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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1222466
審判番号 不服2007-22476  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-13 
確定日 2010-08-26 
事件の表示 特願2003-404436「制御装置および方法、プログラム、並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-165733〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年12月3日の出願であって、平成19年7月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年8月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年9月11日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成19年9月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項11を引用する請求項12について、
「 【請求項11】
情報処理装置と、その情報処理装置に指示を出す遠隔操作装置との間でデータの授受を制御する制御装置において、
前記遠隔操作装置から、ユーザが描画した形に関する情報を、無線による通信で受信するか、または接続されている端子を介して受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記情報が示す形を判断する判断手段と、
前記判断手段により判断された前記形に対応付けられている処理を示すデータを判断し、そのデータを前記情報処理装置に出力する出力手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項12】
前記判断手段は、前記形は線であると判断した場合、さらにその線の方向を判断し、その方向を判断結果とすることを特徴とする請求項11に記載の制御装置。」を、

「 【請求項1】
情報処理装置と、その情報処理装置に指示を出す遠隔操作装置との間でデータの授受を制御する制御装置において、
前記遠隔操作装置から、ユーザが描画した形に関する情報を、無線による通信で受信するか、または接続されている端子を介して受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記情報が示す形を判断する判断手段と、
前記判断手段により判断された前記形に対応付けられている処理を示すデータを判断し、そのデータを前記情報処理装置に出力する出力手段とを備え、
前記形に対応付けられている前記処理が任意の機能の増減に関するものである場合、前記形が上向きの線であるときには増大の処理に対応付けられ、または前記形が下向きの線であるときには減少の処理に対応付けられることを特徴とする制御装置。」と補正することを含むものである。

2.補正の目的
本件補正は、補正前の請求項12の判断手段について、情報が示す形が「線であると判断した場合、さらにその線の方向を判断し」とあるのを、補正後の請求項1においては、「前記形が上向きの線であるときには増大の処理に対応付けられ、または前記形が下向きの線であるときには減少の処理に対応付けられる」とあるように、判断する線の方向を上向き及び下向きに限定している。
また、補正前の請求項12の出力手段について、「前記形に対応付けられている処理を示すデータを判断し、そのデータを前記情報処理装置に出力する」とあるのを「前記形が上向きの線であるときには増大の処理に対応付けられ、または前記形が下向きの線であるときには減少の処理に対応付けられる」とあるように処理の内容について任意の機能の増減に限定するものである。
したがって、本件補正は発明特定事項である判断手段及び出力手段を限定するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-227578号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている
(a)第2頁左欄第19行-同頁右欄第13行
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気機器の制御入力装置であるリモートコントローラに係わり、特に、タッチパネルを備えて手書き入力によりコマンド等を送信するリモートコントローラに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、テレビジョンやオーディオ等の電気機器において、電源制御や機能切替え制御などを外部から行うリモートコントローラが広く利用されている。このリモートコントローラは、赤外線を使って信号伝送を行うのが一般的となっており、ワイヤレスで遠隔操作が可能なため手元において手軽に利用でき機器操作を容易なものとしている。
【0003】従来のリモートコントローラは、図8に示すように、制御機能に対応したボタンが表面に配設され、希望する機能のボタンが押されるとその機能に対応するコマンドデータが赤外線の点滅信号として出力され、その出力信号を受信した電子機器ではそのコマンドに対応する機能制御を行うようにされていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近の電気機器には様々な便利な機能が付加されるようになり、それに対応してリモートコントローラに配設されるボタンの数も多くなる傾向となっている。たとえば、図8に示すリモートコントローラは、LVD(レーザービジョンディスク)の再生装置用のものであるが、LVD再生装置においても、文字情報の入力機能、ディジタルメモリによるトリックプレイ、ディジタルエフェクト、オートプログラムエディットなど多彩な機能が付加されてきているため、図に示すように、リモートコントローラの表面には30数個のボタンが配設されるようになってきていた。
【0005】このようにリモートコントローラに配設されるボタンの数が増えるに従い、使用頻度の少ない機能を使うときなどには、目的とする機能のボタンをさがすのに時間を要するようになり、また、深夜部屋を暗くしたり、またはホームシアターなど部屋を暗くして液晶プロジェクターなどにより大画面の画像再生を行う場合などには、手元が暗くなるため操作が余計困難になるなどの問題が発生してきていた。
【0006】本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、使用頻度の少ない機能であっても迅速な入力が可能となり、しかも手元が暗い場合でも正確な入力が可能となるリモートコントローラを提供することを目的としている。」

(b)第3頁左欄第10行-同頁同欄第48行
「【0012】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
第1の実施例
図1に、本発明の一実施例であるテレビジョン用のリモートコントローラの平面図を示す。同図に示すように、リモートコントローラ10の表面には、頻繁に利用する機能入力用の押しボタン1?4とその他の機能入力用のタッチパネル5が配設されている。押しボタン1?4には頻繁に利用する電源のON/OFF、テレビ/ビデオ切替え、メニュー等の画面表示ON/OFFの機能が割り当てられ、その他の機能はタッチパネル5の表面上にあらかじめ決められたパターンを、専用のペンまたは指などにより手書きすることにより入力できるようにされている。パネル表面上に機能に対応したパターンが手書きされると、そのパターン入力に対応して赤外線信号が出力される。入力パターンと対応機能の一例を次に示す。
【0013】
パターン … 対応機能
1 … 1チャンネル表示
2 … 2チャンネル表示

12 … 12チャンネル表示
B5 … 衛生放送5チャンネル表示
B7 … 衛生放送7チャンネル表示
△ … ボリューム・アップ
▽ … ボリューム・ダウン
M … 色調など設定メニュー表示
タッチパネル5は、図2に示すように、X方向に導電線5aを等間隔に配設したフィルムと、Y方向に導電線5aを等間隔に配設したフィルムとを、スペーサを介挿して2枚のフィルムを張り合わせて通常の状態では導電線5aが接触しないようにして、表面にペン等が押し当てられたときに導電線5aが接触するようにされて構成されている。この構成により、通電したX方向の導電線5aの位置とY方向の導電線5aの位置とを検出することにより、パターン入力などにおけるペン等のパネル表面上への接触位置が検出される。」

(c)第3頁左欄第49行-第3頁右欄第36行
「【0014】図3に、本実施例のリモートコントローラの回路構成図を示す。同図に示すように、本実施例のリモートコントローラ10は、タッチパネル5のX方向とY方向とを一定時間間隔で走査して導電線の通電位置を検出してX方向とY方向の接触位置データを生成するセンサー回路11と、押下された押しボタンに対応するコマンドデータを生成するボタン入力回路12と、センサー回路11の出力する接触位置データとボタン入力回路12の出力するコマンドデータとを入力し、それぞれを赤外線信号に変換して出力する送信回路13と、を備えて構成されている。送信回路13では、接触位置データとコマンドデータの識別データが生成されて、受信側において識別されるようにそれぞれのデータに付加されて送信がなされる。
【0015】上記リモートコントローラ10の送信する赤外線信号を受信するテレビジョン・セット(TV SET)20では、図に示すように受信回路21と、マイクロコンピュータ22と、テレビコントローラ23とが備えられる。赤外線信号は受信回路21にて受信され、マイクロコンピュータ22によりタッチパネル5の接触位置データであるか押しボタンのコマンドデータであるかが判別される。押しボタンによるコマンドデータであれば対応する機能の制御がテレビコントローラ23により行われる。タッチパネル5の接触位置データである場合には、マイクロコンピュータ22において入力されるデータの連続性が監視され、連続して入力された接触位置データを解析してパターンの認識が行われる。このパターン認識の詳細については後述する第2の実施例において説明する。パターンが認識されると対応する機能の制御がテレビコントローラ23により行われる。
【0016】このように本実施例のリモートコントローラでは、タッチパネルにパターンを手書き入力するのみで希望する機能制御ができるため、迅速に入力ができるとともに、手元が暗い場合であっても入力が容易になる。また、手書き入力されたパターンの情報として接触位置データを送信するようにしているため、その接触位置データの解析手段を備えた電気機器であればリモートコントローラが共用できるようになる。」

(d)第5頁左欄第18行-同頁同欄第22行
「【0026】また、上記実施例では、赤外線による信号伝送を行うリモートコントローラの例を示したが、これに限られるものではなく、音波や電波または有線により信号伝送を行うリモートコントローラにも適用することができる。」
したがって、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「リモートコントローラ10の送信回路13では、タッチパネル5のX方向とY方向とを一定時間間隔で走査して導電線の通電位置を検出して、X方向とY方向の接触位置データを赤外線信号、電波又は有線で送信し、該送信された接触位置データは受信回路21にて受信され、マイクロコンピュータ22において連続して入力された接触位置データを解析してパターンの認識を行い、パターンが△又は▽であると認識されると、ボリューム・アップ又はボリューム・ダウンの制御がテレビコントローラ23により行われるテレビジョンセット20」

4.補正発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明のリモートコントローラ10が、補正発明の「遠隔操作装置」に相当する。

引用発明のテレビジョン・セット20がリモートコントローラ10により指示が出される対象であるから、補正発明の「情報処理装置」に相当する。

引用発明の受信回路21は、赤外線信号、電波又は有線で送信された接触位置データを受信しているから、補正発明の「受信手段」と無線による通信で受信する点で一致している。

引用発明のマイクロコンピュータ22は接触位置データを解析してパターンの認識を行っているから、補正発明の「判断手段」に相当する。

引用発明のテレビコントローラ23は、パターンが△又は▽であると認識されると、ボリューム・アップ又はボリューム・ダウンの制御を行っているから、補正発明の判断手段と、判断される形が増大の処理又は減少の処理に関する点で一致している。

受信回路21と、マイクロコンピュータ22と、テレビコントローラ23とからなる構成が、補正発明の制御装置に相当する。

よって、補正発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「情報処理装置と、その情報処理装置に指示を出す遠隔操作装置との間でデータの授受を制御する制御装置において、
前記遠隔操作装置から、ユーザが描画した形に関する情報を、無線による通信で受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記情報が示す形を判断する判断手段と、
前記判断手段により判断された前記形に対応付けられている処理を示すデータを判断し、そのデータを前記情報処理装置に出力する出力手段とを備える制御装置。」である点。

[相違点1]
補正発明では、受信手段がユーザが描画した形に関する情報を端子を介して受信する選択肢もあるのに対して、引用発明では、無線以外に有線により受信する記載にとどまる点。

[相違点2]
補正発明では、ユーザが描画した形を上向きの線であるか下向きの線であるかを判断して、上向きの線であるときには増加の処理に対応付けられ、下向きの線であるときには減少の処理に対応付けられているのに対して、引用発明では、入力パターンが△又は▽であるかに対して増大の処理又は減少の処理が対応づけられていて上向きの線又は下向きの線ではない点。

5.相違点の検討
[相違点1について]
リモートコントローラの技術分野において、リモートコントローラを操作対象の本体に着脱可能とすると共に、本体と接点を用いて通信する構成は周知技術(特開2000-347271号公報の第3頁段落0021及び段落0024の記載参照)である。
したがって、引用発明の受信回路21においても、ユーザが描画した形に関する情報を有線で受信する際に、端子を介して受信する構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

[相違点2について]
タッチパネルによる入力装置の技術分野において、ユーザが描画する上向きの線又は下向きの線に対応してボリュームUP又はDOWNなどの増大の処理又は減少の処理を行う制御方法は周知技術(特開昭63-172325号公報第6頁左上欄第12行-同頁右上欄第17行の記載、第8図参照)である。
したがって、引用発明の増大の処理又は減少の処理に対応する△又は▽のパターンを認識することに代えて、ユーザが描画する上向きの線又は下向きの線を対応づける構成とすることは当業者が容易に想到できたことである。
また、補正発明の奏する効果も引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測可能なものであって、格別のものではない。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
前記のとおり、平成19年9月11日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項12に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月21日付けの手続補正書の特許請求の範囲12に記載された事項により特定されるものである。

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及び引用発明は、前記「第2.3.」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・検討
本願発明は、前記「第2.」で検討した補正発明から「判断手段」について、判断する線の方向を上向き及び下向きとした限定事項を、「出力手段」の処理の内容について任意の機能の増減処理との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに上記限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2.5.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項12に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-28 
結審通知日 2010-06-29 
審決日 2010-07-12 
出願番号 特願2003-404436(P2003-404436)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 稲葉 和生
鈴木 重幸
発明の名称 制御装置および方法、プログラム、並びに記録媒体  
代理人 稲本 義雄  

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