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審決分類 審判 査定不服 判示事項別分類コード:122 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1221959
審判番号 不服2007-14360  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-17 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 特願2005-505945「支持体上に固定化した物質を染色体の順あるいは配列位置情報を付加して配列するアレイおよびその製造方法、アレイを用いた解析システム、並びにそれらの利用」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日国際公開、WO2004/097015〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年4月30日(優先日 2003年5月1日 特願2003-126667号、2004年3月26日 特願2004-93824号,特願2004-93825号,特願2004-93826号)を国際出願日とする国際出願であって、その請求項13に係る発明は、平成19年6月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項12】任意の生物から得られた複数種類の生体物質を、支持体上に規則的に配列させて固定化する工程とを含んでおり、
上記工程では、固定化される上記生体物質を、生体物質に対応する遺伝子を基準として、当該遺伝子が上記生物の染色体にコードされている順序にしたがって配列させるアレイの製造方法。」
「【請求項13】上記生体物質として、核酸またはポリペプチドが用いられる請求項12に記載のアレイの製造方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願優先日前の2001年に頒布された刊行物である.林崎良英監修,大規模ゲノム解析技術とポストシーケンス時代の遺伝子機能解析,株式会社中山書店,2001年5月31日第1刷,p.213-221(以下、「引用例」という。)には、
(i)「当研究室ではマウス全遺伝子をカバーする完全長cDNAのコレクションを行っており、これを用いたマイクロアレイを作成している。本稿ではcDNAマイクロアレイのwetな実験をした後のデータの格納システムやデータ解析の現状、および用いたクローンのアノテーション(注釈付け)を中心に述べる。」(第213頁左欄第14行?第20行)、
(ii)「われわれはマイクロアレイデータの格納については、Molecularware社(アドレスは省略)のDigitalGENOMEを採用している。図1にデータベースの概略図を示した。細かい仕様までは記述しないが、蓄積すべきデータは全てリレーショナルデータベースに格納されるようなシステムになっている。もう少し具体的にいうと、実験日時や条件(室温、湿度など)はもちろん、各情報が入ったテーブル上で新しい属性をユーザーレベルで定義できるようになっている。」(第214頁第7行?第17行)、と記載され、第214頁の図1には、cDNAマイクロアレイデータベースに蓄積されている情報は、アレイに配列された各cDNAのクローンID、遺伝子名、染色体上の位置等であることが示されている。

3.対比・判断
(1)本願発明について
本願発明の生体物質として核酸を選択した場合には、本願発明は、「任意の生物から得られた複数種類の核酸を、支持体上に規則的に配列させて固定化する工程とを含んでおり、上記工程では、固定化される上記核酸を、核酸に対応する遺伝子を基準として、当該遺伝子が上記生物の染色体にコードされている順序にしたがって配列させるアレイの製造方法」となり、以下、生体物質として核酸を選択した態様の本願発明について、その進歩性の有無を判断する。

(2)対比
本願発明と引用例に記載された事項を比較すると、引用例記載事項(i)に記載のマウス全遺伝子をカバーする完全長cDNAを用いて作成したマイクロアレイは、本願発明における任意の生物から得られた複数種類の核酸を支持体上に規則的に配列させて固定化するアレイに相当し、また、引用例の図1に記載されたマイクロアレイの染色体上の位置に関する情報とは、cDNAマイクロアレイ上に規則的に配列させて固定化したそれぞれの核酸とハイブリダイズする核酸に対応する遺伝子の、染色体上の位置に関する情報に他ならないから、本願発明と引用例に記載された事項は、「任意の生物から得られた複数種類の核酸を、支持体上に規則的に配列させて固定化する工程とを含んでおり、固定化される上記核酸に対応する遺伝子の上記生物の染色体上の位置が特定されているアレイ」に関するものである点で、共通する。
しかしながら、前者では、核酸をアレイに配列させる順序が、核酸に対応する遺伝子の染色体にコードされている順序にしたがうものであるのに対して、後者では、そのような順序にしたがって核酸をアレイに配列させることは記載されていない点で、相違する。

(3)当審の判断
本願優先日前、DNAチップとも呼ばれるDNAマイクロアレイは、遺伝子発現解析、塩基配列解析、変異検出、多型分析、マッピング、進化の研究など、さまざまな用途に用いられ、その用途、検出対象に応じて、固定化する核酸自体及び配列の順序を工夫することは、当業者が通常行うことであった(必要があれば、村松正明、那波宏之監修,細胞工学別冊 ゲノムサイエンスシリーズ1 DNAマイクロアレイと最新PCR法,株式会社秀潤社,2000年4月10日第2刷,p.97-103の特に第100頁図2、松永是監修,DNAチップ応用技術II,株式会社シーエムシー,2001年7月25日第1刷,p.91-102の特に第97頁図3、松永是、ゲノム工学研究会監修,DNAチップ応用技術,株式会社シーエムシー,2000年7月31日第1刷,p.159-170の特に第164頁図1及び第167頁図4、加藤郁之進監修,DNAマイクロアレイ,宝酒造株式会社,2000年9月25日,p.191-206の特に第196頁図10-1及び第197頁図10-2、Genomics(1996)Vol.33,No.3,p.445-456の特に第448頁図2、特開2001-321190号公報の特に段落【0012】?【0013】、参照)。このうち、配列の順序については、アレイデザインとよばれ、目的に応じた検出を迅速、簡便に行うために、当業者が必要に応じて適宜行うものであった。
このような本願優先日前の技術水準の下、引用例に記載の染色体上の位置がわかっているアレイ上の核酸を、各核酸が有する情報を利用して、その順序でアレイ上に配置しようとすること、及びその際に配置の基準となる情報として、染色体上の位置の情報を用い、その順序にしたがって配列しようとすることは、目的に応じたアレイデザインとして、当業者が適宜行う創作活動の範囲内のことにすぎない。
そして、DNAマイクロアレイを用いて得られるハイブリダイズシグナルは、通常、イメージ解析アルゴリズムによりデータ処理されるのであるから、本願発明において染色体上の位置の順序にしたがって配列させることによって奏せられる効果が、引用例に記載のような通常のデータ処理するものに比べ、予測できない程の格別なものであるとはいえず、あるいは、上述の如く周知のアレイデザインにより奏される効果にすぎず、いずれにしても、本願発明において奏される効果は、引用例、または引用例及び上記周知手段から予測できない程の格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用例の記載から当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.審判請求人の主張
審判請求人は、平成19年3月9日付意見書において、本願発明のアレイによれば、染色体の組み換え様式について正確な情報を得ることができ、例えば、遺伝子型を同定したり、品種改良のための交雑して得られる雑種から目的の形質を保持する品種を選抜する育種等に利用できるが、従来のアレイは、癌遺伝子などに代表される特定の遺伝子群が支持体上に配置されているにすぎず、組み換え頻度が高い染色体領域に関する詳細な実験データを得ることができなかった旨、主張している。
しかしながら、従来のDNAマイクロアレイは、請求人の主張するような特定の遺伝子群が支持体上に配置されているものだけではなく、参照文献を示して上記3.(3)に記載したような、さまざまな用途に適合するように設計されたものが用いられていたものであるから、その用途、検出対象に応じて、アレイに固定する核酸を設計し、あるいは必要に応じてその核酸の配列の順序を工夫することは、当業者が通常行う設計事項にすぎないものであることは、上記上記3.(3)に記載したとおりであり、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人の主張するように、本願発明のアレイを用いて染色体の組み換え様式について正確な情報を得ようとするためには、例えば、アレイに固定する核酸がいかなるものでもよいわけではなく、特定の核酸である必要があることは技術常識であるにもかかわらず、アレイに固定する核酸について何ら特定のない本願発明に関する上記主張は、請求項の記載に基づかないものでもあり、採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項13に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-09 
結審通知日 2010-06-15 
審決日 2010-06-28 
出願番号 特願2005-505945(P2005-505945)
審決分類 P 1 8・ 122- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深草 亜子  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 鵜飼 健
引地 進
発明の名称 支持体上に固定化した物質を染色体の順あるいは配列位置情報を付加して配列するアレイおよびその製造方法、アレイを用いた解析システム、並びにそれらの利用  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  
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