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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B05B |
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管理番号 | 1222119 |
審判番号 | 不服2007-13838 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-14 |
確定日 | 2010-09-02 |
事件の表示 | 特願2001-351755「液体微量吐出用ノズルユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月20日出願公開、特開2003-144980〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成13年11月16日の出願であって、平成18年12月22日付けで拒絶理由が通知され、平成19年2月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年4月10日付けで拒絶査定がなされ、平成19年5月14日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年6月13日付けで手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされ、その後、平成21年2月12日付けで当審において書面による審尋がなされ、平成21年4月20日に回答書が提出され、平成21年5月14日付けで当審において上記平成19年6月13日付けの手続補正書によりなした明細書を補正する手続補正を却下する補正の却下の決定がなされ、平成21年5月29日付けで当審において拒絶理由が通知され、平成21年8月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであり、その請求項1及び2に係る発明は、上記平成21年8月3日付け手続補正書により補正された明細書及び上記平成19年2月26日付け手続補正書により補正された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 後端に形成された挿入面(14)と、挿入面(14)に設けられた流体流入口と、先端に形成された液体吐出口と、流体流入口および液体吐出口を連通する流路(15)とを具え、主たる鉱物相がコランダムからなる多結晶性材料で作成したノズルと、 最奥部に段部(27)が設けられたノズル挿入孔(26)が形成された金属材料製ノズルホルダーと、を含んで構成された液体微量吐出用ノズルユニットであって、 前記ノズルを、その上半部を前記流路(15)の径と比べ数倍以上大径の肉厚円筒形とし、その下半部を先細り形状とし、かつ、上半部の上下方向の長さが下半部の上下方向の長さよりも長くなるように形成したこと、 前記ノズル挿入孔(26)に前記挿入面(14)が前記段部(27)に当接するまで前記ノズルを圧入することにより、少なくとも前記ノズルの上半部の概ね半分以上を前記ノズル挿入孔(26)に挿入し、かつ、前記ノズルの下半部全体が前記ノズルホルダーから外界に露出するように前記ノズルの位置を規定したことを特徴とする液体微量吐出用ノズルユニット。」 2.引用文献 2-1.引用文献記載の発明 (1)当審において平成21年5月29日付けで通知した拒絶理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-40054号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) ア.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 平均粒径が1?10μm、粒度分布において粒径20μm以上の粒子がカットされた細粒化かつ分級された粉末材料を、ビヒクルと混練して、使用粘度が10000?100000mPa・sのペースト状にし、これを、内径40μm以上のノズルを用いたディスペンス方式の吐出装置により塗布することを特徴とするペーストの塗布方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、微細粉末材料からなるペーストの塗布方法、より具体的には画像表示装置の部材の固着材として使用する低融点ガラス(フリットガラス)の線引塗布方法、及びこの方法を用いて作製した画像表示装置に関する。」(段落【0001】) ウ.「【0018】塗布方式としては、ニードル(ノズル)でフリットペーストを吐出させるディスペンサーに、吐出部と被塗布部材との位置を相対的に移動・制御するロボットを組み合わせた装置が一般的に用いられている。」(段落【0018】) エ.「【0041】133はノズルであり、その寸法・形状は、前述のように所望の塗布形状により決定されるが、スペーサに適用する場合、ノズルの内径は通常数十?数百μmの範囲、特に市販されるノズルを用いることを考えると50μm以上の所望の線幅より若干小さめか若しくは同等の径のノズルを用いる。ノズル133の材質は、SUS等の金属材、プラスチック、セラミック等が用いられ特に限定されるものではないが、ペーストの滑り、流体的な流れ、加工性などに優れたルビーやサファイヤ等の焼結性セラミックが好ましい。」(段落【0041】) オ.「【0115】このフリットガラスペーストを内径100μmのルビー(Al_(2)O_(3))製ノズル164を装着したディスペンサフリット塗布装置を用いてフェースプレート86のブラックストライプ上に形成されたメタルバック上の所望の位置に塗布した。塗布は、120℃の乾燥工程をはさんで2回(2層)行い、その断面は図15(b)の断面図に示す形状となった。」(段落【0115】) (2)ここで、上記記載事項(1)ア.ないしオ.及び図面から、次のことが分かる。 上記記載事項(1)ア.ないしオ.及び図面から、引用文献には、焼結性ルビー(Al_(2)O_(3))製ノズル164を装着し、微量のペーストを吐出する吐出装置が記載されていることが分かる。 上記記載事項(1)ア.ないしオ.及び図面から、引用文献に記載された吐出装置のノズルは、ペースト流入口と、先端に形成されたペースト吐出口と、ペースト流入口およびペースト吐出口を連通する流路とを具え、上部が円筒形で、下部が先細り形状となり、ノズルの下半部全体が外界に露出するようになっていることが分かる。 (3)引用文献記載の発明 上記記載事項(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 「ペースト流入口と、先端に形成されたペースト吐出口と、ペースト流入口およびペースト吐出口を連通する流路とを具え、焼結性ルビーで作成したノズルを含んで構成されたペースト微量吐出用吐出装置であって、 前記ノズルを、その上半部を円筒形とし、その下半部を先細り形状とし、 前記ノズルの下半部全体が外界に露出するように前記ノズルの位置を規定した、 ペースト微量吐出用吐出装置。」 3.本願発明と引用文献記載の発明との対比 本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「ペースト」は、その技術的意義からみて、本願発明における「流体」及び「液体」に相当する。同様に、引用文献記載の発明における「ノズル」は、本願発明における「ノズル」に相当する。 また、「コランダム」は、「ルビー」を含む概念であるから、引用文献記載の発明における「焼結性ルビー」は、本願発明における「主たる鉱物相がコランダムからなる多結晶材料」に包含される。 また、引用文献記載の発明における「ペースト微量吐出用吐出装置」は、液体微量吐出用のノズルを含む装置という限りにおいて、本願発明における「ノズルユニット」に相当する。 そうすると、本願発明と引用文献記載の発明とは、 「流体流入口と、先端に形成された液体吐出口と、流体流入口および液体吐出口を連通する流路とを具え、主たる鉱物相がコランダムからなる多結晶材料で作成したノズルを含んで構成された液体微量吐出用のノズルを含む装置であって、 前記ノズルを、その上半部を円筒形とし、その下半部を先細り形状とし、 前記ノズルの下半部全体が外界に露出するように前記ノズルの位置を規定した、 液体微量吐出用のノズルを含む装置。」 で一致し、次の[相違点1]ないし[相違点3]において相違している。 [相違点1] 「液体微量吐出用のノズルを含む装置」について、本願発明においては、「ノズル」と「金属材料製ノズルホルダー」とを含んで「ノズルユニット」を構成しているのに対し、引用文献記載の発明においては、「金属材料製ノズルホルダー」とを含んで「ノズルユニット」を構成しているかどうかが明らかでない点。 [相違点2] 本願発明においては、「ノズルを、その上半部を流路の径と比べ数倍以上大径の肉厚円筒形とし、上半部の上下方向の長さが下半部の上下方向の長さよりも長くなるように形成した」のに対し、引用文献記載の発明においては、「ノズルを、その上半部を円筒形とし」ているものの、ノズルの上半部が流路の径と比べ数倍以上大径の肉厚であるかどうか明らかでなく、また、上半部の上下方向の長さが下半部の上下方向の長さよりも長くなるように形成したかどうか明らかでない点。 [相違点3] 本願発明においては、「ノズル挿入孔に挿入面が段部に当接するまでノズルを圧入することにより、少なくともノズルの上半部の概ね半分以上をノズル挿入孔に挿入し、かつ、ノズルの下半部全体がノズルホルダーから外界に露出するようにノズルの位置を規定した」のに対し、引用文献記載の発明においては、ノズルの下半部全体がノズルホルダーから外界に露出するようにノズルの位置を規定してはいるものの、ノズル挿入孔に挿入面が段部に当接するまでノズルを圧入することにより、少なくともノズルの上半部の概ね半分以上をノズル挿入孔に挿入したかどうか、明らかでない点。 4.当審の判断 上記[相違点1]ないし[相違点3]について検討する。 まず、[相違点1]について検討すると、「ノズル」と「金属材料製ノズルホルダー」とを含んで「ノズルユニット」を構成する点は、流体吐出用ノズルの分野における周知技術(以下、「周知技術1」という。たとえば、特開平6-10796号公報の請求項1及び図面、特開平6-7707号公報の段落【0003】、【0025】及び図面、実願昭57-116457号(実開昭59-21084号)のマイクロフィルムの実用新案登録請求の範囲及び図面を参照。)にすぎない。 したがって、引用文献記載の発明において、上記周知技術1を適用し、上記[相違点1]に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 次に、[相違点2]について検討すると、「ノズルを、その上半部を流路の径と比べ数倍以上大径の肉厚円筒形とし、上半部の上下方向の長さが下半部の上下方向の長さよりも長くなるように形成した」点は、流体吐出用ノズルの分野における周知技術(以下、「周知技術2」という。たとえば、特表2000-508962号公報(この文献は、平成21年5月14日付け補正の却下の決定において周知例として提示した文献でもある。)の図3、特開昭50-44239号公報の第1図ないし第7図、実願平2-42384号(実開平4-961号)のマイクロフィルムの第2図等を参照。)にすぎない。 したがって、引用文献記載の発明において、上記周知技術2を適用し、上記[相違点2]に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 最後に、[相違点3]について検討すると、「ノズル挿入孔に挿入面が段部に当接するまでノズルを圧入することにより、少なくともノズルの上半部の概ね半分以上をノズル挿入孔に挿入し、かつ、ノズルの下半部全体がノズルホルダーから外界に露出するようにノズルの位置を規定した」点は、流体吐出用ノズルの分野における周知技術(以下、「周知技術3」という。たとえば、特表2000-508962号公報の第10ページ第22行、第23行及び図3、特開昭50-44239号公報の第5ページ左下欄第9行ないし第20行及び第7図、特表2001-500962号公報(平成13年1月23日公開)の図2、実願平2-42384号(実開平4-961号)のマイクロフィルムの第2図等を参照。)にすぎない。 したがって、引用文献記載の発明において、上記周知技術3を適用し、上記[相違点3]に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 また、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び上記周知技術1ないし3から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 以上から、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-08-26 |
結審通知日 | 2009-09-02 |
審決日 | 2009-09-15 |
出願番号 | 特願2001-351755(P2001-351755) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土井 伸次、村山 禎恒 |
特許庁審判長 |
早野 公惠 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 液体微量吐出用ノズルユニット |
代理人 | 須藤 阿佐子 |
代理人 | 須藤 晃伸 |