• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1221961
審判番号 不服2007-18937  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 特願2003-399006「積層セラミックコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日出願公開、特開2005-159224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年11月28日の出願であって,平成19年5月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年7月5日に審判請求がなされるとともに,平成19年8月6日付けで手続補正がなされ,その後,当審において平成21年12月21日付けで審尋がなされ,平成22年2月18日に回答書が提出されたものである。

第2 平成19年8月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年8月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成19年8月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の請求項1を補正後の請求項1として,
「内部電極層と,3.5μm以下の厚みを持つ誘電体層とを有する積層セラミックコンデンサであって,
前記誘電体層は,前記内部電極層と接している接触誘電体粒子と,前記内部電極層と接していない非接触誘電体粒子とで構成されており,
該接触誘電体粒子の平均粒径をD50eとし,該非接触誘電体粒子の平均粒径をD50dとしたとき,0.150≦D50e≦0.300μm,かつ(D50e/D50d)=1.20?3.00(但し,1.20及び3.00を除く)を満足する,ことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」と補正するものである。
上記補正は,補正前の請求項1の「D50e≦0.300μm」との数値範囲を補正後の請求項1の「0.150≦D50e≦0.300μm」と限定するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明及び引用発明
ア 刊行物1:特開2003-124049号公報
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には,「積層セラミックコンデンサ」(発明の名称)に関して,図1,2とともに,以下の事項が記載されている。(なお,下線は,引用箇所のうち特に強調する部分に付加したものである。以下,同様。)
「【請求項1】 誘電体磁器組成物からなる誘電体層と,該誘電体層を挟持している内部電極と,該内部電極に電気的に接続されている外部電極とを備え,該誘電体磁器組成物はセラミック粒子の焼結体からなり,該セラミック粒子のうちで,該内部電極に接しているセラミック粒子の平均粒径D50eが該内部電極に接していないセラミック粒子の平均粒径D50dより大きいことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」
「【0009】
【課題を解決するための手段】この発明に係る積層セラミックコンデンサは,誘電体磁器組成物からなる誘電体層と,該誘電体層を挟持している内部電極と,該内部電極に電気的に接続されている外部電極とを備え,該誘電体磁器組成物はセラミック粒子の焼結体からなり,該セラミック粒子のうちで,該内部電極に接しているセラミック粒子の平均粒径D50eが該内部電極に接していないセラミック粒子の平均粒径D50dより大きいことを特徴とするものである。
【0010】ここで,前記セラミック粒子の平均粒径D50e,D50dは、1.05≦D50e/D50d≦1.20の関係にあるのが好ましい。」
「【0019】
【表1】」
「【0032】
【表2】
【0033】表2から,試料No.1?10に示すように,内部電極ペースト中に粒成長を促進させる添加成分を添加した場合,内部電極に接しているセラミック粒子の平均粒径D50eは,内部電極に接していないセラミック粒子の平均粒径D50dより大きくなることがわかる。」
「【0042】また、粒成長を促進させる添加成分の添加量は微量でも効果があり,35wt%以下で効果が認められる。ただし,35wt%以上添加すると、内部電極の特性が悪化し,電気的特性が著しく悪化する。」
(イ)以上によれば、刊行物1には,「内部電極と,誘電体層とを有する積層セラミックコンデンサであって,内部電極に接しているセラミック粒子の平均粒径D50eが該内部電極に接していないセラミック粒子の平均粒径D50dより大きいことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

イ 刊行物2:特開2002-289456号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には,「セラミック積層体およびその製法」(発明の名称)に関して,図1ないし図4とともに以下の事項が記載されている。
「【0030】また,本発明のセラミック積層体を構成する絶縁体層5の厚みは,セラミック積層体の小型高容量化のため薄層多層化という理由から,3μm以下が望ましく,高誘電率および高絶縁性という理由から絶縁体層5の厚みは1.5?3μmが望ましい。」

(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「内部電極」,「内部電極に接しているセラミック粒子」,「内部電極に接していないセラミック粒子」は,それぞれ,本願補正発明の「内部電極層」,「内部電極層と接している接触誘電体粒子」,「内部電極層と接していない非接触誘電体粒子」に相当する。
(イ)引用発明の「D50e」が「D50d」「より大きい」は,本願補正発明の「(D50e/D50d)=1.20?3.00(但し,1.20及び3.00を除く)を満足する」を含む。
イ そうすると,両者は,
「内部電極層と,誘電体層とを有する積層セラミックコンデンサであって,
前記誘電体層は,前記内部電極層と接している接触誘電体粒子と,前記内部電極層と接していない非接触誘電体粒子とで構成されており,
該接触誘電体粒子の平均粒径をD50eとし,該非接触誘電体粒子の平均粒径をD50dとしたとき,D50eがD50dより大きいことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は,誘電体層が「3.5μm以下の厚みを持つ」のに対し,引用発明は,誘電体層の厚さの特定がない点。
[相違点2]
本願補正発明は,平均粒径D50eについて「0.150≦D50e≦0.300μm」を「満足する」ものであるのに対し,引用発明は,このような数値範囲の限定がない点。
[相違点3]
本願補正発明は,D50eとD50dとの比が「(D50e/D50d)=1.20?3.00(但し,1.20及び3.00を除く)を満足する」ものであるのに対し,引用発明は,「D50e」が「D50d」「より大き」いものの,このような数値範囲の限定がない点。

(3)相違点についての検討
ア 相違点1について
上に述べたように,刊行物2には,「【0030】また,本発明のセラミック積層体を構成する絶縁体層5の厚みは,セラミック積層体の小型高容量化のため薄層多層化という理由から,3μm以下が望ましく,高誘電率および高絶縁性という理由から絶縁体層5の厚みは1.5?3μmが望ましい。」との記載がある。そうすると,本願補正発明において,誘電体層が「3.5μm以下の厚みを持つ」と限定した点(相違点1に係る数値限定)は,この種の積層セラミックコンデンサにおいて通常好ましいとされる値を明示したということ以上の内容を有しないといわざるを得ない。
したがって,相違点1に係る数値限定は,当業者が適宜設定できる程度のものである。

イ 相違点2及び相違点3について
刊行物1の表2には,種々の粒径のセラミック粒子を用いて得られたセラミックコンデンサの試料について,その電気的特性を測定したものが示されている。そのうち,試料No.1と試料No.2では,D50eとD50dの値が,試料No.1について,0.18μmと0.16μm,試料No.2について,0.24μmと0.22μmとなっており,本願補正発明の数値範囲「0.150≦D50e≦0.300μm」に含まれている。
もっとも,試料No1と試料No2は,D50eとD50dの比の値(D50e/D50d)では,それぞれ,1.13及び1/09となっており,本願補正発明の数値範囲「(D50e/D50d)=1.20?3.00(但し,1.20及び3.00を除く)」から外れる。
しかし,刊行物1の表2は,D50eをD50dよりも大きくすることにより,セラミックコンデンサの電気的特性を改善できるという知見の下,いくつかの試料を用いてこれを検証しようとしたものであり,たまたま作成した試料の多くのものにおいて,(D50e/D50d)の値が1.20以下となっているからといって,(D50e/D50d)が1.20を超えるものを排除するものでないことは明らかである。
実際,試料No.10を見ると,(D50e/D50d)の値は1.56であり,本願補正発明の数値範囲「(D50e/D50d)=1.20?3.00(但し,1.20及び3.00を除く)」に含まれる。もっとも,試料No.10の場合,D50eの値は0.50μmであり,本願補正発明の数値範囲「0.150≦D50e≦0.300μm」から外れる。しかし,サブミクロンの範囲の近傍にある。
以上の検討によれば,刊行物1の表2に示されたいくつかの試料の数値は,本願補正発明の数値範囲「0.150≦D50e≦0.300μm」又は「(D50e/D50d)=1.20?3.00(但し,1.20及び3.00を除く)」の範囲に含まれるものである。表2に示された試料には,両方の数値範囲を同時に満たすものはないが,刊行物1の開示内容は,提示された試料に限定されない。その近傍で最適な数値範囲を定めることは,当業者が容易になし得る最適化のための設計事項といえる。
付言すると,そもそも,本願補正発明の数値範囲は,得られたセラミックコンデンサ試料の85℃でのバイアス特性の評価(20℃での測定値からの容量変化率が-21.0%より大きくなるものを良好であるとする評価基準)により割り出したものである(本願明細書の段落【0085】の記載)ところ,本願明細書の【表1】によれば,試料の数値は,-21.0%の前後で連続的に分布しているから,評価基準の取り方に依存して数値範囲も大きく変動することになり,結局,本願補正発明の数値範囲(小数点以下第三位まで数値限定している)がどの程度意味をもつものなのか明らかでない。
したがって,相違点2,3に係る数値限定は,当業者が適宜設定できる程度のものである。

ウ 以上のとおり,相違点1?3に係る数値限定は,引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて,当業者が適宜設定できたものといえるから,本願補正発明は,引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,請求項1についての補正を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)平成19年8月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年3月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「内部電極層と,3.5μm以下の厚みを持つ誘電体層とを有する積層セラミックコンデンサであって,
前記誘電体層は,前記内部電極層と接している接触誘電体粒子と,前記内部電極層と接していない非接触誘電体粒子とで構成されており,
該接触誘電体粒子の平均粒径をD50eとし,該非接触誘電体粒子の平均粒径をD50dとしたとき,D50e≦0.300μm,かつ(D50e/D50d)=1.20?3.00(但し,1.20及び3.00を除く)を満足する,ことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」

(2)本願発明の容易想到性
ア 刊行物1及び2の記載事項及び刊行物1に記載された発明(引用発明)は,前記第2,2(1)において認定したとおりである。
イ 前記第2,1で検討したように,本願補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)は,本願発明(本件補正前の請求項1に係る発明)を限定的に減縮したものである。逆にいえば,本願発明は,本件補正発明から限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明の構成要素をすべて含み,これを限定的に現出したものである本件補正発明が,前記第2,2(3)で検討したとおり,引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様に理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-14 
結審通知日 2010-06-15 
審決日 2010-06-28 
出願番号 特願2003-399006(P2003-399006)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
P 1 8・ 536- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸本 泰広  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 相田 義明
大澤 孝次
発明の名称 積層セラミックコンデンサ  
代理人 前田 均  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ