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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1221985
審判番号 不服2008-14710  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-12 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 特願2005-356191「媒体処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日出願公開、特開2006- 76797〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成11年3月29日に出願した特願平11-87292号の一部を平成17年12月9日に新たな特許出願としたものであって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】操作者が媒体をセットするステージと、
前記ステージにセットされた媒体を挟んで搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対による媒体搬送方向に対して、前記ステージの左右両側の少なくとも一方に設けられた基準面と、
前記ステージにセットされた媒体を挟み前記基準面方向に向かって回転して前記媒体を前記基準面方向に搬送する幅寄せローラ対と、
前記搬送ローラ対の一方の搬送ローラを、媒体を他方の搬送ローラに押し付ける位置からステージから退避する位置まで移動させる搬送ローラ移動手段と、
前記幅寄せローラ対の一方の幅寄せローラを、媒体の他方の幅寄せローラに押し付ける位置からステージから退避する位置まで移動させる幅寄せローラ移動手段と、
前記他方の搬送ローラ及び、前記他方の幅寄せローラとの間で駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、
前記駆動力伝達手段に駆動力を与える駆動手段と、
前記駆動手段からの駆動力の伝達経路を、前記他方の搬送ローラか前記他方の幅寄せローラかのどちらかに切り替える駆動力切替手段とを設け、
前記搬送ローラ移動手段により、前記一方の搬送ローラを前記ステージから退避する位置まで移動すると、前記駆動力切替手段により、前記切り替えを行い、
前記幅寄せローラ移動手段により、前記一方の幅寄せローラが前記媒体を前記他方の幅寄せローラに押し付ける位置に移動させることを特徴とする媒体処理装置。」

2.引用発明

これに対して、当審の拒絶理由に引用された特開昭62-21650号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

a.「1.印字部に向けて用紙を挟持して送り出す送りローラを設け、この送りローラに前記用紙を案内する案内通路を設け、この案内通路に前記送りローラに前記用紙を導入する案内ローラを設け、前記送りローラと前記案内ローラとの間に、圧接部材との間で前記用紙を挟持して側方の基準面に幅寄せする幅寄せローラを前記用紙の送り方向と平行な軸心をもつて配列したことを特徴とする事務機の用紙案内装置。
2.案内ローラと幅寄せローラとをベベルギヤにより連結したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の事務機の用紙案内装置。」(第1頁左欄第5行?第16行)

b.「第二の発明は、力ム26により揺動体21を往復回動させ、これにより案内ローラ16への補助案内ローラ17の接触と、幅寄せローラ18への圧接部材19の接触とを交互に行い、用紙3の進行と幅寄せとをタイミングを分けて小刻みに行う。第三の発明は、力ム26により揺動体21に無理な力が作用する状態を回避する。」(第2頁右下第2行?第8行)

c.「筐体1には用紙3を送りローラ13,14に導く案内通路15が設けられ、この案内通路15には案内ローラ16と、補助案内ローラ17と、幅寄せローラ18と、圧接部材である補助幅寄せローラ19と、案内ローラ16と平行な支軸20を支点として回動する揺動体21とが設けられている。この揺動体21の両側端には腕部22が立設され、これらの腕部22に架設した軸23には前記補助案内ローラ17と端部に位置するローラ24とが回転自在に保持されている。また、筐体1内に設けた側板35に回転自在に保持した軸25には、前記案内ローラ16とカム26とベベルギヤ27とが固定され、このベベルギヤ27に噛合するベベルギヤ28と前記幅寄せローラ18とを固定した軸29が軸受30に支承されている。この軸29は用紙3の送り方向と平行である。一方の側板35の内面には第4図に示すように用紙3の側縁を揃える基準面31が形成されている。他方の側板35にはモータ(図示せず)に駆動されるギヤ32が回転自在に保持され、このギヤ32に噛合するギヤ33が案内ローラ16の軸25の端部に固定されている。前記送りローラ13の端部にもモータに駆動されるギヤ34が固定されている。」(第3頁左上欄第7行?右上欄第10行)

d.「印字操作を行なうと給紙ローラ4が一定角度回転しカセットケース2から用紙3を引き出すとともに、案内ローラ16が駆動され、この回転はベベルギヤ27,28により幅寄せローラ18に伝達される。用紙3は案内通路15に案内され、案内ローラ16と補助案内ローラ17とに挟持されて進行する。この過程で用紙3が幅寄せローラ18と補助幅寄せローラ19とに挟持されて基準面31に向けて幅寄せされる。このとき、案内ローラ16とともに回転するカム26はそのハイパートによりローラ24を押し、支軸20を支点として揺動体21を用紙3の送り方向にそって往復回動させる。したがって、第1図に示すように、案内ローラ16と補助案内ローラ17とが用紙3を挟持するときは幅寄せローラ18から補助幅寄せローラ19が離反し、第2図に示すように、幅寄せローラ18と補助幅寄せローラ19とが用紙3を挟持するときは案内ローラ16から補助案内ローラ17が離反する。したがって、用紙3は送りローラ13,14方向への進行と幅寄せとが小刻みに交互に行なわれる。しかも1幅寄せローラ18と補助幅寄せローラ19とは用紙3の送り方向と平行な軸心をもって回転するため搬送力が強い。したがって、用紙3の側縁を基準面31により奇麗に揃えることができる。」(第3頁右上第11行?左下欄第16行)

上記記載c.,d.及び図面より、モータからの駆動力が、ギヤ32,ギヤ33,軸25を介して、案内ローラ16に伝達され、さらにベベルギヤ27、ベベルギヤ28、軸29を介して、幅寄せローラ18にも伝達されることが理解される。

上記記載と図面から、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「案内通路の用紙を挟んで搬送する搬送ローラ及び補助搬送ローラと、
前記搬送ローラ及び補助搬送ローラによる用紙搬送方向に対して、案内通路の左右両側の一方に設けられた基準面と、
前記用紙を挟み前記基準面方向に向かって回転して前記用紙を前記基準面方向に搬送する幅寄せローラと補助幅寄せローラと、
補助案内ローラを、用紙を案内ローラに押し付ける位置から案内通路から退避する位置まで移動させ、また、補助幅寄せローラを、用紙の幅寄せローラに押し付ける位置から案内通路から退避する位置まで移動させる揺動体と、
前記案内ローラ及び、前記幅寄せローラとの間で駆動力を伝達するベベルギヤ、ギヤ、軸と、
前記ベベルギア、ギヤ、軸に駆動力を与えるモーターとを設け、
前記揺動体により、前記補助案内ローラを前記案内通路から退避する位置まで移動すると、前記補助幅寄せローラが前記用紙を前記幅寄せローラに押し付ける位置に移動する用紙案内装置。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「用紙」、「案内ローラ及び補助案内ローラ」、「基準面」、「幅寄せローラ及び補助幅寄せローラ」、「補助案内ローラ」、「案内ローラ」、「補助幅寄せローラ」、「幅寄せローラ」、「ベベルギヤ、ギヤ、軸」、「モータ」、「用紙案内装置」は、それぞれ本願発明における「媒体」、「搬送ローラ対」、「基準面」、「幅寄せローラ対」、「一方の搬送ローラ」、「他方の搬送ローラ」、「一方の幅寄せローラ」、「他方の幅寄せローラ」、「駆動力伝達手段」、「駆動手段」、「媒体処理装置」に相当する。

引用発明における「揺動体」は、本願発明における「搬送ローラ移動手段」、「幅寄せローラ移動手段」に相当する。
引用発明における「案内通路」は、本願発明における「ステージ」とは、「案内」という点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明は

「案内にある媒体を挟んで搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対による媒体搬送方向に対して、前記案内の左右両側の少なくとも一方に設けられた基準面と、
前記案内の媒体を挟み前記基準面方向に向かって回転して前記媒体を前記基準面方向に搬送する幅寄せローラ対と、
前記搬送ローラ対の一方の搬送ローラを、媒体を他方の搬送ローラに押し付ける位置から案内から退避する位置まで移動させる搬送ローラ移動手段と、
前記幅寄せローラ対の一方の幅寄せローラを、媒体の他方の幅寄せローラに押し付ける位置から案内から退避する位置まで移動させる幅寄せローラ移動手段と、
前記他方の搬送ローラ及び、前記他方の幅寄せローラとの間で駆動力を伝達する駆動力伝達手段と、
前記駆動力伝達手段に駆動力を与える駆動手段と、
前記搬送ローラ移動手段により、前記一方の搬送ローラを前記案内から退避する位置まで移動すると、
前記幅寄せローラ移動手段により、前記一方の幅寄せローラが前記媒体を前記他方の幅寄せローラに押し付ける位置に移動させる媒体処理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「案内」について、本願発明では「ステージ」であるのに対して、引用発明では「案内通路」である点

相違点2:搬送する媒体(用紙)について、本願発明では「操作者が媒体をセットするステージと、前記ステージにセットした媒体を挟んで搬送」する構成であるのに対して、引用発明では、「案内通路にある用紙(媒体)を挟んで搬送」する構成である点

相違点3:駆動手段からの駆動力を媒体の搬送として伝えるか、幅寄せとして伝えるかの切り替えを行う点について、本願発明では「駆動手段からの駆動力の伝達経路を、他方の搬送ローラか他方の幅寄せローラかどちらかに切り替える駆動力切替手段」を設けているのに対して、引用発明ではそのような手段を設けていない点

4.判断

相違点1について
案内として、操作者が用紙(媒体)をセットする「ステージ」の構成は、「用紙案内装置」(媒体処理装置)の技術分野において周知技術(特開平10-25040号公報、特開平9-40231号公報、特開平5-262442号公報を参照のこと)であり、当該周知技術を引用発明における案内の代わりに用いて、相違点1に係る構成のようにすることは当業者にとり格別な困難性のないものである。

相違点2について
「操作者が媒体をセットするステージと、前記ステージにセットされた媒体を挟んで搬送する」構成は、媒体処理装置の技術分野において周知技術(特開平10-25040号公報、特開平9-40231号公報、特開平5-262442号公報を参照のこと)であり、「用紙案内装置」(媒体処理装置)である引用発明の「案内通路にある媒体を挟んで搬送する」構成の代わりに、当該周知技術を用いて、相違点2に係る構成のようにすることは、当業者にとり格別な困難性のないものである。

相違点3について
引用発明では、揺動体の作用により、用紙に押しつけるローラを補助搬送ローラと補助幅寄せローラのいずれかに切り替えて用紙を挟持することにより、モータの駆動力を用紙の搬送と幅寄せのいずれかに切り替えて伝達しており、用紙の搬送と幅寄せのいずれの場合も、モータの駆動力は案内ローラと幅寄せローラの双方に伝達されている。しかし、モータの駆動力を案内ローラと幅寄せローラとに同時に伝達する必要がないことは明らかであり、用紙の搬送を行うときは搬送ローラのみを駆動し、用紙の幅寄せを行うときは幅寄せローラのみを駆動するように、モータからの駆動力の伝達経路を切り替えるようにすることは、当業者が容易に想到しえたことである。引用発明において、そのような手段を設けていないのは、わざわざ複雑な構成とする必要がないからに過ぎない。

5.結語
以上のとおり、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2010-05-26 
結審通知日 2010-06-01 
審決日 2010-06-29 
出願番号 特願2005-356191(P2005-356191)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 豊英木村 立人島田 信一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 鳥居 稔
谷治 和文
発明の名称 媒体処理装置  
代理人 鈴木 弘一  

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