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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1222156
審判番号 不服2008-19908  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-05 
確定日 2010-08-18 
事件の表示 特願2004-504493「通信装置の動作特性の遠隔変更方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月20日国際公開、WO03/96660、平成17年 8月18日国内公表、特表2005-525051〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成14年5月8日を国際出願日とする出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「通信装置の動作特性を着信メッセージまたは呼をユーザに知らせるために選択された動作特性グループに遠隔から変更するための方法であって;
-被呼装置(MS2)が制御データを受信するステップと;
-前記受信した制御データに従い前記被呼装置(MS2)の動作特性グループを、着信メッセージまたは呼をユーザに知らせるために選択された動作特性グループに変更するステップと;
-前記ステップで設定した前記動作特性グループに従い着信メッセージまたは呼をユーザに信号伝達するステップ、を含み、前記動作特性グループは同時に変更可能な複数の動作特性を含む、通信装置の動作特性変更方法。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-125026号公報(以下、「引用例」という。)には「携帯通信端末のデータ設定方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 携帯通信端末のデータ設定を遠隔より行う携帯通信端末のデータ設定方法において、
キー入力された前記携帯通信端末の設定データをキャラクタデータにより前記携帯通信端末に網を介して送信し、
前記携帯通信端末がこの文字メッセージを受信し、その内容がデータ設定であることを検出すると、この文字メッセージに示されたデータ設定を実行することを特徴とする携帯通信端末のデータ設定方法。
・・・(中略)・・・
【請求項9】 請求項1に記載のデータ設定方法において、前記携帯通信端末のデータ設定の内容は、第三者による不正使用を防止するダイヤルロック設定、着信時の呼び出し音量を変更する着信音量設定、第三者に電話帳に登録されたデータを見ることができないようにするシークレット設定、記憶している発呼者端末の電話番号を読み出すメモリダイヤル設定、暗証番号の変更を行う暗証番号設定、電源をOFFしてバッテリのセーブを行うバッテリセーブ設定のいずれかまたはこれら組み合わせたものを含むことを特徴とする携帯通信端末のデータ設定方法。」(第2頁第1-2欄)

イ.「【0017】図4に示す携帯通信端末は、メール機能を備えており、電源の「ON」、「OFF」に関係なく発呼者端末より送信されたメールをメールセンターを介して受信することができる。この携帯通信端末はまた、メールによるキャラクタデータを受信したとき、このメールにデータ設定のリード/ライトに関する情報が含まれているかどうかを判断し、含まれている場合には該当する処理を行う。このように本実施の形態では、メールにデータ設定に関する情報を含ませているので、携帯通信端末のデータ設定を行うにあたって網側が関与することは無い。」(第3頁第4欄-第4頁第5欄)

ウ.「【0020】当該端末装置はまた、着信時にこの装置を振動させて着信を知らせる振動モータ66と、基地局からの電波を受信したり基地局への電波を送信するアンテナ68と、アンテナ68を介して送受信する音声信号やデータ信号に対してRF送信処理またはRF受信処理を行うRF回路70と、スピーカ72と、マイク74とを備える。当該端末装置はさらに、RF回路70でRF受信処理された受信信号をAF処理してスピーカ72から音声出力するとともに、マイク74から入力した音声信号をAF処理してRF回路70に出力するAF回路76を備える。」(第4頁第5欄)

エ.「【0022】すなわち、CPU51は、メール等でキャラクタデータを受信すると、データ設定のリード/ライトに関する情報か否かを判断し、データ設定に関する情報の場合には、この情報の内容に従って図1?図3に示すフローチャートの処理を実行する。なお、図1、図2および図3に示された各フローはそれぞれ、丸で囲まれた「A」、「B」により結合されることにより、データ設定に関する一連の処理を示す。
【0023】CPU51は、データ設定のリード/ライトかどうかの識別を、キャラクタデータの先頭にエスケープコードが付与されているかどうかで判断する。図1?図3にはこのエスケープコードが付与されていた場合の処理フローが示されている。また、本実施の形態において、設定したいデータや読み出したいデータは、メール機能やキャラクタデータをエンド・エンドで伝達されるレイヤ3の呼制御メッセージ(CCメッセージとも称す)により伝達される。」(第4頁第5-6欄)

オ.「【0024】このようにエンド・エンドでキャラクタデータを送信する手段としては、例えば図5に示すユーザ・ユーザ情報を使用する。ユーザ・ユーザ情報には、図5に示されているように、ユーザ・ユーザ情報要素識別子、ユーザ・ユーザ内容長、プロトコル識別子およびユーザ情報により構成され、この中のユーザ情報を用いてデータ設定を行うキャラクタデータを送信する。
【0025】図6にはユーザ情報に記述されるフォーマット、すなわち、(a)には「読み込み/書き込みフォーマット」が、(b)には「読み出しフォーマット」がそれぞれ示されている。「読み込み/書き込みフォーマット」はリモート設定を行う操作者側が使用するデータフォーマットである。また、「読み出しフォーマット」はリモート設定によりデータ設定の要求を行った操作者側にデータを送信するときに使用するデータフォーマットである。
【0026】「読み込み/書き込みフォーマット」は、4バイトデータで指定する「暗証番号」と、データ設定を行う旨の内容が記述される「データ設定シフトコード」(なお、ここにはユーザ情報で使用されていないコードが割り当てられる)と、リードまたはライトの種別を指定する「リード/ライト種別」と、データ設定する種別(ダイヤルロック、着信音量、シークレットおよびメモリダイヤル等)を指定する「データ種別」と、データの長さを記述する「データ長」と、可変長データである「データ」と、可変長アドレスデータである「送信先アドレス」とにより構成されている。
【0027】また、「読み出しフォーマット」は、読出結果のOK/NGをそれぞれ0x80と0x00で記述する「リード結果」と、要求されたデータ設定種別(ダイヤルロック、着信音量、シークレットおよびメモリダイヤル)を記述するデータ種別と、データの長さを記述する「データ長」と、返信する可変長データを記述する「データ」とにより構成されている。
【0028】次に、図1?図3に戻ってデータ設定のリード/ライトにおける処理フローを説明する。図4に示した本実施の形態の携帯通信端末がメール等でキャラクタデータを受信し、このキャラクタデータの先頭にエスケープコードが付与されてデータ設定のリード/ライトに関する情報だとCPU51が判断すると、まず、暗証番号が正しいかどうかのチャックを行う(100)。すなわち、受信したキャラクタデータの中の送られてきた暗証番号、例えば「1234」が、携帯通信端末に設定されている暗証番号と一致するか否かのチャックを行う。
【0029】そして、照合した暗証番号が正しければ、データ設定シフトコードのチェックを行い(102)、このデータ設定シフトコードも正しければ要求コードの実行に移る。一方、暗証番号やデータ設定シフトコードが正しくない場合には処理を終了する(104)。
【0030】データ設定シフトコードが正しい場合、要求コードの内容により以下の処理を行う。すなわち、要求コードが「ライト」の書込みの場合(106)、データ種別にダイヤルロックに関する設定(110)、着信音量に関する設定(116)、またはシークレットに関する設定(122)、のいずれが指定されているかを確認する。
【0031】その結果、処理110のダイヤルロックに関する設定であれば、図6の(a)の「データ」に示されているダイヤルロックの内容にしたがってダイヤルロックを設定し(112)、処理を終了する(114)。具体的には、例えば「0」が「ロック解除」、「1」が「ロック設定」であれば、図6の(a)の「データ」には「0」か「1」のいずれかが記される。もし、これ以外の数値が「データ」に記されている場合にはダイヤルロックの設定は無視され、実行されることはない。
【0032】なお、本実施の形態におけるダイヤルロック設定は、単にセキュリティのためにダイヤルロックの設定を行うのではない。すなわち、ここでのダイヤルロック設定では、携帯通信端末の操作を可能にするために、ダイヤルロック解除をリモート操作で行った後に設定を前のロック状態に戻すことを目的としている。また、間違えて他の項目の設定をするつもりが、ダイヤルロック解除のリモート操作を行ってしまったときに、この設定を戻すためにダイヤルロックをリモートで行えるようにしている。
【0033】また、処理116の着信音量に関する設定であれば、図6の(a)の「データ」に示されている着信音量の内容にしたがって着信音量を設定し(118)、処理を終了する(120)。具体的には、例えば「0」が「OFF」、「1」が「小」、「2」が「中」、「3」が「大」のように予めきめてあればこれら数値が図6の(a)の「データ」に記される。これ以外の数値が「データ」に記されていた場合にはこの処理が無視される。
【0034】さらに、処理122のシークレットに関する設定であれば、図6(a)の「データ」に示されているシークレットの内容にしたがってシークレット設定を行い(124)、処理を終了する(126)。もし、データ種別がダイヤルロック、着信音量またはシークレットのいずれにも該当しない場合にはCPU51は処理を終了する(128)。
【0035】なお、データ設定の種類としては、上記の3種類の他に例えば暗証番号の変更を行う暗証番号設定や電源を「OFF」してバッテリのセーブを行うバッテリセーブ設定等を含んでもよい。すなわち、ここで説明したデータ設定はあくまで一例を示したもので、携帯通信端末の全機能を対象とすることも勿論可能である。」(第4頁第6欄-第5頁第8欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
・引用例記載の「携帯通信端末のデータ設定方法」において、そのデータ設定の具体的内容は、ダイヤルロック設定、着信音量設定、シークレット設定、メモリダイヤル設定、暗証番号設定、バッテリセーブ設定(摘記事項アの【請求項9】)であり、これらは携帯通信端末の動作特性の設定ということができ、さらに、これらは組み合わせて設定することもできるともあるので動作特性グループの設定ということができ、その場合にはこれらの動作特性は同時に設定可能ということができ、
・さらに、これらの設定が動作特性の変更を目的とすることは明らかであるから、引用例のデータ設定方法は携帯通信端末の動作特性変更方法ということができ、
・動作特性として設定されるデータは「データ種別」で指定されて(摘記事項オの段落【0026】)メールや呼制御メッセージで送信される(摘記事項イ、エ)から、選択された動作特性ということができ、
・携帯通信端末が受信した設定データはCPU51により判断され、データ設定に関する一連の処理が行われる(摘記事項エの段落【0022】)から、上記受信した設定データは受信した制御データということができ、
・各種データ設定のうち着信音量設定が行われた場合には、新たに設定された着信音量で携帯通信端末への着呼をユーザに報知するよう動作することは自明であって、これをユーザに信号伝達すると称することは適宜であり、
以上を総合すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
「携帯通信端末の動作特性を選択された動作特性グループに遠隔から変更するための方法であって、
携帯通信端末が制御データを受信するステップと、
前記受信した制御データに従い前記携帯通信端末の動作特性グループを選択された動作特性グループに変更するステップと、
前記ステップで設定した前記動作特性グループのうち着信音量設定に従い呼をユーザに信号伝達するステップを含み、前記動作特性グループは同時に変更可能な複数の動作特性を含む、携帯通信端末の動作特性変更方法。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「携帯通信端末」は本願発明の「通信装置」や「被呼装置(MS2)」に相当する。
また、両発明は、ユーザに信号伝達するステップにおいて、着信音量(呼び出し音量)設定に従い信号伝達する点で共通している。
したがって、両者は以下の点で一致ないし相違している。
(一致点)
「通信装置の動作特性を選択された動作特性グループに遠隔から変更するための方法であって、
被呼装置(MS2)が制御データを受信するステップと、
前記受信した制御データに従い前記被呼装置(MS2)の動作特性グループを選択された動作特性グループに変更するステップと、
前記ステップで設定した前記動作特性グループのうち着信音量設定に従い呼をユーザに信号伝達するステップを含み、前記動作特性グループは同時に変更可能な複数の動作特性を含む、通信装置の動作特性変更方法。」
(相違点1)
本願発明の「動作特性グループ」は「着信メッセージまたは呼をユーザに知らせるために選択された」ものであるのに対し、引用発明の「動作特性グループ」は単に「選択された」ものである点。
(相違点2)
「ユーザに信号伝達するステップ」に関し、本願発明は「前記動作特性グループに従い」、「着信メッセージまたは呼を」ユーザに信号伝達するのに対し、引用発明は「前記動作特性グループのうち着信音量設定に従い」、「呼を」ユーザに信号伝達するものである点。

4.検討
そこで、上記相違点1,2につき以下にまとめて検討する。
引用例に記載された携帯通信端末は、着信を知らせる振動モータ66を有し(「2.引用発明」の摘記事項ウ)、メール機能を備える(「2.引用発明」の摘記事項イ)ことが記載されている。
そして、一般に通信装置への着呼をユーザに信号伝達する方法として、音による信号伝達方法、振動による信号伝達方法、光による信号伝達方法はいずれもよく知られているところであって、これらの信号伝達方法の中から複数の方法を同時に実行し得るように構成することも、例えば、拒絶査定において引用された文献である特開平8-88674号公報(段落【0034】-【0037】)や特開平10-161829号公報(段落【0017】、【0022】、【図3】)の他にも特開2000-134361号公報(段落【0018】)等に記載されているように周知技術である。
さらに、メッセージ送受信機能を備えた通信装置においては、メッセージ着信の際にも通話呼の着呼と同様にユーザに信号伝達することは普通に行われていることに過ぎないことにも鑑みれば、引用発明において、振動も動作特性グループのひとつとして選択するとともに、音および振動をメール着信時および通話呼の着呼時の信号伝達方法として採用することにより、「動作特性グループ」を「着信メッセージまたは呼をユーザに知らせるために選択された」ものとすること、および、「前記動作特性グループに従い」、「着信メッセージまたは呼を」ユーザに信号伝達するようにすること、はいずれも当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、上記相違点1,2は格別の相違とすることはできない。
そして、本願発明が奏する効果も引用発明および周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-19 
結審通知日 2010-03-23 
審決日 2010-04-08 
出願番号 特願2004-504493(P2004-504493)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸次 一夫  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 松元 伸次
新川 圭二
発明の名称 通信装置の動作特性の遠隔変更方法  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  
代理人 下道 晶久  
代理人 水谷 好男  
代理人 島田 哲郎  

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