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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1222097
審判番号 不服2009-14100  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-06 
確定日 2010-08-19 
事件の表示 特願2004-252726「積層剥離型容器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 69582〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年8月31日の出願であって、平成21年1月29日付けで審査官より拒絶理由が通知され、平成21年4月3日に特許請求の範囲を対象として含む手続補正がなされたものの、平成21年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年4月3日の手続補正により補正された請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1は以下のとおりである。

「略円筒状に突出したネック部を有する容器本体と、
前記ネック部を閉鎖するキャップとを具え、
前記ネック部外側面に設けたねじ山と、前記キャップ内側面に設けたねじ山とを係合させて前記本体内部を密閉する容器であって、
前記容器本体が外層部と内層部とを具え、
前記外層部に設けた空気導入孔から空気を導入することにより、前記外層部と前記内層部との間に空気を導入して両者を剥離可能とし、
前記空気導入孔を前記ネック部に設けると共に、前記ねじ山に前記空気導入孔近傍で切り欠き部を設け、
かつ、前記ネック部には、当該ネック部の上端から前記空気導入孔に至る平坦面が形成されていることを特徴とする積層剥離型容器。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3.刊行物及び刊行物に記載された発明
〔刊行物1とその記載事項〕
原審の拒絶理由において引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開2001-72131号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「【0011】図1?図4より明らかなように、本容器10のネック部14に設けたねじ山15は、空気導入孔18の真上部分およびこれと対向する部分において切り欠いた形状をなしている。すなわち、この部分においては、外層部16と内層部17とは平滑な曲面で接する状態となっており、そのため両者の剥離が確実となり、内層部の収縮が確実かつスムーズに行われるようになる。なお、ねじ山15は、前述したように一部に切り欠きを設けられた形状となっているが、その長さは全体としてはわずかなものであり、ネック部14に図示しないキャップを装着、あるいは取り外すのに支障が生じることはない。」

上記摘示(a)の記載及び【図1】?【図4】によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「略円筒状に突出したネック部14を有する本容器10と、
前記ネック部14を閉鎖するキャップとを具え、
前記ネック部14外側面に設けたねじ山15と、前記キャップ内側面に設けたねじ山とを係合させて前記本容器10内部を密閉する容器であって、
前記本容器10が外層部16と内層部17とを具え、
前記外層部16に設けた空気導入孔18から空気を導入することにより、前記外層部16と前記内層部17との間に空気を導入して両者を剥離可能とし、
前記空気導入孔18を前記ネック部14に設けると共に、前記ねじ山15に前記空気導入孔18近傍で切り欠き部を設けている積層剥離型容器10。


〔刊行物2とその記載事項〕
原審の拒絶理由において引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開平9-301372号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(b)「【0009】図に示すように前記容器口部4には、ネジ6が刻設されており、その下部の大気導入孔の穿設位置には平坦部7が設けられている。8は、該平坦部7に直交して外側層に穿設された大気導入孔である。大気導入孔8は、ブロー成形により成形された積層ブロー容器に、後述する方法によって穿設されるが、平坦部7があることによって穿孔を容易にするとともに、導入孔を容器口部外周に直交させて正確に仕上げるようにしている。」
(c)「【0021】大気導入孔の穿孔方法として、容器口部に平坦面を形成した積層ブロー容器を用い、容器を所定の方向に位置決めした後に穿孔しているから、ポンチカッターを容器口部に直交するように当接することができ、平坦面に直交する大気導入孔を正確に容器口部の外側層に穿孔することができた。カッター刃により導入孔が所定の形状に形成され、穿孔加工だけで綺麗に仕上げられるので、後加工の必要がなくなった。」


4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、

(一致点)
「略円筒状に突出したネック部を有する容器本体と、
前記ネック部を閉鎖するキャップとを具え、
前記ネック部外側面に設けたねじ山と、前記キャップ内側面に設けたねじ山とを係合させて前記本体内部を密閉する容器であって、
前記容器本体が外層部と内層部とを具え、
前記外層部に設けた空気導入孔から空気を導入することにより、前記外層部と前記内層部との間に空気を導入して両者を剥離可能とし、
前記空気導入孔を前記ネック部に設けると共に、前記ねじ山に前記空気導入孔近傍で切り欠き部を設けている積層剥離型容器。」

である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
本願発明では、「ネック部には、当該ネック部の上端から空気導入孔に至る平坦面が形成されている」のに対して、引用発明においては、「ネック部の上端から空気導入孔に至る平坦面が形成されていない」点。

そこで、上記相違点について検討する。

(相違点)についての検討
刊行物2には、上記摘示(b)(c)の記載及び【図1】【図2】によれば、次の発明が記載されているものと認められる。

「容器口部4には、下部の大気導入孔8の穿設位置に平坦部7が設けられ、平坦部7があることによって穿孔を容易にするとともに、大気導入孔8を容器口部4外周に直交させて正確に仕上げるようにしてなる積層ブロー容器A。」
ここで、刊行物2に記載された発明における「容器口部4」、「大気導入孔8」、「平坦部7」、「積層ブロー容器A」は、それぞれ、本願発明における「ネック部」、「空気導入孔」、「平坦面」、「積層剥離型容器」に相当する。

よって、刊行物2に記載された発明を本願発明の用語に倣って記載すると、次の技術事項が記載されている。
「ネック部には、下部の空気導入孔の穿設位置に平坦面が設けられ、平坦面があることによって穿孔を容易にするとともに、空気導入孔をネック部外周に直交させて正確に仕上げるようにしてなる積層剥離型容器。」

そうすると、引用発明において、刊行物2に記載された発明を適用して、空気導入孔を正確にネック部の外側層に穿孔するために、ネック部における、空気導入孔の穿設位置に平坦面を設けるようにすることは当業者にとって容易であるといえ、その際、平坦面の領域を広くしたり、狭くすることは当業者が適宜設計できることにすぎず、ポンチカッター等の工具の作業経路により自由度を与えられるという効果も予期し得る範囲のものである。

したがって、引用発明に、刊行物2に記載された発明を適用することによって、相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想起し得たものと認められる。

そして、本願発明を全体構成でみても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び刊行物2に記載された発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願日前に頒布された刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-21 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-06 
出願番号 特願2004-252726(P2004-252726)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 美保  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 谷治 和文
佐野 健治
発明の名称 積層剥離型容器  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  

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