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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1221989
審判番号 不服2008-20146  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-07 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 特願2005-300517「ゲーム制御プログラム、ゲーム制御方法、及びゲーム装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月26日出願公開、特開2007-105309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年10月14日の出願であって、平成20年2月20付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、同年5月2日付けで手続補正書が提出されたが、同年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年9月2日付けで手続補正がなされたものである。その後、平成22年2月24日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年4月30日に回答書が提出された。

第2 平成20年9月2日付けの手続補正の補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年9月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成20年9月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。
「第1ポイント管理部が、プレイヤーズキャラクタと敵キャラクタとの間の戦闘において、前記プレイヤーズキャラクタ又は前記敵キャラクタの攻撃又は回復を含む所定の行動により消費される第1ポイントの現在値を第1ポイント保持部に格納し、その増減を管理する機能と、
第2ポイント管理部が、前記プレイヤーズキャラクタ及び前記敵キャラクタの体力を示す第2ポイントの現在値を第2ポイント保持部にそれぞれ格納し、それらの増減を管理する機能と、
プレイヤーズキャラクタ制御部が、前記戦闘において、前記プレイヤーズキャラクタの、前記第1ポイントの消費を伴わない通常の行動と、前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を制御する機能と、
敵キャラクタ制御部が、前記戦闘において、前記敵キャラクタの、前記第1ポイントの消費を伴わない通常の行動と、前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を制御する機能と、
をコンピュータに実現させるプログラムにおいて、
前記第2ポイント管理部は、一方のキャラクタが他方のキャラクタを攻撃したときに、その攻撃によるダメージとして、攻撃されたキャラクタの第2ポイントの現在値から所定の値を減じ、
前記第1ポイント管理部は、その攻撃によるダメージに応じて算出された値を前記第1ポイントの現在値に加え、
前記第1ポイント保持部に保持された第1ポイントは、前記プレイヤーズキャラクタと前記敵キャラクタとで共通に使用され、
前記第1ポイント管理部は、前記プレイヤーズキャラクタもしくは前記敵キャラクタのいずれかが前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を実行したときに、その行動により消費される値を前記第1ポイントの現在値から減じ、
前記プレイヤーズキャラクタ制御部又は前記敵キャラクタ制御部は、行動を開始した後、その行動が完了するまでの間に、相手から攻撃を受けた場合、その行動を無効とし、 前記第1ポイント管理部は、前記プレイヤーズキャラクタ又は前記敵キャラクタの前記所定の行動により前記第1ポイント管理部の前記第1ポイントを減じた後に、前記プレイヤーズキャラクタ制御部又は前記敵キャラクタ制御部により前記所定の行動が無効とされた場合、減じられた値を加算して元に戻す
ことを特徴とするプログラム。」

そこで、本願の補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物

引用文献1:有限会社チョップ,ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター コンプリートガイド 初版 WILDARMS the 4th Detonator COMPLETE GUIDE,株式会社エンターブレイン 浜村 弘一,2005年 7月29日,P.102,111,133

引用文献2:電撃PlayStation増刊Vol.301電撃PS2(電撃PlayStationD77), 第11巻 第9号,メディアワークス,2005年 3月25日,第11巻,P.30-31

引用文献3:特開平11-207032号公報

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1a)102頁上段
「バトル
本作のバトルはコマンド入力式だが、7つのHEX(6角形のマス)に区切られたフィールドを使い、HEX単位で移動を行ったりコマンドを実行するユニークなものである。…」
(1b)同頁中段右側の表
「…
(3)行動順番キャラクター名
行動順番がきている仲間の名前が表示される(当審注:「(3)」は黒丸の中に数字の3が白抜きで表示されていることを示す。以下同様)
(4)仲間パラメータ
仲間のHPを数値とゲージで、MPをゲージで表示。…
(5)グローバルフォースゲージ
現在のFPをゲージで表示。左の青いゲージが溜まったゲージ量で、右の赤いゲージは25%区切りで溜まった分が表示される。
(6)行動順番
敵味方キャラクターの、8ターン先までの予想される行動順番が表示される。…
(7)敵パラメータ
敵の名称とHPをゲージで表示
…」
(1c)同頁中段左側には、ゲームの画面が表示されており、画面上には、上記(1b)に対応する表示がなされているようすが見て取れる。
(1d)111頁下段
「バトル FPについて
フォースやコンビネーションアーツ(→P117)を使うのに必要なポイントがFPだ。FPは味方パーティで共有しており、バトル開始時はゼロで、戦闘時の様々な行動に合わせて増減し、最大値は100となっている。FPが増加するのは主に攻撃が成功した時と、敵から攻撃を受けた時、そしてスキルが発動した時だ。…逆にFPが減少するのはFPを必要とするフォースやコンビネーションアーツを使用した時で、25、50、75、100のいずれか消費する。例外として『FPバスター』という敵が使うFPを下げる技を受けても減ってしまう。」
(1e)同頁下段左側?右側の表には、FPが減少する行動と、FPが上昇する行動が記載されており、「ダメージを受ける」という行動に対してFPが4上昇することが示されている。

これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「味方キャラクタと敵キャラクタとの間の戦闘において、味方キャラクタの戦闘時の様々な行動に合わせて増減するFPと、
味方キャラクタ及び敵キャラクタのHPパラメータと、
その行動により規定のFPが減少する行動と、その行動により規定のFPが上昇する行動が存在し、FPが減少する行動として「フォースやコンビネーションアーツを使用する」という行動が含まれており、FPが上昇する行動として「ダメージを受ける」という行動が含まれており、
FPは味方キャラクタ間で共有されており、
味方キャラクタがFPが減少する行動をした時にその行動により規定されるFPの値が、現在の値から減少するゲームをコンピュータに実現させるためのプログラム。」(以下「引用文献1記載の発明」という。)

(2)同じく、上記引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(2a)30頁中段右欄
「武器・防具には耐久力が存在
ゲージに注目!
武器や防具といったアイテムには耐久力が設定されている。耐久力は画面左上の武器アイコンの下に表示され、使用するとゲージが減少。0になると、そのアイテムは壊れて素手に戻る。また耐久力は武器ごとに違い、ゲージの減り方も、攻撃方法や対象の固さなどで変化する。一度耐久力が減少したら、回復は不可能だ。」
(2b)31頁上段右欄
ルール1武器は現地調達!
武器は試合開始時にもらえる場合もあるが、使っていくうちに壊れてしまうので、基本的には現地調達が鉄則だ。敵から奪ったり、木箱や像を壊したりして入手しよう。…強力な武器は、敵に拾われてしまう前に、手に入れるべし。」

(3)同じく、上記引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】 個別の時間属性を有するプレイヤキャラクタと敵キャラクタを表示手段上に表示し、プレイヤキャラクタと敵キャラクタとに攻撃を行わせるビデオゲーム装置において、
戦闘コマンド入力手段と、
攻撃表示画像と応戦表示画像とを格納する画像格納手段と、
前記戦闘コマンド入力を契機としてプレイヤキャラクタと敵キャラクタとで個別に時間計数を開始する計数手段と、
プレイヤキャラクタと敵キャラクタとの座標上の距離を判定する距離判定手段と、
前記計数手段による所定の計数時点で前記プレイヤキャラクタと敵キャラクタとが一定以内の距離に配置されているか否かを判定する判定手段と、
前記判定結果によりプレイヤキャラクタと敵キャラクタとが一定範囲にあるときに前記プレイヤキャラクタと敵キャラクタとの計数時間が一致したときに一方のキャラクタの攻撃表示と他方のキャラクタの応戦表示とを同時に表示し、
プレイヤキャラクタと敵キャラクタとの計数時間が不一致であるときに一方のキャラクタの攻撃表示のみを表示する表示手段とからなるビデオゲーム装置。

【請求項7】 前記プレイヤキャラクタと前記敵キャラクタは、攻撃の魔法を唱える魔法詠唱表示手段を備え、
前記攻撃表示手段は、前記魔法詠唱表示手段により前記攻撃の魔法を詠唱中のキャラクタに接近する魔法妨害処理手段を備え、
前記魔法妨害処理手段により接近した時点で前記武器による攻撃表示を行うことを特徴とする請求項4記載のビデオゲーム装置。」
(3b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオゲーム、特にロールプレイングゲームの表示画面上に表示される戦闘に適応して有効な技術に関する。
【0002】この種のロールプレイングゲームでは、プレイヤキャラクタおよび敵キャラクタに攻撃順を割り付け、この攻撃順に従い一体毎に攻撃を行う戦闘方式が一般的であった。たとえばプレイヤキャラクタに攻撃順が回って来た時に、攻撃方法を選択して入力することによりプレイヤキャラクタが攻撃動作をするようになっている。また攻撃されたキャラクタについては、単に攻撃のダメージが表現されていた。たとえばブリンク、色の変化、変形などで相手の攻撃によるダメージを表現するようになっている。
【0003】しかし、このようなロールプレイングゲームの戦闘では、敵味方が同時に攻撃し合い攻撃されたキャラクタが応戦するというものはなく、臨場感に乏しかった
【0004】本発明はこのような点に鑑みなされたものであり、ロールプレイングゲームにおける戦闘表示に現実感を持たせ、白熱した戦闘シーンを演出することにより飽きることなくプレイできる技術を提供することにある。」
(3c)「【0016】…本発明の第7の手段は、前記第1の手段において、前記プレイヤキャラクタと前記敵キャラクタは、攻撃の魔法を唱える魔法詠唱表示手段を備え、前記攻撃表示手段は、前記魔法詠唱表示手段により前記攻撃の魔法を詠唱中のキャラクタに接近する魔法妨害処理手段を備え、前記魔法妨害処理手段により接近した時点で前記武器による攻撃表示を行うものである。
【0017】攻撃の魔法とは、ロールプレイングゲームでの武器による攻撃と並ぶ攻撃の手段の1つであり、攻撃の魔法を唱えるとは、攻撃の魔法を発するために攻撃の魔法を使えるキャラクタが魔法を唱えることを意味する。すなわち、攻撃魔法を唱えるキャラクタに対して魔法の詠唱中に接近して武器による攻撃表示を行うものである。これにより、攻撃の方法に変化が生ずる。」
(3d)「【0048】
【実施例7】本実施例は、実施例5と同様に、攻撃表示に変化を与えるために行った。すなわち、図3で武器/魔法攻撃方法選定部302は魔法詠唱を選定し、魔法詠唱表示部312は一方のキャラクタに魔法詠唱おディスプレイ4上に表示する。魔法妨害処理部313は、魔法詠唱中のキャラクタへ接近し魔法詠唱の妨害(図8参照)をディスプレイ4上に表示する。
【0049】このような処理は、図4のフロー図にステップ412、413、414、415、416および417を追加することで実現できる。すなわち、魔法詠唱を選定し(ステップ412)、魔法詠唱表示をする(413)。この状態で魔法妨害を選定すると(414)、魔法詠唱キャラクタへ向かって移動表示し(415)、このときの座標値を検出する(416)。座標値から両者の距離が攻撃可能距離以内であるか判定する(417)。
【0050】このように、本実施例によれば、魔法詠唱キャラクタへ接近し詠唱を妨害する一連の動作として表示され、戦闘での攻撃表示に幅を持たせることができるようになった。」

3.対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「味方キャラクタ」は、補正発明の「プレイヤーズキャラクタ」に相当する。
また、引用文献1記載の発明の「FP」と、補正発明の「第1ポイント」とは、ともに、「戦闘時のキャラクタの所定の行動により増減するポイント」であって「複数のキャラクタ間で共通に使用され」る点で共通する。ここで、引用文献1記載の発明の「フォースやコンビネーションアーツを使用するという行動によりFPが減少する」ことは、補正発明の「プレイヤーズキャラクタの攻撃を含む所定の行動により第1ポイントが消費される」ことに相当する。そして、引用文献1記載の発明においてゲームの進行に伴ってFPが増減していることから、該発明が「第1ポイント保持部」及び「第1ポイント管理部」を有していることは明らかである。同様に、引用文献1記載の発明の「HPパラメータ」と、補正発明の「第2ポイント」とは、ともに、「プレイヤーズキャラクタ及び敵キャラクタに関連するポイント」である点で共通する。そして、引用文献1記載の発明が「第2ポイント管理部」及び「第2ポイント保持部」を有していることも明らかである。さらに、該発明がプレイヤーズキャラクタの所定の行動を制御する「プレイヤーズキャラクタ制御部」及び敵キャラクタの所定の行動を制御する「敵キャラクタ制御部」を有することも明らかである。
また、引用文献1記載の発明の「その行動により規定のFPが減少する行動」は補正発明の「第1ポイントの消費を伴う所定の行動」に相当する。
そして、引用文献1記載の発明における「ダメージを受けるという行動により所定のFPが増加する」は、補正発明の「ダメージに応じて算出された値を第1ポイントの現在値に加え」に相当する。

してみると両者は、
「第1ポイント管理部が、プレイヤーズキャラクタと敵キャラクタとの間の戦闘において、戦闘時のキャラクタの攻撃を含む所定の行動により増減する第1ポイントの現在値を第1ポイント保持部に格納し、その増減を管理する機能と、
第2ポイント管理部が、プレイヤーズキャラクタ及び敵キャラクタに関連する第2ポイントを第2ポイント保持部にそれぞれ格納し、それらを管理する機能と、
プレイヤーズキャラクタ制御部が、前記戦闘において、前記プレイヤーズキャラクタの、前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を制御する機能と、
敵キャラクタ制御部が、前記戦闘において、前記的キャラクタの所定の行動を制御する機能と、
をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記第1ポイント管理部は、ダメージに応じて算出された値を第1ポイントの現在値に加え、
前記第1ポイント保持部に保持された第1ポイントは、複数のキャラクタ間で共通に使用され、
前記第1ポイント管理部は、前記キャラクタが前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を実行したときに、その行動により消費される値を前記第1ポイントの現在値から減じるプログラム。」
の点で一致し、次の各点で相違している。
(相違点1)
第1ポイントに関して、補正発明では、該ポイントがプレイヤーズキャラクタと敵キャラクタとで共通に使用され、プレイヤーズキャラクタ、敵キャラクタともに、戦闘において該ポイントの消費を伴わない通常の行動が存在するのに対して、引用文献1記載の発明では、該ポイントはプレイヤーズキャラクタ間でのみ共通に使用され、戦闘において該ポイントの消費を伴わない通常の行動が存在するかどうか不明な点。
(相違点2)
第2ポイントに関して、補正発明では、該ポイントがキャラクタの体力を示し、それらが増減するとともに、一方のキャラクタが他方のキャラクタを攻撃したときに、その攻撃によるダメージとして、攻撃されたキャラクタの第2ポイントの現在値から所定の値を減じるのに対して、引用文献1記載の発明では、該ポイントがキャラクタのどの属性を示し、増減するかどうかが不明な点。
(相違点3)
補正発明では、前記プレイヤーズキャラクタ制御部又は前記敵キャラクタ制御部は、行動を開始した後、その行動が完了するまでの間に、相手から攻撃を受けた場合、その行動を無効とし、前記第1ポイント管理部は、前記プレイヤーズキャラクタ又は前記敵キャラクタの前記所定の行動により前記第1ポイント管理部の前記第1ポイントを減じた後に、前記プレイヤーズキャラクタ制御部又は前記敵キャラクタ制御部により前記所定の行動が無効とされた場合、減じられた値を加算して元に戻すのに対して、引用文献1記載の発明では、そのような機能を有していない点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
敵味方間で戦闘を行う形式のゲームにおいて、武器や陣地等を相手に奪われたり、取り返したりするなどして、戦闘に用いる要素を敵味方間で共通に使用することは、ごく普通に行われている事項である(上記引用文献2の各摘記事項参照)。また、どのような行動や属性にどのようなポイント(パラメータ)を対応させるかは、対応の有無やポイントの増減も含めて、ゲームのルールを設定する際に、ゲームの特性や難易度等を考慮して、当業者が適宜決定しうる事項である。してみると、相違点1に係る構成を引用文献1記載の発明に適用する点に、格別の困難性はない。
(相違点2について)
上記(相違点1について)で述べたとおり、どのような行動や属性にどのようポイント(パラメータ)を対応させるかは、対応の有無やポイントの増減も含めて、ゲームのルールを設定する際に、ゲームの特性や難易度等を考慮して、当業者が適宜決定しうる事項である。したがって、引用文献1記載の発明に、相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である、
(相違点3について)
行動を開始した後、その行動が完了するまでの間に、相手から攻撃を受けた場合、その行動を無効とするかどうかは、一義的にはゲームのルールに由来するものであるが、そのようなルール(上記引用文献3の各摘記事項参照)を採用し、その制御を各キャラクタ制御部に負わせることに、格別の困難性はない。
また、所定の行動が無効とされた場合、ポイントの扱いをどうするかも、一義的にはそのゲームのルールに由来するものであるが、一般的に、所定の行動に対する対価を前払いで授受したり、当該行動が達成されなかった場合に対価を返却したりすることは、種々の分野において広く行われている事項であるから、相違点3に係る事項を引用文献1記載の発明に採用することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、補正発明全体の効果も、引用文献1及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、補正発明は、引用文献1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成20年9月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成20年5月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「第1ポイント管理部が、プレイヤーズキャラクタと敵キャラクタとの間の戦闘において、前記プレイヤーズキャラクタ又は前記敵キャラクタの攻撃又は回復を含む所定の行動により消費される第1ポイントの現在値を第1ポイント保持部に格納し、その増減を管理する機能と、
第2ポイント管理部が、前記プレイヤーズキャラクタ及び前記敵キャラクタの体力を示す第2ポイントの現在値を第2ポイント保持部にそれぞれ格納し、それらの増減を管理する機能と、
プレイヤーズキャラクタ制御部が、前記戦闘において、前記プレイヤーズキャラクタの、前記第1ポイントの消費を伴わない通常の行動と、前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を制御する機能と、
敵キャラクタ制御部が、前記戦闘において、前記敵キャラクタの、前記第1ポイントの消費を伴わない通常の行動と、前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を制御する機能と、
をコンピュータに実現させるプログラムにおいて、
前記第2ポイント管理部は、一方のキャラクタが他方のキャラクタを攻撃したときに、その攻撃によるダメージとして、攻撃されたキャラクタの第2ポイントの現在値から所定の値を減じ、
前記第1ポイント管理部は、その攻撃によるダメージに応じて算出された値を前記第1ポイントの現在値に加え、
前記第1ポイント保持部に保持された第1ポイントは、前記プレイヤーズキャラクタと前記敵キャラクタとで共通に使用され、
前記第1ポイント管理部は、前記プレイヤーズキャラクタもしくは前記敵キャラクタのいずれかが前記第1ポイントの消費を伴う前記所定の行動を実行したときに、その行動により消費される値を前記第1ポイントの現在値から減じることを特徴とするプログラム。」(以下「本願発明」という。)

1.引用刊行物
原査定に引用され、本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2の2.」に記載したとおりである。

2.対比
本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から「前記プレイヤーズキャラクタ制御部又は前記敵キャラクタ制御部は、行動を開始した後、その行動が完了するまでの間に、相手から攻撃を受けた場合、その行動を無効とし、前記第1ポイント管理部は、前記プレイヤーズキャラクタ又は前記敵キャラクタの前記所定の行動により前記第1ポイント管理部の前記第1ポイントを減じた後に、前記プレイヤーズキャラクタ制御部又は前記敵キャラクタ制御部により前記所定の行動が無効とされた場合、減じられた値を加算して元に戻す」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定したものに相当する補正発明が、前記「第2の4.」に記載したとおり、引用文献1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-09 
結審通知日 2010-06-15 
審決日 2010-06-30 
出願番号 特願2005-300517(P2005-300517)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 岡田 吉美
村田 尚英
発明の名称 ゲーム制御プログラム、ゲーム制御方法、及びゲーム装置  
代理人 青木 武司  
代理人 森下 賢樹  
代理人 村田 雄祐  
代理人 三木 友由  

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