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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1221307
審判番号 不服2006-862  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-12 
確定日 2010-08-02 
事件の表示 特願2002-328695「皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開、特開2004-161658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年11月12日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成22年1月25日受付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】ナツメ果実からの抽出物を含む皮膚外用剤であり、前記ナツメ果実からの抽出物の濃度を20重量%以上、30重量%以下にしたことを特徴とする皮膚外用剤」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
当審において、平成21年11月17日付けで通知した拒絶の理由で引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開昭59-93011号公報(以下、「引用例A」という。)、及び特開平11-116486号公報(以下、「引用例B」という。)には、各々、以下の事項が記載されている。

[引用例A]
[1]「クロウメモドキ科のナツメ果実:Zizyphus.Vulgaris.Lamark.Var.inermis.Bunge又は同属の植物Phamnaceaeの果実を、エタノール90%含有水溶液中で浸漬抽出して、濾過し濾過残留物を取り、この濾過残留物に対し、さらに2回のエタノール90%含有水溶液中で浸漬抽出して、濾過残留物を取り、この残留物を含水エタノール中で、3?7日間浸漬してから、吸引濾過して、濾液を取り、冷凍後、再び吸引濾過して得られた濾液を、そのまま化粧料に添加するか、又は濾液に、さらにポリオール系の有機溶媒を加えた溶液を、化粧料に添加するか、又は濾液を減圧下で濃縮させ、エタノールを溜去した後、粉末となしたものを化粧料に添加することを特徴とする、ナツメ果実から皮膚に対して、光毒性作用を有しない、抽出物を含有する化粧料。」(特許請求の範囲、1頁左下欄5?21行)
[2]「本発明は、クロウメモドキ科植物の果実「ナツメ」又はナツメ果実及び同属植物の果実からなる「タイソウ」から、皮膚に対して光毒性作用を有する物質を除去して得られる抽出物を含有する、化粧料に関するものである。又、抽出物に含まれる主な成分は、単糖類、サイクリックAMP及び、有機酸などが確認される。
本発明によるナツメ果実の抽出物は、肌に対して潤いを与えると共に、肌に保湿滑性のある張りを与え、小じわを防ぐことが期待できるものである。また、ニキビなどの化膿や、外傷などによる局所の腫脹や疼痛に対しては、これを緩和して消炎効果を有し、化膿性湿疹などに対しては、他の外用軟膏剤など、例えば抗菌剤、抗生物質、副腎皮質ホルモンを含有した製剤と共に併用すると、腫脹や化膿を防ぎ、局部の表皮の再生修復能を高めて、治癒を促進する。又、紫外線に対しては、日焼を防ぐと共に、日焼による紅斑にともなうほてりや疼痛を緩和するなど、皮膚美容上からみて、化粧料への添加剤としては、有利なものである。」(1頁右下欄2?21行)
[3]「〔実施例-2〕
ナツメ果実又は、その同属のクロウメモドキ科の果実であるタイソウを、粗く切刻んだものを100gをとり、無水エタノール450mlに水50mlを加えて得た、エタノール90%含有水溶液に入れて1昼夜、時々撹拌しながら浸漬する。これを吸引濾過により、濾液を除去し、濾過残留物をビーカーにとり、再度、エタノール90%含有水溶液で浸漬抽出し、濾過残留物をとり、もう一度、エタノール90%含有水溶液中に入れ、浸漬抽出したのち、その濾過残留物を用い、次にエタノール300mlに水500mlを加えて得られる、含水エタノール中で、3?7日間の浸漬を時々撹拌しながら抽出を行い、その後、濾紙(東洋濾紙No.2)を用いて吸引濾過し、さらに(東洋濾紙No.131)で濾過し、これでも濁りがあれば、ケイソウ土濾過すれば、これによつて得られる濾液は澄明な液となる。そこで、この液(便宜上、以下A液と言う)か、又はA液に1-3ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのポリオール系溶剤を加えた溶液(便宜上、以下B液と言う)か、澄明なA液を減圧下でエタノールを溜去して、粉末となしたもの(便宜上、以下単に粉末と言う)を、化粧料に添加する。化粧料への添加はいずれの形態の化粧料中にも配合出来、もちろん皮膚光毒性は無い。
上記した実施例2で得られた抽出物であるA液、B液、粉末の化粧料への配合(処方)例を示せば次のごとくである。
〔処方例〕
・・・
(3)ローシヨン
実施例2で得られた粉末0.1?1.0%又は
実施例2で得られたA液又はB液 …………10?80%
エタノール………………………………………………………………5.0
乳酸………………………………………………………………………0.1
クエン酸…………………………………………………………………0.3
グリセリン………………………………………………………………3.0
防腐剤及び香料…………………………………………………………適 量
精製水をもつて全量100とする。」(3頁左下欄?4頁右上欄1行)
[4]「次に、実施例2で得たA液をもとに、その理化学的分析による、主な特長についてみると、・・・サイクリツクAMPについては、第1表中に示したごとく、30000pmol/mlと多く含まれていることが特徴である。」(4頁右下欄10行?5頁左上欄4行)

[引用例B]
[5]「cAMPは前述のとおり、人体のエネルギー代謝(脂肪代謝)においてプロテインキナーゼを活性し、リパーゼを介して脂肪分解に重要な役割を果たしている。したがって、cAMPを体外から供給することにより、脂肪細胞中の脂肪(トリグリセライド)の分解量を増やすことができ、痩身効果がえられる。
本発明の目的は腹部、大腿部、臀部などの局所の痩身にあり、経口や静注などの全身的に投与ではその目的は達せられない。本発明に用いるcAMPは経皮的にも吸収されやすく、痩せたい部位に塗布することにより痩身効果がえられる。しかし、マッサージを併用することにより経皮吸収量を増大させかつマッサージによる痩身効果も期待できるので、本発明の製剤はマッサージクリーム、ローション、ゲル、オイルなどの処方とする。」(段落【0009】?【0010】、2頁2欄7?21行)
[6]「cAMPはナツメまたはその近縁植物の果実であるタイソウに含まれている。タイソウエキスはタイソウから、エタノール、1・3ブチレングリコール、精製水などで抽出されるエキスであり、抽出処理によりうることができる。
局所痩身効果はcAMPの配合量に比例して大きくなるが、原料原価が高くなり一般消費者の購入価格が高くなるため、誰にでも入手し易い価格設定が困難になるなどコストの点から0.1?1.0mg/リットル、好ましくは0.1?0.5mg/リットルの濃度の製剤を適量局所に1日1?3回塗布し、充分なマッサージを施すのが望ましい。」(段落【0012】?【0013】、2頁2欄26?37行)

3.対比、判断
引用例Aには、「クロウメモドキ科のナツメ果実を、エタノール90%含有水溶液中で浸漬抽出して、濾過し濾過残留物を取り、この濾過残留物に対し、さらに2回のエタノール90%含有水溶液中で浸漬抽出して、濾過残留物を取り、この残留物を含水エタノール中で、3?7日間浸漬してから、吸引濾過して、濾液を取り、冷凍後、再び吸引濾過して得られた濾液を、そのまま化粧料に添加するか、又は濾液に、さらにポリオール系の有機溶媒を加えた溶液を、化粧料に添加するか、又は濾液を減圧下で濃縮させ、エタノールを溜去した後、粉末となしたものを化粧料に添加することを特徴とする、ナツメ果実から皮膚に対して、光毒性作用を有しない、抽出物を含有する化粧料。」(以下、「引用発明」という。)(摘示事項[1])が記載されている。
引用発明の化粧料は皮膚外用剤である。そして、本願発明は、ナツメ果実からの抽出物の抽出方法については何ら特定するものではなく、また、抽出物について、その性質を何ら特定するものではない。
したがって、本願発明と引用発明は、
「ナツメ果実からの抽出物を含む皮膚外用剤」である点で一致し、以下の点で相違する。
本願発明は、ナツメ果実からの抽出物の濃度を20重量%以上、30重量%以下にしたものであるのに対して、引用発明では、ナツメ果実からの抽出物の濃度が記載されていない点

そこで、この相違点について検討する。
引用例Aには、ナツメ果実の抽出物は、肌に対して潤い、保湿滑性のある張りを与え、小じわを防ぐことが期待できる等の肌に対する作用を有する有効成分であることが記載されている(摘示事項[2])。
そして、一般に、化粧料に配合する肌に対する作用を有する有効成分について、その所期の作用が奏せられ、化粧料として好適な性質を示す配合割合を評価試験を行って検討することは当業者が適宜行うことである。そして、有効成分のコストの観点から見て、不必要に大量の有効成分を配合しないことも適宜考慮することである。
そして、引用例Aには、処方例(3)として、ナツメ果実からの抽出物と抽出溶媒の混合物であるA液を10?80%といった広範囲の配合量で配合できることが記載されている(摘示事項[3])ことからみても、ナツメ果実からの抽出物の濃度を20重量%以上、30重量%以下とすることに、特に、困難さは認められない。
また、引用例Aには、ナツメ果実の抽出物は、肌に対して潤い、保湿滑性のある張りを与え、小じわを防ぐことが期待できること、皮膚の化膿や、腫脹や疼痛に対しては、これを緩和して消炎効果を有すること、化膿性湿疹などに対しては、他の外用軟膏剤との併用により、腫脹や化膿を防ぎ、表皮の再生修復能を高めて、治癒を促進すること、紫外線に対しては、日焼を防ぐと共に、日焼による紅斑にともなうほてりや疼痛を緩和することが記載されており(摘示事項[2])、また、引用例Bには、cAMPが皮膚に塗布することにより痩身効果があること、cAMPはナツメ抽出物として得られること(摘示事項[5]、[6])が記載されており、本願発明の奏する効果が当業者が予想し得ないものであるとは、本願明細書の記載からは認められない。
したがって、本願発明は、引用例A、Bに記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものである。

なお、請求人は、審判請求理由として、「本願の発明者は、cAMPによるスリミング効果に着目するとともに、植物からの抽出物に含まれるcAMPの量は様々であることに着目し、どのような植物を用い、その植物の抽出物をどれだけの量用いることで、コストを抑えながらスリミング効果をより確実に向上することができるかという課題を想起し、その検討を行ったものである。」旨主張しているので、以下、この主張について述べる。
上記のとおり、引用例Aには、ナツメ果実からの抽出物を配合した化粧料が記載されており、しかも、ナツメ果実の抽出物が、30000pmol/ml(3×10^(-5)M/Kgに相当する)と多くのcAMPを含有すること(摘示事項[4])が記載されている。
また、請求人は、スリミング効果に着目して配合量を検討した旨主張するが、有効成分の好ましい配合量を検討することは当業者が適宜行うことであるし、引用例Bには、cAMPによるスリミング効果が記載されている。しかも、本願発明はスリミングのための皮膚外用剤の発明ではなく、請求人の主張は理由がない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に記載された発明は、引用例A及びBに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-01 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-18 
出願番号 特願2002-328695(P2002-328695)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保倉 行雄内田 淳子  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
井上 典之
発明の名称 皮膚外用剤  

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