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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1222476
審判番号 不服2008-4944  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-28 
確定日 2010-08-26 
事件の表示 特願2001-159440「移動局における周波数探索方法及び移動局。」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 6日出願公開、特開2002-354532〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成13年5月28日の出願であって、平成20年1月21日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対して同年2月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年3月28日に手続補正書が提出されたものである。

2.補正却下の決定
平成20年3月28日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

(1)[補正却下の決定の結論]
平成20年3月28日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

(2)[補正却下の決定の理由]
(a)補正の内容
本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、
「移動通信システムにおいて移動局が通信に使用すべき周波数を検出するための周波数探索方法において、
移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数を対象にして移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う最大周波数探索処理手順と、
移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数のうち所定の基準で決められた一部の周波数を対象として移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う一または複数の部分的周波数探索処理手順とを有し、
該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した結果、移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されない場合に、移行ビットの状態が確認され、上記最大周波数探索処理手順での探索を行うか否かが判定され、
上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、タイマが起動され、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され、
上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記タイマが再起動され、前記移行ビットの状態が第2状態のまま前記タイマが所定の時間経過を示す場合、前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ、前記移行ビットの状態が第1状態の場合であり且つ該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行されるようにした周波数探索方法。」
と補正されている。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され」及び「上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記移行ビットの状態が第2状態のまま所定の時間的条件が満足されると、前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に切り換えられ、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」を、「上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、タイマが起動され、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され」及び「上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記タイマが再起動され、前記移行ビットの状態が第2状態のまま前記タイマが所定の時間経過を示す場合、前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ、前記移行ビットの状態が第1状態の場合であり且つ該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」と限定するものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。

(b)引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-278763号公報(以下、「引用例1」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。
(イ)「【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、移動電話装置は、待ち受け状態に遷移できるまで、一定時間が経過する毎に全ての止まり木チャンネルについて受信レベルを測定して制御チャンネルの起動を試みる。このため、従来の移動電話装置は、電源が投入された状態で、基地局からの電波が届きにくく無線通信が行えない通信サービス圏外に置かれると、急速に電池を消耗する。
【0008】この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、通信サービス圏外所在時の消費電力を低減する移動電話装置を提供することを目的とする。」(段落【0007】、【0008】)

(ロ)「【0039】次に、この発明の実施の形態に係る移動電話装置の動作を説明する。この移動電話装置は、止まり木スキャンを実行する際、一定時間が経過する毎に、全ての止まり木チャンネルのスキャンと、起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャンとを交互に実行することにより、通信サービス圏外所在時の消費電力を低減する移動電話装置である。
【0040】移動電話装置100の制御部1は、レベル測定器21が測定する無線信号の受信レベルが低下し、通信サービス圏内から圏外へと移動したことを検出すると、図6のフローチャートに示す圏外遷移処理を開始する。
【0041】制御部1は、圏外遷移処理を開始すると、スキャンモードフラグ32をリセットする。すなわち、制御部1は、スキャンモードフラグ32を初期化して”0”とする(ステップS1)。
【0042】次に、制御部1は、移動元の通信サービス圏に対応する止まり木チャンネルをチャンネル登録部31に登録する。すなわち、制御部1は、移動電話装置100が圏外に移動するまで使用していた制御チャンネルの起動に用いた止まり木チャンネルを、チャンネル登録部31に登録する(ステップS2)。
【0043】この際、制御部1は、以下のようにして止まり木チャンネルをチャンネル登録部31に登録する。すなわち、制御部1は、登録に係る止まり木チャンネルが既にチャンネル登録部31に登録されていると、その止まり木チャンネルの登録を一旦消去した後、再び登録する。また、制御部1は、登録に係る止まり木チャンネルがチャンネル登録部31に登録されていないと、登録されてから最も時間の経過した止まり木チャンネルを登録に係る止まり木チャンネルに置換する。これにより、移動電話装置100は、過去の移動経歴に基づいて、起動できる可能性の高い止まり木チャンネルをチャンネル登録部31に登録しておくことが出来る。
【0044】この後、制御部1は、止まり木スキャン処理を実行する(ステップS3)。すなわち、制御部1は、通信サービス圏内に復帰するための処理を実行し、制御チャンネルが起動された待ち受け状態への遷移を試みる。なお、止まり木スキャン処理の詳細については後述する。
【0045】制御部1は、止まり木スキャン処理の結果から、通信サービス圏内に復帰が可能であるか否かを判別する(ステップS4)。
【0046】制御部1は、通信サービス圏内に復帰が可能であると判別すると(ステップS4にてYES)、移動先の通信サービス圏に対応した止まり木チャンネルをチャンネル登録部31に登録した後、待ち受け状態に遷移して圏外遷移処理を終了する(ステップS5)。
【0047】一方、制御部1は、通信サービス圏内に復帰できないと判別すると(ステップS4にてNO)、表示部2に移動電話装置100が通信サービス圏外にあることを表示させると共に、計時を開始して(ステップS6)、一定時間経過するのを待つ(ステップS7にてNO)。ここで、制御部1が待機する一定時間は、圏内復帰の速さと電池の消耗の速さを考慮して予め定められているものである。
【0048】一定時間が経過すると(ステップS7にてYES)、制御部1は、スキャンモードフラグ32を反転する(ステップS8)。すなわち、制御部1は、スキャンモードフラグ32が”0”であれば”1”にセットし、”1”であれば”0”にリセットする。
【0049】この後、処理はステップS3にリターンして、制御部1は、再び止まり木スキャン処理を実行する。」(段落【0039】?【0049】)

(ハ)「【0050】次に、上記圏外遷移処理のステップS3にて制御部1が実行する止まり木スキャン処理について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0051】制御部1は、止まり木スキャン処理を開始すると、スキャンモードフラグ32に従って動作を切り替える(ステップS10)。
【0052】すなわち、制御部1は、スキャンモードフラグ32が”0”であると判別すると(ステップS10にて”0”)、チャンネル格納部30に格納された全ての止まり木チャンネルに関する情報(止まり木用周波数)を読み出す(ステップS11)。
【0053】一方、制御部1は、スキャンモードフラグ32が”1”であると判別すると(ステップS10にて”1”)、チャンネル登録部31に登録されている止まり木チャンネルに関する情報(止まり木用周波数)をチャンネル格納部30から読み出す(ステップS12)。
【0054】制御部1は、チャンネル格納部30から読み出した情報に従って、PLL回路20が生成する局部発振信号の周波数を止まり木用周波数に設定する(ステップS13)。これにより、制御部1は、RF信号処理部10に止まり木用周波数の信号を選択的に受信させ、レベル測定器21が止まり木用周波数の信号について受信レベルを測定できるようにする。
【0055】この後、レベル測定器21は、止まり木用周波数の信号の受信レベルを測定して制御部1に通知する(ステップS14)。
【0056】制御部1は、レベル測定器21から通知された受信レベルから、起動可能な止まり木チャンネルがあるか否かを判別する(ステップS15)。すなわち、制御部1は、レベル測定器21から受けた止まり木用周波数の信号の受信レベルを基準値と比較し、受信レベルが基準値より大きいものがあるか否かを判別する。
【0057】制御部1は、起動可能な止まり木チャンネルがないと判別すると(ステップS15にてNO)、ステップS18に処理を進めて、圏内に復帰できないとして止まり木スキャン処理を終了し、図6のステップS4に処理を進める。
【0058】一方、制御部1は、起動可能な止まり木チャンネルがあると判別すると(ステップS15にてYES)、該当する制御チャンネルの起動を試みる(ステップS16)。すなわち、制御部1は、基地局Bsから受信したデータとの同期を確立し、待ち受けに使う周波数・スロットへの移行を試みる。
【0059】制御部1は、待ち受け用の制御チャンネルが起動できるか否かを判別する(ステップS17)。この際、制御部1は、基地局Bsから受信した止まり木チャンネルのデータに含まれている規制情報を読み取る等して、待ち受け用の制御チャンネルが起動できるか否かを判別する。
【0060】制御部1は、待ち受け用の制御チャンネルが起動できないと判別すると(ステップS17にてNO)、ステップS18に処理を進めて、圏内に復帰できないとして止まり木スキャン処理を終了し、図6のステップS4に処理を進める。
【0061】一方、制御部1は、待ち受け用の制御チャンネルが起動できると判別すると(ステップS17にてYES)、ステップS19に処理を進めて、圏内に復帰できるとして止まり木スキャン処理を終了し、図6のステップS4に処理を進める。
【0062】このように、制御部1は、止まり木スキャンの対象とする止まり木チャンネルを、スキャンモードフラグ32に従って、チャンネル格納部30に格納された全止まり木チャンネルとチャンネル登録部31に登録された止まり木チャンネルとで交互に切り替えてチャンネルの起動を試みる。」(段落【0050】?【0062】)

以上の記載によれば、この引用例1には以下のような発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「移動電話装置の待ち受け用の制御チャンネル起動のための止まり木チャンネルのスキャン方法において、
全ての止まり木チャンネル用周波数をチャンネル格納部から読み出して止まり木チャンネルスキャン処理を行うステップと、
過去の移動経歴に基づいて、起動できる可能性の高い止まり木チャンネル用周波数をチャンネル登録部に登録し、チャンネル登録部から止まり木チャンネル用周波数を読み出し、止まり木チャンネルスキャン処理を行うステップとを有し、
制御部はスキャンモードフラグが”0”であると判別すると、全ての止まり木チャンネル用周波数をチャンネル格納部から読み出して止まり木チャンネルスキャン処理のステップを行い、スキャンモードフラグが”1”であると判別すると止まり木チャンネル用周波数をチャンネル登録部から読み出して止まり木チャンネルスキャン処理のステップを行い、
レベル測定器が測定する無線信号の受信レベルが低下し、通信サービス圏内から圏外へと移動したことを検出すると、制御部はスキャンモードフラグをリセットして”0”とし、止まり木チャンネルスキャン処理のステップを実行し、
止まり木チャンネルスキャン処理のステップの実行により通信サービス圏内に復帰できない(止まり木チャンネルスキャン処理の結果、起動可能な止まり木チャンネルがない)と判断すると、計時を開始して一定時間が経過すると、制御部はスキャンモードフラグを反転、すなわち、スキャンモードフラグ32が”0”であれば”1”にセットし、”1”であれば”0”にリセットして、再び止まり木チャンネルスキャン処理のステップが実行され、止まり木スキャンを実行する際、一定時間が経過する毎に、全ての止まり木チャンネルのスキャンと、起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャンを交互に実行するようにした方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第99/65270号(以下、「引用例2」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。
(イ)「In any of the cellular radiotelephone systems and/or standards discussed above, a user terminal such as a radiotelephone may first need to acquire a channel before communications services can be provided by the cellular radiotelephone system. The acquisition of a channel may require the user terminal to scan a plurality of channels to find a channel that can be used.」(第3頁第7行?第11行)
(当審訳:セル方式無線電話システムおよび上述した標準のいずれにおいても、無線電話のような利用者端末は、セル方式無線電話システムによって通信サービスが提供される前に、チャンネルを獲得することがまず必要である。チャンネルの獲得は、利用者端末が利用可能なチャンネルを見つけ出すために複数のチャンネルをスキャンすることを要求する。)

(ロ)「These and other objects are provided according to the present invention by storing a previously acquired communications channel in user terminal memory, searching for the previously acquired communications channel in the user terminal memory, and acquiring the previously acquired communications channel when the previously acquired communications channel is available. Because radiotelephone terminals are often used at a relatively high frequency within a relatively small number of service areas(cells), the communications channels associated with those most frequently used cells may have the highest probability of being available for use.
In other words, the user terminal can first search for channels which are most likely to be found before performing an exhaustive search of all possible channels thereby reducing the time required to acquire a channel for a significant number of communications. If the previously acquired channel is not available, the user terminal can search a list of specified channels with little added dely. Furthermore, the user terminal can store a plurality of previously acquired communications channels in memory so that the searching step comprises searching for the previously acquired communications channels.
In addition, the user terminal can store an access count for each of the previously acquired communications channels wherein the access count identifies a number of times the respective communications channel has been acquired by the user terminal. The searching step can thus include sequentially searching the previously acquired communications channels in order of a highest access count. In other words, those channels with the highest access counts are assumed to have the highest probability of being acquired, and these channels are thus searched first.」(第4頁第19行?第5頁第10行)
(当審訳:本発明によれば、以前に獲得された通信チャンネルを、利用者端末メモリに登録し、利用者端末メモリ内の以前に獲得された通信チャンネルを検索し、以前に獲得された通信チャンネルが利用可能な際には、以前に獲得された通信チャンネルを獲得することにより達成される。無線電話端末は、多くの場合、比較的少数のサービス地域(セル)内で、比較的高い頻度利用されるため、これらの頻繁に利用されるセルに対応した通信チャンネルは、利用可能となる確率が極めて高いものとなる。
言い換えると、利用者端末は、先ず、すべての可能なチャンネルを網羅的に検索する前に、最も見つかりそうなチャンネルを検索し、これによって、膨大な数の通信のためのチャンネルを獲得するのに必要な時間を削減することができる。もし、以前に獲得された通信チャンネルが利用可能でない場合には、利用者端末は、付加される遅延もほとんどなく、特定のチャンネルのリストを検索する。さらに、検索ステップが以前に獲得したチャンネルの検索から構成されるように、利用者端末は、以前に獲得した複数のチャンネルをメモリに格納することが可能である。
また、利用者端末は、以前に獲得した各チャンネルのアクセス回数を格納することができる。ここで、アクセス回数とは、各通信チャンネルが利用者端末によって獲得された回数を表す。従って、検索ステップは、以前に獲得された通信チャンネルを、アクセス回数の高い順に、逐次検索することを含むことになる。言い換えると、これら高いアクセス回数をもつチャンネルは、獲得される確率が高いものと仮定して、これらのチャンネルを先ず検索することにする。)

(ハ)「If all of the previously acquired channels have been searched without finding one, the processor can proceed with an exhaustive search of all possible CDMA channels at block147. The processor can start with the specified channel set provided above in Figure 1 and then proceed sequentially through all remaining possible channels.」(第11頁第19行?第23行)
(当審訳:以前に獲得されたすべてのチャンネルの検索の結果、ひとつも見つけられない場合には、プロセッサは、ブロック147に進み、すべての可能なCDMAチャンネルの全数検索を行う。プロセッサは、図1に示した特定のチャンネルセットから始め、逐次、残りの可能なチャンネルすべてを検索する。)

(c)対 比
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「移動電話装置」、「待ち受け用の制御チャンネル」、「止まり木チャンネルのスキャン」は、それぞれ本願補正発明の「移動局」、「通信に使用すべき周波数」、「周波数探索」に相当し、引用例1発明の「移動電話装置の待ち受け用の制御チャンネル起動のための止まり木チャンネルのスキャン方法」は、本願補正発明の「移動通信システムにおいて移動局が通信に使用すべき周波数を検出するための周波数探索方法」に相当する。
引用例1発明の「全ての止まり木チャンネル用周波数をチャンネル格納部から読み出して止まり木チャンネルスキャン処理を行うステップ」は、本願補正発明の「移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数を対象にして移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う最大周波数探索処理手順」に相当するといえる。
引用例1発明の「過去の移動経歴に基づいて、起動できる可能性の高い止まり木チャンネル用周波数をチャンネル登録部に登録し、チャンネル登録部から止まり木チャンネル用周波数を読み出し、止まり木チャンネルスキャン処理を行うステップ」は、本願補正発明の「移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数のうち所定の基準で決められた一部の周波数を対象として移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う一または複数の部分的周波数探索処理手順」に相当する。
引用例1発明は、制御部はスキャンモードフラグが”0”であると判別すると、全ての止まり木チャンネル用周波数をチャンネル格納部から読み出して止まり木チャンネルスキャン処理のステップを行い、スキャンモードフラグが”1”であると判別すると止まり木チャンネル用周波数をチャンネル登録部から読み出して止まり木チャンネルスキャン処理のステップを行」うから、引用例1発明の「スキャンモードフラグ」、「スキャンモードフラグが”0”である」、「スキャンモードフラグが”1”である」は、それぞれ本願補正発明の「移行ビット」、「移行ビットの状態が第1状態」、「移行ビットの状態が第2状態」に相当するといえる。
引用例1発明は「止まり木チャンネルスキャン処理のステップの実行により通信サービス圏内に復帰できない(止まり木チャンネルスキャン処理の結果、起動可能な止まり木チャンネルがない)と判断すると、計時を開始して一定時間が経過すると、制御部はスキャンモードフラグを反転、すなわち、スキャンモードフラグが”0”であれば”1”にセットし、”1”であれば”0”にリセットして、再び止まり木チャンネルスキャン処理のステップが実行され、止まり木スキャンを実行する際、一定時間が経過する毎に、全ての止まり木チャンネルのスキャンと、起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャンを交互に実行する」から、全ての止まり木チャンネルのスキャンの実行により、起動可能な止まり木チャンネルがない場合、一定時間が経過するとスキャンモードフラグが”0”から”1”に変えられ、起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャンを実行し、または、起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャンを実行した結果、起動可能な止まり木チャンネルがない場合に、一定時間が経過するとスキャンモードフラグが”1”から”0”に変えられ全ての止まり木チャンネルのスキャンを実行することは明らかである。
したがって、引用例1発明は、本願補正発明の「一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した結果、移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されない場合に、移行ビットの状態が確認され、上記最大周波数探索処理手順での探索を行うか否かが判定され」と「一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を実行した結果、移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されない場合に、移行ビットの状態が確認され、上記最大周波数探索処理手順での探索を行うか否かが判定され」の点で共通するといえ、また、本願補正発明の「上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、タイマが起動され、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され」と「上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が実行され」の点で共通するといえ、さらに、本願補正発明の「上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記タイマが再起動され、前記移行ビットの状態が第2状態のまま前記タイマが所定の時間経過を示す場合、前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ、前記移行ビットの状態が第1状態の場合であり且つ該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」と「上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」の点で共通するといえる。

そうすると、両者は、
「移動通信システムにおいて移動局が通信に使用すべき周波数を検出するための周波数探索方法において、
移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数を対象にして移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う最大周波数探索処理手順と、
移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数のうち所定の基準で決められた一部の周波数を対象として移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う一または複数の部分的周波数探索処理手順とを有し、
一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を実行した結果、移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されない場合に、移行ビットの状態が確認され、上記最大周波数探索処理手順での探索を行うか否かが判定され、
上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が実行され、
上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行されるようにした周波数探索方法。」
で一致するものであり、次の(1)?(3)の点で相違している。

(1)本願補正発明は、「一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行」するのに対し、引用例1発明は、探索を所定の順番にて実行することが明らかではない点。

(2)最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、本願補正発明は、タイマが起動され、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され」るのに対し、引用例1発明は、タイマが起動されることは明らかでなく、部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行されるものではない点。

(3)最大周波数探索処理手順の実行後に、本願補正発明は、「移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記タイマが再起動され、前記移行ビットの状態が第2状態のまま前記タイマが所定の時間経過を示す場合、前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ、前記移行ビットの状態が第1状態の場合であり且つ該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」のに対し、引用例1発明は、タイマが再起動されることは明らかでなく、一定時間が経過するとスキャンモードフラグを”0”から”1”にし、起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャン実行し、さらに一定時間が経過するとスキャンモードフラグを”1”から”0”にし、全ての止まり木チャンネルのスキャンを実行する点。

(d)当審の判断
上記相違点について検討する。
・相違点(1)について
引用例2には、以前に獲得されたすべてのチャンネルの検索の結果、利用可能な通信チャンネルが見つけられない場合には、すべてのチャンネルの全数検索を行うこと、及び以前に獲得された通信チャンネルを、アクセス回数の高い順に、逐次検索することが記載されている。
したがって、引用例1発明において、「一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行」することは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点(2)について
引用例1発明は、全ての止まり木チャンネルのスキャンを実行により通信に使用される周波数が検出されなかった場合に、一定時間経過すると起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャンを実行することは明らかであり、「一定時間の経過」をみるのをタイマの起動により行うことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
また、周波数探索処理手順による探索を繰り返し実行することは、本願出願前周知の技術(拒絶査定において示された特開平9-215040号公報段落【0022】「ホーム網で待ち受けすべき制御チャネルの補足動作をする。補足できなければ、ステップS25、S28、S33を経て、Cを+1する(ステップS39)。以下、同様にして、ホーム網で待ち受けすべき制御チャネルが捕捉できるか、Cが(n-1)となるまで間歇受信によりホーム網での制御チャネルの捕捉動作を間歇的に繰り返す。C=(n-1)となったとき、ステップS37でNOとなるので、AFを1の可変モードに変更してステップS24に進み(ステップS40)、今度は、ホーム網の制御チャネルの捕捉動作に続き、ローム網の制御チャネルの捕捉動作を行う。いずれでも捕捉できなければ、AF=0に戻すとともにCをクリアし(ステップS25、S28?S30、S33?S35)、再び、間歇受信しながら(n-1)回、ホーム網だけを対象に制御チャネルの捕捉動作を行う(図8(1)参照)。」の記載参照)である。
したがって、引用例1発明において、最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、タイマが起動され、一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索を繰り返し実行することは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点(3)について
本願補正発明の「最大周波数探索処理手順の実行後に、移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記タイマが再起動され、前記移行ビットの状態が第2状態のまま前記タイマが所定の時間経過を示す場合、前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ、前記移行ビットの状態が第1状態の場合であり且つ該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」は、最大周波数探索処理手順の実行後に、タイマが起動され、移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行し、前記移行ビットの状態が第2状態のまま前記タイマが所定の時間経過を示す場合、前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ、最大周波数探索処理手順での探索が実行されることを含むと判断される。
そうすると、部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行することに関しては、相違点(1)で検討したとおりであり、タイマの起動に関しては、相違点(2)で検討したとおり容易になし得ることであって、引用例1発明は、全ての止まり木チャンネルのスキャンの実行後、一定時間が経過するとスキャンモードフラグが”0”から”1”に変えられ、起動する可能性の高い止まり木チャンネルのスキャンを実行し、一定時間が経過するとスキャンモードフラグが”1”から”0”に変えられて全ての止まり木チャンネルのスキャンを実行するから、その他の点は実質的な相違ではない。

そして、本願補正発明により奏される効果は当業者であれば引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

(e)結論
そうすると、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月19日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「移動通信システムにおいて移動局が通信に使用すべき周波数を検出するための周波数探索方法において、
移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数を対象にして移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う最大周波数探索処理手順と、
移動通信システムでの移動局の通信に使用される可能性のある全ての周波数のうち所定の基準で決められた一部の周波数を対象として移動局の通信に使用されるべき周波数を検出するための探索を行う一または複数の部分的周波数探索処理手順とを有し、
該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した結果、移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されない場合に、移行ビットの状態が確認され、上記最大周波数探索処理手順での探索を行うか否かが判定され、
上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され、
上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記移行ビットの状態が第2状態のまま所定の時間的条件が満足されると、前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に切り換えられ、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行されるようにした周波数探索方法。」(「前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に切り換えられ」は、「前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ」の誤記であると認められる。)

4.引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)(b)」に記載したとおりである。

5.対比
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、タイマが起動され、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され」及び「上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記タイマが再起動され、前記移行ビットの状態が第2状態のまま前記タイマが所定の時間経過を示す場合、前記移行ビットの状態が第2状態から第1状態に切り換えられ、前記移行ビットの状態が第1状態の場合であり且つ該一または複数の部分的周波数探索処理手順での探索を所定の順番にて実行した場合に、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」から限定を省き「上記最大周波数探索処理手順の実行により移動通信システムでの移動局の通信に使用されるべき周波数が検出されなかった場合に、上記一または複数の部分的周波数探索処理手順による探索が繰り返し実行され」及び「上記最大周波数探索処理手順の実行後に前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に変えられ、前記移行ビットの状態が第2状態のまま所定の時間的条件が満足されると、前記移行ビットの状態が第1状態から第2状態に切り換えられ、上記最大周波数探索処理手順での探索が実行される」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が前記「2.」に記載したとおり、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-22 
結審通知日 2010-06-29 
審決日 2010-07-12 
出願番号 特願2001-159440(P2001-159440)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 博之高木 進海江田 章裕  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 鈴木 重幸
清水 稔
発明の名称 移動局における周波数探索方法及び移動局。  
代理人 伊東 忠彦  

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