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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1222512
審判番号 不服2009-8478  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-20 
確定日 2010-08-26 
事件の表示 特願2001-376029「画像形成装置、および画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開、特開2003-177605〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年12月10日の出願であって、当審において、平成22年4月19日付けで通知した拒絶理由に対して、同年5月31日付けで手続補正書及び意見書が提出されたものであって、その請求項1?7に係る発明は、上記補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
潜像を顕像化させて該顕像を転写手段に転写する像担持体と、
トナーおよびキャリアを含む現像剤を前記像担持体に補給する現像剤供給手段と、
前記転写手段に転写した後に前記像担持体に残った転写残トナーをリサイクルトナーとして前記現像剤供給手段に回収するリサイクル手段とを備え、
前記現像剤供給手段は、前記像担持体に対向する近傍の現像領域に、前記現像剤を吸着して搬送する現像剤搬送手段と、前記現像剤搬送手段に吸着された現像剤の量を制御しかつ残余を回収する現像量制御手段と、を有する画像形成装置において、
前記現像剤供給手段に補給される補給トナーの重量平均粒径が、5?11μmであり、
前記現像量制御手段が、アースされることにより前記現像剤搬送手段との間隙に電界が形成され、
前記リサイクル手段によるリサイクルトナーと、前記現像量制御手段による残余トナーとが、前記現像剤搬送手段に回収されて、前記現像剤搬送手段中の現像剤に含まれるトナーのフロー式粒子像分析装置によって測定される円相当径が、0.6μm以上3μm以下の微粉の量を25?70個数%含むことを特徴とする画像形成装置。」


2.引用例の記載事項
これに対して、当審における上記拒絶理由に引用した、本願の出願前に頒布された次の刊行物には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、刊行物4の摘示は省略する。また、下線は当審で付した。

刊行物1:特開2000-330333号公報
刊行物2:特開2001-228706号公報
刊行物3:特開平3-130783号公報
刊行物4:特開平10-232506号公報

(1)刊行物1
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真、静電印刷の如き画像形成方法において、静電荷潜像を現像するためのトナー、又はトナージェット方式の画像形成方法におけるトナー像を形成するためのトナー、及び、これらのトナーの製造方法に関し、特に、トナーで形成されたトナー像をプリントシートの如き転写材に加熱加圧定着させる定着方式に供されるトナー、及びそのトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】静電潜像を顕像化する画像形成方法の代表的なものとして電子写真法が挙げられる。電子写真法は、米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42-23910号公報及び特公昭43-24748号公報に記載されている如く、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて直接的或いは間接的手段を用い、紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、加圧、加熱加圧或いは溶剤蒸気等により定着し、複写物或いはプリント物を得るものである。この時に感光体上に転写されず残ったトナーは、必要により種々の方法でクリーニングされて上述の工程が繰り返される。」

(1b)「【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、上記の問題点を解決したトナー及びその製造方法を提供することを目的とする。即ち、本発明の目的は、画像形成に用いた場合の画像の高画質化を図るために、隠蔽力が高く、高着色力で細線再現性に特に優れる微粒径且つシャープな粒度分布を有するトナー及びその製造方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、耐久においてもトナー劣化の少ない、高画質画像を長期にわたって安定して提供し得るトナー及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の本発明によって達成することができる。即ち、本発明は、少なくとも結着樹脂を含有する樹脂粒子を0.1乃至30重量%含有する水系溶媒中で、機械的衝撃力により樹脂粒子表面に顔料粒子を固着させる工程を経て製造されたトナー粒子からなるトナーであって、トナーが、
少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有し、
0.5乃至6.0μmの個数平均粒径を有し、
0.1乃至20%の個数分布の変動係数を有し、
トナー中の顔料粒子のトナー粒子に対する含有量が下記式(1)を満足しており、
トナー粒子表面近傍に対して顔料粒子が80乃至100%存在するように構成されていることを特徴とするトナーである。
【数3】(当審注:式(1)は省略)」

(1c)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明のトナーの特徴の一つは、個数分布において、個数平均粒径が0.5μm乃至6.0μmの範囲にあり、その変動係数が0.1乃至20%の微粒径で且つ非常にシャープな粒度分布を有し、且つ、80乃至100%の顔料粒子がトナー粒子の表面近傍に存在し、更に、トナー中における顔料の含有量が下記式(1)を満足する範囲内の割合で固着していることにある。
【数5】(当審注:式(1)は省略)
【0013】本発明者らの詳細な検討によると、先ず、個数平均粒子径が0.5乃至6.0μmの範囲にある微粒径のトナーを用いれば、潜像に対して忠実な現像を行うことできることがわかった。更に、この場合に、個数分布の変動係数が0.1乃至20%の範囲であることが、上記のような平均粒径を有する微粒径のトナーにおいて、帯電のばらつきを抑えるために必要であることも見いだした。しかし、このような微粒径トナーによる画像形成においては、画像を形成するトナーが薄層になる傾向があるため、トナー粒子1個の着色力、隠蔽力を高めることが必要であり、それを満足させるためには、着色剤である顔料粒子がトナー粒子の表面近傍に対して80乃至100%の高濃度で固着した状態で存在するようにし、更に、トナー粒子中における顔料の含有量が上記式(1)を満足する必要があることもわかった。更に、上記した範囲で顔料を含有させれば、トナー製造時、特に、顔料を樹脂粒子表面に固着させた場合に生じていたトナー粒子の合一の発生が有効に防止される役目が果たされることもわかった。」

(1d)「【0021】本発明のトナーの構成について、更に詳細に説明する。本発明のトナーは、第1に個数平均粒径が0.5μm乃至6.0μm、好ましくは1.0μm乃至5.0μmであることが重要である。これは、高精細な画像を得るために必要な要件である。即ち、トナーの個数平均粒径が0.5μmよりも小さくなると、ドライパウダーとしての取り扱いが困難になる一方、6μmを超えると、微小ドット潜像を忠実に現像ができなくなってくるために、特に、画像のハイライトの再現性が劣るようになる。
【0022】更に本発明において、トナーの個数分布の変動係数は0.1乃至20%、好ましくは0.1乃至18%であることがよい。トナーの個数分布の変動係数は、下記式により算出される。
【0023】
【数6】(当審注:式は省略)
【0024】本発明者らの検討によれば、上記した個数平均粒径に加え、その粒度分布の拡がりの状態が、特に転写プロセスでの画像再現性に大きく寄与することがわかった。従って、本発明のトナーにおいては、第2に、変動係数が0.1乃至20%であることを要す。即ち、個数分布における変動係数が20%を超えると、平均粒径が上記した特定の範囲内にあったとしても、現像は良好に行われる反面で、転写時に飛び散りや転写されないトナーが存在することが起こり、形成された画像が、特にハーフトーン再現性に劣り、ベタ部の均一性にも欠けることが起こる。」

(1e)「【0054】<トナーの個数平均粒径、変動係数>本発明のトナーを構成しているトナー粒子の粒径の測定は、平均粒径が1μm以上のトナー粒子についてはレーザースキャン型粒度分布測定装置(CIS-100 GALAI社製)を用いて、0.4μmから60μmの範囲内で測定を行う。測定用の試料は、水100mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)0.2mlを加えた溶液に、トナー0.5乃至2mgを加え、超音波分散器で2分間分散した後、マグネットスターラーを入れたキュービックセルに水を8割程度入れ、その中に超音波分散した試料をピペットで1、2滴添加して調製した。これから得られる個数平均粒径(Dn)を求め、更に、Dn及びS.D.(標準偏差)の値をもとに、下記式から変動係数を求めた。
【数16】(当審注:式は省略)
【0055】又、1μm以下の平均粒径を有するトナーについては、走査型電子顕微鏡(FE-SEM S-4500 日立製作所製)を用いて、5,000倍の写真を撮り、その写真をもとに、水平方向フェレ径を0.05μm以上の粒子について累積300個以上になるように測定する。そして、その平均をもって、個数平均粒径とした。又、この数値を用い、上記の計算式によって変動係数を求めた。」

(1f)「【0060】
【実施例】以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら制限されるものではない。尚、実施例中で使用する部はすべて重量部を示す。
<実施例1>
・メタノール 270重量部
・スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-メタクリル酸共重合体
(共重合組成比=1:1:1:2) 30重量部
・スチレン 78重量部
・n-ブチルアクリレート 22重量部
・2,2’-アゾビスイソブチロニトリル 5重量部
【0061】先ず、上記組成からなる組成物を反応容器中に投入し、窒素を400ml/minでバブリングしながら溶液を20℃で30分間よく混合した。重合開始時の溶存酸素量を測定したところ0.5mg/lであった。次いで、オイルバスの温度を72℃にして12時間窒素雰囲気下で重合した。次に、室温まで冷却した後、分散液を静置し、1週間放置した。放置後の上澄み液を取り除き、メタノールを加え、撹拌機により撹拌して洗浄した。この操作を5回繰り返し、最後に水により洗浄を行って、樹脂粒子分が20%含有されている水分散スラリーを得た。得られた樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、61℃であった。
【0062】次に、この水分散スラリー液に、樹脂粒子100重量部に対して、下記のようにして調製した顔料分散液を入れ、超音波ホモジナイザーで撹拌した後、アトライターに入れて5分間処理した。顔料分散液は、個数平均粒子径0.19μm(BET 63m^(2)/g)の銅フタロシアニン顔料を7.0重量部と、個数平均粒子径0.059μm(BET 110m^(2)/g)の疎水性シリカ3.0重量部を予めアトライターにより2時間混合して調製した。更に、スラリー液を撹拌羽根によって60rpmの回転速度で撹拌しながら、85℃で1時間保って顔料粒子を樹脂粒子表面に固着させてトナー粒子を調製した。冷却後、洗浄濾過を繰り返したが、濾液は殆ど無色透明であり、効率よく顔料粒子が固着されたことが確認できた。
【0063】得られたシアン系トナー粒子の個数平均粒径は、3.20μmであり、その変動係数は11.5%であった。又、トナー粒子のTgは、樹脂粒子と同じく61℃であった。走査電子顕微鏡観察の結果、着色する前と着色後の粒子の合一は見られず、粒度分布は殆ど変わらなかった。又、得られたトナー粒子をエポキシ樹脂に埋包し、ミクロトームによりスライスを行って測定用サンプルを調製し、先に述べた方法によって顔料粒子の存在割合を測定した。その結果、表面近傍の顔料粒子の割合は100%であった。又、トナーの樹脂成分の重量平均分子量分布を測定したところ、ピーク値(Mp)は20,800であり、分子量200乃至1,000の範囲の成分はトナー中0.2重量%であった。得られたトナー粒子の物性を表1に示した。
【0064】上記で得た本実施例のトナー6重量部に対して、平均粒径が35μmのCu-Znフェライトコアにシリコーン樹脂コートしたキャリア94重量部をポリ瓶に入れターブラーミキサーで混合撹拌して二成分系現像剤を得た。得られた現像剤について帯電量測定を行ったところ、-22.3μC/gであった。
【0065】キヤノン製フルカラーレーザーコピア複写機CLC-500の改造機に、上記で得た二成分系現像剤を入れ、ベタ画像及び極小スポットによるハーフトーン画像の形成を行い、画像評価を行った。」

(1g)「【0098】
【表1】



これら記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。

「感光体上に電気的潜像を形成し、トナーおよびキャリアを含む現像剤を用いて、該潜像をトナーで現像し、転写材にトナー画像を転写した後、定着し、複写物或いはプリント物を得る、電子写真方式の画像形成装置であって、
トナーの個数平均粒子径が0.5乃至6.0μmの範囲(実施例1?4,6では、それぞれ3.20μm、3.23μm、3.25μm,3.42μm、1.55μm)にある、
電子写真方式の画像形成装置。」

(2)刊行物2
(2a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、低温定着のトナーを用いる現像装置においては、低温定着のトナーは一般に強い付着力を有しているから、現像スリーブにトナーが徐々に固着して現像スリーブの上にトナーによる絶縁層を形成するので、現像を阻害するようになってしまうという問題がある。本発明の課題は、前記問題を解決することにある。すなわち、本発明の目的は、低温定着のトナーを用いた場合にもトナーが現像スリーブに固着して現像を阻害することを防止することができる現像装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転される現像スリーブの表面に積層されるトナーとキャリアとからなる2成分現像剤の層圧を導電体からなるドクターで規制し、かつ、前記現像スリーブを前記トナーの電荷極性と同極性の電位にして前記現像スリーブと感光体の静電潜像との間に形成される電界によって前記トナーを感光体の静電潜像の方向に移動してこの静電潜像に付着させる反転現像方式の現像装置であって、前記ドクターを接地し、前記キャリアはその平均粒径が50μ以下であり、かつ、前記トナーとの撹拌後の帯電量が15μc/g以上であることを特徴とする。」

(2b)「【0007】現像装置4のドクター12は、導電体で形成されている。現像スリーブ9は、トナーと同極性の電位にされ、現像スリーブ9と感光体1の静電潜像とが形成する電界によってトナーを感光体1の静電潜像の方向に移動してこの静電潜像に付着させる。このような現像装置は、反転現像方式(ネガポジ現像方式)の現像装置と呼ばれている。ドクター12は接地されている。現像剤10のキャリアとして、平均粒径が50μ以下であり、かつ、トナーとの撹拌後の帯電量が15μc/g以上であるものがを用いられている。この反転現像方式の現像装置においては、トナーがマイナスの電荷を有する場合には、例えば感光体1の電位は-950Vにされ、図2のような電界が形成される。現像スリーブ9にもトナーと同極性の電圧が印加される(例えば、-600V)。この場合に、露光装置3によりレーザ光を帯電された感光体1の表面に照射した時に、感光体1の地肌部の電位は-950Vに維持され、かつ、感光体1の画像部の電位は変化してほぼ-100vとなる。このため、現像スリーブ9と画像部との間の電界は、-100Vの画像部から-600Vの現像スリーブ9へ向かうので、マイナスのトナーは画像部に付着する。一方、現像スリーブ9と地肌部との間の電界は、-600Vの現像スリーブ9から-950Vの地肌部に向かうので、マイナスのトナーは地肌部に付着しない。現像スリーブ9の上に付着した現像剤10がドクター12を通過する時に、ドクター12の電位が0Vであるため現像スリーブ9の上に付着したトナーをドクター12へ引き剥がすような静電気力が働く。このため、低温定着のトナーを用いた場合には、感光体1の地肌部と対向する現像スリーブ9の部分に付着したトナーは、引き剥がされドクター12へと付着する。このままの状態では、ドクター12へ付着したトナーは徐々に増えていく。しかし、現像剤10のキャリアとして、平均粒径が50μ以下であり、かつ、トナーとの撹拌後の帯電量が15μc/g以上であるものが用いられているから、現像剤10がドクター12を通過する時に、キャリアの電荷によりドクター12に付着したトナーはキャリアにトラップされるので、ドクター12に付着するトナーの量はトナー除去機能を失わない程度までに抑えられる。現像装置4の現像容器8にトナーの濃度が2.5%である現像剤10を入れた状態で、温度が23±3度であり、かつ、湿度が65±5%である周囲環境において10秒間だけ現像剤10を攪拌した後に、キャリアの帯電能力は15μc/g(望ましくは25μc/g)以上であればよい。」

(3)刊行物3
(3a)「さらに、本発明の目的は、画像濃度が高く、細線再現性、階調性の優れた磁性トナーを提供するものである。」(3頁左下欄)

(3b)「すなわち、本発明の磁性トナーにおいては、5μm以下の粒径の磁性トナー粒子が20?80個数%であることが一つの特徴である。従来、磁性トナーにおいては5μm以下の磁性トナー粒子は、帯電量コントロールが困難であったり、磁性トナーの流動性を損ない、また、トナー飛散して機械を汚す成分として、さらに、画像のかぶりを生ずる成分として、積極的に減少することが必要であると考えられていた。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、5μm以下の磁性トナー粒子が高品質な画質を形成するための必須の成分であることが判明した。」(4頁右上欄)

(3c)「5μm以下の粒径の磁性トナー粒子が全粒子数の17?80個数%であることが良く、好ましくは25?60個数%が良く、さらに好ましくは30?55個数%が良い。5μm以下の粒径の磁性トナー粒子が17個数%未満であると、高画質に有効な磁性トナー粒子が少なく、特に、コピーまたはプリントアウトをつづけることによってトナーが使われるに従い、有効な磁性トナー粒子成分が減少して、本発明で示すところの磁性トナーの粒度分布のバランスが悪化し、画質がしだいに低下してくる。また、60個数%を超える場合であると、磁性トナー粒子相互の凝集状態が生じやすく、60個数%以下である場合と同一シリカ量では、本来の粒径以上のトナー塊となるため、荒れた画質となり、解像性を低下させ、または潜像のエツジ部と内部との濃度差が大きくなり、中ぬけ気味の画像となりやすく、シリカの増量が必要であり、80個数%以上ではシリカの増量によっても上記問題点の解決は困難である。」(5頁左上欄?右上欄)

(3d)「従来、不要と考えがちであった微細な磁性トナー粒子の適度な存在が、現像において、トナーの最密充填化を果たし、粗れのない均一な画像を形成するのに貢献する。特に細線及び画像の輪郭部を均一に埋めることにより、視覚的にも鮮鋭さをより助長するものである。」(5頁左下欄)

(3e)「また、磁性トナーの体積平均径は4.5?9μm、好ましくは5?8.5μmであり、この値は先に述べた各構成要素と切りはなして考えることはできないものである。」(6頁左上欄)

(3f)表1(14頁)は、以下のとおり。



3.対比
本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の「感光体」「電気的潜像」「現像」「電子写真方式の画像形成装置」は、それぞれ本願発明1の「像担持体」「潜像」「顕像」「画像形成装置」に相当する。

また、刊行物1記載の発明の「トナーの個数平均粒子径が0.5乃至6.0μmの範囲(実施例1?4,6では、それぞれ3.20μm、3.23μm、3.25μm,3.42μm、1.55μm)」と、
本願発明1の「前記現像剤搬送手段中の現像剤に含まれるトナーのフロー式粒子像分析装置によって測定される円相当径が、0.6μm以上3μm以下の微粉の量を25?70個数%含む」とは、
刊行物1の上記(1d)には、「【0021】本発明のトナーの構成について、更に詳細に説明する。本発明のトナーは、第1に個数平均粒径が0.5μm乃至6.0μm、好ましくは1.0μm乃至5.0μmであることが重要である。これは、高精細な画像を得るために必要な要件である」という記載があり、
本願の詳細な説明に「【0017】現像剤中のトナー粒度分布において、3.0μm以下の超微粉トナー粒子は、少なくとも20個数%以上含有しなければ、高解像度画像における細線再現性を向上させる効果が薄いことが認められた。特に20μm以下のラインを形成させるには、必須と言える。」という記載があるので、
両者は、「個数粒度分布において微粒径のトナーを相当割合にして、細線再現性に優れる画像を得られるようにした」点で共通するといえる。

そうすると、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「潜像を顕像化させて該顕像を転写する像担持体と、
トナーおよびキャリアを含む現像剤を用いる、画像形成装置において、
個数粒度分布において微粒径のトナーを相当割合にして、細線再現性に優れる画像を得られるようにした、
画像形成装置。」

[相違点1]
画像形成装置の構成に関して、
本願発明1は、
潜像を顕像化させて該顕像を転写手段に転写する像担持体と、
トナーおよびキャリアを含む現像剤を前記像担持体に補給する現像剤供給手段と、
前記転写手段に転写した後に前記像担持体に残った転写残トナーをリサイクルトナーとして前記現像剤供給手段に回収するリサイクル手段とを備え、
前記現像剤供給手段は、前記像担持体に対向する近傍の現像領域に、前記現像剤を吸着して搬送する現像剤搬送手段と、前記現像剤搬送手段に吸着された現像剤の量を制御しかつ残余を回収する現像量制御手段と、を有する画像形成装置において、
前記現像量制御手段が、アースされることにより前記現像剤搬送手段との間隙に電界が形成されるものであるのに対し
刊行物1記載の発明は、そのような特定がない点。

[相違点2]
トナーに関して、
本願発明1は、
前記リサイクル手段によるリサイクルトナーと、前記現像量制御手段による残余トナーとが、前記現像剤搬送手段に回収されて、前記現像剤搬送手段中の現像剤に含まれるトナーのフロー式粒子像分析装置によって測定される円相当径が、0.6μm以上3μm以下の微粉の量を25?70個数%含むのに対し、
刊行物1記載の発明は、
「トナーの個数平均粒子径が0.5乃至6.0μmの範囲(実施例1?4,6では、それぞれ3.20μm、3.23μm、3.25μm,3.42μm、1.55μm)」とされる点。

[相違点3]
前記現像剤供給手段に補給される補給トナーの重量平均粒径が、5?11μmであるのに対し、
刊行物1記載の発明では、トナーの重量平均粒径が不明な点。


4.当審の判断
そこで、相違点について検討する。

(相違点1について)
(a)まず、本願発明1のような、トナーをリサイクルするタイプの画像形成装置、すなわち、「潜像を顕像化させて該顕像を転写手段に転写する像担持体と、トナーおよびキャリアを含む現像剤を前記像担持体に補給する現像剤供給手段と、前記転写手段に転写した後に前記像担持体に残った転写残トナーをリサイクルトナーとして前記現像剤供給手段に回収するリサイクル手段とを備え、前記現像剤供給手段は、前記像担持体に対向する近傍の現像領域に、前記現像剤を吸着して搬送する現像剤搬送手段と、前記現像剤搬送手段に吸着された現像剤の量を制御しかつ残余を回収する現像量制御手段と、を有する画像形成装置」は、本願出願前に周知である(例えば、原査定の引用文献1である特開平6-59501号公報を参照。)
そして、刊行物1記載の発明の画像形成装置を、そのようなトナーをリサイクルするタイプの画像形成装置にすることに、何ら困難性はない。

(b)また、トナーの微粉(例えば3μm程度以下のトナー)が多い場合に、現像剤搬送手段(現像スリーブ)にトナーが固着し易いことは、周知の事項であり、一般に技術常識でもある。
一方、刊行物2には、ドクター12(現像量制御手段)を接地(アース)して、現像スリーブ9(現像剤搬送手段)に付着したトナーが、現像スリーブと感光体の静電潜像との間に形成される電界によって、現像スリーブ9から引き剥がされるようにした技術が記載されている。
ここで、刊行物2には、固着のし易い低温定着のトナーの場合を念頭に記載されているが、刊行物2の技術が、現像剤搬送手段(現像スリーブ)に固着し易い微粉トナーの場合にも、適用可能な技術であることは、当業者に自明である。

(c)そうすると、刊行物1記載の発明において、画像形成装置を、上記のトナーをリサイクルするタイプの画像形成装置とするとともに、刊行物2の技術を適用して、スリーブに固着するトナーを引き剥がすようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
(a)まず、刊行物1記載の発明では、「トナーの個数平均粒子径が0.5乃至6.0μmの範囲(実施例1?4,6では、それぞれ3.20μm、3.23μm、3.25μm,3.42μm、1.55μm)」にあるから、フロー式粒子像分析装置によって測定される円相当径でみたときに、3μm以下の微粉トナー量が、本願発明1の25?70個数%の範囲に入る蓋然性が高い(特に実施例1?4,6のもの)。
また、微粉トナーを所定粒径以下として定義し、その微粉トナー量を個数%でみることは、刊行物3に記載されているように周知である。しかも、刊行物3にも、微細なトナー粒子の適度な存在が、細線再現性等の向上をもたらすことが記載されている。
そして、どの粒径以下のものを微粉トナーとするかは、求める細線再現性の程度等に応じて、当業者が適宜決めることである。また、微粉トナーの定義をした後に、細線再現性等の観点から、微粉トナー量の個数%の範囲を好適化することは、当業者が、その通常の創作能力を発揮すれば、容易になし得ることである。

(b)また、その好適化の作業の際に、相違点1に係るような、トナーをリサイクルするタイプの画像形成装置において、リサイクルトナーと補給トナー(フレッシュなトナー)とを合わせたものについて、微粉トナー量の個数%の範囲を好適化することも、当業者にとって困難であるとはいえない。

(c)したがって、刊行物1記載の発明において、本願発明1のごとく「前記リサイクル手段によるリサイクルトナーと、前記現像量制御手段による残余トナーとが、前記現像剤搬送手段に回収されて、前記現像剤搬送手段中の現像剤に含まれるトナーのフロー式粒子像分析装置によって測定される円相当径が、0.6μm以上3μm以下の微粉の量を25?70個数%含む」ものとなすことは、当業者が適宜なし得ることである。

(相違点3について)
まず、本願発明1において、「前記現像剤供給手段に補給される補給トナーの重量平均粒径が、5?11μm」であるとした意義について確認すると、本願明細書【0023】には、「また、本発明の第1及び第2の実施の形態のいずれにおいても、補給トナーの重量平均粒径が5?10μmであるのが好ましい。高画質化達成のため、トナー粒径の小粒径化、特に10μm以下が好ましいとされているが、しかし、それに伴い、トナー粒径が小さければ小さいほど、トナー中の微粉が増加する傾向にある。その結果、ますます増加した微粉量がスリーブ固着につながる。」という記載がある。
これは、本来、トナー粒径の小粒径化(10μm以下)が高画質の観点から好ましいが、その反面、微紛が増加して固着が生じるという問題があるので、粒径化を進めることに不利な点もあるという知見である。
この知見について検討すると、トナー粒径の小粒径化(10μm以下)が高画質の観点から好ましいことは、この技術分野においては周知又は技術常識である。そして、本願の実施例(以下に示す表1,2を参照)では、微紛量が同じ程度であれば、トナーの重量平均粒径が11μmのものより、8μmのものの方が、細線再現性に優れるという結果が示されている(例えば、実施例4と実施例5との対比)が、これ自体、当業者にとって自明な結果といえる。

本願明細書の【表1】

同【表2】


また、粉砕法によるトナー製造の場合(本願の実施例は、粉砕法を採用している。)は、重合法による場合(刊行物1では重合法を採用している。)に比べて、微粉量が多くなることは、当然であり、例えば、刊行物3の表1にみるように、粉砕法では、粉砕の程度をあげてトナー粒径を小さくすれば、分級の程度を上げないと、微紛が増大することも、普通に起こり得ることである。本願の実施例は、粉砕法を採用しているので、トナーの小粒径化は、微紛の増大を招くのであるが、刊行物1では、重合法を採用しているので、通常、微紛の過度な増大はそれほどないというべきである。
そして、本願発明1は、微紛がかなり多く、かつ、トナー粒径がそれほど小さくはないので、全体としてブロードな粒度分布を示しているのであるが、同じ微粉量であって、粒度分布が小粒径側でシャープなもの(例えば刊行物1のもの)に比べて、優れた評価が得られるということは、本願明細書では何ら実証されていない(例えば、本願の明細書では、比較例として、補給トナーの重量平均粒径が5μm未満であるようなものは示されていない)。
刊行物1の実施例1?4(重合法によるトナー)のものは、トナーの個数平均粒子径が、それぞれ3.20μm、3.23μm、3.25μm,3.42μmにあり、変動係数が約11?16%である(表1参照)ので、トナーの重量平均粒径は、せいぜい4?5μm程度止まりであると推測される。しかし、刊行物1のようなシャープな粒度分布を有するトナーは、「帯電のバラツキを抑える」(刊行物1の【0013】)という作用効果があり、画質面で有利な条件であると一般的にいえる。
請求人は、意見書で、刊行物1記載の発明について、「微粉トナー量が多いことで細線再現性は良好な結果が得られるとしても、小粒径のトナーしか存在しないため、本願新発明1では解決し得るスリーブ固着の不具合が発生すると考えられます。」と主張する。しかし、本願では、補給トナーの重量平均粒径の範囲「5?11μm」のうち、下限値5μmに関する臨界的意義は確認されていない。例えば、0.6μm以上3μm以下の微粉の量が25?70個数%の適切な範囲にあるが、補給トナーの重量平均粒径が5μm未満であったときには、スリーブ固着の不具合が発生し、微粉量が同じでも5μmに達したときに、この不具合が発生しないことは、実証されていない。なお、本願の実施例4と実施例5の比較では(ともに補給トナー硬度を高めたときの実施例である)、補給トナーの重量平均粒径が11μmの実施例4が、同8μmの実施例5よりも、トナー固着がない点で特に優れているが、それでも同5μm前後の臨界的意義は不明である。また、本願では、3?5μm付近の小粒径トナーの存在がスリーブ固着にどのように影響するかに着目して厳密に検討しているのでもない。
なお、意見書で、請求人は、本願の実施例と刊行物1の実施例との間における、添加剤の量の差について検討しているが、本願発明1は、添加剤に関係する発明でないので、請求人の主張を採用することができない。

これらのことから、本願発明1において、「前記現像剤供給手段に補給される補給トナーの重量平均粒径が、5?11μm」であるとしたことに、特に有利な意義は見出せないものである。

また、一般に、重量平均粒径が5?11μm程度のトナーは、普通であり、特別な値ではない。

以上のことを勘案すると、刊行物1記載の発明において、相違点1,2の構成を採用するとともに、「現像剤供給手段に補給される補給トナーの重量平均粒径」を「5?11μm」のものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(効果について)
本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1?3の記載事項および周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

(まとめ)
したがって、本願発明1は、刊行物1?3に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-22 
結審通知日 2010-06-29 
審決日 2010-07-12 
出願番号 特願2001-376029(P2001-376029)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伏見 隆夫
伊藤 裕美
発明の名称 画像形成装置、および画像形成方法  
代理人 舘野 千惠子  

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