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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1222099
審判番号 不服2009-15511  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-25 
確定日 2010-08-19 
事件の表示 特願2005-370031「鶏卵容器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-168870〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年12月22日の出願であって、平成21年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年8月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年11月27日の手続補正により補正された請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1は以下のとおりである。

「合成樹脂材を膨出成形させた複数の鶏卵収容凹部(11)、(11)…を備えた容器本体(1)と、該容器本体(1)を覆う蓋体(2)とが、長手方向の一側縁部でヒンジ部(3)を介して一体的に連結成形されている鶏卵容器であって、前記容器本体(1)と蓋体(2)の素材は、植物由来の糖質を発酵させて得られた乳酸を重合させたポリ乳酸であり、かつ、前記容器本体(1)のみ発泡させて成形してあることを特徴とする鶏卵容器。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3.刊行物及び刊行物に記載された発明
(刊行物1とその記載事項)
原審の拒絶理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開2004-196330号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
(a)「【請求項1】合成樹脂シートを膨出成型してなり、複数の卵収容凹部(11)を備えた容器本体(1)と、該容器本体(1)を覆う蓋体(2)とからなる卵包装用容器であって、前記合成樹脂シートの素材が生分解熱可塑性合成樹脂からなる卵包装用容器。」
(b)「【0013】図2に第2実施例の卵包装用容器を示す。この第2実施例は、原材料の生分解熱可塑性合成樹脂として天然高分子系合成樹脂である澱粉を発酵させて得られるポリ乳酸を主成分とし、層状珪酸塩の微細粒子を加えた混合物を使用し、卵を4個収納する容器であって、容器本体1と蓋体2とは分離された構造となっている。容器本体1の卵収容凹部11は前記第1実施例と類似した形状であり、側壁には補強リブ13が形成され、又、傾斜した側壁は合体して各卵を隔てる仕切り作用を有する支柱14となっている。蓋体2の卵収容凹部21は、収容された卵全体に共通する単一の空間となっており、補強リブや支柱が形成されず、内部が透視し易い構造となっている。」
(c)「【0011】図1に本発明の第1実施例の卵包装用容器を示す。この第1実施例は、…、卵を10個収納する容器であって、容器本体1に卵収容凹部11が横方向に2列に、前後方向に2段に計10個配列されている。…【0012】蓋体2は容器本体1とほぼ同じような形状で、卵の包装状態では卵収容凹部21は卵のほぼ下半分を収納できる程度の深さの空間をなしている。容器本体1と蓋体2とは折り曲げ部3を介して一連となって成型され、容器本体1と同じように折り曲げ部3を除く外周に外周縁22が形成されている。」

してみれば、上記(a)、(b)の記載及び【図2】によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「生分解熱可塑性合成樹脂材を膨出成形させた複数の卵収容凹部を備えた容器本体と、該容器本体を覆う蓋体とからなる卵包装用容器であって、前記容器本体と蓋体の素材は、天然高分子系合成樹脂である澱粉を発酵させて得られるポリ乳酸を主成分とし、層状珪酸塩の微細粒子を加えた混合物である卵包装用容器。」


(刊行物2とその記載事項)
原審の拒絶理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開2001-55218号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
(c)「【要約】【課題】…卵…などの輸送時に傷みやすい食品を消費者の需要にあわせて2個、3個、4個等の単位でパックできると同時に、上述した食品を傷つけずに輸送できる包装容器を提供する
【解決手段】載置される食品の形態に成形された凹部を持ち、クッション性を有する発泡性材料…で構成される上部開放型の容器本体と、前記載置される食品に被さるように凹部を持ち、透明性の材料で構成されるふた部と、前記容器本体と前記ふた部とを接合する接合手段とを具備することによって達成される。この時、…前記透明性の材料が、…ポリ乳酸樹脂…であることが望ましい。」


(刊行物3とその記載事項)
原審の拒絶理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特公昭61-24975号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。

(d)「第1図及び第2図は幅方向複合構造を有する部分発泡プラスチツクシートの具体例を示す幅方向断面図であつて、図中1?3は発泡プラスチツクからなる部分、4?7は無発泡プラスチツクからなる部分である。
上述のような幅方向複合構造の部分発泡プラスチツクシートは、包装材料、…として、種々の利用法がある。
例えば第1図のシートを中央で2分し、更に適当な長さの所で切断して得られる、半分が発泡体で半分が無発泡体からなる長方形のシートから、第3図に示したような、発泡体シートによるトレー8及びこれと一体の透明な蓋9からなる容器を製造することができる。」(第2頁左欄第6行?第19行)


4.対比・判断
引用発明1における「天然高分子系合成樹脂である澱粉を発酵させて得られるポリ乳酸」は本願発明における「植物由来の糖質を発酵させて得られた乳酸を重合させたポリ乳酸」に相当し、同じく「卵包装用容器」は「鶏卵容器」であり、「卵収容凹部」は「鶏卵収容凹部」に相当する。

そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると一致点、相違点は以下の点である。

(一致点)
「合成樹脂材を膨出成形させた複数の鶏卵収容凹部を備えた容器本体と、該容器本体を覆う蓋体とからなる鶏卵容器であって、前記容器本体と蓋体の素材は、植物由来の糖質を発酵させて得られた乳酸を重合させたポリ乳酸である鶏卵容器。」

(相違点1)
本願発明は、容器本体(1)と、該容器本体(1)を覆う蓋体(2)とが、長手方向の一側縁部でヒンジ部(3)を介して一体的に連結成形されているのに対して、引用発明1は、容器本体1と蓋体2とは分離された構造となっている点。

(相違点2)
本願発明は、容器本体(1)のみ発泡させて成形してあるのに対して、引用発明1は、容器本体のみ発泡させて成形してあるか否か不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。


(相違点1)について
上記「(刊行物1とその記載事項)」における摘示事項(b)に記載されているように、卵包装用容器において、容器本体と蓋体とは折り曲げ部を介して一連となって成型されているものは、本願出願前周知のものであるし、一方、上記「(刊行物3とその記載事項)」における摘示事項(d)に記載されているように、半分が発泡体で半分が無発泡体からなる長方形のシートから、発泡体シートによるトレー及びこれと一体の透明な蓋からなる容器を製造することが本願出願前公知の発明であることを考え合わせれば、引用発明1において、容器本体と、該容器本体を覆う蓋体とが、長手方向の一側縁部でヒンジ部を介して一体的に連結成形されているようにすることは当業者が適宜行える設計事項であると認められる。

(相違点2)について
上記「(刊行物2とその記載事項)」における摘示事項(c)に記載されているように、卵の包装容器において、クッション性を有する発泡性材料で構成される容器本体と、透明性の材料で構成されるふた部とからなるものは、本願出願前公知のものであるから、引用発明1において、容器本体のみ発泡させて成形してあるようにすることは、当業者にとって容易である。


そして、本願発明を全体構成でみても、本願発明が奏する効果も、引用発明1及び刊行物1ないし2に記載された発明に基いて、当業者が予測することができたものである。


5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願出願日前に頒布された刊行物である刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-31 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-06 
出願番号 特願2005-370031(P2005-370031)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 谷治 和文
佐野 健治
発明の名称 鶏卵容器  
代理人 鹿島 義雄  

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