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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1222061
審判番号 不服2007-34307  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-20 
確定日 2010-08-19 
事件の表示 特願2001-355596「本人確認装置、本人確認システム、カード発行装置及びカード発行システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月30日出願公開、特開2003-157332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年11月21日の出願であって、平成19年6月4日付けで拒絶理由通知がなされ、同年8月8日付けで手続補正がなされたが、同年11月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年1月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年1月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年1月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項7に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項7は、
「少なくとも1つの認証装置からの被発行者の本人認証結果に基づいて、その被発行者の本人確認機能を備えたカード発行装置において、
上記被発行者によって、予め設定された又はカード発行者側によって設定された2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報を取りこむ本人特定情報入力手段と、
上記本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かをそれぞれ判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する上記認証装置に与える情報判定手段と、
上記認証装置からの上記被発行者の本人認証結果に基づいて、上記被発行者にカードを発行するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段からのカード発行指示と共に与えられた上記被発行者の上記本人特定情報に基づいて、カードを発行する発行手段と
を備えることを特徴とするカード発行装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項7における「上記被発行者によって、予め設定された又はカード発行者側によって設定された1又は2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報を取りこむ本人特定情報入力手段」を「上記被発行者によって、予め設定された又はカード発行者側によって設定された2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報を取りこむ本人特定情報入力手段」に限定するともに、補正前の請求項7における「上記本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かを判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する上記認証装置に与える情報判定手段」を「上記本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かをそれぞれ判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する上記認証装置に与える情報判定手段」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項7に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例及び周知例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-102392号公報(以下、「引用例」という。)、前置審査において周知例として引用された特開2001-52182号公報(以下、「周知例1」という。)及び国際公開第00/10125号(以下、「周知例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例)
A.「【0110】更に、申込装置1が読み込む対象は身分証明書等の書面に限られず、指紋、申込者の顔の画像等、申込者を特定する任意の情報を取得してもよい。そして、信用情報センタ3や、信販会社サイト2は、申込者を特定する任意の情報の認証を行ってよい。」

B.「【0121】図7は、この無人契約システムの物理的構成を示す。図示するように、この無人契約システムは、信販会社サイト2a?2cと、信用情報センタ3a、3bと、企業情報データベース5と、ネットワーク6と、申込者サイト7a?7dと、ネットワークアクセス装置26a?26c、78a?78dとより構成される。
【0122】信販会社サイト2a?2cは、いずれも、この発明の第1の実施の形態における信販会社サイト2と実質的に同一の構成を有する。すなわち、信販会社サイト2aは、主記憶部21と、制御部22と、外部記憶部23と、キーボード24と、表示部25とを備え、信販会社サイト2b、2cは、信販会社サイト2aと実質的に同一の構成を有する。各信販会社サイト2a?2cは、各々に固有のアドレスと対応付けられている。
【0123】また、信用情報センタ3a、3bは、いずれも、この発明の第1の実施の形態における信用情報センタ3と実質的に同一の構成を有する。すなわち、信用情報センタ3aは、主記憶部31と、制御部32と、外部記憶部33とを備え、信用情報センタ3bは、信用情報センタ3aと実質的に同一の構成を有する。信用情報センタ3a、3bは、互いに異なる種類の身分証明書の認証を行う。例えば、信用情報センタ3aは運転免許証の認証を行い、信用情報センタ3bは旅券の認証を行う。
・・・(中略)・・・
【0125】申込者サイト7a?7dは、いずれも、第1の実施の形態における申込装置1及びクレジットカード発行装置4と実質的に同一の機能を行うものである。申込者サイト7aは、それぞれ、スキャナ71と、キーボード72と、主記憶部73と、外部記憶部74と、表示部75と、印字部76と、制御部77とより構成される。そして、申込者サイト7b?7dは、申込者サイト7aと実質的に同一の構成を有する。」

C.「【0128】この無人契約システムは、論理的には、図8に示すように、申込プログラム51a?51dと、承諾プログラム52a?52cと、認証プログラム53a、53bと、クレジットカード発行プログラム54a?54dと、信用レベル算定プログラム55a?55cと、証明書画像データ61a?61dと、信用情報リスト62a、62bと、顧客リスト63a?63cと、クレジットカード書式データ64a?64dと、証明書サイズリスト66a?66cとより構成される。
【0129】申込プログラム51a?51dは、各申込者サイト7a?7dの制御部により実行されるプログラムであり、各申込者サイト7a?7dの外部記憶部に記憶される。申込プログラム51a?51dは、後述するように、申込者が提示した身分証明書より証明書画像データ61a?61dを抽出して信販会社サイト2a?2cに送信し、クレジットカード発行の申込を行う処理を制御する。
【0130】承諾プログラム52a?52cは、信販会社サイト2a?2cの制御部により実行されるプログラムであり、信販会社サイト2a?2cの外部記憶部に記憶される。承諾プログラム52a?52cは、後述するように、申込者サイト7a?7dより証明書画像データ61a?61dを受信して、信用情報センタ3a?3cに受信した証明書画像データ61a?61dが示す身分証明書の認証を要求する処理を制御する。そして、認証結果及び顧客リスト63a?63c及び企業情報データベース5の内容に基づいて、申込を承諾するか否かを決定し、決定結果を申込者サイト7a?7dに出力する処理を制御する。
【0131】認証プログラム53a、53bは、信用情報センタ3a、3bの制御部により実行されるプログラムであり、信用情報センタ3a、3bの外部記憶部に記憶される。認証プログラム53a、53bは、後述するように、信販会社サイト2a?2cからの要求を受けて、信用情報リスト62a、62b及び証明書画像データ61a?61dの内容に基づき、申込者が提示した身分証明書を認証するか否かを判別して、認証結果を信販会社サイト2a?2cに通知する処理を制御する。また、当該身分証明書の認証が成功したときは、当該身分証明書の名義人の信用レベルを信販会社サイト2a?2cに通知する処理を制御する。
【0132】クレジットカード発行プログラム54a?54dは、申込者サイト7a?7dの制御部により実行されるプログラムであり、申込者サイト7a?7dの外部記憶部に記憶される。クレジットカード発行プログラム54a?54dは、後述するように、信販会社サイト2a?2cより、申込を承諾するか否かの決定結果を受信し、この決定結果に従って、クレジットカードの発行又はクレジットカード発行拒否の通知を行う処理を制御する。」

D.「【0140】証明書サイズリスト66a?66cは、各種の身分証明書のサイズの情報を、各々の種類の身分証明書の認証を行う信用情報センタを特定する情報と対応付けて格納するリストである。証明書サイズリスト66a?66cは、信販会社サイト2a?2cの管理者等により、予め信販会社サイトの外部記憶部に格納され、承諾プログラム52a?52cの処理において、後述の通りに用いられる。」

E.「【0147】次に、制御部77は、第1の実施の形態におけるステップS104?S107と同様にして、身分証明書の記載面の画像を抽出する(ステップS506)。すなわち、制御部77は、身分証明書をスキャナ71にセットすることを促す画像を表示部75に表示させ、キーボード72よりセット完了の通知があると、スキャナ71に身分証明書の画像の読み取りを行わせて、記載面のビットマップを取得する。そして、そのビットマップのうち、身分証明書の四隅の位置にあたるデータを特定して、その内側のデータを抽出する。そして、制御部77は、ステップS506で得られたデータを、証明書画像データ61aを格納するファイルの、ヘッダに続く領域に書き込む(ステップS507)。
【0148】次に、制御部77は、第1の実施の形態におけるステップS109及びS110と同様にして、第1の実施の形態における申告データ65と実質的に同一の情報を取得する(ステップS508)。すなわち、制御部77は、表示部75に、当該情報の入力を促す画像を表示させ、キーボード72より当該情報を取得する。そして、制御部77は、ステップS508で得られた当該情報を、証明書画像データ61aを格納するファイルの空き領域に書き込む(ステップS509)。これにより、証明書画像データ61aが完成する。
【0149】証明書画像データ61aが完成すると、制御部77は、証明書画像データ61aをネットワーク6に送出することにより、クレジットカード発行の申込を行う(ステップS510)。証明書画像データ61aの送出が完了すると、制御部77は、申込の処理を終了する。そして、制御部77は、外部記憶部74よりクレジットカード発行プログラム54aを読み込んで、後述するステップS901以下の処理を実行する。」

F.「【0158】そして、信販会社サイト2aの制御部22は、証明書画像データ61a?61dのいずれかを受信すると、証明書画像データを主記憶部21に格納する(ステップS703)。
【0159】次に、制御部22は、主記憶部21に格納された証明書画像データを解析して、当該証明書画像データが示す画像のサイズを取得する(ステップS704)。そして、制御部22は、当該画像のサイズの値をキーとして、証明書サイズリスト66aを検索し、書面のサイズが、所定の判別条件(例えば、第1の実施の形態におけるステップS305と実質的に同一の条件)の下で当該画像のサイズと一致する身分証明書の種類を索出する(ステップS705)。
【0160】次に、制御部22は、ステップS705で、上述の判別条件に合致する身分証明書の種類が索出されたか否かを判別する(ステップS706)。そして、索出されなかったと判別されたとき制御部32は、処理をステップS721に移す。
【0161】索出されたと判別されたとき、制御部22は、証明書サイズリスト66aを検索して、ステップS705で索出された種類の身分証明書の認証を行う信用情報センタを特定する(ステップS707。以下、理解を容易にするため、索出されたのは、信用情報センタ3aであるものとする)。
【0162】そして、制御部22は、索出された信用情報センタ3aの制御部32に、信用情報センタ3aとの接続を要求する信号を発する(ステップS708)。制御部32がこの信号を受信し、制御部22との間の接続処理を行って、接続完了の通知を制御部22に送信すると、制御部22はこの通知を受信する(ステップS709)。
【0163】通知を受信した制御部22は、外部記憶部23より、ステップS703で受信した証明書画像データを制御部32に送信することにより、受信した証明書画像データが示す身分証明書の認証を要求する(ステップS710)。認証を要求した制御部22は、制御部32から認証結果の情報が送られるのを待機する(ステップS711)。」

G.「【0166】ステップS807において、当該文字列と当該特徴情報が一致すると判別されると、制御部32は、受信した証明書画像データが表す画像が真正な身分証明書の画像であると判断し、処理をステップS808に移す。一致しないと判別されると、処理をステップS811に移す。
【0167】ステップS808において、制御部32は、当該種類の身分証明書の名義人の情報の記載位置を表す情報を、信用情報リスト62aから読み出す。そして、制御部32は、第1の実施の形態におけるステップS314と同様にして、証明書画像データ又はその倒立画像のデータのうち、ステップS808で読み出した情報が示す記載位置にあたるデータから名義人の情報を抽出する(ステップS809)。
・・・(中略)・・・
【0170】ステップS812において、当該名義人の信用レベルの情報が、信用情報リスト62aに記録されていないと判別されると、制御部32は、認証結果の情報として、ステップS809で抽出された当該名義人の情報及び認証の成功を示す情報を信販会社サイト2aの制御部22に送る(ステップS813)。そして、制御部32は、処理をステップS816に移す。」

H.「【0173】一方、ステップS711において、認証結果の情報の待機を開始した信販会社サイト2aの制御部22は、ステップS807の処理に従って信用情報センタ3aより送信された認証結果の情報を受信して主記憶部31に格納する。
【0174】そして、制御部22は、申込者サイト7aに送る、クレジットカード発行の可否の決定結果の情報を格納するファイルをオープンし、そのファイルの先頭の領域に、申込を行った申込者サイトのアドレス(すなわち申込者サイト7aのアドレス)と、送信元のアドレス(すなわち信販会社サイト2aのアドレス)とをヘッダとして書き込む(ステップS712)。これにより、申込者サイト7aに送る決定結果の情報のヘッダとして、申込元及び送信元のアドレスが付される。
【0175】次に、制御部22は、受信した認証結果の情報が、認証の成功を示すものであるか否かを判別する(ステップS713)。そして、判別の結果、失敗を表すものであると判別されると、制御部22は、処理をステップS721に移す。
【0176】ステップS713において、受信した認証結果の情報が認証の成功を示すものであると判別されると、制御部22は、受信した認証結果の情報に含まれる、身分証明書の名義人の情報をキーとして、顧客リスト63aを検索する。そして、制御部22は、顧客リスト63aに、当該名義人の情報が含まれているか否かを判別する(ステップS714)。
【0177】ステップS714において、当該名義人の情報が顧客リスト63aに含まれていると判別されると、制御部22は、処理をステップS721に移す。含まれていないと判別されると、制御部22は、企業情報データベース5に接続を要求する信号を送る(ステップS715)。
【0178】企業情報データベース5が、信販会社サイト2aとの接続を要求する信号を受信し、制御部22との間の接続処理を行って、接続完了の通知を制御部22に送信すると、信販会社サイト2aは、この信号を受信する。そして、制御部22は、第1の実施の形態におけるステップS215?S219の処理と実質的に同一の処理により、申込者へのクレジットカード発行を許可するか否かを決定する(ステップS716)。ステップS716において、クレジットカードの発行が許可されたと判別されると、制御部22は処理をステップS717に移し、拒否されたと判別されると、処理をステップS721に移す。
【0179】ステップS717において、制御部22は、ステップS712で受信した認証の結果の情報に、信用レベルの情報が含まれているか否かを判別する。
【0180】ステップS717において、信用レベルの情報が含まれていないと判別されたとき、制御部22は、信販会社サイト2aにより設定し得る最低額の利用限度額が設定されたクレジットカードを申込者に発行することを決定する。そして、決定結果の情報を格納するファイル上の、送信元のアドレスの情報に続けて、利用限度額の情報として当該最低額を書き込み(ステップS718)、処理をステップS725に移す。
・・・(中略)・・・
【0183】ステップS721において、制御部22は、決定結果の情報を格納するファイル上の、送信元のアドレスを格納する領域に続けて、クレジットカード発行の拒否を示す情報を書き込む。そして、制御部22は、ヘッダ及びクレジットカード発行拒否を示す情報をネットワーク6に送出し、ネットワーク6との接続を終了して(ステップS722)、承諾の処理を終了する。
・・・(中略)・・・
【0185】ステップS725において、制御部22は、決定結果の情報を格納するファイル上に格納されているデータの最後尾に続けて、信用情報センタ3aより受信した認証結果の情報に含まれる名義人の情報を書き込む。
【0186】そして、制御部22は、ヘッダが付された名義人及び利用限度額の情報を、決定結果の情報としてネットワーク6に送信し、送信が終了すると、ネットワーク6との接続を終了する(ステップS726)次に、制御部22は、顧客リスト63aに当該名義人の情報及び利用限度額の情報を追加して(ステップS727)、承諾の処理を終了する。」

I.「【0191】受信した決定結果の情報が、クレジットカード発行の許可を表すものであると判別されると、制御部77は、外部記憶部74より、クレジットカード書式データ64aを読み出す(ステップS906)。そして、クレジットカード書式データ64aが示す印字位置に、信販会社サイト2aから受信した決定結果の情報に含まれる名義人の情報のうち所定の情報と、信用を供与した信販会社サイトを特定する情報(例えば、運営主体の名称等)を印字し、またその他クレジットカード書式データ64aが示す文字、図形等を印字するよう、印字部76に指示する。また、制御部77は、クレジットカード書式データ64aが示す順序で、信販会社サイト2aから受信した決定結果の情報に含まれる信用情報、信用を供与した信販会社サイトを特定する情報その他クレジットカード書式データ64aが指定するデータをクレジットカードの磁気ストライプ部分に記録するよう、印字部76に指示する(ステップS907)。印字部76は、制御部77の指示に応答して、指示に従った内容の文字、図形等を印字し、また、磁気ストライプに記録する。
・・・(中略)・・・
【0193】以上説明したステップS901?S908の処理により、真正な身分証明書を提示した申込者に、クレジットカードが発行される。」

上記Bの段落【0125】には、「申込者サイト7a?7dは、いずれも、第1の実施の形態における申込装置1及びクレジットカード発行装置4と実質的に同一の機能を行うものである。」と記載されている。
そして、上記Aには、「申込装置1が読み込む対象は身分証明書等の書面に限られず、指紋、申込者の顔の画像等、申込者を特定する任意の情報を取得してもよい。」と記載されていることから、申込者を特定する情報として、どのような情報を入力可能とするのかは、任意に決定し得るものであり、入力可能とする情報を決定するということは、入力可能である情報の条件を設定することであるといえる。
さらに、申込者を特定する情報として、どのような情報を入力可能とするのかは、申込者の特定を行う前に予め決定されるものであって、カードの発行を行う信販会社サイトの管理者等が決定するものであることは明らかである。
よって、「申込者サイト」は、信販会社サイトの管理者等によって予め設定された条件に応じた申込者を特定する情報を取得しているといえる。

上記Aの記載を参照すると、申込者を特定する任意の情報の認証を行うことが示されていることから、「無人契約システム」は申込者を特定する機能を備えているといえる。

上記F及び図11を参照すると、「信販会社サイト」は、証明書サイズリストを検索し、合致する身分証明書の種類が索出されたか否かを判別し、索出されたと判別した場合、索出された種類の身分証明書の認証を行う信用情報センタを特定している。ここで、「証明書サイズリスト」は、上記Dを参照すると、各種の身分証明書のサイズの情報を格納したリストである。この身分証明書のサイズは、認証を行う身分証明書を判別するために格納されている情報にすぎず、上記Aに記載されているように、申込者を特定する情報として、他の情報を取得するようにした場合には、その情報を判別するための情報が格納されることは明らかである。してみると、上記証明書サイズリストは、信販会社サイトの管理者等によって予め設定された条件に応じた申込者を特定する情報を格納したリストであるといえるから、このリストを検索し、合致する申込者を特定する情報が索出されたか否かを判別することは、信販会社サイトの管理者等によって予め設定された条件に適合するか否かを判別することであるといえる。

よって、上記A?Iの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「少なくとも1つの信用情報センタからの申込者の認証結果の情報に基づいて、その申込者を特定する機能を備えた無人契約システムにおいて、
信販会社サイトの管理者等によって予め設定された条件に応じた上記申込者を特定する情報を、上記申込者から取得する申込者サイトと、
上記申込者サイトが取得した上記申込者を特定する情報について、設定された上記条件に適合するか否かを判別し、設定された上記条件に適合する場合、上記申込者を特定する情報を、上記申込者を特定する情報の認証を行う上記信用情報センタに送信する信販会社サイトとを備え、
上記信販会社サイトは、さらに、上記信用情報センタからの上記申込者の認証結果に基づいて、上記申込者にクレジットカードを発行するか否かを決定し、
上記申込者サイトは、さらに、上記信販会社サイトから受信した決定結果の情報がクレジットカードの発行の許可を表すものであると判別されると、上記決定結果の情報に含まれる名義人の情報に基づいて、クレジットカードを発行する
無人契約システム。」

(周知例1)
J.「【0105】例えば、パスワードを覚え難い、高齢者、痴呆等の要介護者、子供などには、パスワードの変わりに、指紋で代用することが可能である。更に、指紋に心理的抵抗感のある人に対しては、所望の認証精度を確保すると言う前提のもとで、例えば、顔画像、音声、筆跡、眼の虹彩画像、パスワード、等を組み合わせることが可能である。
【0106】更に、サービス提供側からしても、例えば、現在パスワード4桁でサービスを実施中であって、利用者が更にリスクの大きなサービス(具体的には、高額の現金引き出しサービス)を要求しているような場合で、パスワードの桁を増やすことがサービス低下になると考えられるような場合には、パスワード4桁に加えて、指紋認証を行うことが可能である。仮に、指紋認証で4桁の精度が得られれば、2つを組み合わせることで、8桁の認証精度が実現され、サービス側は安心してそのサービスを提供できると言う効果がある。」

(周知例2)
K.「尚、図4に示すように、カード本体1に、数値を入力するためのキーボード14を設けることができ、該キーボード14は、外部装置3からではなく、カード本体1から暗証番号やパスワード等を入力できるようにしたものである。
従って、上記実施例では、カードを使用する場合、その所持者が正当な所持者でなければ、そのカードを使用することができない。すなわち、カードを取得しても、キーボード14により暗証番号を入力しなければ指紋の照合を行うことができないし、たとえ、そのカードの暗証番号を偶々知っていたとしても、カード本体1のメモリ5に登録,記録した固有身体パターン情報、例えば指紋が、データ入力部10から入力した指紋に合致しなければ、液晶表示部11にはエラー表示がなされ、カードを使用することができない。よって、このようなキーボード14による暗証番号の入力は、二重セキュリティをかけることになり、これにより、カードのセキュリティ機能が向上する。」(明細書第6頁第2?13行)

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例記載の発明における「信用情報センタ」、「申込者」、「申込者を特定する情報」は、それぞれ、本願補正発明における「認証装置」、「被発行者」、「本人特定情報」に相当するものである。

(い)本願明細書の【0068】,【0069】及び【0072】を参照すると、本願補正発明における「本人認証結果」は、認証局が入力された本人特定情報に基づいて本人確認した結果ではあるが、認証局がどのようにして上記情報に基づいて本人確認を行うかについての具体的な記載はされていない。そこで、本願明細書では、入力される本人特定情報として、キャッシュカードをカードリーダに挿入し、暗証番号を入力する場合について記載されていることから、技術常識を参酌して検討すると、挿入されたキャッシュカードと、入力された暗証番号とが整合する場合に、キャッシュカードを保持する被確認者が、キャッシュカードの名義人であると判断することを「本人確認」と呼んでいると解される。
一方、引用例の上記A、上記Fの段落【0163】,上記Gの段落【0166】,【0167】及び上記Iの段落【0191】を参照すると、引用例記載の発明における「申込者の認証結果の情報」は、信用情報センタにおいて、申込者を特定する情報が真正な情報であるかを判断した結果の情報であり、申込者を特定する情報が真正な情報である場合に、上記情報を入力した申込者がこの情報から抽出された名義人であるとしていることから、引用例記載の発明においても「本人確認」を行っているといえるので、引用例記載の発明における「申込者の認証結果の情報」は、本願補正発明における「被発行者の本人認証結果」に相当するものである。
また、引用例記載の発明における「無人契約システム」は、クレジットカードを発行するシステムであるから、本願補正発明における「カード発行装置」に相当するものである。
よって、引用例記載の発明における「少なくとも1つの信用情報センタからの申込者の認証結果の情報に基づいて、その申込者を特定する機能を備えた無人契約システム」は、本願補正発明における「少なくとも1つの認証装置からの被発行者の本人認証結果に基づいて、その被発行者の本人確認機能を備えたカード発行装置」に相当するものである。

(う)上記(い)で検討したように、引用例記載の発明における「申込者を特定する情報」は、「本人確認」を行うための情報である。そして、引用例記載の発明における「設定された条件」は、「本人確認」を行うための情報である「申込者を特定する情報」を規定するための条件であるから、本願補正発明における「本人確認条件」に相当するものである。
そして、引用例記載の発明における「信販会社サイトの管理者等」は、本願補正発明における「カード発行者側」に相当することから、引用例記載の発明における「信販会社サイトの管理者等によって予め設定された条件」は、本願補正発明における「予め設定された本人確認条件」及び「カード発行者側によって設定された本人確認条件」に相当する。

(え)引用例記載の発明における「申込者サイト」の構成のうち、申込者を特定する情報を取得する機能を備える部分が本願補正発明における「本人特定情報入力手段」に相当し、クレジットカードを発行する機能を備える部分が本願補正発明における「発行手段」に相当する。

(お)引用例記載の発明において「申込者サイトが取得した申込者を特定する情報について、設定された条件に合致する上記申込者を特定する情報が索出されたか否かを判別し、索出されたと判別した場合、上記申込者を特定する情報を、上記申込者を特定する情報の認証を行う信用情報センタに送信する」ことは、本願補正発明において「本人特定情報入力手段に入力された本人特定情報について、本人確認条件に適合するか否かを判断し、上記本人特定情報が上記本人確認条件に適合する場合、上記本人特定情報を、上記本人特定情報に対応する認証装置に与える」ことに相当する。

(か)引用例記載の発明における「信販会社サイト」の構成のうち、申込者を特定する情報を信販会社サイトへ送信する機能を備える部分が本願補正発明における「情報判定手段」に相当し、クレジットカードを発行するか否かの決定をする機能を備える部分が本願補正発明における「判断手段」に相当する。

上記(あ)?(か)の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願補正発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「少なくとも1つの認証装置からの被発行者の本人認証結果に基づいて、その被発行者の本人確認機能を備えたカード発行装置において、
上記被発行者によって、予め設定された又はカード発行者側によって設定された本人確認条件に応じた本人特定情報を取りこむ本人特定情報入力手段と、
上記本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報について、上記本人確認条件に適合するか否かを判断し、上記本人特定情報が上記本人確認条件に適合する場合、上記本人特定情報を、上記本人特定情報に対応する上記認証装置に与える情報判定手段と、
上記認証装置からの上記被発行者の本人認証結果に基づいて、上記被発行者にカードを発行するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段からのカード発行指示と共に与えられた上記被発行者の上記本人特定情報に基づいて、カードを発行する発行手段と
を備えるカード発行装置。」
である点。

(相違点)
相違点:本願補正発明は、「本人特定情報入力手段」が「2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報」を取りこみ、「情報判定手段」が「本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かをそれぞれ判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する認証装置に与え」ているのに対し、引用例記載の発明は、申込者を特定する情報を2以上取得するものとはされておらず、暗証番号を含む情報であるともされていない点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。

一般に、セキュリティ機能を向上させるために、複数の認証機能を組み合わせて本人確認を行うことは、上記周知例1,2に見られるように、当業者にとって周知技術にすぎない。
また、本人確認を行うための認証機能として、暗証番号を含む情報を入力することは、ごく普通に行なわれていることである。
したがって、引用例記載の発明において、上記周知技術に示される知見に基づいて、2以上の申込者を特定する情報を取得すると共に、申込者を特定する情報として、暗証番号を含む情報を設定した場合に、申込者を特定する情報の全てが設定された条件に適合する必要があることは明らかであり、申込者を特定する情報の認証を行うために、2以上の申込者を特定する情報のそれぞれを、各申込者を特定する情報の認証を行う信用情報センタに送信し、各信用情報センタにおいてそれぞれ認証させることは、ごく自然なことである。
よって、引用例記載の発明に上記周知技術を適用して、「本人特定情報入力手段」が「2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報」を取りこみ、「情報判定手段」が「本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かをそれぞれ判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する認証装置に与え」るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願補正発明の作用効果について)
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成20年1月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項7に係る発明は、平成19年8月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「少なくとも1つの認証装置からの被発行者の本人認証結果に基づいて、その被発行者の本人確認機能を備えたカード発行装置において、
上記被発行者によって、予め設定された又はカード発行者側によって設定された1又は2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報を取りこむ本人特定情報入力手段と、
上記本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かを判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する上記認証装置に与える情報判定手段と、
上記認証装置からの上記被発行者の本人認証結果に基づいて、上記被発行者にカードを発行するか否かを判断する判断手段と、
上記判断手段からのカード発行指示と共に与えられた上記被発行者の上記本人特定情報に基づいて、カードを発行する発行手段と
を備えることを特徴とするカード発行装置。」

(2)引用例及び周知例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び前置審査において周知例として引用された周知例1,2とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「上記被発行者によって、予め設定された又はカード発行者側によって設定された2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報を取りこむ本人特定情報入力手段」の限定を省いて「上記被発行者によって、予め設定された又はカード発行者側によって設定された1又は2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報を取りこむ本人特定情報入力手段」とすると共に、本願補正発明における「上記本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かをそれぞれ判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する上記認証装置に与える情報判定手段」の限定を省いて「上記本人特定情報入力手段に入力された上記本人特定情報の全てについて、上記本人確認条件に適合するか否かを判断し、上記本人特定情報の全てが上記本人確認条件に適合する場合、上記各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する上記認証装置に与える情報判定手段」としたものである。

本願発明において、「本人特定情報入力手段」が「1つの本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報」を取りこむ場合には、「本人特定情報の全て」は「1つの本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報」となり、「各本人特定情報のそれぞれを、上記各本人特定情報に対応する認証装置に与える」ことは「1つの本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報を、上記本人特定情報に対応する上記認証装置に与える」ことになる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに「2以上の本人確認条件に応じた暗証番号を含む本人特定情報」を用いるものであることに係る特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記本願補正発明から上記特定の限定を省いた本願発明は、上記特定の限定について引用された周知例1,2にみられる周知技術を参酌するまでもなく、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-18 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-05 
出願番号 特願2001-355596(P2001-355596)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中内 大介篠原 功一  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 久保 正典
小曳 満昭
発明の名称 本人確認装置、本人確認システム、カード発行装置及びカード発行システム  
代理人 工藤 宣幸  

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