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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02G
管理番号 1222848
審判番号 不服2008-17224  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-04 
確定日 2010-09-02 
事件の表示 特願2003-291293「プロテクタおよびワイヤハーネスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日出願公開、特開2005- 65399〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年8月11日にされた特許出願(2003年特許願第291293号。以下「本件出願」という。)であって、平成20年5月27日付けで、拒絶査定(発送日:同年6月4日)がなされたところ、拒絶査定不服審判が同年7月4日に請求されるとともに、同月28日付けで手続補正書が提出されたものであって、当審で、平成22年3月30日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人から意見書及び手続補正書が同年6月7日に提出されたものである。
本件出願の請求項1?4に係る発明は、平成22年6月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものと認める。

【請求項1】「ワイヤハーネスを構成する電線束を保護して所定方向へ分岐あるいは配策する配策路を内部に有し、該電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブが装着されるプロテクタであって、
前記プロテクタを、互いに係止し合って内部に配策路を形成する第1部材と第2部材とから形成し、
前記第2部材には電線束が出る複数の第2電線引き出し端部が設けられ、前記第2電線引き出し端部の一部は、電線束を配策面に交差する上方あるいは下方へ3次元的に引き出す第2電線引き出し端部であり、
前記第1部材が、配策時に前記コルゲートチューブを仮固定する突条部を有するとともに基端部に該突条部側を揺動させる揺動ヒンジを備え前記第2電線引き出し端部に係合自在に設けられた第1電線引き出し端部を有し、
前記第2電線引き出し端部は、前記第2部材が前記第1部材に係合したとき前記突条部に仮固定されたコルゲートチューブを固定するチューブ固定手段を有し、ワイヤーハーネスの3次元配索を行うことを特徴とするプロテクタ。」

第2 当審の拒絶理由
一方、当審において平成22年3月30日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本件出願の請求項1?5に係る発明は、本件出願日より前に頒布された、特開平6-339211号公報(以下、「引用刊行物A」という。)に記載された発明、特開平7-153334号公報(以下、「引用刊行物B」という。)特開平11-8922号公報(以下、「引用刊行物C」という。)及び特開2002-199542号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第3 引用刊行物記載の発明
(3A)本件出願日前に頒布された、上記引用刊行物Aには、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は当審により付与したものである。以下、同様である。)
(3A-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 L字状に屈曲した内側枠と、該内側枠に合せられてワイヤハーネスの収容空間を形成する外側枠とを備え、前記外側枠の先端側の外周壁は、前記内側枠の屈曲部近傍に配したヒンジ部により該内側枠に対して開閉自在に可動する可動部とされ、前記外側枠の側壁外周縁は、前記可動部の閉時に前記外周壁が突き当たり該外周壁の位置を規制するプロテクタにおいて、
前記外側枠の側壁外周縁に、前記外周壁が突き当たる位置規制片を外向きに突設し、
前記外周壁の側縁に、前記位置規制片と対向する突当片を突設したことを特徴とするプロテクタ。」

(3A-2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワイヤハーネスが収容される屈曲状のプロテクタに関する。」

(3A-3)「【0002】
【従来の技術】従来、この種のプロテクタとして、実開昭63-138821号公報、実開昭64-37318号公報に記載のものが知られている。
【0003】図6は、これら公報に記載のプロテクタと類似の従来の屈曲状のプロテクタを示している。
【0004】プロテクタ1は、樋状のプロテクタ本体である外側枠2と、蓋体状のカバーである内側枠3とを備えている。外側枠2と内側枠3は、両者が合せられた状態でワイヤハーネスの収容空間を形成する。内側枠3は、水平部から起立した起立部5を有し、L字状に屈曲形成されている。外側枠2の一部には、内側枠3に合せられる可動部15が設けられている。起立部5は内周壁7と側壁9とからなり、テープが巻き付けられる箇所となっている。
【0005】可動部15は、断面コ字状の外側枠2から一部の側壁11を取り除いた状態で外周壁17を分離して構成されている。可動部15は、その基端側の平坦部が柔軟に湾曲するヒンジ部13として機能することにより、内側枠3の起立部5に向けて開閉自在になっている。両側壁11の外側縁11aは、可動部15のヒンジ部13の当たりを案内するよう円弧状に形成され、そこに可動部15が当たることで可動部15の位置を規制するようになっている。なお、可動部15の先端部側縁には、可動部15を起立部5に対向する位置まで閉じたとき、起立部5の側壁9の内側に入り込む側板19が設けられており、この側板19のある位置がテープ巻き箇所となっている。
【0006】次に、このプロテクタ1を用いて、ワイヤハーネスWを保護する手順を図7?図10を用いて説明する。
【0007】まず、図7に示すようにワイヤハーネスWを、水平に倒した可動部15の上に真っ直ぐに延ばし、テープTで側板19のある箇所に巻き付け固定する。次いで、図8、9に示すようにワイヤハーネスWの先端側を起立させ、一体になった可動部15を、起立部5に向けて起こす。その際、可動部15のヒンジ部13が、側壁11の外周縁に当たって案内されることにより、ヒンジ部13が側板の外周縁の形状に沿って湾曲しヒンジ部13が保護される。そして、可動部15を起立させたら、図10に示すように、起立部5と可動部15とを、ワイヤハーネスWを間に挟んだ状態でテープTで巻き、装着を完了する。
【0008】このように、平板状に保った可動部15に一旦仮テープ巻きした後、可動部15を起こして内側枠3と本テープ巻き固定するので、作業性が良い。」

(3A-4)図7?図10には、複数のワイヤを束ねて構成されるワイヤハーネスWが描かれている。

上記摘記事項(3A-1)?(3A-4)の記載を参照すると、上記引用刊行物Aには、
「ワイヤハーネスWが収容される屈曲状のプロテクタにおいて、
プロテクタ1は、合せられた状態でワイヤハーネスWの収容空間を形成する、樋状のプロテクタ本体である外側枠2と、水平部から起立した起立部5を有し、L字状に屈曲形成されている蓋体状のカバーである内側枠3とを備え、
外側枠2の一部には、側壁11の一部を取り除いて構成された湾曲するヒンジ部13と外周壁17と側板19とからなる可動部15が設けられ、
内側枠3の起立部5は内周壁7と側壁9からなり、
ワイヤハーネスWを、水平に倒した可動部15の上に真っ直ぐに延ばし、テープTで側板19のある箇所に巻き付け固定し、ワイヤハーネスWの先端側を起立させ、一体になった可動部15を、起立部5に向けて起こし、起立部5と可動部15とを、ワイヤハーネスWを間に挟んだ状態でテープTで巻き、装着を完了するプロテクタ。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3B)本件出願日前に頒布された、上記引用刊行物Bには、次の事項が図面とともに記載されている。
(3B-1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両等に用いるワイヤハーネスの折り曲げ部分を成形する成形プロテクタに関する。」

(3B-2)「【0002】
【従来の技術】従来、車両用ワイヤハーネスは、図5に示すように、ワイヤハーネス組立て図板1の上面に、多数個の治具2を所定の配列で立設して、これらの治具2に多数本の電線Wを挿入して集束し、この集束状態で電線群を結束している。
【0003】上記のようなワイヤハーネス3の電線Wの一部を、上記図板1に対して水平な方向Xから水平な方向Yに略直角で折り曲げて、水平ハーネス部3a,3bをそれぞれ成形すると共に、垂直な方向Zに略直角で折り曲げて垂直ハーネス部3cを成形するために、ワイヤハーネス3の折り曲げ部分に成形プロテクタ4Aを設けることがある。
【0004】上記成形プロテクタ4Aは、図6(A)に詳細に示すように、水平ハーネス部3aをセットして固定ベラ4dにテープ5aを巻き付けて固定するX方向のプロテクタ水平部4aと、水平ハーネス部3bをセットして固定ベラ4eにテープ5bを巻き付けて固定するY方向のプロテクタ水平部4bと、垂直ハーネス部3cをセットして固定ベラ4fにテープ(図示しない。)を巻き付けて固定するZ方向のプロテクタ垂直部4cとで構成される。なお、図6(B)に示すように、プロテクタ水平部4aとプロテクタ垂直部4cとで構成される成形プロテクタ4Bもある。」

(3B-3)【0011】
【実施例】以下、本発明を図示の実施例により詳細に説明する。なお、図5以下の従来技術と同一構成・作用の箇所は同一番号を付して詳細な説明は省略する。図1に示すように、図板1の上面に所定の配列で立設した多数個の治具2に、多数本の電線Wを挿入して集束し、ワイヤハーネス3に組み立てる。
【0012】該ワイヤハーネス3の電線Wの一部を、上記図板1に対して水平な方向Xから水平な方向Yに略直角で横向きに折り曲げて、水平ハーネス部3a,3bをそれぞれ成形すると共に、垂直な方向Zに略直角で下向きに折り曲げて垂直ハーネス部3cを成形する。
【0013】上記各水平ハーネス部3a,3b及び垂直ハーネス部3cを成形するための成形プロテクタ4は、基本的には従来の成形プロテクタ4A,4Bと同じ構造であり、水平ハーネス部3aをセットして固定ベラ4d(図6参照)にテープ5aを巻き付けて固定するX方向のプロテクタ水平部4aと、水平ハーネス部3bをセットして固定ベラ4e(図6参照)にテープ5bを巻き付けて固定するY方向のプロテクタ水平部4bと、垂直ハーネス部3cをセットして固定するZ方向のプロテクタ垂直部4cとで構成されている。該プロテクタ垂直部4cには、従来の固定ベラ4f(図6参照)に代えて、所定位置にロック穴4gが設けられている。
【0014】一方、図2にも示すように、ベルト部6aをワイヤハーネス3の折り曲げ前の垂直ハーネス部3cの外周に巻き付けて本体6bに係止するクランプ6を設け、該クランプ6Aに、上記プロテクタ垂直部4cのロック穴4gに差し込んでロックされるクリップ状のロック部6cを一体的に形成する。なお、図2では、ロック部6cを明確にするために、本体6bと分離して描いているが、実際には、上述したように、本体6cに一体に形成されている。
【0015】上記構成であれば、ワイヤハーネス3の各水平ハーネス部3a,3bを、成形プロテクタ4のプロテクタ水平部4a,4bにそれぞれセットして、固定ベラ4d,4eにテープ5a,5bを巻き付けて各水平ハーネス部3a,3bを固定する。また、ワイヤハーネス3の折り曲げ前の垂直ハーネス部3cの外周の所定位置に、クランプ6Aのベルト部6aを巻き付けて本体6bに係止し、垂直ハーネス部3cにクランプ6Aを固定する。
【0016】その後、ワイヤハーネス3を図板1の上から取り外し、垂直ハーネス部3cを略直角に下向きに折り曲げながら、クランプ6Aのロック部6cをプロテクタ垂直部4cのロック穴4gに差し込んでロックし、垂直ハーネス部3cをプロテクタ垂直部4cに固定する。
【0017】上記のように、ワイヤハーネス3の垂直ハーネス部3cのクランプ6Aのロック部6cと、成形プロテクタ4のプロテクタ垂直部4cのロック穴4gの位置は、予め設定できるから、ワイヤハーネス3を図板1の上から取り外しても、垂直ハーネス部3cを正確にプロテクタ垂直部4cに固定できるようになる。
【0018】したがって、垂直ハーネス部3cを下向きに折り曲げるとき、折り曲げ位置や角度がばらつかず、垂直ハーネス部3cの配索寸法等にばらつきが生じなくなるので、垂直ハーネス部3cの固定位置やねじれ等の調整し直しが不要になる。
【0019】また、垂直ハーネス部3cの固定は、クランプ6Aのロック部6cをプロテクタ垂直部4cのロック穴4gに差し込むだけでワンタッチでロックできるので、従来のテープの巻き付け作業スペースのような広い作業スペースが不要になる。さらに、ワイヤハーネス3を図板1の上から取り外せるので、取り外さないで垂直ハーネス部3cを折り曲げてプロテクタ垂直部4cに固定できる専用の図板が不要になると共に、簡単なクランプ6Aを設けるだけであるので、コスト安になる。」

(3B-4)図1には、水平ハーネス部3a,3bを固定するプロテクタ水平部4a,4bに対して、垂直ハーネス部3cを固定するプロテクタ垂直部を下方に折り曲げることが描かれている。

(3C)本件出願日前に頒布された、上記引用刊行物Cには、次の事項が図面とともに記載されている。
(3C-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイヤハーネスを構成する電線束を保護し、電線束を挿入したコルゲートチューブを挟持する分岐プロテクタに関するものである。」

(3C-2)「【0002】
【従来の技術】従来、図17に示すような、ワイヤハーネスを構成する電線束を保護するプロテクタが提案されている(実開昭54-85396号公報)。図17において、この分岐プロテクタ91は、T字形で割り筒状の本体92と、本体92にヒンジ93(図18)を介して開閉自在な本体カバー94及び蓋95とから成る。ワイヤハーネスWを構成する主電線束90が二つに枝分けされ、主電線束90と二つの副電線束96,96とがそれぞれ蛇腹状のコルゲートチューブ(以下、チューブという)97に挿入される。
【0003】 各チューブ97が本体92に配置された後に、本体カバー94と蓋95とが本体92に装着されて各チューブ97が本体92、本体カバー94、及び蓋95とに挟持される。そして、本体92に突設された係合突起98(図18)と、本体カバー94および蓋95にそれぞれ設けられた係止枠99(図18)との係合により、本体カバー94と蓋95とが本体92に固定される。
【0004】しかしながら、主電線束90と副電線束96とを挿入したチューブ97が本体92に配置された後に、作業者が手等でチューブ97を保持しないと、本体92に本体カバー94と蓋95とが装着できないから、本体カバー94および蓋95を本体92に装着する組付作業の効率が悪いという欠点があった。また、本体カバー94と蓋95とが本体92にヒンジ93を介して連結されているから、もしヒンジ93が切れると、分岐プロテクタ91自身が使用できなくなるという恐れがあった。」

(3C-3)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態の具体例を図面を参照して説明する。図1?図16は本発明に係るプロテクタの一実施例を示すものである。図1において、このプロテクタ1は、ワイヤハーネス2を構成する電線束3と、電線束3を挿入した蛇腹状のチューブ4とを配置する本体10と、本体10に組付けられる蓋体50とから構成される。
【0013】本体10は、チューブ4を配置する第一チューブ収容室20を基板11の一端部に設け、基板11の他端部に第二チューブ収容室30および第三チューブ収容室40を配置し、各チューブ収容室20,30,40の内面20a,30a,40aに突条部21,31,41をそれぞれ周設し、基板11の中央部に電線束3を置く束収容室12を区画形成し、束収容室12と各チューブ収容室20,30,40との境界部分に位置決めリブ22,32,42を有する。
【0014】各チューブ収容室は断面U字状または凹状に形成されている。図2に示すように、第二チューブ収容室30と第三チューブ収容室40とは同方向へ配置されている。第二チューブ収容室30と第三チューブ収容室40とは隔壁13を介して平行に並べられている。各チューブ収容室20,30,40の内面20a,30a,40aには突条部21,31,41が、チューブ4の長手方向(以下、X方向という)と直交する方向(以下、Y方向という)に周設されている。各チューブ収容室20,30,40は殆ど同一に形成されているから、第一チューブ収容室20について説明する。
【0015】図1及び図2の如くに、第一チューブ収容室20に設けられた突条部21は断面凸状に形成されている。突条部21は第一チューブ収容室20の内面20aで束収容室12側と反対側、かつ開口付近に配置されてチューブ4の凹部4aに係合する第一突条リブ21Aと、第一突条リブ21AからX方向へチューブ4の凸部4bを越えた凹部4cに係合される第二突条リブ21Bと、第二突条リブ21BからX方向へチューブ4の凸部4dおよび凸部4fを越えた凹部4gに係合される第三突条リブ21Cとから成る。各突条リブ21A,21B,21Cは本体10と蓋体50の突き合わせ面14に至るまで設けられている。また、第二突条リブ21Bと第三突条リブ21Cとの間の距離を変更することも可能である。
【0016】そして、図3に示すように、突き合わせ面14から第一チューブ収容室20の最深部までの距離Vが、チューブ4の凸部4dの外径v(図4)と略等しく(V=v)設定されている。これにより、チューブ4を第一チューブ収容室20に配置すると、チューブ4が第一チューブ収容室20側の突き合わ面14から突出することがない(図15参照)。
【0017】各突条リブ21A,21B,21Cの形状は殆ど同一であるから、第一突条リブ21Aについて説明する。図3乃至図5に示す如くに、第一チューブ収容室20の内面20aから突出する第一突条リブ21Aの長さPはチューブ4の凹部4aと凸部4bとの間の高低差pより短く設定され(P<p)、そして第一突条リブ21Aの先端部21aの幅Qは凹部4aの幅xより大きく、かつ隣接する凸部4b′,4bの距離yより小に設定されている(x<Q<y)。これにより、第一突条リブ21Aが凹部4a内へ挿入されると、第一突条リブ21Aの先端部21aが凹部4aの両傾斜面4m,4nの間に係合される。
【0018】図1及び図3に戻って、本体10の一側縁には第一チューブ収容室20、束収容室12、および第二チューブ収容室30の各外面を連成して一方側の起立壁11aが設けられている。また同様に、本体10の他側縁には第一チューブ収容室20、束収容室12、および第三チューブ収容室40の各外面が一体的に形成されて他方側の起立壁11bが配置されている。両起立壁11a,11bには一対の係合突起15,15がそれぞれ設けられている。基板11の下部にはクランプ16が垂下連成され、そして車両等のパネル(図示せず)に穿設されたパネル孔(図示せず)に嵌入される。
【0019】図1乃至図3のように、位置決めリブ22,32,42は、第一チューブ収容室20、第二チューブ収容室30、および第三チューブ収容室40と束収容室12との各境界部分に合計三箇所配置されると共に、本体10と蓋体50との突き合わせ面14に至るまで設けられている。各位置決めリブ22,32,42は殆ど同一に形成されているから、第一チューブ収容室20と束収容室12との境界部分に設けられている位置決めリブ22について説明する。
【0020】図6に示すように、U字状に形成された位置決めリブ22の曲率半径Rはチューブ4の凹部4aの半径r(図4)より小さい(R<r)。位置決めリブ22の厚みSはチューブ4の凸部4b′と凸部4bの間の距離yより大きく(S>y)設定されている(図3)。位置決めリブ22の下部には平坦部22aが形成されている。そして、チューブ4内に挿入された電線束3に平坦部22aが接触しないように、基板11の内面からの平坦部22aの高さが設定されている。これにより、チューブ4の端部4uを位置決めリブ22に突き当てることにより、第一チューブ収容室20内でのチューブ4の位置が確実に決定されると共に、チューブ4の端部4uが束収容室12へ進入するのが未然に防止される(図1)。
【0021】図1、図9及び図10のように、蓋体50は、基板51の本体側に湾曲状突部61,71,81を垂下させて設け、基板51の両側縁に側壁52,52を下方へ連成し、各側壁52の外面に一対の係止枠53,53を設け、基部51の上面かつ中央に山部54を突出し、山部54に水抜き用の透孔54aを穿設したものである。
【0022】湾曲状突部61,71,81はそれぞれ断面凸状に形成されると共に、各チューブ収容室20,30,40の内面20a,30a,40aに周設された突条部21,31,41に相対応させて配置されている(図11参照)。これにより、各チューブ収容室20,30,40の突条部21,31,41と蓋体50の湾曲状突部61,71,81とがチューブ4の凹部4a,4c,4gに進入して上下から挟持する。各湾曲状突部61,71,81は殆ど同一形状であるから、湾曲状突部61について説明する。
【0023】図9,図10及び図12の如くに、基板51の一端に位置する第一湾曲状リブ61Aと、第一湾曲状リブ61Aからチューブ4の凸部4bを越えた場所に配置された第二湾曲状リブ61Bと、第二湾曲状リブ61Bからチューブ4の凸部4d,4fを越えた所に形成された第三湾曲状リブ61Cとから成る。そして、各湾曲状リブ61A,61B,61Cはそれぞれ各突条リブ21A,21B,21Cに対応している。
【0024】各湾曲状リブ61A,61B,61Cは殆ど同一形状であるから、第一湾曲状リブ61Aについて説明すると、第一湾曲状リブ61Aの先端部61aは円弧状に形成され、また第一湾曲状リブ61Aの幅Tはチューブ4の隣接する凸部4bと突部4b′との間の距離yより小、かつチューブ4の凹部4aの間の距離xより大に設定されている(x<T<y)。」

(3C-4)「【0025】次に、チューブ4を第一チューブ収容室20に装着することにより、チューブ4がプロテクタ1に取り付けられる場合を説明する。先ず、図14及び15に示すように、チューブ4が本体10の第一チューブ収容室20と束収容室12とに配置される。その際、チューブ4の端部4uが位置決めリブ22に突き当てられ、チューブ4が第一チューブ収容室20内の適切な位置に配置されると共に、チューブ4の端部4uが束収容室12へ進入するのが防止される。
【0026】そして、チューブ4がX方向へ押し込まれると、チューブ4の凹部4a,4c,4gが第一チューブ収容室20内の突条リブ21に進入して係合される。この時、凹部4a,4c,4gと第一、第二、及び第三突条リブ21A,21B,2Cとが第一チューブ収容室20内で係合されているから、チューブ4が第一チューブ収容室20内で宙ぶらりんの状態でなく、本体10にちょうど仮係止された状態である。
【0027】その後、図16に示す如くに、蓋体50が本体10へ向けてY方向へ押し込まれると、蓋体50の湾曲状リブ61がチューブ4の凹部4a,4c,4gに係合してチューブ4の凹部4a,4c,4gが各突条リブ21A,21B,21Cと各湾曲状リブ61A,61B,61Cとにより同時に挟持固定される。それと共に、蓋体50の係止枠53が本体10の係合突起15に係合される。これにより、蓋体50が本体10に組付けられ、チューブ4がプロテクタ1が取り付けられる。」

第4 本願発明と引用発明との対比・判断
(4-1a)対比
(i)上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-4)には、「複数のワイヤを束ねて構成されるワイヤハーネスW」が記載されており、このワイヤハーネスWは、例えば、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-1)の段落【0001】に、「ワイヤハーネスを構成する電線束」と記載されているように、複数の電線を束ねて電線束としたものであるから、引用発明の「ワイヤハーネスW」は、本願発明の「電線束」と同様に「ワイヤハーネスを構成する電線束」である。
また、上記のごとく引用刊行物Aには、「複数のワイヤを束ねて構成されるワイヤハーネスW」と記載されていることから、引用発明のワイヤハーネスWは複数のワイヤを束ねる手段を有することは明らかである。そして、本願発明の「電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブ」は、例えば特開2002-325332号公報の2頁2欄2?5行に、「複数本の電線72をコルゲートチューブ73内に収容することで、複数本の電線72をビニル粘着テープやバンドといった結束手段で束ねる手間が要らず」と記載されているように、複数の電線を束ねるものである。
そうすると引用発明の「複数のワイヤを束ねる手段」と本願発明の「蛇腹状のコルゲートチューブ」とは「電線束を束ねる手段」である点で共通する。
そして、引用発明の「プロテクタ」は、外側枠2と内側枠3とが合せられた状態で形成した収容空間にワイヤハーネスWを収容するものであり、この外側枠2と内側枠3とが合せられた状態で形成した収容空間が、所定方向にワイヤハーネスWを配策する配策路になることから、引用発明の「プロテクタ」と本願発明の「プロテクタ」とは、「ワイヤハーネスを構成する電線束を保護して所定方向へ配策する配策路を内部に有し、該電線束を束ねる手段が装着されるプロテクタ」である点で共通する。

(ii)上記(i)で検討したように、引用発明の「プロテクタ」は、外側枠2と内側枠3とが合せられた状態で形成した収容空間が、所定方向にワイヤハーネスWを配策する配策路になることから、引用発明の「外側枠2と内側枠3」が本願発明の「第1部材と第2部材」に相当し、引用発明の「プロテクタ」と本願発明の「プロテクタ」とは、「プロテクタを、互いに合わさって内部に配策路を形成する第1部材と第2部材とから形成」する点で共通する。

(iii)ワイヤハーネスWは、例えば、特開平8-256414号公報の4頁5欄40?43行に「ワイヤハーネスW/Hは巻取部材12のワイヤハーネス挿通溝12dに挿通した状態で、プロテクタ本体11の両端開口より外方に引き出される。」と記載されているように、プロテクタ1から両端に引き出されるものであるから、引用発明のワイヤハーネスWの収容空間を形成する「樋状のプロテクタ本体である外側枠2」と「蓋体状のカバーである内側枠3」とは、両側にワイヤハーネスWの引き出し端部を有することは明らかである。
そして、引用発明の「蓋体状のカバーである内側枠3」は、水平部から起立した起立部5を有し、L字状に屈曲形成されている蓋体状のカバーであることから、引用発明の「起立部5」が、本願発明の「第2電線引き出し端部」に相当し、さらに、引用発明のプロテクタ1の「内側枠3」と本願発明の「第2部材」とは、「第2部材には電線束が出る複数の第2電線引き出し端部が設けられ、前記第2電線引き出し端部は、電線束を配策面に交差する方向へ引き出す第2電線引き出し端部」である点で共通する。

(iv)引用発明の「樋状のプロテクタ本体である外側枠2」は、外側枠2の一部には、側壁11の一部を取り除いて構成された湾曲するヒンジ部13と外周壁17と側板19とからなる可動部15が設けられていることから、引用発明の「樋状のプロテクタ本体である外側枠2」の「ヒンジ部13」は、本願発明の「揺動させる揺動ヒンジ」に相当する。
さらに、引用発明のプロテクタ1は、ワイヤハーネスWを、水平に倒した可動部15の上に真っ直ぐに延ばし、テープTで側板19のある箇所に巻き付け固定し、ワイヤハーネスWの先端側を起立させ、一体になった可動部15を、起立部5に向けて起こし、起立部5と可動部15とを、ワイヤハーネスWを間に挟んだ状態でテープTで巻き、装着を完了することから、引用発明の「樋状のプロテクタ本体である外側枠2」の「可動部15」は、ワイヤハーネスWを側板19にテープTで巻き付け固定することで、ワイヤハーネスWを外側枠2の可動部15に仮固定していることは明らかである。
そして、引用発明の外側枠2の「可動部15」は、ワイヤハーネスWの先端側を起立させ、一体になった可動部15を、起立部5に向けて起こし、起立部5と可動部15とを、ワイヤハーネスWを間に挟んだ状態でテープTで巻いていることから、引用発明の「可動部15」と本願発明の「第1電線引き出し端部」とは、「前記第2電線引き出し端部と対向した状態で固定される第1電線引き出し端部」である点で共通する。
そうすると、引用発明の「樋状のプロテクタ本体である外側枠2」と本願発明の「第1部材」とは、「第1部材が、基端部に仮固定された側を揺動させる揺動ヒンジを備え、前記第2電線引き出し端部と対向した状態で固定される第1電線引き出し端部」を有する点で共通する。

(v)引用発明のプロテクタ1は、ワイヤハーネスWを、水平に倒した可動部15の上に真っ直ぐに延ばし、テープTで側板19のある箇所に巻き付け固定し、ワイヤハーネスWの先端側を起立させ、一体になった可動部15を、起立部5に向けて起こし、起立部5と可動部15とを、ワイヤハーネスWを間に挟んだ状態でテープTで巻き、装着を完了することから、引用発明のプロテクタは、内側枠2が有する起立部5と、ワイヤハーネスWを側板19にテープで巻き付け固定した可動部15とをワイヤハーネスWを間に挟んだ状態でテープTで巻いて固定しているものである。
そうすると、引用発明の「テープT」と本願発明の「チューブ固定手段」とは、「前記第2部材が、前記第1部材と対向したとき、第1部材の第1電線引き出し端部に仮固定された電線束を束ねる手段を、固定するための固定手段」を有する点で共通する。

(vi)上記(i)で検討したように、引用発明の「プロテクタ」は、外側枠2と内側枠3とが合せられた状態で形成した収容空間にワイヤハーネスWを収容するものであり、この外側枠2と内側枠3とが合せられた状態で形成した収容空間が、所定方向にワイヤハーネスWを配策する配策路になることから、引用発明の「プロテクタ」と本願発明の「プロテクタ」とは、「ワイヤーハーネスの配索を行うプロテクタ」である点で共通する。

上記(i)?(vi)の本願発明と引用発明との対比から、本願発明と引用発明とは、
「ワイヤハーネスを構成する電線束を保護して所定方向へ配策する配策路を内部に有し、該電線束を束ねる手段が装着されるプロテクタであって、
前記プロテクタを、互いに合わさって内部に配策路を形成する第1部材と第2部材とから形成し、
前記第2部材には電線束が出る複数の第2電線引き出し端部が設けられ、前記第2電線引き出し端部は、電線束を配策面に交差する方向へ引き出す第2電線引き出し端部であり、
第1部材が、基端部に仮固定された側を揺動させる揺動ヒンジを備え、前記第2電線引き出し端部と対向した状態で固定される第1電線引き出し端部を有し、
前記第2部材が前記第1部材と対向したとき、第1部材の第1電線引き出し端部に仮固定された電線束を束ねる手段を、固定するための固定手段を有し、
ワイヤーハーネスの配索を行うプロテクタ。」
である点で一致し、他方、下記の相違点(あ)?相違点(き)で相違するものである。

・相違点(あ)
プロテクタが有するワイヤハーネスを構成する電線束を保護して所定方向へ配策する配策路が、本願発明では、「分岐あるいは配策する配策路」であるのに対して、引用発明では、ワイヤハーネスWの収容空間である点。

・相違点(い)
電線束を束ねる手段が、本願発明では、「電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブ」であるのに対して、引用発明では、複数のワイヤを束ねる手段である点。

・相違点(う)
互いに合わさって内部に配策路を形成する第1部材と第2部材が、本願発明では「互いに係止し合って」内部に配策路を形成しているのに対して、引用発明は、ワイヤハーネスWを間に挟んだ状態でテープTで巻かれている点。

・相違点(え)
電線束を配策面に交差する方向へ引き出す第2電線引き出し端部の構成が、本願発明では、第2電線引き出し端部「の一部」は、電線束を配策面に交差する「上方あるいは下方へ3次元的に」引き出す第2電線引き出し端部である構成であるのに対して、引用発明では、内側枠3の水平部から起立した起立部5であり、内側枠3の一端のみに起立部5が設けられているか、両端に設けられているか不明である点。

・相違点(お)
本願発明では、第1部材が、「配策時に前記コルゲートチューブを仮固定する突条部を有する」とともに、仮固定された側を揺動させる揺動ヒンジとして、「該突条部側を揺動させる揺動ヒンジ」を備え、さらに、第2電線引き出し端部と対向した状態で固定される第1電線引き出し端部として、「第2電線引き出し端部に係合自在に設けられた第1電線引き出し端部」を有するのに対して、引用発明では、外側枠2の可動部15の側板19にテープTでワイヤハーネスWを固定するとともに、外側枠2が、仮固定された側を揺動させる揺動ヒンジとして、外側枠2の一部に、ワイヤハーネスWがテープTで固定される可動部15を湾曲させるヒンジ部13を備え、さらに、前記第2電線引き出し端部と対向した状態で固定される第1電線引き出し端部として、起立部5と対向した状態でワイヤハーネスWを間に挟んでテープTで固定される可動部15を有する点。

・相違点(か)
本願発明では、第2部材が前記第1部材と対向したとき、第1部材の第1電線引き出し端部に仮固定された電線束を束ねる手段を、固定するための固定手段を、「第2電線引き出し端部」が有し、該固定手段が、「前記第2部材が前記第1部材に係合したとき前記突条部に仮固定されたコルゲートチューブを固定するチューブ固定手段」であるの対して、引用発明では、第2部材が前記第1部材と対向したとき、第1部材の第1電線引き出し端部に仮固定された電線束を束ねる手段を、固定するための固定手段を、起立部5が有するものではなく、該固定手段が、内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15とをワイヤハーネスWを間に挟んだ状態で巻くテープTである点。

・相違点(き)
ワイヤーハーネスの配索を行うプロテクタが、本願発明では「3次元配索」であるのに対して、引用発明では、樋状のプロテクタ本体である外側枠2と蓋体状のカバーである内側枠3とが合せられた状態でワイヤハーネスWの収容空間を形成するものの、3次元配策かどうか不明である点。

(4A-1b)当審の判断
上記相違点(あ)?相違点(き)について検討する。
・相違点(あ)、相違点(え)及び相違点(き)について
ワイヤハーネスを配策するプロテクタにおいて、ワイヤハーネスを3次元的に分岐・配策することは上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-3)の段落【0012】,【0013】に記載されているごとく周知(他に、特開2003-220829号公報の段落【0019】,【0022】,【0024】の記載、特開2000-4520号公報の段落【0004】、図9の記載参照)であることから、引用発明のプロテクタにおいて、周知例のごとく、ワイヤハーネスを3次元的に分岐・配策する構成を採用して、本願発明のごとく、プロテクタが有するワイヤハーネスを構成する電線束を保護して所定方向へ配策する配策路を「分岐あるいは配策する配策路」とするとともに、ワイヤーハーネスの配索を行うプロテクタが、「3次元配索」を行うことは当業者が容易になし得るものである。(相違点(あ),相違点(き))
そして、上記周知例である上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-3)には、「水平ハーネス部3a,3bを固定するプロテクタ水平部4a,4bに対して、垂直ハーネス部3cを固定するプロテクタ垂直部を下方に折り曲げる」ことが記載され、また、上記周知例の特開2003-220829号公報の図3には、第2ワイヤハーネス取付部27、第3ワイヤハーネス取付部31に対して、第1ワイヤハーネス取付部25が手前側に折り曲げることが描かれていることから、上記のごとくワイヤハーネスの配策を行うプロテクタとして、ワイヤハーネスを3次元的に分岐・配策するプロテクタを採用した際には、プロテクタの一部のワイヤハーネスを取り出す端部が下方、もしくは、引用発明のプロテクタWが備える内側枠3の起立部5のごとく上方に折り曲げることになるので、本願発明のごとく、第2電線引き出し端部「の一部」を、電線束を配策面に交差する「上方あるいは下方へ3次元的に」引き出す第2電線引き出し端部とする構成が得られることは明らかである。(相違点(え))

・相違点(い)、相違点(う)、相違点(お)及び相違点(か)について
(a)複数のワイヤを束ねる手段として、電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブを用いること、及び、プロテクタがワイヤハーネを束ねるコルゲートチューブで固定する際に、プロテクタの電線束引き出し端部の主体の内側及び蓋体の内側にそれぞれコルゲートチューブの凹部に係合する突条部を設けるとともに、プロテクタの電線束引き出し端部の主体の外側及び蓋体の外側にそれぞれ係合突起と係止枠を設け、プロテクタ本体の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させ、コルゲートチューブと蓋体のそれぞれ外側に設けた係合突起と係止枠を互いに係合させたとき、蓋体の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させてプロテクタの本体と蓋体とを組み付けることは、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-3)及び(3C-4)に記載されているように周知(他に、例えば、特開平8-168137号公報の5頁7欄46?49行、8欄5?9行、6頁9欄4?12行の記載参照)であり、引用発明の複数のワイヤを束ねる手段も上記周知の電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブもともに電線束を束ねる手段で共通することから、引用発明において、複数のワイヤを束ねる手段の代わりに周知例のごとく、電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブを採用するとともに、周知例と同様に、引用発明のプロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の内側にそれぞれコルゲートチューブの凹部に係合する突条部を設け、また、プロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の外側に係合突起と係止枠とを設けることにより、プロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の内側に設けた突条部をコルゲートチューブの凹部を係合させ、さらには、プロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の外側に設けた係合突起と係止枠とを係合させてプロテクタの内側枠3と外側枠2とを組み付けて、本願発明のごとく、電線束を束ねる手段が、「電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブ」であり、互いに合わさって内部に配策路を形成する第1部材と第2部材が、「互いに係止し合って」内部に配策路を形成することは当業者が容易になし得るものである。(相違点(い)、相違点(う))
(b)また、上記(a)において検討したように、引用発明の複数のワイヤを束ねる手段として、周知例のごとく、電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブを採用するとともに、引用発明のプロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の内側にそれぞれコルゲートチューブの凹部に係合する突条部を設け、また、プロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の外側に係合突起と係止枠とを設けた場合、この可動部15の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させることが、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-4)の段落【0026】に「凹部4a,4c,4gと第一、第二、及び第三突条リブ21A,21B,2Cとが第一チューブ収容室20内で係合されているから、チューブ4が第一チューブ収容室20内で宙ぶらりんの状態でなく、本体10にちょうど仮係止された状態である。」と記載されているように、コルゲートチューブを仮固定させることを意味することになる。
そうすると、上記(4-1a)の(iii)及び(iv)で検討したように、引用発明の「内側枠3の起立部5」と「外側枠2の可動部15」は、それぞれ本願発明の「第2電線引き出し端部」と「第1電線引き出し端部」に相当し、さらに、引用発明では、外側枠2の一部に設けられ、ヒンジ部13に接続された可動部15の側板19に、ワイヤハーネスがテープで仮固定されることから、引用発明のヒンジ部に接続された可動部15の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させることが、本願発明のごとく、第1部材が、「配策時に前記コルゲートチューブを仮固定する突条部を有する」とともに、基端部に仮固定された側を揺動させる揺動ヒンジとして、「基端部に該突条部側を揺動させる揺動ヒンジ」を備え、さらに、前記第2電線引き出し端部と対向した状態で固定される第1電線引き出し端部として、「前記第2電線引き出し端部に係合自在に設けられた第1電線引き出し端部」を有することになるのは明らかである。(相違点(お))
(c)さらに、引用発明の複数のワイヤを束ねる手段として、周知例のごとく、電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブを採用するとともに、引用発明のプロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の内側にそれぞれコルゲートチューブの凹部に係合する突条部を設け、また、プロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の外側に係合突起と係止枠とを設けた場合には、この可動部15の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させてコルゲートチューブを仮固定させた後に、プロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15の外側に設けた係合突起と係止枠により、内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15とを係合させることになるから、本願発明のごとく、第2部材が前記第1部材とが対向したとき、第1部材の第1電線引き出し端部に仮固定された電線束を束ねる手段を、固定するための固定手段を、「第2電線引き出し端部」が有し、該固定手段が、「前記第2部材が前記第1部材に係合したとき前記突条部に仮固定されたコルゲートチューブを固定するチューブ固定手段」である構成が得られることは明らかである。(相違点(か))

そして、本願発明によってもたらされる作用効果は、引用発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

なお、請求人は平成22年6月7日付けの意見書で「補正された本件[請求項1]に係る発明は、その記載から明らかなように、次のa、b、cの点を重要な要件としているものであります。
a.「ワイヤハーネスのためのプロテクタを、互いに係合し合って内部に配策路を形成する第1部材と第2部材とから形成している」点。
b.「前記第2部材には、複数の第2電線引き出し端部が設けられ、それらの一部は配策面に交差する方向に3次元的に引き出されている」点。
c.「前記第1部材には、揺動ヒンジを備え前記第2電線引き出し端部に係合できる第1引き出し端部が設けられている」点。
すなわち、本件発明は、前記aに記載したような「第1部材」と「第2部材」とを有する「プロテクタ」を前提技術とし、これら「第1部材」、「第2部材」に前記b、cに記載した条件を付すことにより、前記「プロテクタ」における3次元的配策を可能にしたものであります。
・・・
引用文献A?Dには、「プロテクタ」について記載されており、前記要件の一部と一致するものも記載されています。しかし、本件発明における前記a、b、cの要件を合わせ備えたものは記載されていません。」 旨の主張している。
しかしながら、上記(4-1b)で検討したように、引用発明においても、ヒンジ部13を備えて、プロテクタの内側枠3の起立部5と外側枠2の可動部15からなる第1部材と第2部材とが互いに合わさって固定されており、さらに、複数のワイヤを束ねる手段として、電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブを用いること、及び、プロテクタがワイヤハーネを束ねるコルゲートチューブで固定する際に、プロテクタの電線束引き出し端部の主体の内側及び蓋体の内側にそれぞれコルゲートチューブの凹部に係合する突条部を設けるとともに、プロテクタの電線束引き出し端部の主体の外側及び蓋体の外側にそれぞれ係合突起と係止枠を設け、プロテクタ本体の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させ、コルゲートチューブと蓋体のそれぞれ外側に設けた係合突起と係止枠を互いに係合させたとき、蓋体の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させてプロテクタの本体と蓋体とを組み付けることは周知であることから、引用発明の複数のワイヤを束ねる手段として、電線束を挿入した蛇腹状のコルゲートチューブを用いるとともに、プロテクタの電線束引き出し端部の主体の内側及び蓋体の内側にそれぞれコルゲートチューブの凹部に係合する突条部を設け、また、プロテクタの電線束引き出し端部の主体の外側及び蓋体の外側にそれぞれ係合突起と係止枠を設け、プロテクタ本体の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させ、コルゲートチューブと蓋体のそれぞれ外側に設けた係合突起と係止枠を互いに係合させたとき、蓋体の突条部にコルゲートチューブの凹部を係合させてプロテクタの本体と蓋体とを組み付ける周知の技術事項を採用すれば、請求人の主張する上記「a.」及び「c.」の構成は得られるものである。
さらに、引用発明では、3次元配策かどうか不明であるが、ワイヤーハーネスの配索を行うプロテクタを3次元配索で構成することは周知である。そして、引用発明では、ヒンジ部13を備える外側枠2の可動部15と内側枠3の起立部5とが互いに合わさって固定される構成を採用していることから、請求人の主張する上記「b.」の「前記第1部材には、揺動ヒンジを備え前記第2電線引き出し端部に係合できる第1引き出し端部が設けられている」構成を、ワイヤーハーネスの配索を行う3次元配策のプロテクタで用いるか、2次元配策のプロテクタで用いるかは当業者が必要に応じて適宜採用する設計的事項にすぎないものであり、請求人の主張は採用できないものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、当審が通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-29 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-20 
出願番号 特願2003-291293(P2003-291293)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 石川 太郎
秋月 美紀子
発明の名称 プロテクタおよびワイヤハーネスの製造方法  
代理人 本多 弘徳  
代理人 小栗 昌平  
代理人 市川 利光  

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