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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F16K
管理番号 1221660
審判番号 無効2008-800280  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-12-08 
確定日 2010-08-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4155966号発明「流体配管系統の流路遮断方法及び管内流路遮断装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第4155966号に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての出願は,平成16年11月16日に出願され,平成20年7月18日にその請求項1ないし5に係る発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2)これに対して,請求人は,本件特許発明は,甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,したがって,本件特許発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたと主張し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出している。
(3)被請求人は,平成21年3月9日に訂正請求書を,同年9月2日に訂正請求書の手続補正書を提出して訂正を求めた(以下「本件訂正請求」という。)が,本件訂正請求の訂正の内容は,本件特許の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付した全文訂正特許請求の範囲及び全文訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。

2.訂正の可否に対する判断
(1)被請求人が求めた訂正の内容は,下記アないしテのとおり訂正することを求めるものである。
ア 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1における「両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で締結具にて締付け連結」を,「両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結」と訂正する。
イ 訂正事項b
同請求項1における「両管部に」を,「両管部の両連結フランジ部に」と訂正する。
ウ 訂正事項c
同請求項1における「締結具の緩み操作を」を,「前記締結具の緩み操作を」と訂正する。
エ 訂正事項d
同請求項1における「この遮断作業カバーに設けられた隙間形成手段による強制押し広げ力と流体圧とによって」を,「締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと,前記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって」と訂正する。
オ 訂正事項e
同請求項1における「締結具の緩み操作代の範囲内で」を「前記締結具の緩み操作代の範囲内で」と,「締結具の緩み操作によって発生」を「前記締結具の緩み操作によって発生」と,それぞれ訂正する。
カ 訂正事項f
同請求項2における「締結具」を,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具」と訂正する。
キ 訂正事項g
同請求項2における「両管部に」を,「両管部の両連結フランジ部に」と訂正する。
ク 訂正事項h
同請求項2における「締結具の緩み操作によって発生した両連結フランジ部間の隙間を通して」を,「前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して」に訂正する。
ケ 訂正事項i
同請求項2における「締結具の緩み操作代の範囲内で」を,「両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において前記締結具の緩み操作代の範囲内で」に訂正する。
コ 訂正事項j
明細書の段落【0011】を「本発明による第1の特徴構成は,…シール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具…両管部の両連結フランジ部に,前記締結具の…遮断作業カバーを装着し,前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと,前記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって,前記締結具の…仕切板弁を,前記締結具の…遮断する点にある。」と訂正する。(下線部分は訂正箇所。以下同じ。)
サ 訂正事項k
明細書の段落【0016】を「本発明による第2の特徴構成は,…シール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具…両管部の両連結フランジ部に対して,…遮断作業カバーに,前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間…遮断作業カバーの周方向複数箇所には,両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において前記締結具の…設けられている点にある。」と訂正する。
シ 訂正事項l
明細書の段落【0025】の「発明による第3の特徴構成は,…」を,「本発明による第3の特徴構成は,…」と訂正する。
ス 訂正事項m
明細書の段落【0028】を「本発明による第5の特徴構成は,前記締結具が,一方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを頭部の当接面に設けてあるボルトと,他方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを当接面に設けてある袋ナットから構成されている点にある。」と訂正する。
セ 訂正事項n
明細書の段落【0030】の「…それらの接合面間にシール材の一例であるシートパッキン4を介装した状態で複数組(当該実施形態では4組)の…」を,「…それらの接合面間にシール材の一例であるシートパッキン4を介装した状態で前記両連結フランジ部2A,3Aに貫通状態で設けられた複数組(当該実施形態では4組)の…」と訂正する。
ソ 訂正事項o
明細書の段落【0031】の「そして,前記分岐管部2と連結管3とにわたる部位」を,「そして,前記分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の上流側フランジ部3Aとにわたる部位」と訂正する。
タ 訂正事項p
明細書の段落【0032】を「…分岐管部2と連結管3の両連結フランジ部2A,3Aに対して,…袋ナット5Bの緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部2A,3Aの接合面間に発生した隙間S…遮断作業カバーBの周方向複数箇所(当該実施形態では周方向の三箇所)には,両連結フランジ部2A,3Aの接合面間に形成される環状凹部25において…設けられている。」と訂正する。
チ 訂正事項q
明細書の段落【0050】の「また,第1締結具5のボルト5A…」を,「また,両連結フランジ部2A,3Aの接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部25において第1締結具5のボルト5A…」と訂正する。
ツ 訂正事項r
明細書の段落【0051】を「次に,…緩み操作して,この緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部2A,3Aの…螺合移動させ,両連結フランジ部2A,3Aの接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部25において…押し広げる。」と訂正する。
テ 訂正事項s
明細書の段落【0052】「分岐管部2及び連結管3に装着した…」を,「分岐管部2及び連結管3の両連結フランジ部2A,3Aに装着した…」と訂正する。

(2)訂正の可否について
ア 訂正事項a?eについて
上記訂正事項a?eは,請求項1に記載の「締結具」,「両管部」,「両連結フランジ部間の押し広げ」の態様について,それぞれ限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,かつ,本件特許明細書の段落【0034】【0045】【0047】【0048】【0050】【0051】【0052】【0082】等の記載に基づくものであって,願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
イ 訂正事項f?iについて
上記訂正事項f?iも,請求項2に記載の「管内流路遮断装置」について,上記訂正事項a?eと同様に限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,かつ願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項lについて
上記訂正事項lは,「本発明による第3の特徴構成は」とすべきところを「発明による第3の特徴構成は」と記載した明らかな誤記を訂正するものであり,出願当初の明細書の【0025】段落に記載された事項の範囲内のものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
エ 訂正事項mについて
上記訂正事項mは,平成19年11月22日付け手続補正書により,段落【0028】の記載を請求項5に対応する記載に補正すべきところ,誤って請求項4に対応する記載に変更されたものを,本来の請求項5に対応した記載に訂正するものであって,誤記の訂正を目的とするものに該当し,出願当初の明細書の段落【0028】に記載された事項の範囲内のものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
オ 訂正事項j,k,n?sについて
上記訂正事項j,k,n?sは,上記訂正事項a?iの訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるための訂正であり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,かつ,上記訂正事項a?iと同様,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)以上のとおりであるから,上記訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き,及び同条第5項において準用する同法第126条第3項,4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

3.本件訂正発明
上記のとおり,本件訂正請求による訂正を認めるので,訂正後の本件特許発明(以下「本件訂正発明」という。)は,訂正された特許請求の範囲の記載によれば,次のとおりのものと認められる。
【請求項1】
流体配管系統において,両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部 に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に,前記締結具の緩み操作を許容する状態で両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着し,前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと,前記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって,前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げ,前記遮断作業カバーの仕切板弁を,前記締結具の緩み操作によって発生した両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで差し入れることにより,両連結フランジ部間において流路を遮断することを特徴とする流体配管系統の流路遮断方法。(以下「本件訂正発明1」という。)
【請求項2】
両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に対して,それらの両連結フランジ部の外周を密封する状態で装着自在な遮断作業カバーに,前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状の仕切板弁と,この仕切板弁を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する摺動ガイド手段が設けられているとともに,前記遮断作業カバーの周方向複数箇所には,両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段が設けられている管内流路遮断装置。(以下「本件訂正発明2」という。)
【請求項3】
前記隙間形成手段が,遮断作業カバーの周方向複数箇所において,両連結フランジ部間の隙間に対して径方向外方から入り込み移動するテーパー面を備えた複数の分離ボルトから構成されている請求項2記載の管内流路遮断装置。(以下「本件訂正発明3」という。)
【請求項4】
前記隙間形成手段の分離ボルトは,それのボルト軸芯が仕切板弁の移動平面を通る平面上又はその近傍に位置する状態で締付け輪に取付けられている請求項3記載の管内流路遮断装置。(以下「本件訂正発明4」という。)
【請求項5】
前記締結具が,一方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを頭部の当接面に設けてあるボルトと,他方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを当接面に設けてある袋ナットから構成されている請求項2?4のいずれか1項に記載の管内流路遮断装置。(以下「本件訂正発明5」という。)

4.請求人の主張の概要
これに対して,請求人は,本件訂正発明1及び2は,甲第1号証に記載された発明及び甲第2?4号証及び甲第9号証に記載の如く従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件訂正発明3及び4は,甲第1号証に記載された発明及び甲第2?4号証及び甲第9号証に記載の如く従来周知の技術並びに甲第5号証及び甲第6号証に記載の如く従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,さらに,本件訂正発明5は,甲第1号証に記載された発明,甲第7号証及び甲第8号証に記載された事項並びに甲第2?4号証及び甲第9号証に記載の如く従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので,本件訂正発明1ないし5の特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効にすべきであると主張し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出している。
また,請求人は,平成21年7月13日付け上申書において,周知技術を示す刊行物として,甲第10?13号証を提出している。

(証拠方法)
甲第1号証:実願昭60-104452号(実開昭62-12090号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特公昭49-20325号公報
甲第3号証:特開2003-322289号公報
甲第4号証:米国特許第5,797,423号明細書
甲第5号証:実願昭60-92429号(実開昭62-802号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願平5-63554号(実開平7-33553号)のCD-ROM
甲第7号証:実願平2-96041号(実開平4-54318号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開2002-250446号公報
甲第9号証:特開平10-68105号公報
甲第10号証:特開平11-108228号公報
甲第11号証:特開平9-66082号公報
甲第12号証:特開平10-135698号公報
甲第13号証:特開平10-123271号公報

5.被請求人の主張の概要
一方,被請求人は,本件訂正発明1ないし5は,甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,その特許は無効とされるべきものではない旨主張している。

6.甲各号証の記載事項
甲各号証には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証
(ア)「本考案は,例えば,水道管の端部にフランジ接合された消火栓を次に述べる方法で交換する場合等において,ボルト等の連結具が抜かれた接合用のフランジにおける挿通用孔を水密状態に閉塞するために用いられる閉塞具に関する。」(明細書2頁18行?3頁2行)

(イ)「第4図に示すように,水道本管(H)から立上げ分岐させた水道管(E)の端部にフランジ接合されている消火栓(S)を,水道管(E)への給水を止めることなく,つまり,不断水の状態で交換する場合において,水道管(E)および消火栓(S)の接合用フランジ(F)に形成されたフランジ連結ボルト(B)の挿通用孔(a)を水密状態に閉塞するために用いる閉塞具(1)であって,これは,次のように構成されている。
つまり,第1図,第2図に示すように,前記挿通用孔(a)を閉塞する状態でフランジ(F)に当接可能な本体(2)に,この本体(2)を当接方向で貫通し,かつ,本体(2)に対して貫通方向に位置変更ならびに固定可能なボルト(3)を螺号装着し,このボルト(3)の,本体(2)がフランジ(F)に当接した状態において挿通用孔(a)内に位置する側の端部に,前記本体(2)に対向する面を備えた対向部材(4)を固着し,この対向部材(4)と本体(2)との間に位置するボルト部分に,ボルト(3)を介する対向部材(4)のの本体(2)に対する近接移動に伴ってその弾性力に抗して圧縮されることにより,その外周面(5a)を挿通用孔(a)の内周面に,かつ,その内周面(5b)をボルト(3)の外周面にそれぞれ押付け密着させるように弾性変形する筒状のゴム製弾性シール体(5)を外挿させて,構成されている。」(同書7頁13行?8頁18行)

(ウ)「前記消火栓(S)を交換するにあたって用いる栓脱着装置について説明すると,この栓脱着装置は,第3図に示すように,水道管(E)および消火栓(S)の接合用フランジ(F),(F)に環状のマウント(9),(9)を介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能で,かつ,周方向で2個に分割可能な筒状本体(10)を備えている。
前記水道管(E)側のマウント(9)は,水道管(E)側のフランジ(F)に対する消火栓(S)側へのスライドを阻止するようにその水道管(E)側のフランジ(F)に係合する係合片(9a)を備えており,消火栓(S)側のマウント(9)は,消火栓(S)側のフランジ(F)に対する水道管(E)側へのスライドを阻止するようにその消火栓(S)側のフランジ(F)に係合する係合片(9b)を備えている。かつ,両マウント(9)は,周方向で2つに分割構成されている。
前記筒状本体(10)には,消火栓(S)側のマウント(9)に対する係脱により消火栓(S)側のフランジ(F)を筒状本体(10)に固定ならびに固定解除自在な周方向複数個のセットボルト(11)と,水道管(E)側のマウント(9)に水道管(E)側から当接して,固定された消火栓(S)側のフランジ(F)を水道管(E)側のフランジ(F)に対して遠近移動させるように筒状本体(10)を水道管(E)側のフランジ(F)に対してスライド操作自在で,かつ,離間位置に固定可能な周方向複数個の操作ボルト(12)とが螺合装着されている。
かつ,筒状本体(10)には,前記離間位置に筒状本体(10)をスライドさせた状態における水道管(E)側のフランジ(F)と消火栓(S)側のフランジ(F)を固定する位置との中間部において筒状本体(10)を開平自在な弁板(13)が取付けられている。」(同書10頁15行?12頁8行)

(エ)「次に,上記のように構成された栓脱着装置および閉塞具(1)を用いて消火栓(S)を交換する方法をそれの行程順に説明する。
〔1〕両マウント(9),(9)を対応するフランジ(F),(F)に外嵌装着するとともに,両マウント(9),(9)に筒状本体(10)を外嵌させ,消火栓(S)側のフランジ(F)と筒状本体(10)とをセットボルト(11)で固定したのち,両フランジ(F),(F)の連結を解除しつつ,閉塞具(1),(1)でボルト挿通用孔(a),(a)を閉塞する。(第5図,第6図参照)
〔2〕操作ボルト(12)を介して筒状本体(10)を水道管(E)側のフランジ(F)に対してスライドさせて,消火栓(S)側のフランジ(F)を水道管(E)側のフランジ(F)から離間させその後,弁板(13)を閉じる。(第7図参照)
〔3〕セットボルト(11)を弛めて消火栓(S)側のフランジ(F)の筒状本体(10)への固定を解除し,消火栓(S)をマウント(9)ごと筒状本体(10)から取外す。(第8図および第9図参照)」(同書12頁19行?13頁18行)

(オ)「〔6〕操作ボルト(12)により筒状本体(10)をスライドさせて,水道管(E)側のフランジ(F)に取付けた閉塞具(1)の突出部(7)が消火栓(S)側のフランジ(F)の挿通用孔(a)に挿入するように両フランジ(F),(F)を位置合わせしつつ,操作ボルト(12)により筒状本体(10)をスライドさせて,消火栓(S)側のフランジ(F)を水道管(E)側のフランジ(F)い当接させる。(第6図参照)
〔7〕閉塞具(1),(1)を取外しつつ,ボルト(B)で両フランジ(F),(F)を連結する。(第5図参照)」(同書15頁10行?16頁1行)

(カ)第1図及び第2図には,両フランジ(F),(F)の接合面間にシール材を介装した態様が示されている。

(キ)第4図には,フランジ連結ボルト(B)が両フランジ間に貫通状態で設けられた態様が示されている。

(ク)第3図には,両フランジ(F),(F)の外周を密封状態で環状のマウント(9)を囲繞させた態様が示されている。

(ケ)第7図には,両フランジ(F),(F)間の隙間に,弁板(13)を差し入れて弁板を閉じ,流路の上流側と下流側とを遮断した態様が示されている。

(コ)第6図,第7図には,弁板(13)を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する部材が設けられた態様が示されている。

(サ)第3図,第5?8図等には,筒状本体10に螺合された操作ボルト12の上端が,水道管側のマウント9の下面に「当接」した態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,甲第1号証には,以下の事項からなる発明が記載されていると認められる。
「水道管等の配管系統において,両フランジ(F),(F)の接合面間にシール材を介装し,両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルト(B)の挿通用孔(a)を閉塞具(1)にて水密状態に閉塞した両フランジに,両フランジの外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両フランジの流路を遮断可能な弁板(13)が抜き差し操作自在に設けられている環状のマウント(9),(9)を介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体(10)を装着し,この筒状本体の周方向複数箇所に設けられ,水道管(E)側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト(12)を介して前記筒状本体を水道管側のフランジに対してスライドさせて,消火栓(S)側のフランジを水道管側のフランジから離間させ,前記弁板を両フランジ間の隙間に差し入れることにより,両フランジ間において流路を遮断する水道管等の配管系統の流路遮断方法。」の発明(以下「甲1記載の第1発明」という。),及び
「両フランジ(F),(F)の接合面間にシール材を介装し,両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルト(B)の挿通用孔(a)を閉塞具(1)にて水密状態に閉塞した両フランジに対して,それらの両フランジの外周を環状のマウント(9),(9)を介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体(10)に,両フランジ間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な弁板(13)と,この弁板(13)を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する部材が設けられているとともに,前記筒状本体の周方向複数箇所には,水道管(E)側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト(12)が設けられている水道管等の流路遮断装置。」の発明(以下「甲1記載の第2発明」という。)。

(2)甲第2号証
(ア)「この発明は2本の導管を接続するフランジ付き接続のフランジの間に挿入し導管を通じて流れる流体を停止しまたは減少する弁部材を挿入する方法と装置に関するものである。」(1頁1欄28行?31行)

(イ)「装置使用の一方法では固定板69は初めにフランジ12を固定しスペード弁49を円筒形箱体27内に挿入し,円形部分20と25が導管10と11の周囲に配属されフランジ21と26が一緒に締付けられる前に二叉端58に接続される。組立てられる部分が図示位置に組立てられるとスパナ37はボールト14と係合し適当なトルク発生装置で各ロッド36の外端に力を加えるとボールト14はゆるめられる。スペード弁49の通路内のボールトは引抜かれる。」(3頁5欄30行?39行)

(ウ)「スペード弁49にテーパー部材51が設けられていない場合またはフランジ12と13を離すには力が充分でない場合には環70を導管10及び11の一つまたはそれぞれに箱体16の外側で締付け環70と箱体16のフランジ21,26との間にジャッキ装置を設け導管10と11を分離する。
ジャッキが第4図に示されヨーク部材72でフランジ21,26にボールト28の一つで接続されたねじロット71を備え,ロッド71は環70の凹所を通り環70の各側に配置されたナット73と74によって係合される。ナット73,74は環70に作用するよう回転され導管を動かしフランジ12と13を分離する。」(3頁6欄37行?4頁7欄6行)

(3)甲第3号証
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,貫通穴を複数個有するフランジが端部に固定された2本の管路を,相互のフランジを合わせた状態で貫通穴に挿通された複数本のボルトにより相互に締結する際,両フランジ間に着脱自在に装着され,両管路を相互に隔絶する閉止板に関する。」

(イ)「【0019】閉止板1を装着する場合には,締め付け状態の4本のボルト3のうち,1本のボルトを貫通穴21から取り外す。そして,残りの3本のボルト3は適量緩めるが,ナット(図示せず)はボルト6から取り外さない。
【0020】残り3本のボルト3が緩められると,フランジ2とこのフランジ2に締結されている他方のフランジ(図示せず)との間に閉止板11を差し込む隙間を確保することができる。」

(4)甲第4号証
(ア)「導管内へのスライス2の挿入は,2個のねじ5’,5”を取り除き,残りのねじ5を緩めることにより達成できる。」(明細書2欄53行?55行,訳文は請求人による。)

(5)甲第5号証
(ア)「本考案は連結式マニホールドにおける取付面位置調整機構に関するものである。」(明細書2頁4行?5行)

(イ)「さらに,本実施例においては,終端側のエンドプレート2bの片側には,取付対象物に対するマニホールド連結構造の取付面の位置すなわちエンドプレート2a,2bの取付脚3の位置を所望の位置に調整するための調整ねじ17を挿入するねじ孔16がマニホールド1eのピン挿入穴8の一方と整合できる位置に貫通形成されている。この調整ねじ17の先端はテーパ部18として形成され,このテーパ部18は調整ねじ17を螺入するにつれてマニホールド1eのピン挿入穴8の中に徐々に挿入される。その場合,調整ねじ17のテーパ部18の外周テーパ面はピン挿入穴8の開口側コーナー部と当接するので,ねじ孔16とピン挿入穴8とが正確に整合しておらず,両者間に位置ずれがある場合には,調整ねじ17を螺入するにつれてテーパ部18はピン挿入穴8の位置ずれ部分のみと部分接触しながら螺入されて行くので,調整ねじ17の螺入量に応じて調整ねじ17のテーパ部18とピン挿入穴8との相対位置を変化させ,位置調整を行うことができる。すなわち,調整ねじ17により,マニホールド連結構造の両エンドプレート2a,2bの取付脚3の平面位置のずれを調整し,取付面位置を全取付脚3について同一面となるよう平面度調整を行うことができる。」(同書7頁7行?8頁10行)

(6)甲第6号証
(ア)「 【0012】
図2に示す状態から調整ボルト6をさらに締込んで前進させると,調整部材7が調整ボルト6のテーパ面6aによって押し上げられて外径方向に移動し,その上端面が円筒部2aの外径に嵌合されたCBN砥石1の内径に当接しこれを押圧する。CBN砥石1は,調整部材7の突出量に相当する量だけ外径側に微動する。これにより,砥石軸3に対するCBN砥石1の外径の振れを是正することができる。調整部材7の突出量は,調整ボルト6と調整部材7との位置関係,つまり調整ボルト6の締込み量によって決まるから,結局,調整ボルト6の締込み量を調節(回転調整)することによって,砥石軸3に対するCBN砥石1の同軸度を調整することができる。」

(7)甲第7号証
(ア)「本考案は,防水形の筐体の外部からねじで締め付けて筐体内部に電子部品を取り付ける場合に用いると好適な防水座金に関する。」(明細書1頁18行?20行)

(イ)「これらの図において,1は装置の筐体,2,3は筐体1の内壁5に固定される電子部品,7は電子部品固定用のおねじである。
電子部品2,3にはおねじ7と螺合するねじ穴9が形成され,筐体1にはねじ穴9に対応させてねじ挿入用の穴部10が形成されている。また,おねじ7のねじ頭12の底面にはリング状の溝13が形成され,この溝13にはOリング15が嵌め込まれている。
そして,電子部品2,3は,筐体1の外側から穴部10に挿入されたおねじ7がねじ穴9に捩じ込まれて筐体内壁5に固定される。また,筐体1とおねじ7のねじ頭12との間にはOリング15が挟み込まれた状態となり,穴部10からの筐体1内への雨水の浸入はOリング15で阻止される。」(同書2頁5行?19行)

(8)甲第8号証
(ア)「【0004】すなわち,被締結材4のボルト穴2に挿通したボルト01の先端のネジ部01aにナット03を螺合させて締結が行なわれるとき,ナット03と被締結材4のボルト穴開口周囲の面4aとの間(図中A部)からボルト半径方向に,また,ボルト01とナット03の間のネジ面(図中B部)からボルト軸方向に潤滑油aが漏出するおそれがあった。
【0005】そこで従来は,A部からの潤滑油aの漏出を防止するために,ナット03のボルト穴開口周囲の面4aに接する面にボルト01を囲む環状溝を設けOリング05を装着し,一方,ボルト01のネジ部01aのナット03より突き出した最先端部に袋状に先端が閉じたキャップ06を螺合装着し,ナット03のキャップ側の面にはボルト01を囲む環状溝を設けOリング07を装着し,キャップ06をナット03に密着させ,ナット03とキャップ06との間からの漏出をなくすことで,前記B部からの潤滑油aの漏出を防止していた。」

(9)甲第9号証
(ア)「【0061】こうした構成の板材の補強構造50において,補剛材9の左右側面に第1の補強用当て板21および添接板57を当てた状態で,ボルト側カラー55およびナット側カラー56を介して固定ボルト53を固定ナット54に係合して締め付けていくと,ボルト側カラー55のテーパー面55Aおよびナット側カラー56のテーパー面56Aが添接板57の上方内壁面57Bに接触し,さらに固定ボルト53および固定ナット54の締付け操作によりこれらが互いに接近してゆくと,テーパー面55A,56Aにより添接板57を図中上方に押し上げる分力を発生する。」

(10)甲第10号証
(ア)「【0022】ロータ21には送りねじ機構の送りねじ棒23が固定されている。送りねじ棒23は,上端側(基端側)をロータ21と共にロータケーシング7より回転可能に且つ軸線方向(上下方向)に移動可能に支持され,下端側(先端側)はリンク機構ケーシング5内に固定された軸支持板25に形成された軸受孔27に係合してロータケーシング7より回転可能に支持されている。これにより送りねじ棒23は両端をバルブハウジング1より支持された両持ち構造になっている。なお,送りねじ棒23の上端側は,後述する支持部材65によっても,回転可能に且つ軸線方向に移動可能に支持されている。」

(イ)「【0024】送りねじ棒23がリンク機構ケーシング5内に位置する部分には送りナット29が螺合している。送りナット29は,回り止めされた状態で,ステッピングモータ17による送りねじ棒23の回転によって上下方向に移動する。」

(11)甲第11号証
(ア)「【0012】該可動部材11の下端部には駆動部材の一部を構成するナット部材13が取付けられ,該ナット部材13には上下方向に軸線を有して走行フレーム5に回転可能に支持された駆動部材の一部を構成する送りねじ15が噛合わされている。そして該送りねじ15の下部には走行フレーム5内に取付けられた駆動部材の一部を構成する電動モータ17が連結され,該電動モータ17の駆動に伴って送りねじ15を正逆方向へ夫々回転させることにより可動部材11を上下方向へ移動させる。送りねじ15と電動モータ17の連結構造としては送りねじ15に電動モータ17を直結する構造或いは所要のトルク,移動量に基づいて組合わされた歯車等からなる変速機構を介して連結する構造又は電動モーター17と送りねじ15の端部をチェーン及びスプロケットで連結する構造のいずれであってもよい。」

(12)甲第12号証
(ア)「【0015】支持部材12の上方には,多数本の下受けピン6が立設された台板21が設けられている。22は台板21上に下受けピン6を立設するためのピンホルダーである。台板21の一側部はロッド23に支持されている。ロッド23は支持部材12に装着されたガイドリング24に上下動自在に挿入されている。また台板21の他側部はカギ型のブラケット25に支持されている。ブラケット25は支持部材12を貫通している。ブラケット25の下部はナット部25aになっており,ナット部25aには垂直な送りねじ26が挿入されている。
【0016】支持部材12の略中央には第2モータ27が装着されている。送りねじ26はタイミングベルト28を介して第2モータ27により回転させられる。送りねじ26が正逆回転すると,ナット部25aは送りねじ26に沿って上下動し,これにより台板21および台板21上の下受けピン6は上下動する。すなわち,符号23?28を付した要素は,下受けピン6の上下動手段となっている。なお下受けピン6を上下動させる上下動手段としては,上昇・下降速度を変速できる可変速上下動手段であればよく,したがってカム機構なども適用できる。」

(13)甲第13号証
(ア)「【0020】図1に示す通り,底盤4の一方の端部にはモータ取付板8が垂直に固着され,このモータ取付板8にパルスモータ等の正逆回転可能なモータ9が取り付けられ,モータ9の出力軸9Aにはカップリング10を介して送りねじ11が結合されている。可動テーブル5の移動方向に延びる送りねじ11は,底盤4に取り付けられた軸受け装置12内の複数の軸受けに挿通されているため,これらの軸受けで送りねじ11は回転自在に支持されている。送りねじ11には,可動テーブル5に取付部材13を介して取り付けられたナット部材14が螺合しており,このため,底盤4にモータ取付板8を介して固定されているモータ9が正回転,逆回転すると,可動テーブル5は前進,後退するとともに,モータ9の回転数に応じた分だけ移動する。」

7.本件訂正発明1について
(1)請求人の主張の概要
甲第1号証に記載された「操作ボルト12」は,強制押し広げ力を作用させるものであり,本件訂正発明1における「隙間形成手段」に相当する構成が開示されている。
したがって,本件訂正発明1は,甲1記載の第1発明に,甲第2?4号証に記載された「締結具を取り外すことなく締結具を緩めた状態で仕切板弁を流路遮断位置まで差し入れる」技術(「周知の技術1」),「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具」(「周知の技術3」)及び甲第9号証に記載された「隙間形成手段の強制押し広げ力を環状凹部に直接作用させる」技術(「周知の技術4」)を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお,「ねじ駆動で物体を移動させるに際し,ねじ端部において回転は許容するが,その移動を規制させること」は,甲第10?13号証に記載されるように周知であり,甲第1号証の操作ボルトが水道管側のマウントに水道管側から当接状態を維持する構造であると認識するのは自然な解釈であるから,「操作ボルト」は本件訂正発明1における「隙間形成手段」に相当する。

(2)被請求人の主張の概要
甲第1号証には,本件訂正発明1における「隙間形成手段」は開示されていない。
すなわち,「操作ボルト12」の上端は,水道管側のマウントの下面に対し下方側から当接しているだけで,水道管側のマウントと操作ボルトとは別体で個別に移動可能に構成されているから,両連結フランジ部間を強制的に押し広げる力を付与する機能はない。そして,操作ボルトを緩み操作した場合,水道管から消火栓に至る流路に水圧がかかっていれば,消火栓側のマウントに固定された筒状本体と消火栓側のフランジとが水圧で上方にスライドし,両フランジ間が押し開かれるが,水圧がかかっていないと,操作ボルトの上端が水道管側のマウントの下面から離れるだけであり,両フランジは自重で接合したままの状態となる。
また,マウントとフランジとは固定されていない,すなわち,マウントとフランジとの相対移動を規制する構成は,マウントの係合片9a,9bによる係合のみである。
したがって,操作ボルトは「緩み操作を行うことにより両管部内の流体圧によって両連結フランジ部間が押し広げられる範囲を規制するもの」というべきであり,「隙間形成手段」に相当するものではない。
よって,本件訂正発明1は,甲第1号証に記載された発明に,甲第2?4号証及び甲第9号証に記載された周知技術を組み合わせても,当業者が容易に想到できるものではない。

(3)当審における対比・判断
本件訂正発明1と甲1記載の第1発明とを対比すると,後者における「水道管等の配管系統」は,その機能・作用からみて,前者における「流体配管系統」に相当し,同様に「フランジ(F),(F)」は「連結フランジ部」に相当する。
また,後者の「両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルト(B)の挿通用孔(a)を閉塞具(1)にて水密状態に閉塞した両フランジ」と,前者の「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部」とは,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部」との概念で共通する。
加えて,後者の「軸芯方向にスライド自在」(に外嵌可能な筒状本体を装着し)という態様と,前者の「締結具の緩み操作を許容する状態」(で遮断作業カバーを装着する)態様とは,「連結フランジ部の軸芯方向の移動を許容する状態」との概念で共通し,「弁板(13)」は「薄板状の仕切板弁」に,「環状のマウント(9),(9)を介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体(10)」は「遮断作業カバー」にそれぞれ相当するから,後者の「両フランジの外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両フランジの流路を遮断可能な弁板(13)が抜き差し操作自在に設けられている環状のマウント(9),(9)を介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体(10)を装着し」た態様と,前者の「締結具の緩み操作を許容する状態で両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着し」た態様とは,「軸芯方向の移動を許容する状態で,両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着」するとの概念で共通する。
そして,後者の「筒状本体の周方向複数箇所に設けられ,水道管(E)側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト(12)」と,前者の「遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段」とは,「遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた操作手段」との概念で共通し,「消火栓(S)側のフランジを水道管側のフランジから離間させ」る態様と,前者の「両連結フランジ部間を押し広げ」る態様とは,「両連結フランジ部間に隙間を形成する」との概念で共通するから,後者の「筒状本体の周方向複数箇所に設けられ,水道管(E)側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト(12)を介して筒状本体を水道管側のフランジに対してスライドさせて,消火栓(S)側のフランジを水道管側のフランジから離間させ」る態様と,前者の「締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと,遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって,前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げ」る態様とは,「遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた操作手段を操作して,両連結フランジ部間に隙間を形成」するとの概念で共通する。
さらに,後者の「弁板を両フランジ間の隙間に差し入れる」態様は,前者の「遮断作業カバーの仕切板弁を,両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで差し入れる」態様に相当する。
したがって,両者は,
「流体配管系統において,両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具で連結される構造の両連結フランジ部に,連結フランジ部の軸芯方向の移動を許容する状態で,両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で,かつ,両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着し,前記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた操作手段を操作して,両連結フランジ部間に隙間を形成し,前記遮断作業カバーの仕切板弁を,両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで差し入れることにより,両連結フランジ部間において流路を遮断する流体配管系統の流路遮断方法。」である点で一致し,次の点で相違している。
[相違点1]
両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部に関し,本件訂正発明1では,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている」のに対し,甲1記載の第1発明では,「両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルトの挿通用孔を閉塞具にて水密状態に閉塞し」ている点。
[相違点2]
「連結フランジの軸芯方向の移動を許容する状態」で遮断作業カバーを装着する態様に関し,本件訂正発明1では,「締結具の緩み操作を許容する状態で」あるのに対し,甲1記載の第1発明では,「軸芯方向にスライド自在」である点。
[相違点3]
遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた操作手段を操作して,両連結フランジ部間に隙間を形成する態様に関し,本件訂正発明1では,「締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと,遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって,前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げ」るのに対し,甲1記載の第1発明では,流体圧による両連結フランジ部間の押し広げについては明らかでなく,「筒状本体(「遮断作業カバー」に相当)の周方向複数箇所に設けられ,水道管側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルトを介して筒状本体を水道管側のフランジに対してスライドさせて,消火栓側のフランジを水道管側のフランジから離間させ」る点。
そこで,上記各相違点について検討する。

・相違点3について
上記相違点のうち,相違点3,特に甲1記載の第1発明における「操作ボルト」が本件訂正発明1における「隙間形成手段」に相当するか否かが最も大きな争点となっているので,まずこの点から検討する。
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には,上記6.(1)に摘記した事項が記載されており,これらの記載から,フランジ,マウント,筒状本体,セットボルト及び操作ボルトの配置関係を整理すると,次のようになると解される。以下,第3図等において,水道管側を「下側」,消火栓側を「上側」という。
(a)下側のマウント9は,下側のフランジFの下面に係合する係合片9aを備えることにより,下側のフランジFに対して上側にスライドできない関係にある。
(b)上側のマウント9は,上側のフランジFの上面に係合する係合片9bを備えることにより,上側のフランジFに対して下側にスライドできない関係にある。
(c)筒状本体10は,筒状本体に螺合装着されたセットボルト11により,上側のマウント9に対し係脱可能であるとともに,筒状本体に螺合装着された操作ボルト12を,下側のマウント9に下側から当接させている。

イ 「当接」の意味
上記6.(1)(ウ)の「水道管(E)側のマウント(9)に水道管(E)側から当接して,・・・操作ボルト(12)とが螺合装着」に記載される「当接」との用語は,一般的に用いられる言葉ではなく,広辞苑や大辞林にも登載されていないが,この言葉を構成する「当」と「接」の意味に照らすと,「当たり接すること」を意味すると一応解することができる。
甲第1号証では,「当接」という用語は他にも「栓(S)側のフランジ(F)を水道管(E)側のフランジ(F)に当接させた」(明細書4頁3行?4行),「本体(2)がフランジ(F)に当接した状態」(同書8頁7行?8行)等,多用されているが,いずれも「当たり接する」との意味で使用していると解されることからも,上記のような解釈が妥当と認められる。
したがって,第3図等において,操作ボルトの上端は下側のマウントの下面に「当たり接している」だけであり,両者は別体で個別に移動可能に構成されていると解すべきである。
そうすると,操作ボルトを筒状本体に対して下方向に移動するよう操作しても,操作ボルトから筒状本体に上方向の力は働かず(単に操作ボルトが下方向に移動して,操作ボルトの上端が下側のマウントの下面から離れるだけである),上側のフランジにも上方向の力を加えることはできないから,結局,操作ボルトによって,両フランジを強制的に押し広げる力を加えることはできないこととなる。

ウ 水圧の利用について
ところで,甲1記載の第1発明において,「流体圧による両連結フランジ部間の押し広げ」が作用することは明記がなくて明らかではなく,この点は相違点3の一部である。
また,甲第1号証には「操作ボルト(12)を介して筒状本体(10)を水道管(E)側のフランジ(F)に対してスライドさせて,消火栓(S)側のフランジ(F)を水道管(E)側のフランジ(F)から離間させ」(上記6.(1)(エ)参照。以下「記載事項A」という。)と記載されており,操作ボルトを介して,上側のフランジを下側のフランジから離間させることが記載されているといえるから,上記イのような解釈との関係が問題となる。
そこで,これらの点について以下検討する。
甲第1号証には,操作ボルトを介して,上側のフランジを上方に移動させ,下側のフランジから離間させる際に,フランジ部内の水圧を利用することについて明示的な記載はない。
しかし,甲第1号証には,「前記の交換方法は,水道管への給水を止めることなく,つまり,不断水の状態で消火栓等の栓を交換するために本考案者が先に開発したものであって,具体的には,次のような方法である。」(明細書2頁3行?7行),「上記の交換方法を実施する場合,連結が解除されたフランジの挿通用孔の閉塞が不完全であると,水が噴出するため,確実に止水するには,挿通用孔を水圧に抗して確実に閉塞することが肝要である。」(同書4頁9行?13行),「本考案は,容易に,かつ,確実,強力に閉塞状態に取付けることができて,水圧が抜き力として作用する不断水での栓交換においても,不測に外れることがなくて,確実に止水することができる閉塞具を提供し得るに至った。」(同書7頁5行?9行),「第4図に示すように,水道本管(H)から立上げ分岐させた水道管(E)の端部にフランジ接合されている消火栓(S)を,水道管(E)への給水を止めることなく,つまり,不断水の状態で交換する場合において,水道管(E)及び消火栓(S)接合用のフランジ(F)に形成されたフランジ連結ボルト(B)の挿通用孔(a)を水密状態に閉塞するために用いる閉塞具(1)であって,…」(同書7頁13行?20行)等と記載されている。
これらの記載によると,甲第1号証には,水道本管(H)から立上げ分岐させた水道管(E)の端部にフランジ接合されている消火栓(S)等の栓を,水道管(E)への給水を止めることなく,不断水状態で栓を交換する技術が開示されており,不断水状態における消火栓の交換時には,分岐管内には水圧が掛かっており,その水圧が消火栓等が外れる方向(すなわち消火栓を持ち上げる方向)に作用していることは明らかである。
したがって,甲1記載の第1発明においても,「流体圧による両連結フランジ部間の押し広げ」が作用しているといえるから,相違点3の内,この点については実質的な相違点ではない。
そして,第5図において,操作ボルトを所定距離だけ下方向に移動するよう操作すると,両フランジの内部に水圧が掛かっているから,当該水圧により上側のフランジが上側のマウント及び筒状本体とともに上方向に該所定距離だけ押し上げられ,フランジ間が押し広げられることになる。
甲第1号証に記載の技術が不断水状態で栓を交換するものであることを勘案すれば,当業者にとって上記のような解釈が最も自然な解釈といえる。
したがって,甲第1号証の記載を総合して判断すれば,甲第1号証には,水圧でフランジが押し広げられることが開示されているといえる。
そうすると,上記記載事項Aは,「操作ボルトを(下方向に)操作することにより,筒状本体が上方向に移動することを許容し,上側(消火栓側)のフランジが水圧により上方向に移動し,下側(水道管側)のフランジと離間すること」を記載したものと解することができる。
このように解すれば,操作ボルトの上端が下側フランジの下面に「当接」していることと,「操作ボルトを介して」,すなわち,操作ボルトを操作することにより両フランジを離間させ得ることとを矛盾なく理解することができ,上記のような解釈が合理的な解釈ということができる。

エ マウントとフランジとの関係
操作ボルトが隙間形成手段に相当すると言えるためには,操作ボルトの操作により(水圧を用いずに)両フランジ間に強制押し広げ力を作用させ得ること,すなわち上側のマウント9と上側のフランジFとが固定されていることも必要であるから,マウント9とフランジFとが固定されているか否かについても検討する。
マウント9とフランジFとの関係については,上記ア(a)(b)に記載したとおり,
(a)下側のマウント9は,下側のフランジFの下面に係合する係合片9aを備えることにより,下側のフランジFに対して上側にスライドできない関係にある。
(b)上側のマウント9は,上側のフランジFの上面に係合する係合片9bを備えることにより,上側のフランジFに対して下側にスライドできない関係にある。
そして,甲第1号証には,マウントとフランジとの固定関係について,上記(a)(b)以外に具体的な記載はない。
但し,甲第1号証には,「筒状本体(10)には,消火栓(S)側のマウント(9)に対する係脱により消火栓(S)側のフランジ(F)を筒状本体(10)に固定ならびに固定解除自在な周方向複数個のセットボルト(11)」(上記6.(1)(ウ)参照。以下「記載事項B」という。)との記載があり,これによれば,セットボルトにより,筒状本体,マウント及びフランジを固定可能であると解する余地がないとはいえない。
しかし,この記載は,マウントとフランジとを直接固定する手段については何等具体的に示すものではないし,記載事項Bにおける「消火栓側のフランジを筒状本体に固定」とは,上記ウで述べた記載事項Aの解釈と同様,セットボルト11で上側(消火栓側)の筒状本体10と上側のマウント9とを係合(固定)させることにより,上側のフランジが水圧を受けて上方へ移動しようとする際,この上側のフランジと上側の筒状本体とが上側のマウントを介して共に上方へ移動し得る関係を意味するものと解することができるから,マウント9とフランジFとを直接固定するものと解すべき必然性はない。
したがって,甲第1号証において,上側のマウントと上側のフランジとが固定されていると断定することはできず,少なくとも明らかではないといわざるを得ない。
なお,操作ボルトが両フランジを強制的に押し広げることができるためには,操作ボルトと下側のマウントとが機械的に接続されていること(「当接状態を維持する構造」であること)とともに,上側のマウントと上側のフランジとが固定されていることの両者が必要である。したがって,後者の条件が満たされても,前者の条件が成立しない限り,操作ボルトが両フランジを強制的に押し広げられるとすることはできないことは言うまでもない。

オ 甲第1号証には,また,「固定された消火栓(S)側のフランジ(F)を水道管(E)側のフランジ(F)に対して遠近移動させるように筒状本体(10)を水道管(E)側のフランジ(F)に対してスライド操作自在で,かつ,離間位置に固定可能な周方向複数個の操作ボルト(12)」(上記6.(1)(ウ)参照。以下「記載事項C」という。)との記載がある。
記載事項Cについては,上記ウで述べた記載事項Aの解釈と同様,操作ボルトを下方向に操作することにより,筒状本体が上方向に移動することを許容し,上側のフランジが水圧により(上側のマウント及び筒状本体とともに)上方向に移動し,操作ボルトを上方向に操作することにより,筒状本体を下方向に移動させ,セットボルトにより筒状本体と固定された上側のマウント,及び上側のマウントの係合片と係合する上側のフランジを下方向に移動させて両フランジを当接させること,さらに,操作ボルトを下方向に所定距離だけ操作することにより,筒状本体が上方向に該所定距離だけ移動することを許容して,水圧により上方向の力を受けている上側のフランジを筒状本体により,下側のフランジから離間した所定位置に維持(規制)可能としたことを記載したものと解することができる。

カ 上記ア?オのとおり,甲第1号証に記載された内容を総合して判断すると,甲第1号証の操作ボルトは,操作ボルト自体で両フランジ間に強制押し広げ力を作用させることはできないから,本件訂正発明1の「隙間形成手段」に相当するとはいえないと言わざるを得ない。

次に,甲第2号証に記載された「ジャッキ装置」が,本件訂正発明1の「隙間形成手段」に相当するか否かについて検討する。

甲第2号証には,流体が入れられた導管のフランジ接続のフランジ間にスペード弁を挿入するに際して,「フランジ12と13を離すには力が充分でない場合には,…ジャッキ装置を設け導管10と11を分離する。」(上記6.(2)(ウ)参照)と記載されている。
しかし,隙間形成手段としてのジャッキ装置は,箱体16(本件訂正発明1における「遮断作業カバー」に相当)の外側に設けられたフランジ21,26と,箱体16外方に突出した導管10(または11)に設けられた環70との間をロッド71及びナット73,74を用いて連結し,ナットを回転させることにより導管10,11を動かして,箱体16内のフランジ12,13を分離するものである。すなわち,甲第2号証のジャッキ装置は,箱体16の外側で導管に対して力を作用させるものといえる。
これに対し,本件訂正発明1では,「両連結フランジ部の外周を密封状態で」装着される「遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられ」,「両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に強制押し広げ力を付与する」隙間形成手段を備えるものである。
そうすると,甲第2号証のジャッキ装置と本件訂正発明1の「隙間形成手段」とは,流体配管(導管)を接続するフランジ間を引き離すための力を作用させる点で共通するものの,その具体的構成においては大きく異なるものである。すなわち,本件訂正発明1では,遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられるものであり,両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に強制押し広げ力を付与するものであるのに対し,甲第2号証のジャッキ装置は,箱体(「遮断作業カバー」に相当)の外側のフランジと導管(「流体配管」に相当)に設けた環との間に形成されたものであり,導管に力を作用させて導管を動かすものである。
したがって,甲第2号証のジャッキ装置が本件訂正発明1の「隙間形成手段」に相当するものとはいえず,また,それを示唆するものということもできない。
さらに,他のいずれの甲号証にも,本件訂正発明1の「隙間形成手段」を開示ないし示唆する記載は認められない。

そうすると,甲1記載の第1発明において,相違点3に係る本件訂正発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものではない。

・相違点1,2について
甲第2号証には,1対の導管10と11に設けられたフランジ12,13が両フランジを貫通するナットボールト14で一緒に締付けられ,スペード弁49を両フランジ間に挿入する際には,スパナ37をボールト14と係合し,ロッド36を操作してボールト14をゆるめることが記載されている。
すなわち,甲第2号証には,流体配管系統の流路遮断方法(装置)において,両連結フランジ部(「フランジ12,13」が相当)に貫通状態で設けられた締結具(「ボールト14」が相当)にて締付け連結された両連結フランジ部に対し,締結具を緩み操作してから両連結フランジ部間に仕切板弁(「スペード弁49」が相当)を挿入することが開示されている。
したがって,甲1記載の第1発明において,甲第2号証に開示された技術を適用して,相違点1,2に係る本件訂正発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

以上のとおりであるから,本件訂正発明1は,その構成要件である「隙間形成手段」について開示ないし示唆する刊行物がない以上,甲第1?13号証に記載されたものに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(4)請求人の主張について
ア これに対し,請求人は,以下のように主張している。
(ア)甲第1号証の操作ボルトは,本件訂正発明1の「隙間形成手段」に相当する。
すなわち,甲第1号証の明細書の11頁12行?12頁2行(上記6.(1)(ウ)参照),13頁10行?13行(上記6.(1)(エ)参照)等の記載から,操作ボルトと下側マウントの底面とは,「当接」状態を維持する構造となっているものと解すべきである。
上記記載箇所には,筒状本体を介して上側(消火栓側)のフランジをスライドさせるのに「操作ボルト」も積極的に関与している点が開示され,操作ボルトにより上側のフランジを離間位置に固定可能であることも開示されているから,操作ボルトと下側マウントの底面とは,「当接状態を維持する構造」とみるのが自然な解釈である。そして,そのための構成として,「ねじ駆動で物体を移動させるに際し,ねじ端部において回転は許容するが,その移動を規制すること」は,甲第10?13号証に記載されるように出願時の技術常識である。
また,「マウントとフランジとは固定されている」ことは,甲第1号証の明細書の11頁13行?15行及び11頁17行?12頁1行(上記6.(1)(ウ)参照),13頁4行?6行(上記6.(1)(エ)参照)等の記載及び第6図,第7図から明らかである。
したがって,甲第1号証の操作ボルトは,両フランジを強制的に押し広げる力を作用させるものであるから,本件訂正発明1の「隙間形成手段」に相当する。(平成21年7月13日付け上申書,2頁9行?6頁下から4行)
(イ)さらに,本件訂正発明1において,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具」と訂正した点は,甲第2?4号証に記載されるように,従来周知の技術(「周知の技術3」)である。(弁駁書4頁(イ))
(ウ)加えて,本件訂正発明1において,請求項1の記載では,隙間形成手段による強制押し広げ力が両連結フランジ部の環状凹部に「直接」作用することを意味するものであるか必ずしも明らかではないが,例え,「直接」作用することを意味するとしても,一般に,「隙間形成手段の強制押し広げ力を環状凹部に直接作用させること」は,例えば甲第9号証に記載されるように従来周知の技術(「周知技術4」)であるから,この点は格別のものではない。
したがって,本件訂正発明1は,甲1記載の第1発明及び周知の技術1,3,4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。(弁駁書5頁(オ)?6頁(キ))

イ しかしながら,甲第1号証には,操作ボルトと下側マウントとの底面が「当接状態を維持する構造」であることは記載されていないし,甲第1号証の第3図は「栓脱着装置を示す縦断面図」であるにも関わらず,請求人が平成21年7月13日付け上申書の第4頁で主張しているような,操作ボルトと下側マウントの底面とが「当接状態を維持する構造」は全く見受けられず,図面からそのように解することもできない。そして,「当接」という用語の意味も,請求人が主張するように「当接状態を維持する」ことと解すべき理由のないことは,上記(3)イに記載したとおりである。
また,仮に「ねじ駆動で物体を移動させるに際し,ねじ端部において回転は許容するが,その移動を規制すること」が,甲第10?13号証に記載されるように出願時の技術常識であるとしても,甲第10?13号証に記載されたものは,電動式コントロールバルブ(甲第10号証),歩行補助装置(甲第11号証),基板の下受装置(甲第12号証),送りテーブル装置(甲第13号証)と,いずれも本件訂正発明1とは全く異なる技術分野のものであり,流体配管系統の流路遮断方法(装置)の技術分野において,そのような技術を採用することが周知であることを開示するものではないから,これらの証拠をもって,「当接」の意味を請求人主張のように解することはできない。
さらに,マウントとフランジとが固定されていると断定できないことは,上記(3)エに記載したとおりである。
したがって,請求人の上記主張(ア)は採用できない。
そして,上記主張(イ)(ウ)を検討するまでもなく,本件訂正発明1が甲各号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易になし得たとすることはできないことは,上記のとおりである。

8.本件訂正発明2について
本件訂正発明2と甲1記載の第2発明とを対比すると,後者における「フランジ(F),(F)」は,その機能・作用からみて,前者における「連結フランジ部」に相当する。
また,後者の「両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルト(B)の挿通用孔(a)を閉塞具(1)にて水密状態に閉塞した両フランジ」と,前者の「両フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部」とは,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部」との概念で共通する。
加えて,後者の「両フランジの外周を環状のマウント(9),(9)を介して水密状態で軸芯方向にスライド自在に外嵌可能な筒状本体(10)」は,前者の「それらの両連結フランジ部の外周を密封する状態で装着自在な遮断作業カバー」に相当する。
さらに,後者の「弁板(13)」は前者の「薄板状の仕切板弁」に相当し,後者の「両フランジ間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在」な態様と,前者の「締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在」な態様とは,「両連結フランジ部間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在」との概念で共通する。
また,「摺動案内する部材」は「摺動案内する摺動ガイド手段」に相当する。
そして,後者の「筒状本体の周方向複数箇所には,水道管(E)側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト(12)が設けられている」態様と,前者の「遮断作業カバーの周方向複数箇所には,両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段が設けられている」態様とは,「遮断作業カバーの周方向複数箇所には,操作手段が設けられている」との概念で共通する。
最後に,「水道管等の流路遮断装置」は「管内流路遮断装置」に相当する。

したがって,両者は,
「両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部に対して,それらの両連結フランジ部の外周を密封状態で装着自在な遮断作業カバーに,両連結フランジ部間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状の仕切板弁と,この仕切板弁を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する摺動ガイド手段が設けられているとともに,前記遮断作業カバーの周方向複数箇所には,操作手段が設けられている管内流路遮断装置。」である点で一致し,次の点で相違している。
[相違点1]
両連結フランジ部に貫通状態で設けられる締結具で連結される構造の両連結フランジ部に関し,本件訂正発明2では,「両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている」のに対し,甲1記載の第2発明では,「両フランジに貫通状態で設けられるフランジ連結ボルトの挿通用孔を閉塞具にて水密状態に閉塞し」ている点。
[相違点2]
仕切板弁が両連結フランジ部間の隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な態様に関して,本件訂正発明2では,「締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み自在」であるのに対し,甲1記載の第2発明では,隙間が「締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって」発生したものか否か明らかでない点。
[相違点3]
遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられている操作手段に関して,本件訂正発明2では,「両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段」であるのに対し,甲1記載の第2発明では,「水道管側のマウントに水道管側から当接させた操作ボルト」である点。
そこで,上記相違点について検討する。
上記相違点のうち,相違点3については,上記7.(3)に記載したのと同様,甲1記載の第2発明における操作ボルトは,本件訂正発明2の「隙間形成手段」に相当せず,しかも他のいずれの甲号証にも「隙間形成手段」は開示も示唆もされていないから,甲1記載の第2発明において,相違点3に係る本件訂正発明2の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって,本件訂正発明2は,他の相違点について検討するまでもなく甲第1?13号証に記載されたものに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

9.本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5は,いずれも請求項2を引用する発明であり,本件訂正発明2が進歩性を有する以上,本件訂正発明3?5も進歩性を有する。

10.むすび
以上のとおりであって,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件訂正発明1?5についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
流体配管系統の流路遮断方法及び管内流路遮断装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道配管系統等の流体配管系統の構成部材のうち、両管部の連結フランジ部同士をそれらの接合面間にシール材を介装した状態で締結具にて締付け連結してあるフランジ接合箇所において、それよりも下流側に位置する補修弁、消火栓、空気弁等の交換のために流路を遮断する流路遮断方法及びそれに用いられる管内流路遮断装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流体配管系統の流路遮断方法では、例えば、フランジ接合箇所の下流側管部に接続された又は下流側管部自体を構成する補修弁、消火栓等の劣化による漏水や故障等が発生して、新しい補修弁等に取り替える必要が生じたとき、図19、図20に示すように、上流側の管部2に、それの外周面に径方向外方から当て付け可能なステンレス鋼製の一対の挾持帯100と、両挾持帯100の端部同士を挾持側に引寄せ固定する引寄せボルト101・ナット102からなるバンド103を装着する。
【0003】
このバンド103の両引寄せボルト101の各々には、両管部2,3の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁(止水板)104の長手方向両端に切欠き形成された係合凹部104aに対して係合可能なナット105を螺合してある仮止めボルト106が起伏揺動自在に取付けられているとともに、仕切板弁104の下面には、上流側管部2の連結フランジ部2Aに対して径方向外方から係合するL字状の係止片107が固着されている。
【0004】
次に、両管部2,3の連結フランジ部2A,3A同士を締付け連結するための締結具108を構成する4組の締結ボルト109・ナット110のうち、仕切板弁104の差し込み移動経路中に位置する一方の中心線上の二組の締結ボルト109・ナット110を取外し、仕切板弁104の差し込み方向に対して直交する他方の中心線上の二組の締結ボルト109・ナット110を徐々に緩み操作しながら、上流側管部2の連結フランジ部2Aと接合面間に介装されているシール材の一例である板パッキン111との間に仕切板弁104を差し込んだのち、この差し込まれた仕切板弁104の両係合凹部104aにバンド103の両仮止めボルト106を係入し、それに螺合されているナット105を締付け側に螺合操作して、上流側管部2の連結フランジ部2Aに当て付け固定された仕切板弁104によって止水する。
【0005】
次に、他方の中心線上の二組の締結ボルト109・ナット110も取外し、古い板パッキン111及び補修弁を撤去したのち、新しい板パッキン111及び補修弁を装着し、他方の中心線上の二組の締結ボルト109・ナット110を仮止め状態で取付けるとともに、仕切板弁104の両係合凹部104aから両仮止めボルト106を抜き出す。
【0006】
この状態で板パッキン111がずれないように調整しながら仕切板弁104を引き抜いた後、他方の中心線上の二組の締結ボルト109・ナット110を本締めするとともに、一方の中心線上の二組の締結ボルト109・ナット110を取付けて本締めする(非特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】第45回全国水道研究発表会 平成6年5月(5-34)不断水による消火栓の取替事例
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の流体配管系統の流路遮断方法では、不断水状態のまま補修弁等を取り替えることができるばかりでなく、両管部2,3の連結フランジ部2A,3A同士を締付け連結している締結ボルト109・ナット110のうち、仕切板弁104の差し込み経路内に位置する締結ボルト109・ナット110を取り外したのち、他の締結ボルト109・ナット110を緩み操作して、その緩み操作に連れて発生する両連結フランジ部2A,3A間の隙間を通して仕切板弁104を差し入れることにより、管内流路を遮断することができるので、施工コストの低廉化と施工期間の短縮化を図ることができる反面、締結ボルト109・ナット110を緩み操作した瞬間に、両連結フランジ部2A,3A間に形成された隙間を通して管内流体が外部に噴出するばかりでなく、噴出流体が仕切板弁104の差し入れ抵抗となり、しかも、両連結フランジ部2A,3A間の隙間を極力小さくする必要があるため、仕切板弁104の差し入れ操作に手間取り易い。
【0009】
特に、両連結フランジ部2A,3Aの接合面間に介装されている板パッキン111が波打つたり、或いは、両連結フランジ部2A,3Aの接合面間に亘って板パッキン111の一部が貼り付いている場合では、板パッキン111の一部を押し切りながら仕切板弁104を差し入れることになるため、管内流路が遮断されるまでの管内流体の総噴出量が増大する。
【0010】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、両連結フランジ部の接合面間の隙間から外部に噴出する流体の圧力に抗して蔽板弁を差し込み操作する従来方法に比して、両連結フランジ部の接合面間での流路遮断作業を、管内流体の漏洩を抑制しながら少ない労力で能率良く確実、容易に行うことのできる流体配管系統の流路遮断方法及び管内流路遮断装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による第1の特徴構成は、流体配管系統において、両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に、前記締結具の緩み操作を許容する状態で両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で、かつ、両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着し、前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと、前記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって、前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げ、前記遮断作業カバーの仕切板弁を、前記締結具の緩み操作によって発生した両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで差し入れることにより、両連結フランジ部間において流路を遮断する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、例えば、両管部のフランジ接合箇所の下流側管部に接続された又は下流側管部自体を構成する補修弁、消火栓等の劣化による漏水や故障等が発生して、新しい補修弁、消火栓等に取り替える必要が生じたとき、両管部に遮断作業カバーを装着して、両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞したのち、両管部の連結フランジ部を締付け連結している締結具を緩み操作する。この緩み操作に連れて両連結フランジ部間の隙間から流出した流体は遮断作業カバー内に充満するものの、外部に漏洩することはない又は外部への流体の漏洩量を大幅に減少することができる。
それ故に、両連結フランジ部間の隙間を仕切板弁の板厚よりも十分に大きくすることが可能で、しかも、遮断作業カバー内に流体が充満した状態では管路内圧と略等しくなっているため、この遮断作業カバーに設けられている薄板状の仕切板弁を両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで確実、スムーズに差し込み操作することができる。
【0013】
従って、従来方法のように両連結フランジ部の接合面間の隙間から外部に噴出する流体の圧力に抗して仕切板弁を差し込み操作する必要がなく、両連結フランジ部の接合面間での流路遮断作業を、管内流体の漏洩を抑制しながら少ない労力で能率良く確実、容易に行うことができる。
【0015】
更に、両管部の連結フランジ部を締付け連結している締結具を緩み操作しても、両連結フランジ部間に緩み操作代に相当する隙間が形成されなかったり、或いは、フランジ接合箇所に存在する融通範囲内で下流側管部の連結フランジ部に対して上流側管部の連結フランジ部が傾動しても、遮断作業カバーに設けられている隙間形成手段によって、締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げることにより、両連結フランジ部間に緩み操作代に相当する隙間を確実に形成することができるので、両管部に装着した遮断作業カバーによって両連結フランジ部の外周を密封状態に囲繞しながらも、遮断作業カバーに設けられている仕切板弁を両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで確実、スムーズに差し込み操作することができる。
【0016】
本発明による第2の特徴構成は、両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に対して、それらの両連結フランジ部の外周を密封する状態で装着自在な遮断作業カバーに、前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状の仕切板弁と、この仕切板弁を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する摺動ガイド手段が設けられているとともに、前記遮断作業カバーの周方向複数箇所には、両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段が設けられている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、例えば、両管部のフランジ接合箇所の下流側管部に接続された又は下流側管部自体を構成する補修弁、消火栓等の劣化による漏水や故障等が発生して、新しい補修弁、消火栓等に取り替える必要が生じたとき、両管部に遮断作業カバーを装着して、両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞したのち、両管部の連結フランジ部を締付け連結している締結具を緩み操作する。この緩み操作に連れて両連結フランジ部間の隙間から流出した流体は遮断作業カバー内に充満するものの、外部に漏洩することはない又は外部への流体の漏洩量を大幅に減少することができる。
それ故に、両連結フランジ部間の隙間を仕切板弁の板厚よりも十分に大きくすることが可能で、しかも、遮断作業カバー内に流体が充満した状態では管路内圧と略等しくなっているため、この遮断作業カバーに設けられている薄板状の仕切板弁を、摺動ガイド手段によって摺動案内されながら両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで確実、スムーズに差し込み操作することができる。
【0018】
従って、従来方法のように両連結フランジ部の接合面間の隙間から外部に噴出する流体の圧力に抗して仕切板弁を差し込み操作する必要がなく、しかも、仕切板弁を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とにスムーズに摺動案内することができるので、両連結フランジ部の接合面間での流路遮断作業を、管内流体の漏洩を抑制しながら少ない労力で能率良く確実、容易に行うことができる。
【0020】
更に、両管部の連結フランジ部を締付け連結している締結具を緩み操作しても、両連結フランジ部間に緩み操作代に相当する隙間が形成されなかつたり、或いは、フランジ接合箇所に存在する融通範囲内で下流側管部の連結フランジ部に対して上流側管部の連結フランジ部が傾動しても、遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられている隙間形成手段によって、締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げることにより、両連結フランジ部間に緩み操作代に相当する隙間を確実に形成することができるとともに、その隙間の周方向での開口幅の均等化を図ることができるので、両管部に装着した遮断作業カバーによって両連結フランジ部の外周を密封状態に囲繞しながらも、遮断作業カバーに設けられている仕切板弁を両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで確実、スムーズに差し込み操作することができる。
【0025】
本発明による第3の特徴構成は、前記隙間形成手段が、遮断作業カバーの周方向複数箇所において、両連結フランジ部間の隙間に対して径方向外方から入り込み移動するテーパー面を備えた複数の分離ボルトから構成されている点にある。
上記特徴構成によれば、遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けた複数の分離ボルトを締め込み操作することにより、締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げて、両連結フランジ部間の隙間の周方向での開口幅の均等化を図ることができる。
【0026】
本発明による第4の特徴構成は、前記隙間形成手段の分離ボルトは、それのボルト軸芯が仕切板弁の移動平面を通る平面上又はその近傍に位置する状態で締付け輪に取付けられている点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けた複数の分離ボルトを締め込み操作して、締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げたとき、その押し広げられた隙間の中央位置又はその近傍に仕切板弁の移動平面が位置することになり、仕切板弁の差し込み操作をスムーズに行うことができる。
【0028】
本発明による第5の特徴構成は、前記締結具が、一方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを頭部の当接面に設けてあるボルトと、他方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを当接面に設けてある袋ナットから構成されている点にある。
【0029】
上記特徴構成によれば、例えば、両管部のフランジ接合箇所の下流側管部に接続された又は下流側管部自体を構成する補修弁、消火栓等の劣化による漏水や故障等が発生して、新しい補修弁、消火栓等に取り替える必要が生じたとき、両管部に遮断作業カバーを装着して、両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞したのち、両管部の連結フランジ部を締付け連結している締結具を緩み操作する。この緩み操作に連れて両連結フランジ部間に隙間が発生しても、一方の連結フランジ部とボルトの頭部との当接、及び他方の連結フランジ部と袋ナットとの当接が維持されているので、それらの各当接面間に位置するOリングによって、連結フランジ部に貫通形成されているボルト挿通孔を通しての流体の漏洩を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
図1、図2は流体配管系統中の管接続構造を示し、流体管の一例である鋳鉄管製の水道管1の途中に一体的に突出形成された上流側管部としての分岐管部2の連結フランジ部2Aに、下流側管部としての連結管3の上流側連結フランジ部3Aが、それらの接合面間にシール材の一例であるシートパッキン4を介装した状態で前記両連結フランジ部2A,3Aに貫通状態で設けられた複数組(当該実施形態では4組)のボルト5A・袋ナット5Bからなる第1締結具5にて密封状態で脱着自在に締付け連結されているとともに、この連結管3の下流側連結フランジ部3Bには、流体機器又は配管材の一例である補修弁6の上流側連結フランジ部6Aが、それらの接合面間にシール材の一例であるシートパッキン4を介装した状態で複数組のボルト7A・ナット7Bからなる第2締結具7にて密封状態で脱着自在に締付け連結され、更に、補修弁6の下流側連結フランジ部6Bには、必要に応じて流体機器又は配管材の一例である消火栓等が密封状態で脱着自在に締付け連結される。
【0031】
そして、前記分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の上流側連結フランジ部3Aとにわたる部位には、水道管1内の上水の流れを維持した不断水状態のまま、劣化による漏水や故障等の理由で補修弁6を取り替える必要が発生したとき、分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の上流側連結フランジ部3Aとの間において、水道管1の管軸芯X1に対して直交する分岐軸芯X2方向の管内流路Wを遮断する管内流路遮断装置Aが組付けられている。
【0032】
この管内流路遮断装置Aには、図1?図9に示すように、分岐管部2と連結管3の両連結フランジ部2A,3Aに対して、それらの両連結フランジ部2A,3Aの外周を密封する状態で脱着自在に装着可能な遮断作業カバーBと、第1締結具5のボルト5A・袋ナット5Bの緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部2A,3Aの接合面間に発生した隙間Sを通して管内流路Wを遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状の仕切板弁8と、この仕切板弁8を密封状態で流路遮断位置と流路開放操作位置とに摺動案内する摺動ガイド手段Cが主要構成として備えられているとともに、前記遮断作業カバーBの周方向複数箇所(当該実施形態では周方向の三箇所)には、両連結フランジ部2A,3Aの接合面間に形成される環状凹部25において第1締結具5のボルト5A・袋ナット5Bの緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部2A,3Aの接合面間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段Dが設けられている。
【0033】
前記第1締結具5としては、通常仕様の複数組(当該実施形態では4組)のボルト5C,5Dと密封機能に優れた防水仕様の複数組(当該実施形態では4組)のボルト5A・袋ナット5Bからなり、補修弁6を取り替え工事の開始時には、通常仕様のボルト5C,5Dから防水仕様のボルト5A・袋ナット5Bに取り替え、更に、取り替え工事の終了時に防水仕様のボルト5A・袋ナット5Bから通常仕様のボルト5C,5Dに取り替える。
【0034】
前記遮断作業カバーBは、図1?図6に示すように、各連結フランジ部2A,3Aの外周面に対して径方向外方から圧接可能な横断面視略半円形状の環状の第1シール部11a及び両連結フランジ部2A,3Aの外周面の隣接間に径方向外方に向かって開口形成されている環状凹部25に対して一部が入り込む状態で径方向外方から圧接可能な横断面視略半円形状の環状の第2シール部11bを備えた環状弾性シール材11と、この環状弾性シール材11を径方向外方から締付け固定する二分割構造の締付け輪12とから構成されている。
【0035】
前記環状弾性シール材11は、図6?図9に示すように、接合面間に仕切板弁8を差し込み可能な設定最大隙間Sが形成されているときにおける両連結フランジ部2A,3Aの分岐軸芯X2方向での外面間隔と等しい又は略等しい幅で円環状に一体成形されているとともに、それの内周面のうち、両連結フランジ部2A,3Aの隣接間中央位置に対応する幅方向中央位置に一体形成される第2シール部11bの径方向内方への突出代が、各連結フランジ部2A,3Aの外周面に対応する幅方向両側位置に一体形成される第1シール部11aの径方向内方への突出代よりも大に構成され、更に、両第1シール部11aの最小内径及び第2シール部11bの最小内径が、連結フランジ部2A,3Aの外周面の外径よりも小に構成されている。
【0036】
また、前記環状弾性シール材11の第2シール部11bの一部には、仕切板弁8の差込み移動を許容する開口11cが形成され、この開口11cの周方向両側脇に位置する部位と開口11cに径方向で相対向する部位との合計三箇所には、隙間形成手段Dを構成する分離ボルト13の先端側が径方向外方から貫通する貫通孔11dが形成されている。
【0037】
前記締付け輪12は、図1?図6に示すように、環状弾性シール材11の分岐軸芯X2方向幅よりも大きな分岐軸芯X2方向幅に構成された略半円弧状の一対の締付け分割輪12Aと、各締付け分割輪12Aの周方向両端部に固着された連結片12Bのうち、仕切板弁8の抜き差し方向で相対向する連結片12B同士を引寄せ固定するボルト12C・ナット12Dから構成されていて、ボルト12C・ナット12Dが設定トルクで締め付け操作されたとき、第1締結具5の緩み操作に伴う分岐管部2と連結管3との水圧による相対離脱移動を許容する状態で、環状弾性シール材11の両第1シール部11aが両連結フランジ部2A,3Aの外周面に設定圧接力で密封圧接されると同時に、環状弾性シール材11の第2シール部11bが両連結フランジ部2A,3Aの隣接間の環状凹部25に設定圧接力で密封圧接されるように構成されている。
【0038】
また、一方の締付け分割輪12Aのうち、環状弾性シール材11の開口11に径方向で相対向する周方向中央位置には、仕切板弁8の弁板8Aの横断面形状よりも若干大きな相似形で、かつ、仕切板弁8の抜き差し移動を摺動案内する機能を備えたスリット状の開口12aが貫通形成されているとともに、両締付け分割輪12Aにおける環状弾性シール材11の各貫通孔11dに径方向で相対向する周方向の三箇所には、隙間形成手段Dを構成する分離ボルト13が径方向外方から貫通する貫通孔12bが形成されている。
【0039】
前記仕切板弁8は、図3、図4に示すように、分岐管部2及び連結管3の外径よりも少し大なる幅を有し、かつ、先端縁8aが半円形状に形成された薄板状(当該実施形態では板厚が3.2mm)の弁板8Aと、この弁板8Aの後端縁の中央位置に固着された操作伝達軸8Bと、この操作伝達軸8Bの後端部に螺合固定された操作ハンドル8Cとから構成されている。
【0040】
また、前記弁板8Aの半円先端縁8aは、それの板厚方向中央位置に先鋭端が位置する状態で断面V字状に面取り加工されている。
【0041】
前記摺動ガイド手段Cを構成するに、図1?図5に示すように、一方の締付け分割輪12Aに、仕切板弁8の半円弧状先端縁8aの一部がスリット状開口12aに対して摺動自在に入り込む状態で弁板8Aの大部分を収納可能な収納空間14を備えた弁ケース15が固着されているとともに、弁ケース15の後端部に形成された連結フランジ部15Aには、仕切板弁8の操作伝達軸8Bを仕切板弁8の抜き差し方向に移動自在に摺動案内する蓋体16がボルト17にて締付け固定され、更に、蓋体16には、仕切板弁8の操作伝達軸8Bの外周面との間を密封するOリング18が設けられている。
【0042】
前記隙間形成手段Dを構成するに、図2?図5に示すように、両締付け分割輪12Aの外周面の各貫通孔12bに臨む部位には、分離ボルト13の雄ネジ部13aに螺合する雌ネジ部20aを備えたネジ筒体20が固着されているとともに、各分離ボルト13の先端部には、両連結フランジ部2A,3Aの隣接間の環状凹部25に対して径方向外方から進入することにより、第1締結具5のボルト5A・袋ナット5Bの緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部2A,3Aの接合面間を押し広げるテーパー面13bが形成されている。
【0043】
更に、前記各分離ボルト13は、図6に示すように、それのボルト軸芯が仕切板弁8の弁体8Aの移動平面を通る平面上又はその近傍に位置する状態で締付け輪12の各締付け分割輪12Aに取付けられているとともに、各分離ボルト13の後端部には、ネジ筒体20の外部からレンチ等の操作具で螺合操作するための操作係合穴13cが形成され、更に、ネジ筒体20の内周面には、各分離ボルト13の外周面との間を密封するOリング21が設けられている。
【0044】
また、前記第1締結具5の防水仕様用のボルト5Aにおける頭部の当接面及び防水仕様用の袋ナット5Bの当接面の各々には、分岐管部2の連結フランジ部2Aの外面又は連結管3の上流側連結フランジ部3Aの外面との間を密封するOリング22,23が設けられている。
【0045】
そのため、分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の連結フランジ部3Aとを締付け連結している第1締結具5の緩み操作に連れて両連結フランジ部2A,3A間に隙間Sが発生しても、一方の連結フランジ部3Aとボルト5Aの頭部との当接、及び他方の連結フランジ部2Aと袋ナット5Bとの当接が維持されているので、それらの各当接面間に位置するOリング22,23によって、連結フランジ部2A,3Aに貫通形成されているボルト挿通孔を通しての流体の漏洩を抑制することができる。
【0046】
次に、上述の如く構成された管内流路遮断装置Aを用いての流体配管系統の流路遮断方法について説明する。
先ず、分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の連結フランジ部3Aとを締付け連結している第1締結具5の通常仕様の複数組のボルト5C,5D(図18参照)を、一組又は二組単位で防水仕様のボルト5A・袋ナット5Bに取り替える。
【0047】
図1、図2に示すように、遮断作業カバーBの環状弾性シール材11を弾性復元力に抗して拡径変形させた状態で補修弁6を経由して分岐管部2の連結フランジ部2Aの外周面と連結管3の上流側連結フランジ部3Aの外周面とにわたる部位に外装すると、この環状弾性シール材11の縮径側への弾性復帰により、環状弾性シール材11の両第1シール部11aが両連結フランジ部2A,3Aの外周面に設定圧接力よりも小さな弾性力で圧接されると同時に、環状弾性シール材11の第2シール部11bが両連結フランジ部2A,3Aの隣接間に形成されている環状凹部25に一部が入り込む状態で設定圧接力よりも小さな弾性力で圧接され、環状弾性シール材11が両連結フランジ部2A,3Aに弾性力で保持される。
【0048】
次に、前記環状弾性シール材11の外周面に遮断作業カバーBの一対の締付け分割輪12Aを当て付け、各締付け分割輪12Aの周方向両端部に固着された連結片12Bのうち、仕切板弁8の抜き差し方向で相対向する連結片12B同士を、ボルト12C・ナット12Dにて引寄せ固定し、第1締結具5の緩み操作に伴う分岐管部2と連結管3との水圧による相対離脱移動を許容する状態で、環状弾性シール材11の両第1シール部11aが両連結フランジ部2A,3Aの外周面に設定圧接力で密封圧接されると同時に、環状弾性シール材11の第2シール部11bが両連結フランジ部2A,3Aの隣接間の環状凹部25に設定圧接力で密封圧接される。
【0049】
このように遮断作業カバーBが分岐管部2及び連結管3に取付けられた状態では、仕切板弁8の薄板状弁板8Aの大部分が、摺動ガイド手段Cを構成する弁ケース15の収納空間14内に収納され、仕切板弁8の半円弧状先端縁8aの一部のみが締付け輪12のスリット状開口12aに摺動自在に入り込んでいる。
【0050】
また、両連結フランジ部2A,3Aの接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部25において第1締結具5のボルト5A・袋ナット5Bの緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部2A,3Aの接合面間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段Dを構成する各分離ボルト13は、それのテーパー面13bが両連結フランジ部2A,3Aの隣接間の環状凹部25に臨むだけで、それ以外の大部分は両締付け分割輪12Aの外周面に固着されたネジ筒体20内に保持されている。
【0051】
次に、第1締結具5のボルト5A・袋ナット5Bを設定隙間Sに相当する寸法分だけ緩み操作して、この緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部2A,3Aの接合面間に、仕切板弁8の薄板状弁板8Aが少し余裕をもって進入可能な隙間Sを現出する。このとき、各分離ボルト13の後端部(径方向外方側端部)に形成されている操作係合穴13cをレンチ等の操作具で回転操作して、両連結フランジ部2A,3Aの隣接間の環状凹部25に臨む各分離ボルト13のテーパー面13bを径方向内方側に螺合移動させ、両連結フランジ部2A,3Aの接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部25において第1締結具5の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部2A,3A間を強制的に押し広げる。
【0052】
それ故に、連結フランジ部2A,3Aを締付け連結している第1締結具5を緩み操作しても、両連結フランジ部2A,3A間に緩み操作代に相当する隙間Sが形成されなかったり、或いは、フランジ接合箇所に存在する融通範囲内で分岐管部2の連結フランジ部2Aに対して連結管3の上流側連結フランジ部3Aが傾動しても、遮断作業カバーBの周方向複数箇所に設けられている分離ボルト13によって、第1締結具5の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部2A,3A間を強制的に押し広げることにより、両連結フランジ部2A,3A間に緩み操作代に相当する設定隙間Sを確実に形成することができるとともに、その設定隙間Sの周方向での開口幅の均等化を図ることができるので、分岐管部2及び連結管3の両連結フランジ部2A,3Aに装着した遮断作業カバーBによって両連結フランジ部2A,3Aの外周を密封状態に囲繞しながらも、遮断作業カバーBに設けられている仕切板弁8の薄板状弁板8Aを両連結フランジ部2A,3Aの接合面間の設定隙間Sを通して流路遮断位置にまで確実、スムーズに差し込み操作することができる。
【0053】
そして、図10に示すように、両連結フランジ部2A,3Aの接合面間の設定隙間Sを通して仕切板弁8の薄板状弁板8Aを流路遮断位置にまで差し込み操作すると、分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の上流側連結フランジ部3Aとの間において、水道管1の管軸芯X1に対して直交する分岐軸芯X2方向の管内流路Wが遮断される。
【0054】
次に、分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の上流側連結フランジ部3Aとの接合面間に介装されるシール材の一例であるシートパッキン4が、仕切板弁8の薄板状弁板8Aの流路遮断位置への差し込み操作によって損傷していない又は劣化していない場合には、図11に示すように、上述の管内流路Wの遮断状態において、連結管3の下流側連結フランジ部3Bと補修弁6の上流側連結フランジ部6Aとを締付け連結している第2締結具7のボルト7A・ナット7Bを取り外し、新たな補修弁6に取り替える。
【0055】
新たな補修弁6の取り替えが終了すると、流路遮断位置にある仕切板弁8の薄板状弁板8Aを流路開放位置にまで引き抜き操作するとともに、遮断作業カバーBの周方向複数箇所に設けられている分離ボルト13を隙間解除位置にまで緩み操作したのち、第1締結具5のボルト5A・袋ナット5Bを締め付け操作して、分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の上流側連結フランジ部3Aとを密封状態で締付け連結する。その後、分岐管部2及び連結管3から遮断作業カバーBを撤去したのち、第1締結具5の防水仕様のボルト5A・袋ナット5Bを、一組又は二組単位で通常仕様のボルト5C,5Dに取り替える。
【0056】
また、分岐管部2の連結フランジ部2Aと連結管3の上流側連結フランジ部3Aとの接合面間に介装されるシール材の一例であるシートパッキン4が、仕切板弁8の薄板状弁板8Aの流路遮断位置への差し込み操作によって損傷するか、又は劣化していて、新しいシートパッキン4と取り替える必要が生じた場合には、補修弁6を取り外して作業用開閉弁52を取付け、この作業用開閉弁52に、下流側管部としての連結管3内の流路Wを通して上流側管部としての分岐管部2内の流路Wを遮断する流路遮断装置Eを取り付け、シートパッキン4及び補修弁6を取り替える方法を採ることになる。
【0057】
この方法に使用される流路遮断装置Eは、図12?図17に示すように、作業用開閉弁52の下流側連結フランジ部52Bに対して密封状態で連結可能な連結フランジ部54Aを備えた有底筒状の蓋体54の底壁部54Bに、この底壁部54Bの中央部を密封状態で軸芯方向に摺動自在に貫通する筒状の第1操作軸55と、この第1操作軸55内を軸芯方向に摺動自在に貫通する第2操作軸56とが設けられ、この第1操作軸55及び第2操作軸56の内端側には、分岐管部2内の流路Wを遮断するための閉塞手段Fと、この閉塞手段Fによる遮蔽箇所よりも上流側の大径管壁部、つまり、水道管1の分岐流路開口周縁に対して係合可能な拡径姿勢に屈曲しながら張り出す係止リンク57,58対を備えた抜止め手段Gが設けられているとともに、閉塞手段F及び抜止め手段Gを外部から両操作軸55,56を介して操作する操作手段Hが設けられている。
【0058】
次に、前記閉塞手段Fについて説明する。
図16に示すように、第1操作軸55の内端部に、円環状の押圧面60A及び先端側に向かって同芯円で開口する中空部60Bを備えた第1押圧板60が外嵌固定され、第2操作軸56の内端側には、第1押圧板60の押圧面60Aと軸芯方向で相対向する円環状の押圧面61A及び第1押圧板60の中空部60Bに対して軸芯方向から摺動自在に内嵌する筒状部61Bを備えた第2押圧板61が、軸芯方向に摺動自在に外嵌されているとともに、第2操作軸56に対する第2押圧板61の上流側への最大移動位置を設定するストッパー用のナット62とロック用のナット63が、第2操作軸56の内端側に形成されたネジ軸部56aに螺合されている。
【0059】
前記第1押圧板60の外径及び第2押圧板61の外径は、蓋体54内の格納室54Cから作業用開閉弁52及び連結管3を通して水道管1の分岐管部2内に出し入れ操作することができるように、分岐管部2と連結管3の各内径及び作業用開閉弁52のボール弁体52Cにおける流路52Dの内径よりも小なる外径に形成されている。
【0060】
また、前記第2押圧板61の筒状部61Bには、非加圧状態(自然状態)で作業用開閉弁52のボール弁体52Cにおける流路52Dの内径よりも小なる外径に形成され、かつ、両押圧板60,61の押圧面60A,61Aによる軸芯方向からの挟圧により、分岐管部2の内周壁面に密着する拡径状態に弾性変形してその内周壁面と両押圧板60,61の外周部との間を遮蔽するゴム製の拡径用弾性体59が外装されている。
【0061】
前記拡径用弾性体59の軸芯方向中央部は、図12?図14に示すように、軸芯方向両端部よりも大径に構成されているとともに、その大径中央部の外周面は、それの軸芯方向中央位置が最も外方に突出する部分球状面に形成されている。
【0062】
また、図16に示すように、前記第1押圧板60の押圧面60Aの外周側端面部分及び第2押圧板61の押圧面61Aの外周側端面部分の各々が、拡径用弾性体59の両端面における外周側環状傾斜面59aに対して軸芯方向から密着接当するように、半径方向外方ほど拡径用弾性体59の軸芯方向中央位置側に位置する環状傾斜押圧面に形成されているとともに、第1押圧板60の押圧面60Aの外周縁側及び第2押圧板61の押圧面61Aの外周縁には、拡径用弾性体59の軸芯方向両端部の外周面に接触状態で外嵌な環状押さえ部60C,61Cが形成されている。
【0063】
次に、前記抜止め手段Gについて説明する。
図16に示すように、第2押圧板61の上流側端面の周方向三箇所に、下流側の係止リンク58の端部が揺動自在に枢支連結される板状の連結部65が固着されているとともに、第2操作軸56の内端側ネジ軸部56aに摺動自在に外嵌された取付け筒体66の外周面の周方向三箇所には、上流側の係止リンク57の端部が揺動自在に枢支連結される板状の連結部67が固着され、更に、第2操作軸56に対する取付け筒体66の上流側への最大移動位置を設定するストッパー用のナット68が、第2操作軸56の内端側ネジ軸部56aの先端側に螺合されている。
【0064】
そして、第2押圧板61の連結部65と取付け筒体66の連結部67とのうち、軸芯方向で相対向する三組の連結部65,67に亘って夫々係止リンク57,58対が枢支連結されていて、図16に示すように、第1操作軸55に対する第2操作軸56の外端側への摺動に連動して、拡径用弾性体59による遮蔽箇所よりも上流側の内周壁面、つまり、水道管1の分岐流路開口周縁に対して係合可能な拡径姿勢に屈曲しながら張り出すように構成されているとともに、図12、図13に示すように、抜止め手段Jの係止リンク57,58対が縮径姿勢に伸展されたとき、係止リンク57,58対の屈曲枢支部P2が径方向外方に突出位置する外側腰折れ姿勢、つまり、係止リンク57,58対の屈曲枢支連結点P2が、取付け筒体66の連結部67に対する枢支連結点P1と第2押圧板61の連結部65に対する枢支連結点P3とを結ぶ線分よりも径方向外方に突出位置する外側腰折れ姿勢に接当規制する反転防止手段Jが設けられている。
【0065】
前記反転防止手段Jを構成するに、図16に示すように、取付け筒体66の下流側端部に、径方向内方に伸展揺動する三つの上流側係止リンク57の側辺に当接して、各上流側係止リンク57を最も線分に近接する設定限界の外側腰折れ姿勢で受止めるリング状の弾性矯正体71が装着されている。
【0066】
次に、前記操作手段Hについて説明する。
図12?図15に示すように、前記第1操作軸55は、第1押圧板60に対して軸芯方向から嵌合固定される長尺の操作本体筒軸55Aと、この操作本体筒軸55Aの外端側に嵌合固定される操作延長筒軸55Bとからなり、この操作延長筒軸55Bの内周面が正六角形の異径内周面に形成されている。
【0067】
前記第2操作軸56は、内端側ネジ軸部56aを備えた長尺の操作本体軸56Aと、この操作本体軸56Aの外端側に螺合固定される操作延長軸56Bとからなり、この操作延長軸56Bには、第1操作軸55の操作延長筒軸55Bの端部にスラストベアリング75を介して当接可能な操作ネジ部材76が螺合する外端側ネジ軸部56bと、第1操作軸55の操作延長筒軸55Bに相対回転不能な状態で軸芯方向にのみ摺動自在に嵌合する外周面が正六角形に形成された大径の角軸部56cが形成されている。
【0068】
そして、前記操作ネジ部材76を締付け側に螺合操作すると、図15に示すように、第2操作軸56に対して第1操作軸55が内端側に押込み摺動され、第2押圧板61に対する第1押圧板60の近接移動に伴う挟圧作用により、非圧縮状態にある拡径用弾性体59が分岐管部2の内周壁面に密着する拡径状態に弾性変形して、その分岐管部2内の流路Wを密封状態で遮蔽する。
【0069】
また、前記第1操作軸55の操作延長筒軸55Bには、一対の第1押え操作杆77が脱着自在に嵌合保持されているとともに、この両第1押え操作杆77には、第2操作軸56の操作延長軸56Bに脱着自在に嵌合保持された第2押え操作杆78に対して係脱操作自在で、係合状態では水圧に抗して第1操作軸55に対する第2操作軸56の外端側への摺動を阻止する第1係止リング79と、蓋体54の底壁部54Bに固着されたL型の一対の係止片80に対して係脱操作自在で、係合状態では水圧に抗して蓋体54に対する第1操作軸55の外端側への摺動を阻止する第2係止リング81が設けられている。
【0070】
次に、上述の如く構成された流路遮断装置Eを用いてのシートパッキン4及び補修弁6を取り替える方法を説明する。
[1]図11に示すように、前記連結管3の下流側連結フランジ部3Aと取り替え対象の補修弁6の上流側連結フランジ部6Aとを締付け連結している第2締結具7のボルト7A・ナット7Bを緩み操作して、取り替え対象の補修弁6を取り外したのち、連結管3の下流側連結フランジ部3Aに、作業用開閉弁52の上流側連結フランジ部52Aを第2締結具7のボルト7A・ナット7Bで締付け連結する。
【0071】
[2]図12に示すように、作業用開閉弁52のボール弁体52Cを閉じ操作し、流路遮断位置にある仕切板弁8の薄板状弁板8Aを流路開放位置にまで引き抜き操作したのち、作業用開閉弁52の下流側連結フランジ部52Bに、流路遮断装置Eの蓋体54の連結フランジ部54Aを第2締結具7のボルト7A・ナット7Bで締付け連結する。
【0072】
このとき、一対の第1係止リング79を第2押え操作杆78に係合させたまま、一対の第2係止リング81を蓋体54の両係止片80から取り外し、両操作軸55,56を蓋体54に対して上方に引き上げ移動させ、閉塞手段F及び抜止め手段Gを蓋体54の格納室54C内に格納する。
【0073】
また、両操作軸55,56の軸芯方向での位置関係は、両第1係止リング79によって規制されていて、その状態では両押圧板60,61の対向間隔が拡径用弾性体59を圧縮しない又はそれに近い間隔に設定されているため、拡径用弾性体59は縮径状態に維持されている。
【0074】
[3]図13に示すように、作業用開閉弁52を開き操作して、両操作軸55,56を蓋体54に対して下方に押し込み移動させ、一対の第2係止リング81を蓋体54の両係止片80に係合して、両操作軸55,56を押し込み操作位置に保持する。
このとき、抜止め手段Gは、分岐管部2内の流路Wよりも横断面積の大きな水道管1内に位置している。
【0075】
[4]次に、図14に示すように、一対の第1係止リング79を第2押え操作杆78から取り外すとともに、第2操作軸56の操作延長軸56Bから第2押え操作杆78を取り外すと、水道管1を流動する水道水の水圧又はこの水圧と人為的な引き上げ操作力とによって、第2操作軸56が第1操作軸55に対して外端側(図の上方側)に摺動し、これに連動して第2押圧板61の連結部65と取付け筒体66の連結部67とに亘って枢支連結された係止リンク57,58対が拡径姿勢に屈曲しながら張り出す。
【0076】
この状態で、図15に示すように、両第2係止リング81を蓋体54の両係止片80から取り外し、水道水の水圧又はこの水圧と人為的な引き上げ操作力とによって、両操作軸55,56を蓋体54に対して上方に摺動させると、拡径姿勢に屈曲した係止リンク57,58対が、拡径用弾性体59による流路遮蔽箇所よりも上流側の内周壁面、つまり、水道管1の分岐流路開口周縁に対して係合する。
【0077】
[5]図15、図16に示すように、操作ネジ部材76を人為的に締付け側に螺合操作すると、第2操作軸56に対して第1操作軸55が内端側(図の下方側)に押込み摺動され、第2押圧板61に対する第1押圧板60の近接移動に伴う挟圧作用により、縮径状態にある拡径用弾性体59が分岐管部2の内周壁面に密着する拡径状態に弾性変形して、その分岐管部2の内周壁面と両押圧板60,61の外周部との間が密封状態で遮蔽される。
【0078】
[6]次に、図15、図17に示すように、蓋体54の排水管82に接続した水栓83の開閉操作レバー83Aを開き操作して放水させ、その放水が止まることで止水を確認したのち、第1押え操作杆77、蓋体54を除去したのち、作業用開閉弁52及び連結管3を水道管1の分岐管部2から取り外す。
【0079】
その後、図18に示すように、分岐管部2の連結フランジ部2Aに、連結管3の上流側連結フランジ部3Aを、それらの接合面間に新しいシートパッキン4を介装した状態で複数組の通常仕様のボルト5C,5Dからなる第1締結具5にて密封状態で脱着自在に締付け連結したのち、この連結管3の下流側連結フランジ部3Bに、新しい補修弁6の上流側連結フランジ部6Aを、それらの接合面間に新しいシートパッキン4を介装した状態で複数組のボルト7A・ナット7Bからなる第2締結具7にて密封状態で脱着自在に締付け連結する。
【0080】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、水道管等の流体管1の途中に分岐管部2を一体形成してある流体配管系統について説明したが、流体管1に、それの周方向に沿って脱着自在に固定連結される複数の分割継手体を備え、かつ、一つの分割継手体に流体管1に形成された貫通孔に対して管径方向から連通する分岐管部2を突設してある管継手が装着されているとともに、管継手の分岐管部に開閉弁が取付けられている流体配管系統に本願発明の技術を適用してもよい。
【0081】
(2)上述の第1実施形態では、遮断作業カバーBの弾性シール材11を環状に一体形成したが、この弾性シール材11を周方向で複数に分割してもよい。
要するに、遮断作業カバーBとしては、両連結フランジ部2A,3Aの外周を密封する状態で両管部2,3に対して脱着自在に装着することのできるものであればよい。
【0082】
(3)上述の第1実施形態では、前記隙間形成手段Dを、遮断作業カバーBの周方向複数箇所において、両連結フランジ部2A,3A間の隙間Sに対して径方向外方から入り込み移動するテーパー面13bを備えた複数の分離ボルト13から構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、径方向内方に入り込み付勢された複数の楔部材を設けて実施してもよい。
要するに、前記隙間形成手段Dとしては、第1締結具5の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部2A,3Aの接合面間を強制的に押し広げることのできるものであれば、如何なる構造のものを採用してもよい。
【0083】
(4)上述の第1実施形態では、前記仕切板弁8を、分岐管部2及び連結管3の外径よりも少し大なる幅をする薄板状の弁板8Aと、この弁板8Aの後端縁に固着された操作伝達軸8Bと、この操作伝達軸8Bの後端部に螺合固定された操作ハンドル8Cとから構成したが、この仕切板弁8を、分岐管部2及び連結管3の外径よりも少し大なる幅をする薄板状の弁板8Aのみから構成してもよい。
要するに、前記仕切板弁8としては、第1締結具5の緩み操作によって発生した両連結フランジ部2A,3A間の隙間Sを通して管内流路Wを遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状のものであれば、如何なる形状のものを用いてもよい。
【0084】
(5)また、前記摺動ガイド手段Cとしては、仕切板弁8を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とにわたって摺動案内することのできるものであれば、如何なる構造のものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本願発明の流体配管系統の流路遮断方法を示し、管内流路遮断装置を装着したときの側面図
【図2】管内流路遮断装置を装着したときの一部切欠き側面図
【図3】管内流路遮断装置を装着したときの水平断面図
【図4】管内流路遮断装置の拡大断面側面図
【図5】両連結フランジ部と環状弾性シール材との関係を示す要部の拡大断面図
【図6】仕切弁体と分離ボルトとの関係を示す要部の拡大断面図
【図7】環状弾性シール材の斜視図
【図8】環状弾性シール材の断面図
【図9】環状弾性シール材の正面図
【図10】仕切弁体を流路遮断位置に差し込み操作したときの一部切欠き側面図
【図11】補修弁を作業用開閉弁に取り替えるときの一部切欠き側面図
【図12】作業用開閉弁に流路遮断装置を取付けたときの一部切欠き側面図
【図13】閉塞手段及び抜止め手段を水道管側に下降させたときの一部切欠き側面図
【図14】抜止め手段のリンク対を拡径姿勢に屈曲させたときの一部切欠き側面図
【図15】拡径用弾性体で流路を遮断したときの一部切欠き側面図
【図16】拡径用弾性体で流路を遮断したときの要部の拡大断面図
【図17】第1押え操作杆、蓋体を除去したのち、作業用開閉弁及び連結管を水道管の分岐管部から取り外したときの一部切欠き側面図
【図18】新しいシートパッキン及び新しい補修弁に取り替えたときの側面図
【図19】従来の流路遮断方法を示す要部の断面正面図
【図20】要部の断面平面図
【符号の説明】
【0086】
B 遮断作業カバー
C 摺動ガイド手段
D 隙間形成手段
S 隙間
W 管内流路
2 分岐管部(上流側管部)
2A 連結フランジ部
3 連結管(下流側管部)
3A 連結フランジ部(上流側連結フランジ部)
4 シール材(シートパッキン)
5 締結具(第1締結具)
5A ボルト
5B 袋ナット
8 仕切体弁
11 環状弾性シール材
11a 第1シール部
11b 第2シール部
11c 開口
12 締付け輪
13 分離ボルト
22 Oリング
23 Oリング
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体配管系統において、両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に、前記締結具の緩み操作を許容する状態で両連結フランジ部の外周を密封状態で囲繞可能で、かつ、両管部の流路を遮断可能な薄板状の仕切板弁が抜き差し操作自在に設けられている遮断作業カバーを装着し、前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による両連結フランジ部間の押し広げと、前記遮断作業カバーの周方向複数箇所に設けられた隙間形成手段による両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部に付与される強制押し広げ力とによって、前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を押し広げ、前記遮断作業カバーの仕切板弁を、前記締結具の緩み操作によって発生した両連結フランジ部間の隙間を通して流路遮断位置にまで差し入れることにより、両連結フランジ部間において流路を遮断することを特徴とする流体配管系統の流路遮断方法。
【請求項2】
両連結フランジ部の接合面間にシール材を介装した状態で前記両連結フランジ部に貫通状態で設けられた締結具にて締付け連結されている両管部の両連結フランジ部に対して、それらの両連結フランジ部の外周を密封する状態で装着自在な遮断作業カバーに、前記締結具の緩み操作に伴う流体圧による押し広げによって両連結フランジ部間に発生した隙間を通して管内流路を遮断する位置にまで差込み移動自在な薄板状の仕切板弁と、この仕切板弁を密封状態で流路遮断位置と流路開放位置とに摺動案内する摺動ガイド手段が設けられているとともに、前記遮断作業カバーの周方向複数箇所には、両連結フランジ部の接合面間の外周面側に開口形成された環状凹部において前記締結具の緩み操作代の範囲内で両連結フランジ部間を強制的に押し広げるための強制押し広げ力を付与する隙間形成手段が設けられている管内流路遮断装置。
【請求項3】
前記隙間形成手段が、遮断作業カバーの周方向複数箇所において、両連結フランジ部間の隙間に対して径方向外方から入り込み移動するテーパー面を備えた複数の分離ボルトから構成されている請求項2記載の管内流路遮断装置。
【請求項4】
前記隙間形成手段の分離ボルトは、それのボルト軸芯が仕切板弁の移動平面を通る平面上又はその近傍に位置する状態で締付け輪に取付けられている請求項3記載の管内流路遮断装置。
【請求項5】
前記締結具が、一方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを頭部の当接面に設けてあるボルトと、他方の連結フランジ部の外面との間を密封するためのOリングを当接面に設けてある袋ナットから構成されている請求項2?4のいずれか1項に記載の管内流路遮断装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-09-29 
結審通知日 2009-10-02 
審決日 2009-10-15 
出願番号 特願2004-331801(P2004-331801)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 細川 健人  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 仁木 浩
小川 恭司
登録日 2008-07-18 
登録番号 特許第4155966号(P4155966)
発明の名称 流体配管系統の流路遮断方法及び管内流路遮断装置  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 中条 均  
代理人 中野 佳直  
代理人 東 邦彦  
代理人 重信 和男  
代理人 北村 修一郎  
代理人 清水 英雄  
代理人 中条 均  
代理人 東 邦彦  
代理人 溝渕 良一  
代理人 北村 修一郎  

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