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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1222765
審判番号 不服2007-20769  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-26 
確定日 2010-09-03 
事件の表示 平成11年特許願第300877号「化粧紙およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年4月24日出願公開、特開2001-113638〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成11年10月22日の出願であって、平成18年6月8日付けで拒絶理由が通知され、同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月25日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年6月21日に拒絶査定がされ、これに対し、同年7月26日に審判が請求され、同年8月20日に手続補正書が提出され、平成22年3月3日付けで審尋がされ、同年5月10日に回答書が提出されたものである。

第2 平成19年8月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年8月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成19年8月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成18年12月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1である、
「吸水性の良い原紙に絵柄模様を施し、更に樹脂を含浸してなる化粧紙において、前記樹脂が水中に溶解又は分散して含浸可能な樹脂であり、前記樹脂の含浸率が25?40%であり、前記絵柄模様が、バインダー樹脂が、カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分とする水性インキにより形成されてなることを特徴とする化粧紙。」を、
「吸水性の良い原紙に絵柄模様を施し、更に樹脂を含浸してなる化粧紙において、前記樹脂が水中に溶解又は分散して含浸可能な樹脂であり、前記樹脂の含浸率が25?40%であり、前記絵柄模様は、カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分としかつ乾燥によって難水溶化するバインダー樹脂を含む水性インキにより形成されてなることを特徴とする化粧紙。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)目的要件
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「水性インキ」が「バインダー樹脂が、カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分とする」ものであったところ、これを「カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分としかつ乾燥によって難水溶化するバインダー樹脂を含む」ものと限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」といい、その明細書を「本件補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについてみると、以下の<理由>により、その発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するとはいえないものである。

<理由>
本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



ア 刊行物及び刊行物に記載された事項
(ア)刊行物
1 特開平8-90744号公報
2 特開平9-202868号公報
(これらの刊行物は、平成18年10月25日付けの拒絶理由に引用された引用文献1及び5である。以下、「刊行物1」、「刊行物2」という。)

(イ)刊行物1(特開平8-90744号公報)に記載された事項
1a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】化粧紙用原紙に水性インキで印刷を施すか又は着色し、この面に熱乾燥のみで固体状態となる電子線又は紫外線硬化型塗工液を塗布、熱乾燥した後、電子線又は紫外線硬化型塗工液を塗布し、電子線又は紫外線を照射し、硬化してなることを特徴とする化粧紙の製造方法。」
1b 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は家具、住宅機器等に使用する化粧板に使用する化粧紙の製造方法に関し、特に表面硬度が高く、耐久性に優れた高級化粧板に使用する化粧紙の製造方法に関する。」
1c 「【0003】一方、使用するインキとしては、従来よりの油性インキが抱える溶剤の使用や環境に対する影響等の問題が近年重視されてきている為、水性インキの使用が主流となりつつある。」
1d 「【0004】また、コスト面を改善する為に、熱硬化性樹脂の代わりに電子線硬化型樹脂を含浸させ、強化する手段も種々検討されているが、次に示す理由により満足なものが得られていない。
【0005】すなわち表面から塗布することにより電子線硬化型樹脂を紙に含浸させる工程において、塗布、電子線照射を同一工程内で短時間で行った場合、水性インキの極性が高いため樹脂の浸透が阻害され、紙まで十分に浸透せず、含浸させる以前に電子線硬化型樹脂が硬化してしまう。そのため紙を強化するという本来の目的が達成されない。」
1e 「【0009】本発明に係る熱乾燥のみで固体状態となる電子線又は紫外線硬化型塗工液3としては、電子線又は紫外線反応性の二重結合を有する水性エマルジョン、あるいは、電子線又は紫外線反応性の二重結合を有する水溶性又は溶剤可溶性樹脂、等」
1f 「【0013】
【作用】以上に述べたように、本発明の化粧紙の製造方法により、該熱乾燥のみで固体状態となる電子線又は紫外線硬化型塗工液が、水性インキ層および紙層に浸透しする。さらに、この上に塗布する電子線又は紫外線硬化型塗工液のインキ層および紙層への浸透を抑えるため、塗工量に応じた十分なトップコート層が形成できる。そして、電子線又は紫外線照射により紙層、インキ層、トップコート層とも架橋反応するため、全ての層が強化された化粧紙が得られる。」
1g 「【0011】塗工方法は任意であるが、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター等によるのが一般的である。」
1h 「【0014】
【実施例】
<実施例1>坪量80g/m^(2)の化粧紙用原紙にマホガニー調木目絵柄を水性インキ(東洋インキ製造(株)製)で印刷し、分子末端にアクリル基を有するエマルジョン塗工液を塗工し、130℃の乾燥ゾーンで十分に乾燥させた後、粘度300cpsに調整した電子線硬化型塗工液(東亞合成化学工業(株)製「アロニックスM-8030」/1,6ヘキサンジオールジアクリレート/ダイセル・ユーシービー(株)製「エベクリル350」)をグラビアコーターにて30g/m^(2)塗布した。
【0015】塗布後引き続き、電子線照射装置(日新ハイボルテージ(株)製:「キュアトロン」)の照射下を通過させ、照射線量約5.0Mradのエネルギーで塗膜を硬化させ、化粧紙を得た。」
1i 「【0025】
【発明の効果】上記結果のごとく、本発明による化粧紙はインキ層および紙層が強化されており、表面保護もなされている。そして、表面の仕上がり外観にも優れている。また、本発明の化粧紙の製造方法により、水平面に使用可能な硬度や耐摩耗性を備えた高級化粧紙を極めて能率的にかつ安価に製造することが可能となった。」

(ウ)刊行物2(特開平9-202868号公報)に記載された事項
2a 「【0002】
【従来の技術】近年、印刷分野では、大気中への有機溶剤の揮散問題、省資源、省エネルギーの面から、また作業環境の改善及び防災上の意識の高まりから、印刷インキの水性化が望まれ一部実用化されつつある。水性印刷インキのベヒクルとしては、従来より、シェラック、ロジンマレイン酸系の水溶性樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体等を単独で、もしくは必要に応じて適宜配合した組成物を用いている。」
2b 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第一の目的は、インキ安定性、印刷効果、印刷適性の優れた水性印刷インキを得ることにあり、第二の目的は、塗膜物性(接着性、耐水性、耐摩擦性、耐薬品性、耐汚染性等)を有する水性印刷インキを得ることにある。」
2c 「【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、最低造膜温度が70?230℃の樹脂エマルジョンをベヒクルとして用いることを特徴とする水性印刷インキを提供する。また、本発明は、樹脂エマルジョンが、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル系共重合体およびアクリル酸エステル系重合体からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂のエマルジョンであることを特徴とする上記水性印刷インキを提供する。…
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の水性印刷インキのベヒクルとして用いる樹脂エマルジョンの最低造膜温度(以下、MFTという)は、70?230℃、好ましくは100?210℃の範囲である。…MFTが70℃未満の場合は、インキの再溶解性、洗版性等印刷適性が不十分となる。230℃を越える場合は、水性印刷インキ印刷時の乾燥温度が70?150℃程度であり、また印刷物の後加工時の加熱条件が180?230℃程度であるので、インキ皮膜が形成されず、乾燥性等の印刷適性が不十分となる。」

イ 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「家具、住宅機器等に使用する化粧板に使用する化粧紙の製造方法」(摘示1b)、すなわち、「化粧紙用原紙に水性インキで印刷を施すか又は着色し、この面に熱乾燥のみで固体状態となる電子線又は紫外線硬化型塗工液を塗布、熱乾燥した後、電子線又は紫外線硬化型塗工液を塗布し、電子線又は紫外線を照射し、硬化してなることを特徴とする化粧紙の製造方法」(摘示1a)に関して記載するものであり、刊行物1には、その方法によって得られ化粧紙も記載されているといえる。
具体的な実施例1の化粧紙は、「坪量80g/m^(2)の化粧紙用原紙に…絵柄を水性インキ(東洋インキ製造(株)製)で印刷し、分子末端にアクリル基を有するエマルジョン塗工液を塗工し、130℃の乾燥ゾーンで十分に乾燥させた後、粘度300cpsに調整した電子線硬化型塗工液(…)をグラビアコーターにて30g/m^(2)塗布し…塗膜を硬化させ」ることにより製造されるものであり、この、「分子末端にアクリル基を有するエマルジョン塗工液」は「熱乾燥のみで固体状態となる電子線又は紫外線硬化型塗工液」の一例であり、分子末端にアクリル基を有する樹脂の「水性エマルジョン」(摘示1e)であって、水性インキの絵柄を施した面に塗工されて、樹脂が「水性インキ層および紙層に浸透」(摘示1f)し、「インキ層および紙層が強化され」(摘示1i)ているものであると認められる。
そうすると、刊行物1には、
「坪量80g/m^(2)の化粧紙用原紙に絵柄を水性インキで印刷し、その絵柄を施した面に分子末端にアクリル基を有する樹脂の水性エマルジョン塗工液を塗工し樹脂を浸透し、さらに電子線硬化型塗工液の硬化膜を有する化粧紙」
の発明が記載されているといえ、これを、本件補正発明の記載ぶりにならって書き改めると、
「坪量80g/m^(2)の化粧紙用原紙に絵柄を施し、更に樹脂を浸透し、さらに電子線硬化型塗工液の硬化膜を有してなる化粧紙において、前記絵柄模様は、分子末端にアクリル基を有するエマルジョン樹脂を含む水性インキにより形成されてなる化粧紙」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

ウ 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「坪量80g/m^(2)の化粧紙用原紙」は水性エマルジョンが「浸透」するものであるから、本件補正発明の「吸水性の良い原紙」に相当する。そして、引用発明の「分子末端にアクリル基を有する樹脂の水性エマルジョン樹脂」は、水中に分散しているものであって、「水性インキ層および紙層に浸透」するものであるから含浸可能であるといえ、本件補正発明の「水中に溶解又は分散して含浸可能な樹脂」ということができ、化粧紙における樹脂の存在は「浸透し」てであっても「含浸してなる」であっても異なるものではないから、本件補正発明と引用発明とは、
「吸水性の良い原紙に絵柄模様を施し、更に樹脂を含浸してなる化粧紙において、前記樹脂が水中に溶解又は分散して含浸可能な樹脂であり、前記絵柄模様は、水性インキにより形成されてなることを特徴とする化粧紙。」
において一致し、以下の点において相違する。
A 本件補正発明は、「樹脂の含浸率が25?40%」と規定するのに対し、引用発明は、樹脂は含浸しているものの、その含浸率は不明である点
B 水性インキが、本件補正発明は、「カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分としかつ乾燥によって難水溶化するバインダー樹脂を含む」と規定するのに対し、引用発明は、そのようなバインダー樹脂を含むか不明である点
C 引用発明は、「電子線硬化型塗工液の硬化膜を有して」いるのに対して、本件補正発明は、そのような膜を有しているかは明らかではない点
(以下、それぞれ「相違点A」、「相違点B」、「相違点C」という。)

オ 相違点についての判断
(ア)相違点Aについて
化粧紙における樹脂の含浸率は、望まれる化粧紙の物性となるように、化粧紙原紙の種類や性質、塗工樹脂の種類や物性等を考慮して、適宜実験等により最適範囲を調整することは、当業者に格別困難なことであるとは認められない。
そして、本件特許発明において、当該含浸率の数値範囲とした点に、本件補正明細書を検討しても、格別の技術的意義は認められない。

(イ)相違点Bについて
引用発明に使用された水性インキは「油性インキが抱える溶剤の使用や環境に対する影響等の問題」(摘示1c)を避けるために使用されたものであるものの、どのような水性インキであるかは、明らかではない。しかし、絵柄印刷後に水性エマルジョン塗工処理が行われるのであるから、既に施されている絵柄模様印刷がその処理により損なわれないような印刷が再溶解しない耐水性を具備したものを選択することは、当然のことである。
そして、例えば刊行物2に記載されているとおり、水性インキとして、樹脂エマルジョンをベヒクルとする水性インキ(摘示2c)であって、作業環境を改善(摘示2a)するのみならず、耐水性に優れ(摘示2b)、印刷が再溶解しにくい(摘示2c)水性インキはその出願前に知られており、そのエマルジョンの樹脂は、そのインクが印刷・乾燥後に上記性質を有することからみて、乾燥によって難水溶化するものであると認められる。
そうすると、引用発明1の水性インキとして、絵柄模様印刷がその後の処理により損なわれないために、刊行物2のような、エマルジョン樹脂を主成分としかつ乾燥によって難水溶化するバインダー樹脂を含む水性インキを採用することは、当業者であれば最適材料の選択に過ぎないものである。
しかも、本件補正発明が、上記特定の水性インキを採用することによって、格別顕著な効果を奏すると認めるに足るものはない。

(付記
なお、審判請求人は、平成22年5月10日付けの回答書において、本件補正発明で規定する「水性インキ」である「カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分としかつ乾燥によって難水溶化するバインダー樹脂を含む」の「主成分としかつ」の間に「水溶性樹脂又は水溶性高分子を併用して、」を挿入した補正案を提示している。
しかしながら、水性インキにおいて、「水溶性高分子」を併用することはよく知られたことであって(必要ならば、特開昭63-56578号公報等を参照)、引用発明の水性インキとしてそのような水性インキを採用することも、当業者であれば最適材料の選択に過ぎなく、補正案の発明が、特にそのような特定の水性インキを採用することによって、格別顕著な効果を奏するものと認めるに足るものもない。
よって、補正案によっても、上記判断は左右されない。)

(ウ) 相違点Cについて
本件補正発明は、原紙に絵柄模様を施し、更に樹脂を含浸してなる化粧紙であるところ、その化粧紙の態様には、表面保護層4を設けたものが包含され(段落【0028】)、表面保護層として電離放射線硬化性樹脂(段落【0031】)の塗工液を塗工し硬化させた(段落【0030】)硬化膜も包含されるものであり、この硬化膜は引用発明の電子線硬化型塗工液の硬化膜と同様のものである。
そうすると、相違点Cは両者の実質的な相違点とはならない。

(エ)効果について
本件補正発明が、刊行物1,2及び技術常識から予測される効果に比し格別顕著な効果を奏するものとも、認められない。

カ 独立特許要件のまとめ
したがって、本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)むすび
以上のとおり、上記請求項1についての補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、その補正を含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成19年8月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成18年12月26日付けの手続補正により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記第2 1のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、「この出願については、平成18年10月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由2.によって、拒絶をすべきものである」というものであり、その「理由2.」は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
・引用文献1-5

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平08-090744号公報

5.特開平9-202868号公報」
というものである。

第5 当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と判断する。

1 刊行物、刊行物に記載された事項、及び刊行物に記載された発明
(1)刊行物
1 特開平8-90744号公報
2 特開平9-202868号公報
これらは、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び5であり、上記第2 2(2)の<理由>に挙げたのと同じ文献である。以下、同様に「刊行物1」、「刊行物2」という。

(2)刊行物1、2に記載された事項
上記第2 2(2)の<理由>ア(イ)、(ウ)に示したとおりである。

(3)刊行物1に記載された発明
上記第2 2(2)の<理由>イに示したとおりである(以下、同様に「引用発明」という。)。

(4)本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、上記第2 2(1)のとおり、本件補正発明を特定するために必要な事項である「水性インキ」の「カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分としかつ乾燥によって難水溶化するバインダー樹脂を含む」が「バインダー樹脂が、カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分とする」となったものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、本件補正発明と引用発明とを対比したときの水性インキについての相違点Bが以下の相違点B’となる他は、一致点・相違点は同じである。

B’ 水性インキが、本願発明は、「バインダー樹脂が、カゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分とする」と規定するのに対し、引用発明は、そのようなバインダー樹脂を含むか不明である点

そして、相違点B’について、第2 2(2)の<理由>オ(イ)で相違点Bについて述べたのと同じ理由が適用できることは明らかである。
他の相違点については、第2 2(2)の<理由>オのとおりであり、本願発明が刊行物1,2及び技術常識から予測される効果に比し格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

(5)まとめ
したがって、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余を検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-20 
出願番号 特願平11-300877
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B32B)
P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横島 隆裕加藤 浩  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
細井 龍史
発明の名称 化粧紙およびその製造方法  

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