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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1222150
審判番号 不服2007-23529  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-27 
確定日 2010-08-18 
事件の表示 平成 8年特許願第331972号「光ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月21日出願公開、特開平10-188448〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成8年12月12日に出願したものであって、平成18年3月10日付けで通知した拒絶の理由に対して平成18年5月16日付けで手続補正がされ、さらに平成19年1月10日付けで通知した拒絶の理由に対して平成19年4月13日付けで手続補正がされたが、平成19年1月10日付けで通知した拒絶の理由により平成19年5月23日付けで拒絶査定され、これに対し、平成19年8月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2. 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成19年4月13日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】 光軸と平行な方向に進退動可能に且つ光軸と交差する方向に左右動可能とした光学系をピックアップが備えており、このピックアップを介してディスク状の記録媒体に対しそのトラックに沿いながらデータの書込み又は書き込まれているデータの読取りを行なうようになっており、この書込み又は読取り動作に際し、光学系の進退動により記録媒体に対する光学系のフォーカス制御をなし、またピックアップにおける光学系の光軸をアクセス対象トラックに位置決めさせるためのトラッキング制御として、ピックアップ全体の移動により光軸をアクセス対象トラックの近傍に概略的に位置決めさせるフィードシークに連続して光学系の左右動により光軸をアクセス対象トラックに最終位置決めさせるトラックジャンプを行なうようになっている光ディスク装置において、
非書込み・読取り動作時間帯を利用して前記光学系の左右動についての最大可動範囲を求める学習を行ない、前記最大可動範囲の学習結果に基づき最大トラックジャンプ数を設定し、該最大トラックジャンプ数の範囲内で、同じく非書込み・読取り動作時間帯を利用し、任意の起点トラックから所定トラック数離れた他の目標トラックへのトラックジャンプ試験を行なうことで、前記所定トラック数に関する目標トラックへのトラックジャンプに最適な制御条件を求めるトラックジャンプ精度学習を行ない、そして前記最大可動範囲の学習結果とトラックジャンプ精度学習結果とに基づいて定めた最適制御条件により書込み又は読取り動作時のトラックジャンプ制御を行なうようにし、
前記トラックジャンプ精度学習では、ジャンプトラック数と電圧印加時間についてのテーブルを作成することを特徴とする光ディスク装置。」

3. 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4-76824号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審により付加したものである。)

(a)
「[発明が解決しようとしている課題]
しかしながら、上記従来の装置においては、前可動範囲を示す位置センサーの出力規定値を固定的に設定し、その規定値を位置センサーの出力が越えたら異常状態と判断していた。
そして、この様な固定的な規定値は、最悪のディスク、最悪の光ヘッドの組み合せにおいても、充分性能の得られる範囲を基準に設定していた。
そのため、性能の高いヘッド、品質の高いディスクの時にも対物レンズの可動範囲を過剰にせばめていた。
この様に対物レンズの可動範囲をせばめることは、アクセス時における光ビームスポットのジャンプ動作の範囲をせばめることとなりアクセスタイムの低下をまねく要因となっていた。」
(第2頁左上欄第15行?右上欄第9行)

(b)
「[実施例]
以下図面を用いて本発明を説明する。
第1図は本発明の実施例を示すブロック図である。
1は情報記録媒体であるところの光ディスクで、スピンドルモータ2により一定回転数で回転する。3は光ヘッドで半導体レーザ如き光源(不図示)、対物レンズ4、レンズ位置センサ5、再生信号検出センサ6等を備える。7はレンズ位置検出回路でレンズ位置センサ5の出力に基づいて対物レンズの位置を示すレンズ位置信号を生成する。
尚、ここで言うレンズ位置とは光ヘッド3の基台に対する対物レンズの相対位置を意味する。
8はアクチュエータ駆動回路で再生信号検出センサにて生成されたトラッキング及びフォーカシングエラー信号に基づいて不図示の対物レンズアクチュエータを駆動している。9は再生信号検出回路で再生信号検出センサの出力を基にトラッキング及びフォーカシング及び情報再生信号を生成する。10はエラー検知回路でレンズ位置信号に基づいて対物レンズの位置が所定の可動範囲を超えたことを検知する。尚、ここで言う可動範囲とは対物レンズのトラッキング方向(ディスクの半径方向)における光束のケラレ、反射光束のズレ、収差等を考慮した情報の記録、再生に元来必要な光学性能が得られる可動範囲であることを意味する。
又、11は再生信号検出回路の出力に基づいてアクチュエータ駆動回路8の制御及びエラー検知回路にエラースレッショルドを設定するマイクロコンピュータである。」
(第2頁左下欄第10行?右下欄第18行)

(c)
「 光ディスクは光デイスク装置に挿入されると装置内の所定の位置にセットされる。その状態で外部のホストコンピュータより記録若しくは再生指令が出されるとスピンドルモータ2が回転し光ディスクを規定の回転数で回転させる。次いで光源を駆動し光ビームを点灯させ、フォーカシングサーボをONする。
そして、フォーカシングサーボにより光ビームのスポットを光ディスクの記録面に対して合焦状態に引き込む。
次いで、マイクロコンピュータ11はアクチュエータ駆動回路8に対して所定のオフセット値を与え、対物レンズをトラッキング方向に移動させる。そのときに与えられた値によりレンズ位置センサの出力が第2図におけるa_(1)になったとする。(尚、第2図はレンズ位置センサの出力レベルを示す図で、横軸に対物レンズ位置、縦軸にレンズ位置センサの出力をとっている。又、レンズ位置センサ5は、例えば反射型フォトインタラプタを用いて、対物レンズに反射板を設け光ヘツド基台にフォトインタラプタを設け、受光量によってレンズ位置を知る様にしている。)又、同様に再生信号レベルも第3図におけるa_(1)を得る。(尚、第3図は再生信号検出回路9の出力レベルを示す図で、対物レンズ位置に対応して変化する。おおむね、対物レンズが中立位置にあるときに最大、その位置から離れるに従って低下していく。又、ここで言う再生信号検出回路9の出力とは情報再生信号、トラッキングエラー及びフォーカンングエラー信号等である。この再生信号は不図示のA/D変換器によりA/D変換してマイクロコンピュータ11へ入力される。)
以下、a_(2),a_(3),・・・とオフセット値をアクチュエータ駆動回路8に印加し、アクチュエータをトラッキング方向に駆動する。そして、第3図の再生信号スレッショルド以下になったレンズ位置センサの出力値、すなわちbの値を得る。同様に、反対側に対物レンズを移動させa_(4),a_(5),a_(6),cと再生信号がスレッショルド以下になるレンズ位置センサの出力値を検索し、第2図における出力値cを得る。(以上の作業はマイクロコンピュータ11によって行なっている。)
ここで得られたレンズ位置センサ出力値bおよびcの値は、マイクロコンピュータによってエラー検知回路10はエラースレッショルドとして設定する。
そして、その後は、トラッキングサーボを引き込み、通常の記録又は再生動作が行なわれる。
又、記録又は再生動作中は、トラッキング及びフォーカシングサーボ回路(第1図においては、再生信号検出センサ6、再生信号検出回路9、マイクロコンピュータ11、アクチュエータ駆動回路8によって構成される回路を示す。)によって光ビームスポットはフォーカシング及びトラッキング制御されている。
又、同時に対物レンズはレンズ位置センサ5によって光ヘッドの基台に対する相対位置を監視されている。
そして、先にエラー検知回路10に設定されたエラースレッショルドをレンズ位置センサの出力が越えたらエラー検知回路10はエラー検知信号を発生し、不図示のCPUに送る。CPUでは、その旨の信号を受けたら記録又は再生動作を中断する。この様にして、記録又は再生エラーを防止している。」
(第3頁左上欄第1行?右下欄第1行)

(d)
「 尚、上記実施例では、記録、再生動作前にエラースレッショルドの検出を行なったが、これに限らず検出は装置の組み立て時における調整時においてのみ行なう様にしても良い。」
(第3頁右下欄第18行?第4頁左上欄第1行)

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案して記載を整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。

「 トラッキング及びフォーカシングエラー信号に基づいて対物レンズアクチュエータにより駆動される対物レンズを光ヘッドが備え、
記録又は再生動作中は、フォーカシング及びトラッキング制御されている光デイスク装置において、
記録、再生動作前に、対物レンズをトラッキング方向に移動させ再生信号がスレッショルド以下になるレンズ位置センサの出力値を検索し対物レンズの可動範囲を設定する
光ディスク装置。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平2-33732号公報(以下、「引用例2」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審により付加したものである。)

(e)
「 また、実際のトラックジャンプに際しては、例えば光ディスクの場合の内周側へのジャンプと外周側へのジャンプとでは、その標準的なトラッキングエラー信号S1における反転位置等に波形パターンの相違を有する。しかも、これまでは、1トラックのジャンプの場合のみ説明したが、複数のトラックを一度にジャンプする場合には、またそれぞれの標準的なトラッキングエラー信号S_(1)に波形パターンの相違を有するものである。
従って、これら各種のトラックジャンプについて、同一の基準によって加速減速時間Tを定めたのでは、それぞれに最適な制御を行うことができないという問題点も生じていた。」
(第3頁左下欄第3?15行)

(f)
「 標準値は、マイクロコンピュータ10のRAM内に記憶された値である。RAM内には、下記第1表及び第2表に示すように、通常のトラックジャンプの際に用いる第1テーブルと連続ジャンプの際に用いる第2テーブルとの2種類のテーブルが配置されている。また、各テーブルは、そのトラックジャンプが内周側か外周側かによって区分され、またジャンプするトラック数によっても区分されて、それぞれの標準値が二次元配列状に格納されている。これらの標準値は、各トラックジャンプの種類ごとにその標準的なトラッキングエラー信号S_(1)における基準レベルV_(R)とピーク値V_(P)との比が基準となる。ただし、これらの標準値は、後に説明するように、トラッキングアクチュエータ5の特性変化等に対応して順次修正を受けることになる。」
(第5頁左下欄第15行?右下欄第10行)

(g)
「 ここで、例えば、3トラックのジャンプを行う場合を第3図に基づいて説明する。ゲートコントロール信号S_(3)が“LOW”になると同時にジャンプ信号S_(2)が十V_(3)の加速信号となる。そして、トラッキングエラー信号S_(1)が一旦ピーク値に達した後に基準レベルV_(R3)と交差すると、比較器14の出力信号S_(4)がインパルス状に発せられる。最初の信号S_(4)が発せられると、ジャンプ信号S_(2)の加速信号が停止され、マイクロコンピュータ10によって加速減速時間T_(3)が計時される。なお、この加速減速時間T_(3)は、一般にジャンプするトラック数が多くなるほど長くする必要がある。従って、基準レベルV_(R3)も、ジャンプするトラック数が多くなる程低い値となる必要があり、このように各標準値が設定されている。ジャンプ信号S2が加速信号の後に停止されると、光ピックアップ1は惰性で移動を行うので、トラッキングエラー信号S_(1)もトラック間を移動するたびに同様のパターンを繰り返す。この間、マイクロコンピュータ10は、比較器14の出力信号S_(4)を計数し、3回目の信号S4を受けると、ジャンプ信号S_(2)を-V_(3)の減速信号とする。そして、この減速信号が加速減速時間T_(3)だけ印加されると、ジャンプ信号S_(2)を終了し、ゲートコントロール信号S_(3)を“HIGH”に戻す。すると、トラッキングザーボが復帰して、3トラックのジャンプが完了する。
従って、本実施例のトラックジャンプ装置は、第1テーブル又は第2テーブルから選択された標準値とそのときのピーク値V_(P)とによって基準レベルV_(R)を設定し、所定のトラックジャンプを行う。」
(第6頁右下欄第15行?第7頁右上欄第6行)

(h)
「(e)トラックジャンプ装置の動作
上記トラックジャンプ装置の動作を第5図及び第6図のフローチャートに基づいて説明する。
まず、第5図に示すように、装置の電源をONにすると、ステップ(以下、「S」という)1において、RAM内の第1テーブルと第2テーブルに標準値の初期値を設定する。この初期値は、ROM内に記憶されており、前述のように各種類のトラックジャンプにおける標準的なトラッキングエラー信号S_(1)のピーク値V_(P)と基準レベルV_(R)との比を基準として定められた値である。そして、この値は、それぞれのトラックジャンプについて経験的に求める他、あるトラックジャンプの値を元に各ジャンプの種類に応じて重みを付加するごとにより求めることもできる。初期値の設定が完了すると、各種類のトラックジャンプについて自動的に試行ジャンプを行う(S2?S4)。この試行ジャンプは、まず各種類のトラックジャンプを順次自動的に選択し(S2)、このジャンプを実行すると共にその際に選択された標準値の修正を行う(S3)。そして、試行ジャンプが完了したかどうかの判断を行って(S4)、まだ完了していない場合には、S2に戻り再度試行ジャンプを繰り返す。
このS3におけるトラックジャンプの実行と標準値の修正処理の内容を第6図に基づいて説明する。
まず第1テーブル又は第2テーブルからそのトラックジャンプの種類に対応した標準値を選択する(S21)。そして、標準値が選択されると、そのトラックジャンプが実行され(S22)、ジャンプの終了を待つ(S23)。このジャンプの終了は、ゲートコントロール信号S_(3)が“HIGH”に立ち上がることにより検出することができる。トラックジャンプが終了すると、信号S_(5)・S_(6)の状態を調べる(S24・S25)。S24において、信号S_(5)が“HIGH”であることを検出した場合には、そのとき選択された標準値の値を少し増加するように修正し、これをテーブルの元の位置に戻す(S26)。標準値が増加されると、ピーク値V_(P)が同じ場合であっても、基準レベルV_(R)が高くなるので、次回以降の同じトラックジャンプの際に加速減速時間Tが短くなり飛び過ぎが是正されることになる。S25において、信号S_(6)が“HIGH”であることを検出した場合には、そのとき選択された標準値の値を少し減少するように修正し、これをテーブルの元の位置に戻す(S27)。標準値が減少されると、ピーク値V_(P)が同じ場合であっても、基準レベルV_(R)が低くなるので、次回以降の同じトラックジャンプの際に飛び不足が是正されることになる。S26又はS27において標準値の修正が終了すると、S3の処理も完了する。また、S24及びS25において信号S_(5)・S_(6)がいずれも“LOW”であると判断された場合にも、標準値を修正することなくS3の処理を完了する。
この試行ジャンプは、各種類のトラックジャンプについて安定したジャンプが行えるようになるまで繰り返される。従って、第5図において、標準値の修正を受けてS3の処理を完了した場合には、必ずS4からS2に戻り、このS2では前回と同し種類のトラックジャンプが再度選択されることになる。また、標準値の修正を受けることなくS3の処理を完了した場合には、S4において全ての種類のトラックジャンプについて試行ジャンプが完了したかどうかの判断がなされ、まだの場合にはS2に戻り、次の種類のトラックジャンプが選択されることになる。
この試行ジャンプにより、装置製造時の初期調整が不要となる。また、この試行ジャンプは、電源ONごとに実行されるので、装置の経時変化に対応することも可能となる。なお、電源OFF時にバックアップされたS-RAM等に各テーブルの内容を退避させるようにすれば、このような試行ジャンプを省略することも可能である。」
(第9頁右上欄第19行?第10頁右上欄第13行)

上記引用例2記載事項及び図面を総合勘案して記載を整理すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。

「 装置の電源をONにした時に、
安定したジャンプが行えるようになるまで各種類のトラックジャンプについて自動的に試行ジャンプを行い、
試行ジャンプの結果に基づいてトラックジャンプを実行し、
試行ジャンプでは、トラックジャンプの際に用いる、ジャンプするトラック数によって区分されたテーブルに格納された標準値の修正を行う、
トラックジャンプ装置。」

4. 対比
そこで、本願発明を、引用発明1と比較する。

引用発明1の「トラッキング及びフォーカシングエラー信号に基づいて対物レンズアクチュエータにより駆動される対物レンズ」「光ヘッド」は、本願発明の「光軸と平行な方向に進退動可能に且つ光軸と交差する方向に左右動可能とした光学系」「ピックアップ」に相当することは明らかである。
また、引用発明1の「記録又は再生動作中は、フォーカシング及びトラッキング制御されている」点は、本願発明の「この書込み又は読取り動作に際し、光学系の進退動により記録媒体に対する光学系のフォーカス制御をなし、またピックアップにおける光学系の光軸をアクセス対象トラックに位置決めさせるためのトラッキング制御」を行う点に相当する。

引用発明1の「記録、再生動作前」は、本願発明の「非書込み・読取り動作時間帯」に相当し、引用発明1の「対物レンズをトラッキング方向に移動させ再生信号がスレッショルド以下になるレンズ位置センサの出力値を検索し対物レンズの可動範囲を設定する」点は、本願発明の「前記光学系の左右動についての最大可動範囲を求める学習を行ない」「前記最大可動範囲の学習結果」「により書込み又は読取り動作時のトラックジャンプ制御を行なう」点に相当する。

引用発明1の「光ディスク装置」は、本願発明の「光ディスク装置」に相当する。

すると、本願発明と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
光軸と平行な方向に進退動可能に且つ光軸と交差する方向に左右動可能とした光学系をピックアップが備えており、このピックアップを介してディスク状の記録媒体に対しそのトラックに沿いながらデータの書込み又は書き込まれているデータの読取りを行なうようになっており、この書込み又は読取り動作に際し、光学系の進退動により記録媒体に対する光学系のフォーカス制御をなし、またピックアップにおける光学系の光軸をアクセス対象トラックに位置決めさせるためのトラッキング制御を行なうようになっている光ディスク装置において、
非書込み・読取り動作時間帯を利用して前記光学系の左右動についての最大可動範囲を求める学習を行ない、前記最大可動範囲の学習結果により書込み又は読取り動作時のトラックジャンプ制御を行なうようにする光ディスク装置。

一方で、以下の点で相違する。
<相違点>
(相違点1)本願発明は、光学系の光軸をアクセス対象トラックに位置決めさせるために、「ピックアップ全体の移動により光軸をアクセス対象トラックの近傍に概略的に位置決めさせるフィードシークに連続して光学系の左右動により光軸をアクセス対象トラックに最終位置決めさせるトラックジャンプを行なう」のに対し、引用発明1では「フィードシーク」「トラックジャンプ」について特定されていない点。

(相違点2)本願発明は「光学系の左右動についての最大可動範囲を求める学習を行な」い、その後「最大可動範囲の学習結果に基づき最大トラックジャンプ数を設定」しているのに対し、引用発明1では「対物レンズの可動範囲を設定」しているのみで、「最大トラックジャンプ数」の設定について特定されていない点。

(相違点3)本願発明は、「非書込み・読取り動作時間帯を利用し、任意の起点トラックから所定トラック数離れた他の目標トラックへのトラックジャンプ試験を行なうことで、前記所定トラック数に関する目標トラックへのトラックジャンプに最適な制御条件を求めるトラックジャンプ精度学習を行ない」、「トラックジャンプ精度学習結果」「に基づいて定めた最適制御条件により書込み又は読取り動作時のトラックジャンプ制御を行な」い、かつ「前記トラックジャンプ精度学習では、ジャンプトラック数と電圧印加時間についてのテーブルを作成する」のに対し、引用発明1では「トラックジャンプ精度学習」について特定されていない点。

5. 判断
(相違点1)について
光学系の光軸をアクセス対象トラックに位置決めさせるために、「ピックアップ全体の移動により光軸をアクセス対象トラックの近傍に概略的に位置決めさせるフィードシーク」、及びフィードシークに連続して「光学系の左右動により光軸をアクセス対象トラックに最終位置決めさせるトラックジャンプ」を行なう点は、例えば特開昭59-165277号公報(第2頁左上欄第16行?右上欄第4行に記載された、「第2の移動手段を駆動して変換手段の走査位置を所望するトラック近傍に移動させ」る点、「その後に第1の移動手段を駆動してトラックからトラックへ飛び越し走査させ所望するトラックを検索」させる点が、それぞれ本願発明の「フィードシーク」、「トラックジャンプ」に相当する。)や特開平2-103735号公報(第2頁右上欄第20行?右下欄第4行に記載された「おおよその距離をリニアモータを駆動して決め、その付近のトラックにビームスポットを当てる」点、「所望のトラック位置まで正確に移動させるには、光ヘッドのトラッキングアクチュエータを駆動させる」点が、それぞれ本願発明の「フィードシーク」、「トラックジャンプ」に相当する。)に記載されている様に周知技術にすぎず、この点を引用発明1に採用し、本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得たものである。

(相違点2)について
引用例1の、特に上記3.(a)の「この様に対物レンズの可動範囲をせばめることは、アクセス時における光ビームスポットのジャンプ動作の範囲をせばめることとなりアクセスタイムの低下をまねく要因となっていた。」等の記載から明らかなように、引用例1は、ジャンプ動作の範囲をできるだけ大きくすることを目的とするものであるところ、「対物レンズの可動範囲」と「最大トラックジャンプ数」とは、規格等により規定されている既知のトラックピッチを用いれば、単なる換算の関係に過ぎないことは明らかである(例えば、特開平5-314689号公報の【0078】等参照。)から、引用発明1においても、設定された可動範囲に基づいて最大トラックジャンプ数を求めることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点3)について
引用発明2の「装置の電源をONにした時」は本願発明の「非書込み・読取り動作時間帯」に相当する。
そして、上記3.(e)を参照すると、引用発明2において「各種類のトラックジャンプ」は、「複数のトラックを一度にジャンプする場合」、すなわち「任意の起点トラックから所定トラック数離れた他の目標トラックへのトラックジャンプ」も含んでいることは明らかであるから、引用発明2の「安定したジャンプが行えるようになるまで各種類のトラックジャンプについて自動的に試行ジャンプを行」う点、及び「試行ジャンプの結果に基づいてトラックジャンプを実行」する点は、本願発明の「任意の起点トラックから所定トラック数離れた他の目標トラックへのトラックジャンプ試験を行なうことで、前記所定トラック数に関する目標トラックへのトラックジャンプに最適な制御条件を求めるトラックジャンプ精度学習を行な」う点、及び「トラックジャンプ精度学習結果とに基づいて定めた最適制御条件により書込み又は読取り動作時のトラックジャンプ制御を行な」う点に相当する。
また、引用発明2の「ジャンプするトラック数」「テーブル」は、本願発明の「ジャンプトラック数」「テーブル」に相当することは明らかであり、引用発明2においては、「標準値」と、そのときのピーク値V_(P)とにより設定された基準電圧レベルV_(R)に基づいて「加速減速時間」、すなわち「電圧印加時間」が決められるので、「標準値」は「電圧印加時間について」の値に他ならない。すると、引用発明2の「試行ジャンプでは、トラックジャンプの際に用いる、ジャンプするトラック数によって区分されたテーブルに格納された標準値の修正を行う」点は、本願発明の「前記トラックジャンプ精度学習では、ジャンプトラック数と電圧印加時間についてのテーブルを作成する」点に相当する。
引用発明2は引用発明1と同一の光ディスク装置に関するものであるから、引用発明1に引用発明2を適用し、「非書込み・読取り動作時間帯を利用し、任意の起点トラックから所定トラック数離れた他の目標トラックへのトラックジャンプ試験を行なうことで、前記所定トラック数に関する目標トラックへのトラックジャンプに最適な制御条件を求めるトラックジャンプ精度学習を行ない、トラックジャンプ精度学習結果とに基づいて定めた最適制御条件により書込み又は読取り動作時のトラックジャンプ制御を行な」い、「トラックジャンプ精度学習では、ジャンプトラック数と電圧印加時間についてのテーブルを作成する」よう構成することは、当業者が容易になし得たものである。
このとき、「最大トラックジャンプ数の範囲内」で「トラックジャンプ精度学習」を行うようにすることは、当然の配慮にすぎない。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用例1乃至2に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-16 
結審通知日 2010-03-23 
審決日 2010-04-07 
出願番号 特願平8-331972
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古河 雅輝  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 酒井 伸芳
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 光ディスク装置  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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