補正前の「運転開始から所定時間まで、もしくは室温が所定温度に達するまでは、前記第2の能力制御を行い、運転開始から所定時間経過後もしくは室温が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行うようにした」を、「運転開始から所定時間まで、もしくは前記室温センサの検知温度が所定温度に達するまでは、第2の能力制御を行い、運転開始から所定時間経過後もしくは前記室温センサの検知温度が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行う」とし、
「前記第2の能力制御中に、前記床温センサの検知温度も監視し、床面の温度が上昇しすぎないよう前記温水加熱器の能力を制限する」点を付加したものである。
そうすると、本件補正における特許請求の範囲についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後における請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1の(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)刊行物
これに対して、当審において平成22年3月5日付けで通知した最後の拒絶理由で引用された、本件出願前に日本国内おいて頒布された刊行物である実願昭55-92636号(実開昭57-14716号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)及び特開平8-303798号公報(以下「刊行物2」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

ア 刊行物1
なお、以下、t_(1)等はt1等と表記した。

(ア)第1ページ第11行?第2ページ第3行
「この考案は、室温を基準として制御を行うようにした床暖房システムの温度制御装置に関するものである。
従来、床暖房システムの温度制御装置は、第1図に示すようなものであつた。第1図において、1は床暖房パネル、2は温水循環ポンプ、3は温水タンク、4はバーナ、5は温度制御部、6は温度検出素子、7は可変抵抗器等の温度設定器である。
第3図は第1図の従来の温度制御装置の温度制御特性を示すもので、曲線Aは外気温度、曲線Bは室温、曲線Cは床暖房パネル1の温度特性を示し、縦軸は温度、横軸は時間を示す。」

(イ)第2ページ第4行?第3ページ下から4行目
「次に、動作について第1図、第3図を参照して説明する。床暖房パネル1に取り付けられた温度検出素子6によつて床暖房パネル1の温度を検出し、温度制御部5によりバーナ4の燃焼を制御して温水温度を一定にしたり、温水循環ポンプ2をオン・オフして床暖房パネル1の温度を温度設定器7で設定された温度に保つ。この場合、時刻t0において床暖房パネル1は加熱されておらず、室温と外気温度および床暖房パネル1の3者は同一温度のT0にある。ここで、床暖房制御装置が動作すると床暖房パネル1の加熱が行われ、時刻t2において床暖房パネル1の温度は曲線Cのように設定温度T2に達し、以後、この温度に保つように制御される。室温は曲線Bのように徐々に床暖房パネル1の温度に近づいていくが、曲線A に示すように外気温度が下がると(時刻t4)、床暖房パネル1は暖房能力が小さいため外気温度の影響を受けて温度が低下してしまう。
このように、従来の温度制御装置では床暖房パネル1の温度を一定に保つだけであるために、暖房効果の立上がりが遅く、かつ、外気温度の変動または日射の有無等の外乱により室温が変化し、快適性が損なわれることがあり、その都度床暖房パネル1の温度を調節し直す必要があつた。
この考案は上記のような従来の床暖房システムの温度制御装置の欠点を除去するためになされたもので、室温を検出しその室温が低い場合は床暖房パネルの温度を高くし、室温が上昇するに従つて徐々に床暖房パネル温度を下げ、快適温度に近づけるようにすることにより、暖房立上がりを早くし、さらに外気の変動、日射の有無等による外乱に対しても快適な暖房効果が得られることを目的としている。以下、この考案を図について説明する。」

(ウ)第3ページ下から3行目?第5ページ第5行
「第2図はこの考案の一実施例を示すもので、第1図と同一符号は同一のものを示し、8は室温を検出して床暖房パネル1の設定温度を制御する設定温度制御部、9は室温用の温度検出素子である。
第4図は第2図のこの考案の実施例における温度制御特性を示すもので、第3図と同じく曲線A、B、Cは外気温度、室温、床暖房パネル1の温度特性を示す。
次に、第2図の設定温度制御装置の動作を第4図を参照して説明する。床暖房パネル1は先に説明した第1図の従来例の場合と同様に温度制御されるが、室温用の温度検出素子9により室温が検出され、これを基準として設定温度制御部8を動かすため、この設定温度制御部8によつて床暖房パネル1の温度制御部5の設定温度を制御するため、暖房を始めたばかりで室温が低い場合は、床暖房パネル1の温度が高温(第4図の時刻t1以降の温度T1)に制御される。このため、室温は早く上昇する。そして、室温が第4図の曲線Bに示すように上昇して設定温度T2に近づくに従い、徐々に床暖房パネル1の温度は下がり(時刻t3以降)室温が設定温度に達すれば、設定された快適温度に制御される。また、外気の変動等の影響で室温が下がつた場合(第4図の曲線A、Bの時刻t5以降)は、再び床暖房パネル1の温度は上昇し(第4図時刻t6以降)、逆に室温が上がつた場合は床暖房パネル1の温度が下がつて常に一定の暖房感覚が得られる暖房システムである。」

(エ)第5ページ下から8行目?下から2行目
「以上説明したようにこの考案は、室温を基準として温度制御を行うようにしたので、床暖房の立上がり速度が遅いという最大の欠点を改善でき、さらに室温の変動に対しても快適感が損なわれることがなく、室温が上昇した場合には床暖房パネルの設定温度が下げられ、暖房入力が減るので、省エネルギ一にも役立つ利点を有する。」

(オ)第2ページ第7行ないし第10行(前記(イ)参照)には、「温度制御部5によりバーナ4の燃焼を制御して温水温度を一定にしたり、温水循環ポンプ2をオン・オフして床暖房パネル1の温度を温度設定器7で設定された温度に保つ。」と記載されているところ、バーナの燃焼の制御では、少なくともバーナへの燃料供給を制御することは技術常識であるから、床暖房システムは、バーナの燃焼の制御として燃料供給を制御する手段を備えている、ということができる。
また、かかる記載、第4ページ第6行ないし第9行(前記(ウ)参照)の「第2図の設定温度制御装置の動作を第4図を参照して説明する。床暖房パネル1は先に説明した第1図の従来例の場合と同様に温度制御させる」との記載及び第2図の温度制御部5からみて、温度制御部は、床暖房パネルの温度を検知する温度検出素子と床暖房パネルの設定温度との比較に基づいて信号を出力し、かつ、その信号により燃料供給を制御している、ということができる。

(カ)第3ページ第10行ないし第14行(前記(イ)参照)には、「室温を検出しその室温が低い場合は床暖房パネルの温度を高くし、室温が上昇するに従って徐々に床暖房パネル温度を下げ、快適温度に近づけるようにすることにより、暖房立上がりを早くし」と記載されている。また、第4ページ第6行ないし末行(前記(ウ)参照)には、「次に、第2図の設定温度制御装置の動作を第4図を参照して説明する。床暖房パネル1は先に説明した第1図の従来例の場合と同様に温度制御されるが、室温用の温度検出素子9により室温が検出され、これを基準として設定温度制御部8を動かすため、この設定温度制御部8によつて床暖房パネル1の温度制御部5の設定温度を制御するため、暖房を始めたばかりで室温が低い場合は、床暖房パネル1の温度が高温(第4図の時刻t1 以降の温度T1 )に制御される。このため、室温は早く上昇する。そして、室温が第4図の曲線Bに示すように上昇して設定温度T2に近づくに従い、徐々に床暖房パネル1の温度は下がり(時刻t3以降)室温が設定温度に達すれば、設定された快適温度に制御される。」と記載されている。
これらの記載を第4図の時刻t0からt5までの室温(曲線B)及び床暖房パネル温度(曲線C)に照らすと、温度制御部は、運転開始(第4図の時刻t0を参照のこと。)から室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度(室温設定温度としては、第4図の時刻t3以降t5までの室温を参照のこと。)に達するまでは、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を、設定温度制御部によって快適温度T2より高くされた床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を行い、前記室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度に達した後は、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を、設定温度制御部によって快適温度T2とされた床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を行っている、ということができる。

上記(ア)ないし(エ)で摘示した事項並びに上記(オ)及び(カ)で認定した事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「床暖房パネルの配管に温水を循環させる温水循環ポンプと、バーナと、該バーナへの燃料供給を制御する手段と、床暖房パネルの温度を検知する床暖房パネル温度検出素子と、室温を検知する室温用の温度検出素子と、前記床暖房パネルの温度を検知する温度検出素子と床暖房パネルの設定温度との比較に基づいて信号を出力し、かつ、その信号により前記バーナへの燃料供給を制御する温度制御部とを備え、
前記温度制御部は、前記床暖房パネル温度検出素子の検出温度を床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を有し、運転開始から前記室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度に達するまでは、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を、設定温度制御部によって快適温度T2より高くされた床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を行い、前記室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度に達した後は、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を、設定温度制御部によって快適温度T2とされた床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を行う床暖房システム。」

イ 刊行物2
(ア)段落【0001】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、床暖房装置に関し、特に運転始動時における立ち上がりの制御を改良した床暖房装置に関する。」

(イ)段落【0002】?【0006】
「【0002】
【従来技術】床下に温水を通し、床面から室内を暖房する床暖房システムは、快適な暖房が得られる点等から近年注目されている暖房システムである。
【0003】床暖房装置の概略構成を図3に示す。図3に示すように床暖房装置1は、室内60の外に設置した熱源機20と、室内60の床下に配置した温水マット22等からなり、熱源機20から導通パイプ24を介して温水マット22に温水を送り、床下に温水を循環させて室内を所望の温度に暖房するようになっている。そして、冷えた温水は導通パイプ24を通って熱源機20に戻され適度に加温されて再び温水マット22に送り出される。
【0004】このように床暖房装置1は、熱源機20で発生させた熱を温水を介して導通パイプ24や温水マット22により床下に送り、室内60を暖房していることから快適な暖房が得られる反面、床暖房装置1の運転開始時は、導通パイプ24、温水マット22、熱源機20の内部に保有されている全ての水が冷えているために、これらを暖める時間がかなり必要になる。そこで床暖房装置1の立ち上がりをできるだけ早くするために、その始動時には、一定時間または室内60内部の室内温度(または床面温度)が所定の値(設定温度よりもやや低い値)に達するまで、熱源機20のガスバーナを最大能力で稼働させ、その後、温度の変動に合わせてガスバーナの運転を調整し、室内温度を設定温度に保持するようにしていた。
【0005】このようにして、人が室内にいるときに室内が所定の温度に保持されるようにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際にはその時々の外気温、その他の諸条件によって室内の温度上昇の程度が異なる。立ち上がり時にガスバーナを一定時間最大能力で稼働させても、外気温が比較的高いなど室内が暖まりやすい状態であれば早期に室内温度が設定温度まで上昇してしまい一定時間(ガスバーナ最大能力稼働時間)経過後には室内温度は設定温度を上回ってしまう。一方、室内が暖まりにくい状態であれば、一定時間(ガスバーナ最大能力稼働時間)経過しても室内温度が設定温度まで達しない。また、室内60内部の室内温度(または床面温度)が所定の値(設定温度よりもやや低い値)に達するまでガスバーナを最大能力で稼働するという立ち上がり制御方法でも、室内が暖まりやすい状態であれば立ち上がり制御終了後も室内温度はしばらくの間上昇し続け、室内温度が設定温度を上回ってしまうし(オーバーシュート)、室内が暖まりにくい状態であれば室内温度が設定温度まで達しないということが発生していた。」

(ウ)段落【0007】?【0013】
「【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では上記問題点を解決し、運転開始時に適切な立ち上がり運転を行なわせ、所望の時刻に室内温度が設定温度に上昇することを目的として床暖房装置を次のように構成した。
【0008】・・・
【0009】・・・
【0010】・・・
【0012】
【作用】床暖房装置の運転が開始されると、熱源機やポンプ等が作動して温水が床下に設けられたパイプ内に通される。温水により床面が暖められると、床面温度検出器が床面の温度を検出し、検出値を演算手段に送る。演算手段は、温度検出器により検出された床面の温度上昇と熱源機のエネルギ消費量とから、その時点における床面の『暖まりやすさ指数』を演算する。演算された『暖まりやすさ指数』は制御装置に送られ、制御装置は、その『暖まりやすさ指数』に対応した立ち上げ制御によって熱源機を作動する。
【0013】具体的には、運転が開始されてからの床面の温度上昇が早いときには室内が暖まり易いと判断し、必要以上に長時間温水を加熱せず、室内温度がオーバーシュートすることなく設定温度に達するようにする。一方、導通パイプ内に温水を通してからの床面の温度上昇が緩やかなときには、『暖まりやすさ指数』が低いと判断し、熱源機での最大加熱を継続させ、早期に床面の温度を設定温度にまで上昇させるように立ち上がり運転を制御する。これらの制御により、最も効率的にかつ快適に温度を上昇させることができる。」

(エ)段落【0018】?【0030】
「【0018】図1に、床暖房装置1を示す。床暖房装置1の熱源機20は、熱交換機25と、熱交換機25を加熱するガスバーナ21と、ガスバーナ21のガスの供給量を調整する調整弁27と、熱媒体(温水)を圧送するポンプ23と、制御装置2等を有している。
【0019】・・・
【0020】・・・
【0021】温水マット22は、全体を発泡樹脂等で成形した内部に樹脂製の温水導通パイプを蛇行させ、その表裏面をアルミ等で覆ったマットであり、所定の強度を有し、暖房しようとする室内60の床下に適宜設置されている。温水マット22を設置した室内60には、コントローラ14が取り付けてあり、コントローラ14に接続された信号線15は、熱源機20の制御装置2に接続している。コントローラ14には、希望の設定温度や暖房時刻等を入力する入力部13の他、床面の温度を検出する床面温度検出器10および室内温度を検出する室温検出器12とが備えられている。
【0022】次に、制御装置2について説明する。図2に示すように制御装置2は、制御部4と、記憶部6と、判断部8等から構成され、制御部4には、コントローラ14の床面温度検出器10や入力部13、及び制御弁16、ポンプ23、ガスバーナ21の調整弁27等が接続している。
【0023】記憶部6は制御部4に接続し、図4に示す換算表、及び図5に示す作動内容が記憶されている。換算表は、床暖房装置1の『暖まりやすさ指数』、すなわち室内の暖まり易さを求めるための表であり、10分間の床面の上昇温度と熱源器20の運転能力から『暖まりやすさ指数』を求める表である。図5に示す作動内容は、床暖房装置1の立ち上がり制御を求める表であり、『暖まりやすさ指数』と、現時点での室温と設定温度との温度差から作動内容を求める表である。
【0024】演算部8は制御部4に接続し、床面温度検出器10が検出した運転開始からの床面の温度上昇とガスバーナ21での燃焼量に基づき、記憶部6の換算表から『暖まりやすさ指数』を読み取る。更に、読み取った『暖まりやすさ指数』と入力部13から入力された設定温度に基づき、記憶部6に記憶されている作動内容を読み取り、これを制御部4に送る。制御部4は、演算部8から送られた作動内容に基づき、調整弁27等を調整し、床暖房装置1の立ち上がり制御を行なう。
【0025】次に、制御装置2による床暖房装置1のたち上がり制御について説明する。
【0026】まず、暖房を希望する室内60のコントローラ14から運転開始命令と希望温度(設定温度)がユーザによつて入力される。運転開始により、ガスバーナ21でガスが燃焼され、ポンプ23が作動し、所定の制御弁16が開かれて温水が所定の温水マット22に送り込まれる。その際ガスバーナ21の調整弁27は開度が最大であり、ガスバーナ21は最大能力で燃焼を行なう。但し、熱交換機25から送出される温水の上限温度は80℃であり、低温側温水計32での温水温度が上限値を越える場合には調整弁27が制御されてガスの供給が制限される。
【0027】ガスバーナ21での最大燃焼が継続される間、床面温度検出器10は床面温度を検出し、検出した温度を制御部4に送る。10分間経過すると制御部4は、床面の上昇温度と、ガスバーナ21の燃焼量とを演算部8に送り、演算部8はこれら値を記憶部6に記憶させた図4の換算表と照らし合わせ、室内60の『暖まりやすさ指数』を求める。例えば、10分間の温度上昇が22℃であり、ガスバーナ21の能力が100%であったときは、室内の『暖まりやすさ指数』が3と求められる。
【0028】このように『暖まりやすさ指数』を求めたら、次に演算部8は求めた『暖まりやすさ指数』と設定温度までの温度差に基づいて作動内容を求める。例えば現時点での室温が17℃であるとすると、求められた『暖まりやすさ指数』が3であり、設定温度との温度差が8℃であるので、70℃の温水を30分間通水させるという制御内容が得られる。演算部8が作動内容を得ると、演算部8はその作動内容を制御部4に送り、制御部4ではかかる作動内容に従って熱源器20の立ち上がりを制御する。
【0029】尚、上記例では、演算部8は記憶部6に記憶されている表に基づいて『暖まりやすさ指数』及び作動内容を求めることとしたが、演算部8はこれら表によらず、所定の演算式を備え、演算によって求めるようにしてもよい。
【0030】このように得られた作動内容によって床暖房装置1を制御することにより、熱源機20の立ち上がりを室内の暖まり易さに適合して作動させることができ、確実に温度制御が可能となるとともに、無駄に室内温度を上昇させずエネルギの浪費を防止することができ、温度が上りすぎることによってユーザに不快感を与えることもない。」

(オ)段落【0036】?【0038】
「【0036】尚、上記実施例では床温度検出器10により床面温度を検出し、その検出値に基づいて『暖まりやすさ指数』を求めることとしたが、本発明では、室温検出器12が検出する室内温度に基づいて『暖まりやすさ指数』を求めてもよい。
【0037】又、上記実施例では床下に温水マット22を設置する例を述べたが、本発明はそれに限らず、導水パイプを直接床下に配置したり、カーペット状に形成したものや、あるいは畳の内部に導水パイプを通したものなどでもよい。
【0038】
【発明の効果】本発明の床暖房装置によれば、床暖房開始直後の温度上昇と熱源機の供給熱量とから運転開始時の室内の『暖まりやすさ指数』を演算し、演算した『暖まりやすさ指数』に対応させて熱源機を適確に作動させることとしたので、正確に設定温度に上昇させることができるとともに、必要以上に早期に床面温度を上昇させることがないので、無駄なエネルギを消費することがなく、ユーザに不快感を与えることもない。」

(カ)段落【0023】(前記(エ)参照)の「図5に示す作動内容は、床暖房装置1の立ち上がり制御を求める表であり、『暖まりやすさ指数』と、現時点での室温と設定温度との温度差から作動内容を求める表である。」との記載、段落【0024】(前記(エ)参照)の「演算部8は制御部4に接続し、床面温度検出器10が検出した運転開始からの床面の温度上昇とガスバーナ21での燃焼量に基づき、記憶部6の換算表から『暖まりやすさ指数』を読み取る。更に、読み取った『暖まりやすさ指数』と入力部13から入力された設定温度に基づき、記憶部6に記憶されている作動内容を読み取り、これを制御部4に送る。制御部4は、演算部8から送られた作動内容に基づき、調整弁27等を調整し、床暖房装置1の立ち上がり制御を行なう。」との記載、段落【0028】(前記(エ)参照)の「このように『暖まりやすさ指数』を求めたら、次に演算部8は求めた『暖まりやすさ指数』と設定温度までの温度差に基づいて作動内容を求める。例えば現時点での室温が17℃であるとすると、求められた『暖まりやすさ指数』が3であり、設定温度との温度差が8℃であるので、70℃の温水を30分間通水させるという制御内容が得られる。演算部8が作動内容を得ると、演算部8はその作動内容を制御部4に送り、制御部4ではかかる作動内容に従って熱源器20の立ち上がりを制御する。」との記載、及び図5において、「あたたまりやすさ」ランクと、設定温度と室温との差に応じて、供給される温水の温度が異なる点からみて、床暖房装置は、暖まりやすさ指数と、室内温度を検出する室温検出器からの検出温度と設定温度の温度差とに基づいて作動内容を得て制御部に送信する演算部と、その作動内容に基づきガスバーナのガス供給量を調整する調整弁を調整する制御部を備えている、ということができる。

(キ)段落【0007】(前記(ウ)参照)の「所望の時刻に室内温度が設定温度に上昇することを目的として」いるとの記載、段落【0013】(前記(ウ)参照)の「具体的には、運転が開始されてからの床面の温度上昇が早いときには室内が暖まり易いと判断し、必要以上に長時間温水を加熱せず、室内温度がオーバーシュートすることなく設定温度に達するようにする。」との記載、及び段落【0030】(前記(エ)参照)の「このように得られた作動内容によって床暖房装置1を制御することにより、熱源機20の立ち上がりを室内の暖まり易さに適合して作動させることができ、確実に温度制御が可能となる」との記載、並びに前記(カ)で認定した事項からみて、演算部は、作動内容を得て制御部に送信することで、室内温度が設定温度となるよう制御する立ち上がり制御を有している、ということができる。

前記(ア)ないし(オ)で摘示した事項並びに前記(カ)及び(キ)で認定した事項をふまえると、刊行物2には、次の事項が記載されているものと認められる。

「床下に配置した導水パイプに温水を循環させるポンプと、ガスバーナと、該ガスバーナへのガス供給量を調整する調整弁とを有する熱源機と、室内温度を検出する室温検出器を備えた床暖房装置において、暖まりやすさ指数と、前記室温検出器からの検出温度と設定温度の温度差とに基づいて作動内容を得て、制御部に送信する演算部と、その作動内容に基づき前記調整弁を調整する制御部を備え、前記演算部は、前記作動内容を得て制御部に送信することで、室内温度が設定温度となるよう制御する立ち上がり制御を有すること。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「床暖房パネルの配管」は、床暖房パネルが床部分に敷設されることに伴って床部分に敷設されることが明らかであるから、本件補正発明の「床部分に敷設されたチューブ」に相当する。以下同様に、「温水循環ポンプ」は「循環ポンプ」に、「バーナ」は「温水加熱器」に、それぞれ相当する。
引用発明の「バーナへの燃料供給を制御する手段」は、温水加熱器であるバーナへの燃料供給を制御するという機能が、本件補正発明の「温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁」と異なるところはないから、本件補正発明の「温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁」に相当する。
引用発明の「温水循環ポンプ」、「バーナ」及び「バーナへの燃料供給を制御する手段」が、本件補正発明の「熱源機」に相当する。
引用発明の「床暖房パネルの温度を検知する床暖房パネル温度検出素子」は、床暖房面の温度を実質的に検知している点で、その機能が、本件補正発明の「床面の温度を検知する床温センサ」と異なるところはないから、本件補正発明の「床面の温度を検知する床温センサ」に相当する。
引用発明の「室温を検知する室温用の温度検出素子」は「室内温度を検知する室温センサ」に相当する。
引用発明の「床暖房パネルの設定温度」は、設定された床暖房面の温度である点で、本件補正発明の「設定床温」と異なるところはないから、本件補正発明の「設定床温」に相当する。
引用発明の「床暖房パネルの温度を検知する温度検出素子と床暖房パネルの設定温度との比較に基づいて信号を出力し、かつ、その信号により前記バーナへの燃料供給を制御する温度制御部」は、実質的に、床面の温度を検知する床温センサと設定床温との比較に基づいて信号を出力する制御機能を有している。また、該「温度制御部」は、その出力された信号により燃料供給を制御する手段を操作してバーナへの燃料供給の制御を行うものであって、実質的に、その出力された信号により制御弁による燃料供給を調整する能力制御機能を有している。そうすると、引用発明の該「温度制御部」は、「床温センサからの検知温度と設定床温との比較に基づいて信号を出力する制御装置」及び「該制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置」という限りにおいて、本件補正発明の「制御装置」及び「能力制御装置」に共通する。
引用発明の「温度制御部は、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を有」する点は、本件補正発明の「制御装置は、床温センサの検知温度を設定床温に制御する第1の能力制御」を有する点に相当する。
引用発明の「運転開始から室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度に達するまで」は、本件補正発明の「運転開始から所定時間まで、もしくは室温センサの検知温度が所定温度に達するまで」における「室温センサの検知温度が所定温度に達するまで」に相当する。
引用発明の「室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度に達した後」は、本件補正発明の「運転開始から所定時間経過後もしくは室温センサの検知温度が所定温度に達した後」における「室温センサの検知温度が所定温度に達した後」に相当する。そうすると、引用発明の「室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度に達した後は、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を、設定温度制御部によって快適温度T2とされた床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を行う」点は、本件補正発明の「運転開始から所定時間経過後もしくは前記室温センサの検知温度が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行う」点に相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。

<一致点>
「床部分に敷設されたチューブに温水を循環させる循環ポンプと、温水加熱器と、該温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁とを有する熱源機と、床面の温度を検知する床温センサと、室内温度を検知する室温センサと、前記床温センサからの検知温度と設定床温との比較に基づいて信号を出力する制御装置と、該制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記床温センサの検知温度を設定床温に制御する第1の能力制御を有し、前記室温センサの検知温度が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行う床暖房システム」の点。

<相違点>
本件補正発明は、制御装置が、床温センサからの検知温度と設定床温との比較に基づいて信号を出力するのに加えて、室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力するものであり、室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御を有し、室温センサの検知温度が所定温度に達するまでは第2の能力制御を行ない、その第2の能力制御中に、床温センサの検知温度も監視し、床面の温度が上昇しすぎないよう温水加熱器の能力を制限しているのに対し、
引用発明は、制御装置である温度制御部は、床温センサからの検知温度と設定床温との比較に基づいて信号を出力するものの、室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力するものではなく、室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御を有しておらず、室温センサの検知温度が所定温度に達するまでは、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を、設定温度制御部によって快適温度T2より高くされた床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御を行なう点。

(4)相違点についての検討
ア 刊行物2には、前記(2)のイに示したとおりの事項(「床下に配置した導水パイプに温水を循環させるポンプと、ガスバーナと、該ガスバーナへのガス供給量を調整する調整弁とを有する熱源機と、室内温度を検出する室温検出器を備えた床暖房装置において、暖まりやすさ指数と、前記室温検出器からの検出温度と設定温度の温度差とに基づいて作動内容を得て、制御部に送信する演算部と、その作動内容に基づき前記調整弁を調整する制御部を備え、前記演算部は、前記作動内容を得て制御部に送信することで、室内温度が設定温度となるよう制御する立ち上がり制御を有すること。」)が記載されている。

イ 刊行物2記載の事項の「床下に配置した導水パイプ」は、本件補正発明の「床部分に敷設されたチューブ」と言い換えることができる。以下同様に、「ポンプ」は「循環ポンプ」と、「ガスバーナ」は「温水加熱器」と、「ガスバーナへのガス供給量を調整する調整弁」は「温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁」と、「床暖房装置」は「床暖房システム」と、それぞれ言い換えることができる。
刊行物2記載の事項の「室温検出器」、「検出温度」及び「設定温度」は、それぞれ、本件補正発明の「室温センサ」、「検知温度」及び「設定室温」と言い換えることができる。
刊行物2記載の事項の「暖まりやすさ指数と、室温検出器からの検出温度と設定温度の温度差とに基づいて作動内容を得て、制御部に送信する演算部」は、少なくとも、室温センサからの検知温度と設定室温との温度差に基づいて作動内容を得て、制御部に送信しているから、本件補正発明の「室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力する制御装置」と言い換えることができる。
刊行物2記載の事項の「その作動内容に調整弁を調整する制御部」は、本件補正発明の「制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置」と言い換えることができる。
刊行物2記載の事項の「演算部は、前記作動内容を得て制御部に送信することで、室内温度が設定温度となるよう制御する立ち上がり制御を有する」は、演算部が、暖まりやすさ指数と、室温センサからの検知温度と設定室温の温度差とに基づいて作動内容を得て、制御部に送信することにより、室内温度が設定室温となるよう制御するのであるから、本件補正発明の「制御装置は、」「室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御」を有する、と言い換えることができる。

ウ そうすると、刊行物2記載の事項は、「床部分に敷設されたチューブに温水を循環させる循環ポンプと、温水加熱器と、該温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁とを有する熱源機と、室内温度を検知する室温センサを備えた床暖房システムにおいて、室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力する制御装置と、制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置を備え、前記制御装置は、室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御を有すること。」と言い換えることができる。

エ 刊行物1(前記(2)アの(イ)参照)には、単に、床暖房パネルの温度を設定温度に制御するものでは、暖房の立ち上がりが遅いとの問題点が指摘されており、かかる問題点を解決するために、暖房の立ち上がり制御において、室温に着目すべきことが示されているところ、刊行物2記載の事項は、暖房の立ち上げ制御を室温に着目して行うものであって、その立ち上げを早くかつ効率的に行うためのものである。
してみると、暖房の立ち上がりを向上するために、引用発明において、運転開始から室温用の温度検出素子の検出温度が室温設定温度に達するまで行われる制御である、床暖房パネル温度検出素子の検出温度を、設定温度制御部によって快適温度T2より高くされた床暖房パネルの設定温度に制御する能力制御に代えて、刊行物2記載の事項のごとく、室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力する制御装置と、制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置を備え、その制御装置により、室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御を行うことは、当業者が容易になし得たことである。

オ また、室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて床暖房面の加熱を行う際に、床温センサの検知温度も監視し、床暖房面の温度が上昇しすぎないようにすることは、従来周知の事項(例えば、実願平3-47061号(実開平4-132312号)のマイクロフィルム、実願平4-31622号(実開平5-83624号)のCD-ROMを参照のこと。)である。また、床暖房の立ち上げの際に、床暖房パネルの過熱防止のためその温度の上限を規制することも、従来周知の事項(実願昭55-91897号(実開昭57-14714号)のマイクロフィルムの第8ページ第10行?第9ページ第1行を参照のこと。)である。
してみると、第2の能力制御中に、床温センサの検知温度も監視し、床暖房面の温度が上昇しすぎないようすること、そのために温水加熱器の能力を制限することは、当業者が適宜配慮すべき設計事項にすぎない。

カ 本件補正発明の作用効果についてみても、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項から当業者が十分予測できる範囲のものであって、顕著なものとはいえない。

キ したがって、本件補正発明は、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成20年6月30日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2には、それぞれ、前記第2の2(2)で示したとおりの事項が記載されている。

3 対比、判断
本願発明は、
本件補正発明の「床部分に敷設されたチューブに温水を循環させる循環ポンプと、温水加熱器と、該温水加熱器への燃料供給を制御する制御弁とを有する熱源機と、床面の温度を検知する床温センサと、室内温度を検知する室温センサと、前記床温センサからの検知温度と設定床温との比較及び前記室温センサからの検知温度と設定室温との比較に基づいて信号を出力する制御装置と、該制御装置から出力された信号により前記制御弁による燃料供給を調整する能力制御装置と、を備え」たものを、「温水生成手段によって生成した温水を循環手段によって床面に敷設した温水配管内へ循環させて暖房する暖房システム」とし、
本件補正発明の「前記制御装置は、前記床温センサの検知温度を設定床温に制御する第1の能力制御と、前記室温センサの検知温度を設定室温に制御する第2の能力制御とを有し」を、「前記温度生成手段は、前記床面の温度もしくは前記床面の接触温度を設定床温に制御する第1の能力制御と、室内温度を設定室温に制御する第2の能力制御とを有し」とし、
本件補正発明の「運転開始から所定時間まで、もしくは前記室温センサの検知温度が所定温度に達するまでは、第2の能力制御を行い、運転開始から所定時間経過後もしくは前記室温センサの検知温度が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行う」を「運転開始から所定時間まで、もしくは室温が所定温度に達するまでは、前記第2の能力制御を行い、運転開始から所定時間経過後もしくは室温が所定温度に達した後は、前記第1の能力制御を行うようにした」とし、
本件補正発明の「前記第2の能力制御中に、前記床温センサの検知温度も監視し、床面の温度が上昇しすぎないよう前記温水加熱器の能力を制限する」点を削除したものである。

してみると、本願発明を構成する事項をすべて含む本件補正発明が、上記第2の2(4)で述べたとおり、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-02 
結審通知日 2010-06-08 
審決日 2010-06-21 
出願番号 特願2000-164054(P2000-164054)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24D)
P 1 8・ 575- Z (F24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
鈴木 敏史
発明の名称 床暖房システム  
代理人 ▲角▼谷 浩  
代理人 ▲角▼谷 浩  

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