• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1221969
審判番号 不服2007-27317  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-04 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 特願2002- 60485「バッテリ監視システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月10日出願公開、特開2003-256084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は平成14年3月6日に出願されたものであって、平成19年8月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年10月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同年11月5日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年11月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年11月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成19年11月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 電子機器に搭載されたバッテリに係るバッテリ状態情報を収集するバッテリ監視手段と、
前記バッテリに関するバッテリ充電後の稼働時間に対する電圧低下を示す放電特性劣化情報である推移状態情報を格納した記憶手段と、
前記バッテリ状態情報に含まれた前記バッテリの出力電圧とバッテリ充電後の稼働時間に基づいて、前記放電特性劣化情報である推移状態情報を参照して前記バッテリの寿命到来時期を判断するバッテリ監視制御手段と、
前記寿命到来時期を含む前記バッテリ状態情報を出力する出力手段とを有するバッテリ監視システム。」
と補正された。

2.補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「電圧低下の推移状態情報」を「電圧低下を示す放電特性劣化情報である推移状態情報」と限定し、「前記推移状態情報を参照して」を「前記放電特性劣化情報である推移状態情報を参照して」と限定する補正であるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、平成19年11月5日付けの手続補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうかについて以下に検討する。

3.引用刊行物
原審が拒絶の理由に引用した特開2002-56898号公報(平成14年2月22日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の各記載がある。

(ア)「【請求項1】 二次電池を用いた電池電源装置と、この電池電源装置の動作状態を管理する電池管理手段と、通信ネットワークへの接続手段とを備えた電子機器をクライアントとして、これに対応させて通信ネットワーク上にサービス対応サーバを開設し、前記電子機器は通信ネットワークを通じて前記サービス対応サーバにアクセスして、前記電池管理手段から取り出した電池電源装置の動作状態データを送付し、サービス対応サーバは送付されてきた動作状態データから電池電源装置の交換の要否を判定し、判定結果が要交換である場合に、交換処理情報を電子機器に送付し、電子機器のユーザは電池電源装置の交換を希望するときは、前記交換処理情報に指定された発注情報をサービス対応サーバに送付し、サービス対応サーバは前記発注情報に基づいてサービス拠点に電池電源装置の配送及び使用済み電池電源装置の回収を指令すると共に、決裁拠点に代金決裁を指令するように構成されてなることを特徴とする電池電源装置の交換回収システム。」
(なお、下線は当審において附した。以下、同様。)

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯型パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の電子機器が備える電池電源装置について、この電子機器をクライアントとして通信ネットワーク上に開設されたサービス対応サーバにアクセスして電池電源装置の劣化状態の診断に基づく交換回収を実施できるようにした電池電源装置の交換回収システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】携帯型のパーソナルコンピュータ(以下、携帯型パソコン)や携帯電話機など携帯電子機器の電源として、二次電池を用いた電池電源装置が広く用いられている。電池電源装置は二次電池を過充電や過放電などから保護する電池保護回路等を二次電池と共に電池パックの形態に構成したもので、携帯電子機器の電池電源装置では、二次電池の充放電を管理して不用意な電力低下によるデータ破壊等のトラブルを未然に防ぐなどの電力管理システムが設けられている。例えば、携帯型パソコンの電池電源装置では、電池電圧や電池温度、残量等を管理する電池管理機能を備え、パソコン本体との間はSMBus(System Management Bus)で接続されたスマートバッテリシステムに構成されたものが一般的なものとなっている。このスマートバッテリシステムによってパソコン本体は電池電源装置の動作状態を常時監視することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】二次電池は充電により繰り返し使用ができるが、充放電の繰り返し回数(充放電サイクル)は有限である。即ち、二次電池は充放電の繰り返しにより劣化が進行し、やがて寿命に達する。この寿命に至る状態を的確に検出して動作停止に至る以前に電池交換する必要があるが、ユーザが二次電池の寿命の低下を検出して電池交換のタイミングを知ることは容易でない。前述のスマートバッテリシステムでは二次電池の充放電サイクルをカウントする機能を備えているが、充放電サイクルが所定回数に達すると使用できなくなるわけでもない。二次電池の充放電を繰り返したときの劣化特性は充電条件や放電条件に依存するため、電池電源装置を使用する機器の条件で寿命を判定する必要がある。また、二次電池の性能のばらつきやユーザの使用状態によっても寿命に差が生じる。例えば、二次電池を満充電の状態で高温環境下に放置するとサイクル使用したのと同じように容量の低下を来す。容量の減少はユーザの予想に反して機器が動作不能に陥り、データ破壊等の重大なトラブルをまねく。
【0004】また、電池電源装置が使用不能になったとき、多くの電池電源装置は汎用性がないため、その交換は容易でない。携帯型パソコンにしても携帯電話機にしても、その機種毎に専用の電池電源装置が使用されているため、販売店で買い求めることができない。多くはメーカのサービスセンターや販売店に購入を申し込んでから、暫くの期日を経て入手できることになる。この間ユーザは携帯電子機器の使用はできないことになる。
【0005】また、電池は一次電池、二次電池を含めて、その使用材料が環境に影響を与えるものが少なくない。また、材料のリサイクルの観点からも使用済みの電池及び電池電源装置の確実な回収が望まれている。
【0006】本発明の目的とするところは、電池電源装置の動作状態データを通信ネットワーク上に開設したサービス対応サーバーに送信し、サービス対応サーバは電池電源装置の交換を判定して、劣化判定時に電池電源装置の交換及び回収を行うようにした電池電源装置の保守システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本願の第1発明に係る電池電源装置の交換回収システムは、二次電池を用いた電池電源装置と、この電池電源装置の動作状態を管理する電池管理手段と、通信ネットワークへの接続手段とを備えた電子機器をクライアントとして、これに対応させて通信ネットワーク上にサービス対応サーバを開設し、前記電子機器は通信ネットワークを通じて前記サービス対応サーバにアクセスして、前記電池管理手段から取り出した電池電源装置の動作状態データを送付し、サービス対応サーバは送付されてきた動作状態データから電池電源装置の交換の要否を判定し、判定結果が要交換である場合に、交換処理情報を電子機器に送付し、電子機器のユーザは電池電源装置の交換を希望するときは、前記交換処理情報に指定された発注情報をサービス対応サーバに送付し、サービス対応サーバは前記発注情報に基づいてサービス拠点に電池電源装置の配送及び使用済み電池電源装置の回収を指令すると共に、決裁拠点に代金決裁を指令するように構成されてなることを特徴とするもので、通信ネットワークを通じたサービス対応サーバとの接続により電池電源装置の動作状態が評価されるので、劣化や故障により電子機器が機能停止に至る以前に交換の手配が可能であり、汎用性のない電池電源装置の入手が容易となり、使用済みの電池電源装置が確実に回収される。
【0008】また、本願の第2発明に係る電池電源装置の交換回収システムは、二次電池を用いた電池電源装置と、その動作状態を管理する電池管理手段と、機種を特定する識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、通信ネットワークへの接続手段とを備えた電子機器をクライアントとして、これに対応させて通信ネットワーク上にサービス対応サーバを開設し、前記電子機器は、保守動作プログラムの起動により、前記ネットワーク接続手段によって通信ネットワークを通じてサービス対応サーバに接続し、前記電池管理手段から取り出した動作状態データ及び前記識別情報記憶手段から読み出した識別情報をサービス対応サーバーに送信し、前記サービス対応サーバは、電子機器及び電池電源装置の機種に対応するデータベースと、入力された動作状態データを前記データベースに参照して動作状態を評価する情報処理部と、返信情報を生成する返信情報生成部とを備え、電子機器から受信した識別情報から該当する機種を特定し、前記情報処理部により動作状態データを特定された機種のデータベースに参照して電池電源装置の動作状態を評価すると共に評価結果から交換の要否を判定し、判定結果が要交換であるとき返信情報生成部により評価データ及び注文案内とを生成して、これを電子機器に対して送信し、電子機器のユーザは、電池電源装置の交換を希望するときは、注文案内に基づく注文情報をサービス対応サーバに送信し、サービス対応サーバは注文情報を交換サービス拠点に転送して交換する電池電源装置の発送を指示すると共に、注文情報を代金決裁機関に送信して代金決裁を指示するように構成されてなることを特徴とするものである。
【0009】上記システムにおける電子機器は携帯型パーソナルコンピュータや携帯情報端末、あるいは移動体通信機であり、データ通信サービスによりサービス対応サーバにアクセスする構成に適用することができる。」

(ウ)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下に示す実施形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】本実施形態は、図1に示すように、携帯型パソコン2のメーカにおいて、販売した各機種の携帯型パソコン(電子機器)2をクライアントとして、これに対応させてインターネット(通信ネットワーク)5上にサービス対応サーバ1を開設し、携帯型パソコン2が備えるインターネット接続機能によりサービス対応サーバ1にアクセスして携帯型パソコン2が備える電池電源装置3の動作状態から動作異常や二次電池の劣化状態を判定して、電池電源装置3に異常が認められた場合に、その交換及び回収を行い得るように構成した電池電源装置の交換回収システムの例を示すものである。
【0012】携帯型パソコン2は、携帯移動先での使用を可能とするため、AC電源による動作だけでなく、電池電源による動作も可能に構成される。図2に示すように、ACアダプタ11を用いた商用電力と電池電源装置3からの電池電力とを選択的に使用できるように構成され、パワーマネジメントコントローラ12はユーザのACアダプタ11の接続を検知して、ACアダプタ11からのDC出力と、電池電源装置3からのDC出力とを選択すると同時に、AC電源使用時には充電回路14による二次電池6の充電を制御し、DC-DCコンバータ13を制御してパソコン本体の電力管理を実行する。
【0013】前記電池電源装置3は、二次電池6、電池管理手段7、通信手段8、記憶手段9、保護安全手段10を備え、前記パワーマネジメントコントローラ12及び充電回路(スマートチャージャ)14と共にスマートバッテリシステムが構成されている。前記電池管理手段7は二次電池6の電池電圧、電池温度、残容量、充放電サイクル等の電池管理情報(動作状態データ)を常時検出する。また、保護安全手段10は二次電池6を過充電や過放電等から保護するもので、二次電池6の放電及び充電は保護安全手段10を介して行われる。また、記憶手段9は電池電源装置3のシリアル番号、メーカー名等の識別情報が書き込まれたメモリである。前記電池管理手段7によって検出された二次電池6の電池管理情報及び記憶手段9に格納された識別情報は、パソコン本体からの要求に応じて前記通信手段8により前記電源監視部4に出力される。
【0014】携帯型パソコン2はモデム等のインターネット接続手段15を備え、保守サービスのための常駐ソフトウエアにより所定の時間間隔(例えば、1日1回、任意時刻もしくは携帯型パソコン2の起動時)でWWWブラウザが起動され、サービス対応サーバ1にアクセスし、予め設定登録されたユーザID及び電池管理手段7から取り出された電池管理情報、記憶手段9から読み出された識別情報がサービス対応サーバ1に送信される。
【0015】一方、サービス対応サーバ1は、図3に示すように、携帯型パソコン2から送信された情報を処理して回答情報を返信できるように構成されている。このサービス対応サーバ1が備える電源情報DB(Database)22には、サービス本部20の電源情報発信部26から発信される機種毎の最新のデータが格納される。また、ユーザが携帯型パソコン2を購入した際には、ユーザ登録がなされるので、このときの登録データはサービス本部20のユーザ情報発信部28からサービス対応サーバ1のメールアドレスDB23に格納される。また、異常が検出されたときの交換サービスを実施するためのサービス拠点が各地域に設置され、このサービス拠点の情報もサービス本部20の拠点情報発信部27からメールアドレスDB23に格納される。前記サービス拠点は、携帯型パソコン2の販売店、サポートセンターなどに設定することができる。
【0016】WWW(World Wide Web)サーバ/CGI(Common Gateway Interface)17は、クライアントである携帯型パソコン2との間のインタフェースとして機能し、携帯型パソコン2から送信された情報を受け取り、情報処理した結果を返信データとして携帯型パソコン2に転送する。情報処理は情報処理部18でなされ、異常が検出されたときには、異常に対する対処情報をメールサーバ21からEメール(電子メール)として各所に向けて発信される。」

(エ)「【0017】上記構成による交換サービス処理について、図4、図5に示すフローチャートを参照して以下に説明する。尚、フローチャートに示すS1、S2…は処理手順を示すステップ番号であって、以下の本文中に添記する番号と一致する。
【0018】図4において、携帯型パソコン2は常駐ソフトウエアにより所定時刻にWWWブラウザ16を起動させ、サービス対応サーバ1に接続し(S1)、保守サービスのページ情報が転送され(S2)、更に設定されたユーザID及び識別情報が送信され(S3)、電池管理情報が送信される(S4)。尚、ユーザによるサービス対応サーバ1に対するアクセスは、上記のように常駐ソフトウエアによる自動化されたものによらず、自らの操作によってアクセスするようにすることもできる。
【0019】サービス対応サーバ1は携帯型パソコン2からの接続を受けると(S11)、前記ページ情報をWWWサーバ/CGI17が受け取ることにより情報処理部18が起動して保守ページが開かれ(S12)、ユーザID認証部30は入力されたユーザIDをメールアドレスDB23に参照してユーザが使用する携帯型パソコン2の機種を特定し、識別情報から電池電源装置3の機種を特定する(S13)。情報処理部18はパラメータ解析部31により入力された電池管理情報を処理して評価対象データを作成し(S14)、電源情報検索部32は評価対象データを電源情報DB22の中の特定された機種のデータベースから検索することにより(S15)、評価部33による電池管理情報の評価がなされる(S16)。
【0020】評価部33の評価に基づく電池電源装置3の交換要否判定により(S17)、交換が不要と判定された場合には、返信データ生成部34により「異常なし」の返信メッセージが生成され(S18)、WWWサーバ/CGI17から携帯型パソコン2に向けて送信されるので、これを受信したとき(S5)、異常なしの返信メッセージであるとき(S6)、携帯型パソコン2のディスプレイ上には「異常なし」の表示がなされる(S7)。一方、ステップS17の交換要否判定において「要交換」と判定された場合には、異常時データ生成部35により返信メッセージが生成され(S19)、携帯型パソコン2に向けて返信されるので、携帯型パソコン2のディスプレイ上に「異常有り」と表示されると同時に、異常に対処するための情報がEメールで提供される旨の通知が表示される(S8)。【0021】上記交換要否判定において「要交換」と判定された場合、交換回収のサブルーチンが実行される。図5において、サービス対応サーバ1においては、異常時データ生成部35によって電池劣化状態データが生成される(S21)。また、Eメール生成部36はメールアドレスDB23からユーザのメールアドレスを検索してユーザ向けのEメールを作成し、前記電池劣化状態データを添付すると共に(S22)、交換案内メッセージ(S23)及び注文受付ファイル(S24)を添付し、異常対応メールとして送信する(S25)。
【0022】ユーザがメーラ25により異常対応メールを受信して(S31)、これを開いたとき、図6に示すように電池劣化状態データを表示した電池寿命評価結果画面が携帯型パソコン2のディスプレイ上に表示される(S32)。ユーザは劣化状態の判断から電池電源装置3の交換を希望するときには、電池寿命評価結果画面中の「交換案内画面へ」のボタンをクリックすると、図7に示すような交換案内メッセージが表示されるので(S33)、価格や各表示事項を確認して「注文画面へ」のボタンをクリックすると、図8に示すような受注処理画面が表示される(S34)。ユーザは受注処理画面中の各入力欄に注文事項を入力して(S35)、「注文」ボタンをクリックすると、注文メールがメーラ25からメールサーバ21に送信される(S36)。
【0023】注文メールを受信したメールサーバ21は、これを開いてサービス対応サーバ1に転送する(S26)。注文処理部37は注文データを登録し(S27)、メールアドレスDB23からユーザに対応するサービス拠点40を検索して(S28)、そのサービス拠点40向けの受注指示メールを作成する(S29)。この受注指示メールはメールサーバ21にアップロードされてサービス拠点40に送信される(S30)。
【0024】受注指示メールを受信したサービス拠点40は(S41)、受注指示メールに記載された交換用の電池電源装置3を用意して(S42)、宅配運送業者41に配送データを送達すると共に(S43)、ユーザに向けて配達日時連絡メールを送信する(S44)。宅配運送業者41はサービス拠点40から電池電源装置3を受け取り、これをユーザに向けて配送し(S45)、新電池電源装置と旧電池電源装置とを交換して(S46)、旧電池電源装置をサービス拠点40に配送することにより使用済み電池の回収がなされる(S47)。
【0025】受注した電池電源装置3の代金決裁は、宅配運送業者41による配送時に代金を受け取る代金引換えや、クレジットカードによるカード決裁などを適用することができる。
【0026】以上はインターネットを利用した場合であるが、Eメールを利用した情報の送受信により携帯型パソコン2の保守サービスを行うこともできる。
【0027】図9に示すように、携帯型パソコン2はユーザID及び電池管理情報をEメールの添付ファイル24として作成し、メーラ25によりインターネットを通じてメールサーバ21に送信する。添付ファイル24を受け取ったメールサーバ21は、これを開いてサービス対応サーバ1に転送する。電池管理情報及びユーザIDを受け取ったサービス対応サーバ1は前述と同様に情報処理する。携帯型パソコン2からのデータ送信をEメールで行う以外は先に説明したシステムと同様なので、その説明は省略する。
【0028】以上の説明は、クライアントとなる電子機器がインターネット接続機能を備えた携帯型パソコン2の場合について示したが、モデム等のインターネット接続機能がない場合でも、PCカードスロットにモデムPCカード等を接続しても同様にインターネット接続が可能であり、携帯電話機、PHS電話機からインターネットに接続しても可能であることは言うまでもない。また、クライアントとなる電子機器はインターネット接続が可能なPDA(携帯情報端末)にも同様に適用することができる。
【0029】また、クライアント機器は、携帯型パソコン2だけでなく、通信ネットワークへの接続機能を有する携帯電話機、PHS電話機等の移動体通信機の電源装置についてもサービス対応サーバ1による交換サービスを実施することができる。移動体通信機の電池電源装置にその電池管理情報を検出する電池管理手段7を設け、移動体通信機のデータ通信サービスによりサービス対応サーバ1に動作状態データを送信すると、先の説明と同様に保守サービスを行うことができる。また、移動体通信機の場合には、その基地局にサービス対応サーバを設置することもできる。
【0030】
【発明の効果】以上の説明の通り本発明によれば、通信ネットワークを通じたサービス対応サーバへの接続により電池電源装置の劣化状態が評価され、劣化が進行しているときには、その交換を手配して交換用の電池電源装置が配達されるので、電子機器の機種毎に専用のものが必要で汎用性がなく入手が容易でない電池電源装置を容易に交換することができる。また、使用済みの電池電源装置は交換時に回収されるので、環境に影響する材料を含む二次電池が環境に廃棄されることがなく、リサイクルの要に供することもできる。」

以上の記載からみて、引用例1には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「二次電池を用いた電池電源装置と、
この電池電源装置の動作状態を管理する電池管理手段と、
機種を特定する識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
インターネット等の通信ネットワークへの接続手段とを備えた電子機器(携帯型パーソナルコンピュータ、携帯電話等)をクライアントとして、
これに対応させて通信ネットワーク上にサービス対応サーバを開設し、
前記電池管理手段は二次電池の電池電圧、電池温度、残容量、充放電サイクル等の電池管理情報である動作状態データを常時検出し、
前記電子機器は、通信ネットワークを通じてサービス対応サーバに接続し、前記電池管理手段から取り出した動作状態データ及び前記識別情報記憶手段から読み出した識別情報をサービス対応サーバに送信し、
前記サービス対応サーバは、電子機器及び電池電源装置の機種に対応するデータベースと、入力された動作状態データを前記データベースに参照して動作状態を評価する情報処理部と、返信情報を生成する返信情報生成部とを備え、
電子機器から受信した識別情報から該当する機種を特定し、前記情報処理部により動作状態データを特定された機種のデータベースに参照して電池電源装置の動作状態を評価すると共に評価結果から交換の要否を判定し、
判定結果が要交換であるとき返信情報生成部により評価データ及び注文案内とを生成して、これを電子機器に対して送信し、
電子機器のユーザは、電池電源装置の交換を希望するときは、注文案内に基づく注文情報をサービス対応サーバに送信し、
サービス対応サーバは注文情報を交換サービス拠点に転送して交換する電池電源装置の発送を指示すると共に、注文情報を代金決裁機関に送信して代金決裁を指示するように構成されてなることを特徴とする電池電源装置の交換回収システム。」

4.対比
本願補正発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)を対比する。
(1)引用発明の「電子機器」は、本願補正発明の「電子機器」に相当する。
(2)引用発明の「二次電池」は、本願補正発明の「バッテリ」に相当する。
(3)引用発明の「電池電圧、電池温度、残容量、充放電サイクル等を含む電池管理情報」は、バッテリの状態に関する情報である点で、本願補正発明の「バッテリ状態情報」に相当する。
(4)引用発明の電池管理手段は、電子機器に搭載された二次電池(バッテリに相当)に関する二次電池充電後の出力電圧、電池温度、残容量、充放電サイクル等を常時検出しているから、本願補正発明の「バッテリ監視手段」に相当する。
(5)引用発明には、サービス対応サーバの情報処理部が二次電池の電池管理情報に含まれる電池出力電圧、電池温度、残容量、充放電サイクル等に基づいて、二次電池の交換の要否を判定することが記載されている。交換の要否を判定することはバッテリの寿命到来時期を判断することといえるから、引用発明の「情報処理部」は、本願補正発明の「バッテリ監視制御手段」に相当する。
(6)引用発明において、電子機器は、通信ネットワークを通じてサービス対応サーバに接続し、前記電池管理手段から取り出した動作状態データ及び前記識別情報記憶手段から読み出した識別情報をサービス対応サーバに送信しているから、上記(3)に記載した相違はあるものの、バッテリ状態情報を出力する出力手段を備えているといえる。
(7)引用発明の、電池管理手段は、電子機器に搭載された二次電池に関する二次電池充電後の出力電圧、電池温度、残容量、充放電サイクル等を常時検出することにより、二次電池の電池管理情報を収集することが記載され、サービス対応サーバは、電子機器及び電池電源装置の機種に対応するデータベースと、入力された動作状態データを前記データベースに参照して動作状態を評価する情報処理部を備えることが記載されているから、引用発明の「電池電源装置の交換回収システム」は、本願補正発明の「バッテリ監視システム」に相当することは明らかである。

そうすると、本願補正発明と引用発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
「電子機器に搭載されたバッテリに係るバッテリ状態情報を収集するバッテリ監視手段と、
前記バッテリ状態情報に含まれた前記バッテリの出力電圧等に基づいて、前記バッテリの寿命到来時期を判断するバッテリ監視制御手段と、
前記バッテリ状態情報を出力する出力手段とを有するバッテリ監視システム。」

(相違点1)
本願補正発明は、電子機器が、バッテリ充電後の稼働時間に対する電圧低下を示す放電特性劣化情報である推移状態情報を格納した記憶手段を備え、バッテリの出力電圧とバッテリ充電後の稼働時間に基づいて、放電劣化情報である推移状態情報を参照してバッテリの寿命到来時期を判断しているのに対し、
引用発明は、電子機器が、放電特性劣化情報である推移状態情報を格納した記憶手段を備えておらず、二次電池の電池電圧、電池温度、残容量、充放電サイクル等の電池管理情報(動作状態データ)に基づいて、サービス対応サーバの情報処理部が、携帯型パソコンの機種と電池電源装置の機種の情報を参照して二次電池の交換の要否を判定している点。

(相違点2)
本願補正発明のバッテリ状態情報は、バッテリの寿命到来時期を含んでいるのに対して、引用発明の電池管理情報は、寿命到来時期を含んでいない点。

5.判断
(相違点1及び2について)
電子機器側において、バッテリ充電後の稼働時間に対する電圧低下を示す判定基準に基づいて、機器がバッテリの劣化を判断することは、例えば、特開平9-281203号公報( 以下、「刊行物1」という。特に図3に開示された事項及び段落【0008】?【0015】の記載された事項参照。)及び特開2001-174532号公報(以下、「刊行物2」という。特に図4に開示された事項及び段落【0016】?【0019】に記載された事項参照。)に記載されているように、当業者には周知な技術事項であり、その際にバッテリの劣化を判断することは、バッテリの寿命到来時期を判断することに相当するのは明らかである。そして、同刊行物1には、劣化したとの判定結果をバッテリ遠方監視装置から保守センターに伝送することが記載され(段落【0020】?【0023】の記載参照。)、同刊行物2には、判定基準電圧と比較して容量劣化を無線通信装置から外部に通告することが記載され(段落【0034】?【0038】の記載参照。)ているように、バッテリの劣化に関する情報、すなわち寿命到来時期に関する情報を電子機器側から出力することも周知技術である。
そして、バッテリ充電後の稼働時間に対する電圧低下を示す判定基準に基づいて、機器がバッテリの劣化を判断するにあたり、バッテリ充電後の稼働時間に対する電圧低下を示す放電特性劣化情報である推移状態情報を記憶することは適宜なし得ることである。
したがって、かかる刊行物1,2に記載の周知技術事項を、引用発明に適用して本願補正発明の如く構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件補正発明についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、したがって、平成19年11月5日付けの本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成19年11月5日付けの手続補正は、前記のとおり却下されたから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 電子機器に搭載されたバッテリに係るバッテリ状態情報を収集するバッテリ監視手段と、
前記バッテリに関するバッテリ充電後の稼働時間に対する電圧低下の推移状態情報を格納した記憶手段と、
前記バッテリ状態情報に含まれた前記バッテリの出力電圧とバッテリ充電後の稼働時間に基づいて、前記推移状態情報を参照して前記バッテリの寿命到来時期を判断するバッテリ監視制御手段と、
前記寿命到来時期を含む前記バッテリ状態情報を出力する出力手段とを有するバッテリ監視システム。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用発明及び周知技術は、前記「第2 3.」「第2 5.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、発明を限定する事項である次の2つの事項、すなわち、
(1)「を示す放電特性劣化情報である」
(2)「放電特性劣化情報である」
を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含む本願補正発明が、前記「第2 4.」及び「第2 5.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.審判請求人の主張について
審判請求人は平成22年4月12日付け回答書において、
(1)「一方、引用文献1には、二次電池の劣化状態をどのようにして判定するかについて具体的に記載されていません。引用文献1に記載の電池電源装置の交換回収システムでは、電池電源装置の動作状態から動作異常や二次電池の劣化状態を判定して、電池電源装置に異常が認められた場合に、その交換及び回収が行われているに過ぎず、そのため、電池の寿命到来時期については判断されていません。二次電池の劣化状態の判定と電池の寿命到来時期の判断とは、全く意味が異なります。
従いまして、補正案による請求項1に係る発明は、上記要件1及び2の点で、引用文献1に記載の発明と相違します。」等と主張している。
しかし、引用文献1(当審決の「引用例1」に相当。)の次の記載、
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】二次電池は充電により繰り返し使用ができるが、充放電の繰り返し回数(充放電サイクル)は有限である。即ち、二次電池は充放電の繰り返しにより劣化が進行し、やがて寿命に達する。この寿命に至る状態を的確に検出して動作停止に至る以前に電池交換する必要があるが、ユーザが二次電池の寿命の低下を検出して電池交換のタイミングを知ることは容易でない。前述のスマートバッテリシステムでは二次電池の充放電サイクルをカウントする機能を備えているが、充放電サイクルが所定回数に達すると使用できなくなるわけでもない。二次電池の充放電を繰り返したときの劣化特性は充電条件や放電条件に依存するため、電池電源装置を使用する機器の条件で寿命を判定する必要がある。また、二次電池の性能のばらつきやユーザの使用状態によっても寿命に差が生じる。例えば、二次電池を満充電の状態で高温環境下に放置するとサイクル使用したのと同じように容量の低下を来す。容量の減少はユーザの予想に反して機器が動作不能に陥り、データ破壊等の重大なトラブルをまねく。」
「【0006】本発明の目的とするところは、電池電源装置の動作状態データを通信ネットワーク上に開設したサービス対応サーバーに送信し、サービス対応サーバは電池電源装置の交換を判定して、劣化判定時に電池電源装置の交換及び回収を行うようにした電池電源装置の保守システムを提供することにある。」
「【0022】ユーザがメーラ25により異常対応メールを受信して(S31)、これを開いたとき、図6に示すように電池劣化状態データを表示した電池寿命評価結果画面が携帯型パソコン2のディスプレイ上に表示される(S32)。ユーザは劣化状態の判断から電池電源装置3の交換を希望するときには、電池寿命評価結果画面中の「交換案内画面へ」のボタンをクリックすると、図7に示すような交換案内メッセージが表示されるので(S33)、価格や各表示事項を確認して「注文画面へ」のボタンをクリックすると、図8に示すような受注処理画面が表示される(S34)。ユーザは受注処理画面中の各入力欄に注文事項を入力して(S35)、「注文」ボタンをクリックすると、注文メールがメーラ25からメールサーバ21に送信される(S36)。」
によれば、引用文献1にいう二次電池の劣化判定とは、寿命到来時期に至ったか否かを判定していることは明らかであり、そのような劣化判定の結果、劣化していることを異常と称しているに過ぎない。
また、引用文献1の上記段落0003に「二次電池の充放電を繰り返したときの劣化特性は充電条件や放電条件に依存するため、電池電源装置を使用する機器の条件で寿命を判定する必要がある。また、二次電池の性能のばらつきやユーザの使用状態によっても寿命に差が生じる。例えば、二次電池を満充電の状態で高温環境下に放置するとサイクル使用したのと同じように容量の低下を来す。」と記載されているように、温度等の条件が二次電池の劣化に関係することが記載されているから、「消費レベル指数」を考慮することは引用文献1に示唆されていることである。
よって、請求人の主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-09 
結審通知日 2010-06-15 
審決日 2010-06-28 
出願番号 特願2002-60485(P2002-60485)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 緑川 隆杉藤 泰子  
特許庁審判長 江嶋 清仁
特許庁審判官 安久 司郎
圓道 浩史
発明の名称 バッテリ監視システム  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  
代理人 倉地 保幸  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ