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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1222157 |
審判番号 | 不服2008-22386 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-01 |
確定日 | 2010-08-18 |
事件の表示 | 平成11年特許願第167662号「接着テープ用収納ケース」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月 7日出願公開、特開2000- 1254〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成10年3月31日に特許出願した特願平10-85790号(以下,「原出願」という)の一部を平成11年6月15日に新たな特許出願としたものであって,平成20年5月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2.原査定 原査定における拒絶の理由の一つは,以下のとおりのものと認める。 「この出願の請求項1,6,7に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1;実願昭63-7563号(実開平1-111661号)のマイクロ フィルム 2;実願平1-78106号(実開平3-17009号)のマイクロ フィルム」 上記刊行物のうち,実願昭63-7563号(実開平1-111661号)のマイクロフィルムを,以下,「引用例」という。 第3.当審の判断 1.本願発明 本願の請求項7に係る発明(以下,「本願発明」という)は,願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「ロール状の接着テープを回転可能に収納するとともにテープ引出し口を有するケース本体と,前記接着テープに沿うように配した回転ドラムと,この回転ドラムを回転させる引き金と,引き出される接着テープに対して接近する方向と離反する方向とに往復移動が可能なカッタと,このカッタを移動させる操作部材とからなり,引き金を引いて回転ドラムを回転させることにより接着テープをテープ引出し口から引出し,引出した接着テープを操作部材を介してカッタを移動させることにより切断することを特徴とする接着テープ用収納ケース。」 2.刊行物記載事項 原出願の出願前に頒布された刊行物である引用例には,図面とともに次の事項が記載されている。 (a) 「具体的には,上記ケース本体1並びに蓋体2はプラスチックによって成形され,このケース本体1はテープ収納部4と突出形状部5とから成る。テープ収納部4には中央に円形孔6が形成してあり,この円形孔6部分に後述する引張部材を配して,片手でこの引張部材を操作できるようにしてある。 またケース本体1の内面側で,この円形孔6の周縁には,テープ保持枠7が形成されていて,収納する回巻粘着テープAの紙管Bをこのテープ保持枠7に係止できるようにしてある。」(7頁3?13行) (b) 「更に前記ケース本体1の突出形状部5は,略円形状の前記テープ収納部4から突出したように形成され,この突出形成部5に粘着テープ送出機構3が装着されている。粘着テープ送出機構3は,案内ローラ11と,送出ローラ12と,無端帯状体13と,ラチェット爪部材14と,バネ15及び引張部材16から成り,案内ローラ11と送出ローラ12とは,突出形状部5の内面5aに,案内ローラ11をテープ収納部4側にして所定間隔を以て回動自在に軸支してある。そして両ローラ11,12は回転時に連動するように無端帯状体13によって連結されている。」(8頁5?16行) (c) 「しかして,上記無端帯状体13にはラチェット爪部材14が脱着可能に係止するようにしてある。すなわち,第4図に示すようにラチェット爪部材14は細長に形成され,その先端に爪14aを有し,この爪14aは案内ローラ11方向に鉤状に形成され,無端帯状体13を図の左方向に移動させることができるようにしてある。」(9頁13?19行) (d) 「このラチェット爪部材14は,引張部材16と一体的に形成してある。」(10頁9?10行) (e) 「引張部材16は,摺動板部16aと把持部16bとから成り,・・・上記把持部16bは肉厚のある平面略楕円形状で有り,中央には3本の指を挿入して把持できるように把持孔20が形成してある。」(10頁13?20行) (f) 「次に第5図に示す蓋体2について説明すると,・・・先端上部にはケース本体1の突出形状部5の上部を覆うカバー部23が形成してある。このカバー部23の中央には長穴24が形成されていて,操作板26を操作することにより,テープ用切断用のカッター25の刃先25aをカバー部23の先端から出し入れすることが出来るようにしてある。」(11頁5?14行) (g) 「次に上述のテープ送出装置の使用状態について説明すると,蓋体2を開けて回巻粘着テープAをテープ保持枠7に係止すると共に,回巻粘着テープAの先端を引き出して案内ローラ11,無端帯状体13,送出ローラ12の上面に添着させ,テープ先端をケース本体1の先端から少し出すようにする。このようにした後,前述のようにしてケース本体1に蓋体2をする。次に使用時には引張部材16の把持部16aに指を掛け,この把持部16aを引くことにより,バネ15の弾発付勢に抗してラチェット爪部材14はバネ15の伸長分だけ移動する。このラチェット爪部材14の移動により,ラチェット爪部材14が係止する無端帯状体13も移動し,無端帯状体13を介して連結されている案内ローラ11と送出ローラ12は,この無端帯状体13の移動分だけ回転する。この両ローラ11,12の回転により,両ローラ11,12の回転した距離だけ粘着テープCはケースから送出されることになる。 引張部材16を操作して所望量だけ粘着テープCを送出し,カッター25の刃先25aで粘着テープCを切断して使用すれば,簡便で,必要なときに所望長さの粘着テープを必要な分だけケースから取り出すことができる。またこの実施例のものは片手で全て操作することができる。」(13頁末行?15頁4行) 上記記載事項(a)?(g)及び図面の記載を総合すると,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「回巻した粘着テープを必要な分だけケースから取り出すことができる粘着テープ送出装置であって,ケース本体1はテープ収納部4と突出形状部5とからなり,テープ収納部4の円形孔6の周縁にテープ保持枠7が形成され,案内ローラ11,送出ローラ12,無端帯状体13,引張部材16と一体的に形成されるラチェット爪部材14からなる粘着テープ送出機構3が突出形成部5に装着され,引張部材16の把持部16bには指を挿入して把持できる把持孔20が形成され,操作板26の操作によりカッター25の刃先25aが蓋体2のカバー部23先端から出入りするように構成されており,使用に際しては,テープ保持枠7に係止した回巻粘着テープの先端を引き出して,案内ローラ11,無端帯状体13,送出ローラ12の上面に添着させるとともに,その先端をケース本体1の先端から少し出しておき,把持部16aを引くことにより,案内ローラ11と送出ローラ12を回転させて,粘着テープをケースから送出し,カッター25の刃先25aで粘着テープを切断できるようにした粘着テープ送出装置。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「粘着テープ」,「カッター25」及び「操作板26」は,それぞれ本願発明の「接着テープ」,「カッタ」及び「操作部材」に相当し,引用発明の「ケース本体1」と「蓋体2」の組合せは,本願発明の「ケース」に相当する。 引用発明は,粘着テープを案内ローラ11及び送出ローラ12の上面に添着させるものであるから,この「案内ローラ11」と「送出ローラ12」は,本願発明の「接着テープに沿うように配した回転ドラム」に相当し,引用発明は,把持部16aを引くことにより,案内ローラ11と送出ローラ12を回転させるものであるから,この「把持部16a」は,本願発明の「回転ドラムを回転させる引き金」に相当する。 また,引用発明の「ケース本体1」と「蓋体2」の組合せが,粘着テープを回転可能に収納し,かつ,粘着テープの引出し口を有するものであることは明らかである。 したがって,本願発明と引用発明は,本願発明の表記に倣えば, 「ロール状の接着テープを回転可能に収納するとともにテープ引出し口を有するケース本体と,前記接着テープに沿うように配した回転ドラムと,この回転ドラムを回転させる引き金と,カッタと,このカッタを移動させる操作部材とからなり,引き金を引いて回転ドラムを回転させることにより接着テープをテープ引出し口から引出し,引出した接着テープをカッタにより切断する」ものである点で一致し,次の点で相違する。 [相違点] 本願発明のカッタは,引き出される接着テープに対して接近する方向と離反する方向とに往復移動が可能であり,操作部材を介して該カッタを移動させることにより引出した接着テープを切断するのに対して,引用発明のカッター25は,操作板26の操作によりその刃先25aが蓋体2のカバー部23先端から出入りするものであって,操作板26を操作しただけでは粘着テープを切断することができない点。 上記相違点について検討する。 ロール状に巻回された接着テープ(粘着テープ)の端部をケースから所定量引き出すものにおいて,操作部材を介してカッターを移動させることにより,引き出された接着テープを切断する機構を設けることは,実願昭62-125760号(実開昭64-32866号)のマイクロフィルムや,特開平4-72265号公報に示されるように,従来からよく知られた技術である。引用発明にこの周知技術を適用して,上記相違点に係る本願発明の構成を得ることは,当業者が容易に想到し得たことである。 したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-19 |
結審通知日 | 2010-03-23 |
審決日 | 2010-04-05 |
出願番号 | 特願平11-167662 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高島 壮基 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
豊島 ひろみ 熊倉 強 |
発明の名称 | 接着テープ用収納ケース |
代理人 | 蔦田 正人 |
代理人 | 蔦田 璋子 |