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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008800115 審決 特許
不服20082566 審決 特許
平成24行ケ10299審決取消請求事件 判例 特許
不服200825108 審決 特許
無効2011800064 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1221911
審判番号 不服2007-19763  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-17 
確定日 2010-08-09 
事件の表示 平成10年特許願第321470号「美肌飲食品用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月 9日出願公開、特開2000-125828〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

この出願は,平成10年10月27日の出願であって,平成18年6月22日付けで拒絶理由が通知され,同年9月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され,更に同年11月24日付けで拒絶理由が通知され,平成19年2月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが,同年5月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月17日に拒絶査定を不服とする審判請求がされるとともに,同年8月15日付けで手続補正書が提出され,平成21年9月8日付けで審尋が通知され,同年11月16日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成19年8月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成19年8月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正

平成19年8月15日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,本件補正前の請求項1の

「グアガム酵素部分分解物を含有することを特徴とする美肌用の飲食品用組成物。」を,

「グアガム酵素分解物を含有することを特徴とする美肌用の飲食品用組成物であって,美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つことであって,飲食品の製造工程において,添加されることを特徴とする美肌用の飲食品用組成物。」

とするものである。

2 補正の適否

(1)補正の目的の適否

本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「美肌用の飲食品用組成物」を,「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つことであって」と美肌効果をより限定し,且つ,当該「美肌用の飲食品用組成物」が「飲食品の製造工程において,添加される」ものであるという,飲食品の製造工程における該組成物の使用方法を限定するものであり,特許請求の範囲を減縮するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件について

そこで,本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)否かについて,以下検討する。

ア 刊行物及びその記載事項

この出願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-269993号公報(原査定における引用文献2。以下,「刊行物1」という。)には,以下の事項が記載されている。
(a)「(1) 下記の特徴を有する植物由来の難消化性多糖類の部分分解物。
○1 1%水溶液をDVL-B型デジタル粘度計を用い,25℃,30rpmで測定したときの粘度が10mPa・s以下.
○2 サウスゲート法で定量したときの難消化性多糖類含量が50%以上.
・・(中略)・・
(3) グアガムまたはタマリンドガム由来の特許請求の範囲第1項記載の難消化性多糖類の部分分解物。」(特許請求の範囲 請求項1,3)(下線は合議体が付与。以下同様。)(当審注;○1及び○2は,それぞれ1及び2の丸付き数字を表す。以下同様。)

(b)「(4) 植物由来の難消化性多糖類を植物組織崩壊酵素を用いて部分分解することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の難消化性多糖類の部分分解物の製造方法。
・・(中略)・・
(7) グアガムをガラクトマンナナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用いて部分分解することを特徴とする特許請求の範囲第4項記載の難消化性多糖類の部分分解物の製造方法。」(特許請求の範囲 請求項4,7)

(c)「(9) 特許請求の範囲第1項記載の植物由来の難消化性多糖類の部分分解物を含有する食品。
・・(中略)・・
(11) グアガム由来の特許請求の範囲第9項記載の難消化性多糖類の部分分解物を含有する食品。」(特許請求の範囲 請求項9,11)

(d)「本発明は植物由来の難消化性多糖類の部分分解物およびその製造方法並びにそれを含有する食品に関する。」(第2頁右上欄 第6?8行目)

(e)「 さらに,難消化性多糖類の摂取不足に起因していると考えられている種々の疾患,例えば便秘,大腸癌,肥満,糖尿病,高脂血症,コレステロール胆石症,高血圧等の予防及および治療にも用いることができる。」
(第3頁 右下欄 下から4行目?第4頁 左上欄 第1行目)

(f)「 [実施例1] グアガムの部分分解物A
水900重量部(以下,部と略記する。)にクエン酸を加えてpHを4.0に調製した。これにガラクトマンナナーゼ,セルラーゼ系の植物組織崩壊酵素であるセルロシンAC-8(上田化学工業株式会社製)(以下,酵素Aと略記する。)を0.4部溶解し,グアガム粉末100部を添加して,40?45℃で24時間酵素作用させた。遠心分離機で不純物を除き,澄明な部分分解液を得,98℃で15分間加熱して酵素を失活させた。冷却後適量のイソプロピルアルコールを加えて多糖を凝析させ,これを濾過分離して乾燥し,粉砕してグアガムの部分分解物52部を得た。」
(第4頁 右上欄 第4?16行目)

(g)「 [実施例5] グアガムの部分分解物E
ガラクトマンナナーゼ系の植物組織崩壊酵素であるマンナナーゼA(天野製薬株式会社製)を0.4部添加し,酵素作用時間を16時間,pHを5.0とした以外は,実施例1と同様にしてグアガムの部分分解物57部を得た。」(第4頁 左下欄 第12?17行目)

(h)「[実施例9]難消化性多糖類の部分分解物を含有する野菜ジュース
野菜ジュース(カゴメ株式会社製)に,実施例1?8で得られた難消化性多糖類の部分分解物A?Hを,それぞれ0.5,1.0,3.0,5.0重量%添加し,攪拌溶解して難消化性多糖類の部分分解物を含有する野菜ジュースを調製した。 ・・(中略)・・

[実施例10] 難消化性多糖類の部分分解物を含有する飲料
実施例9と同様にして,下記飲料に難消化性多糖類の部分分解物A?Hを添加した。
(使用飲料)
(イ)天然果汁(愛媛県青果農業協同組合連合会製,ポンオレンジジュース)
(ロ)果汁飲料(サントリー株式会社製,サントリーオレンジ50)
(ハ)乳酸菌飲料(株式会社ヤクルト本社製,ヤクルト)
(ニ)乳飲料(江崎グリコ株式会社製,グリコサンフローネ)
(ホ)発酵乳(株式会社ヤクルト本社製,ジョア・プレーン)
(ヘ)ウーロン茶(サントリー株式会社製,ウーロン茶)
・・(中略)・・

[実施例11] 難消化性多糖類の部分分解物を含有するスープ
下記インスタントスープ処方により,難消化性多糖類の部分分解物A,B,C,Fは10部,D,E,G,Hは2部をそれぞれ含有する粉末ポタージュスープと,対照として難消化性多糖類の部分分解物を含有しないポタージュスープとを調製し,官能検査を行った。 ・・(中略)・・

[実施例12] 難消化性多糖類の部分分解物を含有するアイスクリーム
下記アイスミルク処方により常法で,難消化性多糖類の部分分解物A,B,C,Fは5部,D,E,G,Hは1部をそれぞれ含有するアイスクリームと,対照として難消化性多糖類の部分分解物を含有しないアイスクリームとを調製し,官能検査を行った。 ・・(中略)・・

[実施例13] 難消化性多糖類の部分分解物を含有するデザート食品
下記果汁ゼリーの処方により常法で,難消化性多糖類の部分分解物A,B,C,Fは4部,D,E,G,Hは1部をそれぞれ含有するゼリーと,対照として難消化性多糖類の部分分解物を含有しないゼリーとを調製し,官能検査を行った。 ・・(中略)・・

[実施例14] 難消化性多糖類の部分分解物を含有するクッキー
下記クッキーの処方により常法で,難消化性多糖類の部分分解物A,B,C,Fは10部,D,E,G,Hは5部をそれぞれ含有するクッキーと,対照として難消化性多糖類の部分分解物を含有しないクッキーとを調製し,官能検査を行った。 ・・(中略)・・

[実施例15] 難消化性多糖類の部分分解物を含有するパン
下記食パン処方により直捏法で,難消化性多糖類の部分分解物A,B,C,Fは10部,D,E,G,Hは5部をそれぞれ含有するパンと,対照として難消化性多糖類の部分分解物を含有しないパンとを調製し,官能検査を行った。 ・・(中略)・・

[実施例16] 難消化性多糖類の部分分解物を含有する麺
下記即席中華麺の処方により常法で,難消化性多糖類の部分分解物A?Hをそれぞれ含有する麺と,対照として難消化性多糖類の部分分解物を含有しない麺とを調製し,官能検査を行った。 ・・(中略)・・ 」
(第5頁 右上欄 下から5行目?第7頁 右下欄 最終行)

イ 刊行物1に記載された発明

刊行物1は,「植物由来の難消化性多糖類の部分分解物およびそれを含有する食品」(摘示(d))に関し記載するものであり,それには,「下記の特徴を有する植物由来の難消化性多糖類の部分分解物 ○1 1%水溶液をDVL-B型デジタル粘度計を用い,25℃,30rpmで測定したときの粘度が10mPa・s以下.○2 サウスゲート法で定量したときの難消化性多糖類含量が50%以上.」(摘示(a))であって,該「植物由来の難消化性多糖類の部分分解物」は,「グアガムをガラクトマンナナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用いて部分分解すること」により製造されるものであることが記載されている(摘示(b))。

そして,この「グアガムをガラクトマンナナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用いて部分分解すること」により製造された「グアガムの部分分解物E」(摘示(g))を,野菜ジュース,飲料,スープ,アイスクリーム,デザート食品,クッキー,パン,麺といった飲食品に添加し,この「グアガムの部分分解物E」を含有する飲食品を調製したこと(摘示(h))が記載されている。

そうすると,刊行物1には,

「グアガムをガラクトマンナナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用いて部分分解することにより製造されるグアガムの部分分解物で,飲食品に添加されるもの。」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

ウ 対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると,

引用発明の「ガラクトマンナナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用いて部分分解することにより製造されるグアガムの部分分解物」は,酵素を用いて部分分解されるグアガムの部分分解物であり,グアガムの酵素分解物に他ならないから,引用発明の「グアガムをガラクトマンナナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用いて部分分解することにより製造されるグアガムの部分分解物」は,本願補正発明の「グアガム酵素分解物」に相当する。

引用発明のこの「グアガムをガラクトマンナナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用いて部分分解することにより製造されるグアガムの部分分解物」として,刊行物1には具体的には,「グアガムの部分分解物E」(摘示(g))が記載されており,これは,「ガラクトマンナナーゼ系の植物組織崩壊酵素であるマンナナーゼA(天野製薬株式会社製)を0.4部添加し,酵素作用時間を16時間,pHを5.0とした以外は,実施例1と同様にしてグアガムの部分分解物57部を得た。」(摘示(g))もので,「実施例1」(摘示(f))の記載を踏まえると,以下の方法により得られたものであるといえる。
「水900重量部(以下,部と略記する。)にクエン酸を加えて」「pHを5.0」「に調製した。これに」「ガラクトマンナナーゼ系の植物組織崩壊酵素であるマンナナーゼA(天野製薬株式会社製)を0.4部添加し,」「グアガム粉末100部を添加して,40?45℃で」「16時間」「酵素作用させた。遠心分離機で不純物を除き,澄明な部分分解液を得,98℃で15分間加熱して酵素を失活させた。冷却後適量のイソプロピルアルコールを加えて多糖を凝析させ,これを濾過分離して乾燥し,粉砕してグアガムの部分分解物」「57部を得た。」(摘示(f),(g))。
この製造方法では,グアガム粉末をマンナナーゼで酵素部分分解し,不純物除去,酵素失活,冷却後,イソプロピルアルコールにより多糖凝析,濾過分離,乾燥,粉砕し,乾燥粉砕物としており,この製造方法により得られる乾燥粉砕物は,グアガム酵素部分分解物を含む一種の組成物といえることから,引用発明の「グアガムの部分分解物」は,本願補正発明の「グアガム酵素分解物を含有する」「組成物」に相当する。

そして,この乾燥粉砕物として製造された「グアガムの部分分解物E」を,野菜ジュース,飲料,スープ,アイスクリーム,デザート食品,クッキー,パン,麺といった飲食品に添加し,「グアガムの部分分解物E」を含有する飲食品を調製している(摘示(h))ことから,引用発明の「グアガムの部分分解物」は,本願補正発明の「飲食品の製造工程において,添加される」「飲食品用組成物」に相当する。

そうすると,両者は,

「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物であって,飲食品の製造工程において,添加される飲食品用組成物。」

である点で一致し,以下の点で一応相違する。

上記グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物について,
本願補正発明は,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つこと」 であるのに対し,
引用発明においては,そのようなことは明らかではない 点。
(以下,「相違点」という。)

エ 判断

上記相違点について検討する。

引用発明の「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」も,本願補正発明の「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」も,食品用組成物として食品に添加して利用されるものである点で相違なく,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」ということにより限定された「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」が,食品用組成物として別異のものであるとも新たな用途を提供するものであるともいえない。

そして,引用発明も本願補正発明も,食品用組成物として食品に添加して利用されるものである点で相違が無い以上,引用発明の「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」にも,上記相違点である,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」ということが元来内在しているといえる。

したがって,上記相違点は,実質的な相違点であるとはいえない。

仮に,本願補正発明の「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」が,相違点である,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つこと」という未知の属性の発見に基づく発明であったとしても,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」ということにより限定された「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」が,食品用組成物として別異のものであるとも新たな用途を提供するものであるともいえない。

オ まとめ

以上のとおり,本願補正発明は,その出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 請求人の主張について

(1)主張の概要

請求人は,平成21年11月16日付け回答書の「引用文献との対比」において,「引用文献1?4には,本願と類似する技術として,グアガム分解物を含有する食品に関する技術が記載されております。
しかしながら引用文献1・・(中略)・・,引用文献2に記載された技術は,粘度を低下させることにより有効量のファイバーを摂取しやすくする技術であり,引用文献3・・(中略)・・,引用文献4・・(中略)・・技術であります。
したがってグアガム分解物の有する美肌(経口摂取することにより,肌の水分含量を向上させ,潤いある肌を得る)効果について記載されていないばかりか示唆すらなされていない引用文献1?4に基づき本願を想到することは,当業者においても困難であったものと思慮されるものであります。」と主張している。

(2)検討

しかし,前記「第2 2 (2) エ」で述べたように,たとえ,引用発明の「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」は,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」という効果を有することが,刊行物1に記載されていなくても,引用発明の「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」も,本願補正発明の「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」ということにより限定された「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」も,食品用組成物として食品に添加して利用されるものである点で相違がない以上,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」ということにより限定された「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」が,食品用組成物として別異のものであるとも新たな用途を提供するものであるともいえない。
そして,引用発明の「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」にも,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」ということが元来内在しているといえる。
したがって,刊行物1には,「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」は,「美肌用」で「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つ」という効果を有することが,記載も示唆もされてはいないが,引用発明と本願補正発明とは,「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」が,食品用組成物として食品に添加して利用されるものである点で,同一であり,新たな用途を提供するものともいえない以上,同一の発明として該効果を内在しているといえるから,実質上相違があるとはいえない。

よって,請求人の上記主張も採用することはできない。

4 補正の却下の決定のむすび

したがって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成19年8月15日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,この出願の請求項1に係る発明は,平成19年2月19日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下,「本願発明」という。)と認められる。

「 グアガム酵素部分分解物を含有することを特徴とする美肌用の飲食品用組成物。」

2 原査定の拒絶の理由の概要

本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は,本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない,というものである。


特開昭63-269993号公報(原査定における引用文献2。以下,「刊行物1」という。)

3 刊行物1の記載事項

前記「第2 2 (2) ア」に記載したとおりである。

4 刊行物1に記載された発明

前記「第2 2 (2) イ」に記載したとおりである。

5 対比

本願発明は,本願補正発明において,「美肌用」が「美肌効果が肌をみずみずしく潤った状態に保つことであ」ること,及び,飲食品用組成物が「飲食品の製造工程において,添加される」ものであるという特定がされていないものに相当するから,

先に「第2 2 (2) ウ」で述べた点を踏まえ本願発明と引用発明を対比すると,両者は,

「 グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物。」

である点で一致し,以下の点で一応相違する。

上記グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物について,
本願発明は,「美肌用」 であるのに対し,
引用発明においては,そのようなことは明らかではない 点。
(以下,「相違点’」という。)

6 判断

相違点’は,前記「第2 2 (2) ウ」の相違点の「美肌用」の点で同じである。
そして,本願発明の「美肌用」「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」も,食品用組成物として食品に添加して利用されるものである点で相違なく,「美肌用」ということにより限定された「グアガム酵素分解物を含有する飲食品用組成物」が,食品用組成物として別異のものであるとも新たな用途を提供するものであるともいえないことは,「第2 2 (2) エ」で述べたとおりであるから,相違点’は,実質的な相違点であるとはいえない。

7 まとめ

したがって,本願発明は,この出願の出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-08 
結審通知日 2010-06-11 
審決日 2010-06-23 
出願番号 特願平10-321470
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子小柳 正之田村 明照  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 齊藤 真由美
井上 千弥子
発明の名称 美肌飲食品用組成物  

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