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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1222104 |
審判番号 | 不服2008-13747 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-02 |
確定日 | 2010-08-20 |
事件の表示 | 平成11年特許願第514896号「自動車に距離センサを固定するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月18日国際公開、WO99/13525、平成13年 4月10日国内公表、特表2001-505037〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 ・本願発明 本願は、1998年7月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年9月8日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「自動車に距離センサ、特に距離レーダーを固定するための装置であって、 距離センサ(1)が、閉じられたケーシング(3a,3b)に収容されており、 ケーシング(3a,3b)が、可動に保持体(2)に固定されており、 保持体(2)が、不動に自動車に固定可能である形式のものにおいて、 ケーシング(3)が、互いにほぼL字形に配置された3つのねじ(9,10,11)によって保持体(2)に固定可能であり、 ねじ(9,10,11)が、距離センサの組込状態でセンサ前面側からねじ締め可能であり、 少なくとも2つのねじ(10,11)のために螺出防止手段(4)が設けられていることを特徴とする、自動車に距離センサを固定するための装置。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭57-184293号(実開昭59-89723号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「レーザレーダ光軸調整装置」として、図面とともに次のア.?ウ.の事項が記載されている。 ア.「本考案は車両に装着するレーザレーダの光軸調整装置に関する。 レーザレーダは例えば第1図に示すように車両1のフロントグリル付近に装着され、このレーザレーダ2からレーザ光を前方車両に当てて反射させ、この反射光を受光して前方車両との車間距離を測定するものである。」 (第1頁第18行-第2頁第4行) イ.「一方、車両11へのレーザレーダ12の取付構造は左右及び上下に取付角度の調整ができるように第5図のように構成してある。即ち、レーザレーダ12のケース25の底面前部に左右方向に長い長孔26を2ヶ所に形成してネジ27により固定可能とし、底面後部の略中央をネジ27によりスプリング28を介して固定可能とし車体フレーム29に取り付けるようにしている。」 (第5頁第3-10行) ウ.「例えば、左右方向にずれていれば、レーザレーダ12のケース25後部のネジ27を支点として前部の長孔26に沿ってケース25を移動させ、上下方向にずれている場合には、後部のネジ27を回して調整することができる。」 (第6頁第6-11行) a)引用例のレーザレーダは、「レーザ光を前方車両に当てて反射させ、この反射光を受光して前方車両との車間距離を測定するもの」(上記ア.)であるから、「レーザレーダ12のケース25」(上記イ.)には、その内部に、センサを含むレーザレーダ本体が収容されていることは明らかであり、この収容されたレーザレーダ本体をあらためて“レーザレーダ”と称することができ、 b)第5図(A)にはケース25を上面から見た図が示されており、3つのねじ(27)が二等辺三角形に配置されていることを見てとることができ、 c)3つのねじ(27)のヘッド(“+”マーク)は、ケース25(“レーザレーダ”)を上面からみたときに露出することが第5図(A)からみてとれるから、ケース25(“レーザレーダ”)上面側から3つのねじ(27)がねじ締め可能といえる。 d)上記ウ.のケース25の方向調整に係る記載からは、ケース25は車体フレーム29に可動に固定されているということができる。 したがって、上記ア.?ウ.,a)?d)からして、引用例には、自動車にレーザレーダを固定するための装置として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「自動車にレーザレーダを固定するための装置であって、 レーザレーダが、閉じられたケース(25)に収容されており、 ケース(25)が、可動に車体フレーム(29)に固定されており、 ケース(25)が、二等辺三角形に配置された3つのねじ(27)によって車体フレーム(29)に固定可能であり、 ねじ(27)が、レーザレーダの組込状態でレーザレーダ上面側からねじ締め可能である、自動車にレーザレーダを固定するための装置。」 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 ・引用発明の「レーザレーダ」は、上記ア.の記載から測距をするものであるから、本願発明の「距離センサ、特に距離レーダ」に相当する。 ・引用発明の「ケース(25)」は本願発明の「ケーシング」に相当する。 ・引用発明の「二等辺三角形に配置された3つのねじ(27)によって車体フレーム(27)に固定可能であり」と、本願発明の「互いにほぼL字形に配置された3つのねじ(9,10,11)によって保持体(2)に固定可能であり、」とは、ねじ配置の相違、固定先の相違を除き、「3つのねじによって固定可能」である点で共通する。 ・引用発明の「レーザレーダ上面側からねじ締め可能」と、本願発明の「センサ前面側からねじ締め可能」とは、「所定の方向からねじ締め可能」である点で共通する。 すると、引用発明と本願発明とは次の点で一致する。 (一致点) 「自動車に距離センサ、特に距離レーダーを固定するための装置であって、 距離センサが、閉じられたケーシングに収容されており、 ケーシングが、可動に固定されており、 ケーシングが、3つのねじによって固定可能であり、 ねじが、距離センサの組込状態で所定の方向からねじ締め可能である、自動車に距離センサを固定するための装置。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 (相違点1) ケーシングの固定先が、本願発明は「不動に自動車に固定可能である」「保持体(2)」であるのに対し、引用発明は「車体フレーム(29)」である点、 (相違点2) 3つのネジの配置に関し、本願発明は「互いにほぼL字形」であるのに対し、引用発明は「二等辺三角形」である点、 (相違点3) 本願発明は「センサ前面側から」ねじ締め可能であるのに対し、引用発明では「センサ上面側から」ねじ締め可能である点、 (相違点4) 本願発明は「少なくとも2つのねじ(10,11)のために螺出防止手段(4)が設けられている」のに対し、引用発明はそのような手段は備えていない点。 4.当審の判断 上記相違点1について検討する。 ケーシングを自動車に固定する場合、保持体を介してケーシングを自動車に固定する、すなわち、ケーシングを「不動に自動車に固定可能である」「保持体」に固定することは、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された実願昭61-99021号(実開昭63-4845号)のマイクロフィルム(第2頁第13行?第4頁第14行、第1図;ケーシングとして、リテーニングリング(2)、フランジ(10)及びマウンティングリング(3)から成る組立体。保持体として、ハウジング(4)及びスクリューマウンティング(5)から成る組立体。)に示されるように周知技術であり、引用発明のケース(25)(「ケーシング」)に対して当該周知技術を適用して、ケース(25)(「ケーシング」)の固定先を「不動に自動車に固定可能である」「保持体」とすることは当業者が容易になし得たものである。 次に相違点2について検討する。 再掲すると、相違点2は、3つのネジの配置に関し、本願発明は「互いにほぼL字形」であるのに対し、引用発明は「二等辺三角形」であるというものであるが、頂角が鋭い二等辺三角形では、時計と反対回りに(頂角の点)-(底角の点)-(底角の点)を結ぶ線は、およそL字形になるということができるから、引用発明の二等辺三角形もおよそL字形と言い換えることができる。よって、引用発明の3つのネジの配置を「互いにほぼL字形」とすることも適宜になし得るものである。 また、本願発明の「互いにほぼL字形」を、90度で折れ曲がるL字形と解釈したとしても、一般的な方形状のケースを90度のL字形による3点で固定することが慣用であることを考慮すれば、引用発明において、3つのネジの配置を、この解釈の意味での「互いにほぼL字形」の配置とすることに格別の困難性は認められない。 次に相違点3について検討する。 引用発明の自動車に距離センサを固定するための装置において、ねじ締めを可能とする方向(ドライバーを挿入する方向)は、距離センサ(ケーシング)の設置場所が垂直か水平か、また、設置状態で距離センサのどの面が露出しやすいかなどに応じて、適宜に選択・変更し得るものであり、引用発明においても、「センサ前面側から」ねじ締め可能と変更することも必要に応じ適宜になし得るものである。 最後に相違点4について検討する。 一般に、ねじのために螺出(ねじ出し)防止手段を設けることは、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された、実願平2-8439号(実開平3-100303号)のマイクロフィルム(第2,3図、第7頁第14-20行)、実願平2-40669号(実開平3-131009号)のマイクロフィルム(第3,4図、第12頁第10-14行)、実願平3-96101号(実開平3-2020号)のCD-ROM(第2図、第15頁第26-29行(段落17))に示されるように周知であって、引用発明における各ねじに対して周知の螺出防止手段を適用することにも困難はないから、引用発明において「少なくとも2つのねじのために螺出防止手段」を設けるようにすることは当業者が容易になし得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-23 |
結審通知日 | 2010-03-24 |
審決日 | 2010-04-08 |
出願番号 | 特願平11-514896 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 当秀、西脇 博志 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
柳下 勝幸 新川 圭二 |
発明の名称 | 自動車に距離センサを固定するための装置 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 杉本 博司 |