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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1221998
審判番号 不服2008-28418  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-06 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 特願2002-285287「印刷物とそれを用いた包装材料」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月15日出願公開、特開2004-114654〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年9月30日に出願したものであって、平成20年9月10日付けで手続補正がなされ、同年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月4日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
その後、平成21年12月24日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成22年3月2日に回答書が提出された。

2.本願発明
本願請求項1?7に係る発明は、平成20年12月4日付け手続補正で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「加飾を目的とする印刷層を有する基材上に撥液性を有するニス層を設け少なくとも該撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニス層を設ける印刷物であって、撥液性を有するニス層が基材上に部分的に設けられており、該撥液性を有するニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニスが平滑に塗布された部分と、撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型ハイグロスニスが斑点状に凝集している部分があり、該撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型ハイグロスニスが斑点状に凝集している部分の光沢度の差が、40から80であり、該印刷層を構成するインキが紫外線効果型インキであり、該撥液性を有するニス層が、紫外線硬化型タイプのニスからなることを特徴とする印刷物。」
なお、上記請求項1には「紫外線硬化型グロスニス」及び「紫外線硬化型ハイグロスニス」という記載があるが、いずれも同じものを意味していることは明らかである。また、本願の発明の詳細な説明の項において、特許請求の範囲に対応する段落【0006】?【0022】及び【0036】?【0042】には、特許請求の範囲と同様「紫外線硬化型グロスニス」及び「紫外線硬化型ハイグロスニス」という記載が混在しているが、発明の実施の形態及び実施例を示す段落【0027】?【0035】には、「紫外線硬化型グロスニス」という記載はあるが、「紫外線硬化型ハイグロスニス」という記載はない。よって、「紫外線硬化型ハイグロスニス」は、「紫外線硬化型グロスニス」の誤記と認められる。
また、「印刷層を構成するインキが紫外線効果型インキであり」とあるが、これは、「印刷層を構成するインキが紫外線硬化型インキであり」の誤記と認められる。

3.進歩性について
(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-278354号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.【請求項1】 素材上に部分的又は全面に塗設した下塗りインキ又は塗料、並びに該インキ又は塗料上に該インキ又は塗料が乾燥又は未乾燥状態で塗設した電子線又は紫外線硬化型上塗りクリアー塗料を、電子線又は紫外線照射により硬化せしめて該インキ又は塗料を塗設した部分に凹凸模様を形成した印刷塗工物において、該下塗りインキ又は塗料の表面張力が該電子線又は紫外線硬化型上塗りクリアー塗料の表面張力より小さいことを特徴とする凹凸模様を有する表面加工印刷塗工物。
イ.【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする問題点】表面に凹凸模様を有する化粧面を作製する方法としては、例えば、フタル酸ジエステルを配合した印刷インキを基材の特定部分にのみ印刷し、更に不飽和ポリエステルを塗布し、印刷部と樹脂成分とのハジキ現象を利用して印刷部分に凹部を形成する方法(特開昭48-58068号)及び電子線又は光硬化型塗料に対する濡れ易さが素材表面とは異なる塗装面を模様状に素材表面に形成し、更に電子線硬化型塗料又は不飽和ポリエステル樹脂系光硬化型塗料を塗布して、濡れ易い部分を陥没させ、濡れ難い部分を隆起させ、次いで電子線又は光照射により形成された凹凸面をそのまま硬化させる方法(特公昭51-26937号)等が知られている。
ウ.【0007】以下本発明に係る凹凸模様を有する表面加工印刷塗工物を更に詳しく説明する。本発明においては、図1に示す如く、凹凸模様5を形成する下塗りインキ又はクリアー塗料2を塗工した部分の全面における表面張力が上塗りクリアー塗料3の表面張力に対して小さければよく、表面張力の差が大きいほど良好な凹凸模様が得られるので好ましい。上記構成とすることにより、下塗りインキ又はクリアー塗料2を塗工した部分の上面部全面に、均一で美麗な凹凸模様を形成することが可能となる。本発明において使用できる素材1としては、紙の他に合板,パーティクルボード,金属板,プラスチックフィルム等がある。
【0008】本発明において使用される下塗りインキ又は、クリアー塗料(ワニス)2としては、アクリル酸及びそのエステル,メタアクリル酸及びそのエステル,スチレン,エチレン,酢酸ビニール,塩化ビニール等のモノマーを1?4種類を混合、重合した樹脂,塩素化ポリプロピレン樹脂,塩化ゴム,飽和ポリエステル樹脂を単独又は2?4種類混合したものをトルエン,キシレン,酢酸エチル,酢酸メチル,酢酸nプロピル,酢酸イソプロピル,酢酸ブチル,酢酸イソブチル,アセトン,キシレン,酢酸メチル,イソプロピルアルコール,エタノール等の低沸点及び中沸点,溶剤に溶解したクリアー塗料(ワニス)。又は、水及びアルコールを単独又は混合した溶媒に溶解又は分散したクリアー塗料(ワニス)に表面張力が30ダイン以下で有機溶剤又は、水及びアルコールに可溶又は分散可能な炭化水素化合物,シリコーン化合物,フッ素化合物等の撥油剤を1?20重量%、好ましくは2?15重量%添加した特殊クリアー塗料が挙げられる。撥油剤の重量%が1重量%未満であると均一な凹凸模様5が得難く、20重量%を超えると下塗りインキ又はクリアー塗料(ワニス)2と上塗りクリアー塗料3との密着性が悪くなる。上記下塗りインキ又は、クリアー塗料(ワニス)2の塗工後の表面張力が30ダイン以下であることが好ましく、更には上塗りクリアー塗料3との表面張力の差が3ダインあればよい。
エ.【0023】本発明の凹凸模様5は、凸部分5aは上塗りクリアー塗料3により形成され艶がでているが、凹部分5bは、ハジキにより多少上塗りクリアー塗料3が残っているか、全く残っていない為に艶がでておらず現在使われている艶出し加工後の型押しによる凹凸模様とは違った美麗な凹凸模様5を形成することができる。又下塗りクリアー塗料2を部分的に施すことによりその部分的に施された下塗り部分上の上塗りクリアー塗料3は、凹凸模様5となり、下塗りクリアー塗料2の施されていない上塗りクリアー塗料3は平滑な光沢を有している為この凹凸面と平滑面との相違により平滑面が浮き出して見え、現在使われている紙等の部分的な浮き出しとは違った美麗な立体模様が形成される。

上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「素材上に部分的に塗設した下塗りインキ又は塗料、並びに該インキ又は塗料上に紫外線硬化型上塗りクリアー塗料を、紫外線照射により硬化せしめて該インキ又は塗料を塗設した部分に凹凸模様を形成した凹凸模様を有する表面加工印刷塗工物であって、
下塗りインキ又は塗料は、水及びアルコールを単独又は混合した溶媒に溶解又は分散したクリアー塗料(ワニス)に表面張力が30ダイン以下で有機溶剤又は、水及びアルコールに可溶又は分散可能な炭化水素化合物,シリコーン化合物,フッ素化合物等の撥油剤を添加した特殊クリアー塗料であって、
下塗りクリアー塗料2を部分的に施すことによりその部分的に施された下塗り部分上の上塗りクリアー塗料3は、凹凸模様5となり、凹凸模様5は、凸部分5aは上塗りクリアー塗料3により形成され艶がでているが、凹部分5bは、ハジキにより多少上塗りクリアー塗料3が残っているか、全く残っていない為に艶がでておらず、下塗りクリアー塗料2の施されていない上塗りクリアー塗料3は平滑な光沢を有している
凹凸模様を有する表面加工印刷塗工物。」(以下「引用発明」という。)

(2)対比
a.本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「素材」及び「表面加工印刷塗工物」は、それぞれ本願発明の「基材」及び「印刷物」に相当する。
b.引用発明の「下塗りインキ又は塗料」は、「水及びアルコールを単独又は混合した溶媒に溶解又は分散したクリアー塗料(ワニス)に表面張力が30ダイン以下で有機溶剤又は、水及びアルコールに可溶又は分散可能な炭化水素化合物,シリコーン化合物,フッ素化合物等の撥油剤を添加した特殊クリアー塗料」であって、クリアー塗料(ワニス)に撥油剤が添加されているから、該特殊クリアー塗料がなす層を撥液性を有するニス層ということができる。
c.引用発明の「上塗りクリアー塗料」は「紫外線硬化型」であり、「平滑な光沢を有している」から、「上塗りクリアー塗料」がなす層を紫外線硬化型グロスニス層ということができる。
d.引用発明は、「下塗りクリアー塗料2を部分的に施すことによりその部分的に施された下塗り部分上の上塗りクリアー塗料3は、凹凸模様5となり、凹凸模様5は、凸部分5aは上塗りクリアー塗料3により形成され艶がでているが、凹部分5bは、ハジキにより多少上塗りクリアー塗料3が残っているか、全く残っていない為に艶がでておらず、下塗りクリアー塗料2の施されていない上塗りクリアー塗料3は平滑な光沢を有している」ものであるから、撥液性を有するニス層が基材上に部分的に設けられており、該撥液性を有するニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニスが平滑に塗布された部分と、撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分があるものといえる。
e.以上より、本願発明と引用発明は、
「基材上に撥液性を有するニス層を設け少なくとも該撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニス層を設ける印刷物であって、撥液性を有するニス層が基材上に部分的に設けられており、該撥液性を有するニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニスが平滑に塗布された部分と、撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分がある印刷物。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明は、基材上に「加飾を目的とする印刷層を有する」と特定され、「印刷層を構成するインキが紫外線硬化型インキであり」と特定されているのに対し、引用発明は、素材(基材)上に印刷層が設けられているのか否か明らかでない点。
[相違点2]本願発明は、「撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分の光沢度の差が、40から80であり」と特定されているのに対し、引用発明は、凸部分5aは上塗りクリアー塗料3により形成され艶がでているが、凹部分5bは、ハジキにより多少上塗りクリアー塗料3が残っているか、全く残っていない為に艶がでておらず、下塗りクリアー塗料2の施されていない上塗りクリアー塗料3は平滑な光沢を有しているものの、光沢度の差が明らかではない点。
[相違点3]本願発明は、「撥液性を有するニス層が、紫外線硬化型タイプのニスからなる」と特定されているのに対し、引用発明は、特殊クリアー塗料(撥液性を有するニス)がなす層を有するものの、紫外線硬化型タイプであるか否か明らかでない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
刊行物1のイに、「表面に凹凸模様を有する化粧面を作製する方法としては」と記載されているように、引用発明は、化粧面の作成を意図とするものである。また、化粧面を作成する際、基材と撥液性を有する層の間に印刷層を設けることは周知技術(特開昭48-58068号公報、第2頁右下欄第1?3行参照。「原紙」、「ぼかし印刷」及び「特殊インク」が、それぞれ本願発明の「基材」、「印刷層」及び「撥液性を有する層」に相当する。特開平7-237286号公報、「ベース基材1」、「べたインキ層2及び絵柄インキ層3」及び「撥液性インキ4」が、それぞれ本願発明の「基材」、「印刷層」及び「撥液性を有する層」に相当する。特開平11-207920号公報、「着色ポリエステル樹脂フィルム2」、「ベタ印刷層3及び絵柄印刷層4」及び「撥液絵柄層5」が、それぞれ本願発明の「基材」、「印刷層」及び「撥液性を有する層」に相当する。)であり、化粧面を作成するものである以上、その印刷層は加飾を目的とするものといえるから、引用発明に該周知技術を適用し、基材と撥液性を有する層の間に加飾を目的とする印刷層を設け、基材上に「加飾を目的とする印刷層を有する」との構成にすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
なお、「印刷層を構成するインキが紫外線硬化型インキであり」の点については、後記相違点3についての検討でまとめて検討する。

上記相違点2について検討する。
引用発明は、「下塗りクリアー塗料2を部分的に施すことによりその部分的に施された下塗り部分上の上塗りクリアー塗料3は、凹凸模様5となり、凹凸模様5は、凸部分5aは上塗りクリアー塗料3により形成され艶がでているが、凹部分5bは、ハジキにより多少上塗りクリアー塗料3が残っているか、全く残っていない為に艶がでておらず、下塗りクリアー塗料2の施されていない上塗りクリアー塗料3は平滑な光沢を有している」ものであり、下塗りクリアー塗料2の施された凹凸模様5のある部分と下塗りクリアー塗料2の施されていない平滑な光沢を有する部分とは光沢差のあるものである。また、本願明細書の従来技術として例示された特開平9-52430号公報の【0002】に「従来、カートン等の紙器パーケージの印刷において、光沢の差を利用したデザインを印刷する場合、次の様な方法により印刷を行っていた。」と記載されているように、光沢の差を利用した印刷が求められているところ、引用発明の「特殊クリアー塗料」と「紫外線硬化型上塗りクリアー塗料」として十分光沢差のあるものを選択し、凹凸模様と平滑面という形状の違いによっても光沢差を設け、本願発明の上記相違点2のようなものとすることは設計事項に過ぎないものである。

上記相違点3について検討する。
印刷層、ニス層をいずれも紫外線硬化型タイプのものとすることは周知技術(特開平9-52430号公報の段落【0007】、特開平7-237286号公報の段落【0009】、【0010】、特開昭62-290573号公報の第2頁左下欄第9行?右下欄第15行、特開平4-259586号公報の特許請求の範囲、特開平10-236483号公報の段落【0079】?【0081】参照。)である。
基材上に「加飾を目的とする印刷層を有する」との構成にすることが想到容易であることは上記相違点1の検討で既に検討済みであり、その際、上記周知技術を採用し、印刷層を構成するインキが紫外線硬化型インキであり、撥液性を有するニス層が、紫外線硬化型タイプのニスからなるものとすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

以上のとおりであるから、本願発明の相違点に係る特定は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。

4.同一性について
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2001-388365号(特開2003-181370号公報参照。)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

オ.【0012】本発明の凹凸感を有するマット加工印刷物の加工方法において使用できる基材1としては、板紙を主とする紙、プラスチックシート、板類、金属板などがある。
【0013】まず、基材1の表面に設けられる印刷層2は、絵柄、表示などが印刷された層であり、公知の電子線または紫外線硬化型インキを使用したオフセット印刷(平版印刷)で設けられ、つぎの下刷り層3との密着性の良いインキを選定する。
【0014】つぎに、印刷層2の表面に部分的あるいは全面に下刷り層3が設けられる。この下刷り層3は印刷層2の全面に設けることもできるが、部分的に設けることによって、下刷り層3が設けられた上に設けられた部分でオーバーコート層4を形成するためのコーティング剤がはじかれて凹凸感を有するマット加工部分となり、艶加工部分とマット加工部分との両部分を有し、両部分の対比が著しい独特な印刷加工物とすることができる。この下刷り層3も、オフセット印刷(平版印刷)で設けられる。
【0015】下刷り層3に使用するインキも、電子線または紫外線硬化型インキであり、少なくともポリマー、モノマー、光重合開始剤を混合した主剤に、ポリエチレンワックス、反応性シリコーンを助剤として主剤に対して0?10重量%加えたものを使用する。この下刷り層3は、基材1上に乾燥膜圧で約1?10g/m^(2)となるような量で設けることが好ましい。印刷層2と下刷り層3を設けた後、電子線又は紫外線照射により硬化させた後、同一工程でオーバーコート層4が設けられる。
カ.【0020】最後に、オーバーコート層4が設けられる。このオーバーコート層4は、コーティングによって設けられるが、オフセット印刷機の最終ユニットに設置されたコーターユニットで行なうことができる。
【0021】このオーバーコート層4に使用するコーティング剤は、電子線または紫外線硬化型のコーティング剤であり、下刷り層3の上にコーティングされた場合に、ハジキ現象を生じるものであれば特に制限はなく、この目的に合致したコーティング剤を適宜選択すればよい。このような電子線または紫外線硬化型のコーティング剤としては、下刷り層3に使用するインキの主剤と同様に、少なくともポリマー、モノマー、光重合開始剤を混合したものである。さらに、これに助剤として表面調整剤を加えたものを使用することができる。表面調整剤としては、セルロース系のレベリング剤および天然ワックス系の滑剤などがある。このオーバーコート層4は、硬化後の膜厚で約3?20g/m^(2)となるような量で設けることが好ましい。
キ.【0025】
【実施例】基材1に板紙(コートボール310g/m2)を用いて、最終ユニットにUVコーターユニットDの設置されたオフセット印刷機Pにより一工程で凹凸感を有するマット加工印刷物の加工を行った。
【0026】まず、印刷層2である絵柄の印刷は、フィーダーAから供給された基材1に印刷ユニットBにおいて5色を印刷する。インキは、下記の組成のUVカルトンインキ((株)インクテック社製)を使用した。
有機顔料 15?25重量%
感光性樹脂 40?50重量%
感光性モノマー 15?25重量%
光重合開始剤 5?10重量%
【0027】つぎに、下刷り層3の印刷は、印刷ユニットBの6色目で行い、インキは、下記の組成のUVハクリOPニスUP-2(T&K TOKA社製)を使用した。この印刷層2と下刷り層3の印刷の後、紫外線照射装置Cを用いて乾燥硬化させた。
ポリエステル樹脂 15?25重量%
アクリルエステルオリゴマーモノマー 50?75重量%
光開始剤 5?10重量%
ポリエチレンワックス 1?2重量%
反応性シリコーン 2?3重量%
【0028】つづいて、オーバーコート層4の加工は、最終ユニットのUVコーターユニットDで行い、コーティング剤としては、下記の組成のUVクリヤーコートニス((株)インクテック社製)を使用した。このオーバーコート層4の加工後、紫外線照射装置Eを用いて乾燥硬化させた。
感光性樹脂 45?55重量%
感光性モノマー 15?25重量%
光重合開始剤 5?10重量%
添加剤 5重量%未満

上記記載及び図面を含む先願明細書全体の記載から、先願明細書には、以下の発明が開示されていると認められる。
「基材1の表面に設けられる印刷層2は、絵柄、表示などが印刷された層であり、紫外線硬化型インキを使用したオフセット印刷(平版印刷)で設けられ、
印刷層2の表面に下刷り層3を部分的に設けることによって、下刷り層3が設けられた上に設けられた部分でオーバーコート層4を形成するためのコーティング剤がはじかれて凹凸感を有するマット加工部分となり、艶加工部分とマット加工部分との両部分を有し、両部分の対比が著しい独特な印刷加工物とすることができるものであり、
印刷層2に使用するインキは、UVカルトンインキを使用し、
下刷り層3に使用するインキは、紫外線硬化型インキであり、ポリマー、モノマー、光重合開始剤を混合した主剤に、ポリエチレンワックス、反応性シリコーンを助剤として主剤に対して0?10重量%加えたものであって、UVハクリOPニスUP-2を使用し、
最後に、オーバーコート層4が設け、オーバーコート層4に使用するコーティング剤は、紫外線硬化型のコーティング剤である、UVクリヤーコートニスを使用し、下刷り層3の上にコーティングされた場合に、ハジキ現象を生じるものである
凹凸感を有するマット加工印刷物」(以下「先願発明」という。)

(2)対比
a.本願発明と先願発明とを比較すると、先願発明の「基材1」、「『絵柄、表示などが印刷された層』である『印刷層2』」、「『ポリエチレンワックス、反応性シリコーンを助剤として主剤に対して0?10重量%加えた』『UVハクリOPニスUP-2』を使用した『下刷り層3』」、「『紫外線硬化型のコーティング剤』である『UVクリヤーコートニス』を使用した『オーバーコート層4』」及び「マット加工印刷物」は、それぞれ本願発明の「基材」、「加飾を目的とする印刷層」、「撥液性を有するニス層」、「紫外線硬化型グロスニス層」及び「印刷物」に相当する。
b.引用発明は、「印刷層2の表面に下刷り層3を部分的に設けることによって、下刷り層3が設けられた上に設けられた部分でオーバーコート層4を形成するためのコーティング剤がはじかれて凹凸感を有するマット加工部分となり、艶加工部分とマット加工部分との両部分を有」するものであるから、撥液性を有するニス層が基材上に部分的に設けられており、該撥液性を有するニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニスが平滑に塗布された部分と、撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分があるものといえる。
c.以上より、本願発明と先願発明は、
「加飾を目的とする印刷層を有する基材上に撥液性を有するニス層を設け少なくとも該撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニス層を設ける印刷物であって、撥液性を有するニス層が基材上に部分的に設けられており、該撥液性を有するニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニスが平滑に塗布された部分と、撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分があり、該印刷層を構成するインキが紫外線硬化型インキであり、該撥液性を有するニス層が、紫外線硬化型タイプのニスからなる印刷物。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。
[相違点4]本願発明は、「撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分の光沢度の差が、40から80であり」と特定されているのに対し、先願発明は、艶加工部分とマット加工部分との両部分を有し、両部分の対比が著しい独特な印刷加工物であるものの、光沢度の差が明らかではない点。

(3)判断
上記相違点4について検討する。
先願発明は、「艶加工部分とマット加工部分との両部分を有し、両部分の対比が著しい独特な印刷加工物」であるから、艶加工部分とマット加工部分との両部分の光沢度の差が著しいものであることは明らかであり、具体的に光沢度の差をどの程度にするかは、設計上の微差に過ぎず、実質的に相違しない。

5.むすび
以上3のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、以上4のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一とも認められないので本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-09 
結審通知日 2010-06-15 
審決日 2010-06-28 
出願番号 特願2002-285287(P2002-285287)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 裕美子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 野村 伸雄
菅野 芳男
発明の名称 印刷物とそれを用いた包装材料  

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