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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1222385
審判番号 不服2008-26756  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-17 
確定日 2010-08-23 
事件の表示 特願2003-120947「測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-325277〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年4月25日の出願であって、平成20年6月24日付け拒絶理由通知に対し、同年8月25日付けで手続補正されたが、同年9月18日付けで拒絶査定され、これに対し、同年10月17日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。

第2 平成20年10月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年10月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】リレー出力端子および/または内部スイッチと、
外部から入力されるオン/オフ信号および/またはビット信号を検出して検出結果をビット信号で出力する入力信号処理部と、
この入力信号処理部の検出結果、または、制御対象から入力される測定値を用いて所定の論理演算を行い演算結果としてビット信号を出力する論理演算部と、
この論理演算部から入力される演算結果に基づき前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御を行う出力信号処理部と、
この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御に関連付けられて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部、
とで構成され、
前記所定のアクションは、通信コマンドの実行およびPID制御用のアクションであり、前記リレー出力端子および/または内部スイッチには、複数のアクションが割り付けられ、前記アクション実行部は、出力信号処理部の出力信号レベルに応じて、前記通信コマンドの実行および前記PID制御用のアクションから成る前記複数のアクションを複数同時に実行することを特徴とする測定装置。」(下線は補正された箇所である。)

2.本件補正の目的
本件補正前の請求項1に記載した発明に対して、
(1)論理演算部の論理演算のための入力として「この入力信号処理部の検出結果および/または測定結果を用いて」とあったところ、「測定結果を用いて」と「入力信号処理部」との関係を明りょうにするために「この入力信号処理部の検出結果、または、制御対象から入力される測定値を用いて」として不明りょうな記載を明りょうにし、
(2)所定のアクションとして、「所定のアクションは、通信コマンドの実行およびPID制御用のアクションであり」と限定し、
(3)リレー出力端子および/または内部スイッチとして、「前記リレー出力端子および/または内部スイッチには、複数のアクションが割り付けられ」たものと限定し、
(4)アクション実行部として、「出力信号処理部の出力信号レベルに応じて、前記通信コマンドの実行および前記PID制御用のアクションから成る前記複数のアクションを複数同時に実行する」ものと限定したものを含むものである。

したがって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」とする。)の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

3.記載要件について
(1)本願補正発明には、「前記リレー出力端子および/または内部スイッチには、複数のアクションが割り付けられ、前記アクション実行部は、出力信号処理部の出力信号レベルに応じて、前記通信コマンドの実行および前記PID制御用のアクションから成る前記複数のアクションを複数同時に実行する」なる記載がある。
しかしながら、本願補正発明の「この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御に関連付けられて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部」及び「前記所定のアクションは、通信コマンドの実行およびPID制御用のアクションであり」という記載との関係を考慮しても、
(ア)「複数同時に実行する」ための「前記複数のアクション」の各々の「アクション」が、
(a)「前記通信コマンドの実行」および「前記PID制御用のアクション」の両方を含むものであるのか、
(b)「前記通信コマンドの実行」および「前記PID制御用のアクション」の何れかによるものであるのかが不明りょうであり、
(イ)上記(ア)(b)の場合において、さらに、「前記複数のアクション」は、
(a)「前記通信コマンドの実行」によるものと「前記PID制御用のアクション」の両方を含むものであるのか、
(b)何れか一方のみでもよいのかが不明瞭であり、
(ウ)それとも、上記(ア)、(イ)のうちの何れかを含むものであるが不明りょうである。

なお、「アクション」の定義は、段落【0002】に記載され、「複数のアクション」については、段落【0041】?【0042】及び【0048】?【0049】に記載されているが、これらの記載を参酌しても、上記(ア)?(ウ)の何れのものを示すものかが不明である。

よって、本件出願は明確ではない。

(2)したがって、本件出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるので、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4.進歩性について
本願補正発明には、上記「3.」で指摘したように明確ではないものの、上記「3.(1)」に示した各々の場合を考慮して、以下検討する。

(1)引用例
(ア)原査定の拒絶理由通知で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-333702号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(a)「【特許請求の範囲】【請求項1】目標値と制御対象からの測定値との偏差から操作量を演算出力して前記制御対象をコントロールするとともに、前記制御対象の運転に関する制御信号を入出力するコントロール部と、
外部との間で制御信号を入出力する複数の入出力端を有する入出力部と、
この入出力部および/又は前記コントロール部からの前記制御信号を論理演算して前記コントロール部又は前記入出力部へ出力する入出力論理演算部と、
この入出力論理演算部における前記論理演算構成、この論理演算構成へ入力する前記制御信号の割り付け、前記論理演算構成からの出力の前記出力部又は前記コントロール部への割り付けに関する画面を表示するとともに、前記論理演算構成および前記入出力割り付けを設定する表示設定部と、
を具備することを特徴とするコントローラ装置。」

(b)「【0007】【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係るコントローラ装置の実施の形態を示す概略ブロック図である。図1において、コントロール部7は、予め設定された目標値SVと図示しない制御対象からの測定値PVとしての温度入力との偏差からこの偏差を小さくするような操作量MVとしての制御出力をPID演算して制御対象へ出力する例えば温度調節計であり、入出力論理演算部9および表示設定部11に接続されている。もっとも、温度調節計に限定されない。
【0008】コントロール部7は、操作量MVの出力の他、後述する内部ステータス信号、運転ステータス信号、警報信号等の制御対象の運転に関する制御信号を入出力論理演算部9へ出力するとともに、測定値PV、操作量MV、偏差、それら制御信号等を表示設定部11へ出力する一方、この表示設定部11からの目標値SVその他の入力設定が可能になっている。なお、コントロール部7は従来公知のものであるから、その詳細な説明は省略する。
【0009】入出力論理演算部9は、OR、NOR、AND、NAND等の論理素子の接続組合せ構成や、それら論理素子へ入力する制御信号の割り付け、更に、論理演算した制御信号の出力割り付けを行うものであり、それらが可変設定可能になっており、表示設定部11および入出力部13に接続されている。入出力部13は、上述したデジタル制御信号を外部から入力する複数のデジタル入力端DIおよび外部へデジタル制御信号を出力する複数のデジタル出力端DOを有しているが、図1では、便宜上、デジタル入力端DIおよびデジタル出力端DOとともに各々1本の線で示している。
【0010】表示設定部11は、例えば液晶表示装置等からなる表示部11aを有し、図2?図4に示すように、論理素子への入力割り付けや論理素子の組合せを設定する論理入力設定画面、その論理素子の組合せの出力を割り付ける出力端DOを設定する論理出力設定画面、および警報信号出力を割り付ける出力端DO(AL)を設定する論理警報設定画面の他、図示はしないがコントロール部7の動作に関する目標値SV、測定値PV、偏差および操作量MVを表示する機能を有している。表示設定部11は、表示部11aに入力手段としての複数のタッチ式スイッチ11bを有しており、論理入力設定画面、論理出力設定画面および論理警報設定画面において、タッチ式スイッチ(キー)11bへの押下によって入出力論理演算部9における論理素子の組合せ構成、それら論理素子への入力の割り付け、入出力部13からのデジタル出力端DOの割り付け設定が可能になっている。」

(c)「【0016】次に、上述した本発明のコントローラ装置の動作例を説明する。図6A?Cは、本発明のコントローラ装置の主要動作、特に入出力論理演算部9を中心とした動作を説明する概略論理構成図である。図6Aは、コントローラ装置における電源投入時の動作であり、図2の論理入力設定画面を表示させ、「+論理」、「-論理」の各スイッチ11bによって論理入力設定画面「1」に切り換え、「入力」欄の1に「5」を入力してKEY状態(B)を指定するとともに「CH」欄に「14」を入力して電源キーを指定し、「入力」欄の2に「6」を入力して内部ステータス(R)を指定するとともに「CH」欄に「12」を入力して温度100℃以上を指定し、「反転」欄を「0」を入力し、「回路」欄に論理素子「OR」を設定し、更に「遅延」欄を「0」に設定する。
【0017】続いて、図3の論理出力設定画面を切換え表示させ、デジタル出力端D16(OUT16)に「1」と入力して図3の「出力」欄の論理出力(SOUT1)を設定する。このような設定により、図6Aでは、電源スイッチ(キー)がオン状態や制御対象からの測定温度が100℃以上の状態では常に電源をオン(電源供給)するとともに、電源スイッチがオフ状態で制御対象からの測定温度が100℃未満の状態では常に電源をオフする動作が可能となる。
【0018】図6Bは、制御対象を加熱する場合のヒータ制御動作であり、図2の論理入力設定画面を表示させ、「+論理」、「-論理」の各スイッチ11bによって論理入力設定画面「6」に切り換え、「入力」欄の1に「5」を入力してKEY状態(B)を指定するとともに「CH」欄に「7」を入力してヒータスイッチを指定し、「入力」欄の2に「2」を入力してDI(IN)を指定するとともに「CH」欄に「12」を入力してヒータON入力を指定し、「入力」欄の3に「1」を入力してDO(OUT)を指定するとともに「CH」欄に「7」を入力してプログラム運転を指定する一方、「反転」欄に「0」を入力し、「回路」欄に論理素子「OR」を設定し、「遅延」欄を「0」に設定する。
【0019】さらに、新たに図2の論理入力設定画面を「7」に切換え表示させ、「入力」欄の1に「7」を入力して論理出力(SOUT)を指定するとともに「CH」欄に「6」を入力してSOUT6を指定し、「入力」欄の2に「1」を入力してDO(OUT)を指定するとともに「CH」欄に「15」を入力してファン出力を指定し、「入力」欄の3に「6」を入力して内部ステータス(R)を指定し、「CH」欄に「11」を入力して何れかの異常(A)を指定し、「入力」欄の4に「4」を入力して運転ステータス(S)を指定し、「CH」欄に「6」を入力して温度降下状態を指定する。
【0020】一方、「反転」欄にて「入力」欄の3と4に「1」を入力してそれらの入力を反転選択し、「回路」欄に論理素子「AND」を設定し、「遅延」欄を「0」に設定する。そして、図3の論理出力設定画面を切換え表示させ、デジタル出力端DO14(OUT14)に「7」と入力して図3の「出力」欄の論理出力(SOUT7)を設定する。
【0021】このような設定により、図6Bでは、ヒータスイッチがオン、ヒータ入力がオン、又はプログラム運転がオンの何れかの場合に論理出力(SOUT6)が出力され、この論理出力(SOUT6)のオン出力、ファンのオン出力により、論理出力(SOUT7)が出力される。ただし、異常の場合や降下状態では論理出力(SOUT7)はオフされる。これに基づき、デジタル出力端DO14(OUT14)にヒータをオンする制御信号が出力される。
【0022】そして、図6Cは、制御対象のヒータ過熱に対する制御動作であり、図2の論理入力設定画面を表示させ、「+論理」、「-論理」の各スイッチ11bにより、論理入力設定画面「28」に切り換え、「入力」欄の1に「2」を入力してDI(IN)を指定するとともに「CH」欄に「14」を入力して過熱防止計1を指定し、「反転」欄に「0」を入力し、「回路」欄に論理素子「OR」を設定し、「遅延」欄に「25」を入力して遅延設定する。さらに、図4の論理警報設定画面を表示させ、AL出力端AL2に「28」と入力して図2の「出力」欄の論理出力(SOUT28)を設定する。そのため、図6Cでは、制御対象に設けた過熱防止計1からの出力が5秒経過すると、AL出力端AL2にヒータ過熱警報信号が割当て出力可能となる。
【0023】このように本発明は、制御対象に対して操作量SVを出力するコントロール部7や、複数のデジタル入出力端DI、DOを有する入出力部13に加えて、それらコントロール部7やデジタル入出力端DI、DOからの制御信号を論理演算する入出力論理演算部9と、表示部11aや複数のタッチ式スイッチ11bを有しコントロール部7や入出力論理演算部9の論理素子組合せ、論理演算の入出力の割り付けを設定する表示設定部11を設けたから、例えば論理入力設定画面、論理出力設定画面又は論理警報設定画面を表示させながら、タッチ式スイッチ11bへの押下により、論理素子組合せ構成、論理演算構成に対する入出力の割り付け設定が可能となり、従来のように、入出力部3に予めシーケンスプログラム等を格納しておく必要がなくなり、操作性が向上するとともにコストアップも抑えることが可能となる。
【0024】そして、本発明の実施において、表示設定部11で割り付けを設定する画面は、上述した論理入力設定画面、論理出力設定画面又は論理警報設定画面に限定されず、種々の入力画面によって割り付け可能である。さらに、上述した実施の態様は、論理演算部9でコントロール部7および入出力部13からの制御信号を論理演算して入出力部13の出力端DOを割り付ける構成であったが、本発明のコントローラ装置では、論理演算部9で入出力部13へ入力した複数種類の制御信号を論理演算して入出力部13の出力端DOに割り付け出力する構成や、更に、論理演算部9で論理演算した制御信号の出力をコントロール部7に割り付け設定する構成も可能である。」

上記摘記事項(c)の記載からみて、入出力部13のデジタル入力端DIには、ヒータースイッチのオン・オフ状態、プログラム運転のオン・オフ状態、ファン出力、何れかの異常状態といった、外部から入力されるオン・オフに関連する制御信号が入力され、入出力部13のデジタル出力端DIからは、入出力論理演算部9からの論理出力(SOUT)のオン・オフに基づき、ヒータをオンする制御信号やヒータ加熱警報信号といった所定の制御が実行される信号が出力されることが読み取れ、摘記事項(c)の「本発明のコントローラ装置では、論理演算部9で入出力部13へ入力した複数種類の制御信号を論理演算して入出力部13の出力端DOに割り付け出力する構成や、更に、論理演算部9で論理演算した制御信号の出力をコントロール部7に割り付け設定する構成も可能である。」から、同様に、コントロール部7も、論理出力(SOUT)のオン・オフに基づき、所定の制御が実行される信号が出力されることが読み取れる。

上記摘記事項(b)及び(c)の記載からみて、入力論理演算部9は、表示設定部11での設定に基づいて論理出力(SOUT)を入出力部13の出力端に割り付け、同様にコントロール部7にも割り付けることができることが読み取れる。

これらの摘記事項によると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「外部から入力されるオン・オフに関連するデジタル制御信号を入力するデジタル入力端DIを有している入出力部13、及び、操作量MVの出力の他、後述する内部ステータス信号、運転ステータス信号、警報信号等の制御対象の運転に関する制御信号を入出力論理演算部9へ出力するコントロール部7と、
入出力部13および/又はコントロール部7からの制御信号を論理演算して論理出力(SOUT)を行う入出力論理演算部9と、
入力論理演算部9は、表示設定部11での設定に基づいて、論理出力(SOUT)を入出力部13の出力端および/又はコントロール部7に割り付け、
前記論理出力(SOUT)は、表示設定部で設定された入出力部13の出力端および/又はコントロール部7に割り付けられており、
前記論理出力(SOUT)からの出力に基づき、所定の制御が実行される信号が出力される入出力部13、及び、予め設定された目標値SVと図示しない制御対象からの測定値PVとしての温度入力との偏差からこの偏差を小さくするような操作量MVとしての制御出力をPID演算して制御対象へ出力するコントロール部13を有するコントローラ装置」

(イ)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-145760号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(a)「【0018】図3は本実施例の流量計の具体的な回路構成を表すものである。マイクロコンピュータ37は、圧電膜センサ35およびフローセンサ36の出力信号を入力とし、この入力信号を基に積算流量を求めると共に、これら流量情報を表示部駆動回路41bを動作させて液晶表示画面41aに表示させるようになっている。マイクロコンピュータ37は、また、検出流量を所定の基準値と比較することにより異常の有無を判断し、異常が発生した場合には、ソレノイド駆動回路18bを動作させてソレノイド18aを駆動させると共に、警報部駆動回路44cを動作させて警報ランプ44aおよび警報通信部44bを駆動させるようになっている。すなわち、この流量計では、異常が発生した場合には、遮断弁17により開口部16を閉塞させて流体(ガス)を遮断すると同時に、警報ランプ44aを点灯し、かつ、警報通信部44bにより異常の発生を管理センタに対し通報することにより警報報知を行うようになっている。」

(2)対比・判断
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

(ア)引用例1発明の「外部から入力されるオン・オフに関連するデジタル制御信号を入力するデジタル入力端DIを有している入出力部13、及び、操作量MVの出力の他、後述する内部ステータス信号、運転ステータス信号、警報信号等の制御対象の運転に関する制御信号を入出力論理演算部9へ出力するコントロール部7」は、「入出力部13」及び「コントロール部7」が共に、各種の外部入力をもとに論理演算に用いるためのデジタル信号を出力する機能からみて、本願補正発明の「外部から入力されるオン/オフ信号および/またはビット信号を検出して検出結果をビット信号で出力する入力信号処理部」に相当する。

(イ)引用例1発明の「入出力部13および/又はコントロール部7からの制御信号を論理演算して論理出力(SOUT)を行う入出力論理演算部9」は、その機能・構成からみて、本願補正発明の「この入力信号処理部の検出結果を用いて所定の論理演算を行い演算結果としてビット信号を出力する論理演算部」に相当する。

(ウ)引用例1発明の「入力論理演算部9は、表示設定部11での設定に基づいて、論理出力(SOUT)を入出力部13の出力端および/又はコントロール部7に割り付け」は、「入力論理演算部9」が、論理出力である論理値に基づいて、割り付けられた入出力部13の出力端および/又はコントロール部7を作動させる機能を有していることから、本願補正発明の「この論理演算部から入力される演算結果に基づき前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御を行う出力信号処理部」とは、「この論理演算部から入力される演算結果に基づきオン/オフ制御を行う出力信号処理部」という点で共通する。

(エ)引用例1発明の「前記論理出力(SOUT)からの出力に基づき、所定の制御が実行される信号が出力される入出力部13、及び、予め設定された目標値SVと図示しない制御対象からの測定値PVとしての温度入力との偏差からこの偏差を小さくするような操作量MVとしての制御出力をPID演算して制御対象へ出力するコントロール部13」は、「所定の制御」及び「PID演算して制御対象へ出力すること」が所定のアクションを表していることからみて、本願補正発明の「この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御に関連付けられて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部」との間で、
「この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部」という点で共通する。

(オ)引用例1発明の「所定の制御が実行される信号が出力される」及び「予め設定された目標値SVと図示しない制御対象からの測定値PVとしての温度入力との偏差からこの偏差を小さくするような操作量MVとしての制御出力をPID演算して制御対象へ出力する」と、本願補正発明の「前記所定のアクションは、通信コマンドの実行およびPID制御用のアクションであり」とは、「前記所定のアクションは、PID制御用のアクションを含むものであり」という点で共通する。

(カ)引用例1発明の「前記論理出力(SOUT)は、表示設定部で設定された入出力部13の出力端および/又はコントロール部7に割り付けられており、
前記論理出力(SOUT)からの出力に基づき、所定の制御が実行される信号が出力される入出力部13、及び、予め設定された目標値SVと図示しない制御対象からの測定値PVとしての温度入力との偏差からこの偏差を小さくするような操作量MVとしての制御出力をPID演算して制御対象へ出力するコントロール部13」は、割り付けられた制御を入出力部13の出力端および/又はコントロール部7からの出力で実施されることからみて、本願補正発明の「前記リレー出力端子および/または内部スイッチには、複数のアクションが割り付けられ、前記アクション実行部は、出力信号処理部の出力信号レベルに応じて、前記通信コマンドの実行および前記PID制御用のアクションから成る前記複数のアクションを複数同時に実行する」との間で、「前記アクション実行部は、出力信号処理部の出力信号レベルに応じて、前記PID制御用のアクションを含むアクションを実行する」点で共通する。

(キ)引用例1発明の「コントローラ装置」は、PID制御のための測定値を収集し、それをもとに制御を行っている機能を有しているから、本願補正発明の「測定装置」に相当する。

以上、(ア)?(キ)の考察から、両者は、

(一致点)
「外部から入力されるオン/オフ信号および/またはビット信号を検出して検出結果をビット信号で出力する入力信号処理部と、
この入力信号処理部の検出結果を用いて所定の論理演算を行い演算結果としてビット信号を出力する論理演算部と、
この論理演算部から入力される演算結果に基づきオン/オフ制御を行う出力信号処理部と、
この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部、
とで構成され、
前記所定のアクションは、PID制御用のアクションを含むものであり、
前記アクション実行部は、出力信号処理部の出力信号レベルに応じて、前記PID制御用のアクションを含むアクションを実行することを特徴とする測定装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明は、「リレー出力端子および/または内部スイッチ」を有しており、出力信号処理部が、「前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御を行」い、アクション実行部が「前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御に関連付けられて予め設定された所定のアクションを実行する」のに対し、引用例1発明では、「入力論理演算部9からの論理出力は、表示設定部で設定された入出力部13の出力端および/又はコントロール部7に割り付けられており」とあるが、割り付けられる構成がどのようなものか、すなわち、リレー出力端子や内部スイッチのものを含むか否かが不明である点。

(相違点2)
所定のアクションが、本願補正発明は、「通信コマンドの実行およびPID制御用のアクション」であるのに対し、引用例1発明では、「PID制御用のアクションを含むものである」点

(相違点3)
本願補正発明では、「前記リレー出力端子および/または内部スイッチには、複数のアクションが割り付けられ、前記アクション実行部は、出力信号処理部の出力信号レベルに応じて、前記通信コマンドの実行および前記PID制御用のアクションから成る前記複数のアクションを複数同時に実行する」のに対し、引用例1発明では、論理出力に割り付けられているアクションに相当する制御は、複数ではない点。

(3)当審の判断
(ア)上記(相違点1)について検討する。
引用例1発明において、入出力演算部9が論理出力を出力端および/又はコントロール部7に割り付けているが、通常2値である論理出力を割り付けている以上、2値で作動するスイッチ機能を有する手段を介していることは当然のことといえる。
よって、2値で動作するスイッチ機能として、リレーや集積回路内の論理スイッチ部品や所定のスイッチ部材を用いることは、例示するまでもない周知の技術であることから、引用例1発明の「入出力論理演算部9」と「入出力部13の出力端および/又はコントロール部7」との間に周知のスイッチを用いて、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(イ)上記(相違点2)について検討する。
引用例2には、上記「(1)(イ)」の摘記事項(a)において、制御機能を有する測定装置の技術分野において、異常が発生したことが判断された場合に、ソレノイドを駆動させる制御を行うと共に、警報通信部を駆動させる技術が記載されている。
したがって、引用例1発明のコントロール部において、その制御のアクションとして、引用例2に記載された通信に係るものを採用し、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(ウ)上記(相違点3)について検討する。
(a)上記「3.(1)」の「(イ)(a)」の場合
引用例2には、上記「(1)(イ)」の摘記事項(a)において、制御機能を有する測定装置の技術分野において、異常が発生したことが判断された場合に、ソレノイドを駆動させる制御を行うと共に、警報通信部を駆動させる技術が記載されており、「ソレノイドを駆動させる制御」と「警報通信部を駆動させる」という2つのアクションを同時に作動させる技術が開示されているといえる。
また、同時に作動させるのであれば、1つのスイッチにより作動させることも、各種技術分野で行われる常套の技術である。
したがって、引用例1発明において、割り付け機能を有する入出力演算部に対し、引用例2に記載された制御と通信機能の2つのアクションを同時に作動させる技術を適用することにより、論理演算結果と2つのアクションとを1つの手段を介して結合させるように設計し、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(b)上記「3.(1)」の「(イ)(b)」の場合
2種類のアクションを同時に作動させる技術思想が引用例2に開示されていることから、2種類のアクションとして適宜の組み合わせで構成することは、当業者の通常の創作活動の範囲で適宜なし得ることであるから、上記(a)で検討したのと同様に、引用例1発明に対し、引用例2に記載された制御と通信機能の2つのアクションを同時に作動させる技術を適用し、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

(c)上記「3.(1)」の「(ア)」の場合
作動させるアクションの詳細をどのようなものとするかは、必要に応じて適宜なし得ることであるから、アクションとして「前記通信コマンドの実行」および「前記PID制御用のアクション」の両方を含むものを設計し、上記(a)で検討したのと同様に、引用例1発明に対し、引用例2に記載された制御と通信機能の2つのアクションを同時に作動させる技術を適用し、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

よって、上記(a)?(c)の何れの場合であったとして、引用例1発明に対し、引用例2に記載された制御と通信機能の2つのアクションを同時に作動させる技術を適用し、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果についても、引用例1、2及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、当審における審尋に対する平成22年4月16日付け回答書において、
「審判請求人は、現段階では、以下のように特許請求の範囲を限定する用意があります。具体的には、「PID制御用のアクション」について段落番号0028の内容に限定し、不明瞭な記載である「通信コマンドの実行」については削除補正する用意があります。」旨の主張とともに、補正案を提示している。

しかしながら、補正案における「前記PID制御用のアクションから成る前記複数のアクションを複数同時に実行する」は、明細書におけるPID制御制御用のアクションが
異なる条件で「制御運転停止/運転」を作動させるものしか記載されていないため、複数のPID制御用のアクションを同じ論理演算により動作させることまで、出願当初に開示していたかが不明であり、段落【0040】?【0042】、【0048】?【0049】の記載を参酌しても、依然として不明である。
したがって、補正案の内容は、新規事項を含むものといえる。
なお、出願当初の明細書の範囲での補正案であると仮定したとしても、PID制御のアクションを行うことは、上記(1)のとおり、引用例1に記載されていることから、引用例2における複数のアクションを同時に作動させる技術思想の範囲で適宜の設定のPID制御のアクションを動じ作動させることは当業者であれば容易になし得たことであるといえる。
したがって、上記補正案によってもその進歩性があるとはいえない。
よって、上記補正案は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年10月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成20年8月25日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】リレー出力端子および/または内部スイッチと、
外部から入力されるオン/オフ信号および/またはビット信号を検出して検出結果をビット信号で出力する入力信号処理部と、
この入力信号処理部の検出結果および/または測定結果を用いて所定の論理演算を行い演算結果としてビット信号を出力する論理演算部と、
この論理演算部から入力される演算結果に基づき前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御を行う出力信号処理部と、
この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御に関連付けられて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部、
とで構成されたことを特徴とする測定装置。」

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1は、前記「第2[理由]4.(1)(ア)」に記載したとおり、引用例1発明が記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明の「外部から入力されるオン・オフに関連するデジタル制御信号を入力するデジタル入力端DIを有している入出力部13、及び、操作量MVの出力の他、後述する内部ステータス信号、運転ステータス信号、警報信号等の制御対象の運転に関する制御信号を入出力論理演算部9へ出力するコントロール部7」は、「入出力部13」及び「コントロール部7」が共に、各種の外部入力をもとに論理演算に用いるためのデジタル信号を出力する機能からみて、本願発明の「外部から入力されるオン/オフ信号および/またはビット信号を検出して検出結果をビット信号で出力する入力信号処理部」に相当する。

(2)引用例1発明の「入出力部13および/又はコントロール部7からの制御信号を論理演算して論理出力(SOUT)を行う入出力論理演算部9」は、その機能・構成からみて、本願発明の「この入力信号処理部の検出結果を用いて所定の論理演算を行い演算結果としてビット信号を出力する論理演算部」に相当する。

(3)引用例1発明の「入力論理演算部9は、表示設定部11での設定に基づいて、論理出力(SOUT)を入出力部13の出力端および/又はコントロール部7に割り付け」は、「入力論理演算部9」が、論理出力である論理値に基づいて、割り付けられた入出力部13の出力端および/又はコントロール部7を作動させる機能を有していることから、本願発明の「この論理演算部から入力される演算結果に基づき前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御を行う出力信号処理部」とは、「この論理演算部から入力される演算結果に基づきオン/オフ制御を行う出力信号処理部」という点で共通する。

(4)引用例1発明の「前記論理出力(SOUT)からの出力に基づき、所定の制御が実行される信号が出力される入出力部13、及び、予め設定された目標値SVと図示しない制御対象からの測定値PVとしての温度入力との偏差からこの偏差を小さくするような操作量MVとしての制御出力をPID演算して制御対象へ出力するコントロール部13」は、「所定の制御」及び「PID演算して制御対象へ出力すること」が所定のアクションを表していることからみて、本願発明の「この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御に関連付けられて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部」との間で、
「この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部」という点で共通する。

(5)引用例1発明の「コントローラ装置」は、PID制御のための測定値を収集し、それをもとに制御を行っている機能を有しているから、本願発明の「測定装置」に相当する。

以上、(1)?(5)の考察から、両者は、

(一致点)
「外部から入力されるオン/オフ信号および/またはビット信号を検出して検出結果をビット信号で出力する入力信号処理部と、 この入力信号処理部の検出結果を用いて所定の論理演算を行い演算結果としてビット信号を出力する論理演算部と、 この論理演算部から入力される演算結果に基づきオン/オフ制御を行う出力信号処理部と、 この出力信号処理部の出力信号レベルに応じて予め設定された所定のアクションを実行するアクション実行部、 とで構成されたことを特徴とする測定装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、「リレー出力端子および/または内部スイッチ」を有しており、出力信号処理部が、「前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御を行」い、アクション実行部が「前記リレー出力端子および/または内部スイッチのオン/オフ制御に関連付けられて予め設定された所定のアクションを実行する」のに対し、引用例1発明では、「入力論理演算部9からの論理出力は、表示設定部で設定された入出力部13の出力端および/又はコントロール部7に割り付けられており」とあるが、割り付けられる構成がどのようなものか、すなわち、リレー出力端子や内部スイッチのものを含むか否かが不明である点。

4.当審の判断
上記(相違点)について検討する。
上記「第2[理由]4(3)(ア)」と同様の理由により、引用例1発明の「入出力論理演算部9」と「入出力部13の出力端および/又はコントロール部7」との間に周知のスイッチを用いて、本願発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果についても、引用例1及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用例1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-28 
結審通知日 2010-06-29 
審決日 2010-07-12 
出願番号 特願2003-120947(P2003-120947)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01D)
P 1 8・ 121- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
居島 一仁
発明の名称 測定装置  

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