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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1222471
審判番号 不服2007-28498  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-18 
確定日 2010-08-26 
事件の表示 特願2001-371595「調査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月20日出願公開、特開2003-173385〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,平成13年12月5日の出願であって,平成19年9月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年11月19日付けで手続補正がなされ,さらに平成21年7月28日付けで審尋がなされ,これに対して同年10月5日付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明

平成19年11月19日付けの手続補正は,特許請求の範囲についてするものであり,当該補正は,審判請求人が平成19年11月19日付けの手続補正書(方式)で「この特許請求の範囲の補正は,調査プログラムの生成処理を明確にしたものです。(途中省略)請求項3は削除致しました。」と主張しているとおり,「請求項の削除」および「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当すると認められるので,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号および第4号に掲げられた事項を目的とするものに該当し,適法になされたものである。
したがって,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年11月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
設問作成サーバで作成された調査プログラムを携帯端末に配信し,携帯端末上で実行された前記調査プログラムの調査結果を管理サーバが収集する調査方法であって,
前記設問作成サーバが,
ネットワークを介して接続した端末或は入力装置から設問の入力を受け,
該設問の回答が所定数入力されたことを契機に当該回答群を管理サーバに対して送信させる通信指示モジュールを,該設問を携帯端末に表示させて回答の入力を促す設問データに加えて調査プログラムとし,
該調査プログラムを前記携帯端末に送信し,
前記調査プログラムを受信した携帯端末が,
該調査プログラムの設問データに基づいて携帯端末の表示手段に対して設問を表示し,
当該設問に対する回答を前記携帯端末の入力手段を通じて受け付けて携帯端末の記憶手段に記憶し,
前記調査プログラムの通信指示モジュールによる命令に応じ,前記記憶手段内の回答が所定数となった場合に,当該回答群を前記携帯端末の通信手段を介して管理サーバに送信し,
前記回答群を受信した管理サーバは,
当該回答群を統計処理して,処理結果を出力する調査方法。」

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前である平成7年8月22日に頒布された「特開平7-225778号公報」(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の(ア)乃至(カ)の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はマスメディアなどが実施する世論調査業務などの調査作業や,集計作業,統計出力などを円滑に,かつ迅速に行なう世論調査システムに関する。」

(イ)「【0015】
【実施例】図1は本発明による世論調査システムの一実施例を示すブロック図である。
【0016】この図に示す世論調査システムは調査エリアなどに配置されるラップトップ型パソコン装置1と,調査エリア内に配置された各調査員によって携帯されるペンパソコン装置2と,集計業務などを行なう事務所などに配置される管理端末装置3とを備えており,調査エリア内に配置された各調査員によって携帯されているペンパソコン装置2が調査対象となる人に渡されて調査項目に対する意識内容が入力され,この入力内容がメモリカード4を媒体としてラップトップ型パソコン装置1に渡されて集計された後,この集計内容がフロッピーディスク5を媒体として管理端末装置3に渡され,この管理端末装置3内にあるデータベース27に記録されるとともに,LAN6によってこの管理端末装置3が接続されているホストコンピュータ装置(図示は省略する)に伝送されて,管理される。
【0017】各ペンパソコン装置2はA5サイズ程度の大きさに形成される筐体10と,この筐体10の上面に配置される液晶表示器11と,前記筐体10内に配置され,ポイント認識処理や文字認識処理,意識調査処理などを行なう処理回路12と,前記筐体10のメモリカード専用スロットに着脱自在に差し込まれるメモリカード4と,前記筐体10と独立して設けられ,その先端が前記液晶表示器11上にタッチされることにより,ポイント指示や文字入力などを行なうペン13などとを備えている。
【0018】そして,調査対象となる人(調査対象人)の意識を調査する際,調査エリア内に配置される調査員によって携帯され,調査対象人に渡されて調査問題に対応する答えが入力されたとき,この入力内容(調査データ)を暗号化してメモリカード4に記録し,調査作業が終了したとき,このメモリカード4をラップトップ型パソコン装置1に渡してその内容を読み出させる。
【0019】なお,このペンパソコン装置2では,処理回路12にインストロールされている処理プログラムによって液晶表示器11上に表示された問題に対する答えの内容がチェックされて,異常な答えがあったとき,再度,同じ質問が出されるとともに,リスト命令などを入力しても,一旦,入力された問題に対する答えが読み出せないように設定されている。
【0020】ラップトップ型パソコン装置1は調査エリア内の調査データ収集場所に配置されるラップトップ型パソコン装置本体14と,このラップトップ型パソコン装置本体14に着脱自在に接続され,このラップトップ型パソコン装置本体14からリストデータなどの印字データが供給されたとき,これを受けて調査結果リストなどをプリントアウトする携帯用プリンタ装置15とを備えており,調査エリア内に配置されている各調査員によって携帯されているペンパソコン装置2のメモリカード4が渡されたとき,このメモリカード4の内容(調査データ)を読み出してこれを集計するとともに,フロッピーディスク5に記録し,さらに必要に応じて集計結果をプリントアウトして調査内容を確認させる。」

(ウ)「【0022】また,管理端末装置3は集計業務を行なう事務所などに配置されるディスクトップ型パソコン装置本体25と,このディスクトップ型パソコン装置本体25に着脱自在に接続され,このディスクトップ型パソコン装置本体25からリストデータなどの印字データが供給されたとき,これを受けて調査結果リストなどをプリントアウトする据置き型プリンタ装置26とを備えており,調査エリア内における調査業務が終了し,調査エリア内に配置されているラップトップ型パソコン装置1のフロッピーディスク5が渡されたとき,このフロッピーディスク5の内容を読み出してこれを集計するとともに,この集計結果を内部のデータベース27に記録し,さらに必要に応じて前記集計結果をLAN6を介してホストコンピュータ装置に伝送して処理させたり,前記集計結果をプリントアウトして調査内容を確認させたりする。」

(エ)「【0026】《調査エリア側の動作》まず,調査エリア内に配置された各調査員によって各調査対象人の意識調査が行われるとき,これら各調査員によってペンパソコン装置2が携帯され,調査対象人に渡される。
【0027】そして,この調査対象人によってペンパソコン装置2の液晶表示器11上に表示されている調査対象となる各問題に対し,ペン13が操作されて答えが入力されれば,このペンパソコン装置2の処理回路12によって前記各答えが正しい範囲に入っているかどうかがチェックされ,これらが正しい答えでなければ,正しい答えの入力を促すメッセージが生成されて,これが液晶表示器11上に表示される。
【0028】そして,この液晶表示器11上に表示されている問題に対する正しい範囲にある答えが入力されれば,処理回路12によってこれが処理されて,調査対象となる人の年齢などの個人データ,問題に対する答え,この答えが入力された時刻など情報を示す調査データが作成されるとともに,これが暗号化されてメモリカード4に記録される。
【0029】以下,各調査対象人毎に,上述した動作が繰り返されて,複数の問題に対する答えが入力され,これが暗号化されてメモリカード4に記録される。」

(オ)「【0032】以下,各調査員に割り当てられた各調査対象人に対して,上述した調査作業が終了する毎に,上述した動作が繰り返されて,ラップトップ型パソコン装置1によって各ペンパソコン装置2のメモリカード4に記録されている各調査データが収集されて集計データが作成され,これがフロッピーディスク5に記録されるとともに,必要に応じてこの集計データが携帯用プリンタ装置15からプリントアウトされる。
【0033】そして,ある程度の調査データが収集されたとき,ラップトップ型パソコン装置1からフロッピーディスク5が抜き出されて,これが事務所側のオペレータに渡される。
【0034】《事務所側の動作》また,事務所側では,調査エリア側の人から集計データが記録されたフロッピーディスク5が渡され,これがディスクトップ型パソコン装置3に差し込まれた後,このディスクトップ型パソコン装置3のキーボード29が操作され,集計指令が入力されれば,ディスクトップ型パソコン装置3の処理回路30によって前記フロッピーディスク5に記録されている集計データが読み出され,これがさらに集計されて分析され,この分析結果にエラーがあるかどうかがチェックされるとともに,この集計結果(集計データ)や分析結果(分析データ)がデータベース27に記録されて一元的に管理され,さらにキーボード29が操作されて,プリントアウト指示が入力されたとき,集計結果や分析結果に基づいて印字データが生成され,これが据置き型プリンタ装置26からプリントアウトされてオペレータにより確認される。」

(カ)「【0038】また,上述した実施例においては,各ペンパソコン装置2によって収集された調査データをメモリカード4に記録してラップトップ型パソコン装置1に渡すようにしているが,各ペンパソコン装置2と,ラップトップ型パソコン装置1とに通信機能,例えば簡易型の無線電話回線を使用して通信を行なう機能や各電話会社が提供している無線電話回線を使用して通信を行なう機能などを設け,各ペンパソコン装置2によって収集された調査データをリアルタイムでラップトップ型パソコン装置1に伝送するようにしても良い。
【0039】これによって,ある程度の調査を行なう毎に,調査作業を行なっている調査員がラップトップ型パソコン装置1の配置場所まで戻ることなく,調査データをラップトップ型パソコン装置1に伝送して,リアルタイムでこれを集計処理させることができ,調査業務をより効率化させることができる。
【0040】同様に,上述した実施例においては,ラップトップ型パソコン装置1によって集計された集計データをフロッピーディスク5に記録してディスクトップ型パソコン装置3に渡すようにしているが,ラップトップ型パソコン装置1と,ディスクトップ型パソコン装置3とに通信機能,例えば各電話会社が提供している無線電話回線や有線の電話回線を使用して通信を行なう機能を設け,ラップトップ型ペンパソコン装置1によって収集された集計データをリアルタイムでディスクトップ型パソコン装置3に伝送するようにしても良い。
【0041】これによって,調査エリア側のラップトップ型パソコン装置1によって集計されたデータを事務所側のディスクトップ型パソコン装置3にリアルタイムで伝送して処理させることができ,調査業務および集計業務をより効率化させることができる。」

(a)上記摘記事項(イ)の【0016】段落の「この図に示す世論調査システムは調査エリアなどに配置されるラップトップ型パソコン装置1と,調査エリア内に配置された各調査員によって携帯されるペンパソコン装置2と,集計業務などを行なう事務所などに配置される管理端末装置3とを備えており,調査エリア内に配置された各調査員によって携帯されているペンパソコン装置2が調査対象となる人に渡されて調査項目に対する意識内容が入力され,この入力内容がメモリカード4を媒体としてラップトップ型パソコン装置1に渡されて集計された後,この集計内容がフロッピーディスク5を媒体として管理端末装置3に渡され,この管理端末装置3内にあるデータベース27に記録されるとともに,LAN6によってこの管理端末装置3が接続されているホストコンピュータ装置(図示は省略する)に伝送されて,管理される。」との記載からみて,引用例1の世論調査システムでは,複数の調査員が各々「ペンパソコン装置2」を携帯し,当該ペンパソコン装置2に入力された「調査項目に対する意識内容」が,ラップトップ型パソコン装置1を介して,「管理端末装置3」に渡されるものであるから,「ペンパソコン装置2に入力された調査項目に対する意識内容を管理端末装置3が収集」していることは明らかである。
また,引用例1には,「世論調査システム」を用いた世論調査の方法が記載されているから,「世論調査方法」が記載されているということができる。
してみれば,引用例1には,「ペンパソコン装置2に入力された調査項目に対する意識内容を管理端末装置3が収集する世論調査方法」との事項が記載されているということができる。

(b)上記摘記事項(エ)の【0027】段落の「そして,この調査対象人によってペンパソコン装置2の液晶表示器11上に表示されている調査対象となる各問題に対し,ペン13が操作されて答えが入力され」との記載からみて,引用例1の「ペンパソコン装置2」が,「ペンパソコン装置2の液晶表示器11上に調査対象となる各問題を表示し」ていることは明らかである。また,「各問題に対し,ペン13が操作されて答えが入力され」との記載からみて「各問題に対する答えをペンパソコン装置2のペン13を通じて受け付け」ていることも明らかである。
してみれば,引用例1には,「ペンパソコン装置2が,ペンパソコン装置2の液晶表示器11上に調査対象となる各問題を表示し,各問題に対する答えをペンパソコン装置2のペン13を通じて受け付け」との事項が記載されているということができる。

(c)上記摘記事項(エ)の【0028】-【0029】段落の「そして,この液晶表示器11上に表示されている問題に対する正しい範囲にある答えが入力されれば,処理回路12によってこれが処理されて,調査対象となる人の年齢などの個人データ,問題に対する答え,この答えが入力された時刻など情報を示す調査データが作成されるとともに,これが暗号化されてメモリカード4に記録される。(途中省略)以下,各調査対象人毎に,上述した動作が繰り返されて,複数の問題に対する答えが入力され,これが暗号化されてメモリカード4に記録される。」との記載からみて,液晶表示器11上に表示されている「問題に対する答えが入力されると,調査データが作成され」,また,「これが各調査対象人毎に繰り返されて複数の調査データが収集され」ていることは明らかである。
してみれば,引用例1には,「問題に対する答えが入力されると,調査データが作成され,これが各調査対象人毎に繰り返されて複数の調査データが収集され」との事項が記載されているということができる。

(d)上記摘記事項(カ)の【0038】段落の「各ペンパソコン装置2と,ラップトップ型パソコン装置1とに通信機能,例えば簡易型の無線電話回線を使用して通信を行なう機能や各電話会社が提供している無線電話回線を使用して通信を行なう機能などを設け,各ペンパソコン装置2によって収集された調査データをリアルタイムでラップトップ型パソコン装置1に伝送するようにしても良い。」との記載からみて,各ペンパソコン装置2には「通信機能」が設けられているから,「収集された調査データをペンパソコン装置2の通信機能を介してラップトップ型パソコン装置1に伝送し」ているということができる。

(e)上記摘記事項(オ)の【0032】段落の「以下,各調査員に割り当てられた各調査対象人に対して,上述した調査作業が終了する毎に,上述した動作が繰り返されて,ラップトップ型パソコン装置1によって各ペンパソコン装置2のメモリカード4に記録されている各調査データが収集されて集計データが作成され」との記載からみて,ラップトップ型パソコン装置1は,複数のペンパソコン装置2からの「調査データから集計データを作成し」ていることは明らかである。
また,上記(d)によれば,「ラップトップ型パソコン装置1は,複数のペンパソコン装置2から調査データを受信」することができるものである。
また,上記摘記事項(カ)の【0040】段落の「ラップトップ型パソコン装置1と,ディスクトップ型パソコン装置3とに通信機能,例えば各電話会社が提供している無線電話回線や有線の電話回線を使用して通信を行なう機能を設け,ラップトップ型ペンパソコン装置1(当審注:「ラップトップ型ペンパソコン装置1」は「ラップトップ型パソコン装置1」の誤記と認められる。)によって収集された集計データをリアルタイムでディスクトップ型パソコン装置3に伝送するようにしても良い。」との記載からみて,ラップトップ型パソコン装置1は,収集された「集計データをディスクトップ型パソコン装置3に伝送し」ていることは明らかである。
また,図1の記載からみて,「ディスクトップ型パソコン装置3」と「管理端末装置3」とは同じものを指していることは明らかである。
してみれば,引用例1には,「ラップトップ型パソコン装置1は,複数のペンパソコン装置2から受信した調査データから集計データを作成し,当該集計データを管理端末装置3に伝送し」との事項が記載されているということができる。

(f)上記(e)より,「管理端末装置3」が「伝送された集計データ」を「受信し」ていることは明らかである。
また,上記摘記事項(ウ)の【0022】段落の「また,管理端末装置3は集計業務を行なう事務所などに配置されるディスクトップ型パソコン装置本体25と,(途中省略)調査エリア内における調査業務が終了し,調査エリア内に配置されているラップトップ型パソコン装置1のフロッピーディスク5が渡されたとき,このフロッピーディスク5の内容を読み出してこれを集計するとともに,この集計結果を内部のデータベース27に記録し,」との記載,及び上記摘記事項(オ)の【0034】段落の「また,事務所側では,調査エリア側の人から集計データが記録されたフロッピーディスク5が渡され,これがディスクトップ型パソコン装置3に差し込まれた後,このディスクトップ型パソコン装置3のキーボード29が操作され,集計指令が入力されれば,ディスクトップ型パソコン装置3の処理回路30によって前記フロッピーディスク5に記録されている集計データが読み出され,これがさらに集計されて分析され,この分析結果にエラーがあるかどうかがチェックされるとともに,この集計結果(集計データ)や分析結果(分析データ)がデータベース27に記録されて一元的に管理され,」との記載からみて,「管理端末装置3」が,受信した「集計データ」をさらに「集計,分析」していることは明らかである。また,上記摘記事項(ア)の「本発明はマスメディアなどが実施する世論調査業務などの調査作業や,集計作業,統計出力などを円滑に,かつ迅速に行なう世論調査システムに関する。」との記載を参照すれば,上記「集計,分析」の処理が,「統計処理」を含むことも明らかである。
また,上記摘記事項(ウ)の【0022】段落の「この集計結果を内部のデータベース27に記録し(途中省略),前記集計結果をプリントアウトして調査内容を確認させたりする。」との記載,及び上記摘記事項(オ)の【0034】段落の「この集計結果(集計データ)や分析結果(分析データ)がデータベース27に記録されて一元的に管理され,さらにキーボード29が操作されて,プリントアウト指示が入力されたとき,集計結果や分析結果に基づいて印字データが生成され,これが据置き型プリンタ装置26からプリントアウトされてオペレータにより確認される。」との記載からみて,管理端末装置3が集計結果や分析結果等の「処理結果」を「プリントアウト」していることは明らかである。
してみれば,引用例1には,「伝送された集計データを受信した管理端末装置3は,当該集計データを統計処理して,処理結果をプリントアウトする」との事項が記載されているということができる。

そうすると,上記摘記事項(ア)乃至(カ)の記載及び図面の記載から,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「ペンパソコン装置2に入力された調査項目に対する意識内容を管理端末装置3が収集する世論調査方法であって,
ペンパソコン装置2が,
ペンパソコン装置2の液晶表示器11上に調査対象となる各問題を表示し,
各問題に対する答えをペンパソコン装置2のペン13を通じて受け付け,
問題に対する答えが入力されると,調査データが作成され,これが各調査対象人毎に繰り返されて複数の調査データが収集され,
収集された調査データをペンパソコン装置2の通信機能を介してラップトップ型パソコン装置1に伝送し,
ラップトップ型パソコン装置1は,
複数のペンパソコン装置2から受信した調査データから集計データを作成し,当該集計データを管理端末装置3に伝送し,
伝送された集計データを受信した管理端末装置3は,
当該集計データを統計処理して,処理結果をプリントアウトする世論調査方法。」

(2)引用例2
また,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前である平成9年10月14日に頒布された「特開平9-270865号公報」(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに以下の(キ)の事項が記載されている。

(キ)「【0064】PHSサービス制御局6内の入力部76を利用してアンケート情報の入力を行う。この時,個々のアンケート情報を識別するためのシリアルナンバーも与えることにする(S1,Sはステップを示す。以下のSも同様)。続いて,同じく入力部76を利用して,手順S1で入力したアンケート情報の送信地域を入力する(S2)。例えば,全国一斉にこのアンケート情報を流す場合には,「全国」を入力し,愛知,岐阜,三重県に限定的に流すアンケート情報の場合には,「東海3県」を入力する。また,「商店街」とか「遊戯施設」といった項目で入力してもよい。さらに,前記例を複数組み合わせたものであってもよい。例えば「東海3県」の「商店街」といった情報を入力してもよい。これらの入力項目には,図2の識別番号或いは属性情報に対応する信号が予め割り当てられている。手順S2で入力される送信地域の情報に基づいて,手順S1で入力されるアンケート情報に,図2の識別番号或いは属性情報を割り当てる。尚,ここでいう送信地域の情報が請求項の位置情報に該当する。
【0065】続いて,アンケート情報を流す期間の設定を行う(S3)。ここでは,アンケート情報の送信開始日,終了日,送信時間帯等を入力することになる。この情報が,請求項における時間情報に該当する。尚,手順S2及びS3が,送信特性入力手段に該当する。
【0066】上記入力が終了すると,入力部76より送信開始を意味する信号がCPU70に与えられる。すると,CPU70は基地局識別情報82から個々のPHS基地局の位置情報と属性情報を読み出す(S4)。そして,手順S2で設定した送信地域を示す情報と,手順S4で読み取る情報とを比較することにより,手順S4で読み取る地域または場所が送信地域に該当するか否かを判定する(S5)。
【0067】ここで,送信地域内であると判定される(S5,Yes)と,CPU70は手順S4で読み取る情報に対応する識別番号を読み取る。そして,市内交換機2に対してこの識別番号を送付する。市内交換機2はPHSサービス制御局6から送付される識別番号に基づいて,PHS基地局16との回線を接続する。そして,PHSサービス制御局6は手順S1と手順S3とで入力したアンケート情報とその送信時期についての情報をPHS基地局16へ送信する(S6)。尚,アンケート情報のシリアルナンバーも同時に送付される。
【0068】そして,CPU70は基地局識別情報82に記憶される全てのPHS基地局に対し,S5の判定を行ったか識別する(S7)。ここで,全てのPHS基地局に対し判定を行ったならば(S7,Yes),処理を終了する。行っていないとき(S7,No)には,手順S4に戻る。
【0069】尚,手順S5で,送信地域外であると判定されるときには(S5,No),手順S7に進む。
【0070】以上の動作がアンケート情報の入力及びPHS基地局への配信動作である。ここで,手順S2で示したようにアンケート情報を流したい所望の地域を入力し,この地域に該当する領域に設置されるPHS基地局に対し選択的にアンケート情報を発信できる。各PHS基地局は後述する方法に基づいてこのアンケート情報を発信するので,アンケート情報の発信者の所望の地域のみからアンケート情報を流すことになる。即ち,アンケート情報に返答して欲しい人が多く集まる地域にアンケート情報の発信地域を限定することで,アンケートの利用効率が高まることになる。また,S2で入力する情報は,県名や地名に限定されるものではなく,商店街であるとか遊戯施設等の地域環境に基づく識別名であってもよいので,アンケート発信者の発信地域の限定に対する様々な要望に答えられるようになり,アンケートの利用価値や効率はますます高まることになる。
【0071】続いて,図5を参照して,PHS基地局におけるアンケートの受信動作について説明する。
【0072】PHS基地局16のCPU22は,送受信部20が受け取る信号を常に監視している。そして,送受信部20がアンケート情報の受信を行うと(S8,Yes),CPU22はこのアンケート情報を記憶装置28に保存する(S9)。尚,記憶装置28に保存する情報は,図4の手順S1で入力したアンケート情報の他に,手順S3で入力する送信時期の情報も含まれている。尚,手順S8でアンケート情報を受け取らない場合(S8,No)には,処理を終了する。
【0073】続いて,図6を参照して,PHS基地局におけるアンケート情報の送信動作について説明する。PHS基地局16のCPU22は,記憶装置28に記憶されるアンケート情報の送信時期に関する情報を順に読み取る(S10)。さらに,カレンダー回路27を利用して現在の日時を識別する。そして,現在の日時が手順S20で読み取る送信時期内であるか否かを判定する(S11)。ここで,送信時期内である(S11,Yes)と判定されると,CPU22はTDMA/TDD処理部24の動作を検知して,通信チャンネルに空(利用されていないチャンネル)があるか否かを判定する(S12)。ここで,空がある(S12,Yes)と判定されると,CPU22はTDMA/TDD処理部24に対し,手順S22で空と判定したチャンネルからアンケート情報を発信中であるという信号を,制御チャンネルから送信する様に指示を出す。TDMA/TDD処理部24はこの指示に従って,制御チャンネルから送信する信号(制御データ)を修正する(S13)。
【0074】そして,記憶装置28に記憶されたアンケート情報をTDMA/TDD処理部24で通信チャンネルから送信するデータにを変換する。この制御データとアンケート情報をアンテナ部26より無線出力する(S14)。そして,記憶装置28に記憶される全てのアンケート情報の送信時期の読み取り及び現在時刻との比較を行ったか否かを判定し(S15),行っていれば(S15,Yes),処理を終了し,行っていないときは(S15,No),手順S10に戻る。また,手順S11で現在時刻が送信時間外であると判定されると(S11,No),手順S15に進む。さらに,手順S12で通信チャンネルに空が無いときは(S12,No),手順S12に戻る。すなわち,通信チャンネルに空ができるまで手順12で待機状態になる。
【0075】以上の動作がPHS基地局16におけるアンケート情報の送信動作である。ここで,手順S11は,図4の手順S3で入力した時間情報に該当するアンケート情報の送信時期に基づいて,アンケート情報を送信するか否かを判定するものである。即ち,アンケート情報の発信者の所望の時間帯にアンケート情報を流すことになる。これは,アンケート情報に返答して欲しい人が多く集まる時間帯を狙って,集中的にアンケート情報を発信できることになるので,少ない情報発信であっても利用価値の高いアンケートを回収することができる。つまり,アンケートの効率がアップすることになる。
【0076】また,手順S13で示す様に,通信チャンネルに空があるか否かを識別し,空がある場合にのみアンケート情報の送信を行うので,通常の無線通信に悪影響を与えることが無い。
【0077】続いて,図7を参照してPHS端末18におけるアンケート情報の受信動作について説明する。
【0078】先ず,PHS端末18のCPU36は,TDMA/TDD処理部32が受信する信号を常に監視している。ここで,TDMA/TDD処理部32が受信する信号の内,制御チャンネルの信号を読み取る(S20)。CPU36はこの制御チャンネルの信号を識別することで,アンケート情報が送信されているか否かを判定する(S21)。ここで,送信されていると判定された場合(S21,Yes),PHS基地局16から送信されるアンケート情報のシリアルナンバーを確認する。そして,CPU36は記憶装置34の図示しない領域に記憶される既に受信したアンケート情報のシリアルナンバーを検索する。これにより,PHS基地局16から送信されるアンケート情報が既に受信したものであるか否かを判定する(S22)。尚,この手順が記憶内容検知手段の1つに該当する。ここで,受信していないと判定される(S22,No)と,CPU36はアンケート情報記憶部52の記憶状況を調べる。
【0079】そして,アンケート情報記憶部52に十分な空容量があるか否か,即ち,メモリフルになっているか否かを判定する(S23)。尚,この手順も記憶内容検知手段の1つに該当する。ここで,メモリフルではないと判定されると(S23,No),CPU36は制御チャンネルからの受信信号で示される通信チャンネルの信号を選択的に受信する(S24)。図6の手順S13において,アンケート情報を送信する通信チャンネルを制御チャンネルの通信データに明示したので,手順S24はPHS基地局16が送信するアンケート情報を選択的に受信することになる。そして,受信したアンケート情報をCPU36がアンケート情報記憶部52に記憶保存する(S25)。尚,この手順が記憶制御手段に該当する。
【0080】そして,CPU36はこのアンケート情報のシリアルナンバーを記憶装置34の図示しない領域に記憶保存する(S26)。尚,この時,このアンケート情報の送信時期(或いは送信終了時期)を対応付けて記憶してもよい。この場合,PHS基地局16から送信されるアンケート情報には,PHS基地局16の記憶装置28に記憶されるアンケート情報の送信時期に関する情報が付加されるようになっている。
【0081】手順S21でアンケート情報が送信されていない場合(S21,No),手順S22で既に受信したアンケート情報が送信されている場合(S22,Yes),手順S23でアンケート情報記憶部52がメモリフルとなっている場合(S23,Yes)は,共に処理を終了する。
【0082】以上の動作がPHS端末18におけるアンケート情報の受信動作である。ここで,手順S25に示す様に,通信回線を介して送られるアンケート情報は,PHS端末18の利用者に着呼を知らせること無く,直ちに記憶装置34に記憶保存される。これにより,利用者が急用で電話に応答できない場合でも,アンケート情報を利用者のPHS端末18に記憶させることができる。即ち,従来の電話アンケートではアンケートの被験者(PHS端末18の利用者)に対し強制的に時間を拘束させてしまうので,被験者に嫌悪感を抱かせてしまったが,アンケート情報を記憶装置に記憶させるだけであるので,このような嫌悪感を抱かせることが無くなる。それ故,アンケートに対し好意的に取り組んでもらえる可能性が高まり,アンケート情報の回収率の向上にも寄与することができる。
【0083】また,手順S22及び手順S23で示す様に,PHS端末18の記憶装置34の記憶内容を検知し,その検知した結果に基づいてアンケート情報を受信することができる。これにより,既に受信したアンケート情報を重複して受信することが無くなり,記憶装置34の有効利用が計れたり,PHS端末18の利用者に対し無意味な情報を提供しなくて済むようになる。
【0084】さらに,記憶装置34がメモリフルの場合にはアンケート情報の受信及び保存を拒否するため,記憶装置34の情報を保護することになり,重要な情報を消失させる危険が低減する。
【0085】続いて,図8を参照してPHS端末18におけるアンケートの回答動作について説明する。
【0086】まず,PHS端末18のCPU36がアンケート情報の着信を認識する(S50)。そして,このアンケート情報を記憶装置34に保存する(S51)。この動作は既に図7で説明したものである。そして,保存動作が終了すると,CPU36は表示部62に対し,アンケート情報を受信したことを示す記号又は図形などを表示する様指示を出す。表示部62は,この指示に従って表示を行う(S52)。
【0087】その後,CPU36は,アンケート回答モードキー44が押下されるか監視し続ける。そして,押下されたと判断すると(S53,Yes),CPU36はアンケート情報記憶部52からアンケート情報を読み出し,これを表示部62に表示させる(S54)。PHS端末18の利用者はこの情報を見ながら,アンケートに対し回答を行う(S55)。そして,全ての項目に対して回答したか否かを判定する(S56)。回答が終了したと判定すると(S56,Yes),アンケートの送信者に対しアンケートの回答を返信することになる(S57)。そして,処理は終了する。」

上記摘記事項(キ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例2には,

「PHSサービス制御局6が,当該PHSサービス制御局6内の入力部76からアンケート情報の入力を受け,入力されたアンケート情報をPHS端末18に送信し,前記アンケート情報を受信したPHS端末18が,アンケート情報をPHS端末18の表示部62に表示させ,PHS端末18の利用者がこの情報を見ながらアンケートに対して回答を行う。」

との事項が記載されている。

4.当審の判断

引用例1発明の「ペンパソコン装置2」「世論調査方法」がそれぞれ本願発明の「携帯端末」「調査方法」に相当する。
引用例1発明の「調査項目に対する意識内容」は,調査対象となる人が入力した結果であるから,本願発明の「調査結果」に相当する。また,本願発明の調査結果は携帯端末に入力されたものであるから,本願発明の「携帯端末上で実行された前記調査プログラムの調査結果」と引用例1発明の「ペンパソコン装置2に入力された調査項目に対する意識内容」とは,ともに「携帯端末に入力された調査結果」である点で共通している。
引用例1発明の「管理端末装置3」は,携帯端末に入力された調査結果を収集する「管理装置」である点で,本願発明の「管理サーバ」と共通する。
したがって,本願発明の「設問作成サーバで作成された調査プログラムを携帯端末に配信し,携帯端末上で実行された前記調査プログラムの調査結果を管理サーバが収集する調査方法」と引用例1発明の「ペンパソコン装置2に入力された調査項目に対する意識内容を管理端末装置3が収集する世論調査方法」とは,以下に記載する点で相違するものの,ともに「携帯端末に入力された調査結果を管理装置が収集する調査方法」の点で共通している。

引用例1発明の「液晶表示器11」「調査対象となる各問題」がそれぞれ本願発明の「表示手段」「設問」に相当する。
したがって,本願発明の「前記調査プログラムを受信した携帯端末が,該調査プログラムの設問データに基づいて携帯端末の表示手段に対して設問を表示し」と引用例1発明の「ペンパソコン装置2が,ペンパソコン装置2の液晶表示器11上に調査対象となる各問題を表示し」とは,以下に記載する点で相違するものの,ともに「携帯端末が,携帯端末の表示手段に対して設問を表示し」の点で共通している。

引用例1発明の「各問題に対する答え」「ペン13」がそれぞれ本願発明の「設問に対する回答」「入力手段」に相当する。
したがって,本願発明の「当該設問に対する回答を前記携帯端末の入力手段を通じて受け付けて携帯端末の記憶手段に記憶し」と引用例1発明の「各問題に対する答えをペンパソコン装置2のペン13を通じて受け付け」とは,以下に記載する点で相違するものの,ともに「当該設問に対する回答を前記携帯端末の入力手段を通じて受け付け」の点で共通している。

引用例1発明の「収集された調査データ」「通信機能」「伝送し」がそれぞれ本願発明の「回答群」「通信手段」「送信し」に相当する。
また,引用例1発明のペンパソコン装置2は,ラップトップ型パソコン装置1を介しているため間接的ではあるものの,調査データを管理端末装置3に送信しているということができる。
したがって,本願発明の「前記調査プログラムの通信指示モジュールによる命令に応じ,前記記憶手段内の回答が所定数となった場合に,当該回答群を前記携帯端末の通信手段を介して管理サーバに送信し」と引用例1発明の「収集された調査データをペンパソコン装置2の通信機能を介してラップトップ型パソコン装置1に伝送し,ラップトップ型パソコン装置1は,複数のペンパソコン装置2から受信した調査データから集計データを作成し,当該集計データを管理端末装置3に伝送し」とは,以下に記載する点で相違するものの,ともに「回答群を前記携帯端末の通信手段を介して管理装置に送信し」の点で共通している。

引用例1発明の「伝送された集計データ」は,調査データを集計したものであるから,本願発明の「回答群」に相当する。
引用例1発明の「プリントアウトする」が本願発明の「出力する」に相当する。
したがって,本願発明の「前記回答群を受信した管理サーバは,当該回答群を統計処理して,処理結果を出力する」と引用例1発明の「伝送された集計データを受信した管理端末装置3は,当該集計データを統計処理して,処理結果をプリントアウトする」とは,以下に記載する点で相違するものの,ともに「前記回答群を受信した管理装置は,当該回答群を統計処理して,処理結果を出力する」の点で共通している。

そうすると,本願発明と引用例1発明とは,

「携帯端末に入力された調査結果を管理装置が収集する調査方法であって,
携帯端末が,
携帯端末の表示手段に対して設問を表示し,
当該設問に対する回答を前記携帯端末の入力手段を通じて受け付け,
当該回答群を前記携帯端末の通信手段を介して管理装置に送信し,
前記回答群を受信した管理装置は,
当該回答群を統計処理して,処理結果を出力する調査方法。」

の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
管理装置として,本願発明では,管理サーバを用いているのに対して,引用例1発明では,管理端末装置3を用いている点。

[相違点2]
本願発明では,設問作成サーバで作成された調査プログラムを携帯端末に配信し,携帯端末上で実行された前記調査プログラムの調査結果を管理サーバが収集するのに対して,引用例1発明では,「設問作成サーバで作成された調査プログラムを携帯端末に配信」することは記載されておらず,管理端末装置3が収集する調査項目に対する意識内容(調査結果)が,「携帯端末上で実行された調査プログラムの調査結果」ではない点。

[相違点3]
本願発明では,設問作成サーバが,ネットワークを介して接続した端末或は入力装置から設問の入力を受け,該設問を携帯端末に表示させて回答の入力を促す設問データを調査プログラムとし,該調査プログラムを前記携帯端末に送信し,前記調査プログラムを受信した携帯端末が,該調査プログラムの設問データに基づいて携帯端末の表示手段に対して設問を表示しているのに対して,引用例1発明には,これに対応する構成が記載されていない点。

[相違点4]
本願発明では,設問の回答が所定数入力されたことを契機に当該回答群を管理サーバに対して送信させる通信指示モジュールを,設問データに加えて調査プログラムとし,回答を携帯端末の記憶手段に記憶し,前記調査プログラムの通信指示モジュールによる命令に応じ,前記記憶手段内の回答が所定数となった場合に,当該回答群を管理装置に送信しているのに対して,引用例1発明では,そのような送信動作を行っていない点。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
所定の情報処理を実行する装置として,サーバを用いることは周知技術(以下,「周知技術1」という。)であるから,引用例1発明において,調査結果を収集し,回答群を統計処理して,処理結果を出力するための管理装置として管理サーバを用いるようにすることに格別の困難性は認められない。

したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,引用例1発明,及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

[相違点2及び相違点3について]
引用例2には,「PHSサービス制御局6が,当該PHSサービス制御局6内の入力部76からアンケート情報の入力を受け,入力されたアンケート情報をPHS端末18に送信し,前記アンケート情報を受信したPHS端末18が,アンケート情報をPHS端末18の表示部62に表示させ,PHS端末18の利用者がこの情報を見ながらアンケートに対して回答を行う。」との事項(以下,「引用例2記載事項」という。)が記載されている。
ここで,引用例2記載事項における「入力部76」「アンケート情報」「PHS端末18」「表示部62」がそれぞれ本願発明の「入力装置」「設問」「携帯端末」「表示手段」に相当する。また,引用例2記載事項における「PHSサービス制御局6」は,「設問作成装置」である点で,本願発明の「設問作成サーバ」と共通する。
一方,端末にプログラムを送信して実行させることは例えば特開2000-347718号公報(特に【0012】【0016】【0036】【0039】段落の記載参照),特開2001-282316号公報(特に【0019】?【0022】段落の記載参照),特開2001-306904号公報等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術2」という。)であるものと認められる。
してみれば,引用例1発明に引用例2記載事項を適用して,設問を設問作成装置で作成して携帯端末に送るように構成し,その際,上記周知技術1を適用して,設問作成装置を設問作成サーバとし,さらに上記周知技術2を適用して,作成された設問を表示して回答入力させるための調査プログラムとして送信して携帯端末で実行させるように構成することは当業者であれば容易に想到しえたことと認められる。

したがって,相違点2及び相違点3に係る本願発明の構成は,引用例1発明,引用例2記載事項,及び周知技術2に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

[相違点4について]
データを収集して送信する装置において,当該装置の記憶部に記憶された情報の情報量が,当該記憶部の記憶容量に応じて予め設定される所定の設定値に達した場合に,記憶部に記憶された情報を所定の送信先に送信するように構成することは,例えば特開2001-296911号公報(特に【0017】?【0018】段落の記載参照),特開2001-21658号公報(特に【0014】?【0016】段落の記載参照),特開平11-205514号公報(特に【0058】?【0059】段落の記載参照)等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術3」という。)であるものと認められる。そして,記憶部に複数件の情報が記憶され,1件当たりの情報の情報量が一定である場合には,記憶された情報の情報量が件数で表せることは自明のことである。
また,上記「[相違点2及び相違点3について]」で記載したように,端末にプログラムを送信して実行させることは周知技術(周知技術2)である。
してみれば,引用例1発明において,上記周知技術3を適用して,携帯端末の記憶手段内の回答件数が,携帯端末の記憶部の記憶容量に応じて予め設定される所定の設定値に達した場合,すなわち設問の回答が所定数入力された場合に,回答群を管理装置に対して送信させるように動作させることに格別の困難性は無く,また,その際,上記周知技術2を適用して,上記のような送信動作を実行させるためのプログラムを「通信指示モジュール」として携帯端末に送信し,当該通信指示モジュールによる命令に応じ,記憶手段内の回答が所定数となった場合に,回答群を管理装置に送信するように構成することにも,何ら格別の困難性は認められない。
また,関連するプログラムを併せて送信するように構成することは当業者が適宜なしうる設計的事項であるものと認められることから,「通信モジュール」を「設問データに加えて調査プログラム」として送信するように構成することも当業者であれば適宜なしえたことと認められる。

したがって,相違点4に係る本願発明の構成は,引用例1発明,及び周知技術2,3に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1,引用例2記載事項,及び周知技術1?3から当業者が予測できる範囲のものである。

なお,審判請求人は平成21年10月5日付けの回答書において以下のとおり主張している。

『(3-1)本願発明と引用文献との対比
本願請求項1の発明は,「設問の回答が所定数入力されたことを契機に当該回答群を管理サーバに対して送信させる通信指示モジュールを,該設問を携帯端末に表示させて回答の入力を促す設問データに加えて調査プログラムと」することを特徴として有しています。調査プログラムの提供側である設問作成サーバが,設問の回答が所定数入力されたことを契機に当該回答群を管理サーバに対して送信させるようにした調査プログラムを配信することで,送信する回答数を予め設定し,調査を容易且つ正確に行うようにしたものです。

これに対し,引用文献5(特開2001-202422)の段落0043には,「取引を一定量蓄積して,一括して送るようにしてもよい」と記載されています。また,引用文献5の段落0064には,「支払証明情報を取得する。そして,本実施の形態では,支払証明情報蓄積部124に一旦蓄積し,一定量に達した時点で,支払証明情報送信部125により,第二のシステムに転送する。」と記載されています。なお,この支払照明情報の送信は,ウエブサーバシステム12のオーソリゼーション要求処理部123或いはウエブサーバシステム31の支払証明情報送信部125が行っています。このウエブサーバシステム13,31は,支払照明情報を蓄積する量について決済中継センタ14等から指示を受ける構成は有していないため,ウエブサーバシステム13,31側で任意に設定するものと思われます。
例えば,引用文献5の段落0052には,回線が混雑しない程度に送ることや,注文情報が集中する場合には一時的に蓄積し,数秒の間隔を空けて1件ずつ送ること,深夜早朝時間帯に送ること,注文情報の受信状況に応じて動的に変化させることが記載されています。即ち,引用文献5は,支払証明情報(クレジット情報)の送信タイミングをウエブサーバシステム側で決定する構成を開示するのみであり,本発明の特徴である調査プログラムの提供側で送信する回答数を設定する構成を開示するものではありません。
また,引用文献2(特開平9-270865)についても,管理装置で生成されたアンケート情報を端末に送信することを開示するに過ぎず,アンケート情報(調査プログラム)の提供側で回答数を設定する構成を開示するものではありません。また,他の引用文献1,3,4,6,7についても調査プログラムの提供側で回答数を設定する構成を開示するものではありません。

また,調査プログラムを単に配信し,端末側で返信する回答数を任意に設定させたのでは,端末のユーザの全てが煩わしい設定をしなければならず,また,設定を間違う可能性も有り,調査の正確性が確保されません。
例えば,審判請求人が平成21年8月30日に行った衆院選挙の出口調査では,全国で300箇所の選挙区に,約4700人の調査員を配置し,各調査員の携帯端末に調査プログラムを配信して調査を行っており,端末側で設定を行わせるのは現実的でなく,設問作成サーバ側で,返信する回答数を設定しておく必要があります。
また,選挙の出口調査の例では,30代の男女20人,40代の男女25人,70代の男女10人のように,割当て抽出(クォータ・サンプリング)を行う場合,調査の途中で割り当てどおりの回答が得られているか否かを判断し,偏りが生じていれば,選挙が終了する前に偏りを是正する必要があるので,計画どおりの調査を行うためには,予め設定した回答数毎に各携帯端末から回答データを収集できる構成であることが重要になります。
このように,回答が所定数となった場合に当該回答群を管理サーバに送信する通信指示モジュールをサーバ側で調査プログラムに組み入れて配信することが,調査を容易且つ正確に行う上で重要であり,このような通信指示モジュールを調査プログラムに加える構成は,引用文献1-7に記載及び示唆されるものではありません。
従って,例え引用文献1-7を組み合わせたとしても「設問の回答が所定数入力されたことを契機に当該回答群を管理サーバに対して送信させる通信指示モジュールを,該設問を携帯端末に表示させて回答の入力を促す設問データに加えて調査プログラムと」する構成を特徴とする本願請求項1の発明を想到できたものではありません。
同様に,本願請求項2の発明も「設問に対する回答が前記携帯端末に所定数入力された場合に当該回答を管理サーバに送信させる通信指示モジュールを前記設問データに加えて調査プログラムとする」構成を有しており,引用文献1-7から想到できたものではありません。』

しかしながら,「[上記相違点4について」で検討したとおり,「設問の回答が所定数入力されたことを契機に回答群を管理装置に対して送信させるような送信動作」を実行させるための通信指示モジュールを設問データに加えて調査プログラムとして携帯端末に送信することにより,「調査プログラムの提供側で,送信する回答数を設定する構成」とすることは当業者が容易に想到し得たことと認められるから,審判請求人の回答書における上記主張は採用することができない。

以上のとおりであるから,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項,及び周知技術1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって,本願発明は,引用例1発明,引用例2記載事項,及び周知技術1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-25 
結審通知日 2010-06-29 
審決日 2010-07-12 
出願番号 特願2001-371595(P2001-371595)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 美樹  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 小林 義晴
須田 勝巳
発明の名称 調査方法  
代理人 松倉 秀実  
代理人 川口 嘉之  

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