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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1221713
審判番号 不服2006-26907  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-29 
確定日 2010-08-11 
事件の表示 特願2001-565331「ニトリル官能基のアミン官能基への水素化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月13日国際公開、WO01/66511、平成15年9月2日国内公表、特表2003-525924〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2001年3月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年3月8日、フランス)を国際出願日とする出願であって、 以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成18年1月26日付け 拒絶理由通知書
平成18年7月31日 意見書・手続補正書
平成18年8月25日付け 拒絶査定
平成18年11月29日 審判請求書
平成18年12月28日 手続補正書
平成19年2月22日 手続補正書(審判請求書)
平成19年2月27日 上申書
平成19年4月6日付け 前置報告書
平成20年12月3日付け 審尋
平成21年6月9日 回答書
平成21年9月30日付け 拒絶理由通知書
平成21年12月25日 意見書・手続補正書

第2 本願発明について
この出願の発明は、平成18年7月31日、平成18年12月28日及び平成21年12月25日付けの手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?請求項20に記載された次のとおりのものであるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。また、請求項1?12に係る発明を併せて「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】一般式I:NC-R-CN (I)
(式中、Rは、1?12炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレン又はアルケニレン基を表す)の脂肪族ニトリル化合物の、アミノアルキルニトリル及びジアミンへの連続的水素化方法であって、
該方法は、反応器に、水素、水素化触媒、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から導かれる無機強塩基及び水素化されるべきニトリル化合物を連続的に供給する段階、及び触媒を調整する段階を含み、
該触媒を調整する段階では、触媒は、水素化反応媒質に供給する前に、触媒1kg当たり0.1?50モルの、触媒と結合されるべき所定量の無機強塩基及び、無機強塩基が純粋溶媒中で3重量%未満の溶解度を有する溶媒と混合され、
該調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給され、更に
該供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられることを特徴とする当該方法。」

第3 当審の拒絶の理由の概要
平成18年7月31日、平成18年12月28日付けの手続補正により補正された明細書(以下、「本願補正前明細書」という。)の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正前発明」についての当審の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
本願補正前発明は、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」を特徴とする発明である。
しかしながら、本願補正前明細書の記載を踏まえても、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はなく、そのような技術常識もない。
よって、本願補正前発明において、「改良された収率及び改良された選択性を示す触媒の存在下でのニトリル官能基の水素化方法を提供する」という本願補正前発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように発明の詳細な説明が記載されているとは認められない。
したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 判断
1 本願発明
本願発明1は、「一般式I:NC-R-CN (I)
(式中、Rは、1?12炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレン又はアルケニレン基を表す)の脂肪族ニトリル化合物の、アミノアルキルニトリル及びジアミンへの連続的水素化方法であって、
該方法は、反応器に、水素、水素化触媒、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から導かれる無機強塩基及び水素化されるべきニトリル化合物を連続的に供給する段階、及び触媒を調整する段階を含み、
該触媒を調整する段階では、触媒は、水素化反応媒質に供給する前に、触媒1kg当たり0.1?50モルの、触媒と結合されるべき所定量の無機強塩基及び、無機強塩基が純粋溶媒中で3重量%未満の溶解度を有する溶媒と混合され、
該調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給され、更に
該供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられることを特徴とする当該方法。」であって、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」を特徴とする発明である。

2 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
A「それ故、特許US-A-5,151,543は、脂肪族ジニトリルの対応アミノニトリルへの選択的水素化のための方法(25?150℃で、大気圧より高い圧力下で、ジニトリルに関して少なくとも2/1のモル過剰の溶媒の存在下で行ない、該溶媒は液体アンモニア又は1?4炭素原子を有するアルコール及び該アルコールに可溶性の無機塩基を、ラネー触媒の存在下で含み、得られるアミノニトリルは、主生成物として回収される)を開示している。
特許WO-A-93/16034は、無機塩基、遷移金属錯体(遷移金属は低価数のもので、クロム、タングステン、コバルト及び鉄から選択する)及び触媒としてのラニーニッケルの存在下で、水素圧下で且つ50?90℃の温度でのアジポニトリルの水素化による6-アミノカプロニトリルの製法を開示している。
特許WO-A-96/18603は、適宜不純物添加されたラニーコバルト又はニッケルベースの触媒及び無機強塩基の存在下での、水素による脂肪族ジニトリルのアミノニトリルへの半水素化{出発水素化用媒質は、水、アミノニトリル及び/又はジアミン(形成されうる)並びに変化してないジニトリルを含む}を開示している。
これらのすべての水素化方法は、所望のアミノニトリルを生じ、工業プラントで連続的に用いることができるとして提供されている。
しかしながら、これらの方法の選択性及び収率は、一層競争可能にするために改良されなければならない。」(【0005】?【0009】)

B「本発明の目的の一つは、改良された収率及び改良された選択性を示す触媒の存在下でのニトリル官能基の水素化方法を提供することである。」(【0010】)

C「この発明により、この方法は、水素化触媒、予め決めた量の無機強塩基及び該無機強塩基が非常に可溶性ではない溶媒の混合にある触媒の調整段階を含む。この発明により、こうして調整した触媒を含む媒質を水素化反応器に供給し、水素化反応を通常の条件又は文献に既に開示されている手順に従って実施する。」(【0012】)

D「この発明により、用いる溶媒は、この貯蔵用媒質(一般には水)に対する良好な親和性を示し、それ故、相分離及び高濃度の無機強塩基を含む相の形成を得ることを可能にする。

同様に、この溶媒中の無機強塩基の溶解度を特性表示するために用いられた用語「非常に可溶性ではない」は、純粋な溶媒中での該塩基の3重量%未満の溶解度を意味すると解すべきである。」(【0015】?【0018】)

E「この発明の一つの特徴により、この触媒の調整の段階で加えられる強塩基の量は、触媒1kg当たり0.1?50モルである。」(【0027】)

F「水素化反応媒質に、触媒の調整に用いたのと同じか又は異なる強塩基を加えることも又、この発明の方法において可能である。この強塩基は、一般に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩又はアルコキシドである。」(【0040】)

G「これは、もしこの方法を特に実験室規模での試験の場合のように又は小規模の生産の試みのためにバッチ式で行うならば、出発反応媒質は、徐々にアミノニトリルが豊富になり、ジアミンはそれ程ではないが豊富になる一方で、もし該ニトリルの全部又は殆どを、半水素化の始めから充填すれば、ジニトリルの濃度を減らすことができ、或はジニトリルを反応中徐々に導入すれば、比較的一定のままにすることもできるからである。
対照的に、もしこの方法を連続的に実施したならば、反応媒質の平均組成は、反応の転化度及び選択性により予め決めた値に達する。」(【0042】?【0043】)

H「この発明による水素化(連続式又はバッチ式)を左右する他の条件は、それ自体公知の慣用の技術的配置に関係する。」(【0052】)

I「実施例5
240gのHMD、52gの水及び6.4gのラニーニッケル(1.5重量%のクロムをドーピングしたもの)を攪拌機付き反応器に充填する。0.462mlの388g/lの水酸化カリウム溶液を、0.5モル/kgのKOH/Ni比を得るために加える。この混合物を、50℃の温度で攪拌し続ける。この反応器を、25バールの水素圧下に置く。
40gのアジポニトリルをこの反応器に加える。50分間反応させた後に、その媒質を冷却し、ガスクロマトグラフィーにより分析してアジポニトリル(ADN)の全転化度(DC)、アミノカプロニトリル(ACN)についての反応の選択性(YDACN)及びこの媒質のPoln濃度を決定する。
このポーラログラフ数は、特に、媒質中のイミン化合物の濃度を表す。それは、ポーラログラフィーにより決定され、定量的に測定されるべき試料1トン当たりのイミン官能基のモルで表される。
ADNの転化度(DC):83.8%
ACNについての選択性(YD_(ACN)):68.3%
モル/tでのPoln:21」(【0066】?【0068】)

J「比較用実施例6
実施例5を繰り返すが、アジポニトリルと同時に水酸化カリウムを添加する。
加える量は、同じである。
得られた結果は、下記の通りである:
ADNの転化度(DC):81.1%
ACNについての選択性(YD_(ACN)):69.7%
モル/tでのPoln:76
この結果は、明らかに、得られる生成物の純度に対する触媒の調整段階の効果を示している。」(【0069】?【0071】)

K「実施例7及び比較用実施例8
1重量%の鉄をドーピングしたルテニウムベースの触媒(Y70の名称で販売されているアセチレンブラック上に担持させたもの)を下記の方法により得る:
20gのY70アセチレンブラック(SN2Aにより販売されている)を800mlの水中に加える。この懸濁液を、攪拌しながら90℃に加熱する。1.8gのNa_(2)CO_(3)(全量で、70mlの水中)を加える。1時間の後に、2.16gのRuCl_(3)水和物の溶液(120mlの水中)を加える。1時間の後に、1gのFeCl_(3)六水和物溶液(全量で70mlの水中)を流し込む。更に1時間後に、この媒質を40℃の温度まで冷却する。
濾過の後に、触媒を、40℃で、200mlの水で、4回洗う。
この触媒を、オーブン中で1時間、120℃で乾燥する。21.3gの触媒が得られる。
試験前に、それを、オーブン中で10時間、80℃で、減圧下で乾燥する。上記の方法により調製した2.4gの触媒、4.8gの水及び5gの15N 水酸化カリウムを36gのHMDに加える。
この混合物を、80℃の温度で混合し、2.5MPaの水素圧下に置く。36gのアジポニトリルをこの媒質に加える。
反応後に、この媒質を分析する。
下記の結果が得られる:
- 反応時間:105分
- ADNのDC:67%
- YD_(ACN) 75%
- Poln 35モル/t
比較用実施例6の手順と上記の実施例7で用いた素材及び製品(特に、同じ触媒)を用いる試験は、下記の結果を与えた:
- 反応時間:110分
- ADNのDC:68.5%
- YD_(ACN) 73%
- Poln 92モル/t」(【0072】?【0079】)

これらの記載によれば、脂肪族ジニトリルを対応アミノニトリルへ選択的に水素化する方法において、従来の水素化方法では選択性及び収率に問題があったところ(摘記A)、本願発明1の構成にすることによって、改良された収率及び改良された選択性を示す触媒の存在下でのニトリル官能基の水素化方法を提供するものである(摘記B)。
ここで、本願明細書の発明の詳細な説明には、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」することについて、「この方法は、水素化触媒、予め決めた量の無機強塩基及び該無機強塩基が非常に可溶性ではない溶媒の混合にある触媒の調整段階を含む」こと(摘記C)、「この発明により、用いる溶媒は、この貯蔵用媒質(一般には水)に対する良好な親和性を示し、それ故、相分離及び高濃度の無機強塩基を含む相の形成を得ることを可能にする」こと(摘記D)、「…この溶媒中の無機強塩基の溶解度を特性表示するために用いられた用語「非常に可溶性ではない」は、純粋な溶媒中での該塩基の3重量%未満の溶解度を意味すると解すべきである」こと(摘記D)が記載されて、「この触媒の調整の段階で加えられる強塩基の量は、触媒1kg当たり0.1?50モルである」こと(摘記E)、バッチ式でも連続式でもよいことも記載されている(摘記G及びH)。そして、本願明細書の実施例5と比較用実施例6(摘記I及びJ)、あるいは実施例7と比較用実施例8(摘記K)をみてみると、水素化触媒、予め決めた量の無機強塩基及び該無機強塩基が非常に可溶性ではない溶媒の混合にある触媒の調整段階を含み、調整された触媒を含む混合物をバッチ式で供給することにより、選択率等が改良されていることが示されている。
しかしながら、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」については、本願明細書の発明の詳細な説明には、「水素化反応媒質に、触媒の調整に用いたのと同じか又は異なる強塩基を加えることも又、この発明の方法において可能である」こと(摘記F)が記載されているものの、「強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はなく、そのような技術常識もない。
まして、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はなく、そのような技術常識もない。
よって、本願発明1において、「改良された収率及び改良された選択性を示す触媒の存在下でのニトリル官能基の水素化方法を提供する」という本願発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように発明の詳細な説明が記載されているとは認められない。

なお、特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによって、明細書のサポート要件に適合させることは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されないというべきであるから(知財高裁 平成17(行ケ)10042参照)、請求人が平成18年7月31日に提出した意見書の「添付参考資料(追加試験データ)」は補足のために参酌されない。

3 請求人の主張
請求人は、平成21年12月25日提出の意見書において、以下のように述べている。
「(2)また、審判官殿は、本願発明に関し、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」について、「水素化反応媒質に、触媒の調整に用いたのと同じか又は異なる強塩基を加えることも又、この発明の方法において可能である」ことは記載されているものの、「強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はなく、そのような技術常識もない、とご認定されておられます。
しかしながら、本願の当初明細書の段落0022に、「強塩基分子を表面に含む触媒の利用は、以下に与える実施例で説明するように、特に、形成される不純物の減少により反映される改良された収率及び選択性で水素化を実行することを可能にする。」と記載され、さらに実施例では良好な収率及び選択性で水素化が実行されていることが記載されております。このため、本願の発明の詳細な説明には、「強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載がなされているものと思量いたします。
(3)そして、審判官殿は、本願発明に関し、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はなく、そのような技術常識もない、とご認定されておられます。
この点に関しましても、上記(1)及び(2)を考慮することにより、本願の発明の詳細な説明には、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載がなされているものと思量いたします。」

まず、請求人は、上記意見書において、「本願の発明の詳細な説明には、「強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載がなされているものと思量いたします。」と主張している。
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明の「強塩基分子を表面に含む触媒の利用は、以下に与える実施例で説明するように、特に、形成される不純物の減少により反映される改良された収率及び選択性で水素化を実行することを可能にする。」(【0022】)との記載は、それより前の【0012】?【0021】の記載を受けているものと考えられ、してみれば、「水素化触媒、予め決めた量の無機強塩基及び該無機強塩基が非常に可溶性ではない溶媒の混合にある触媒の調整段階」(【0012】)により得られる触媒に関する記載であるといえる。そして、このことは、【0022】に「強塩基分子を表面に含む触媒の利用は、以下に与える実施例で説明するように」と記載されており、実施例5と比較用実施例6(摘記I及びJ)、あるいは実施例7と比較用実施例8(摘記K)をみてみると、水素化触媒、予め決めた量の無機強塩基及び該無機強塩基が非常に可溶性ではない溶媒の混合にある触媒の調整段階を含むことにより、選択率等が改良されていることが示されていることからも明らかである。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はないといえる。そして、請求人は、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することが技術常識であることを示してもいない。

次に、請求人は、上記意見書において、「「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載がなされているものと思量いたします。」と主張している。
しかしながら、上述のように、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はない。まして、「調整された触媒を含む混合物は、水素化されるべき化合物及び適宜溶媒を含む水素化反応媒質に連続的に供給」され、「供給段階では、強塩基が水素化反応媒質に加えられること」により、改良された収率及び改良された選択性を奏することを裏付ける具体的な記載はなく、請求人は、そのようなことが技術常識であることを示してもいない。
よって、請求人の主張は採用できるものではない。

4 まとめ
してみれば、本願発明1の特許請求の範囲の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであるから、本願の請求項1に記載した特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載したものということはできない。
よって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に記載した特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載したものということはできないものであり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないものであるから、その余について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-10 
結審通知日 2010-03-16 
審決日 2010-03-29 
出願番号 特願2001-565331(P2001-565331)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 美祝  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
坂崎 恵美子
発明の名称 ニトリル官能基のアミン官能基への水素化方法  
復代理人 アクシス国際特許業務法人  
代理人 倉内 基弘  

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